BulletinofFacultyofEducation,NagasakiUniversity:CurriculumandTeachingNo.46(2006)63175
一枚ポー トフォリオを活用 した理科学習 ( Ⅰ)
橋本 健夫*・楠本 正信 **
( 平成
17年
10月
31日受理)
A Study on ScienceClasswith OnePagePortfolio in A Elementary School(I)
Tateo HASHIMOTO ・Masanobu KUSUMOTO (ReceivedOctober31,2005)
Stm ary
ltishardf♭rmanyteacherstoestablishthemostsuitablerelationshipbetweentheteaching methodsandtheassesments.Generally,theassesmentsareusefulforteachers,but,Pupilsdo notreceivethecontribution・Fortheimprovementofthiss血ation,onepageportfわlioisused in scienceclassesofelementaryschool.
Theresultofthist町,theteachingwith onepageportfわliobetterthantheusualmethods by checklist.So,PupilsrecognlZethatonepageportfolio isusefulforthem to know their changeintheleamlng.
は じめに
指 導 と評価 の一体化 は,教育 目標達成 に向けての児童 の変容 を円滑 に実現 したい とい う 教員 の大 きな課題 であ る。 このためには,学習 の進行 に応 じた適切 な児童理解 が不可欠 で ある。 この適切 な児童理解 の定着 に よって,学習 にお ける教員 の支援や 児童 間の相互啓発 が効果 的 なものになる と考 え られ る。 その結果 として,児童 は学習 の中で科学的 な見方や 考 え方 を 自らの力 で習得 してい くので あ る。
しか し, これ まで に行 って きた評価 をふ り返 える と, それ ぞれ の場 面で,教員 が必要 と す る児童 の情報 は手 に入れ ることがで きた ものの, その情報 は教員 のみ有効 であった よ う に思 われ る。そ して,児童 自身 に とっては, その評価 によって 自己の変容 を認識す ること は少 な く, 自らの学習 内容や学習 目標 の理解 を測定す るのにも余 り役 に立 っていなかった ので はないか と推測 してい る。
学習 の改善 に貢献す るための評価 は,評価 の基準 を明確 にす ることや児童生徒 が 自己の 変容 を 自覚で きるものでなけれ ばな らない。 それ は,評価 が教員 の ものではな く,教員 と 児童両者 のために働 くものでなけれ ばな らない ことを意味 してい る。従 って教員 は,いつ,
どの よ うな方法 で評価 をす るか を常 に考 え, さらにそれ を どの よ うに児童 に伝 え,学習態
*長崎大学教育学部 **長崎大学教育学部附属小学校
64 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46 (2006年)
度等の改善 に生かすかを模索 しなけれ ばな らないのである (1,2)。特 に,提示 された事象 か ら問題 を発 見 し,予想 を立て, 自らの力で解決 に努力 しなけれ ばな らない理科学習 におい ては,評価 の時期や方法 が重要 な位置 を占め ると考 え られ る。
理科学習における評価
評価 に関す る研究 は多 くの研究者 によってな されてきた。例 えば,橋本 らは,それを理 科学習 の観点か ら整理 し,学習 に生かす評価 のあ り方 を述べてい る(3)。ただ,近年の研究 は児童 ・生徒 と教員が納得す る評価 のあ り方 を模索 し,理論化の試みが進 んでいる。また, 学校教育現場 では評価 の適正化 を求 めて評価規準及び評価基準の明確化 を模 索 している。
これ らは共 に評価 をよ り適切 なものにして,児童 ・生徒 の意欲 を高めるとともに教授学習 法の改善 を図る意図を持 ってい る (4)。 この流れ を受 けて,本研究 は教育現場 での評価の有 効性 を確認 しなが ら評価方法の改善 に取 り組 みたい と考 えた。具体的 には次の よ うな評価 の追究 にな る。
○学習活動 による自己の変容 を児童 自身 が 自覚で きる評価
それぞれの児童が学習 を振 り返 るときに役立ち,それ によって児童 の学習 目標 の 確 認や学習意欲 の喚起 に繋 が る評価
○教員 の児童理解や教授方法 の改善 につ なが る評価
教員 自身が各児童の考 え方等 を的確 に把握す ることがで き,学習方法のきめ細や かな改善が行 える評価
求めてい る評価 は,児童一人一人 に とって学習 に役立ち,教員 自身 もそれ を使用 して授 業 を進 め られ るものでなけれ ばな らない。 これ は,ポー トフォ リオ評価 のね らい とも一致 す るものである(5)。ただ, これ までに報告 されてい るポー トフォ リオ評価 によれ ば,その 採用 にあたっては教員 と児童の十分 な話 し合 いや それ による基準の確立が必要 となる。 し か し,研究 を試み る小学校 に於いてはその準備 が十分ではない。また,学校現場 の教員の 状況 を考 えた とき,教員 にも児童 にも余 り負担 のかか らない方法での追究 が求 め られてい る.そ こで,上述 したね らいや状況 の勘案 の結果,堀氏が提唱 されてい る一枚 ポー トフォ リオ方法での実践研究 を行 うことにした。 この一枚 ポー トフォ リオ評価 は, これ までの評 価活動 の問題点 をもとに,学校現場 での実践研究 を積み重ねて開発 されたものである(6)。
この評価方法 の長所 としては,次の ことが挙 げ られ る。
○学習者 が 自己の学習 の振 り返 りがで きる。
○学習者 に とって学習過程 にお ける 自己の変容 が把握 で きる。
○教員 に とって適切 な児童理解 の資料 となる。
○教授方法 の適正化 が図 ることがで きる。
児童一人一人の理科学習の深化 のためには,学習 の過程で彼 ら自身が どの よ うに考えた か,また,友 だちが どの よ うに考 え行動 したかな どについての振 り返 りが非常 に重要な意 味 を持つ。それ は, 自分 自身の学習履歴 を知 ることにな り, 自己の思考や行動 の様式 を無 意識 の うちに認識 してい くことになる。 この ことによって, 自己の考 え方 の不完全 な部分 や変 えていかなけれ ばな らない点 を具体的 に理解す ることができる。また,友 だちの優秀 な点 を学ぶ とい うことも容易 になる。
自然界 の事象 をどの よ うに捉 え,その仕組 み をどのよ うに推論 してい くか, そしてその
橋本健夫 ・楠本正信 :一枚ポー トフォリオを活用した理科学習 (Ⅰ) 65
推論 を如何 に実証 してい くか とい うことが問われ る理科学習 においては,上で述べた行動 を身 に付 けることは 目標 の達成 にな くてはな らない ものである。一枚 ポー トフォ リオ評価 はそれ を支援す るための要素 を備 えてい る と考 えることがで きる。
一枚ポー トフォ リオの概要
ここで,一枚 ポー トフォ リオの概 要 について述べ ることにす る。
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図1 ‑枚 ポー トフォ リオ (表)
学習過程 で収集す る情報 を最小限にし,そ れ を最大限に活用 しようとす るのが一枚 ポー トフォ リオの考 え方 である。一枚 ポー トフォ リオは次の内容で基本的に構成 されている (6)0
①学習の出発点 としての学習前の知識や考 え
②学習過程 の内容 を示す学習履歴
③学習の到達点 としての学習後の知識や考 え
④学習履歴 をふ り返 り自己の変容 を意識化 す る 自己評価
① の部分 は,図1の左側 の部分で,学習者 が学習の前提 として どの よ うな知識や考 えを 持 ってい るのかを明 らかにす るものである。
定式化 した調査 問題 を用 いた り,キー ワー ド を利用 した文章 を記述す る部分 とな る。
② の部分 は,図1の右側 にある部分で,毎 時間の学習 の情報 を記録す る部分である。
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′‑T3'卜 図2
‑枚 ポー トフォ リオ (秦)66 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46 (2006年)
③ の部分 は,図2の上部であ り,学習前 の知識や考 えを調査 した① と全 く同 じ問いかけ をす る。 こ うす ることで学習前後 を同 じ基準で評価 できるのである。④ の部分 は,図
2
の 下部であ り,学習前 ・後お よび学習履歴全体 を通 して何が得 られ,それ によ り自分が どの 様 に変わったのか,ひいては学ぶ意味 につ ながる変容 について, 自分 は どう思 うのかな ど を 自己評価す る部分である。この一枚 ポー トフォ リオの作成 の留意点 として次の を挙 げることがで きる。
0
1枚 のシー トに学習過程 で得 た情報 が収 まるよ うにす る。○ 必 要最′上限の情報 が構造化 され た形 で得 られ るよ うにす る。
○ 学習前 ・中 ・後 の学習履歴 を通 して学習 の変容 が明確 になるよ うにす る。
○
教師が最 も望 む資質 ・能力 を育成 で きるよ うに問いか けの文 を工夫 をす る。○ 学習の変容 を自覚 で きるよ うに 自己評価 の欄 を必ず設 ける。
○ 利用す る学年段階 に応 じて レイア ウ トを工夫す る。
さらに,一枚 ポー トフォ リオ を活用す る上 で,次の よ うな留意点 もある。
○ 計画的 に利用す る。
○ 記入す る量及 び時間 を最小限 にす る。
○ 学習者 が書いた内容 に可能 な限 り適切 なコメン トを書 く。
○
学習者 が書いた内容 を次 の時 間の授業 の構成 の見直 しに利用す る。本研究 においては これ らの留意点等 を勘案 し,実践研究 を行 う単元の展 開に沿 った形で 問いかけ等 を工夫す るとともにでい るだけ簡潔 な形 にす ることにした。それ は,次のよ う な背景 を考慮 したものである。
○ 教員 に とって一枚 ポー トフォ リオ評価方法 は初 めてであること0
○
児童 にとって一枚 の記入用紙 (ポー トフォ リオ用紙) を,単元 を通 して使用す るの は初 めてであること。○ 記入 され たポー トフォ リオ用紙 を何度 も集 めて点検 し,教員 の把握 してい る児童の 学習状況 との比較 を簡単 に行 う必要があること。
○ 指導改善が即座 にできるよ うに,児童 のつ まず き等が明確 に示 されてい る必要があ ること。
さらに,児童 たちが一枚 ポー トフォ リオ‑の記入 を苦 にしない よ うに,事前 の説明も十 分 に行 うことにした。
一枚ポー トフォ リオ を用 いた実践研 究
本研究 の実践 は, ある公立小学校 で行 った。実践研究概要 は,次の通 りであ る。
○研究対象 クラス :5年生 の1クラス (一枚 ポー トフォ リオでの実践)
5年生 の他 の 2クラス (一枚 ポー トフォ リオ を用い ない実践)
○実 施 時 期 :平成 16年 5月〜 7月
一枚 ポー トフォ リオ を用いての実践研究 は,著者 の一人 である楠本 が5年生 の全 クラス
橋本健夫 ・楠本正信 :一枚 ポー トフォ リオ を活用 した理科学習 (I) 67
(3クラス )の授業 を行 うなかで実施 した。3クラスの 中か ら1クラス を選 び,一枚 ポー トフォ リオ を用 い た学習 を進 め る とともに他 の2クラスでは従来通 りの方法 での学習 を進 めた。 この際, ポー トフォ リオ を用 い る以外 はで きるだ け同 じよ うな内容及 び進 度 を心が けた。 これ は,学習後 の比較 を考 えて の措 置 で あ る。
実践研 究授 業 に用 い た一枚 ポー トフォ リオ は,次 の (1)〜 (3)で成 り立 ってい る。
(1
) 児童 の素朴概念 を調査す る部 分 (変容 の 自覚)<問題
1 >
図の よ うに,棒 を使 って石 を動 かそ うとしてい ます。 あなたが持 ち上 げ る とした ら,棒 の どこを押 します か。 自分 の考 え と一番近 い ところに○ をつ け, なぜ そ こを押す のか理 由 も教 えて くだ さい。
1 Aの ところ 2 Bの ところ 3 Cの ところ 4 その他 ( )
<問題
2>
図の よ うに,水 平 にな るよ うに糸 でつ る した三角形 の板 が あ ります 。 また,板 に書いて い る 目盛 りは,糸 の ところか ら左右 に同 じ距 離 になってい ます 。
今 ,全 く同 じ重 さのお も りが
2
個 あって,片方 を板 の左側 の2
につ るした とします 。板 を水 平 にす るため には, も う一つ のお も りを右側 の どこにつ るせ ば よい です か。ア 1の ところ イ 2の ところ ウ 3の ところ
エ 2よ り少 し 3側 オ 2よ り少 し1側 カ その他 (
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(2)毎時間の学習 を自己評価す る部分
今 日の授業でわか ったことは何ですか ?何ができるようにな りま したか ?
( 彰
この次や ってみたいことは何ですか ?
(3)単元 の学習 をふ り返 る部分
○
「てこのひみつ」で何がわか りま したかoまた, これまでに書いたすべてのものを結果 と考察
a)児童一人一人の 自己評価
毎時間の 自己評価 については, 「教師の意 図 した内容 の達成状況」 と 「次の時間の 目 標」について児童の記述 を元 に分析 した。達成状況 については, 自己評価 の欄 に書かれ
てい る内容 が, あ らか じめ教員 が意図 していた内容 と合致す るか どうかで判 断 した。
同 じ く次 の時間の 目標 については, 「この次や ってみたい ことは何 です か
?」
とい う 欄 に書かれた内容がその後の流れ に適 してい るものについいては◎,流れ は前後す るが,目標 とな りうる内容 は○ として分析 した。その結果 を下記 に示す。
表 1 各時間の 目標達成状況
第1時 第2時 第 3時 第4時 第5.6時 十分達成 ◎ 39 38 39 37 28
おおむね達成 ○ 1 1 1 2 12
(単位 :人)
橋本健夫 ・楠本正信 :一枚 ポー トフォ リオを活用 した理科学習 (Ⅰ) 69
図
3
各 時 間の 目標 達成 状況表2 次時 の 目標 の明確化状況
第
1
時 第2時 第3時 第4時 第5.6時 十分達成◎
19 30 35 29 37おおむね達成
○
19 6 5 60
図 4
次
時 の目標
の明確化 状況各 時 間の 目標達成 につ い ては,表
1
及 び図3
に示す通 り,毎時 間9
割以上 の児童 が教員 の意 図 した内容 と合致 してお り, おおむね児童 の意識 に沿 った学習 の流れ になってい た と 判 断す る こ とが で きる。しか し,教員 の意 図 とは異 な る部分 を記入 した者 が毎 時間数名 お り, その児童 につい て は個別 にか かわ り,児童 の考 え をつ か んだ上 で必 要 な場合 は個別 に指 導 した。
次時 の 目標 の明確 化 につ いて は,表2及 び図4に示す通 り, 目標 を持つ とい うこ とに着 目す る と毎時 間8割 以上 の児童 が次時 にや るべ き こ とをイ メー ジす る こ とがで きてい る。
単元 の流れ に適 してい るか とい う点 では,第1時4割 ,第2時7割 ,第3時8割 と,単元 の学習 が進 む に連れ て流れ と合 致す る割合 が増 えてい る。一枚 ポー トフォ リオ を活用 した 結果 ,児童 に とって は各 時 間の 内容 が一 目瞭然 で あ り,流れ を把握 しなが らふ りか え りが で きたた めで はない か と考 えてい る。
また,教員 が児童 の思 い を知 り,児童 の意識 に沿 った学習 の展 開 に軌道修正 した時間 を 確保 した ことも貢献 したのではないか と考 えてい る。児童 の学習 中の考 え方 を知 る上 で括
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用す るのが一枚 ポー トフォ リオの毎時間の記入 内容 である。その意味では,指導 と評価 の 一体化 を実現す る上 でも有効 な方法 とな りうる と判 断 してい る。
b)児童 の見方や考 え方 の変容及 び変容 の 自覚
児童が各 自の変容 については,獲得 した概念 についての調査 を単元前 と単元終了後 にポー トフォ リオ と同 じ内容 で行い,その結果 を比較す ることによ り判断 した。それ ぞれの問題 の正答者 は表
3
に示す通 りである。表 3 各問題 の正解者 の推移
単元導入時 単元修了時
問題1の正答者数 (名) 29 35
問題2の正答者数 (名) 30 39
正答者 の数 だけでな く解答 した根拠 を細 かに分析 しなけれ ば正確 な判断は難 しいが,義 3に示 されてい るよ うに,両問題共 に明 らかに正答者 が増加 してお り,学習の効果 が見 ら れ ると判 断で きる。 しか し,詳細 な分析 については,今後の実践例 に待 たなけれ ばな らな
い 。
なお, 自己の変容 の 自覚 については,単元 の学習のふ り返 り欄 に記述 した文章か ら判断 した。なお, このふ り返 りについては,一枚 ポー トフォ リオの効果 を見 るために,他 の 2 クラス について も同様 の場 を設定 した。
調査 した 3クラス を比較す ると 「は じめは〜だったけ ど ・・」 とい う文言 を使用す る児 童 の割合 に大 きな差 があった。 この文言は, 自分 自身の考 えを時間の経過 をもとに比較 し てい るのであ り,変容 を自覚 してい る表現 である と判 断 した。 この表現 を用いた各 クラス における児童 の数 を示 したのが表4であ る。
表4 変容 を 自覚 した表現 を用 いた児童数
クラス1
*
クラス 2 クラス3
*一枚 ポー トフォ リオを用いての実践 クラス
表 4に示 され てい るよ うに,一枚 ポー トフォ リオ を使用 したクラスでは,振 り返 りが行 われた と推測 され る表現 を記載 した児童が,他 の クラスに比べて非常 に多 くなってい る。
これ は,一枚 ポー トフォ リオの活用 によ り,学習の一連 の流れ と自己の変容 を同時 に考 え ることがで きた結果 ではないか と考 えてい る。
これ らの ことか ら,次のよ うな一枚 ポー トフォ リオの活用 の効果 と課題 が明 らか になっ た。
A.一枚 ポー トフォ リオ活用 の効果
〇一枚 ポー トフォ リオを活用す ることによ り,児童が毎時間の学習意識 し,次時の 目
橋本健夫 ・楠本 正信 :一枚 ポー トフォ リオ を活 用 した理科学習 (Ⅰ) 71
標 を持つ こ とがで きる。
○単元 の一連 の学習 の流れ を,児童一人一人 が意識す ることがで きるo
B.
新 たな課題○変容 を意識す るこ とと確 かな学力 の育成 との関連
○少人数 なが ら目標 を抱 けない児童や変容 を 自覚 していない児童‑の対応 これ らについては,今後更 に実践研究 を行 って分析す る必 要が ある と考 えてい る。
要 約
指導 と評価 の一体化 は,教育 目標 に向けての児童 の変容 を円滑 に実現 した とい う教員 の 大 きな課題 である。また, これ までの著者 の評価 をふ り返 ってみ ると,教員 に とって必要 な情報 は手 に入れ るが,それは教員 にのみ有効 な情報 になっていた可能性 があ り,児童 と の共有 とい う点か らは疑 問が残 るものであった。従 って,児童が学習活動 の中で 自己の分 析 と判断 によって変容 してい くとい う学習本来 のね らいの達成 とい う観点か ら多 くの反省 があった。そ こで,堀氏が提唱 してい る一枚 ポー トフォ リオの考 え方 を学習過程 に組 み入 れ ることによって これ らの反省点 の改善 を図 り, その活用法等 について追究 した。
その結果,著者 が従来用いてきたチ ェ ック方法 に比べて,児童 の言葉 での変容が具体的 に見 ることができるよ うになった。 また,それ によって次時の支援 の巾を広 げることも可 能 になった。
謝 辞
本研究 を進 めるにあた りご協力 をいただきました長崎大学教育学部附属小学校 前野泰 介先生 に深 く感謝 申し上 げます。
参考 ・引用文献
1)橋本重治 :「新教 育評価法総説」 金子 書房 1976
2)梶 田叡一 ・藤 田恵璽 ・井上 尚美 :「現代教育評価講座」pp.ll‑44 第一法規 1978 3)橋本健夫外 :「理科教 育 一理論 と実践 ‑」pp.163‑175 東京書籍 1991
4)西岡加名恵 :「評価 基準 を ど う具現化す るか」理科 の教育 vol.52 2003
5)安藤輝 次 :「教師用 か ら子 ども用 のポー トフォ リオ‑」初等理科教育 vol,37 2003 6)堀哲夫 :「学びの意味 を育て る理科 の教育評価」東洋館 出版 2004
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資 料
第5学年1組
理 科
学習 案
平成 16年5月24日 (月)
① 単 元 て この はた らき
② 単元 につ い て
○ くぎ抜 き,栓抜 き,爪切 り,ステー プラー な ど,身 の回 りには, て この仕組 みや働 き を利用 した道具 が多 く存在す る。 て こには,支点 ,力 点 ,作用点 の3点 があ り,力 の加 わ る位 置や 大 き さに応 じてて この働 きが変わ るこ とは周知 の通 りで あろ う。 この規則性 は,実験用 て こを用 い る と比較 的容易 に検証す る こ とがで きる。身近 に存在 す る事象 で あ る こ と,実験器具 を用 い て検 証 で きる こ とか ら考 え る と, 「て こ」 の仕組 みや働 きを 学習す る本 単元 は,子供 の追究意欲 を高 め,追究活動 をも とに規則性 を見つ ける学習 に 適 した教材 とい え よ う。
○
子供 は, これ までの学習 を通 して, 自分 の考 え をも とに追究 す る こ とに対 す る関心 を 高 めて きてい る。 また,第5学年 の導入単元 であ る 「植物 の発 芽 と成長 」 の学習 におい て,実験 の際 には条 件 をそ ろえ る こ との大切 さも学 ん で きてい る。一方 ,生活 の 中でて このはた らきを利用 した道具 を活用 した経験 をほ とん どの子供 が もってお り,子供 の実態 か ら判 断 して も,子供 主体 の追究活動 を中心 に学習 が進 む とい
うこ とが可能 で あ る。
○ 子 供 の追究活動 を中心 に学習 が構成 され る とい うこ とは,子供 自身の達成感や成就感 の高 ま りを期待 す る こ とがで きる。子供 が達成感 や成就感 をもっ ことがで きれ ば,学習 意欲 は さらに向上す るで あろ う。 そのため には,子供 に学 習 内容や 自分 の変容 を 自覚す
る場 ,つ ま り効果 的 な評価 の場 が必 要 となって くる。
そ こで,本単元 の学習 においては, 「子供 の追究活動 中心 の学習
」
「効果 的な評価活動」とい う2つ のキー ワー ドをも とに学習 を構成 しよ うと考 えた。 「子供 の追究活 動 中心 の 学習」につ いて は,後述 の学習計画表 に示す よ うに,子供 の意識 の流れ を重 要視 し,チ 供 の疑 問か らめあて をつ くり,子供 の発想 を生 か しなが ら追究 してい くとい う方針 を と る こ とに した。 「効果 的 な評価 活動 」 につ い て は,事前 調査 ,単元 の学習 の足跡 ,学 習 後 のふ り返 りな どが把握 で きるよ うな一枚 ポー トフォ リオ を活用 した評価 を実施 す るこ
とに した。 (別 添 資料 参照) これ に よって学習前 の 自分 の考 え,学習 中, そ して学習後 の 自分 の考 えを子供 自身 が明確 に意識す る こ とに よ り, 自分 の変容 を認識 で きる と考 え る。
授 業仮 説 (教 師のかかわ り)
【仮説1 (本 時)】 「砂袋 を楽 に持 ち上 げよ う」い う活動 を行 うことによって,子供 は力 をかける位置や砂袋 の位置 の変化 と手応 えの変化 に 目を向け, てこのはた らきについて詳 しく調べたい とい う意欲 をもつであろ うo
【仮説
2
(単元全体)】 単元 を通 した一連 の評価 を一枚 ポー トフォ リオ を活用す ることに よって,子供 は 自分の学習の足跡 を意識 し科学的な見方や考 え方 の橋本健夫 ・楠本正信 :一枚ポー トフォ リオを活用 した理科学習 (Ⅰ)
③ 学 習 計 画
◎
て この はた らき ・※ 事前 の評価
そ こを使 って重 い もの を楽 に もちあげ Il l J
73
・全6時 間 (本 時1/ 6)
なぜ ,手 ごた えが違 うの だ ろ う
第2時 支 点 ・力 点 ・作用 点 の位 置 と手 ごた えの 関係 を調 べ る
や は り3つ の点 の どれ を変 えて も手 ごた えが違 うぞ
l ::
どれ ぐらい軽 くな っ 支 点 を も とにま とめ られ るぞ 十 た とい えばいい のか が■ :分 か らない な
バ ラ ンスが とれ た時力 がつ合 ってい るん だ な喜 .
力 の大 き さをお も りの数 で表 せ るぞ
ト ー 」
て この はた らき には, 右 と左 で場所 を変 えて もつ り合 うところが あ : ;きま りが あ るんだ るねて この はた らき を利 用 した ものが 作れ ない か な
※ 事 後 の評価
74 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46 (2006年)
④ 本 時 の学 習
④‑ 1 本 時 の ね らい
砂 袋 を棒 を使 って楽 に持 ち上 げ る とい う活 動 を行 うこ とに よ り,手 の位 置や 袋 の位 置 ,支 え る位 置 が変 わ る と手 ごた えが変 わ るの で は ない か とい う見通 し を持 ち,詳 し
く調 べ て い こ う とす る意 欲 を持 つ 。
④
‑2 展 開過程 子供 の取 り組み
l
教 員 の か か わ り 時間め あ て をも
つ
1 本時のめあてを .一一学習材1 ‑‑‑. ○ 教員の演示 により学習材1を提示す るo/
1105l l
もつo :I : 子供 たちは,砂袋 を持 ち上げた り,道具 l
:.砂 袋 : を要求 した り,様 々な反応 を して くるで
l l
; ; あろ うo この反応 を元に,片手で持つ と
■ ■ かな り重い ことを確認す るo さらに持 ち 上げた感想 を元に「楽に持 ち上げる方法」
を話題 に挙 げ, 本時のめあて
「砂袋 を楽に持 ち上げる方法 を調べ よ う」
を設定す る○
2 棒 を用いて砂袋 .一一 学習材2 ‑‑‑‑.○ 活動 に入 る前に,楽に持 ち上げるため
l l
を持 ち上げる○ :.体育用棒I : の方法 を 自由に発 言 し合 う場 を設 定す
1
こ.支点用木材 : るo子供 たちは,生活経験か ら棒や板 な
l l
■ ‑ どの道具の活用 を述べて くるであろ うo 子供 の発言 を生か し,棒 を与え,それぞ れ の班 で砂 袋 を持 ち上 げ る活動 にはい るo
教員 は,子供たちの活動の様子 を下記 の視点で見守 る
・安全 に活動 しているか
・支点の必要性 に気づいてい るか
・気づ きをメモ しているか
しば らく活動 した後に,支点の必要性 に気づいた子供の意見を紹介 し,学習材 2の支点用 の木材 を提示 し,活用方法を 紹介す る○
支点が明 らかになった ことで力を加 え る場所,砂袋 を下げる場所の位置関係が 強 く意識 され,活動 に深 ま りがでること を期待 したい○教員 は引き続 き子供たち の活動 を見守 り,手応 えの違い等の気づ きを もつた子供 を把握 してお き,後 の活
橋本健夫 ・楠本正信 :一枚 ポー トフォ リオを活用 した理科学習 (Ⅰ) 75
3 結果や気づ きを 発 言 し合 う。
図
4 「て こ」 と3つ
の点 を知 り,今後 .1日 学習材4 ‑‑‑
の学習 に見通 しを :自己評価記録用紙I 持 つ。 :(OnePagePortfTolio)
○
結果や気付 きを発言す る場 を設定 し,
「砂袋 を楽 に持 ち上 げる」活動 をふ り返 . る。
I
: 子供 たちは, 自分 な りの言葉 で結果や l
: 気づ きを意欲的 に述べて くるであろ う。
l
; 教員 は子供 たちの発言 を生か しなが ら板
■ 書 してい くが,次の2点を共通理解 でき るよ うにす る。
・棒 を使 うと楽 に持 ち上 げるこ とがで きること
・楽 に持 ち上が る といって も砂袋 自体 の 重 さは変 わってお らず ,手応 えが変化
してい る とい うこと
○ 砂袋 を楽 に持 ち上 げるために意欲的 に . 活動 した こ とを称賛 しつつ,発 見 した楽 l
: に持 ち上 げ る方法 は 「て こ」の はた らき l
: で あ る こ とを知 らせ る。 「て こ」の3点 l
… であ る力点,支点,作用 点の用語 につい
‑ て も知 らせ ,今後 の学習 で活用 できるよ うにす る。
て この用語指導後,改 めて楽 に持 ち上 が る場合 を学習 した用語 を用い なが ら説 明 し合 う場 をもつ。その 中で子供 たちは,
自分 たちの活動 が1つの条件 に着 目した 活動 ではなかった ことに気づ き,今後 さ らに詳 しく調べ ること‑の意欲 を高めて くるであろ う。
○
自己評価用紙 を配布 し,本時 の学習 を ふ り返 る場 を設 定す る。<関心 ・意欲 >
て この はた らきにつ い て詳 しく調 べ てい こ うとい う思 い を表 現 で きてい る かで判断す る。
A て この3点 に着 目した記 述 が され てい る。
B 調べたい ことを記述 してい る。
C て この3つ の点 の どこを動 かせ ば 手応 え が変化 す るのか につ いて は は っ き りして い ない こ とを再確認 す る。