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エンド・ツー・エンドの面的 エンド・ツー・エンドの面的

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第6章 デジタル放送における地域放送産業のネットワークシェアリング に関する効率性の分析

1. 本章の目的 

地方局の場合、県庁所在地近郊の親局(送信局)から電波が発射されるが、平均する と県内の 70%の家庭にしか届かない。県内全体に電波を行き渡らせるため、親局でカ バーできない地域のために中継局と呼ばれる中型局、サテライト局と呼ばれる小規模 局を遂次整備する。アナログ放送の場合、民間テレビ放送局だけで約 8,000 に近い送 信中継局が全国に作られているため、国民は誰でもどこでも地上テレビ放送を視聴す ることができている。しかし、デジタル化には絶えず、その設備投資負担金額の大き さから、過疎地域に対する中継局の設置が行なわれず、衛星や CATV のような他の伝送 路にサービスを委ねる可能性が指摘され、過疎地域では地上放送を視聴できない恐れ がある。果たして過疎地域の住民が都市部の住民に比して弱者であるかという疑問は 残るものの、ナショナルミニマム概念を適用して、市場メカニズムに任せておけばデ ジタル放送へのアクセスが困難になる弱者に対して、社会的に最低限の水準を保証す る目的で公的資金を求める声が放送業界から出てきている。ナショナルミニマムは、

ある一定の生活水準を全国民に保証すべきという考え方であり、国民が適当と考える ナショナルミニマムの水準を自力で達成できるだけの能力と所得を有さない人々だけ が分配の修正を受ける対象になる。中条潮/秋山哲男[1995]は「過疎地域の人々が都市 部の人々に比べて弱者であるという根拠は薄弱である。過疎地域に住みたくないなら 移転の自由も存在する」と指摘しており、地上放送は最低水準を確保する衛星放送や CATV と代替可能であるため、最低限の水準のみを確保すれば良いナショナルミニマム 概念の対象とはならない。 

一方で、ユニバーサルサービス概念から全国に地上放送のデジタル化を求める声も 根強い。ユニバーサルサービス概念は電気通信分野で生まれたものであるが、公益事 業が提供するサービスの重要な要素となっており、具体的には、どこでもかつ公平に サービスを受けられる、サービスの品質が一定であることを特徴としている1。アナロ グ放送については、視聴できるチャンネル数は地域によって異なるが、まったく視聴 することができない地域は地形上かなり特殊な地域に限定されており、ユニバーサル サービスがほぼ達成されていると言える。しかし、デジタル化によって、中継局整備 の遅れにより難視聴エリアが出現、過疎地域の住民などある範囲の視聴者の TV 視聴が 困難になる事態が起こりかねない。地上波 TV は国民に娯楽や教養等を提供する重要な 文化的インフラの一つとなっているため、アナログ放送終了によってデジタル放送を 視聴できないデジタル難視聴地域が発生し、ユニバーサルサービスが維持できなくな る事態の対策を検討しておく必要がある。デジタル難民が生まれないよう、ユニバー

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サルサービスと呼ぶに相応しい対応を行なう必要である。 

本章では、わが国の放送事業に関して第 4 章で規模の経済性の存在が確認されたこ と、第 5 章で垂直統合の経済性の存在が見出されなかったことを前提として、公的資 金を求めない放送産業の自助努力策として、垂直分離した伝送機能において規模の経 済性を追求するネットワークシェアリングを提案する。ネットワークシェアリングの 基本的概念は Bjorkdahl & Bohlin [2001]によるが、伝送機能を分離した上で設備を 共有化する形態である。伝送は共同施設という形でライバル関係にある放送局同士が 共同運用を委託しながらも、番組制作においては激しい競争を行なうという形態であ る。また、派生的な考え方として、「セントラルキャスティング」「データ放送共同セ ンター」を紹介する。 

2. ネットワークシェアリング提案 

OECD[2002]は、垂直分離の不利益が発生する理由として「投資リスクの上昇、ホー ルドアップ問題の発生」を挙げ、「取引相手が自社と継続的に取引することがわかって いなければ、企業は関係特殊的なサンク(埋没)する投資を行なうインセンティブを持 たなくなるという問題」を指摘した。放送事業におけるデジタル投資のような巨額の 投資の場合、いったん投資がなされると、取引企業(この場合は番組制作企業)と不 利な価格交渉になるのではないかという懸念が生まれ、投資インセンティブが減少し てしまうのではないかという懸念につながる2。堀内[2000]は、サンクコストの大きさ を左右する要因として、①中古品市場の整備(中古品市場が存在できない場合には、サ ンクコストは大きくなる)、②その設備の他の用途への転用可能性(他に転用できない サンクコストは軽減できない)、③設備に資金を長期的に投下する必要がなく、設備自 体をレンタルで調達すれば、撤退に際して未回収の費用が発生する可能性を最初から 排除できる、の 3 点を挙げている。放送局の伝送機能に関わる主要な設備である送信 機、アンテナ等は、政府より割り当てられた周波数やサービスするエリアの地形によ って仕様が異なるため、予めこれらの条件に基づいてメーカー側で製造されている。

このため、これら設備については他局への転用が困難であり、中古品市場も成立して いない(放送機器の中でも、番組制作に関わるカメラや VTR には中古品市場が存在す る)。また無線周波数という希少な資源によりライセンスを得ているため、伝送設備を レンタルで調達しているケースは見られない 

一般に、インフラセクターの一部は自然独占の特質をしばしば示す。長距離電力送 電線や鉄道幹線などのネットワークを拡充する場合、必要となる追加コストがもたら される利益に見合わないことがある。垂直統合の経済性について、電力中央研究所が 発電部門と送配電部門を分離した場合、電力会社平均で 9%程度費用が増加すると試

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算した研究がある。これは、電源計画と送電計画が協調して行われないと、電源増設 に関する流通設備の追加コストが膨らむことに起因すると考えられ、こうした追加コ ストに加え、発送電を分離し独立組織化した場合には、その創設費用もかかると指摘 している。奥野・鈴村・南部[1993]は、「電気通信をはじめ、電気、ガス、水道、鉄道 など公共性を有しているがゆえにユニバーサルサービスを必要とするような財・サー ビスに関しては、たとえマイナスの限界収入であっても規制当局から生産するように 指導される場合がありうる」と指摘する。このようなネットワークのコストの大半額 は一度投資してしまうと回収不能となるため、その投資によって競争力のある水準の 利益を稼ぐことが保証されない限り、投資インセンティブが減退する恐れがある。 

本論文では、垂直分離した上で伝送設備を共有化する「ネットワークシェアリング」

(基本的概念は Bjorkdahl & Bohlin [2001]による)を提案する。公益事業の構造分 離は下表にまとめることができるが、ネットワークシェアリングは、異なるネットワ ーク事業が融合する合体型の構造分離である「ネットワークの融合化」に該当する。 

 

図表‑17:公益事業の構造分離とネットワークの分類 

名称 態様  目的  機能  役割 

競争の導入・促 進 

競争的・非競争敵領域 の分離 

公正競争の基 盤の確立  上下分離 

上部機構(オペ レーション、輸 送)と下部機構

(インフラスト ラクチャー、通 路)の分離 

一方の組織の民 営化の促進、企 業内部効率の確

保 

一方の組織の財務負 担の軽減化、経営財務

の安定化に寄与する 

建設費、維持・

管理費の負担 を軽減する 

垂直分離 

生産過程の所有 分離による垂直 的補完関係 

競争の導入・促 進、オープンア

クセス 

競争的・非競争敵領域 の分離 

イコールフッ ティング、公正

競争の確保  ネットワー

クの融合化 

伝送路の転用、

共同利用 

ネットワーク施

設の有効活用  ネットワークの転用  既存伝送路の 有効利用 

(出典)堀[2003]62p.を参考にして作成   

今井[1987]は、「経済競争においては、相争うチェーンないしネットワークが全ての 面で争う必要はないのであって、共同化できることは共同ないし、協力し合っても差 し支えない。ネットワーク化の通信回線は共同で持つが、そこに流す情報では激しく 競争するという具合である」と述べている。この今井の記述はデジタル時代の地方局

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の進むべき方向を示しているように思える。伝送は共同施設という形でライバル関係 にある放送局同士が共同運用を委託しながらも、番組制作においては激しい競争を行 なうという形態である。 

伝送路は、規模の経済を生かすため、例えば、地上波放送で完全に分離された伝送 路が確立され安定した伝送サービス放送局に提供することができれば、フランスの TDF(フランス送信公社)のようにひとつに統合することも可能である。もちろん共用イ ンフラとして全てのコンテンツ制作・編成者が同一条件で利用できるようにしておく 条件が前提である。一方、ネットワークシェアリングにより、伝送が独占されボトル ネックとなる危険性は低い。電力、ガス、水道、電気通信などの地域独占公益系ネッ トワークの場合、消費者とのネットワークインフラ(配電網、配管、回線等)がボトル ネック性を有するため、公益事業者は独占地位を確立することが可能であるが、地上 放送局にとっての末端ネットワークは周波数であり、事実上のボトルネックたり得な い(多賀谷[2000]を参考)。また、電力、ガス、水道等の公益事業が提供するサービス は、ひとびとの生活に不可欠であり、かつ他の媒体による代替が不可能か非常に困難 なサービスであるのに対し、放送局が提供するサービスの必需性はそれら事業より低 く、視聴者は衛星、CATV など他の選択肢が魅力的なサービスを提供するようになれば 容易に利用先を代替する可能性がある。 

わが国の放送設備に関するコストは、電気、通信、ガス等他の事業分野と比べると安 価なものであり、また、設備の保守管理に必要な人員の数も限定されている。同様に ボトルネック(bottleneck)的な設備を保有している NTT においては、通信の交換機と いう巨額のコストと保守体制が必要な設備を抱えているのに対し、地方放送局におい ては、スポット CM 等の差換え等は手作業で行なうという前近代的な体制も見られる。

こうした設備コストを低く抑え、利益率を高くするという民間放送局の従来からの姿 勢は、デジタル化によって改変を迫られている。デジタル放送システムの建設費や運 営費の大半が固定費であり、限界費用は極めて少ない。したがって、数局の放送局で 競争するより、1 社の放送システムで独占的に伝送する方が、費用がはるかに安くな り、放送産業の伝送部門は経済的に自然独占の特性を有している。  

ネットワークシェアリングに参加する企業を追加的に 1 局増やす(1 チャンネル増 加する)ことの費用(限界費用)は小さく、規模の経済性が存在すると考えられる。

放送局はチャンネル数を増やせば増やすほど、より低い費用で、放送サービスを提供 できる(奥野、篠原、金本[1989]を参考)。ネットワークシェアリングに参加する事業 者の数をqとした場合、地上波放送局の場合、周波数割当の問題からqは有限である。

現在、わが国で地上波テレビを制度上最も多く見ることのできる地域は東京、埼玉等 で、民放 5 系列、NHK(総合,教育)、独立 U 局であり、最大限で 7 である。一方、制度 上最も少ないのは徳島、佐賀の 2 局、次いで山梨、高知の 3 局である。均衡点におけ

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るq(=qE)が 7 を上回る場合、現状では均衡点qEは存在しない事になる。民間キー 局試算によれば、qEを 4 局とすることが、最も効果的であるとの結論が得られている。

但し、民放に限定した場合、qが均衡点qEを大きく下回り、ネットワークシェアリン グ効果が薄れるため、NHK を加えたシェアリングを検討する必要がある。 

日本では電波の送信を各放送局が別々に行なっていること(q=1)が多い。例えば、

近畿広域圏は大阪と奈良との県境にある生駒山に各放送局の送信所があるが、テレビ 局毎に別々に建っている。名古屋地区については、アナログ放送は栄 180 メートルタ ワーから VHF5 波、東山 162 メートルタワーから UHF2 波が発射され分割されているが、

デジタル放送は、愛知県瀬戸市に 240 メートルタワーが新設され、ここから NHK2 波、

民放 5 波の計 UHF7 波(q=6)を送信出力 3kW でサービスすることになった3。 

海外でも、タイの地上放送局はバンコクのキー局としてバンコク・エンターテイメ ント社(Ch.3)、陸軍(Ch.5)、BBTV 社(Ch.7)、タイ・マスコミ公社(Ch.9)、首相府広報 局(Ch.11)、UHF 局の iTV の 6 局が存在する4が、放送局毎に独立して異なる場所にタワ ーを保有している(q=1)ため、視聴者がどの方角に受信アンテナを向ければ良いか迷 う弊害が起きている5。中国でも、南京では江蘇省電視台と南京市電視台、広州では広 東省電視台と広州市電視台でタワーが分離されており(q=1)、同様の問題がある6。 局同士の連携がとれておらず、規模の経済が発揮されていないため、視聴者に不便を もたらしているケースである。 

ユニバーサルサービスに類似した概念として、欧米で良く用いられる「公共サービ ス義務」(Public Service Obligation:PSO)という考え方がある。鉄道のローカル線 や過疎地のバス、あるいは離島の船舶や航空路線など地域交通の維持を図るために導 入された概念であり、現実の地域間格差を是正し、国民生活の実質的な公平性の実現 を確保するために必要とされるサービスのことである。したがって、公共サービス義 務とは地域あるいは路線を限定した広義のユニバーサルサービスと言える(石井 [1997])7。デジタル放送にあって、過疎地域や山間部における「公共サービス」の提 供を実現するためには、電波出力が小さい中継局を 8,000 ヶ所設置する際に、その大 部分を共同して建設する必要がある。現在のアナログ放送における中継局は 48 年かけ て全国に行き渡らせたものであるが、これをサイマル放送終了時点の 2011 年までの 8 年間で完了するためには費用の節減策としてだけでなく、建設期間の短縮という観点 からも求められる。実際、NHK も「無駄を省くためにもできるだけ民放と協力したい」

として前向きであり、民放各社との共同建設に乗り出している8。 

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3. ネットワークシェアリング効果 

  ネットワークシェアリングとは、具体的には、アンテナ、送信機、主調整室、中継 局などの各設備について、共同建設・運用する考え方である。放送設備には、これら ネットワークシェアリング対象機器以外に局内放送設備があるが、表現・言論の自由 に立脚する番組制作・編集事業への規制を最小限に留めるためには、設備に対しても 独立性を保つ必要があり、ネットワークシェアリングに適さない。一方、サービス地 域が重複する放送局が1ヶ所の送出設備、送信設備、中継設備などについては、同一・

類似の機能を持つ設備に対する投資の重複でサンクコストが上昇することによって 個々の設備が有効に利用されずに、効率が悪化する懸念がある。これら設備について はネットワークシェアリングすることにより、重複投資を回避しながら設備利用の効 率性が高くなる。 

実際に各項目について、平均的な地方局のケース(45 億円投資)を用いて、ネット ワークシェアリングによる投資費用節約効果額を試算する。データは、NHK、日本テレ ビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京のメンバーから成るデジタル設備検討 委員会がメーカー5 社(NEC、東芝、日立、JRC、三菱)に問い合わせを行い、各社想定 した費用の平均を取った9。また、一部データとして不足箇所は、筆者が機器原価ベー スの比率に基づき補足した。 

 

アンテナ10 

同一アンテナ(共用アンテナ)を用いるため、使用周波数の異なる送信機からの信号 をアンテナ共用器(チャンネル合成器)で合成する11。但し、チャンネル数増により給電 線(フィーダー)径が大きくなり、その価格が割増しとなる。合計額を 1 局単独、2 局 共同、4 局共同で試算、最下欄に 1 局当りを示した。   

 

図表‑18:アンテナシステムのネットワークシェアリング効果 

(単位:百万円) 1局単独 2局共同 4局共同  鉄塔(タワー)12  既設流用 同左 同左  空中線(アンテナ) 400 400 400  給電線(フィーダー) 100 110 140 

合計  500 510 540 

1局当り  500 255 135 

 

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送信機 

 アンテナを通じて電波を発射する送信機は、送信出力により設備投資額が異なる。こ こでは、県庁所在地など親局エリア(人口密集地域、経済活発地域)に使われる 3kW 送 信出力の場合を想定した13。 

図表‑19:送信システムのネットワークシェアリング効果 

(単位:百万円)  1局単独 2局共同 4局共同  3kW 送 信 出 力 現 用 / 予 備

方式 

(電源UPS、周辺機器込)

600 1,050 1,760 

工事費  100 140 200 

合計  700 1,190 1,960 

1局当り  700 595 490 

 

主調整室14 

 ドラマスタジオやニューススタジオ及び屋外中継(中継車)からの信号を受け、送信所 にマイクロ波で送出するスタジオ側の最終段階に位置するのが、主調整室(マスターコ ントロールルーム)である。番組編集や CM 挿入等の機能を除いて、この部分の共有も 技術的に可能である15。  

図表‑20:主調整室システムのネットワークシェアリング効果 

(単位:百万円) 1局単独 2局共同 4局共同  主調整室  1,000 1,700 2,800  CAS16  400 680 1,120  データ放送  300 510 840  合計  1,700 2,890 4,760  1局当り  1,700 1,445 1,190 

CAS(Conditional Access System):特定の視聴者が受信できるよう に制御するシス テム。有料放送であればスクランブルをかけたり、解除したり、またオンラインショ ッピング等では顧客を認識するために利用する。 

  中継局 

親局からの電波を受けて中継し、遠隔地や難視聴地域に別の周波数に置換して放送 するのが中継局である。中継局については、NHK と民放を合わせて 1 万局を超える設 備が予想されるため、ネットワークシェアリングにより大幅な効果が期待できる。中 継局設備は、親局設備に比べ送信出力は小さいが、数 10mW クラスの微小電力局から数

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10W クラスの中継局まで、多様なバリエーションが要求される。下表に 1 社単独の場 合を 100 とした時の、ネットワークシェアリング採用時のコストを示す。10W 装置で 8 社共同した場合、1 社単独の約 5 割のコスト(1 局当り)となり、100W 装置の場合は約 7 割のコスト(1 局当り)となる 

図表‑21:テレビ中継局システムのネットワークシェアリング効果                (単位:%) 

  1W  3W  10W 20W 30W 50W 100W  1社単独  100  100 100 100 100 100 100  2社共同  69  69  74  76  76  77  86  3社共同  56  56  74  76  58  75  81  4社共同  49  49  63  63  58  73  81  5社共同  46  49  60  59  51  68  75  6社共同  43  46  57  56  56  66  74  7社共同  42  47  55  54  51  65  70  8社共同  41  45  52  54  50  61  68 

(注)SFN(Single Frequency Network)の場合で計算している。 

 

以上をまとめると、次表に示す通り、親局用送信機、中継局、STL/TTL(自営無線回 線)、リモコン・監視、アンテナ、電波塔、局舎、電源、主調整室、CAS、データ放送 など各設備、工事・設備の保守管理について、共同建設・運用を基本にした「ネット ワークシェアリング」によって、2 局共有で 17%、4 局共有で 32%節減することが可 能となる。また、制御・監視装置についても共通化すれば、メンテナンスも 1 社(1 ケ 所)で可能になり、運用保守費用(ランニングコスト)の効率化が図れる。 

図表‑22:ネットワークシェアリングによるデジタル設備費用節減        (単位:百万円) 

項目  内容  1局独立 2局共有  4局共有 

1  アンテナ  500 255  135 

2  親局用送信機  700 595  490 

3  主調整室、CAS*、データ放送  1,700 1,445  1,190  4  中継局  1,200 1,020  840  5  制作スタジオ、CMバンク  400 400  400    合計(1〜4)  4,500 3,715  3,055    1局独立ケースからの価格低減%  17%  32% 

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ネットワークシェアリングによって、2 局共有で 17%、4 局共有で 32%節減するこ とが可能となる。また、制御・監視装置についても共通化すれば、メンテナンスも 1 社で可能になり、運用保守費用(ランニングコスト)の効率化が図れることが分かる。

上記項目の 1,2,4 についての総投資額の節減が 2,000 億円になるという試算もある17。  上記データを基に、4 局共有の場合 45 億円の投資額が 30 億円に 32%低減可能となる との前提で、金融機関からの借入れによる投資、放送設備の実耐用年数 15 年間とした 場合、どれくらいの費用節減効果が得られるかシミレーションしたのが次項にある分 析である(法定耐用年数 6 年以内の 5 年均等元本返済を想定、他に利息と固定資産税 を見込んでいる)。各局がネットワークシェアリングを用いず独自に個別投資する場合 とネットワークシェアリングする場合について、放送局からの資金流出累積額を比較 した。なお、4 局共有としたのは、民間キー局試算により、4 局でネットワークシェア リングすることが、最も効果的であるとの結論が得られているからである。5 局以上 になると逆に運用上追加設備が必要となり、2〜3 局であると効果は小さくなる。 

上記のような実際にコストを用いた予測は産業構造を検討する上で重要である。ネ ットワーク産業を取り巻く環境は大きく変化しており急速にイノベーションが進んで いる。たとえば、電力産業において、従来は、より大規模の発電所を建築することが 有利とされてきたが、近年、複合サイクル発電技術(Combined‑cycle generating  technology)による電力発電の導入により、電力発電が自然独占ではなくなってきて いる18。現在では、電力の需要者が同時に電力の供給者として発電装置を持ち、余剰電 力が生じた場合、逆に電力ネットワークに売電を行なうことが制度的に可能になり、

需要地に近いところで電力ネットワークの制御をすることが技術的に可能となりつつ ある(武石[2001])。放送産業でも、サブ(副調整室)で送出を行なう作業にアナログ 時代は 10 名以上の技術スタッフを必要としていたが、デジタル化によって報道担当者 3 名のみで行なえるようになったという例もある。このように技術進歩により規模の 経済性による費用削減効果は変化するので、新しい技術の導入をベースとした実証を 行った上での議論をしておく必要がある。 

デジタル化の投資軽減の他に、ネットワークシェアリングは、放送のデジタル化で 負担の増す放送局に対して、放送局の一連の業務を効率化する効果も期待できる。放 送コンテンツや映像素材のアーカイブをネットワークで共有することにより、複数地 点での分散処理、自由な映像素材のやり取りや蓄積された映像資源の有効活用を可能 にする。他県のビデオサーバーから直接エリア全域にオンエアしたり、地方局の番組 をプロダクションで制作したり、放送ソフト制作過程の分業化をより広範囲に促進さ せることも考えうる(外薗[1997]を参考)。放送ネットワークは、東京のキー局を頂点 とした中央集権的ヒエラルキーという色彩を帯びているが、デジタル時代には、系列 の枠を超えた地方局同士の提携(ネットワーク化)を考えていかなければならない。 

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図表‑23:新ネットワークの構築 

地方局

広告代理店 プロダクション

ネットワーク

地方局

基幹局

地方局 地方局

地方局 地方局

   

図表‑24:ネットワークの変化 

サービスは原則として サービスは原則として 県域エリアごとにクローズ 県域エリアごとにクローズ 1 1 xN xor M or x xNcombinations combinations

エンド・ツー・エンドの面的 エンド・ツー・エンドの面的

(立体的)構成

(立体的)構成

N N x(N x(-1)/2 combinations - 1)/2 combinations

<アナログ時代の地上波>

<アナログ時代の地上波> <デジタル時代の地上波> <デジタル時代の地上波>

Bi- Bi -directional Genuine interactive directional Genuine interactive

 

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4. ネットワークシェアリング効果額試算 

導出されたデータを基に、4 局共有の場合 45 億円の投資額が 30 億円に 32%低減可能 となるとの前提で、放送設備の耐用年数 15 年間で、どれくらいの効果が得られるかを シミレーションしたのが次表である。 

 

図表‑25:デジタル設備費用による資金(キャッシュ)流出額比較  A.銀行借入による投資の場合 

【個別投資】                      (単位:千円) 

 

(1)借入金 

(元本) 

(2)借入金

(返済)

(3)法定償 却費 

(4)固定 資産税

(2,3,4)の 損金算入に よる税金防 止流出額  

(6)差引資

金流出額  (7)累積 

1年目  900,000  192,110 1,435,500 63,000 710,056  445,054  445,054 2年目  900,000  149,810 977,576 42,903 491,521  601,192  1,046,245 3年目  900,000  107,510 665,729 29,217 337,031  699,695  1,745,940 4年目  900,000  65,210 453,361 19,897 226,157  758,950  2,504,890 5年目  900,000  22,910 308,739 13,550 144,983  791,476  3,296,366 6年目    210,251 9,227 92,181  ‑82,954  3,213,412 7年目    143,181 6,284 62,775  ‑56,491  3,156,921 8年目    21,708 4,279 10,915  ‑6,636  3,150,285 9年目    4,279 1,797  2,482  3,152,767 10年目    4,279 1,797  2,482  3,155,249 11年目    4,279 1,797  2,482  3,157,7#1 12年目    4,279 1,797  2,482  3,160,213 13年目    4,279 1,797  2,482  3,162,694 14年目    4,279 1,797  2,482  3,165,176 15年目    4,279 1,797  2,482  3,167,658

合計  4,500,000  537,548 4,216,046 218,310 2,088,199  3,167,658   

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【ネットワークシェアリング】 

 

(1)借入金 

(元本) 

(2)借入金

(返済)

(3)法定償 却費 

(4)固定 資産税

(2,3,4)の 損金算入に よる税金防 止流出額  

(6)差引資

金流出額  (7)累積

1年目  611,000  130,421 974,545 42,770 482,049  302,142  302,142 2年目  611,000  101,704 663,665 29,126 333,688  408,142  710,284 3年目  611,000  72,987 451,956 19,836 228,807  475,016  1,185,300 4年目  611,000  44,270 307,782 13,506 153,534  515,242  1,700,542 5年目  611,000  15,553 209,600 9,199 98,427  537,324  2,237,866 6年目    142,737 6,266 62,581  ‑56,315 2,181,550 7年目    97,204 4,265 42,617  ‑38,352 2,143,198 8年目    14,738 2,905 7,410  ‑4,505 2,138,694 9年目    2,905 1,220  1,685  2,140,379 10年目    2,905 1,220  1,685  2,142,064 11年目    2,905 1,220  1,685  2,143,749 12年目    2,905 1,220  1,685  2,145,434 13年目    2,905 1,220  1,685  2,147,119 14年目    2,905 1,220  1,685  2,148,804 15年目    2,905 1,220  1,685  2,150,489

合計  3,055,000  364,935 2,862,227 148,210 1,417,656  2,150,489   

(13)

b.自己資金による投資の場合 

【個別投資】                           (単位:千円) 

 

(1)物件代 金支払 

(2)法定償 却費 

(3)固定資 産税 

(2)(3)の損 金参入によ る税金流出 防止額 

(5)差引資 金流出額 

(6)累積資 金流出額

1年目  4,500,000  1,435,500 63,000 629,370 3,933,630 3,933,630 2年目    977,576 42,903 428,601 ‑385,698 3,547,932 3年目    665,729 29,217 291,877 ‑262,660 3,285,272 4年目    435,361 19,897 198,769 ‑178,872 3,106,400 5年目    308,739 13,550 135,361 ‑121,811 2,984,589 6年目    210,251 9,227 92,181 ‑82,954 2,901,635 7年目    143,181 6,284 62,775 ‑56,491 2,845,144 8年目    21,708 4,279 10,915 ‑6,636 2,838,508 9年目    4,279 1,797 2,482 2,840,990 10年目    4,279 1,797 2,482 2,843,471 11年目    4,279 1,797 2,482 2,845,953 12年目    4,279 1,797 2,482 2,848,435 13年目    4,279 1,797 2,482 2,850,917 14年目    4,279 1,797 2,482 

15年目    4,279 1,797 2,482  累計  4,500,000  4,216,046 218,310 1,862,429 2,855,881   

(14)

【ネットワークシェアリング】 

 

 

上記データを基に、4 局共有の場合 45 億円の投資額が 30 億円に 32%低減可能となる との前提で、放送設備の耐用年数 15 年間で、どれくらいの効果が得られるかをシミレ ーションしたのが次グラフである。 

 

(1)物件代 金支払 

(2)法定償 却費 

(3)固定資 産税 

(2)(3)の損 金参入によ る税金流出 防止額 

(5)差引資 金流出額 

(6)累積資 金流出額

1年目  3,055,000  974,545 42,770 427,272 2,670,498 2,670,498 2年目    663,665 29,126 290,972 ‑261,846 2,408,652 3年目    451,956 19,836 198,153 ‑178,317 2,230,335 4年目    307,782 13,506 134,941 ‑121,435 2,108,900 5年目    209,600 9,199 91,895 ‑82,697 2,026,204 6年目    142,737 6,266 62,581 ‑56,315 1,969,888 7年目    97,204 4,265 42,617 ‑38,352 1,931,536 8年目    14,738 2,905 7,410 ‑4,505 1,927,031 9年目    2,905 1,220 1,685 1,928,716 10年目    2,905 1,220 1,685 1,930,401 11年目    2,905 1,220 1,685 1,932,086 12年目    2,905 1,220 1,685 1,933,772 13年目    2,905 1,220 1,685 1,935,457 14年目    2,905 1,220 1,685 1,937,142 15年目    2,905 1,220 1,685 1,938,827

累計  3,055,000  2,862,227 148,210 1,264,383 1,938,827 

(15)

図表‑26:「ネットワークシェアリング」効果(自己資金で調達するケース) 

 

図表‑27:「ネットワークシェアリング」効果(金融機関から借入するケース)  0

5 10 15 20 25 30 35 40 45

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 11年目 12年目 13年目 14年目 15年目

(年数)

(億円)

ネットワークシェアリング(自己資金) 個別投資(自己資金)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 11年目 12年目 13年目 14年目 15年目

(年数)

(億円)

ネットワークシェアリング(借入金)

個別投資(借入金)

(16)

 ここでは、自己資本で設備投資する場合と、金融機関からの借入金で投資する場合 の 2 ケースについて、放送局からの資金(キャッシュ)流出累積額を各々(ネットワーク シェアリングする場合としない場合)比較している。自己資金により投資する場合には、

物件代金支払が1年目に発生、他に固定資産税を想定した。グラフが右下がりとなっ ているのは、法定償却費と固定資産税の損金算入による税金流出防止額(節税効果)に よる。また、金融機関からの借入による投資の場合は、法定耐用年数(6 年)以内の 5 年均等元本返済を想定、他に利息と固定資産税を見込んでいる。本ケースでも同じく、

利息、法定償却費、固定資産税の損金算入による税金流出防止額(節税効果)がある。

結果として、15 年間累積で 1,017,169 円(22.6%)の費用削減効果が見込めることに なる。今回の推定はデジタル投資に対する初期費用に対する節減効果であるが、ネッ トワークシェアリング効果は初期費用よりも投資後の運用期間におけるランニングコ スト(運営費用、保守費用)において、より大きな節減効果が得られるとキー局では 推定されている。 

 

5. ネットワークシェアリング応用例  5.1 セントラルキャスティング 

日本の放送事業においてはネットワークシェアリング概念について一部の送出機能 のみを共有化してマスター設備への投資を抑制しようとするセントラルキャスティン グ方式の検討が行われている。セントラルキャスティングシステムは、東北や九州地 方といった地域ブロック内でハブ局を決め、そこにエリアマスター設備を置き系列局 間のネットワーク番組・CM の送出をハブ局で一元的に行なう方式で、莫大な費用がか かる地上波デジタル放送を実施するに当たっての経費節減の施策となる。 

セントラルキャスティングは、ハブ局に送出設備、キー局からのネット番組を受け るマイクロ受信設備、ローカル CM やローカルニュース・天気予報を挿入するマスター 設備や CM バンクを集中させ、各地方局には視聴者とのインターフェースである送信所

(送信機+アンテナ)とローカル番組制作を行なう為のニュース取材設備のみを残す。

ローカルライブ番組は、各地方局で作成してハブ局に一旦素材上げして、ハブ局で編 成後、再度ローカル送信所に戻す。しかし、親局が子局の番組を制作し、子局は単な る「報道支局」に成り下がることが懸念されており、実際アメリカではそういった例 が報告されている。 

既に、米国 NBC は、放送局の負担が大きい地上波デジタル放送(DTV)を経済的に実 施するための施策として、ネットワーク番組の送出をハブ局が一元的に行なうセント ラルキャスティング方式を採用している。全米を 14 地区に分割して、14 のハブ局で

(17)

送信機能と送出機能を集中管理し、ネット番組の送出は通常、親放送局が系列局に配 信し、系列局が CM、ローカルニュースなどを入れて放送している。ハブ局には各ロー カル局から番組編成を担当するディレクターが1人、機器の運用を行なうオペレータ が 1 人派遣され、各ローカル局固有の運用を行なっている。 

日本でも、中国放送とあいテレビが送出設備を統合する計画が発表されたが、デジ タル化に対応した平成新局救済のためという色彩が強い。中国放送を親局、あいテレ ビを子局として、親局に各局の番組プログラムの管理と貯蓄が可能なサーバ(たとえ ば APS や CM・番組バンクなど)を設置し、あいテレビは中国放送に設置されたサーバ から配信された番組を流すというシステムとしている。流すといってもあいテレビで 別々の番組プログラムを組むことが可能であり、中国放送の番組を 100%流す訳ではな い。セントラルキャスティング導入により、あいテレビは、APS 端末と緊急時のニュ ース割込み用装置だけを設置すればよく、従来マスター関連に必要としていた要員や 装置が必要なく、その分経費削減につながる。日本の場合、系列の力が強いので、セ ントラルキャスティングが実現の可能性は高いと思われる。この場合、特定の地方で、

隣接する県の系列局間で比較的規模が大きく経営体力がある放送局がハブ局となる地 域配信センター方式となるため、仙台、広島、福岡あたりの系列基幹局がハブ局にな っていく可能性が高い。

送出設備 制作設備

送出設備 制作設備

制作設備 送出設備

東京キー局

系列基幹局

系列地方局A

系列地方局B 同上

制作設備 送出設備

制作設備

送出設備

制作設備

制作設備

系列地方局A

系列地方局B 系列基幹局

東京キー局

地方系列局 送出機能付加

従来方式

セントラルキャスティング方式

図表-28:セントラルキャスティング  

(18)

5.2 データ放送共同センター 

データ放送は、デジタルテレビ端末の双方向機能やリモコンによる簡単な操作性か ら、住民に広く伝える情報、特に災害情報など安全・安心に関する情報提供に有用で ある。インターネットでは 100%普及は困難であるが、テレビ受像機はほぼ全世帯に 普及しているため、デジタルデバイド(情報格差)の解消に効果があり、地域住民に 対して行政サービスを提供するメディアとして期待される。インターネットとは異な る放送である一斉同報性・公共性を意識したコンテンツ開発が必要であるため、規模 の経済性が存在する産業特性を生かして、いくつかの放送局や行政主体が共同運営す る共同運営センター方式が、効果があがると期待される。 

既にデータ放送サービスを提供している BS デジタル放送では、収益面で必ずしも成 功しているとは言えず、地上波においてもデータ放送の導入に躊躇している地方局は 多いが、デジタル放送の一つの特徴を捨象してしまう点で惜しい。場づくりとして地 方局同士が提携した「データ放送共同センター」を提示したい。経営資源(特に情報 資源)の育成に有利な組織形態あるいは、リスク分散、不確実性低減による資源育成 への資源配分という側面から、地方局がデータ放送設備を導入して単独で制作するに は、経済的にリスクが大きい。各地方局にとっては、共同センターを組むことによっ て、リスクおよび制作費の負担が軽減され、地域情報の入手が困難かつ災害時等に地 域住民が犠牲になるリスクも減る。住民に求められる地域情報を提供するためにも、

対応した共同センターのような新たなスキーム作りが必要である。 

そのため、放送産業において共同センターが合理的である理由は、成果の不確実な 財を、持続可能的に生産・販売し続けるためということになる。特に放送サービスは 即時消費財であり、在庫による需給調整ができない財であるため、在庫調整以外の方 法で不確実性の方法を考えておかなければならない。以上の理由から、地方局が企業 として経営を安定させるためには、個々の独立した組織形態では難しく、共同センタ ーが必要である。19 

(19)

図表‑29:共同センター 

CATV CATVCATV

放送局 CATVStation

CATV放送局

金融機関

金融機関A自治体 B自治体 C自治体 D自治体

A

B

C

共同センター

共同センター

 

共同センターでは、参加する放送局各局が人材面、コスト面で協力して行くことも 可能となる。例えば、データ放送番組の共同制作や各社の制作ソフトをお互いに提供 し合い、ソフトの共同購入、共同使用、制作者の共同研修、これらを通した人材交流 なども可能となる。また、デジタル多チャンネル化が進展すれば、地域情報ソフトに 対する需要は更に高まることになる。地域の人々に情報提供すると同時に、全国の視 聴者や全国各所に散らばっているその地方の出身者に対する情報発信源となる。地方 局の番組制作者にとっても全国への情報発信の場ができることから、制作意欲の向上 に繋がることが期待される。

1 電気通信をはじめ電気・ガス・水道・鉄道など公共性を有しているがゆえにユニバ ーサルサービスを必要とされるような財・サービスに関しては、たとえマイナスの限 界収入であっても規制当局から生産されるように指導される場合がありうる(伊藤、中 島[1993]『日本の電気通信 競争と規制の経済学』,日本経済新聞社,220p.)。 

2 ブリティッシュ・レイルウェイの事例から上下分離した場合、下流部門の投資意欲 が減退する懸念がある。本稿では、解決策として、数局の放送局で競争するより、1 社の放送システムで独占的に伝送する方が、費用がはるかに安くなり、伝送路が確立 され安定した伝送サービスを放送局に提供する「ネットワークシェアリング」を提案 した。なお、ネットワークシェアリングについては、植田/三友[2003]「放送業界にお ける垂直分離とネットワークシェアリングに関する実証的分析」『地域学研究第 33 巻第 3 号』に詳しい。 

3中京圏では現在,栄タワーを使って NHK と中部日本放送(CBC),東海テレビ(THK),

(20)

名古屋テレビ放送が,東山・中京タワーを使って中京テレビ(CTV)とテレビ愛知(TVA)

が,アナログ地上波放送を行っている。これらの 6 社はディジタル地上波放送の開始 を機に親局を一本化するため,瀬戸市幡中町に建設した新タワーより東海地域の人口 の 80%をカバーする。 

4 『データブック  世界の放送 2001』(NHK)による。 

5他に衛星放送(一部 CATV 送信)の UBC があり、NHK,CNN,BBC 等のコンテンツ再配信を行 なっている。 

6 中国の地上波は、全国放送を行なっている「中央電視台(CCTV)」と各地方にローカ ルコンテンツを中心に行なっている「地方電視台」がある。タワーが異なる都市が数 多く見受けられるが、上海ではアジア 1 の高さを誇る「東方明珠」タワーに統一する 等是正しようとする方向にある。 

7 石井晴夫[1997]「今後の郵便事業における課題と展望」,全逓総合研究所『郵便事業 におけるユニバーサルサービスの理論と実践』(全逓総研 研究報告 Vol.1)60p. 

8 2003 年 10 月 31 日付け日本経済新聞 3 ペーヂを参照した。広大な大地に多くの鉄塔 が必要となる北海道では、NHK と民放が送信設備共有化の本格検討に入っている。北 海道内の民放一局あたりのデジタル投資は他地域の 2 倍以上の 90 億円前後であり、「視 聴率や広告獲得の競争は後回し。できるだけ多くの設備を共有し少しでもコストを抑 える」構えと言われる。 

北海道では、各局とも約 170 の中継局を新設しなければならず、日本テレビ系の札幌 テレビとテレビ朝日系の北海道テレビが札幌市内の親局を共同で造ることで合意する など、系列を超えた経費節減努力も進んでいる。それでも道内 5 局の総投資額は 455 億円に上る。(2003 年 12 月 4 日付け読売新聞夕刊 15 面) 

9 「デジタル設備検討委員会」レポート(2001/3/27)を参照した。 

10 日本では住友電工、電気興業製のアンテナが広く採用されている。 

11 筆者が実際に海外の放送局を訪問して得た情報として、周波数の異なる多チャンネ ルに対してアンテナを共有する方法は技術的に過去多くの実績を持つ。例えばマレー シアの様な複数民族国家においては、同一番組に対してマレー語、インド語、英語、

広東悟、北京語の複数言語で多チャンネル放送する必要が有り、共有アンテナは広く 採用されている。 

12 2003 年 12 月1日からスタートする東名阪地区については、東京が既設東京タワー、

大阪が既設生駒山の使用、名古屋のみが瀬戸市に新タワー新設が計画されている。親 局では NHK をも含んだ共用タワーが基本であるが、中継局は置局計画によって異なる タワーからサービスされているエリアも数多い。視聴者の利便を考えれば受信アンテ ナの向きを統一するため、共用タワーが望ましいが、海外では、タイ・バンコクのよ うに各放送局が各々タワーを所持している事例も見られる。 

13 アンテナ、送信機のネットワークシェアリングについては、共建(共同建設)とい う形で一部地域(名古屋、山形など)において進行している。 

14 主調整室はマスター(コントロールルーム)とも呼ばれ、ここに放送のために用意さ れた素材(番組や CM など)が全て集められる。これらの放送素材は APS と呼ばれるコン ピュータによって放送する順番に送信設備へ送られ、初めて電波となる。 

15 本章の後半で見るとおり、水平方向(同地域)のネットワークシェアリングよりも 垂直方向(同系列)のネットワークシェアリングであるセントラルキャスティング方 式が進行している。 

16 「CAS」は、Conditional Access System の略。特定の視聴者が受信できるように制

(21)

御するシステム。有料放送ではスクランブルをかけたり解除したり、オンラインショ ッピングでは顧客を認識するために利用する。 

17 2003 年 10 月 31 日付け日本経済新聞 

18 典型的な公益事業の中にも技術革新などの理由により、近年は公益事業的属性をみ たさなくなっている産業が存在する(高橋[2001])。 

19 内山 隆(1996)「地上波民放の経済的ネットワークの現状」、『慶応義塾大学新聞研究 所年報 第 46 巻』pp.119〜148 

参照

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