バ ス 事 業 に お け る 規 制 と 競 争
︱︱ 高速 バス を中 心に
︱︱
若 林 亜理 砂
は じ め に
Ⅰ 道路 運送 法上 の規 制
Ⅱ 現在 のバ ス事 業に おけ る問 題点 とそ の背 景
Ⅲ バス 事業 のあ り方 検討 会中 間報 告書
Ⅳ 独占 禁止 法上 の問 題点 等
Ⅴ 結び に代 えて
︱︱ 今後 の方 向性
︱︱ は
じ め に 近年
、バ ス事 業に おけ る自 由化 が進 んで いる
。日 本経 済が 停滞 する 中で
、同 じく 自由 化に よっ て様 々な サー ビス を提 供す る異 なる 交通 手段 の間 での 競争 も激 しく なっ てお り、 その 中で
、低 料金 で新 しい サー ビス を提 供す るバ ス など も出 現し て人 気を 博し てい る。 特に 注目 され てい るの が高 速を 利用 して 長距 離運 行を 行う いわ ゆる
﹁高 速バ ス﹂ であ る。 乗合 バス 全体 の輸 送人 員が 平成 一一 年の 五一 億七 二〇
〇万 人か ら平 成二 一年 の四 三億 四〇
〇万 人に 減 少し てい るの に対 し、 乗合 高速 バス の輸 送人 員は
、平 成一 一年 に六 六六
〇万 人か ら平 成二 一年 に一 億九 九二 万人 と
その 数を 大き く増 加さ せて いる こと か
( )
らも
、高 速バ スが 消費 者に 受け 入れ られ てい るこ とが 窺え る。
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その 一方 で、 高速 バス を含 む長 距離 バス の安 全性 が問 題と され るよ うな 事件 が起 きて いる
。代 表的 なも のが
、平 成一 九年 二月 一八 日の スキ ーバ スの 事故 で
( )
ある
。こ れを きっ かけ に高 速バ スを 含む 貸切 バス 事業 の問 題に 注目 が集
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まる よう にな り、 平成 二〇 年八 月か ら平 成二 二年 九月 まで 総務 省に よる 行政 評価
・監 視が 行わ れ、 調査 報告 書が 提 出さ
( )
れた
。同 報告 書に おい ては
、国 土交 通省 に対 して
①貸 切バ ス事 業に おけ る安 全確 保対 策の 徹底
、② 収受 運賃 の
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実態 把握 及び 公示 運賃 の検 証、
③旅 行業 者へ の指 導・ 監督 の強 化、
④貸 切バ ス事 業者 に対 する 監査 の効 果的 かつ 効 率的 な実 施、 を内 容と する 勧告 がな され てい る。 これ を受 けて 国土 交通 省で は﹁ バス 事業 のあ り方 に関 する 検討 会﹂ を開 催し
、高 速バ スを 含む バス 事業 のあ り方 につ いて 検討 を行 って おり
、平 成二 三年 七月 には 中間 報告 書を 公 表し てい る。 本稿 は、 特に 高速 バス を中 心と した バス 事業 に関 する 規制 の現 状と 問題 点に つい て検 討す るこ とを 目的 とす る。 後述 のよ うに
、現 在消 費者 に﹁ 高速 バス
﹂と して 認識 され てい るバ スサ ービ スに は、 高速 乗合 バス と高 速ツ アー バ ス︵ 貸切 バス の︶ 二つ があ るた め、 まず
、乗 合バ ス及 び貸 切バ スに つい ての 従来 の規 制と その 自由 化に つい て概 観 した 後、 現在 のバ ス事 業に おけ る問 題点 とそ の背 景に つい て検 討し
、そ れに 関し て公 表さ れた バス 事業 のあ り方 に 関す る検 討会 の中 間報 告書 につ いて 概観 する
。そ の後
、独 占禁 止法 上の 問題 につ いて 検討 し、 今後 のあ るべ き方 向 性に つい て検 討し たい
。な お、 本稿 にお いて
﹁高 速バ ス﹂ とは 高速 乗合 バス 及び 高速 ツア ーバ スの 双方 を含 むも の とし て記 述す る。
Ⅰ 道路 運送 法上 の規 制
ઃ 乗合 バス に関 する 規制
⑴ 参 入 規 制
① 従 来 平成 一四 年以 前は
、乗 合・ 貸切 バス を含 めた 運輸 事業 全般 につ いて 需給 調整 がな され てい た。 その 理由 とし て は、 運輸 事業 の公 共性
、地 域独 占が 起こ りや すい とい う特 殊性
、輸 送に おけ る安 全の 重要 性等 が挙 げら れる
。乗 合 バス に関 して は、 路線 ごと の免 許制 がと られ てい た。 免許 が与 えら れる ため の前 提条 件と して
、⑴ 事業 の開 始が 輸 送需 要に 対し 適切 であ る、
⑵事 業の 開始 によ って
、当 該路 線に 関わ る供 給輸 送力 が輸 送需 要量 に対 して 不均 衡に な らな い、
⑶事 業の 遂行 上、 適切 な計 画を 有す る、
⑷事 業を 自ら 的確 に遂 行す る能 力を 有す る、
⑸事 業の 開始 が公 益 上必 要で あり 適切 なも ので ある
、こ とが 必要 とさ れて いた
。 運行 計画 につ いて も、 運行 系統
・運 行回 数が 認可 制と され てい た。 また
、退 出に つい ても
、休 止・ 廃止 は許 可制 とさ れて いた
。
② 平成 一四 年改 正︵ 道路 運送 法及 びタ クシ ー業 務適 正化 臨時 措置 法の 一部 を改 正す る法 律︵ 平成 一二 年五 月二 六日 法 律第 八六 号、 平成 一四 年二 月一 日施 行︶
︶ 平成 一四 年に 行わ れた 改正 は、 従来 から の制 度の 大き な転 換を 意味 して おり
、乗 合バ ス事 業に おけ る﹁ 規制 緩 和﹂ とい った 場合 この 改正 を指 す。 前記 のよ うに バス 事業 を含 め運 輸事 業分 野全 般に わた り従 来は 需給 調整 規制 が行 われ てい たが
、競 争抑 制的 な量 的事 業規 制の 必要 性は 薄れ てお り、 需給 調整 を目 的と した 事業 免許 制度 は撤 廃さ れる
( )
べき
、需 給調 整や 運賃 規制 を
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廃止 して も、 社会 規制 によ って 安全 性の 確保 は可 能で
( )
ある
、等 の主 張が なさ れる よう にな った
。そ こで 運輸 省︵ 当
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時︶ は、
﹁今 後の 運輸 行政 にお ける 需給 調整 の取 扱に つい て﹂
︵平 成八 年一 二月 五日 運輸 省許 認可 事務 等改 革推 進本 部決 定︶ にお いて
、① 人流
・物 流の 全事 業分 野に おい て、 原則 とし て、 目標 期限 を定 めて 需給 調整 規制 を廃 止す る、
②
その ため の環 境又 は条 件を 整備 する とと もに
、利 用者 保護
、安 全確 保等 の観 点か ら、 必要 な措 置を 講ず る、 との 基 本方 針を 定め
、目 標期 限を おお むね 三年 ない し五 年後 とし て運 輸事 業全 般の 需給 調整 規制 を抜 本的 に見 直す こと と した
。平 成九 年に 策定 され た規 制緩 和推 進計 画で は、 運輸 関係 に関 して
﹁真 に豊 かな 国民 生活 と内 外の 変化 に対 応 した 経済 構造 の実 現に 向け
、事 業機 会の 拡大
、新 規事 業の 創出 や内 外価 格差 の縮 小等 によ る消 費者 利益 の向 上を 目 指す とと もに
、物 流コ スト の低 減、 旅客 輸送 サー ビス の向 上、 国際 輸送 の競 争力 の確 保等 を目 指す 観点 から
、需 給 調整 規制 の廃 止等 関係 諸規 制に つい て、 撤廃 を含 め緩 和等 を進 める
﹂と し、 具体 的に は、
﹁乗 合バ ス事 業に 係る 需 給調 整規 制に つい て、 生活 路線 の維 持方 策の 確立 を前 提に
、遅 くと も平 成一 三年 度ま でに 廃止 する
﹂こ とが 閣議 決 定さ れた
。こ れを 受け
、同 年四 月、
﹁交 通運 輸に おけ る需 給調 整規 制廃 止に 向け て必 要と なる 環境 整備 方策 につ い て﹂ が運 輸大 臣よ り運 輸政 策審 議会 に諮 問さ れ、 一一 年に 同審 議会 にお いて 審議 がな され た。 その 結果
、道 路運 送 法及 びタ クシ ー業 務適 正化 臨時 措置 法の 一部 を改 正す る法 律案 が平 成一 二年 二月 に提 出さ れ、 同年 五月 一九 日に 可 決、 五月 二六 日に 公布 され た。 この 法律 の主 要な 改正 点は
、乗 合バ ス需 給調 整の 廃止 であ る︵ 同時 にタ クシ ーの 需給 調整 も廃 止さ れて いる
。︶ 従来 の免 許制 は許 可制 とな った
︵道 路運 送法 四条
︶。 許可 にあ たっ ての 基準 とし ては
①当 該事 業の 計画 が輸 送の 安全 を確 保す るた めに 適切
、②
①の ほか
、当 該事 業の 遂行 上適 切な 計画 を有 する
、③ 当該 事業 を自 ら的 確に 遂行 する に足 る 能力 を有 する
、こ とが 挙げ ら
( )
れる
。ま た、 路線 計画 など の事 業計 画は 認可 制で ある が、 運行 系統
・運 行回 数に つい
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ては 三〇 日前 まで の届 出制 とな った
。 これ によ り、 新規 参入 が期 待さ れる こと とな った が、 その 場合 採算 の取 れる 時間 帯の み参 入す る事 業者 が現 れる こと が懸 念さ れた
。そ のた め、 国土 交通 省は 事業 計画 変更 命令 を行 うこ とが でき ると され
、同 条項 はク リー ムス キ ミン グ防 止条 項と 呼ば れて いる
。路 線の 休廃 止に つい ては
、国 によ る許 可制 から
、地 域住 民の 生活 交通 の確 保に 関
する 協議 を目 的と して 都道 府県 が設 置し
、市 町村
、バ ス事 業者 など で構 成さ れる 地域 協議 会で 協議 が済 んで いる こ とを 条件 とし て六 ヶ月 前ま で︵ 五〇
㎞未 満の 路線 の︶ 国へ の事 前届 出制 とな り、 不採 算路 線の 休廃 止が 容易 にな っ た︵ 道路 運送 法一 五条 の二
︶。
⑵ 運賃
・料 金規 制
① 従 来 従来
、乗 合バ スの 料金 につ いて は、 総括 原価 方式 に基 づく 認可 制が とら れて おり
、そ の算 定は
、ブ ロッ ク別 標準 原価 制度 によ りな され てい た。 全国 を二 一の ブロ ック に分 割し
、各 ブロ ック ごと に原 価算 定対 象事 業者 の原 価の 加 重平 均を 求め る。 そし て、 これ をブ ロッ ク別 の標 準原 価と し、 運賃 原価 はこ の標 準原 価と 実績 原価 の中 間の 値と し てい た。 この よう な中 間値 を運 賃原 価と する のは
、事 業者 間の 実績 の差 は地 理的 な条 件を 理由 とす る場 合も あり
、 差の 半分 はこ の地 理的 な要 因、 残り の半 分は 事業 者の 効率 性の 問題 と見 なし てい たた めで ある
。
② 平成 六年 改正 平成 六年 に施 行さ れた
﹁許 可、 認可 等の 整理 及び 合理 化に 関す る法 律﹂ 三二 条で は、 道路 運送 法の 改正 を行 って いる
。同 条は
﹁一 般乗 合旅 客自 動車 運送 事業 に係 る総 収入 を減 少さ せな いと 見込 まれ る範 囲内 で、 運輸 省令 で定 め ると ころ によ り、 適用 する 期間 又は 区間 その 他の 条件 を定 めて
、同 項の 認可 を受 けた 運賃 又は 料金 の割 引を 行う こ とが でき る。 この 場合 には
、当 該一 般乗 合旅 客自 動車 運送 事業 者は
、あ らか じめ
、そ の旨 を運 輸大 臣に 届け 出な け れば なら ない
。﹂ とし
、営 業政 策的 な割 引運 賃に つい ては 例外 的に 届出 制を とる こと とし た。
③ 平成 一四 年改 正 平成 一四 年改 正に つい ては 前記 で改 正の 経緯 につ いて 述べ たが
、運 賃等 につ いて も大 きな 改正 を行 って いる
。従 来原 則と して 総括 原価 方式 の下 での 認可 制で あっ た運 賃は
、上 限認 可制 に変 更さ れた
。申 請さ れた 上限 運賃 を認 可
する に当 たっ ては
、バ ス事 業者 が営 業す るブ ロッ クの 標準 的な 費用
︵標 準原 価︶ をも とに 計算 する 標準 原価 方式 が 引き 続き とら れる こと とな った
。こ の原 価に 加え られ る﹁ 適正 な利 潤﹂ は、 バス 事業 に関 係す る資 産の 額に
、自 己 資本 の割 合︵ 標準 値と 実績 値の 平均 値︶ を乗 じ、 さら に一 定の 自己 資本 報酬 率を 乗じ て計 算さ れる
。こ の上 限認 可料 金の 範囲 内で 実勢 運賃 につ いて は三
〇日 前ま でに 届出 がな され る。 この よう に、 従来 より も自 由に 事業 者が 運賃 等を 決定 する こと がで きる よう にな った が、 問題 のあ る運 賃設 定が なさ れる 可能 性も あり
、道 路運 送法 九条 六項 は国 土交 通大 臣が 変更 命令 を行 うこ とが でき ると 規定 して いる
。こ の 変更 命令 は、
①社 会的 経済 的事 情に 照ら して 著し く不 適切 であ り、 旅客 の利 益を 阻害 する おそ れが ある
、② 特定 の 旅客 に対 し不 当な 差別 的取 扱い をす るも ので ある
、③ 他の 一般 旅客 自動 車運 送事 業者 との 間に 不当 な競 争を 引き 起 こす おそ れが ある
、場 合に 行い 得る とさ れて いる
。
④ 平成 一八 年改 正 地域 住民 の生 活交 通の 確保 のた めに
、地 域の 関係 者が その 運賃 につ いて 合意 した 場合 上限 認可 制を 届出 制と する こと が可 能と なっ た。
貸 切 バ ス
⑴ 参 入 規 制
① 従 来 貸切 バス につ いて は、 乗合 バス と同 様に 従来 は需 給調 整が 行わ れて おり
、事 業区 域ご とに 需要 と供 給の バラ ンス を判 断し
、事 業者 に対 し免 許が 与え られ てい た。 また
、貸 切バ ス事 業の 休廃 止に つい ては 認可 制が とら れて いた
。
② 平成 一二 年道 路運 送法 改正
︵道 路運 送法 の一 部を 改正 する 法律
︵平 成一 一年 法律 第四 八号
︶︶