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⑵熊本大学の更新講習の特徴

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(1)

教員免許状更新講習の現状と課題

「教員の資質能力の向上」の視点から 長 濵 茂 喜

Report of the Teacher Certificate Renewal Training Program

Shigeki N AGAHAMA

1 はじめに

平成19年6月の改正教育職員免許法の成立により,

平成21年度から教員免許更新制が導入され,平成27 年度で本格実施から7年目を迎えている(熊本大学 は試行期間も入れると8年目になる).現在では更 新講習に係る受講システムがしっかり確立され,全 体的にはスムーズな実施ができている状況である.

この教員免許更新制の目的は,「その時々で教員 として必要な資質能力が保持されるよう,定期的に 最新の知識技能を身に付けることで,教員が自信と 誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得る ことを目指す」ものである.

受講後に実施した受講者対象のアンケートの結果 を見ると,更新講習全体の評価についてはかなり好 評で,受講者にとってもこれまでの教育実践を振り 返り,最新の教育事情を身に付ける良い学びの機会 になっていることが伺われる.この更新講習のメイ ンのねらいは「最新の教育の知識技能の獲得」にあ るが,実際の講習,受講者のアンケート結果から,

そのことが十分達成され,さらに,学校で教育活動 を行う上での実践的指導力の向上に大きく寄与して いると推察される.

平成28年度からは,これまでの必修領域の12時間 の講習を見直して,新たに必修領域6時間,選択必 修領域6時間として,実施されることになっている.

本稿は,主に平成26年度の熊本大学における免許 状更新講習の現状と課題について検討を行い,教員 免許状更新講習の有用性と今後の在り方について考 察を行うものである1)

2 熊本大学の更新講習の実施概要

⑴必修講習,選択講習,受講者数の推移

平成26年度までの更新講習の実施状況は次の表の

通りである.平成26年度に限ってみると,熊本県下 の更新講習実施大学(放送大学を除く)のうち熊本 大学における受講者の割合は,必修講習68.0%,選 択講習61.0%であり大きなウエイトを占めている.

本学の果たしている役割は大きいものがある.

⑵熊本大学の更新講習の特徴

平成26年度は,必修講習15講習,選択講習を70講 習実施した.本学の更新講習の特徴は次の通りであ る.

・受講定員は,必修講習60名(最大70名),選択講習 15名〜80名とし,できるだけ定員を抑え,講義形 式だけでなく,グループワーク等の参加体験型講 習が可能な受講規模になるよう努めている.

・担当講師は,教育学部教員だけでなく,文学部,

法学部,理学部,工学部,医学部保健学科,薬学 部,医学部附属病院等,他の学部の教員も講習を 担当し,全学体制で実施をしている.

・熊本県教育委員会,熊本市教育委員会とも連携を 図り,熊本県立教育センターや熊本市教育セン ター等の指導主事にも講習を担当して頂いている.

・熊本大学から地理的に遠い,天草,人吉,阿蘇,

八代,玉名地域において熊本大学から出向いてサ テライト講習を実施している.

・受講者に対し受講希望分野についてのアンケート を実施し,その結果をもとに,受講者のニーズに あった講習の実施に努めている.

熊本大学教育学部附属教育実践総合センター

(2)

3 平成26年度の受講者のアンケート 調査結果から

熊本大学では,更新講習実施後,各講習ごとに受 講者に対して独自のアンケート調査を実施している.

アンケートの質問項目,評定尺度は以下の通りである.

受講者に対するアンケートの質問項目は「各講習 内容について」と「講習全体について」の2つの分 野に分けて実施した.2つの分野の質問項目は次の 通りで,「大変よい」,「よい」,「あまりよくない」,

「よくない」の4段階評定尺度による回答を求めた.

⑴アンケートの質問項目

①各講習内容について

問1 講習の手段(プレゼンテーションソフト の使用,プリント,板書,プロジェクター,

マイク等)は,有効でしたか.

問2 学校に帰ってからの自分の教育実践に生 かせる内容はありましたか.

問3 教師としての幅広い教養や専門性を磨く のに役立ちましたか.

②講習全体について

問1 自分のこれまでの教育実践を新しい視点 から振り返ることができましたか.

問2 最新の知識技能が身につき,受講前より 良い授業を行えると思いますか.

問3 全体として,今回の講習はどの程度有意 義でしたか.

問4 熊本県教育委員会が実施する研修とこの 講習を組み合わせて整理した方が良いと思 いますか.

問5 更新講習に関する熊本大学のホームペー ジ及び,平成26年度教員免許状更新講習の ご案内(パンフレット)は充実していまし たか.

問6 今年度は申込期間を6〜8月分,9〜11 月分と2期に分けましたが,申込はスムー ズにできましたか.

問7 この講習を通じて良かった点,改善点が ありましたら,自由に記述願います.

⑵アンケート結果

平成26年度は,本学においては必修講習を15講習,

選択講習を70講習実施した.受講者のアンケート結 果は以下の通りである.なお,平成25年度と平成26 年度のアンケート項目は全く同じであったので,平 成25年度の結果も一部( )書きで掲載している.

まず必修講習では,「各講習内容」,「講習全体」に ついて,それぞれ表で示した.「各講習内容」につい

ては,会場別の結果も示している.また,選択講習 では,「各講習内容」についてを,選択講習全体,会 場別講習(熊本大学会場での講習とサテライト会場 での講習),そして担当講師別講習(開放制学部教員 が担当した講習と開放制学部以外の教員が担当した 講習)の3つに分けて表で示した.選択講習におけ る「講習全体」については,選択講習を通して1度 きりの回答であるため,全体を集計したものを表で 示した.

次に,「結果の概要と今後の課題」については,「講 習全般について」,「会場別の結果から」,「担当講師 別の結果から」にまとめた.「結果の概要と今後の 課題」の最後に,「問7」の自由記述の内容を「受講 申込について」,「講習について」,「試験について」,

「その他」の4領域に分けて紹介する.

ア 必修講習の集計結果(15講習 受講者数912人)

①各講習内容について(必修講習全体)

○会場別

<熊本大学会場での必修講習>(11講習 受講者 数654人)

<サテライト会場での必修講習>(4講習 受講 者数258人)

②講習全体について

( )内は平成25年度の数値

(3)

イ 選択講習の集計結果(70講習 受講者数2090人)

①各講習内容について(選択講習全体)

○会場別の結果

<熊本大学会場>(61講習 受講者数1665人)

<サテライト会場>(9講習 受講者数425人)

○担当講師別の結果

<開放制学部以外の教員が担当した選択講習>

(58講習 受講者数1772人)

<開放制学部教員が担当した選択講習>(13講習 受講者数358人)

②講習全体について

⑶結果の概要と今後の課題

ア 講習全般について

○ 必修講習全体,選択講習全体のいずれでも,「各 講習内容について」と「講習全体について」の2 つの分野で,「大変よい」もしくは「よい」と回答 した受講者の割合は95%以上で,平成25年度の結 果より全ての項目で評価が上回っており,大変高 い評価を得ている.(ただし,「講習全体について」

の「県教育委員会の実施する研修とこの更新講習 を組み合わせて整理した方が良いか」の結果につ いては除外している.)

○ 「実践への役立ち度」については,「大変よい」

「よい」との回答の合計が,必修講習で95.4%,選 択講習で95.7%で,昨年度よりそれぞれ3.6ポイ ント,2.4ポイント上回っていた.また,「最新の 知識・技能」については,「大変よい」「よい」の 合計が,必修講習で96.2%,選択講習で96.5%で,

昨年度よりそれぞれ5.1ポイント,5.8ポイント上 回っていた.さらに,「講習の有意義度」について は,「大変よい」「よい」の合計が,必修講習で5.6 ポイント,選択講習で9.0ポイント上回っていた.

こうした結果を見ると,本講習が受講者にとって かなり有益なものとなっているように思われる.

また,受講者のアンケート結果でこのように評価 が高かったのは,講習担当講師が,自分の講習を 振り返り,工夫改善を重ねた結果であると思う.

今後も,講習担当者が,受講者や担当講師の事後 アンケートに目を通したり情報交換をしたりして,

講習のより一層の充実を図っていくことが期待さ れる.

○ 必修講習においても選択講習においても,「県 教育委員会の実施する研修とこの講習を組み合わ せて整理した方がよいか」についての質問につい ては,「思う」と「少し思う」の合計が約78%となっ ており,他の項目に比べれば低いが,昨年度より 10ポイントほど上回っており,研修と更新講習を 整理した方がよいという声が依然根強くある.県 教育委員会との連携を図りながら,更新講習の更 なる充実を図っていく必要がある.

イ 会場別の結果から

熊本大学会場とサテライト会場の会場別に見た場 合,各講習内容について,必修講習及び選択講習の いずれでも,「大変よい」「よい」と回答した受講者 の合計が94%以上で,高い評価を得ている.

特に,サテライト会場での選択講習については,

99.1%が「大変よい」「よい」と回答し,最も高い評 価を得ている.サテライト会場での講習については,

受講者も時間や費用等の面からかなり好意的に受け

( )内は平成25年度の数値

(4)

止めており,これも評価の高い一因となっているよ うに思われる.

本学の特色の一つであるサテライト講習について は,その期待される役割と実際の効果が大きいと考 えられることから,今後とも継続していく必要があ る.

ウ 担当講師別の結果から

選択講習の結果を,更に詳しく担当講師別に見た 場合,各講習内容について,開放制学部以外の教員 が担当した講習では,「大変よい」もしくは「よい」

と回答した受講者の合計が,97.4%で高い評価を得 ている.

ただ,開放制学部教員が担当した選択講習におい ては,昨年度のアンケート調査の結果と比較して,

「講習の手段は有効であったか」の質問に対しては,

「大変よい」「よい」の合計が2.8ポイント,「教育実 践に生かせる内容であったか」の質問に対しては 7.2ポイント,「教師としての幅広い教養や専門性を 磨くのに役だったか」の質問に対しては3.1ポイント,

それぞれ下回っている.また,3つの項目の平均は,

「大変よい」「よい」の合計で見ると,92.9%でかな り高い評価ではあるが,昨年度より4.4ポイント下 回っており他の選択講習より低い数値になっている.

このことについては今後の分析が必要であると思わ れる.講習を担当する講師も,自分の講習を反省し て次年度に備えたり,受講者や担当講師の事後アン ケートに目を通したり情報交換をしたりすることが 求められる.特に,ローテーションで担当講師を決 めている学部にあっては,次年度の担当講師にその 成果や反省点,関連情報など引き継ぎ,講習のより 一層の充実を図っていくことが期待される.

⑷自由記述から(講習を通じて良かった点,改善等)

ア 受講申込について

○ 予約開始からすぐに定員が一杯になり,希望す る講習が予約できなかった.希望の多い講習は,

開設回数を増やすか,定員を増やして欲しい.ま た,申込について早い者順ということについては,

改善を望みたい.

○ 6〜8月分の申込の時期が,3月末の異動の時 期と重なるため,かなりバタバタして大変だった.

もう少し早いほうが良い.

○ 申込が2期に分かれていたので,混雑時にもあ まり焦ることなく申込ができた.

○ 講習の日程や内容が提示される期日が,大学に よってバラバラなので,計画の見通しが立てにく かった.一斉に全内容を提示していただくと受講 計画が立てやすかった.

イ 講習について

①よかったところ

○ 今までの教育実践を振り返ったり,最新の教育 方針や教育手法,指導技術等を知ったりして,今 後の教育活動への方向性や意欲を持つことができ た.

○ 普段あまり触れることのない専門的な話を聞く ことで,自分の日頃の実践を違った角度から振り 返ることができ,今後の教育活動に多くの示唆を 得た.

○ どの講義も内容は異なり,教員を続けていく中 での節目の研修として有意義であったと思う.10 年ごとの講習ですが,その時代に必要なことをき ちんと学べる機会が頂けるのは有り難い.2学期 からの現場で生かしていきたいと思う.

○ 教育に携わる者として,忘れてはならないこと について,多方面から学ばせて頂き有り難かった.

講師の先生方も温かい方ばかりで,元気,勇気を 頂いた.

○ 日々研究を重ねておられる大学の先生の意見や 考えを聞くことができたのは,自分の教育活動を 確認する上で,新たな視点を持つ上でも有意義で あった.

○ 大学ならではの講習が今回いくつもあり,自分 なりに大変刺激になった.県教育委員会との研修 とは分けて実施した方が,本講習の特色がでると 思う.

○ 直接的に授業へとつなげるのは難しい内容も あったが,このような専門的な内容を知って授業 をすることは大切だと思う.なかなか普段は聞く ことのない内容なので,今回このような機会を持 てて良かった.

○ 大学の最新の研究の一端に触れられた点は良 かった.

○ 受講する前はとても不安な気持ちだったが,受 講を終えてみると,今後の教師生活にとても参考 になる内容ばかりで,とても良かった.

○ 講師の先生方の情熱が伝わり,私自身もっと研 究に努め人格的,人間的に成長する必要性を感じ た.

○ 講習内容については,とても充実していたと感 じている.その方法についても,参考になること が多くあり勉強になった.また,幼・小・中・高 の先生方と意見交換等を含めた活動が行えたこと も有意義な講習となった.

○ 実技を取り入れられたり,グループワークが あったりして,すぐに現場で取り組めるものが あったことが良かった.

(5)

②要望及び課題等について

○ もっと現場で使えそうな理論や手法を学びたい と思った.

○ 対象が幼・小・中・高となるので,対象を分け た方がより実践的になるのではないか.

○ 明日に役立つ教育の最新事情を得る目的での講 習と聞いたが,このような理論より,現場で使え る内容にして欲しい.

○ 内容や言葉が難しくわかりにくかった.しかし,

内容は興味があるものだったので,もう少し咀嚼 して聞きたかった.

○ パワーポイントで理論を一方的に説明されるの ではなく,受講者と対話したり,グループ討議を する時間を取って欲しい.

○ 必修講習は,2日連続で実施されるが,1日単 位で2回に分ければ受講しやすいと思った.

○ シラバスの内容と異なる講義内容になってしま う点は困った.

○ 資料やプレゼンテーションの字が小さく見づら いものがあった.もう少し大きい字で提示して頂 くと有り難い.

ウ 試験について

○ 認定試験の時間が30分で設定されているのであ れば,記述する分量を少なくするなど配慮が必要 と思う.十分記述する時間がない.

○ 内容の割にテストが難しすぎです.

エ その他

○ 会場が分かりにくかった.誘導(人,案内板)

をしっかりして欲しい.

○ トイレの時間・休憩時間の確保,終了時間を守 る等,時間を守って欲しい.

○ 熊本大学から遠いところに住んでいるので,大 学まで講習を受けに行くのは時間も費用もかかる.

サテライトなど地域で講習を受けられるのは有り 難い.サテライト講習をもっと増やして欲しい.

○ 講習そのものは有意義であったが,免許状更新 のため受講を強制されることには疑問がある.

○ 様々な立場の先生(大学の先生,教育委員会の 指導主事の先生や学校の管理職の先生など)の専 門的,実際的な話を伺うことができ非常に新鮮 だった.本当に教員の資質を高めるのであれば,

教育委員会等ともっと連携した方が良いように感 じた.

○ 講習自体は有意義なもので,勉強になった.県 教委が行っている研修との組合せが可能ならば,

現場の教員としてはとても助かる.

4 講習担当講師のアンケート結果から

熊本大学では,更新講習を担当した講師を対象に アンケート調査を実施している.担当講師の内訳は,

熊本大学教育学部の教員が最も多いが,文学部,法 学部,理学部,工学部,医学部保健学科,薬学部,

医学部附属病院等,他の学部の教員もいる.また,

県内他大学の教員や熊本県立教育センター,熊本市 教育委員会,熊本市教育センター,公立学校からの 教員もいる.アンケートへ回答頂いた担当講師はの べ96名であった.アンケートの項目は,次に示して いる問1から問6の6項目で,回答結果をその下に 紹介し,その後に「アンケート結果の考察」を記し ている.

⑴アンケートの質問項目と結果

問1 受講者との双方向的なやりとりが,どの程度 図れたか.

問2 受講生の熱意は,どの程度感じられたか.

問3 「事前アンケート」は講習を行うのに役に立っ たか.

問4 修了認定試験を実施する上で配慮したこと・

困ったこと

○ 受講者(多様な経験・年齢層)の解答スピード を考慮し,問題の分量・内容を調整した.

○ 記述式の認定試験を実施したが,時間が足りな かった受講者が数人いた.講義,演習,試験の時 間配分を考慮することが必要かもしれない.

○ 受講者が,幼稚園教諭,小学校教諭,高等学校 教諭,あるいは養護教諭や特別支援学校教諭等多 岐にわたっていたので試験の問題設定に苦労した.

問5 講習を実施した上で見えてきた課題

○ 講義だけでなく,演習・実習を取り入れ講座の 設定をしているが,時間が不足し,講習の内容も 限定されてしまう傾向が見られる.しかし,日頃

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体験したことのない演習・実習も提供したいとい うジレンマがある.

○ 参加された先生方の学校種が様々であり,十分 に満足して頂ける内容を必ずしも届けられていな いのではないかと思う.ある程度,学校種を絞っ た講習の設定は可能だろうか?

○ 受講者の幅が広く(職種,経験年数,現職かど うか等)講習の内容をどこに絞るか大変であった.

○ ただ聴講するだけの講習を受講者は望まないよ うである.参加体験型の在り方を工夫することが 必要であると感じた.

○ 講義と演習形式の組み合わせで実施したので,

講義では理論を習得し,演習では自主的,実践に 学ぶ講習となった.受講者の緊張感が持続できた と思う.講義を聴くだけの一方的な講習だけでな く演習を含む講習が効果的であると感じている.

○ 講習の目的を明確にしておくべきだったと思う.

こちらは大学の講義・実習内容を最先端の知識と して伝達するのが目的と思って実施したが,受講 者は現場で役立つ知識や実験を期待していた方が 多かったようで,そこに講師と受講者のギャップ があった.

問6 その他,来年度の講習開設に向けての意見

○ テーマは同じでも,その時々により新たな国の 方針や世界的な流れ,教育現場で話題になってい ることなど流動的な部分についても,講習の中に 取り入れていくことが受講者のニーズに対応する ことであると思う.熊本大学全体でそのような意 識で取り組む必要性を感じる.

○ 受講者の講習に対する期待はいろいろな意味で 大きいので,講義の内容に常に最新の研究・最新 の時事状況を反映させる必要があると考える.

○ グループワークの中での意見交換・情報交換の 時間を確保し,受講者自身で方策を考えることも 大切である.

○ 幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援 学校の先生たちが一緒に講習を受ける機会はめっ たにない.難しいところもあるが,そのメリット を生かす講習の在り方を工夫することも必要であ る.

○ 教員免許状更新講習は,大学,教育委員会,学 校を結びつける大きな可能性を持っている.また,

それぞれの活動を活発化する効果も期待できる.

そういったことを考えると,今後,いろんな形で の啓発,広報が必要になってくると考える.

⑵講師アンケート結果の考察

○ 「受講者との双方向的なやりとり」については,

「非常に図られていた」「図られていた」の合計が 70.5%で,講習担当者も一方的な講義だけになら ないような工夫をして講習をされている様子が伺 われる.

○ 「受講者の熱意」については,「非常に感じられ た」「感じられた」の合計が99%で,大部分の受講 者が意欲を持ち熱心に受講している様子が伺われ る.

○ 「事前アンケート」については,「非常に役に立っ た」「役に立った」の合計が73.7%であった.「事 前アンケートは必ず見て,当日の講習で答えてい る.事前アンケートの存在は大きい.」と回答し た講師もいて,活用することにより,一層講習を 充実させることができるのではないかと思われる.

○ 修了認定試験については,「試験時間」と「多様 な受講者にあった問題設定」が課題としてあげら れている.今後の検討課題である.

○ 実際の講習においては,「受講者の幅が広く(職 種,経験年数,校種,現職かどうか等)講習の内 容をどこに絞るか大変である.」「受講者の講習に 対する期待はいろいろな意味で大きいので,講義 の内容に最新の時事状況を反映させる必要がある と考える.」「ただ聴講するだけの講習を受講者は 望まないようである.参加体験型の在り方を工夫 することが必要であると感じた.」などの回答が あり,担当講師が,受講者のニーズや目的に合っ た講習内容の構築と精選,講習形態の創意工夫な ど,いろいろと工夫改善し講習に臨まれている様 子が伺われる.このことが,受講者の高い評価に 繋がっているものと考える.

○ 担当講師から,「講習の目的を明確にしておく べきだったと思う.こちらは大学の講義・実習内 容を最先端の知識として伝達するのが目的と思っ て実施したが,受講者は現場で役立つ知識や実験 を期待していた方が多かったようで,そこに講師 と受講者のギャップがあった.」との回答があっ たが,受講者のアンケートの中には,「直接的に授 業へとつなげるのは難しい内容もあったが,この ような専門的な内容を知って授業をすることは大 切だと思う.なかなか普段は聞くことのない内容 なので,今回このような機会を持てて良かった.」

という感想もあり,大学という高等教育機関の教 育・研究の「強み」を生かすという意味での更新 講習の意義についても受講者に理解を求めていく 必要があるのではないかと考えている.

(7)

5 更新講習の有用性と課題等についての考察

⑴平成26年度アンケート結果(受講者,講師)から

見える有用性と課題

ア 有用性

先に受講者のアンケート結果を示したが,その数 値から,また,記述式の感想等から,現在実施され ている更新講習は,受講者にとって,最新の知識・

技能の獲得,これまでの教育実践の振り返り,明日 からの教育実践に生かせる指導技術等の獲得等,か なり有益なものになっていると考えられる.

イ 課題

必修講習において,受講者のアンケート,担当講 師のアンケートから見ると,受講者の多様な校種,

職種に対応するための講習内容の構築と精選は大き な課題である.このことは,来年度から,現行の「必 修領域」を新しく「必修領域」と「選択必修領域」

に分けて実施されることにより,改善が期待される ところである.

⑵「学校経営」の視点から見た有用性

学校においては,学校教育目標の実現に向けて,

学校の総力をあげて教育活動を展開していくことが 求められている.また,現在いろいろな教育改革が 行われてきているが,その具現化を図っていくこと も,学校の大きな責務である.

それらのことを実現するためには,教員一人一人 の資質能力の向上は欠かせないことである.その中 でも,「教員の実践的指導力の向上」を図ることは,

学校経営の視点から考えても最重要課題である2) そのために法においても,教員には研修,すなわ ち「研究と修養」が努力義務として課せられている ところである.教育基本法第9条では「法律に定め る学校の教員は,自己の崇高な使命を深く自覚し,

絶えず研究と修養に努めなければならない.」,また,

教育公務員特例法第21条では,「教育公務員は,その 職責を遂行するために,絶えず研究と修養に努めな ければならない.」と規定している.

そのことを踏まえ,教育現場においては,いろい ろな研修の機会が設けられている.研修については,

職場の中で職務を遂行する過程で直面する様々な問 題や課題を処理し,解決することで身に付ける方法

「OJT」と,職場や職務を離れて研修や研究する方法

「Off-JT」の2面から語られることが多いが,教員 の資質能力の向上は,学校現場においては,様々な 現職研修の場で培われてきた.しかし,現職研修は,

「喫緊の教育課題の解決のための研修」「明日からの 実践に役立つ研修」という一面が強く,現場の教育

課題解決のための「対症療法的な研修」になってい る面も否めない3).当然,それは,現在の教育活動 を充実していくためには重要なことである.しかし,

その現職研修についても次のような課題が見受けら れるという指摘もある.

平成24年8月に出された中央教育審議会答申「教 職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向 上方策について」では,現職研修等について次のよ うな課題の指摘がある.

・任命権者が行う研修については,地域の実情に応 じ,様々なプログラムが提供されているところで あるが,指導伝達方式のものが多く,細切れになっ ているとの指摘もあり,より一層教員の質の向上 につながる研修とするための工夫改善が求められ る.

・教員は,日々の教育実践や授業研究等の校内研修,

近隣の学校との合同研修会,民間教育研究団体の 研究会への参加,自発的な研修によって,学び合 い,高め合いながら実践力を身に付けていく.し かしながら近年では学校の小規模化や年齢構成の 変化などによってこうした機能が弱まりつつある との指摘もある.

また,県内の教育事務所長など所属長等を対象に,

現職研修の課題等について筆者が聞き取り調査をし た結果からは,次のような指摘が上がっている.

・現職研修は,初任研・5年経験者研・10年経験者 研等に応じて体系的に整備され,教員の資質能力 の向上を図る上でかなりの成果が上がっているが,

各教員自身が受講したいと考えるそのニーズに応 じた研修の機会が少ない.

・教務主任や進路指導担当など,担当であれば研修 することで学びの機会を保障できるが,主な担当 ではない教員への研修の機会が少ない.そのよう な教員にこそ研修の機会が必要なのではないかと 思う.

・教員の研修意欲について,研修の意義や目的が自 覚されず,義務的に参加している場合も少なから ずあるように思える.研修主体者には,教員が必 要感を抱くような,そのニーズに対応した魅力あ る研修内容を設定することが期待される.また,

研修受講者の意識改革も大切である.

・学習指導要領の改訂で授業時数が増加したために,

校内研修の時間が減少して必要な研修が十分に行 われていない.

そういう課題の解決に向け,教育現場においても いろいろと工夫,改善されているものと思っている.

一方,更新講習を受けた受講者の感想には,次の ようなものがある.

(8)

・様々な立場の先生の専門的,実際的な話を伺うこ とができ,非常に新鮮でした.受講前は,「教師は スキルアップしている」とうそぶいていましたが,

今は赤面しきりです.本当に良い機会を有り難う ございました.

・日頃の教育現場からの視点ではなく,違う角度か ら学校や授業,子ども達のことを見ることで,新 しい発見があったり,これまでにないものの見方 ができたりして,とても新鮮に感じた.現場の実 践に向けて参考になることもたくさんあったので 有意義だった.

教員免許状更新講習では,専門性の高い大学教員 等からの最新の教育情報の提供,教育の根本となる 原理等に関わる内容の提供があり,教員免許状更新 講習は現職研修では提供しきれないものを補完する 重要な役割を担っているように思われる.教員免許 更新制の本来の目的は,「その時々で教員として必 要な資質能力が保持されるよう,定期的に最新の知 識技能を身に付けることで,教員が自信と誇りを 持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得ることを 目指す」ものであるが,それ以上に,教員の資質能 力の向上(特に実践的指導力の向上)に大きく寄与 していると思われる.そのことをもっと学校関係者 も認識し,日々の教育実践に生かしていくことも必 要であると考えている.

⑶教員免許状更新講習に今後求められるもの

必修講習においては,受講者のアンケート,担当 講師のアンケートから見ると,受講者の多様な校種,

職種に対応するための講習内容の構築が大きな課題 である.このことは,本年度,筆者が必修講習を担 当しても実感したところである.受講者の校種が,

幼・小・中・高・特別支援学校・現在教職に就いて いない人等,実に様々である.講習を受講者のニー ズに合わせてどう焦点化するかは,大変頭を痛める ところでもあった.しかし,そのことは,平成28年 度からの「必修講習」の見直しにより,かなり改善 されるのではないかと期待をしている.

また,受講者のニーズに応じた更新講習を実施す べく,受講対象者に対して,受講希望のアンケート を実施している.昨年度のアンケート結果では,受 講希望分野として,「特別支援教育」「生徒指導」「発 達心理」「情報(ICT)」「コミュニケーション」等を 希望する受講者が多いという実態がある.このこと については,担当講師の都合等もあり,十分に対応 できていないのが実状である.多分に,受講者が希 望する分野は,現在学校等において明日からの実践 に必要とされている事柄であると思っている.そう

いった面からも,受講者のニーズにあった講習を実 施していくということは,今後の大きな課題である と思っている.

一方,教育改革も次々と進んでおり,新たな提案 もなされているところである.受講者のニーズのみ ならず,今,教育改革の中で求められている新しい 内容等についても,講習内容として取り入れていく 必要がある.例えば「道徳の教科化」「小学校での早 期の英語学習の導入」「小中一貫学校(義務教育学校)

の創設」,教育方法としての「アクティブ・ラーニン グの導入」等に関わる内容等,また,現在学校経営 で必要とされている「学校組織マネジメント」や「カ リキュラムマネジメント」に関わる手法等,今の時 代に求められる資質能力等についても,講習内容に 取り入れていく必要性を感じている.そのことが,

「最新の知識技能を身に付ける」という,教員免許更 新制の本来の目的の実現にも繋がっていくものと 思っている.

6 おわりに

教員免許状更新講習の有用性等について,平成26 年度熊本大学教員免許状更新講習のアンケート結果 等から述べてきたが,更新講習の実施に関してはま だまだ改善する事項があり,改善を重ねながら,更 に更新講習が一層充実するよう関係者一同力を合わ せ取り組んでいかなければならないと思っている.

平成24年8月に中央教育審議会から,「教職生活 全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策に ついて」の答申が出され,これからの教員に求めら れる資質能力として,「教職に対する責任感,探究力,

教職生活全体を通じて自主的に学び続ける力」,「専 門職としての高度な知識・技能」,「総合的な人間力」

の3点が提示されている.

ここに,教職生活全体を通じて,実践的指導力を 高めるとともに,社会の急速な進展の中で,知識・

技能の絶えざる刷新が必要であることから,教員が 探究力を持ち,学び続ける存在が不可欠であるとし て,「学び続ける教員像」の確立が図られたことの意 義は極めて大きい.

また,平成26年3月には,「育成すべき資質・能力 を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する 検討会−論点整理−」が出され,「児童生徒に育成す べき資質・能力について」「児童生徒に育成すべき資 質・能力に対応した教育目標について」「児童生徒に 育成すべき資質・能力に対応した学習評価について」

等,検討された論点が示されている.時代の進展に より,「児童生徒に育成すべき資質・能力」も大きく

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変わってくる.そういう資質・能力を児童生徒に身 に付けさせるためには,教員にもそれに対応できる 新たな実践的指導力等が求められることになる.正 に,「教員は学び続けなければならない時代に生き ている」のである.そういう生涯キャリア発達の視 点からも,教員免許更新制の果たす役割は益々増大 していくものと考えられる.

引用文献

1)田中耕治「平成24年度教員免許状更新講習の実施報告」

は,「本格実施4年目の実施状況」について検討し,「教 員養成・採用・研修」の3つの観点から分析を行ってい る.本論文は,田中の問題意識を踏まえつつ,その後3 年間の取組みに基づき検討を進めるものである.『熊本 大学教育実践研究』第31号,熊本大学教育学部附属教育 実践総合センター,2014年,123-130頁.

2)矢尾坂修は,「学校経営の責任者としての役割」について,

「学校ビジョンの構築」「環境づくり」「人材育成」「外部 折衝」の4点を挙げているが,中でも「人材育成」につ いて「学校の教育活動を通じ,自らと教職員の能力を向 上させ,人としての成長を促進する役割である」と指摘 している.このことは,教員免許状更新講習の成果を学 校現場に返すという観点からは特に重要であると考え る.矢尾坂修編『校長・教頭のリーダーシップとマネジ メント術』,教育開発研究所,2015年,2頁.

3)北神正行によれば,「従来,我が国におけるスクールリー ダーとしての力量形成の機会としては,学校での実務経 験,先輩校長による指導や影響,指導主事等の経験,そ

して教育委員会・教育センター等による研修などが主要 なものであった.」とした上で,「学校経営環境を巡る急 激な変化に対応しうるスクールリーダーは学校現場等 での経験や座学を中心とする研修で得られる知識だけ では期待される力量の形成は困難であるという認識が ある.」と課題を提起している.北神正行・高橋香代編

『学校マネジメントとスクールリーダー』,学文社,2007 年,26頁.

参考文献

梶田叡一・山極隆(編著)『教育の最新事情』,ミネルヴァ書 房,2009年.

熊本大学「教員免許状更新講習に関わるホームページ」,

2014年.

熊本大学『平成26年度熊本大学教員免許状更新講習のご案 内』,2014年.

熊本大学「平成26年度熊本大学教員免許状更新講習受講者ア ンケート結果及び担当講師アンケート結果」,2014年.

田中耕治「平成24年度教員免許状更新講習の実施報告」,『熊 本大学教育実践研究』第31号,熊本大学教育学部附属教 育実践総合センター,2014年.

千葉大学教育学部附属教育実践総合センター(編集)『教育 の最新事情(第2版)』,福村出版,2011年

中央教育審議会「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の 総合的な向上方策について」,2012年.

文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内 容と評価の在り方に関する検討会−論点整理−」,2014 年.

参照

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