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九州大学学術情報リポジトリ

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

垂直統合と契約栽培を通した近代化に向けたベトナ ムにおける養豚-豚肉加工バリューチェーンの統治改 革に関する研究

ドン, ダオ, ズン

http://hdl.handle.net/2324/4110565

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 Dong Dao Dung

論 文 名 Governance Reform of Swine-to-Pork Value Chain toward Modernization through Vertical Integration and Contract Farming Scheme in Vietnam(垂直統合と契約栽培を通した近代化に向けたベ トナムにおける養豚-豚肉加工バリューチェーンの統治改革に関する研 究)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 福田 晋 副 査 九州大学 教授 前田幸嗣 副 査 九州大学 准教授 森高正博

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

ベトナムにおける養豚および豚肉製品は、農業・食料産業において重要な役割を果たしているだ けでなく、社会的、経済的にも歴史的な特殊性を持っている。ベトナムにおける現代の養豚から豚 肉加工までをサプライチェーンとしての歴史を俯瞰したとき、契約農業ブーム、飼料産業による養 豚農家までの前方統合、ベトナムの最大企業による「農場からテーブルまで」の垂直統合モデルの 導入、といった段階を経験してきた。これらの動きは豚から豚肉までをつなぐ近代的バリューチェ ーン構築へ向けた最初の萌芽と言えるが、その実態と含意については、研究分野では看過されてき た領域でもある。この実業界の動きと流通研究とのギャップを埋めるべく、本研究では、ベトナム の養豚-豚肉システムにおける垂直調整、垂直統合、および契約農業スキームの形成について分析し、

これらがどのようにバリューチェーンにおける統治機構の近代化を進めたか明らかにしようとする ものである。

本研究では、この課題にアプローチするために、第1に、質的分析によって、近代的バリューチ ェーンにおける垂直的調整、垂直統合、契約農業を詳細に解明した。同時に、契約主体間のマッチ ング、および効用最大化を前提とした農家行動に対する計量分析によって、垂直的調整や契約農業 が拡大するための主要な基盤を明らかにする。具体的には、第2に、ChoiceモデリングとRecursive 二項プロビットモデルを併用することで、農家の行動意向とその実現化の相違を抽出した。サンプ ルとして、複数の異なるバリューチェーンにおける契約農家、および統合されていない非契約農家 ら142戸に対する2013年と2019年の調査データを用いる。第3に、契約農業において、農家から の契約企業選択基準を明らかにするために、平均分散型効用関数の一つである確実性同値額を用い、

農家がこれを最大化する上での複数の選択基準間に対する重みづけをAHP(階層分析法)を用いて 解明した。

質的分析の結果は以下の通りである。豚-豚肉バリューチェーンにおける垂直的調整は主に飼料産 業のいくつかのリーダー的企業、および加工・小売におけるベトナム最大の企業によって、主導さ れている。2018 年までに、8 社が飼料-肥育-食肉加工を通した完全な垂直統合を行い、その内、6 社については、生産者起点での前方統合となっている。こうした垂直統合におけるリーダー企業は、

チャネルメンバー内のパワー関係を通して、調理済み食肉における国内都市部の市場を支配しよう としている。一方で、共同関係による垂直統合モデルや、飼料-肥育段階までの部分的な垂直統合モ

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デルは、資源の限られた私企業にとって合理的な流通戦略として位置付けられ、安全な食品の供給 に必要なチャネルとなっている。

契約設計は多くの垂直統合されたチャネル間で類似しており、契約農家は離乳した3~4kg の子 豚、飼料、薬剤、技術的設備、技術スタッフを提供され、体重100kg以上の出荷段階まで肥育して、

契約企業へ返却する、肥育契約である。農家は、土地の確保、農場経営、労働力の確保を行い、円 滑な経営を行う立場である。事前に決定され農家へ提供される固定支払いは、農家の飼育、移動、

家畜疾病、飼料消化率の向上などの当期の生産のための資金として用いられることとなる。そして、

契約においては、特に、想定外の疾病や戦争等によって家畜に損害が発生した際の、損害のシェア について、特に規定している。また、契約は、破棄条項あるいはモラルハザードのリスクに対応す るためのペナルティが設けられている。以上のように、垂直的調整において、リスク分散を図るツ ールとしての契約農業は、安定した豚肉物流および飼料販売を確保するために活用される。たとえ 契約が完全なリスクシェアリングのツールとなっていなかったとしても、少なくとも、農家を主要 なリスクから保護し、農家の規模拡大を支えるものとなっている。

また、垂直的調整と契約農業の登場によって、子豚から豚肉までのバリューチェーンは以下のよ うなトレンドで変化してきている。1)近代化した豚-豚肉バリューチェーンは 安全な食肉の定 時・定量・定質での供給という伝統的な流通に内在する課題の克服に貢献している。この近代的バ リューチェーンは、都市部市場および国際市場をターゲット市場として、調理済み豚肉、加工肉、

および生鮮・冷蔵豚肉における利益を追求するものである。2)伝統的流通は、動物の健康を維持 し、ローカルマーケットの最終消費者に衛生的食品を供給する農家にとって、伝統的流通は貧困解 消、市場アクセス、および生活向上の手段としての役割を担っている。3)豚および食肉市場にお いては、疾病の拡散についての構造的リスクの存在や、それらと連動する価格の乱高下があるため、

垂直統合された企業間の競争の中で、急速に近代的なバリューチェーンが拡大している。

計量分析の結果は以下の通りである。まず、どの垂直統合における契約農家においても、同水準 の経営規模間で比較すると、独立した養豚農家ではなく、契約農業による統合されたバリューチェ ーンへの参加を選好していることが明らかになった。ただし、現状の契約農家の他に、契約企業は 契約への参加者を探索するために、「経済ショック」後に参入した、若手大規模養豚農家、あるいは 村外から参入した投資家などへ対象を拡大する必要がある。農家側に転じると、契約に対する評価 基準として、第1に農家所得に対するリスクをいかに抑えるか、第2に、大規模飼養を通した単位 当たり粗利益、が重視されていることが明らかとなった。このことは、バリューチェーンのリーダ ー企業は、参加農家に対して、それら2基準を重視した契約設計を行う必要があることを意味する。

ベトナムにおける養豚-豚肉バリューチェーンは近代化の萌芽期にある。食肉の品質水準と安全性の 監督を厳格化するよりも、私企業の参入を促す一般政策の方が合理的であり、契約農業はリスク分 散のツールとして、促進されるべきである。

以上要するに、本論文はベトナムにおいて垂直的統合された養豚-食肉加工バリューチェーンを対 象として、垂直統合、契約農業、垂直的調整の実態を解明すると共に、農家の契約農業に対する意 向・行動、評価を計量的に分析することで、当該バリューチェーン構築の重要な意義がチャネルメ ンバー間のリスクシェアリングにあることを解明したものである。このことは、ベトナムの養豚- 豚肉バリューチェーンの近代化促進にはリスクシェアを実現する契約設計が最重要であるという結 論を導いた。得られた結論は有意義であり、また、それを解明した一連の分析も食料流通学の発展 に寄与する価値ある業績と認められる。よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有す ると認める。

参照

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