九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
社会学におけるハウジングの対象化 : ハウジングを めぐる先行研究レビューを踏まえて
入江, 彩夏
九州大学大学院人間環境学府 : 修士課程
https://doi.org/10.15017/4771886
出版情報:人間科学共生社会学. 9, pp.9-17, 2019-03-20. 九州大学大学院人間環境学研究院 バージョン:
権利関係:
1 はじめに
本稿は、ハウジングを対象とする研究の整理を通じて、なぜ日本の社会学においてハウジン グを対象化する意識が希薄であったのかを検討することを目的とする。社会学におけるハウジ ングへの関心の薄さは、ジム・ケメニー(Kemeny 1992=2014)などによって指摘されており、
日本においても状況は同様である。もちろん、全くの蓄積がないというわけではなく、特に家 族社会学や都市社会学においては議論が展開されているが、日本の社会学においてハウジング を主題とする独立した分野はいまだに存在していない。しかしながら、住宅をめぐる諸要素、
つまり居住者、住宅のある地域や都市、住宅を供給する市場、制度が大きく変容しているなか で、社会学的にハウジングを捉えていく重要性は増していると考えられる。そこで、まずハウ ジングという概念を確認したうえで、ハウジングに関する先行研究を、特に社会学との関連を 重点的にレビューする。これを通して、社会学におけるハウジングの対象化について考察し、
またその重要性について考えていきたい。
社会学におけるハウジングの対象化
―
ハウジングをめぐる先行研究レビューを踏まえて
―入 江 彩 夏
要 旨
本稿では、日本の社会学においてハウジングを対象化する意識が希薄であった原因を検討 することを目指す。そのために、イギリスで生まれた「ハウジング」という概念について整 理し、関連する先行研究をレビューした。次に、日本におけるハウジングに関する研究や住 宅政策を概観し、ハウジングが社会構造の中に深く浸透しているがゆえに不可視化されてき たこと、住宅システムの市場委任により居住者にとってのハウジングの問題が矮小化された ことが、ハウジングが対象化されにくい原因であると指摘する。そのうえで、社会学におい てハウジングを扱うこと、そして、ある地域に定着した住宅で住み続けていく個人としての 居住者を主体としてハウジングを考えていくことの重要性を主張する。
キーワード:ハウジング、住宅、家族社会学
2 ハウジングとは
2.1 ハウジングの端緒とその発展
「ハウジング」という概念は、適当な日本語訳をあてがうことができず、またその学際性から 多様な捉え方がある。その端緒となったのは、19世紀イギリスの産業革命による住宅問題の発 見である。すなわち、急激な工業化に伴い都市の人口が増え、労働者は狭い部屋に密集して住 むなど劣悪な環境で暮らしていた。そうした窮状が作家など様々な立場の人々から告発される と、労働者階級の住宅問題を社会的に対処する必要性が訴えられ、様々な住宅政策、制度が整 備されていった。こうして、住宅問題が発見され、それに対応する形で住宅政策が作られていっ たのである。
その後、1880年代にハウジングという概念が初めて登場する。延藤安弘(1985)によると、
それは労働者階級に限らず、すべての国民に最低水準を満たす住宅を供給するという目標と、
その実現のために公的に責任が負われるべきであるという現代的意味を示していた。つまり、
住宅は低所得者層だけの問題ではなく、また、個人だけに帰される問題でもない。すべての個 人に対して、社会が対応すべき問題であるという認識が共有されたのである。19世紀後半から 20世紀前半にかけて、このハウジングという概念は具体的な政策に落とし込まれながら、欧州 各国にも広がっていった。
イギリスでは、さらにハウジングの概念は関連する領域に拡大していく。その1つに、住宅 供給に合わせてコミュニティも供給していくという、コミュニティ計画が挙げられる。住宅地 のレイアウトや、コモン・スペースの確保、囲い、全体的な景観と周辺環境との調和などが計 画されたうえで、住宅が建設されていくようになった。延藤(1985)によれば、こうした拡大 の動きの背景には、住宅の延長線上にコミュニティ、あるいは都市が構成されているという発 想に基づいている。この発想に基づいて、ハウジングは住宅単体を指すのではなく、それらが 一定数集まっている地域社会や都市についても、その範囲に収めるようになった。
2.2 ハウジングと社会学
こうした都市の発展により発生した住宅問題や、住宅とコミュニティ、都市とを結び付ける 動きはやがて社会学にも広がりを見せ、研究対象としてハウジングが注目されるようになる。
ハウジングと社会学の交わりについては、三浦典子(1991)や高木恒一(2012)、祐成保志
(2014)が整理をしているため、本稿では簡単に確認するにとどめたい。
ハウジングを対象とした社会学の先駆的研究は、シカゴ学派の都市社会学であると言って良 いだろう。バージェスによる同心円モデルは、どのような住宅、居住者がどう分布していたか をモデル化して示したものであったし、ワースもハウジングを社会学において重要なテーマで あると認識し、ハウジングの社会的価値や居住者の社会的地位とハウジングの関連、コミュニ ティ構造とハウジングの関連などを主題として検討してきた。その後、イギリスではレックス
とムーアによってコミュニティ構造とハウジングについてさらなる知見が示された。それが「住 宅階級」論である。「住宅階級」とは、持ち家や借家、公営住宅といった住宅の所有状況を分類 かつ序列化したもので、人々がそれぞれの住宅にアクセスする際には市場や公的なシステムの 影響を受けることを明らかにした。ここにおいて、ハウジングは資源として公的セクターによ り配分されるものとみなされるようになり、その資源配分システムに関心が集まった。「生態学 の視点に立つシカゴ学派とは一線を画するもの」(高木 2012:15)、「住宅という財の観察を通 じて、居住空間の形成に関与する政府の動きをとらえようとしたところに、社会政策の社会学 的分析としての先駆性がある」(祐成 2014:277)として評価されている1)。こうした社会政策 による住宅供給・配分システムが注目された背景には、福祉国家化の進展があり、政策的にも 住宅の供給・配分システムが問題の焦点となっていった。
実証的な研究が盛んになる中で、R. K.マートンは理論的蓄積の必要性を訴えた。マートン
(Merton 1951=2010)は、それまでのハウジングに関する調査や研究があまりに実践的、経験 主義的であることを、ハウジングという実質的な領域に研究上の関心を向ける社会学者が直面 する危険として注意を促しており、「基礎理論志向の経験的研究」(Merton 1951=2010: 142)と 表現されるように、理論に基づいたものとしなければならないと主張した。こうした理論的研 究の蓄積の必要性は改めてケメニー(Kemeny 1992=2014)によっても指摘され、レックスと ムーアによって提起された「住宅階級」論を理論構築への関心を高めたとして評価しているが、
それ以降は理論構築への関心は乏しく、いまだに政策と実証研究に重きが置かれていると言え よう。
3 日本におけるハウジング
3.1 ハウジングの日本での受容
日本においてハウジングという概念を最も早く取り入れてきたのは、おそらく建築学であろ う。1980年代には新しい概念として登場していることが確認できる。当時の住宅に関する問題 がどのようなものであったのかというと、戦後から高度経済成長期にかけての住宅難が一応解 消され、量から質へと問題が転換していた頃であった。また、ライフスタイルの多様化や高齢 化社会への突入、都市化のさらなる進行、住宅生産技術の発展など住宅をめぐる諸要素が変化 していたこともあり、今後の住宅に関する問題は、量的拡充を目標としてきた従来の「『住宅問 題』の枠組概念ではなかなかとらえきれ」(住田ほか 1985:v)ないという認識が広まりつつ あった。そして質的な充実が問題の主軸に置かれると、住宅供給という一時的かつ断片的な問 題にとどまらず、快適に、安心して住み続けるという継続性や、居住者に住宅を対応させてい くという個別性、多様性を考えていく必要があるため、幅広い視点を含んだ概念が新たに必要 となった。それがハウジングという概念であり、このような問題意識のもとで以下のように定 義された。
ハウジングとは住み手が人間的居住に足る、かつ、都市的脈略の中に位置づけられた、
一定の質の住居・環境という空間的側面と、それを社会のあらゆる階層・地域において実 現するための目的と手段という社会的側面、および、住み手が居住しつつ住みよさを付加 し、近隣関係を育てていくという生活的側面を統合した、有機的概念である。(住田ほか 1985:3)
このように、「量から質へ」の転換は、住宅に関する様々な問題にハウジングというより包括 的な視点を提供した。しかしその包括性ゆえに、ケメニーはハウジングを対象としたハウジン グ研究は「焦点を雑多なものとし、関心の寄せ集めにとどまってきた」(Kemeny 1992=2014:
260)と述べている。ハウジング研究は、その様々な側面のなかでどの側面を主要なテーマとし て設定するのかによってその様相は大きく変化する。そのため、全体像をつかむことが難しく なってしまうのである。こうした問題は、欧米に限らず日本でも共通していると考えられる。
それは、住宅を対象とした研究が建築学や都市計画学、経済学といった複数の分野において蓄 積されてきたことが示唆している。こうした分野は、その主題が供給側を起点としたものに偏っ てきたため、ハウジングという概念は居住者側の視点も含みこむことが強調されている。
3.2 住宅政策の特徴―持ち家至上主義と市場原理への傾倒
さて、実際の日本の住宅政策に目を向けると、持ち家取得支援に主眼が置かれていることが 特徴の1つとして挙げられる。一方で公共セクターによる直接的な介入はあまりなく、限定的 である。こうした持ち家志向の形成には、3つの要素が影響を与えていると考えられる。1つ は、住宅が支出額の大きい財であることだ。よって、経済政策として持ち家取得を促進する住 宅政策が打ち出された。もう1つは、持ち家が長期にわたって経済的安定をもたらすというこ とである。平山洋介(2009)によると、持ち家取得の促進は、住宅を私的領域内において対処 させて社会保障の一部を代替させることに繋がった。つまり、住宅を取得することは生活を保 障する基盤、あるいは財産を高齢期までに獲得することを意味し、高齢期の経済的安定に寄与 することで、国にとっては、社会保障が節約できるという意図があった。最後に、公営住宅の 位置づけである。持ち家取得が奨励されるようになると、公営住宅はあくまでも持ち家取得の ための踏み台として位置づけられ、十分に整備されず、低所得者層の選択肢が狭まってしまっ た。場合によっては、公営住宅のスティグマ化もつながっていった。こうして持ち家を建てる 人々と低所得者層向け公営住宅に住む人々の階層分化が進み、さらに人々の持ち家志向を促進 していった。
また、その他の特徴として重要なのが、1990年代半ばから始まった住宅システムの市場重視 である。市場経済と政府などによる規制緩和を重視する新自由主義の政策転換のなかで、住宅 政策においても市場機能が活用された。住宅の私有財産性を根拠に、各世帯は自助努力によっ て住宅を取得することが原則となった。これに対応した制度も整備され、新自由主義が失速し
たのちも維持されている。こうして住宅は個人の問題に縮小されてしまった。
3.3 ハウジングと家族社会学
主に建築学などで議論されてきたハウジングを、社会学の領域で扱っていた数少ない分野の 1つが家族社会学である。家族社会学においては、住宅とそこに住む人々、家族との相互的な 影響について議論が展開されてきた。ハウジングを扱うようになったのは、やはり家族とハウ ジングの結びつきが強く、相互に関連しているからであろう。
その変遷を追っていくとまず、家族周期論2)と住宅との関連が注目されるようになった。森 岡清美(1973)は、家族周期の進展と住宅の広さの関連について実証研究を行っており、家族 制度(夫婦家族制あるいは拡大家族制など)、実際の家族形態、住宅の形態の3つは相互的かつ 循環的に影響し合っていることを示した。
高度経済成長期に入ると、都市的生活様式が浸透して職住分離が一般的となり、住宅内では 性別役割分業規範によって女性が再生産活動全般を担うようになった。こうして女性が私的領 域に閉じ込められた弊害を、矢澤澄子(1996)は2つ挙げている。1つは、妻である女性が夫 の所有する住宅と経済的・空間的に同一視されて、家事という無償労働が不可視化されたこと であり、もう1つは女性を私的領域の中心的存在である「主婦」として扱うことが自明視され たことである。こうして職住分離が性別役割分業規範を一般的なものとしたなかで、矢澤は住 宅の間取り、つまり当時定着しつつあったnLDK設計についても性別役割分業規範を慣習化さ せる設計であるとして批判的に捉えている。また、nLDK設計のnは家族の成員数より1少な い数が代入され、夫婦の寝室と子供の個室が存在することになる。それについて、上野千鶴子
(2002)は夫婦が同じ寝室を利用することが前提になっており、nLDK設計は夫婦の性愛を家族 の中心と規定するものであると指摘する。つまり、nLDK設計が近代家族規範とも密接な関係 を持っていることを示唆した。
1980年代後半から、家族社会学では家族変動論が活発に議論されるようになり、世帯員の減 少など現代の家族形態が多様化している局面にあることが確認された。目黒依子(1987)はこ うした変化を家族の個人化と称した。これ踏まえて、新たな家族形態に対応する住宅の必要性 が主張されるようになった。これは脱nLDK論と呼ばれ、近代家族規範と結びついているnLDK 設計と実際の家族形態のずれを埋めることが中心的な主張である。しかし、この脱nLDK論に は様々な批判が寄せられ、それらを整理した山本理奈(2014)によると、nLDK設計が導入さ れたのは人々の住まい方の実態を踏まえた結果であるから、近代家族規範が間取りとして具現 化され、それが家族形態を誘導するという解釈は成立せず、家族形態の変化によって間取りが 変化していくなかでnLDK設計が生み出され、流通したと考えるべきであるという。そもそも、
近代家族規範はあくまで理論的な仮定であり、それをnLDK設計という経験的指標に見出すこ とはできないとも批判している。
網羅的とは言い難いが、家族社会学におけるハウジングの議論を概観すると、住宅やその間
取りと家族形態とがおおよそ対応しているという前提が一貫して存在しているように思われる。
しかし、家族周期論のような一定の増減パターンはもはや標準ではなく、家族形態が変化して きているのだから、それと住宅の間取りを関連させて考えることは難しくなっていくだろう。
また世帯と家族が指し示す範囲は異なっている場合もあり、例えば近居家族の有無によっては、
同じ世帯構成でも住宅の間取りなどに差異が生じる可能性がある。さらに言えば、結婚による 家族形成と住宅所有をセットとすることも、もはや当然ではなくなってきた。未婚率が上昇し ており、パラサイトシングルのように自身で住宅を所有するのではなく、実家に住み続けたり する場合も考えられる。このように考えると、1980年代後半からとりあげられるようになった 家族社会学におけるパラダイムシフトによって、家族を出発点として社会学的にハウジングを 考えていくことは難しくなったと言えるのではないだろうか。
3.4 ハウジング研究と住宅政策から見るハウジングの対象化
日本におけるハウジング研究と住宅政策の展開を確認すると、社会学においてハウジングが 対象化されにくい原因が見えてくる。
まず、ハウジングという概念が持つ包括性、多面性が原因の1つと考えられる。すなわち、
ハウジングという概念はその範囲が広く、また社会構造の中に浸透しているため、個人や世帯、
地域といった既存の枠組みひとつだけでは対処できないのである。すると、ハウジングを正面 から捉えるのではなく、他の既存の枠組みから捉えていくようになり、ハウジングは不可視化 される。こうした状況を、ケメニー(Kemeny 1992=2014)はグラノヴェッターを引用しながら ハウジングが社会に埋め込まれていると表現している。また、祐成(2008)も、ハウジングが これまで背景でしかなかったと指摘し、その原因を「個人(主体)/集団(組織)/地域(コ ミュニティ)といった枠組みに収まりきらない性質を持つこと」(祐成 2008:2)であると指 摘している。
加えて、住宅システムの市場化による居住者への影響も原因となっているだろう。住宅シス テムの市場委任は、住宅は市場で獲得するものとなり、居住者は消費者と見なされるようになっ たことを意味する。消費者である居住者にとっては、住宅取得が自助努力によって達成される べきものとなったこともあり、ハウジングの問題は個人的なものであり、購入することそのも のに限定されてしまった。住宅を購入するという行為は、一個人の問題でありながらその背景 には社会が存在しているはずだが、市場においてはそのことが覆い隠されてしまう。さらに、
その住宅に住み続けていくという時間の経過を見据えられていないため、世帯のライフステー ジの進行や地域との関連なども等閑視されてきた。つまり、消費者である居住者にとってハウ ジングの問題は「住むこと」ではなく、「買うこと」が重要な問題になったのである。このよう に、様々な視点を含み、住宅に関する問題をより包括的に捉えていく必要性から生まれたハウ ジングという概念は、住宅に関する制度の中で居住者にとっては一部に限定されてしまったの である。その一部とは住宅購入であり、これは経済学において説明されるようになっている。
そこには居住者ではなく、消費者のみが存在するため、社会学が介在する余地があまりなかっ た。
留意したいのは、ハウジングが対象化されにくいからと言ってそれ自体が社会学にとって不 要なものであるという認識に立ってはならないということである。先に述べたように、ハウジ ングは社会構造の中に埋め込まれており、個人のライフスタイルから、世帯の消費パターン、
コミュニティ、都市形態、福祉に至るまで広範囲に様々な影響を与える。だからこそ、社会学 においてハウジングという概念が寄与するところは大きいと指摘されている。例えば三浦(1991)
が、ハウジングは居住者と階層構造及び地域構造を連絡する社会構造の中核に位置し、重要な 社会学的研究領域を構成していると述べている。その一方で、社会学的にハウジングを捉える ということは、今まで見落とされがちであった居住者に視点を置くことであるため、ハウジン グを考えるうえで社会学は必要になってくると考えられる。
4 終わりに―ハウジングの社会学の模索
4.1 社会学においてハウジングを対象化するために
社会学的にハウジングを捉えていくには、これまで対象化されにくかった原因を意識しなけ ればならない。つまり、ハウジングを可視化し、焦点化させる試みが必要であり、様々な形で 行われているが、居住者を主体化する、居住者の視点を意識するという作業はその近道になる のかもしれない。ただし、その際の居住者というのは、家族でもなく、住宅を購入する消費者 でもない、ある地域に定着した住宅で住み続けていく個人として捉えていくべきである。平井 太郎(2012)も既存の社会学の領域設定を超えた、「住むこと」を切り口としたアプローチの必 要性を論じている。
居住者を主体としていくならば、居住者にとってのハウジングをめぐる問題が拡張されてい くだろう。それは、住宅の間取りや購入時の支出を考えるだけではなく、居住者自身の生活や 地域とのかかわりについて向き合うことにつながる。また、住み続ける中で物理的空間である 住宅とは対照的に、居住者自身は変化していく。そのずれにどう対応していくかを考えるなど、
長期的な視点でハウジングを考えるようになるだろう。
4.2 ハウジングに関する社会学が提示する課題
最後に、社会学においてハウジングが対象化されたとき、浮上してくる課題についていくつ か示していきたい。
1つには、高齢者、障害者、女性、単身者を世帯主とする世帯が直面する問題である。こう した属性を持つ人々が、住宅市場や住宅政策、さらにそれに関連する政策の中で不利な状況に 置かれ、住宅の貧困に陥っていることが泉原美佐(2005)によって指摘されている。また、病 院や施設から在宅福祉という高齢者福祉政策の転換や、高齢化、長寿化などによる長い老後を
考える必要性から、高齢期のハウジングに対する関心が高まっている。それは、ハウジングが 高齢者の生活を安定させる基盤として重要な役割を果たしているからであり、また、住宅とい う物理的空間のみならず、地域とのかかわりや居住者自身の状況など総合的に考える必要があ るからである。
そして、ハウジングに関する社会学の範疇は曖昧であり、従来の都市社会学や家族社会学、
あるいは文化社会学などにまたがって存在しているため、本稿の先行研究は言及されていない 部分も多く、不十分であろう。どのようなことが問題となり、どのような視点、方法論で、ど のようなことが明らかになったのかについては、これからも追記していかなければならない。
注
1)その後、住宅所有状況を階級として分類する際に共通の尺度が存在するか否か、また、現 在の住宅所有状況とその人がアクセス可能な住宅所有状況が一致しない場合があるなど欠 陥点が指摘されたため、「住宅階級」論は事実上撤回された。この議論を批判的に捉え直し たのがM.カステルであり、戦後日本でも竹中英紀(竹中・倉沢 1989)らや西澤晃彦(西 澤・高橋 1990)らによって再定義されつつ継承されている。
2)家族周期とは、家族が結婚によって形成され、新婚期、育児期、教育期、子どもの独立期、
子ども独立後の夫婦期、老後期などの諸段階を経て、夫婦の死亡によって消滅する過程を 指す。
文 献
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