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Ⅱ 更新講習に対する私立大学の構 え

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(1)

Ⅱ 更新講習に対する私立大学の構 え

関口 昌秀

1 はじめに

私立大学が教員免許状更新講習 (以下、「更新講習」 と略す。)1をどの よう なもの として捉 え、それ とどの ように付 き合お うとしているか、「更新講習 に対する私立大学の構 え」 とで もい うべ きものについて述べてみたい。 ここ で私が 自分の所属大学 をこえて、私立大学全般の傾向を論 じようとするのは、

私が偶 々私立大学教職課程の関係団体に関わることになったか らである。

2 0 0 7

年か ら

2

年間、私の所属する神奈川大学は関東地区私立大学教職課程 研究連絡協議会 (以下、「関私教協」 と略す。)の幹事校 とな り、私が幹事 とし て幹事校会に出席することとなった。幹事の任務の

1

つ として研究部会の世 話人があ り、私は教員免許更新制部会 を担当 した。その関係か ら、翌

2 0 0 8

年 か ら

2

年間、全国私立大学教職課程研究連絡協議会 (以下、「全私教協」 と略 す。)の教員免許更新制検討委貞会の委員 として活動することになった。関私 教協の更新制部会では、更新講習開設前 (試行講習の実施前)の

2 0 0 7

1 2

月に 会員校 を対象にアンケー ト調査 を実施 した。全私教協の委員会の方では、更 新講習が初めて本格実施 された

2 0 0 9

年の

1

1月か ら

1 2

月にかけて同様のア ン

ケー ト調査 を行 った。 これ らの調査結果 はそれぞれ報告書2として公刊 され ている。 これ らの部会 ・委員会では調査の他、大会分科会でのシンポジウム 設計、部会独 自のシンポジウム開催や、試行講習で必修領域 を実施 した大学 への個別調査活動 なども行 った3

幹事 としての活動は、上記部会 ・委員会の他、神奈川地域私立大学教職課 程研究連絡協議会 (以下、「神私教協」 と略す。)4の幹事 としての活動があ り、

神私教協幹事 として、横浜国立大学教育人間科学部長 と連名で神奈川県教員 免許更新講習連絡会の結成に向けた呼びかけを行 った。 この連絡会 は、「神 奈川県内での教員免許更新講習が円滑 に実施で きるようになるためには、免 許管理者であ り任命権者である教育委員会 を含めた情報交換 と意見交換のた

(2)

ProjectPaperNo.22

めのネ ッ トワー クが必要であると考 え」、「国公立大学 と私立大学、教育委員 会の3者が ともに検討 ・連携 してい くための緩やかな連絡会

」( 2 0 0 8

2

2 3

日付文書 「神奈川県教員免許更新講習連絡会 (仮称)結成の呼 びかけ」 よ り) として設置 された ものである

以下では、 これ らの活動 にかかわる中で、他の多 くの大学が教員免許更新 制 をめ ぐって、 どの ように悩み考 えているか、更新講習の問題 をどの ように 捉 えているかなどについて学んだことをもとに して、私の考 えを述べてい き たい。

2 2 つのアンケート調査

2‑ 1 2

つのア ンケー ト調査 を通 してみ る更新講習の問題点

関私教協 と全私教協 の

2

つのア ンケー ト調査 は、 ともに私立大学の教職課 程 を対象 としてなされた ものであ り、更新講習 をめ ぐる問題点が どこにある か、大学の考 え方 をよ く示 して くれる。それは、私立大学 に とっての問題が

どこにあるか を知 る上 に役 に立つ資料である。

関私教協 の調査 は、試行講習の

1

年前、本実施の

2

年前の

2 0 0 7

1 2

月にな された。全私教協調査 は、本実施初年度、ほ とん どの講習が実施 された夏休 み を過 ぎた段 階の

2 0 0 9

1

1月か ら

1 2

月にかけて実施 された。 これ らは調査対 象の地域的広が りがちが うか ら、調査対象数 を異 にす る5。

しか し、全私教協調査 は、先行の関私教協調査 を元 に基本的に設計 してあ るので、 この

2

年 間の変化 を見 ることがで きる。関私教協の質問項 目をみる と、開設前 にどの ような点が問題点 となっていたかの概要 を知 ることがで き る。全私教協調査で採用 した項 目、す なわち両方の調査の共通質問項 目は、

私立大学 にとっての最大関心事 ・最重要問題 といって よいであろう。

2つの調査が共通 に質問 した内容は、<更新講習の実施 日的>、<他大学 や教育委員会 との関係 >、<講習費用の問題 >の

3

つにまとめ られる。

(1

)第

1

は、そ もそ も大学側 にとって義務でない免許状更新講習 を、私立 大学が実施す る日的あるいは理 由や建前が、 どこにあると考 えたか、 とい う

<更新講習の実施 日的>である。

( 2)2

点 目は、<他大学や教育委員会 との関係 >である。私立大学はこれ

(3)

更新講 習に対する私立大学の捕え

まで教育委員会 とほとんど関係 を有 していなかったが、更新講習の実施に際 して、どのような協力連携関係 を構築 したのか。更新講習の実施のためには、

免許管理者である都道府県教育委員会 (以下では都道府 を含めて 「県教委」

と略す。)と県内他大学 との情報交換、あるいはさらに連携協力関係 を必要 と する事情があった。 この点に関する質問である。

(3)3点 目は、更新講習に関わる費用 について、私立大学が どの ように考 えたのか、 とい う<講習費用の問題 >である

これ らの

3

点が私立大学 にとって、更新講習 をめ ぐる重要 な問題点 となっ ている。

もちろん更新講習の問題が以上の3点に尽 きるわけではない。<講習の修 了認定>問題 など、それ以外の問題 もある。それ らについては、関私教協の 項 目設定をみるのが よい。 また、更新講習は問題だけがあったと見 るの も正 しくないだろう。更新講習 をやってみてよかった点 もある。いわゆる更新講 習の成果である。 これについては、全私教協調査か ら若干知 ることがで きる。

2‑2 2

年間の変化 と連続

これ ら

3

つの問題の うち、他大学お よび教育委員会 との連携 ・協力の関係 は、関私教協調査時点ではほとん ど進んでいなかったが、全私教協調査 まで の

2

年の間に大 きく進んでいった。

ただ し、地域 による違いがあ り、連携 とは逆の事態 も発生 した。新聞報道 にもあったような混乱 も生 じた。岩手県教育委員会や名古屋市教育委員会で は教育委員会が独 自に更新講習 を行 ったため、更新講習 を予定 していた各大 学で受講人数が大幅に減少 した とい う問題が生 じた。 (岩手県 と名古屋市の 件 については、全私教協の教員免許更新制検討委員会の場 において、それぞ れの地区の委員か ら直話 された事柄で もある。)

費用問題 における受講料設定については、関私教協調査では文科省例示の

「1

時間当 り

1 , 0 0 0

円」 とい う金額の他 に、その

2

倍程度 を適正 とす る意見 も あ り、その

2

つに分かれていた。だが、実際の更新講習では例示金額の

「1

時間当 り

1 , 0 0 0

円」 をほとんどの大学

( 9

割以上)で採 り入れた。例示金額がい わば標準金額のように扱われる事態 となったわけである。

(4)

ProjectPaperNo.22

‑1 更新講習 を行 う目的 (関私教協調査)

度数 %

社 会 的使 命 47 73.4

卒業生‑ のサービス 31 48.4

文科省 からの要 請 22 31.3

地域との連携 20 31.3

大学 のPR 3 4.7

収 入増 0 0.0

その他 5 7.8

*上記7項目から2項目選択

(出典 :関私教協報告書p.7間8の表より作成)

以上の

2

つが変化 したのに対 して、更新講習の実施 目的については大 きな 変化がない。関私教協調査 と全私教協調査 を比べてみると、小 さな変化 を見 て取 ることはで きるが、大 きな傾向 としてほほほ一貫 している。

3 更新講習の実施 日的

3‑ 1 「社会的使命」

更新講習を実施する目的 として、関私教協調査では、①「社会的使命」、②「地 域 との連携」、③ 「卒業生‑のサー ビス」、④ 「大学のPR」、㊨ 「収入増」、

㊨ 「文科省か らの要請」、⑦ 「その他」の

7

項 目を立て、 この うちか ら

2

項 目を選択 して回答 して もらう方式 を取 った。全私教協の質問 も、文言の一部 変更以外、基本的に関私教協 と同 じである。ただ し、「その他」の項 目立て

をやめ、全6項 目とした。

全私教協調査では、項 目立ては同 じだが、回答の形式が異 なる。項 目ごと に 「重視する」程度 を

4

段 階

(

「非常 に重視する

「どち らか といえば重視する」

「あま り重視せず

「まった く重視せず

」 )

で問 う、項 目ごとの程度選択方式へ と変更 した。 この ように回答方式の変更はあるが、設問の意図は、両者で同 じである。要は、更新講習 を実施する目的 として、各々の大学で どの項 目を 重視 したか、それを知 りたい とい うことである

回答結果 は、 ほぼ同 じである。関私教協調査 (表Ⅱ‑1)では、「社会的使

(5)

更新講 習に対する私立大学の構え

Ⅱ‑ 2

更新講習 を行 う目的 (全私教協調査)

非常 に重要 いえば重視どちらかと 重視せずあまり 重視せずまったく % 社会的使命 79.3 20.7 0.0 0.0 100.0 卒業生‑ のサービス 50.4 34.1 12.6 3.0 100.0 地域との連携 43.0 43.0 12.6 1.5 100.0 文科省からの要請 25.2 45.2 23.7 5.9 100.0 大学のPR 24.4 48.9 24.4 2.2 100.0

*項 目ごとに程 度を選択

(出典 :全私教協報告書p.10間4の表より作成)

命」が第1位(73.4%)を占め、次に 「卒業生‑のサービス」 (48.4%)が続 き、

「文科省か らの要請」 と 「地域 との連携」が3位 グループ (それぞれ34.4%、

31.3%)を占めている

「大学の

PR

」 は4.7%にす ぎず、「収入増」 に至 って は回答ゼロである

全私教協の回答 (表

Ⅲ‑ 2)

を、「非常 に重視」 を選択 した割合の高い順で並 べ ると、次のようになる(文言は関私教協の表現 に統一 した)

「社会的使命」

(79.3%)、「卒業生へ のサー ビス」 (50.4%)、「地域 との連携」 (43.0%)、「文 科省か らの要請」 (25.2%)、「大学の

PR

」 (24.4%)、「収入増」 (0.7%)。 ご 覧のように、優先順位はほとん ど同 じである。

細かいちがいは、関私教協 で同 じ

3

位 グループを占めた 「地域 との連携」

と「文科省か らの要請」が差 を広げ、「地域 との連携」が43.0%で第3位 とな り、

「文科省か らの要請」 は25.2%と下が り、次に くる 「大学の

PR

」 (24.4%)と の差がほとん どな くなっていることである

この ような細かい違いはあるが、私立大学が更新講習 を実施する目的 とす るのが、第

1

に「社会的使命」であることは動かない。「非常 に重視する」と「ど ちらか といえば重視する」の合計 をみると、「社会的使命」の項 目は100%と なっている。更新講習 を実施 したすべての大学が、大学の 「社会的使命」 を 自覚 して、更新講習 を実施 したのである。

(6)

PrqjectPaperNo.22

3‑2

卒業生に対する責任

「社会的使命」 とい う言葉は更新講習実施の包括的な 目標 を示す ものであ り、必ず しも更新講習 を実際に実施する具体的な目的を示す とはいえない面 がある。

た とえば、関私教協 の 「その他」の項 目の回答 には、「キ リス ト教主義大 学の教員研修 に対する責任」 というものがあった。 これは回答 した 「キ リス ト教主義大学」の建学の精神 と結びつけて、更新講習実施の 目的を具体的に 表明 したものである。建学の精神 と結びつ く点で、それは 「社会的使命」 を 述べた ものに他 ならない。

「卒業生‑のサー ビス」 も 「社会的使命」の具体的な形の 1つである。 自 分の大学 を卒業 して教員をしている卒業生に対 して、更新講習の機会 を提供 することは、「卒業生‑のサービス」であるとともに、「卒業生教員‑の研修 の責任」 と考えれば、「社会的使命」の 1つである。

「地域 との連携」や 「文科省か らの要請」 も 「社会的使命」 といえる。「文 科省か ら要請」があることは、大学の 「社会的使命」がそこにあることを文 科省が具体的に指 し示 して くれたことになる。

このように、「社会的使命」 という概念 は広いものであ り、「卒業生へのサー ビス」や 「地域 との連携」、「文科省か らの要請」 な どは、「社会的使命」の 具体的中身 と考 えられる。 したがって、更新講習 を実施 したより具体的な理 由をみるには、「卒業生‑のサービス」以下の項 目を見なければならない。

「社会的使命」 を除けば、「卒業生へのサービス」が更新講習実施 目的の第

1

である。先 にのべた ように、半数の大学が 「卒業生‑のサービス」 を 「非 常に重視」した。「どちらか といえば重視する」を含めると、「卒業生へのサー ビス」は84.5%となる。更新講習 を実施 した大半の大学が、卒業 して教員 と なった ものに対する責務 を自覚 して、更新講習 を実施 したわけである0

免許更新制の大学向け説明会で、文科省の担当課長は、「卒業生 に対す る アフターケア」 と表現 した。 この言葉は、多 くの私立大学教員 とって、現職 教員研修 という未知の領域へ向かって

1

歩踏み出す覚悟 を決めさせ る文句 に なった と私は思 っているが、少 な く見積 って も

、1 0 0

を超 える私立大学がそ の声 に応 えたわけである。

(7)

更新講 習に対する私立大学の捕え

3‑3

地域 との連携

「地域 との連携」は、「卒業生へのサービス」 とはやや違 った志向 とみてよ い。「卒業生‑のサー ビス」 に対置 して言 うな らば、 これは 「地元の教員へ のサービス」である。地元の教員には卒業生 も含 まれる。む しろ他県 よ り地 元の方が多いか もしれない。 だか ら、「地域 との連携」 と 「卒業生‑のサー ビス」が対立するわけではない。にもかかわ らず、そこに示 された責任意識 は、当該大学が立地す る地域へのサー ビス提供 と責任 とい うべ き方向をもっ ている。

「地域 との連携」 には、県や市の教育委員会 との直接の連携協力が含 まれ るが、それに限 らず、 もっと広 いもの も含 まれている。地元の先生が通いや すい場所 として、講習 を開設するとい う在 り方である。

神奈川県教員免許更新講習連絡会の場で、県の教育委員会の担当課長は毎 回、県内の地域別に講習講座開設数 を報告 していた。 これは、県教委が受講 者の交通の便 を非常 に考慮 していたことの表れである。受講者が講習会場 ま で毎 日通えなければ意味がない。会場の開設場所の問題 は、離島を典型 とし ているが、神奈川県内で も通えなければ、離島 と同 じである。た とえ適えて も、時間のかかる場所では無理である。 したがって、 どの県において も、開 設地域の問題 はある。

連絡会は県教委にとって協力要請の場 となった。そこに参加 していた大学 の中には、受講者の交通の便 にも配慮 して、講習開設 を決めた大学 もあった と思われる。それが、「非常 に重視す る」 と 「どち らか といえば重視す る」

を合せて86.0%とい う高い数値 になったのではないだろうか。この数値は「卒 業生‑のサー ビス」の84.1%と肩 を並べ、それ よりほんの少 しだけ多い。「非 常 に重視」では 「卒業生‑のサー ビス」が 「地域 との連携」 よ り7ポイン ト 高いが、「どちらか といえば重視」では 「地域 との連携」の方が9ポイン ト高 かった。

「卒業生‑のサービス」は 「非常 に重視」が高 く、「地域 との連携」は 「ど ちらか といえば重視」の割合が高 くなったことは、大学にとっての距離意識、

親近感のちがいか ら説明で きるのではないだろうか。卒業生の方が地域 より

(8)

PrqjectPaperNo.22

身近な存在だか らである。身内 として親近感を感 じたか ら、責任感 も増す。「非 常 に重視」の割合が 「地域 との連携」より 「卒業生‑のサー ビス」が高 くなっ て現れた理由はそこにあると思われる。 これを逆か ら見れば、大学にとって 地域 も大事だが、大学に学区はあるわけで もな く、 また同窓会組織 に代表 さ れるように卒業生 との関係の方が伝統的に密である。それゆえ、 どうして も 地域 は卒業生に比べて遠 く感 じられて しまう。 しか しそれで もやは り地元で ある

「地元 としての付 き合い」程度には何 らかの責務 を果た さなければな

らない。そ う思わせ るところがあったのである。

神奈川の連絡会‑の参加 は、 まさに 「地元 としての付 き合い」である。そ の参加 自体、「地域 との連携」である。その付 き合いの中で、更新講習開設 に踏み出 した大学 もあったのではないだろうか。

大学は更新講習開設権限を有するが、開設の義務 を負 っているわけではな い。講習を開設するか しないかは原則 として、各大学の判断である。義務が ないといって も、大学は更新講習開設の主要な機関として位置づけ られてい る。それゆえ、大学 には法律的な義務はないが、いわば 「社会的な責務」 と い うべ きものは存在するように制度的にはなっている。

この ような制度的仕組みの中で、連絡会 とい う組織 に参加するのだか ら、

その責任感は連絡会のない所 に比べて増すのではないだろうか。 もっとも、

これを直接示すデー タはない。 また連絡会の結成それ 自体が危機意識の結果 である。連絡会のないところは、その必要性がない所 と見るべ きか もしれな い。 しか し、調査で連絡会の有無 について質問は していない し、 また連携の 在 り方は所 により様 々であったろうか ら、 ここで、 これ以上推測 を重ねるこ

とはやめる。次節で また教育委員会 との関係か ら述べてみたい。

3‑4

考察

そ もそ もなぜ 目的を質問するか と言えば、大学 にとって義務でないにもか かわ らず、講習 を実施 したか らである。教職課程 を有する大学 にとって も、

更新講習は法律上の義務ではない。義務はないが、大学が更新講習実施の主 たる機関 として位置づけ られている。その結果、大学には、いわば社会的責 務 とで も形容すべ きものが付与 された形 となったのである。法律上の義務 と

(9)

更新講習に対する私立大学の構 え

はちがって、社会的責務にはある種の暖昧 さがある。

県によっては、教員養成系の国立大学だけで、県内の更新講習受講対象者 を引 き受け られるだけの講習 を開設可能なところもある。 しか し、首都圏や 大都市圏では、国立大学だけですべての対象者 を受け入れる講習数を用意す ることは無理である。大雑把 な目安 を挙げると、前者のような場合の対象者 は300名か ら500名程度である。それに対 し、後者の対象 は3,000名か ら4,000 名の規模 となる。 したがって、神奈川県の ような所では、私立大学 も更新講 習を開設 しなければならない。

では、どこの大学が開設す るのか。あるいは、各大学で分担 (シェア リング) して開講するのか。大都市圏の大学はこの ような状況におかれていた0

大学の教職課程の任務 は教員の養成で、それは教員免許を取得するまでで ある。就職後の研修については、教員養成系国立大学 と一部の私立大学 を別 として、私立大学がかかわることはこれ までなかった。教員免許更新制 は、

その ような大学 において も現職教員研修 に対 して、応分の負担 を実質的に求 める制度 となっている。

更新講習 を実施 した El的 として、すべての大学が「社会的使命」を挙げたの は、そ うい う背景か ら理解で きるものである。

全私数協調査の記述 回答の中に次の ようなものがある。

「本学 は、神奈川県の委託事業であった現職教員のための聴講生並 びに研 修生講座 を手掛け、その経験 に基づ き、今回の更新講習 を重視 した

」 (全私 教協報告書p.18)

更新講習 を実施する目的 として、 自由記述欄 にこのような回答 を寄せた大 学 は、「地域 との連携」 を 「非常 に重視す る」 と回答 した と推測 して間違い ないだろう。現職教員の研修 を引 き受けて きた大学 にとって、更新講習はそ の延長に位置づ くものだか ら、開設に際 して大 きな困難があった とは想像 し に くい。

それに対 して、本学のように、その ような経験のない大学 にとって現職教 員向けの講習内容 を用意することは、全 く新 しいことだった。 しか もこれは、

自ら望んだ ものでな く、外か らやって きた ものである。更新講習は黒船来航 のようなものである。その ような大学の教員が更新講習の開設に蒔蹄 を示す

(10)

PrqjectPaperNo.22

ことは容易 に想像で きる。今 まで 自分たちで行 ったことのない取組みをする ことになるのだか ら。

この ような大学が更新講習 を開設するに至 った要因として重要なのが、「卒 業生‑のサー ビス」、「卒業生に対するアフターケア」であった と推測 される。

現職教員研修の経験 はないが、それな りに一定数の教員 を輩出 して きた私立 大学では、「社会的使命」 として まず第

1

に 「卒業生‑のサー ビス」 を念頭 においたように思われるのである。全般的に私立大学は国立大学に比べ、卒 業生 との繋が りが強い。 (最近では、東京大学で も同窓会 を組織す るように なったが、それは独立行政法人化 という新 しい事態の中でのことである。)同 窓会か らの働 きかけもあったか もしれない。私立大学は 「卒業生へのサービ ス」 という言葉に弱い。卒業生に対す る責任 と言われれば、肯かないわけに はいかない。

開設 を決める要因は、 目的だけではない。大学の組織 にとっては費用の問 題 は大 きい。更新講習は現職教員研修の経験のない大学では、当局にとって も全 くの新規事業である。社会的使命 と講習予算 との比較考量の問題がある。

これについては、講習費用の節で論 じる。

4 他 大 学や教 育委 員会との関係

4 ‑1 開設 までの 2年間で連携協力が進む

関私教協調査 と全私教協調査 を見比べ ると、更新講習が実施 されるまでに 大学間の連携お よび都道府県 レベルの教育委員会 との連携協力関係が大 きく すすんだことがわかる。

関私教協調査 (表

Ⅱ‑ 3

)では、「他大学 との連携」について

7 1

大学が回答 を 寄せたが、その

3

分の

2

に当る

4 8

大学

( 6 7 . 6%)

は 「未定 ・検討中」 と答えた。

「他大学 との連携 ・協力は考 えていない」 と答 えた大学が

2 1

大学

( 2 9 . 6%)

、「他 大学 と連携 ・協力 を模索 している」 と答えたのは

2

大学

( 2 . 8 %)

であった。

「教育委員会 との相談」 (表 Ⅱ‑4)については、同 じく71大学が回答 を寄 せ、58大学(8

1 . 7 %)

が 「未定・検討中」 と答 えた。「当面相談する予定はない」

と答えた大学が

1 2

大学

( 1 9 . 9%) 、1

大学が 「すでに相談 した」 と答えた。

全私敦協調査 (表 Ⅱ‑5)では

、1 3 3

大学中

9 1

大学

( 6 8

.4%)が 「他大学 との情

(11)

更新講習に対する私立大学の捕 え

Ⅱ‑ 3

他大学 との連携 ・協力 (関私教協調査)

度数 %

未定 .検討中 48 67.6

連携 .協 力は考えていない 21 29.6

連携 .協 力を模索 している 2 2.8

*1項 目選択

(出典 :関私敦協報告書p.1111の表より作成 )

I I ‑ 4

教育委員会 との相談 (関私教協調査)

度数 %

未定 .検討中 58 81.7

連携 .協力は考えていない 12 16.9

連携 .協力を模索 している 1 1.4

*1項 目選択

(出典 :関私教協報告書p.11間12の表より作 成)

報交換 (連絡会 を含む)をした」 と回答 した。都道府県教育委員会 (以下、「県 教委」 と略す。)との関係 (表 Ⅱ‑6)では、72大学(54.1%)が 「県教委か ら各学 校へ更新講習の宣伝広報」 をして もらった。63大学(47.4%)が 「国公立大学 を含めて情報交換 の場」 をもち、lo大挙 (7.5%)が 「国公立大学 は含 まず私 立大学 と県教委で情報交換の場」 をもった。 どちらかの形で県教委 と情報交 換の場 をもった大学が73大学(54.9%)あったことになる。

この ように

、2 0 0 7

1 2

月の段階で、ほとんどの大学では他大学や教育委員 会 との連携協力について 「未定 ・検討中」の段階にあったが

、2 0 0 9

年の更新 講習の本実施においては、講習 を実施 した大学の半数以上が何 らかの形で地 大学や県教委 と間で連絡会等 をつ くり、情報交換の場 をもつ ようになった。

2 0 0 8

年か ら

2 0 0 9

年 にかけて、その ような情報交換の場 をつ くっていったわけ である。

4‑2

連携に向けた具体的動 き

関私教協調査で 「他大学 との連携 ・協力 を模索 している」 と答 えた

2

大学 は、模索中の協力形態 について、次の ように記述 していた。

(12)

PrqjectPaperNo.22

Ⅱ‑ 5

他大学 との連携 ・協力 (全私教協調査)

度数 %

情報交換 (連絡会を含 む)した 91 68.1 開設講座やその定員 .時期について他大学と 7 5.3 調整した

コンソーシアム (更新講 習実施のための法 人) 7 5.3 を作って実施 した

連携 .協 力無 し 4 3.0

複数の大学で共同して実施した 3 2.3

その他 24 18.0

不明 20 15.0

*1項 目選択

(出典 :全私教協報告書p.13間8の表より作 成)

表 Ⅱ‑6 都道府県教育委員会 との関係 (全私教協調査)

度数 %

県教 委から各学校 ‑ 更新 講 習の宣伝 広報を 72 54.1 してもらった

国公立大学を含めで情報交換の場をもった 63 47.4 国公 立大 学 は含まず私 立大 学と県教 委で情 10 7.5 報交換 の場をもった

県教委を交えて開設講座等の調節をした 9 6.8 県教 委が独 自に更新 講 習を開設 して予 定が 3 2.3 大幅にくるった

その他 (具体 的に記述してください) 20 15.0

なし 4 3.0

*当てはまる項目の選択

(出典 :全私教協 報告書p.14間10の表より作成)

「本学 とA大学 (同一県 内の国立大学)は単位互換制 を導入 してお りますの で、その人脈 を活か して、連携 を希望 してお ります。 ただ し、先方 には今 回 のケースではあ ま りメ リッ トが ない と考 え られ ますので、困難 なことも考 え

られ ます

」 (関私教協報告書p.ll)

もう 1つ の大学 は、「コ ンソー シアムを通 して協 同 して開催す るこ とを検

(13)

更新講習に対する私立 大学の捕え

討 している

」 (同p.ll)と記述 していた。

前者の大学は、厳密 にいえば、希望 を述べた段階で、 まだ相手方 と話 し合 いをしてはいない。後者はコンソーシアムのなかで、大学間で話 し合いをは じめたようだ。 コンソーシアムとい う言葉 を私は関私教協の活動に参加 して は じめて聞いたが、それは大学間連携、連携 を取 り合 っている大学の恒常的 な集 まりで、事務局のあるもの、つ ま り何かの活動 を協同で行っているもの を指 しているようである。更新講習の場合 なら、それをコンソーシアムとし て行 うとかが想定 される。 ここに書かれたコンソーシアムが具体的にどこの 地域 を指すのか不明だが、研究報告会の機会に東京多摩地区での活動 を聞い た覚えがあるので、 もしか した らそこか もしれない6。

ちなみに、更新講習の実施に際 して仕組み として、法人資格 を有する団体 のみが実施可能 とな り、任意団体の ように法人資格のないコンソーシアムで はで きないことになった。その場合 は、 どこかの大学の講習 として位置づけ て、そこにコンソーシアムに参加する他大学か ら講師派遣 をするなどの形態 をとり、実施者はあ くまで も法人格 を有する大学が行 うことになった0

関私教協調査で 「県教委 とすでに相談 した」 と答えた大学は、相談の具体 的内容 について次のように記述 していた。

「横浜国立大学の先生 を交 えて県教育委員会の担当者 と一度会合 をもった。

年明けに県内の教職課程 を有す る大学が一堂に会 して情報の共有 をはかれる 場 を設定 しようと、 このア ンケー ト 〔関私教協のアンケー トを指す。引用者 注〕の一部 を借用 したアンケー トを配布 した

」 (関私教協報告書p.1ト12)

これは、私がかかわった神奈川県教員免許更新講習連絡会結成‑向けての 動 きである。書いたのは私である。 (念のために言えば、全私教協調査の本 学の回答者は私ではない。別の人間である。)

2007年12月の段階で、ほ とん どの大学 は他大学や県教委 との連携協力に関 して 「未定 ・検討中」であったが、

2

つの大学の回答か ら、

2

つの地域で連 携協力の動 きが始 まり出 したことがわかる。調査でみるか ぎり、 これ らが関 東地区で最 も早い段階の動 きだった。

当時、更新講習 を開設 しようか と考 えていた大学にとっての問題の 1つは

「受講者数の見込み」が立て られないことであった。 これに関 して関私教協

(14)

ProjectPaperNo.22

調査の 自由記述に、次の ような回答が寄せ られていた。

「受講者数の見込みが全 くたたず経済的 リス クがある。」

「免許更新講習については独立採算制のため受講生の予測がで きない。」

「国立系のみに受講生が集中するのではないか。」

「教育学部 または学科 を有す る大学 との格差が生 じ、受講生数がかたよる 心配がある」 (以上、関私教協報告書p.15)

受講者数の見込みが立たない背景の

1

つは、たとえ開設 して も、現職教員 研修で経験 と実績のある教員養成系国立大学の方に、受講者が流れて しまう のではないか、 とい う不安であった。「国立系のみに受講生が集中する」 と い う心配は、多 くの私立大学が抱いていた不安で もあった。 自分たちがやろ うと思って も、 どれほどの需要があるか見込めない。そこか ら次の ような意 見が出て くる。

「県内他大学 との連携お よびすみ分けをどう調整 した らよいか

」 (同上) 神奈川県での連絡会の結成 は、 この ような背景か らなされたわけである。

それは、教職課程 をもつ県内の国公私立の全大学 と県教委 を含 んで、「更新 講習の円滑 な実施のために情報交換 と意見交換」をすることが趣 旨であった。

ここでの連携 は、あ くまで も 「情報交換 と意見交換の緩やかな」 ものであっ て、けっして 「他大学 とのすみ分けの調整」 まで 目指 した ものではない。受 講定員の調整がで きるとは、私 自身考えて もいなかった。ただ、他大学が ど のような講座 をどの程度開講 しようとしているのかを知 ることにより、 自ず と自分の大学での開講のあ り方が選ばれてい く。 とりわけ、神奈川における 教員養成系 国立大学である横浜国立大学が どの程度の規模で開設するかを知 ることに大 きな意味があった。神奈川県において も、県内受講対象者の半分 以上の定員が横浜国立大学で占め られることになるか らである。当時、その 情報は私立大学にとっては大 きな意味のあるものであった。

この ように教員養成系国立大学 と県教委を含めて情報交換することは、私 立大学にとって必要なことであった。神奈川県において、この ような場はな かった。だか ら、連絡会結成 となったのである。 この点に関 しては、関東地 区で も都県により事情 を異 にする

東京都 には、東京地区教育実習研究連絡協議会 (略称 「東実協」)7とい う、

(15)

更新講習に対する私立 大学の捕え

国公立大学 を含む団体があ り、それが東京都教育委員会 との関係 をもって き ていた。東実協 は関私教協 と別組織であるが、そこに参加 している都内の私 立大学のほとんどは、関私教協東京ブロックの加盟校で もある。だか ら、東 京では更新講習のために連絡会をつ くる必要はなかった。

千葉では、関私教協 の千葉 ・茨城 ブロックの協議会 (千葉県茨城県私立大 学教職課程研究連絡協議会)の活動の中で、千葉県の教育委員会 との連携 を 密にとっていたようである。関私教協の機関誌で活動記録 を見ると

、2 0 0 8

2

月に千葉県の担当者 を招いて研究会 をしている(千葉県教育庁教育振興部教 職員課 による講演 「免許更新制 にむけての千葉県の取 り組み

」 )

8。同 じ年の

1 0

月の研究会では、千葉県の教職員組合代表 を招 いて 「意見交換」 も行 って いる9。国立大学 (千葉大学)との直接の協力関係 はわか らないが、千葉県で はこのように、県教委 と教職員組合 とも連携 をとっていた。 また全私教協調 査か ら、「千葉県

1 0

大学 コンソー シアムが更新講習 システムの共同利用」 (全 私敦協報告書p.18)をしたことがわかる。

4 ‑3 全国的に進んだ連携の動 きと若干の問題

全私教協調査の 自由記述欄 (

間8

「他大学 との連携 ・協力 について」 と間 1

0

「都道府県 レベルの教育委員会 との関係 について」の 自由記述欄)を見て みると、大学間連携 と教育委員会 との連携 について、全国的に進んでい く様 子が見て取れる。

そこには以下の県についての記述が見出される。ただ しこれは、あ くまで も自由記述であ り、県教委の名称 (都道府県名)もほ とん ど付 されていないた め、すべての県の動向を把握 した もの とはいいがたい。 これ以外の県で も連 携は進んだことが考えられる

● 三重県 (三重県教員免許状更新講習連絡協議会 を組織 してこの中で検討、

調整 した。)

滋賀県 (他大学 (滋賀大学)の協力校 として実施 した。)

● 兵庫県 (兵庫県教員免許更新講習連絡協議会 を通 じ情報 を共有。兵庫県 教育委員会主催で県下の大学 と情報交換 を行 った。)

● 中国地方 (教育ネッ トワーク中国に講師を派遣。)

(16)

PrqjectPaperNo.22

Ⅱ‑ 7

受講料の適正額 (関私教協調査)

度数 %

末検 討 56 80.0

1,000 6 8.6 1,500〜2,000 5 7.1 1.000〜1,500 1 1.4 1,000未満 0 0.0

その他 2 2.9

*1項目選択

(出典 :関私教 協報告 書p.87の表 より作 成 )

● 福 岡県 (福 岡はコンソー シアムがないため、福 岡教育大学 を中心 に、国 公私立が連絡会 を開催 し、13大学が鹿児島大学の開発 したシステムを共 同運用 した。ただ し、福岡県教育委員会は、各学校‑の更新講習の情宣 等について非協力的であった。)

● 長崎県 (法人格ではないが 「長崎県教員免許状更新講習連絡協議会」の 傘下で運営 した。長崎県内の国公私立大学 ・短期大学 ・県教委 を含めて、

協議会 を開催 した。)(以上、全私教協報告書p

. 1 8

,

p . 2 0 )

しか し、問題は連携 ・協力が うまく行かず、逆に混乱 を生 じた地域 もあっ たことである。

先述の ように、岩手県教委 と名古屋市教委は独 自に更新講習を行い、その 地域 の講習予定大学 に大幅 な受講人数減 をもた らす とい う結果 を生 じさせ た。全私教協調査で「県教委が独 自に更新講習を開設 して予定が大幅に くるっ た」 と回答 した大学は

、3

大学

( 2 . 3 %)

あった(表

Ⅱ‑ 6

参照)。 また、同調査で、

市町村 レベルの教育委員会 との関係 についての質問で、「市教委が独 自に更 新講習 を開設 して予定が大幅に くるった」 と回答 した大学は

、4

大学

( 3 . 0%)

あった (全私教協報告書p.14)。 この回答大学の所属地域が どこになるか、全 私教協の報告書では不明であるが、回答大学にはそれぞれ岩手県 と名古屋市 に関連 した地域の大学が含 まれているだろうことは間違いない。

その他の地域で も同様の混乱が生 じたか どうかは、この調査か らはわか ら

(17)

更新講習に対する私立 大学の構え

ない。全私教協の教員免許更新制検討委員会 として も、その他 については杷 握 していない。ただ、更新講習本格実施1年 目において、すべての地域が順 調 に教育委員会 との連携 ・協力 を取 りなが らすすめるという訳にいかなかっ たことは記録 に留めて置 くべ きことであろう

。 2

年 目には改善に向かったこ とと思われるが‑ そ うならなければこの制度 自体が安定的に運用 されないか ら‑、具体的にどうの ように改善 されていったかについては不明である。

5 講習 費用の問題

5‑ 1

受講料の標準化への流れ

更新講習の受講料の金額 に関 して、関私教協調査 (表Ⅲ‑7)では、回答 し た70大学 うち56大学(80.0%)が 「未検討」 と答えていた。

これは、ある意味当然である。 とい うのは、更新講習の開設について 「未 定 ・検討中」 と回答 した大学が48大学 にのぼっていた。2009年度開設予定が 22大学、2010年開設予定が3大学、合 わせて も25大学 しか、開設 を決めてい ない段階であった (関私敦協報告書p.6、間 2)。開設 自体が未定なのだか ら、

受講料は当然未定であろう。ただ、開設検討中が48大学で、受講料未検討が 56大学だか ら、開設予定大学の中の8大学が受講料未定であったことになる。

2010年開設予定の3大学 は受講料未検討 と考 えて よいだろうか ら、2009年 開 設 を決めた大学で も

、5

大学 はまだ受講料 まで議論が進んでいなかった と推 定 される。大学内での議論の進み方 として、 これは予想 されることである。

ここで注 目すべ きは、受講料 について、1時間当た り1,000円 と回答 した大 学が6大学ある一方で、その倍の金額の1,500円〜2,000円 と回答 した大学 も5 大学存在 していた とい うことである。1,000円 とい う金額 は、文科省が例 に 挙げた金額であ り、以後大勢 としては、この金額が主流 を占めることになる。

それが、 この段 階では、1,500円〜2,000円 とい う金額が、設定金額 として適 正 だ とす る回答が、1,000円 とほぼ同数あったことは、今か ら振 り返 ってみ

ると、それ以後

2

年間の流れを示 している。

全私敦協調査 (表Ⅱ‑8)をみると、受講料 を1時間当た り1,000円 とした大 学が117大学(88.0%)ある。それに対 し1,500円以上 とした大学 はわずかに

2

大学にとどまった10。受講料1,000円未満の大学 も6大学あ り、受講料1,000円

(18)

PrqjectPaperNo.22

Ⅲ‑ 8

受講料の適正額 (全私教協調査)

度数 %

1.000 117 88.0 1,001円〜1.500 8 6.0 1,000未満 6 4.5 1,500〜2

,

000円未満 1 0.8 2.000円以上 1 0.8

*1項目選択

(出典 :関私教 協報告書p.10間5の表より作 成 )

以下が

9

割以上

( 9 2 . 5%)

となったことがわかる

これは関私教協調査 との違いである。関私教協調査で 「

1 , 5 0 0

〜2 , 0 0 0

円」

を適正金額 と答えた大学が実際にどうしたのかはわか らない。教材費 と受詩 料 を別な費 目と考えて、回答 したか もしれない。そのような細かい点につい てはわか らないのだが、 ともか く更新講習 を実施 したほ とん どの大学では、

文科省 による例示金額 「1時間当た り

1 , 0 0 0

円」 を受講料 と設定 して、講習 を開設 したわけである。

このように、更新講習の開設に当たっては、例示の

「1

時間当た り

1 , 0 0 0

円」

が、いわば実質的な標準 となっていったわけである。

5‑2

更新講習の費用

では、受講料収入だけで講習費用 を賄 うことはで きたのだろうか。 この点 をみると、全私教協調査 (表

Ⅱ‑ 9)

によれば、半数近 く

( 4 4

.

4

%)の大学が、受 講料収入で講習費用 をほぼ賄 えた と回答 している。逆 にいえば、半数以上

( 5 1 . 8%)

の大学で、赤字だったことになる。約

1

( 1 0 . 5%)

の大学では、費 用の

2 0%

未満 しか受講料ではまかなえなかった。

講習費用が どの程度になるか、ここで少 し計算 してみ よう。講習の開設規 模 によ り金額が大小す ることは当然 だが、 ここでは、必修領域

1

講座定員

1 0 0

名、選択領域

( 1 8

時 間相 当)

5

講座各定員

4 0

名 として概算 してみ よう。 こ れを例 とする強い根拠があるわけではないが、研究会で知 りえたい くつかの 私立大学の規模が この程度の ところにあった。 ちなみに、神奈川大学の規模

(19)

更新講習に対する私立 大学の構え

Ⅱ‑ 9

受講料収入で賄 えた更新講習費用 (全私教協調査)

度数 %

120%以上 19 14.3

ほ100% 40 30.1

80%程 度 18 13.5 60%程 度 15 ll.3 40%程 度 18 13.5

20%程 度 4 3.0

20%未満 14 10.5

その他 (未回答を含む) 5 3.8

合計 133 100.0

*1項目選択

は必修領域1講座定員100名、選択領域 は12講座定員25名〜50名、選択 と必 修の総定員520名だか ら、 これ よりやや大 きい。

このモデルの場合、受講料収入は、選択必修 を合せた延べ時間 ×定員が(12 時間×100人 +18時 間×40人×5講座)4800時間 ×人 と算 出 され るので、480 万円 となる。講師手当を1時間当 り2万円 とす ると、講座の延べ時間は(12時 間+18時間×5講座)102時間なので204万円 となる。事務経費を含めなければ、

この定員で十分黒字 となる。講師手当だけならる。 20人の受講者で収支が均衡す

今の計算では、講師手当は試行講習の講師手当の最高額‑ ただ し、特別の 人、例えば歌舞伎俳優‑の謝金などを除いて‑ を適用 した。試行講習の報告 書11で見 ると、国立大学では講師手当を1時間当 り8,000円か ら9,000円 とした ところが多い。 しか し、講師手当については記入のない大学 も多 く、講師謝 礼金 とは別に、教材作成謝礼金、問題作成謝礼金、採点 ・成績報告謝礼金を 計上 した ところ もあ り、実質的な講師手当が2万円を超 えた ところ もあった か もしれない12。

1

時間当 り

2

万 円は神奈川大学の ものだが、 これは 「学外講座 (県民講座、

市民講座、特別講座等)の講演料 に準 じて算出」 (試行講習報告書p.316)した ものである。講演料 としてみれば、 この金額はごく普通であろう。おそ らく

(20)

PrqjectPaperNo.22

国立大学の基準 は大学の授業の手当を基準 としたものであろう。弘前大学で は 「非常勤講師手当額 と同額 とした」 とある(試行講習報告書

p. 2 7 )

0

ともか く、今のモデルでいえば

5 0 0

万、その倍額 として

1 , 0 0 0

万円。 この程 度が私学における更新講習の規模 と見積 られる。 もちろん大学によって事情 を異に し、 もっと大規模 に行 った大学 もある。神奈川県において も小学校教 諭免許 を出 しているある私立大学 は、必修領域

5 0 0

名定員で実施 した ところ

もある。その場合は

1 , 5 0 0

万円規模 となるだろう。

しか し、規模の大 きさでいえば、何 といって も教員養成系の国立大学の場 合である。規模が大 きす ぎる東京学芸大学

( 4 , 0 0 0

人規模)を除 くと、東京近 県の埼玉 ・神奈川の場合

、2 , 0 0 0

名近 くが定員 となる。必修領域

1 , 8 0 0

名、選 択領域

1 , 5 0 0

名 としてみ ると、受講料収入 は

4 , 8 6 0

万 円 となる。定員全 てが埋 まるとほな らない として も、講習費用 は

3 , 0 0 0

万 円か ら

4 , 0 0 0

万 円規模 を想定 することになる。 これ と比べれば、本学のように中学校 と高等学校の免許だ けを出 している 「普通の」開放制教員養成課程の私立大学は、その

5

分の

1

か ら

1 0

分の1ということになる。

5‑ 3 社会的使命 と講習費用

「3

更新講習の実施 日的」の ところで述べた ように、更新講習 を実施 し た私立大学のすべては、程度に差はあれ、更新講習実施の 「社会的使命」 を 自覚 していた。その うちの

8

割は 「社会的使命 を非常 に重視 した」。非常に強 く社会的使命 を自覚 した ということは、更新講習費用 をいわば 「社会貢献費 用」 として大学の予算で賄 う覚悟があった とみて よいのではないだろうか。

大学定員

( 4

学年で)

1

8

千人の大学 は授業料 を年額

1 2 0

万円 として、年 間

2 0 0

億 円余の授業料収入がある。 この予算規模か らすれば

、1 , 0 0 0

万円の更新 講習費用 はその

0 . 0 5%

である。大学の財政状況 にもよるが、神奈川大学程度 の大学規模で先のモデル規模の更新講習を開設することは、大学の 「社会貢 献費用」 として過大 というほどの もので もないだろう。ちなみに

、2 0 0 9

年の 更新講習において神奈川大学では、「約

7 0 0

万円の支出に対 して、受講料収入 が約

3 5 0

万円であったため

、3 0 0

万円以上の支出超過 となった」 13と報告 され ている。

(21)

更新講習に対する私立大学の捕え

実際、先 に見たように、全私教協 の調査で も過半数の大学で赤字 だった。

私立大学だけでな く国立大学 を含めて、本実施

1

年 目は講習定員に対す る受 講者の充足率が全般的に低かった

。2 0 0 9

7

5

日の神奈川新聞には 「講習申 し込み低調」 と題する記事が出た

。「

〔神奈川〕県内の 〔更新講習受講〕対象 者の うち

5

月末時点で申 し込みを済 ませた人は

5

割未満。横浜国立大学では

6 0 1 0

人の募集枠 に対 して申 し込みは

9 6 0

人にとどまっている

」 とある。

受講者が少なかったことは、次の ようなことによるのではないか と推測 さ れている

。1

つは

1年 目の受講対象者の一定数が前年実施 された試行講習 (予 備講習)を受けていたことである。更新講習が 「不適格教員のチェ ック」 に 利用 されるだろうとす る不安感か ら1年 目の受講 を見合せた者 もいると思わ れる。 また、間近に迫 る衆院選 において民主党政権が誕生 し教員免許更新制 その ものが廃止 されるとの期待感か ら受講 を見合せた者 もいたであろう。「政 権交代」は実現 したが、教員免許更新制は

2 01 0

年度 も存続することとなった。

全私教協調査では、 このような状況 をふ まえ、次年度

( 2 01 0

年度)の更新講 習開設 について も質問 していた。 これに対 しては、過半数 (58.7%)の大学が 実施す ると回答 していた (全私教協報告書p

. 1 5 間1 3 )

。過半数の大学が赤字 になったにもかかわ らず、過半数の大学が翌年 も実施すると回答 したわけで ある。次年度は 「規模 を縮小 して実施する

」( 2 9 . 3%)

と回答 した大学 もある か ら、赤字縮小 について も考量 し判断 したとい うことであろう。

ともか く、 この ように不安定な状況の中で実施 を決断 したことは、更新講 習実施の社会的使命感 を強 く自覚 したことを示す もの といって よいだろう。

関私教協 の調査 において、ある大学 は、「更新講習については独立採算制 のため受講者数の予測がで きないことが問題である」 (関私教協報告書p.15) と記述回答 した。この大学が更新講習 を実施 したか否かについては不明だが、

独立採算制 を取 ることと更新講習実施に社会的使命感を見出す こととは、必 ず しも矛盾するわけではない。 しか しなが ら、 この ように独立採算制 を基本 とする大学では、そ うでない大学に比べて更新講習の実施のために、その規 模や開設の有無 を含めて厳 しい検討 を迫 られることになった と思われる。

(22)

PrqjectPaperNo.22

5‑ 4 大学のPRと講習費用

Ⅱ‑ 8

を見てわかるように、少数だが、更新講習の受講料 を

1 , 0 0 0

円未満 に設定 した大学が、 6大学 (4.5%)存在 した。受講料の具体的金額 について は不明だが、全私教協の委員か らの直話 によれば、中国地方のある大学では

3 0

時間で

3 , 0 0 0

円ほ どの金額だった とい う。つ ま り、標準の10分の

1

だった わけである。 この大学の 目的は 「大学のPR」であったとい う。

関私教協調査で更新講習 を行 う目的 として 「大学のPR」 と回答 した大学 は 3大学 (4.7%)だった。それが、全私教協調査で 「大学のPR」 を 「非常 に重視 した」 と回答 した大学の割合 は

、2 4

.

4

%にまで上 った。「どち らか と いえば重視 した」 まで含めると、「大学のPR」 を重視 した大学 は

、7 3 . 3%

にもなる。ほとん どの大学で、更新講習は 「大学のPR」の場で もあったわ けである。

私立大学が更新講習 を 「大学のPR」の場 と位置づけることは、各め られ るべ きことではない。首肯で きることである。多 くの高校、高校教員にとっ て、大学は遠い存在である。「高大連携」 とい う言葉が声 を大 きくして語 ら れるようになったが、それは未だ課題であ り、その実態はまだまだ小 さなも のに止 まっているというべ きであろう。 とりわけ、名前の知 られていない小 さな大学 にとって、更新講習はPRの場 として大 きな意味をも 。名前の多 少知 られた大学 に して も、現場の教員か らはほとんど偏差値 を通 して眺め ら れるだけであ り、それ以外の側面、各大学の もつ多面的な実態については知

られないままである。そ うい う点か らす ると、大学 にとって更新講習は、 自 分たちの実際の中身 (の一端)を知 って もらう絶好 の機会 を提供す ることに なった。

大学のPR費用 と考 えれば、先のモデルで見積 って も支出となる講師手当 は

2 0 0

万円にす ぎない。国立大学並みに授業料手当 とすると、それは

1 0 0

万円 以下 とな り、大学案内等の広報誌の印刷代 と比べて も、はるかに少ない金額 である。7割 を超 えた大学が「大学のPR」を意識 して更新講習 を行 ったのは、

このような費用対効果 を考えてみれば、理の当然 と言 うべ きか もしれない。

(23)

更新講 習に対する私立 大学の捕え

6 それ以外の問題

6‑ 1

修了認定の問題

関私教協調査では、更新講習の修了判定試験の方法について質問 していた (間13)。そ して、それに続けた設問(間14)で、次の ように質問 していた。「更 新講習中の事故、成績判定に対する訴訟等 に対応す るために、大学 として何

らかの保険に入 ることを考えていますか」、 と。

この ような質問項 目が設定 されたのは、更新講習制度には修了認定問題が 伏在 しているか らである。

更新講習は、1つの講座 ごとに 「厳格 な」修了判定試験 を実施 して、その 修了を認定することになっている。必修領域 な ら12時間を1つのまとま りと して、その修了 を認定す る。選択領域の場合 は、6時間で 1講座 とす るか、

あるいは12時間ない し18時間を 1講座 として、その講座 ごとに修了を認定す る。試験 はペーパーテス トである必要はな く、内容により実技試験で もよい が、 ともか く試験である以上、合否がある。

「否」 となった場合、その受講者 は別の講習 をもう

1

度受講 しなければな らない。ただ し、必修12時間なら別の必修12時間を受講 しなければならない。

選択講習の場合 は、その時間分だけ別の選択講習 を受講 しなければならない。

そ して、その講座の修了判定試験 に合格 しなければならない。 このように し て、必修12時間、選択18時間分の修了認定 を受けることが、教員免許が更新 される条件である。

したがって、修了判定試験 「否」の場合、受講者の失職 とい う可能性があ る。教員免許が更新 されなければ、教員 として学校で教 えることがで きな く なるか らである。

このような仕組み となっているため、「〔更新講習の〕成績判定を厳密 にす ればするほど、不合格者が増 え、失職の可能性‑訴訟に発展 というケースが 出ることが予想 される」 (関私教協報告書p

. 1 4 )

、 とい う心配 も発生すること になる。た しかに、理論上、 この ような危倶が教員免許更新制 とい う仕組み の中には存在 していることは否定で きないのである。

(24)

PrqjectPaperNo.22

6‑2

実施 しなかった大学の問題

これまで更新講習を実施 した大学 を対象 として更新講習の問題 を見て きた が、私立大学の中には更新講習 をしなかった大学 も数多 くある。それ らの大 学はどの ような理由により、更新講習 を実施 しなかったのであろうか。実施 しない理由については関私教協で も全私教協で も調査 していないが、い くつ かの推論は可能である。以下、考えられる理由を少 し考えてみ よう。

実施 しない理由を推測する手掛 りとなるのは、

2

つの調査が設定 した 「更 新講習実施の 目的」の項 目である。両調査 ともに、「社会的使命

「卒業生‑

のサー ビス

「文科省か らの要請

「地域 との連携

「大学の

PRJ

「収入増」を、

実施 目的 として掲げているが、 これ らの項 目すべてに当てはまらないと大学 が判断 したときには、更新講習が実施 されない可能性が高 くなるとみてよい だろう。

これ以外の理由をさがす とすれば

、 1

つは今述べた修了認定をめ ぐるリス クである。 この ようなリスクをおか して まで、実施す るには及ばない という ものである。

また、 もう少 し消極的な理由 も存在 していた とも考えられる。他大学で実 施するか らうちの大学で行 う必要はない、少な くとも

1

年 目か らする必要は ない、 とい うものである。関私教協調査において、本実施

2

年 目か ら予定す ると回答 した大学 も、3大学存在 していた (関私教協報告書p.6

間2) 02

年 目か らとい うのは、大学の準備が間に合わないとい うことである。関私教協 調査では、更新講習実施のための学内体制づ くりについて も質問 していた(間 3)が、 どこの大学にとって も、 これ まで存在 しなかった更新講習 とい う釈 しい事業 をは じめるのは、大学内の組織体制づ くりを含めて、大変なことで ある。そこまでの労力 をかけて

1

年 目か ら実施 しようとい う熱意が出な くて もしかたがない。実際、東京都 を見れば多 くの大学があ り、そのすべての大 学が実施する必要性は存在 していなかった とい う事情はある。

財政的な理由か ら実施 しなかった大学 も当然あったはずである。表

Ⅱ‑ 2

か らわかるように、収入増 を目的 として実施 した大学 も

1

大学あった。おそ

らくその大学は一般に新規事業 とい うものに伴 うビッグチ ャンスに賭けたの だろう。 しか し、新規事業による収入増 とい う明確 な目的意識 を持たないか

(25)

更新講習に対する私立 大学の捕え

ぎり、ふつ うに考 えてみれば、大学の事業 としては新規予算の出費増が予想 されるか ら、そう簡単 にはは じめないであろう。新規事業はビッグチャンス で もあるが、新 しい ものにはリスクがあるとい うの もビジネス的常識である リス クの方 を重視すjtば、少な くとも

1

年 目は様子 を見 ようとい うの も賢明 な判断か もしれない。

6‑3

教員免許更新制そのものの問題

更新講習 を実施 した大学はそこに 「社会的使命」 を見出 したが、教員免許 更新の制度その ものについてみれば、ちがった見方 も可能である。

教員免許更新制 とい う制度その ものがおか しい とす る考 え方 も存在す る。

制度誕生の経緯 を見れば、 この制度が如何わ しさを引 き摺 っていることが見 えて くる。

わが国では、教員免許更新制はその本来の 目的ではな く、む しろ 「不適格 教員のチェック」のために提案 された

( 2 0 0 0

年教育改革国民会議)とい う由来 がある。だが、 この提案 に対 して

、2 0 0 2

2

月の中央教育審議会答 申は、適 格性確保や専 門性 向上のためには、教員免許更新制は妥当でない とした (た

だ し、教員免許更新制 に代 えて、十年研修が導入 された)。

それが

、2 0 0 6

7

月の中央教育審議会答 申は

、2 0 0 2

年答 申と方針 を変更 し、

「その時々で求め られる教員 として必要 な資質能力が保持 されるよう、定期 的に必要な刷新 (リニューアル)を図るため」 として、つ まり 「不適格教員の チェック」のための もの としてではな く、教員免許更新制 を導入す ることを 適当 した。

ただ し、安倍政権の教育再生会議は

、 2 0 0 7

6

月の教育職員免許法改正直前、

免許更新 に絡んで 「不適格教員に厳 しく対応すること

」( 2 0 0 7

1

月教育再生 会議第1次報告)を求めたことを見ておかなければならない。

わが国における教員免許更新制 は、 この ように 「不適格教員のチ ェック」

とい う免許更新の本来的趣 旨とはちが う目的をそこに代替 させ ようとする意 図を抱 えて議論 されて きた。更新制の議論が このような特有の事情 を抱 えて いるゆえに、文科省 もホームページで更新制が適格性確保でないことを宣伝 した。 しか し、現場教員か らはなかなか信用 されなかったようである。受講

(26)

PrqjectPaperNo.22

者側の大 きな心配はここにあった。教員組合 もその点についてナ‑ヴァスで あった。

この ような歴史的母斑 をもった制度に対する大学側の考え方 も、 ここで分 かれることになる。適格性確保でな く「資質能力保持のための刷新 (リニュー アル)」 と改善 されて制度化 された以上、何 とか更新講習 を 「実のあるもの」、

受講者 にとって少 しで も有意味な 「研修」 となるように しよう、 と更新講習 を位置づけ実施 しようとす る立場が1つである。 もう1つは、 この制度がか かえる如何わ しい歴史的母斑のゆえに、あ くまで も制度の実効化 に反対 し更 新講習 を実施 しない とす る立場である。

もちろん、 この ような 「きれいな」区分は理念型 とい うべ きもので、現実 には、 この

2

つの間でそれぞれの大学の教員たちは思い悩み揺れ動 き、その 中で

1

つの結論が出されていったということになるだろう

教員免許更新制が、 これか らも制度 として存続す る限 り、 この ような歴史 的母斑 を引 き摺 らざるを得 ない。それを引 き摺 りなが ら更新制の 「性格」 を 実態 レベルで作 り直 してい く、つ まり制度その もの も 「更新」 してい く。そ の ような運命にあるのではないだろうか。

6‑ 4 大学の内部的事情

今 まで大学の理由として一括 して述べて きたが、実情 を見るには大学の内 部 まで見なければならない。た とえば、上の第

1

の立場、すなわち適格性確 保でな く、資質保持のための 「刷新 (リニューアル

)

」の制度 として実現 され た以上、更新講習 を実施すべ きであるとする立場 に教職課程担当教員が立っ ていて も、大学当局が第

2

の立場に立つ ならば、更新講習は実施 されないで あろう。

一般に、大学の意志 を決定するのは学長などの大学当局であるが、更新講 習の実施 に際 しては各大学の教職課程担当教員の意向が大 きく影響 したと考 えられる。教職課程の教員の協力がなければ、更新講習の具体的中身をつ く

りあげてい くことがで きないか らである。一般的にいえば、大学当局の意向、

教職課程担当教員の考 え方、お よび両者の関係、この

3

つがその大学での更 新講習実施の是非 を決定す る要因である。

参照

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