更新講習に対する私立大学の構え
1 は じめに
私 立大学 が教員免許状更新講習 (以下
,
「更 新講 習」 と略すo)日を どの よ うな もの と して捉 え,それ とどの よ うに付 き合お うとしているか,「更新講習 に対す る私 立大学の構 え」 とで もい うべ きものについて述 べてみたい。 ここで私が 自分 の所属大学 をこえて,私立大学全般 の傾 向 を論 じよ うとす るのは,私が偶 々私立大学教職 課程 の関係 団体 に関わ ることになったか らであ る。
2007年か ら2年間,私の所属す る神奈川 大学 は関東地 区私 立 大学教職 課 程研 究連絡 協議 会 (以下
,
「関私教協」 と略すC)の幹事校 とな り, 私が幹事 と して幹事校会に出席す ることとなっ た。幹事の任務 の 1つ として研究部会の世話人 があ り,私 は教員免許 更新制部会 を担 当 した。その関係 か ら,翌2008年か ら2年間,全国私立 大学教職課程研 究連絡協議会 (以下
,
「全私教 協」 と略す。) の教員 免許 更新制検討委員会 の 委員 として活動す ることになった。 関私教協の 更新制部会 では,更新講習開設前 (試行講習の 実施前)の2007年12月に会員校を対象にアンケー ト調査 を実施 した。全私教 協の委員会の方では, 更新講習が初 めて本格 実施 され た2009年の11月 か ら12月にかけて同様 のアンケー ト調査 を行 っ た。 これ らの調 査結果 はそれ ぞれ報告書 =)と し て公刊 され てい る。 これ らの部会 ・委員会 では 調査の他,大会分科会 での シンポ ジウム設計, 部会独 自の シンポジ ウム開催や ,試行講習で必関 口 昌秀
修領域 を実施 した大学‑の個別調査活動 な ども 行 った。3)
幹事 としての活動は,上記部会 ・委員会の他, 神 奈川 地域 私 立大 学 教職 課 程研 究連絡 脇議会
(以下
,
「神私教 協」 と略す。) の幹事 と しての 活軌があ り,神私教 協幹事 と して,横浜国立大 学教育人間科学部長 と連名 で神奈川 県教員免許 更新講習連絡会の結成 に向けた呼びかけを行 っ たO この連絡会 は,
「神 奈川 県 内での教員免許 更新講習が円滑に実施 できるよ うになるために 紘,免許管理者 であ り任命 権者 である教育委員 会 を含 めた情報交換 と意見交換 のためのネ ッ トワー クが必要 である と考 え」
,
「国公立大学 と私 立大学,教育委員会の3者が ともに検討 ・連排 してい くための緩やかな連絡会」(2008年2月23 日付 文蕃 「神 奈川 県教 員免 許 更新講 習連絡 会 (仮称)結成 の呼びか け」 よ り) と して設置 さ れた ものである。以下では, これ らの活動 にかかわ る中で,他 の多 くの大学が教員免許 更新制 をめ ぐって, ど の よ うに悩み考 えているか,更新講習の問題 を どの よ うに捉 えてい るかな どについて学 んだ こ とをもとに して,私の考 えを述べていきたい。
2 2つ の ア ン ケ ー ト調 査
2‑ 1 2つのア ンケー ト調査 を通 してみ る更 新講習の問題 点
関私教 協 と全私教協の2つ のア ンケー ト調査 紘, ともに私立大学の教職課程 を対象 と してな
ー 5‑
神奈 川 大7:心PJ!・輿 仰 3')F究.言論娘 第 30号 (20日中 3)13)∩)
され た ものであ り,更新講習 をめ ぐる問題 点が どこにあるか,大学の考 え方 をよ く示 して くれ る。 それ は,私立大学 に とっての問題 が どこに あるか を知 る上 に役 に立つ資料 であ る。
関私教 協の調査 は,試行講習の1年前,本実 施 の2年前 の2007年 12月にな され た。 全私教 脇 調査 は,本実施初年度 ,ほ とん どの講習が実施 され た夏休み を過 ぎた段階 の2009年 11月か ら12 月にか けて実施 された。 これ らは調査対象 の地 域的広 が りが ちが うか ら,調査対象 数 を異 にす
る。5・
しか し,全私教 協調査 は,先行 の関私教 脇調 査 を元 に基本的 に設計 してあるので, この2年 間の変化 を見 る ことが できる。 関私教協の質問 項 目をみ る と,開設 前 に どの よ うな点が問題 点 となっていたかの概 要 を知 るこ とが で きる。 全 私教協 調査 で採 用 した項 目,す なわ ち両方 の調 査の共通質問項 目は,私 立大学 に とっての最 大 関心事 ・最重要 問題 といってよいであろ う。
2つの調査が共通 に質問 した内容 は, <更新 講習の実施 日的 >, <他 大学や教育委員会 との 関係 >,<講 習 費用 の問題 >の 3つ に ま とめ ら れ る。
(1)第1は, そ もそ も大学側 に とって義 務 でない免許状更新講習 を,私立大学 が実施 す る 目的 あ るいは理 由や建前 が, どこにある と考 え たか, とい う<更新講習の実施 日的 >であ る。
(2) 2点 目は , <他大学や教 育委員会 との 関係 >であ る。 私立大学 は これ まで教育委員会 とほ とん ど関係 を有 していなか ったが,更新講 習の実施 に際 して, どの よ うな協力連携 関係 を 構築 したのか。 更新講習の実施 のためには,免 許管理者 である都道府 県教育委員会 (以下 では 都道 府 を含 めて 「県教委 」 と略す。) と県 内他 大学 との情報交換, あ るいは さ らに連携 協力関 係 を必要 とす る事情 があ った。 この点 に関す る 質問である。
(3) 3点 目は, 更新講習 に関わ る費用 につ いて,私立大学 が どの よ うに考 えたのか, とい
う<講習費用の 問題 >である。
これ らの3点が私立大学 に とって,更新講習 をめ ぐる重要 な問題 点 とな ってい る。
もちろん更新講習 の問題 が以上の3点 に尽 き るわけではない。 <講習の修 了認定 >問題 な ど, それ以外 の問題 もあ る。 それ らについては,関 私教 脇の項 目設 定 をみ るのが よい。 また,更新 講習は問題 だ けがあ った と見 るの も正 しくない だ ろ う。 更新講習 をや ってみ てよか った点 もあ る。 いわゆる更新講習 の成果 であ る。 これ につ いては,全私教協調 査か ら若 干知 る ことがで き る。
2‑ 2 2年間の変化 と連続
これ ら3つの問題 の うち,他 大学お よび教育 委員会 との連携 ・協力 の関係 は,関私教 協調査 時点 ではほ とん ど進 んでいなか ったが,全私教 協調査 までの2年 の間に大 き く進 んでい った。
ただ し,地域 に よる違 いが あ り,連携 とは逆 の事態 も発生 した。新 聞報道 に もあ った よ うな 混乱 も生 じた。岩 手県教育委員 会や名 古屋市教 育委員会では教育委員会が独 自に更新講習 を行 っ たため,更新講習 を予定 していた各大学 で受講 人数 が 大幅 に減 少 した とい う問題 が生 じた。
(岩 手 県 と名 古屋 市 の件 につ い ては,全 私教協 の教員免許 更新制検討委員会 の場 にお いて,そ れ ぞれ の地 区の委員 か ら直話 され た事柄 で もあ る。)
費用 問題 にお ける受講料設 定 につ いては,関 私教協調査では文科省例示の 「1時間当 り1,000 円」 とい う金額 の他 に,その2倍程度 を適正 と す る意 見 もあ り,その2つに分かれ ていた。 だ が,実際の更新講習 では例示 金額 の 「1時間 当 り1,000円」 をほ とん どの大 学 (9割 以上) で 採 り入れ た。例示金額 が いわ ば標 準金額 の よ う に扱 われ る事態 とな ったわ けである。
以上 の2つが変化 したのに対 して,更新講習 の実施 目的につ いては大 きな変化 が ない。 関私 教協調査 と全私教 協調査 を比 べ てみ る と,小 さ な変化 を見 て取 るこ とはでき るが,大 きな傾 向 と してははぼ一貫 している。
3 更 新 講 習 の 実 施 日的 3‑ 1 「社会 的使命」
更新講習 を実施す る 目的 と して,関私教協調 査では,(》 「社会的使命」,② 「地域 との連携」,
③ 「卒業生‑のサー ビス」,
㊨
「大学のPR」,⑤ 「収入増」,⑥ 「文科省 か らの要詣」,⑦ 「そ の他」の7項 目を立て, この うちか ら2項 目を 選択 して回答 して もら う方式 を取 ったo全私教 協の質問 も,文言の一部変更以外,基本的に関 私教 協 と同 じである。 ただ し
,
「その他」 の項目立てをや め,全6項 目とした。
全私教 協調査 では,項 目立ては同 じだが,回 答の形式が異な る。 項 目ごとに 「重視す る」程 度 を4段階 (「非常に重視す る
」
「どち らか とい えば重視す る」
「あま り重視せず」
「まった く重 視せ ず」)で問 う,項 目ごとの程度選択方式‑表Ⅱ‑1更新講習 を行 う目的 (関私教協調査) 度数 %
社会的使命 47 73.4 卒業生へのサー ビス 31 48.4 文科省か らの要請 22 34.4 地域 との連携 20 31.3
大学のPR 3 4.7
収入増 0 0.0
その他 5 7.8
*上記7項目から2項目選択
(出典 ・関私教協報告書p.7問8の表より作成)
史新二推閏 に対す る私立大乍の鵬え
と変 更 した。 この よ うに回答方式の変更はある が,設問の意図は,両者 で同 じである。要 は, 更新講習 を実施す る 目的 と して,各 々の大学で どの項 目を重視 したか,それ を知 りたい とい う ことである。
回答結果 は,ほぼ同 じで ある。 関私教 脇調査 (表 l]‑1) では
,
「社会的使命 」が第1位 (73.4%)を占め,次に 「卒業生‑のサー ビス」(48. 4%)が続 き
,
「文科省か らの要請」 と 「地域 と の連携」が3位 グループ (それぞれ34.4%,31. 3%)を占めてい る。 「大学 のPR」 は4.7%に す ぎず,
「収入増」に至 っては回答ゼ ロである。全私教 協の回答 (表 口‑2) を
,
「非 常 に重 視」 を選択 した割合 の高い順 で並べ ると,次の よ うになる (文言は関私教協の表現に統一 した)0「社会 的使 命」 (79.3%)
,
「卒 業生 ‑ のサー ビ ス」 (50.4%), 「地域 との連携」 (43.0%),「文科省か らの要言削 (25.2% )
,「 大
学のPR」(24.4%), 「収入増 」 (0.7% )
。ご覧
のよ うに, 優 先順位 はほ とん ど 同 じで ある。
細かいちがいは , 関私 教 脇 で
同じ
3位
グルー プを占めた 「地域 と の 連供 」 と「 文科省
か らの 要請」が差 を広 げ , 「地域 と の連挑」が4
3.0% で第 3位 となり , 「文 科省 か らの要吉 別 は
25.2%と下がり,次に くる 「大学の PR」(24.4% )
との差がほとん どな くな ってい ることであ る 。 このよ うな細かい違 いはあるが,私立大 学 が
更新 講 習 を実施す る 目的 とす るのが,第 1 に
「社会的使命」 であることは動かない。「非 常 に
表Ⅱ‑2更新講習 を行 う目的 (全私教協調査)
非常 に重視 いえば重視どち らと あま り重視せず 重視せずま った く %
社会的使命 79.3 20.7 0.0 0.0 100.0 卒業生‑のサー ビス 50.4 34.1 12.6 3.0 100.0 地域 との連携 43.0 43.0 12.6 l.5 100.0 文科省か らの要請 25.2 45.2 23.7 5.9 100.0 大学のPR 24.4 48.9 24.4 2.2 100.0
*項目ごとに程度を選択
(出典 ・全私教協報告書plO問4の表より作成)
‑ 7‑
神#川大学心理 .教育研 究論塊 第30号 (20日年3月 31日)
重視す る」 と 「どち らか といえば重視す る」の 合計 をみ ると
,
「社会的使命」の項 目は100%と なっている。 更新講習 を実施 したすべての大学 が,大学の 「社会的使命」 を自覚 して,更新講 習 を実施 したのである。3‑2 卒業生に対す る責任
「社会的使命 」 とい う言葉 は更新講習実施 の 包括的な 目標 を示す ものであ り,必ず しも更新 講習 を実際に実施す る具体的な 目的 を示す とは いえない面がある。
た とえば,関私教 協の 「その他」の項 目の回 答 には
,
「キ リス ト教主義大学 の教員研修 に対 す る貫任」 とい うものがあったo これ は回答 し た 「キ リス ト教主義大学」の建学の精神 と結 び つけて,更新講習実施 の 目的を具体的に表 明 し た ものである。建学の精神 と結びつ く点で,そ れは 「社会的使命」を述べたものに他 な らない。「卒業生へのサー ビス」 も 「社 会的使命 」 の 具体的な形の 1つである。 自分の大学を卒業 し て教員 を している卒業生に対 して,更新講習の 機会 を提供す ることは
,
「卒業生 ‑のサー ビス」であるとともに
,
「卒業生教員‑の研修の責任」 と考 えれ ば,
「社会的使命」の1つである。「地域 との連携 」や 「文科省 か らの要請 」 も
「社会的使 命」 といえる。 「文科省か ら要請」が あることは,大学の 「社会的使命」がそ こにあ ることを文科省 が具体的に指 し示 して くれた こ とになる。
この よ うに
,
「社会的使命 」 とい う概念 は広 い ものであ り,
「卒業生へのサー ビス」や 「地 域 との連携 」,
「文科省 か らの要請 」 な どは,「社会 的使命」 の具体 的 中身 と考 え られ る。 し たが って,更新講習 を実施 した よ り具体的な理 由をみ るには
,
「卒業生へのサー ビス」以下の 項 目を見なけれ ばな らない。
「社会的使命」 を除けば
,
「卒業生‑のサー ビ ス」が更新講習実施 目的の第 1である。先 にの べた よ うに,半数の大学が 「卒業生へのサー ビ ス」 を 「非常に重視」した。 「どち らか といえぱ重視す る」 を含 め る と
,
「卒業生‑のサー ビ ス」 は84.5%とな る. 更新 講 習 を実施 した大 半の大学が,卒業 して教員 となった ものに対す る責務 を自覚 して,更新講習 を実施 したわけで ある。免許 更新制の大学向け説 明会 で,文科省 の担 当課長 は
,
「卒業生 に対す るア フターケ ア」 と 表現 した。 この言葉は,多 くの私立大学教員 とっ て,現職教員研修 とい う未知 の領域‑向か って 1歩踏み出す覚悟 を決 め させ る文句 になった と 私 は思 ってい るが,少 な く見積 って も, 100を 超 える私立大学がその声に応 えたわけである。3‑3 地域 との連携
「地域 との連携」は
,
「卒業生‑のサー ビス」 とはやや違 った志 向 とみ て よい。 「卒業生への サー ビス」に対置 して言 うな らば, これ は 「地 元の教員‑のサー ビス」であ る。地元の教員 に は卒業生 も含 まれ る。 む しろ他県 よ り地元の方 が多いか も しれ ない。 だか ら,
「地域 との連携」と 「卒業生へのサー ビス」が対立す るわけでは ないo に もかかわ らず,そ こに示 された責任意 識 は,当該大学が立地す る地域へのサー ビス提 供 と責任 とい うべ き方 向を もってい る。
「地域 との連携」には,県や市の教育委員会 との直接の連携 協力が含 まれ るが,それ に限 ら ず, もっと広い もの も含 まれ ている。地元の先 生が通 いやすい場所 と して,講習 を開設す る と い う在 り方である。
神奈川県教員免許更新講習連絡会の場 で,県 の教育委員会 の担 当課長は毎回,県内の地域別 に講習講座開設数 を報告 していた。 これ は,県 教委が受講者 の交通の便 を非常に考慮 していた ことの表れ である。受講者 が講習会場 まで毎 日 適 えなければ意味がない。会場の開設場所 の問 題 は,離島を典型 と してい るが,神奈川 県内で も適 えなければ,離島 と同 じであるO た とえ適 えて も,時間のかか る場所 では無理 である。 し たが って, どの県にお いて も,開設地域 の問題 はある。
連絡会は県教委 に とって協力要請 の場 となっ た。 そ こに参加 していた大学の中には,受講者 の交通 の便 に も配慮 して,講習開設 を決めた大 学 もあった と思 われ る。 それが,「非常 に重視 す る」 と 「どち らか といえば重視す る」 を合せ て86.0%とい う高 い数値 にな ったので はな い だろ うかO この数値は 「卒業生‑のサー ビス」
の84,1%と肩 を並 べ , それ よ りほんの少 しだ け多 い。 「非常 に重視 」 では 「卒業生‑のサー ビス」が 「地域 との連携」 よ り7ポイ ン ト商い が, 「どち らか といえば重視」 では 「地域 との 連携」の方が9ポイ ン ト高かった。
「卒業生 ‑のサー ビス」 は 「非常 に重視 」 が 高 く,「地域 との連携」 は 「どち らか とい えば 重視」の割合が高 くなった ことは,大学に とっ ての距離意識,親近感 のちがいか ら説明で きる のではないだろ うか。 卒業生の方が地域 よ り身 近 な存在だか らである。身内 と して親近感 を感 じたか ら,辞任感 も増す。 「非常に重視 」 の割 合が 「地域 との連携」 よ り 「卒業生‑のサー ビ ス」が高 くなって現れ た理 由はそ こにあると思 われ る。 これ を逆か ら見れば,大学 に とって地 域 も大事だが,大学に学区はあるわけでもな く, また同窓会組織 に代表 され るよ うに卒業生 との 関係 の方が伝統的に密 である。 それ ゆえ, ど う して も地域 は卒業生に比べて遠 く感 じられ て し ま う。 しか しそれ で もや は り地元 である。 「地 元 と しての付 き合 い」程度 には何 らかのff務 を 果た さなければな らない。 そ う思わせ る ところ があったのである。
神奈川の連絡会‑の参加 は,ま さに 「地元 と しての付 き合 い」 であ る。 その参加 自体, 「地 域 との連携」である。 その付 き合 いの中で,更 新講習開設 に踏み出 した大学 もあったのではな いだろ うか。
大学は更新講習開設権限を有す るが,開設の 義務 を負 ってい るわけではない.講習 を開設す るか しないかは原則 と して,各大学の判断 であ る。 義務がない といって も,大学は更新講習開 設 の主要な機 関 として位置づけ られ ている。 そ
更新講習 に対す る私 立大学の構 え
れ ゆえ,大学には法律的な義務 はないが,いわ ば r社会的な賢務」 とい うべ きものは存在す る よ うに制度的にはな ってい る。
この よ うな制度的仕組みの 中で,連絡会 とい う組織 に参加す るのだか ら,その責任感 は連絡 会のない所 に比べて増すのではないだ ろ うか。
もっ とも, これ を直接示すデー タはない。 また 連絡会の結成 それ 自体が危機 意識の結果である。
連絡会 のない ところは,その必要性 がない所 と 見 るべ きか も しれ ない。 しか し,調査で連絡会
の有無 について質問は していない し, また連携 の在 り方は所 によ り様 々であ ったろ うか ら, こ こで, これ以上推測 を重ね る ことはや める。 次 節でまた教育委員会 との関係 か ら述べてみたい。
3‑ 4 考察
そ もそ もなぜ 目的 を質問す るか と言 えば,大 学 に とって義務 でないに もかかわ らず,講習 を 実施 したか らである。教職課程 を有す る大学 に とって も,更新講習は法律上 の義務 ではない。
義務 はないが,大学が更新講習実施 の主た る機 関 と して位置づけ られ ている。 その結果,大学 には,いわば社会的nfT・務 とで も形容すべ きもの が付 与 された形 とな ったのである。 法律上の義 務 とはちが って,社会的責務 にはある種 の唆味
さがある。
県によっては,教員養成系の国立大学だけで, 県内の更新講習受講対象者 を引き受 け られ るだ けの講習 を開設可能 な ところ もある。 しか し, 首都 圏や 大都 市圏では,国立大学だけですべて の対象者 を受 け入れ る講習数 を用意す ることは 無理 であ るO 大雑把 な 目安 を挙 げ ると,前者 の よ うな場合 の対 象者 は300名 か ら500名 程度 で ある。 それ に対 し,後者 の対象 は3,000名 か ら 4,000名 の規模 とな る。 したが って,神奈川 県 の よ うな所 では,私立大学 も更新講習 を開設 し なけれ ばな らない。
では, どこの大学が開設す るのか。 あるいは, 各大学 で分担 (シェア リング) して開講す るの か。大都 市圏の大学は この よ うな状況におかれ
‑ 9‑
神奈 川 人乍 心 月!・教 育6)f究諭砿 第30号 (2011年3)I31日)
ていた。
大学の教職課程の任務 は教員 の養成 で,それ は教員免許 を取得す るまでである。就職後の研 修 については,教員養成系国立大学 と一部の私 立大学 を別 として,私立大学がかかわ ることは これ までなかった。教員免許更新制は,その よ うな大学においても現職教員研 修に対 して,応 分の負担 を実質 的に求 める制度 となっている。
更新講習 を実施 した 目的 と して,すべての大 学が 「社会的使命」を挙 げたのは,そ うい う背鼻 か ら理解 できる ものである。
全私教 脇調査 の記述回答 の中に次の よ うな も のがある。
「本学 は,神奈川 県の委 託事 業であった現職 教員のための聴講生並びに研修生講座 を手掛 け, その経験に基づ き,今回の更新講習を重視 した。」
(全私教 協報告書 p.18)
更新講習 を実施す る 目的 と して, 自由記述欄 に この よ うな回答 を寄せ た大学 は
,
「地域 との 連携」 を 「非常 に重視す る」 と回答 した と推測 して間違いないだろ う。現職教員の研 修を引 き 受 けてきた大学 に とって,更新講習はその延長 に位 置づ くものだか ら,開設に際 して大きな困 難があった とは想像 しに くい。それ に対 して,本学のよ うに,その よ うな経 験 のない大学に とって現職教員 向けの講習内容 を用意す る ことは,全 く新 しい ことだ った。 し か もこれは,自ら望んだものでな く,外か らや っ てきた ものであ る。 更新講習は黒船来航の よ う な ものである。 そのよ うな大学の教員が更新講 習の開設に時緒 を示す ことは容易に想像できる。
今 まで 自分たちで行 った ことのない取組み をす るこ とになるのだか ら。
この よ うな大学が更新講習 を開設す るに至 っ た要因 と して重要 なのが, 「卒業生 ‑のサー ビ ス」
,
「卒業生に対す るアフターケア」 であったと推測 され る。 現職教員研修の経験 はないが, それ な りに一定数の教員 を輩出 してきた私立大 学 では
,
「社会 的使命 」 と してまず第1に 「卒 業生 へのサー ビス」 を念頭 においた よ うに思われ るのである。全般 的に私立大学は国立大学 に 比 べ,卒業生 との繋 が りが強 い。 (最近 では, 東京大学で も同窓会 を組織す るよ うになったが, それ は独立行政法人化 とい う新 しい事態の中で の こ とであ る。) 同窓会 か らの働 きかけ もあ っ たか も しれ ない。私立大学は 「卒業生‑のサー ビス」 とい う言葉に弱い。卒業生に対す る責任 と言われれ ば,肯かないわけにはいかない。
開設 を決 める要因は, 目的だけではない。大 学の組織 に とっては費用の問題 は大 きい。 更新 講習は現職教員研 修の経験のない大学では, 当 局に とって も全 くの新規事業 である。社会的使 命 と講習予算 との比較考盤の問題がある。 これ につ いては,講習費用の節で論 じる。
4 他大学や教育委員会 との関係 4‑ 1 開設 までの2年間で連携協 力が進む
関私教協調査 と全私教協調査 を見比べる と, 更新講習が実施 され るまでに大学間の連携お よ び都道府 県 レベルの教育委員会 との連携 協力関 係 が大 き くすす んだ ことがわか る。
関私教 協調査 (表口‑3)では
,
「他 大 学 と の連携」について71大学が回答 を寄せたが,そ の3分 の2に当る48大学 (67.6%)は 「未定 ・ 検討 中」 と答 えた。 「他 大学 との連携 ・協力は 考 えていない」 と答 えた大 学が21大学 (29.6%), 「他大学 と連携 ・協力 を模索 している」 と 答 えたのは2大学 (2.8%) であった。
「教育委員会 との相 談」 (表Ⅱ‑4)につ いて は,同 じく71大学が回答 を寄せ,58大学 (81.7
%) が 「未 定 ・検討 中」 と答 えた。 「当面相 談 表 Ⅱ‑3 他大学 との連携 ・協 力(関私教協調査)
度数 %
未定 .検討 中 48 67.6 連携 .協 力は考 えていない 21 29.6 連携 .協 力を模索 している 2 2.8
*
1項 目選択(出典 ・関私教協報告書pll問11の表より作成)
更Wr講習に対す る私立大7:の構え す る予定 はない」 と答 えた大学が12大学 (19.9
%), 1大学が 「す でに相談 した」 と答 えた.
全私教 脇調査 (表口‑5)では,133大学 中91 大学 (68.4%)が 「他大 学 との情 報 交換 (逮 絡会 を含む) を した」 と回答 した。都道何 県教 育委員会 (以下
,
「県教委」 と略すo) との関係 (表口‑6)では,72大学 (54.1%)が 「県教 委か ら各学校 ‑更新講習の宣伝広報」 を して も らった.63大学 (47.4%)が 「国公 立大 学 を 含 めて情報交換 の場」をもち,10大学 (7.5%) が 「国公立大学は含 まず私立大学 と県教委で情 報交換 の場」 を もった。 どち らかの形 で県教委 と情 報 交換 の場 を もった大学 が73大学 (54.9%) あった ことになる。
この よ うに,2007年12月の段階で,ほ とん ど の大学では他大学や教育委員会 との連携 協力に ついて 「未定 ・検討中」の段階にあったが,20 09年の更新講習の本実施 においては,講習 を実 施 した大学の半数以上が何 らかの形 で他大学や 県教委 と間で連絡会等 をつ くり,情報交換 の場 をもつ よ うになった。2008年か ら2009年 にかけ て,その よ うな情報交換の場 をつ くっていった わけである。
4‑ 2 連携 に向けた具体的動 き
関私教 臥調査 で 「他大学 との連携 ・協力 を模 索 している」 と答 えた2大学は,模 索中の 脇力 形態 について,次の よ うに記述 していた。
「本学 とA大学 (同一県内の国立大学) は単 位互換制 を導入 してお りますので,その人脈 を 活か して,連携 を希望 してお ります。 ただ し, 先方 には今回のケースではあま りメ リッ トがな い と考 え られ ますので,困難 なことも考 え られ ます。」 (関私教 協報告書p.ll)
も う 1つ の大学は
,
「コン ソー シアム を通 し て協同 して開催す ることを検討 している。」 (同 p.ll)と記述 していた。前者 の大学は,厳密にいえば,希望を述 べた 段階で,まだ相手方 と話 し合いを してはいない。
後者 は コンソー シアムのなかで,大学間で話 し
表Ⅱ‑4 教育委員会 との相談 (関私教協調査) 度数 % 未定 .検討中 58 81.7 連携 .協 力は考 えていない 12 16.9 連携 .協 力を模索 している 1 1.4
*
1項目選択(出典 ・関私教協報告書pll問12の表より作成)
表Ⅱ‑5 他大学 との連携 .協 力(全私教協調査) 度数 % 情報交換(連絡会を含む)をした 91 68.1 開設講座 や その定員 .時期 7 5.3 について他大学 と調整 した
コンソー シアム (更新講 習 7 5.3 実施 のための法人) を作 つ
て実施 した
連携 .協 力無 し 4 3.0 複数の大学で共同して実施 した 3 2.3
その他 24 18.0
不明 20 15.0
合計 133 117.3
*あてはまる項目の選択
表Ⅱ‑6 都道府県教育委員会 との関係 (全私教協調査)
度数 % 県教委か ら各学校‑更新講習 72 54.1 の宣伝広報をしてもらった
国公立大学 を含めて情報 交 63 47.4 換の場 をもった
国公立大学 は含 まず私立 大 10 7.5 学 と県教委 で情報 交換の場
をもつた
県教委 を交 えて開設講座 等 9 6.8 の調節 を した
県教委が独自に更新講習を開 3 2.3 設 して予定が大幅に くるった
その他 (具体 的 に記述 して 20 l5.0 くだ さい)
な し 4 3.0
合計 133 144.4
*あてはまる項目の選択
(出典 .全私教協報告書p.14問10の表より作成)
‑ ll‑
神奈川大pf=心理 ・教育研 究論娘 第30号 (2011年3月31日)
合 い をは じめた よ うだ。 コン ソー シアム とい う 言葉 を私 は関私教 協の活動 に参加 しては じめて 聞いたが,それ は大学 間連携 ,連携 を取 り合 っ てい る大学の恒常的な集 ま りで,事務 局のある もの,つ ま り何 かの活動 を協同で行 ってい るも の を指 してい るよ うである。 更新講習 の場合 な ら,それ を コン ソー シアム と して行 うとかが想 定 され る。 ここに書かれ た コン ソー シアムが具 体的 に どこの地域 を指すのか不明だが,研究報 告会 の機 会 に東京 多摩 地 区での活動 を聞いた覚 えがあるので,も しか した らそこか もしれない
。 6 )
ちなみ に,更新 講習 の実施 に際 して仕組み と して,法人 資格 を有す る団体のみ が実施 可能 と な り,任意団体の よ うに法人資格のないコンソー シアムではできないこ とになった。 その場合は ,
どこかの大学 の講習 と して位置づ けて,そ こに コン ソー シアムに参加す る他大学か ら講師派遣 をす るな どの形態 を と り,実施者 はあ くまで も 法人格 を有す る大学が行 うこ とにな った。
関私教協調査 で 「県教委 とす でに相 談 した」
と答 えた大学 は,相 談の具体的内容 について次 の よ うに記述 していた。
「横 浜 国立 大学 の先 生 を交 えて県教育委員 会 の担 当者 と一度会合 を もった。 年明けに県 内の 教職課程 を有す る大学が一堂に会 して情報 の共 有 をはかれ る場 を設定 しよ うと, このアンケー ト 〔関私教 協のア ンケー トを指す。 引用者 注〕
の一部 を借用 したア ンケー トを配布 した。」 (関 私教協報告書 p.1卜12)
これ は,私 がかかわ った神奈川 県教員免許 更 新講習連絡会結成 ‑向けての動 きである。 書 い たの は私 であ る。 (念 のた めに言 えば,全 私教 協調査 の本学の回答者 は私 ではない。別 の人間 である。)
2007年12月の段階で,ほ とん どの大学 は他 大 学や 県教委 との連携 協力に関 して 「未定 ・検討 中」 であ ったが,2つの大学の回答 か ら,2つ の地域 で連携 協力 の動 きが始 ま り出 した ことが わか る。調査 でみ るか ぎ り, これ らが関東地 区 で最 も早 い段階 の動 きだ った。
当時,更新講習 を開設 しよ うか と考 えていた 大学 に とっての問題 の1つは 「受講者数 の見込 み」が立て られ ない ことであ った。 これ に関 し て関私教協調 査の 自由記述 に,次 の よ うな回答 が寄せ られ ていた。
「受講者 数 の見込 み が全 くたたず経 済的 リス クがあ る。」
「免許 更新講 習 につ いては独 立採 算制 のた め 受講生 の予測が で きない。」
「国立系 のみ に受講 生 が集 中す るの では ない か。」
「教育学部 また は学科 を有 す る大学 との格 差 が生 じ,受講 生数 が かた よる心配 があ る」 (以 上,関私教 協報告書p.15)
受講者数 の見込みが 立たな い背景 の1つは, た とえ開設 して も,現職 教員研修 で経験 と実績 のあ る教員養成 系国立大学の方 に,受講者 が流 れ て しま うのではないか, とい う不安 であった。
「国立 系のみ に受講 生 が集 中す る」 とい う心配 紘,多 くの私立大学 が抱 いて いた不安 で もあっ た。 自分 た ちがや ろ うと思 って も, どれ ほ どの 需 要があ るか見込 めない。 そ こか ら次の よ うな 意 見が出て くる。
「県 内他大 学 との連PLJf,お よびすみ分 け を ど う 調整 した らよいか。」 (同上)
神 奈川 県での連絡会 の結成 は, この よ うな背 景か らな され たわけであ る。 それ は,教職課程 をもつ県 内の国公私 立の全大 学 と県教委 を含 ん で
,
「更新 講 習 の 円滑 な実施 のた めに情 報交換 と意見交換 」 をす るこ とが趣 旨であった。 ここ での連携 は,あ くまで も 「情報 交換 と意見交換 の緩や かな」 もの であ って, けっ して 「他大学 とのすみ分 けの調整」 まで 目指 した ものではな い。受講定員 の調整 がで きる とは,私 自身考 え て もいなか った。 ただ,他 大 学が どの よ うな講 座 を どの程度 開講 しよ うと してい るのか を知 る ことに よ り, 自ず と自分 の大学 での開講 のあ り 方が選 ばれ てい く。 と りわけ,神奈川 にお ける 教員養成 系国立大学 であ る横 浜国立大学が どの 程度 の規模 で開設す るか を知 るこ とに大 きな意味があった。神 奈川 県において も,県内受講対 象者 の半分以上 の定員 が横浜国立大学で占め ら れ ることになるか らである。 当時,その情報は 私立大学にとっては大きな意味のあるものであっ た。
この よ うに教員養成 系国立大学 と県教委 を含 めて情報交換す ることは,私立大学 に とって必 要な ことであった。神奈川 県において, この よ うな場 はなか った。 だか ら,連絡会結成 となっ たのであるO この点に関 しては,関東地区で も 都 県によ り事情 を異にす るC
東京都 には,東京地 区教育実習研究連絡協議 会 (略称 「東実 協」) 7) とい う, 国公 立大学 を 含む団体があ り,それが東京都教育委員会 との 関係 をもってきていた。東実協は関私教協 と別 組織 であるが,そ こに参加 している都 内の私立 大学のほ とん どは,関私教 協東京ブ ロックの加 盟校 で もある。 だか ら,東京では更新講習 のた めに連絡会 をつ くる必要はなかった。
千葉 では,関私教協の千乗 ・茨城 ブ ロックの 協議会 (千葉 県茨城 県私立大学教職課程研 究連 絡協議会)の活動の中で,千葉県の教育委員会 との連携 を密 に とっていた よ うである。 関私教 脇の機 関誌 で活動記録 を見 ると, 2008年2月に 千葉 県の担 当者 を招いて研 究会 を してい る (千 葉県教育庁教育振興部教職員課 による講演 「免 許 更新制 にむ け ての千葉 県の取 り組み」)。n 同 じ年 の 10月の研 究会では,千葉県の教職員組合 代表 を招 いて r意見交換 」 も行 っている
。 9
)国 立大学 (千葉大学) との直接の協力関係 はわか らないが,千葉 県では このよ うに,県教委 と教 職員組合 とも連携 を とっていた. また全私教協 調査か ら,
「千葉 県10大学 コン ソー シアムが更 新講習システムの共同利用」 (全私教 協報告苔 p.18)を した ことがわか る。
4 ‑3 全国的に進んだ連携の動きと若干の問題 全私教 協調査 の 自由記述欄 (問8 「他大学 と の連携 ・協力について」 と問10「都道府県 レベ ル の教育委員会 との関係 について」の 自由記述
史新譜刊 に対す る私 立大rf・の捕 え
欄 ) を見てみ る と,大学間連携 と教育委員会 と の連携 について,全国的 に進 んでい く様子が見 て取れ る。
そ こには以下の県 についての記述が見出 され る。ただ しこれは,あ くまで も自由記述であ り, 県教委の名称 (都道府県名) もほ とん ど付 され ていないため,すべての県の動 向を把握 した も の とはいいがたい。 これ以外 の県 で も連携 は進 んだ ことが考 え られ る。
●
三重県 (三重県教員免許状更新講習連絡協 議会 を組織 して この中で検討 ,調整 した。)●
滋賀県 (他大学 (泣賀大学)の協力校 と し て実施 した。)●
兵庫県 (兵庫 県教員免許 更新講習連絡 協議 会 を通 じ情報 を共有。兵庫県教育委員会主 催 で県下の大学 と情報交換 を行 った。)● 中国地方 (教育ネ ッ トワー ク中国に講師 を
●
派遣。)福岡県 (福岡は コン ソー シアムがないため, 福 岡教育大学 を中心に,国公私立が連絡会を開催 し, 13大学が鹿児 島大学の開発 した システムを共同運用 した。 ただ し,福岡県 教育委員会は,各学校 ‑の更新講習の情宣 等について非 協力的であ った。)
●
長崎県 (法人格 ではないが 「長崎県教員免 許状更新講習連絡 協議会」の傘下で運営 し た。長崎 県内の国公私立大学 ・短期大学 ・ 県教委 を含 めて,協議会 を開催 した。)(以上,全私教協報告書p.18,p.20)
しか し,問題 は連携 ・協力 が うま く行かず, 逆 に混乱を生 じた地域 もあった ことである。
先述の よ うに,岩 手県教委 と名古屋 市教委は 独 白に更新講習 を行 い,その地域の講習予定大 学に大幅 な受講人数減 をもた らす とい う結果 を 生 じさせ たC全私教 脇調査 で 「県教委 が独 自に 更新講習 を開設 して 予定が大幅 に くるった」 と 回答 した大学は, 3大学 (2.3%)あ った (秦
rJ‑6参照)。 また, 同調査 で, 市町村 レベル の教育委員会 との関係 につ い ての質問で
,
「市‑ 13‑
帥森川大7l‑心理 ・教77研究論 it!. 罰 30号 (2011年 3J131Fl)
教委が独 自に更新講習 を開設 して予定が大幅 に くるった」 と回答 した大学 は,4大学 (3.0%) あ った (全私教 臨報告書p.14)。 この回答大学 の所属地域が どこになるか.全私教 脇の報告半 では不明であるが,回答大学にはそれぞれ岩手 県 と名古屋市に関連 した地域 の大学が含まれ て いるだろ うことは間違 いない。
その他の地域 でも同様 の混乱が生 じたか ど う かは, この調査か らはわか らない。全私教 協の 教員免許更新制検討委員会 として も,その他 に ついては把握 していないO ただ,更新講習本格 実施 1年 目にお いて,すべての地域 が順調 に教 育委員会 との連携 ・協力を放 りなが らすす める とい う訳 にいかなか った ことは記錬 に留めて置 くべ きことであ ろ う。 2年 目には改善に向か っ た ことと思 われ るが ‑ そ うな らな けれ ば この 制度 自体が安定的に運用 されないか ら‑ ,具体 的に どうの よ うに改善 され てい ったかについて は不明である。
5 講習費用の問題
5‑ 1 受講料 の標準化への流れ
更新講習の受講料 の金額 に関 して,関私教協 調査 (表
ロ
ー7) では,回答 した70大学 うち56 大学 (80.0%)が 「未検 討」 と答 えていた。これ は,ある意味 当然 である。 とい うのは, 史新吉推習の開設 について 「未定 ・検 討中」 と回 答 した大学が48大学にのぼ っていた。2009年度
表Ⅱ‑7 受講料の適正額 (関私教協調査) 度数 %
未検討 56 80,0
1ー000円 6 8.6 1.500円〜2.000円 5 7.1 1,000円〜1.500円
1
1.41,000円未満
0 0 . 0
その他 2 2.9
*
1項目選択(出典 ・関私教協報告書p8問7の表より作成)
開設予定が22大学,2010年 開設予定が3大学, 合 わせ ても25大学 しか,開設 を決めていない段 階 であ った (関私教 協報告 書p.6,間 2)。 開 設 自体が未定なのだか ら,受講料 は当然未定で あろ うO ただ,開設検 討中が48大学 で,受講料 末検討が56大学だか ら,開設予定大学の中の8 大学が受講料未定であった こ とにな る。2010年 開設予定の3大学 は受講料末 検討 と考 えて よい だ ろ うか ら,2009年開設 を決 めた大学で も, 5 大学 はまだ受託料 まで識 論 が進 ん でいなか っ た と推定 され る。 大学内での議論の進み方 と し て, これ は予想 され ることである。
ここで注 目すべ きは,受講料 について, 1時 間 当た り1,000円 と回答 した大 学 が6大学 あ る 一方 で, その倍 の金 額 の1,500円〜2,000円 と 回答 した大学 も5大学存在 していた とい うこ と であ る。 1,000円 とい う金宅削ま,文科省 が例 に 挙 げた金額 であ り,以後大勢 と しては, この金 額 が主流 を占め ることになる。 それ が, この段 階 では, 1,500円〜2,000円 とい う金領 が,読 定金額 と して適正だ とす る回答 が, 1,000円 と ほぼ同数 あった ことは,今 か ら振 り返 ってみ る と,それ以後2年間の流れ を示 しているO
全私 教 協調査 (表Ⅲ‑8)をみ る と.受言誰料 を 1時 間 当た り1.000円 と した大 学 が117大学 (88.0%)あ る。 それ に対 し1.500円以 上 と し た大学はわずかに2大学 に とどま った.lOl受講 料1,000円未満 の 大 学 も6大 学 あ り, 受 吉馴斗
I,000円以下が9割 以上 (92.5%)とな った こ とがわか る。
表Ⅱ‑8 受講料 (全私教協調査) 度数 ●●
1,000円 117 88.0 1ー001‑1.500円 8 6.0 1.000円未満 6 4.5 1ー500円〜2.000円未満 1 0.8 2.000円以上 1 0.8
*1項目選択
(出典 ・全私教協報告書plO問5の表より作成)
これ は関私教 協調査 との違 いである。 関私教 協調査 で 「1,500円〜2,000円」 を適正金 額 と 答 えた大学が実際にど うしたのかはわか らない。
教材費 と受講料 を別 な費 目と考 えて,回答 した か も しれ ない。 その よ うな細かい点については わか らないのだが, ともか く更新講習 を実施 し たほ とん どの大学 では,文科省 による例示金額
「1時間 当た り1,000円」 を受講料 と設 定 して, 純習 を開設 したわけである。
この よ うに,更新言推習の開設 に当たっては, 例示 の 「1時間 当た り1,000P力 が, いわば実 質的な標準 とな っていったわけである。
5‑2 更新講習の費用
では,受講料 収入 だけで講習費用 を賄 うこと はできたのだろ うか。 この点 をみ る と,全私教 協調査 (表 口一9)によれ ば,半数近 く (44.4
%)の大学が,受講料収入で講習費用 をほぼ賄 えた と回答 して い る。 逆 にい えば , 半数 以 上 (51.8%)の大学 で,赤字 だ った ことにな る。
約1割 (10.5%)の大学 では,費用 の20%未 満 しか受講料 ではまかなえなか った。
講習費用が どの程度 になるか, ここで少 し計 第 してみ よ う。 講習の開設規模 に よ り金額 が大 小す ることは当然だが, ここでは,必修領域1 言維座定員100名 ,選択領域 (18時間相 当)5講 座各定員40名 と して概算 してみ よ う。 これ を例 とす る強い根拠 があるわけではないが,研究会 で知 りえたい くつかの私 立大学 の規模が この程 度の ところにあ った。 ちなみに,神奈川大学の 規模 は必修領域 1講座定員100名,選択領域 は 12講座 定員25名〜50名 ,選択 と必 修の総 定員 520g.だか ら, これ よ りやや大 きい。
このモデルの場合,受講料収入 は,選択必修 を合せ た延 べ時 間 ×定員 が (12時 間×100人 + 18時間×40人× 5講座)4800時間 ×人 と算出 さ れ るので,480万円 となるO純師手 当を1時間当 り2万円 とす る と,講座 の延 べ時間は (12時間 +18時間×5講座)102時間なので204万円 とな る。事務経 費 を含 めなければ, この定員で十分
更新講習 に 対す る私 立大7:の捕 え
黒字 となる。言削市手 当だけな ら20人の受講者 で 収支が均衡す る。
今の計算では,講師手 当は試行講習の講師手 当の最高額 ‑ ただ し,特別 の人,例 えば歌舞 伎 俳 優‑の謝金 な どを除 い て‑ を適 用 した。
試行講習の報告番 目で見 る と,国立大学では講 師手 当を1時 間 当 り8.000円か ら9,000円 と し た ところが多い。 しか し,講師手 当については 記入 のない大学 も多 く,吾郎 巾謝 礼金 とは別 に, 教材作成謝礼金 ,問題 作成謝礼金,採点 ・成績 報告謝一礼金 を計上 した ところもあ り,実質的な 講師手 当が2万円を超 えた ところもあったか も
しれ ない。Lご‑
表Ⅱ‑9 受講料収入で賄 えた更新講習費用 (全私教協調査) 度数 %
120%以上 19 14.3 ほぼ100% 40 30.1 80%程度 18 13.5 60%程度 15 ll.3 40%程度 18 13.5
20%程度 4 3.0
20%未満 14 10.5 その他 (未 回答 を含む) 5 3.8
*1項目選択
(出典・全私教協報告魯p.11問6の表より作成) 1時間 当 り2万円は神奈川大学の ものだが, これ は 「学外講座 (県民講座,市民吉祥座 ,特別 講座 等) の粥演料 に準 じて算 出」 (試行純 習報 告苫p.316)した もの であ る。 講演料 と してみ れば, この金宅削まご く普通 であろ う. おそ らく 国立大学の基準は大学の授 業の手 当を基準 と し た ものであろ う。 弘前大学 では 「非常勤純師手 当額 と同額 と した」 とある (試行講習報告番p.
27)0
ともか く,今 のモデル で い えば500万,その 倍額 と して1,000万 円。 この程度 が私学 にお け る更新言辞習の規模 と見積 られ る。 もちろん大学 によって事情 を異に し, もっ と大規模 に行 った
‑ 15‑
神奈川大7・心理 ・教育研 究論塊 第 30号 (2011年3月 31日)
大学 もある。神奈川県において も小学校教諭免 許 を出 してい るある私立大学は,必修領域500 名 定員 で実施 した ところ もあ る。 その場合 は
1,500万円規模 となるだろ う。
しか し,規模 の大 きさでいえば,何 といって も教員養成系の国立大学の場合 である。規模 が 大 きす ぎる東京 学芸大学 (4,000人規模) を除 くと,東京近県の埼玉 ・神奈川の場合,2,000名.
近 くが定員 とな る。 必修領域1,800名 ,選択領 域1,500名.と してみ る と,受講料収入 は4,860 万円 となる。 定員全 てが埋 まるとはな らない と
して も,講習費用 は3,000万 円か ら4,000万 円 規模 を想定す ることになる。 これ と比べれば, 本学の よ うに中学校 と高等学校 の免許 だけを出 してい る 「普通の」開放制教員養成課程の私立 大学は,その5分 の 1か ら10分の1とい うこと になる。
5‑ 3 社会的使命 と講習費用
「3 更新講習 の実施 日的」 の ところで述べ た よ うに,更新講習 を実施 した私立大学のすべ ては,程度 に差 はあれ,更新講習実施 の 「社会 的使 命 」 を 自覚 していた。 その うちの8割 は
「社会的使命 を非常に重視 した」。非常に強 く社 会的使命 を自覚 した とい うことは, 更新講習費 用 をいわば 「社会貢献費用」 と して大学の予算 で賄 う覚悟があった とみて よいのではないだろ
うか。
大学定員 (4学年 で)1万8千人の大学は授 業料 を年額120万 円 と して,年 間200億 円余 の 授 業料収入があ る. この予算規模 か らすれ ば, 1,000万円の更新講習費用 はその0.05%である。
大学の財政状況に もよるが,神奈川大学程度 の 大学規模 で先のモデル規模 の更新講習 を開設す ることは,大学の 「社会貢献費用」 と して過大 とい うほ どの もので もないだろ う。 ちなみ に, 2009年 の更新講 習 にお いて神奈 川 大学 では,
「約700万円の支 出に対 して,受講料収入 が約 350万円であったため,300万円以上の支出超過
となった」川 と報告 され ている。
実際,先 に見た よ うに,全私教協の調査で も 過 半数の大学で赤字 だった。 私立大学だけでな く国立大学 を含 めて,本実施1年 目は講習定員 に対す る受講者 の充足率が全般的に低 かった。
2009年7月5日の神奈川新聞には 「講習 申 し込 み低調」 と題す る記事が出た
。
「〔神奈川〕県内 の 〔更新講習受講〕対象者 の うち5月末時点 で 申 し込み を済ませた人は5割未満。横 浜国立大 学 では6,010人の募集枠 に対 して申 し込み は960 人 に とどまってい る。」 とある。受講者 が少なか った ことは,次の よ うな こと によるのではないか と推測 され ている。 1つは,
1年 目の受講対象者の一定数 が前年実施 され た 試行講習 (予備講習)を受けていた ことである。
更新講習が 「不適格教員 のチ ェ ック」 に利用 さ れ るだろ うとす る不安感 か ら1年 目の受講 を見 合せた者 もいる と思われ る。 また,間近に迫 る 衆院選 において民主党政権が誕生 し教員免許 更 新制その ものが廃止 され るとの期待感 か ら受講 を見合せ た者 もいたであろ う。 「政権 交代」 は 実現 したが,教員免許 更新制 は2010年度 も存続 す ることとなった。
全私教 協調査では, このよ うな状況をふ まえ, 次年度 (2010年度)の更新講 習開設 について も 質問 していた。 これ に対 しては,過 半数 (58.7
%)の大学が実施す ると回答 していた (全私教 協報 告書p.15問13)。 過 半数 の大学 が赤字 に なったに もかかわ らず ,過 半数の大学が翌年 も 実施す ると回答 したわけであ る。 次年度 は 「規 模 を縮小 して実施す る」 (29.3%)と回答 した 大学 もあるか ら,赤字縮小 につ いて も考生 し判 断 した とい うことであろ う。
ともか く, この よ うに不安 定な状況の中で実 施 を決断 した ことは,更新講習実施 の社会的使 命感 を強 く自覚 した ことを示す もの といってよ いだろ う。
関私教 協の調査 にお いて, あ る大学 は
,「 更
新講習については独 立採算制 のため受講者数 の 予測がで きない ことが問題 で あ る」 (関私教 協 報告 書p.15)と記述 回答 した。 この大学 が更
新講習 を実施 したか否かについては不明だが, 独立採算制 を取 ることと更新講習実施 に社会的 使命感 を見出す こととは,必ず しも矛盾す るわ けではない。 しか しなが ら, この よ うに独 立採 算制 を基本 とす る大学では,そ うでない大学に 比べて更新講習の実施 のために,その規模や開 設の有無 を含 めて厳 しい検討を迫 られ ることに なった と思われ る。
5‑ 4 大学のPRと講習費用
表 ]‑8を見てわか るよ うに,少数 だが,更 新言維習の受講料 を1,000円未満 に設 定 した大学 が, 6大学 (4.5%)存在 した。 受講料の具体 的金額 については不明だが,全私教協の委員か らの直話に よれ ば,中国地方のある大学では30 時間で3,000円ほ どの金額 だ った とい う。 つま
り,標 準の10分 の 1だ ったわけであるC この大 学の 目的は 「大学のPR」であった とい う。
関私教 協調査 で更新講 習 を行 う目的 と して
「大学 のPR」 と回答 した大学 は3大学 (4.7
%) だ った。 それが,全私教 協調査で 「大学の PR」 を 「非常 に重視 した」 と回答 した大草の 割合 は,24.4%にまで上 った。 「どち らか とい えば重視 した」 まで含 める と,「大学のPR」
を重視 した大学 は,73.3%に もな るo ほ とん どの大学で,更新講習は 「大学のPR」の場 で もあったわけである。
私 立大学が更新講習 を 「大学のPR」の場 と 位 置 づけることは,答 め られ るべきことではな い。 首肯で きる ことである。多 くの高校,高校 教員 に とって, 大学 は遠 い存在 であ る。 「高大 連携」 とい う言葉が声 を大 きく して語 られ るよ うになったが,それは未 だ課題 であ り,その実 態はまだ まだ小 さな ものに止 まっているとい う べ きであろ う。 とりわけ,名前の知 られていな い小 さな大学に とって,更新講習はPRの場 と して大 きな意味 をもつ。名前の多少知 られた大 学に しても,現場の教員か らはほ とん ど偏差値 を通 して眺 め られ るだけであ り,それ以外の側 面,各大学の もつ多面的な美徳 については知 ら
更新吉祥背 に対す る私立大乍の構 え
れ ないままである。 そ うい う点か らす ると,大 学に とって更新講習 は, 自分 たちの実際の中身 (の一端) を知 って も ら う絶好 の機 会 を提供す ることになった。
大学のPR費用 と考 えれ ば,先のモデル で見 積 って も支 出 とな る講師手 当は200万 円にす ぎ ない。 国立大学並み に授業料 手 当 とす ると,そ れ は100万円以下 とな り,大学案 内等 の広 報誌 の印刷代 と比べて も,は るかに少 ない金額 であ る。 7割 を超 えた大学が 「大学のPR」 を意織 して更新講習 を行 ったのは, この よ うな費用対 効果 を考 えてみれ ば,理の当然 と言 うべ きか も
しれ ない。
6 それ以外の問題 6‑1 修 了認定の問題
関私教 脇調 査では,更新講習の修了判定試験 の方 法について質問 していた (問13)。 そ して, それ に続 けた設 問 (問14)で,次の よ うに質問
していた。 「更新講 習 中の事 故 ,成紡判 定 に対 す る訴訟等に対応す るために,大学 と して何 ら かの保険に入 ることを考 えていますか」, と。
この よ うな質問項 目が設定 され たのは,更新 弼習制度 には修了終定問題 が伏在 しているか ら である。
更新講習は, 1つの粥座 ご とに 「厳格 な」修 了判 定試験 を実施 して,その修了を認定す るこ とにな っている。必修領域 な ら12時間を1つの ま とま りと して,その修 了を認 定す るO選択領 域 の場合 は, 6時間で1講座 とす るか,あるい は12時間ない し18時間を1講座 と して,その講 座 ごとに修了を認 定す る。 試験 はペーパーテス トである必要はな く,内容 に よ り実技試験 で も よいが, ともか く試験である以上,合否がある。
「否」 とな った場合 ,その受講者 は別 の講 習 をも う1度受講 しなけれ ばな らない。 ただ し, 必修12時間な ら別 の必修12時間 を受吉祥しなけれ ばな らない。選択講習の場合 は,その時間分だ け別の選択講習 を受講 しなけれ ばな らない。 そ
‑ 17‑
神奈川 大乍 心理 ・教子印什究論鶴 第 307E',‑ (2011年3JJ31円)
して,その講座 の修 了判定試験 に合格 しなけれ ばな らない。 この よ うに して,必修12時間,選 択18時間分 の修 了認 定 を受 けるこ とが,教員免 許 が更新 され る条件 である。
したが って,修 了判 定試験 「否」 の場合 ,隻 講者 の失職 とい う可能性が ある。 教員免許 が更 新 され なければ ,教員 と して学校 で教 えるこ と がで きな くな るか らである。
この よ うな仕 組み となってい るため
,
「〔更新 講習の〕成績判 定 を厳密 にすれ ばす るほ ど,不 合格者 が増 え,失職 の可能性‑ 訴訟 に発展 とい うケー スが 出 る ことが予想 され る」 (関私教 協 報 告書p.14),とい う心配 も発生す るこ とにな る。 た しか に,理論上 , この よ うな危快 が教員 免許 更新制 とい う仕組みの 中には存在 してい る ことは否定 できないのであ る。6‑2 実施 しなか った大学の問題
これ まで更新 講習 を実施 した大学 を対象 と し て更新講習 の問題 を見てきたが,私 立大学 の中 には更新講習 を しなか った大学 も数多 くあ る。
それ らの大学は どの よ うな理 由に よ り,更新講 習 を実施 しなか ったのであろ うか。 実施 しない 理 由については 関私教 脇で も全私教 脇でも調査 していないが, い くつかの推論 は可能 であ る。
以下,考 え られ る理 由を少 し考 えてみ よ う。
実施 しない理 由を推測す る手掛 りとなるのは, 2つの調査 が設 定 した 「更新講習実施 の 目的」 の項 目であ る。 両調 査 ともに
,
「社 会 的使 命」「卒業 生 へ のサ ー ビス
」
「文科省 か らの要詣」「地域 との連携
」
「大学 のPRJ「収入 増」 を, 実施 目的 と して掲 げてい るが, これ らの項 目す べ てに 当てはま らない と大学が判断 した ときに 紘,更新講習が実施 され ない可能性 が高 くな る とみ て よいだ ろ う。これ以外 の理 由を さがす とすれ ば, 1つは今 述 べた修 了認定 をめ ぐる リス クである。 この よ うな リス クをお か してまで,実施 す るには及 ば ない とい うもの である。
また, も う少 し消極 的な理 由も存在 していた
とも考 え られ る。他 大学 で実施す るか ら うちの 大学 で行 う必要 はない,少 な くとも1年 目か ら す る必要 はない, とい うものである。 関私教 脇 調査 において,本実施2年 目か ら予定す る と回 答 した大学 も,3大学存在 していた (関私教協 報告 書p.6問 2)0 2年 目か らとい うの は,大 学の準備 が間に合わない とい うことであ る。 関 私教 鼠調査 では,更新講習実施のための学 内体 制 づ く りにつ いて も質問 していた (問3)が, どこの大学 に とって も, これ まで存在 しなか っ た更新講習 とい う新 しい事業 をは じめ るのは, 大学 内の組織 体制づ く りを含 めて,大変 な こと であ る。 そ こまでの労力 をか けて1年 目か ら実 施 しよ うとい う熱意が出な くても しかたがない。
実際,東京都 を見れ ば多 くの大学があ り,その すべての大学が実施す る必要性 は存在 していな か った とい う事情 は ある。
財政的な理 由か ら実施 しなか った大学 も当然 あ ったはず であ る。表口‑2か らわか るよ うに, 収入増 を 目的 と して実施 した大学 も1大学 あ っ た。 お そ らくその大学は一般 に新規事業 とい う ものに伴 うビッグチ ャンスに賭 けたのだ ろ う。
しか し,新規事業 に よる収入増 とい う明確 な 目 的意識 を持たないか ぎ り,ふ つ うに考 えてみれ ば,大学 の事業 と しては新規 予算の出費増 が予 想 され るか ら,そ う簡 単にはは じめないであろ う。新規事業 は ビッグチ ャンスで もあるが,節 しい ものには リス クがあ る とい うの も ビジネ ス 的常識 である。 リス クの方 を重視すれ ば,少 な くとも1年 目は様子 を見 よ うとい うの も賢明な 判断か も しれ ない。
6‑ 3 教 員免許更新制 その ものの問題 更新 講習 を実施 した大学 はそ こに 「社会的使 命 」 を見 出 したが,教員免許 更新 の制度 その も のにつ いてみれ ば,ちが った見方 も可能 である。
教員免許更新制 とい う制度 その ものがおか し い とす る考 え方 も存在す る。 制度誕 生の経緯 を 見れ ば, この制度 が如何 わ しさを引 き摺 ってい るこ とが見 えて くる。
わが国では,教員免許 更新制はその本来の 目 的ではな く,む しろ 「不適格教員 のチェ ック」
のために提案 された (2000年教育改革国民会議) とい う由来がある。 だが, この提案 に対 して, 2002年2月の中央教育審議会答 申は,適格性確 保や専門性 向上のためには,教員免許更新制 は 妥当でない と した (ただ し,教員免許更新制 に 代 えて,十年研 修が導入 された)0
それが,2006年7月の中央教育審識会答 申は, 2002年答 申 と方針 を変 更 し
,
「その時 々で求 められ る教員 と して必要な資質能力 が保持 され る よ う,定期的に必要 な刷新 (リニ ューアル) を 図るため」 として,つま り 「不適格教員のチェ ッ ク」のための もの と してではな く,教員免許 更 新制 を導入す ることを適 当 した。
ただ し,安倍政権の教育再生会話 は,2007年 6月の教育職員免許 法改正直前,免許更新 に絡 んで 「不適格教員 に厳 しく対応す ること」 (2007 年1月教育再生会誌第1次報告) を求めた こと を見ておかなけれ ばな らない。
わが国における教員免許更新制 は, この よ う に 「不適格教員 のチ ェ ック」 とい う免許更新 の 本来的趣 旨とはちが う目的 をそ こに代替 させ よ うとす る意図を抱 えて議論 され て きた。 更新制 の談論が この よ うな特有の事情 を抱 えているゆ えに,文科省 もホー ムページで更新制が適格性 確 保でないことを宣伝 した。 しか し,現場教員 か らはなかなか信用 され なか った よ うである。
受講者側の大 きな心配は ここにあった。教員組 合 もその点につ いてナ‑ ヴァスであった。
この よ うな歴 史的 母斑 をもった制度 に対す る 大学側の考え方 も, ここで分かれ ることになる。
適格性確保 でな く 「資質能力保持のための刷新 (リニューアル)」 と改善 され て制度化 された以 上,何 とか更新講習 を 「実のある もの」,受講 者 に とって少 しで も有意味な 「研修 」 となるよ うに しよ う, と更新講習 を位置づ け実施 しよ う とす る立場が1つである。 も う1つは, この制 度がかか える如何 わ しい歴史的母斑のゆえに, あ くまで も制度の実効化 に反対 し更新講習 を実
史新講習 に対す る私立大7:の構 え
施 しない とす る立場 である。
もちろん, このよ うな 「きれ いな」 区分 は理 念型 とい うべきもので,現実には, この2つの 間でそれぞれ の大学の教員 たちは思 い悩み揺れ 動 き,その中で1つの結論が出 され ていった と い うことになるだろ う。
教員免許 更新制が, これ か らも制度 と して存 続す る限 り, この よ うな歴 史的母斑 を引き摺 ら ざるを得ない。 それ を引き摺 りなが ら更新制の
「性格」 を実態 レベル で作 り直 してい く,つ ま り制度その もの も 「更新」 してい く。 その よ う な運命 にあるの ではないだ ろ うか0
6‑4 大学の内部的事情
今 まで大学の理 由 と して一括 して述べて きた が,実情 を見 るには大学の内部 まで見なけれ ば な らない。 た とえば,上の第1の立場 ,すなわ ち適格性確保でな く,資質 保持 のための 「刷新 (リニューアル)」の制度 と して実現 された以上, 更新講習 を実施すべ きであ るとす る立場 に教職 課程担 当教員が立 っていて も,大学 当局が第2 の立場 に立つな らば,更新講習は実施 され ない であろ うC
一般 に,大学の意志 を決定す るのは学長 な ど の大学 当局 であるが,更新講習の実施 に際 して は各大学の教職課程担 当教員の意向が大 き く影 響 した と考 え られ る。 教職課程 の教員 の協力が なければ,更新純習の具体的 中身 をつ くりあげ てい くことができないか らである。 一般的 にい えば,大学 当局の意 向,教職課程担 当教員 の考 え方,お よび両者 の関係 , この3つがその大学 での更新詐習実施の是非を決定す る要因である。
大学によっては, 当局の意志 が よく理解 でき ない ところ もあった。教員免許更新制の実現 に 際 して,学長が審議会の委員 として多大 な影響 力 を及 ぼ した有名私立大学 が更新講習 を実施 し なか った, とい う場合 もあ る。 これ な ど, 当局 の意志は どこにあるのかわか りに くい。建前 と して社会的意義を認め,本音 としては認めなかっ た, とい う日本的伝統的行 動 と理解 すべ きなの
‑ 19‑