保育者養成としての「体育」における
「自ら動ける身体作り」についての検討( 2 )
若松 美恵子
Ⅰ はじめに
人とのコミュニケーションがうまくできない,自分の気持ちや考えをうまく表現できな い,相手に伝えられない。このようなことが教育の現場でよくささやかれている。それは,
子どもに限らず教師においても同様である。そのような中,保育者養成課程や社会福祉士 養成課程において,さらにはそれらのリカレント教育課程において,身体性および人との 関わりを重視したカリキュラムとその授業内容の検討がなされている。新山 順子・高橋 敏之(
2003
)は,「保育者としてふさわしい身体を養成する身体表現の可能性とその実践」の中で,保育者にふさわしい身体を獲得するためには,身体的コミュニケーション育成を 包括した授業内容が必要であると述べている。西 洋子(
2001
)は,「保育者と身体性」の中で,柔らかなからだを保育者の専門性の一つと位置づけている。柔らかなからだとは,
からだが他者や外界にひらかれていることや,生きた身体で周囲の人々と響きあうことで あると述べている。八木ありさ(
2006
)は,「身体性を重視した社会福祉援助技術演習プ ログラムの作成と実施に基づく効果に関する検討」の中で,身体性を重視した社会福祉援 助演習プログラムが,ソーシャルワークの基盤となる自己と他者の理解や,人間の多様性 を受け容れる態度に触れる体験を重ねながら,決めつけずに,相手を尊重し自分も尊重で きるよう,自己のありようを常に吟味し続ける力を準備する上で役立つことが示唆された と述べている。また八木ありさ(2007
)は,「ダンス・セラピスト養成の学習課題を導入 した援助技術演習指導に関する研究」の中で,非言語的もしくは身体表現による自発的で 即興的なやり取りの連鎖を体験する,というダンス・セラピスト養成の学習課題の特性が「援助技術の体験的理解」の学びを深め,また福祉援助技術の背景となる他者との関係形 成能力への意識を高め,また自己や他者の内的状態と適合した関係のあり方を探る力を涵 養することに役立つことが示唆されたと述べている。
これらの論文のキーワードは,身体,表現,コミュニケーション,そして自己理解・他 者理解と考える。すなわち教育・保育・福祉に携わる人間を育てるカリキュラムの中に身 体を動かし,人とかかわり,身体で表現することを基盤とした授業内容をすえることは,
Mieko WAKAMATSU:A Study of Making Creative and Self-Controlled Bodies for Students Through Physical Education in Nursery Teacher's College(2)
保育者やソーシャルワーカー自身の身体表現能力や対象者(幼児・児童・被援助者) への 援助・指導の能力やコミュニケーション能力の高い人間(身体) を育てるという基本的考 えである。本研究もこのような考えに立ち,さらに保育者の独自性を考えながら保育者養 成としての「体育」の中で,「自ら動ける身体作り」を中核に据え,身体表現,友達との コミュニケーション,そして自分を知り他者を知るという授業方法を意識的に工夫して研 究的に行い,保育者養成に取り組んでいる。
Ⅰ-
1
本学の保育者養成としての「体育」保育者養成のカリキュラムにおいて,本務校の「体育」の授業目標を次のように定めてい る。保育者として必要な身体運動に関する基礎的な知識と技能を習得させ,自ら動ける身 体を作り体力の維持増強をはかる。また,子どもの発達をふまえ,保育における運動遊び の援助・指導に関する基礎的な知識や技能の習得を目指し実践的に学ばせる。
「体育」の前期において,学生が課題意識を持って授業に取り組むよう,第
1
回目の授業 で「授業のねらい及び学習目標」,「身体運動に関する基本的な知識と技能」「目標設定の 理由」「自ら動ける身体及び目標」を提示し,内容を具体的に説明している。(詳細は紀要43
号を参照)筆者は,長年,伸びやかにリズミカルに動ける身体,考えて柔軟に動ける身体,創造的 に動ける身体,自分を知り他者をも知り,認める心,自分と他者との心とからだの交流等 を保育者養成の要ととらえ,学生が柔軟で解放された心とからだを習得できるよう授業の 内容・方法を研究し実践してきた。(若松・
2007
)Ⅱ 研究の目的と方法
1
.研究目的
2004
年度と同様に授業の中核に「自ら動ける身体作り」を据えて,同様の授業内容を2005
年度は方法に工夫・改良をして実施する。特に2
年間同様の内容を行うことにより,授業内容・方法が保育者養成としての「自ら動ける身体」を育成するのに信頼性があるか 検討する。そこから,保育者養成としての「体育」の目標の一つの「自ら動ける身体作り」
のメソッドを確立すべく授業内容の構造を明らかにする。
2
.研究方法2
-1
.授業の実施① 対 象 本校保育科
2
年生2
クラス 計84
名(女子79
名 男子5
名)② 授 業 実 施 期 間
2005
年4
月~7
月③ 授業目標と概要 (表
1
)前期の授業は間に
3
週間の幼稚園実習をはさんで大きく二分できる。そこで,前半は目標の①運動の極限までのびのびとリズミカルに動けるようにする,②自分で多様な動きを 見つけ動けるようにすることを意識して授業を組み立てた。授業実践①②③⑤では,主に 準備体操の習得を通して身体の部位や運動の種類を知らせながら,運動の極限までのびの びと動くことやメリハリをつけて動くこと等からリズミカルに動くことを強調した。さら にフォークダンス,レクダンス,そして簡単ないろいろなステップの習得を通してリズミ カルに楽しく動くこと,そして自分で考えて自ら動くことの初歩的な練習「身体で窓を作 ろう」を行った。そして実習に行く
2
週前の授業実践④で準備体操のテストを行い,実習 の前の週,授業実践⑤で「体育の授業における自己評価1
」を実施した。幼稚園実習後の後半の授業において,授業実践⑥では身体の部位,運動の種類を知り自 ら多様な動きを見つける練習を行った。授業実践⑦では,運動(走る・止まるから伸縮・
回転・跳躍) からある感じをとらえた一連の動きを作ることを行った。授業実践⑧では,
新聞紙を教材として,イメージの引き出し,運動および動きの引き出しを行い,身体表現 へと展開した。そして馴染みのあるリズミカルな曲にのって,授業実践⑨では,身体の色々 な動かし方を探求するからイメージしたものになって動く(リズムから表現へ)を行い,
授業実践⑩⑪では,運動からイメージしたものの特徴をとらえてオーバーに動く(動きの デッサン)を行い,授業実践⑫では,(-が~をしている)のようにイメージをもって動き,
さらに誇張して感じをとらえた動き(一連の動き)を作ることを行った。
2005
年度では授 業実践⑨⑩⑪⑫でイメージと運動を結びつけた指導を2004
年度にも増して工夫し,感じを とらえた一連の動き作りへと導いた。これらの過程で平行して小作品作りに取り組み,テー マの決定,動きのデッサン,感じをとらえた一連の動き作り,表現したいものになりきって 動き表現できるように段階的に授業を組んだ。授業実践⑬では,主に感じをとらえた一連の 動きを中心に創作活動を行い,創作活動最後とした。授業実践⑭では,創作ダンスの発表と 鑑賞を行い,同日,授業実践⑮では,「体育の授業における自己評価2
」とまとめを行った。④ 授業の方法
1
) 毎授業の最初に本時の目標を知らせ,自己の目標をもち終わりにはまとめと確認を し,ノートに記入させる。2
) 学生の「恥ずかしさ」を考慮して,一斉に動くようにする。また人とのかかわりを 自然にもてるように,さらに各人が主体的に,責任もって動けるように2
・3
人で動き,最大
5
・6
人のグループとする。3
) 進め方は自由と即興を柱とするが,各授業時最後には発表・鑑賞を行なう。2
-2
.検討の方法① 教員自身の授業記録
② 学生の
2
回の自己評価の分析から授業の目標の達成度をみる2005
年5
月13
日に自己評価1
(評価項目Ⅰ~Ⅴ)を実施2005
年7
月22
日に自己評価2
(評価項目Ⅰ~Ⅹ)を実施自己評価票には学籍番号のみ記入させ,すべてそろっているもののみ検討の対象と する。
③ 学生の毎時間の自由記述(学んだこと,感想)
授業を
15
回すべて出席した学生のノートから無作為で2
名抽出する。Ⅲ 結果と考察
1
.「自ら動ける身体作り」に関する学生の自己評価から授業内容を検討する① 自己評価の項目と設定の理由
先に述べた授業の目標,自ら動ける身体作りの設定の理由および目標から項目Ⅰ~Ⅹを 設定した。(詳細は紀要
43
号を参照)② 学生の自己評価の結果
1
)5
月13
日に実施した1
回目の学生の自己評価1
の結果は次のとおりであった。Ⅰ~Ⅴの各項目について
1
名を除いて99
%の学生が「理解できた」「かなりできるように なった」「かなり楽しんで動く」またはそれに続く「少し理解できた」「少しできるようになっ た」「少し楽しんで動く」と回答し,授業の目標の各項目に達成感がもてている。その内 容を見ると,Ⅰのびのびと大きく動くとはどういうことか理解できましたかについては,86
%の学生が理解できたと答えているが,Ⅱのびのびと大きく動くことができるようにな りましたかについては,実際にかなりできるようになったと答えているのは39
%である。しかし,「少し」も含めれば全員が理解できたと答え,できるようになったと答えている。
Ⅲリズミカルに動くことを楽しむことができるようになりましたかについては,
88
%の学 生がかなり楽しんで動くと答えているが,Ⅳリズミカルに動けるようになりましたかにつ いては,実際にかなりできるようになったと答えているのは44
%である。しかし,「少し」も含めれば全員が楽しむと答え,
99
%の学生ができるようになったと答えている。Ⅴ人の 動きを見ることができるようになりましたかについては,60
%の学生がかなりできるよう になったと答えており,「少し」も合わせると全員ができるようになったと答えている。2
)7
月22
日に実施した2
回目の学生の自己評価2
の結果は次のとおりであった。(表2
) Ⅰ~X
の各項目について93
~100
%の学生が「理解できた」「かなりできるようになった」「かなり楽しんで動く」またはそれに続く「少し理解できた」「少しできるようになった」「少 し楽しんで動く」と回答し,授業の目標の各項目に達成感がもてている。
その内容を見ると,Ⅰのびのびと大きく動くとはどういうことか理解できましたかにつ いては,
82
%の学生が理解できたと答えているが,Ⅱのびのびと大きく動くことができる ようになりましたかについては,実際にかなりできるようになったと答えているのは50
%である。しかし,「少し」も含めれば
99
%の学生が理解できたと答え,できるようになっ たと答えている。Ⅲリズミカルに動くことを楽しむことができるようになりましたかにつ いては,82
%の学生がかなり楽しんで動くと答えているが,Ⅳリズミカルに動けるように なりましたかについては,実際にかなりできるようになったと答えているのは55
%であ る。しかし,「少し」も含めれば全員が楽しむと答え,98
%の学生ができるようになった と答えている。V人の動きを見ることができるようになりましたかについては,76
%の学 生がかなりできるようになったと答えており,「少し」も合わせると全員ができるように なったと答えている。Ⅵ自分で多様な動きを見つける方法が理解できましたかについては,55
%の学生が理解できたと答えているが,Ⅶ自分で多様な動きを見つけることができるよ うになりましたかについては,実際にかなりできるようになったと答えているのは35
%で ある。しかし,「少し」も含めれば93
%以上の学生が方法を理解できたと答え,できるよ うになったと答えている。Ⅷある感じをとらえた一連の動きを作る方法が理解できました かについては,45
%の学生が理解できたと答えているが,Ⅸある感じをとらえた一連の動 きを作れるようになりましたかについては,実際にかなりできるようになったと答えてい るのは35
%である。しかし,「少し」も含めれば99
%の学生が理解できたと答え,95
%の 学生ができるようになったと答えている。この点においては,授業に工夫を凝らしたが,2004
年度とほぼ同様の結果であった。X身体で表現できるようになりましたかについて は,59
%の学生がかなりできるようになったと答えており,「少し」も含めれば99
%の学 生が表現できるようになったと答えている。以上,
5
月13
日に行った学生の自己評価1
および7
月22
日に行った学生の自己評価2
の結果 から,保育者養成としての体育における「自ら動ける身体作り」の目標は学生の理解を得,ほぼ達成されたと考えられる。
③ 自己評価の各項目の評価の理由
自己評価の理由の記述は任意であり,自由記述である。記述を
KJ
法により分類し検討 した。1
)5
月13
日の自己評価1
の結果の理由は次のとおりであった。Ⅰ のびのびと大きく動くとはどういうことか理解できましたかについては,その理由 としてまず,「極限まで大きく動くということが分かった」(
75
%)が挙げられ,運動の極 限まで身体の部位を意識しながら動かすとは具体的にどういうことであるかが分かったと いうことである。また続いて「のびのびと大きく動くことは気持ちが良い」(8
%),「人の 動きを見てのびのびと動くということが分かった」(5
%),「のびのび動くと表現が伝わる」(
6
%)が挙げられた。したがって,のびのびと大きく動くとはどういうことかについて人 の動きを見ることにより,また実際に動いたときの気持ちよさから理解できたといえよう。Ⅱ のびのびと大きく動くことができるようになりましたかについては,その理由とし
て次のことを挙げている。「のびのび大きく動くことを意識して動いた」 (
42
%),「のびの び大きく動くことができるようになった」(38
%)という実感であり,続いて「恥ずかしが らずに大きく動け楽しくなってきた」(10
%),「のびのび大きく動くのは気持ちがよい,楽しい」(
4
%) であった。つまり,のびのび大きく動くことを意識して動くようになった 結果,のびのびと大きく動くことができるようになり,さらに恥ずかしがらずに大きく動 けるようになったといえよう。そのことから大きく動くことは気持ちがよいことを実感し ている。したがってほとんどの学生が授業を通して大きくのびのびと動くことの意識を もって動くようになったといえよう。Ⅲ リズミカルに動くことを楽しむことができるようになりましたかについては,その 理由として一番に,「リズミカルに動くことが楽しい」(
70
%)が挙げられ,さらに「友達 とのかかわりの中でリズミカルに楽しく動けた」(25
%),「初めは恥ずかしかったけれど だんだん楽しく動けた」(2
%)である。その記述例をみると,全員がリズミカルに動くこ とを楽しむことができるようになったと感じ,授業の始めでは恥ずかしかった学生も皆で 一斉に動き,友達と一緒に動き関わることによって,次第にリズミカルに動くことを楽し いと感じるようになったといえよう。Ⅳ リズミカルに動けるようになりましたかについては,その理由として一番に,「リ ズムを感じながら楽しく動けるようになった」(
80
%)が挙げられ,続いて「楽しく動くこ とができるようになった」(13
%)が挙げられた。その記述例をみると,音楽にのって様々 に動き楽しむことと,友達と一緒に動き関わることによって,次第に楽しくリズミカルに 動けるようになったといえよう。99
%の学生がリズミカルに動くことができるようになっ たと感じているが,1
名の学生が「ならない」と答え,理由の中で「リズムに合わせて動く ことが苦手なためうまくできない」と答えている。Ⅴ 人の動きを見ることができるようになりましたかについては,その理由として一番 に,「人の動きを見ることから多くのことを学んだ」(
58
%) が挙げられ,続いて,「他の 人の動きをよく見ることができた」(29
%), 「人によって動きや表現の違いがあることが わかり楽しい」(2
%)が挙げられた。その記述例をみると,授業を通して人の動きをみる ことにより,自分の動きの改善点に気がつき,他の人の個性を発見し,他の人の動きや表 現を見ることを楽しんでいる。これらのことから学生自身の動きの向上だけでなく,人の 動きには様々な個性があることを知り,認めることなど,将来保育者として子どもを援助・指導する目や姿勢を養うことになると考える。
2
)7
月22
日の自己評価2
の結果の理由は次のとおりであった。(表2
)Ⅰ のびのびと大きく動くとはどういうことか理解できましたかについては,その理由 としてまず,「極限まで大きく動くということが分かった」(
68
%)が挙げられ,のびのび と大きく動くとは具体的にどういうことであるかが分かったということである。また2
つ目の理由として「のびのび動くと表現が伝わる」(
13
%) が挙げられ,さらに「のびのびと 動くことは気持ちが良い」(7
%),「人の動きを見てのびのびと動くということが分かった」(
5
%)が挙げられた。したがって,のびのびと大きく動くとはどういうことかについて理 解できたと同時に人の動きを見ることから表現性にも気がついているといえよう。Ⅱ のびのびと大きく動くことができるようになりましたかについては,その理由とし て共通に次の事柄を挙げている。まず,「のびのび大きく動くことができるようになった」
(
26
%)という実感であり,さらに「のびのび大きく動くことを意識して動いた」(31
%),「恥ずかしがらずに大きく動け楽しくなってきた」(
7
%),「のびのび大きく動くのは気持 ちがよい,楽しい」(12
%)であった。つまり,共通に身体のどこをどう伸ばすのかなど がわかり,それを意識して大きく動くようになり,その結果のびのびと大きく動くことが できるようになったと認識し,恥ずかしがらずに大きく動けるようになったといえよう。そのことから大きく動くことは気持ちがよいことを実感し,ほとんどの学生は授業を通し て大きくのびのびと動くことの意識をもって動くようになったといえよう。
Ⅲ リズミカルに動くことを楽しむことができるようになりましたかについては,その 理由として「リズミカルに動くことが楽しい」(
69
%)が挙げられ,さらに「友達とのかか わりの中でリズミカルに楽しく動けた」(11
%),「初めは恥ずかしかったけれどだんだん 楽しく動けた」(5
%)である。その記述例をみると,99
%の学生がリズミカルに動くこと を楽しむことができるようになったと感じ,授業の始めでは恥ずかしかった学生も一斉に 動き友達と関わることによって,次第にリズミカルに動くことを楽しいと感じるように なったといえよう。しかし,1
名の学生が「どちらでもない」と答え,理由として「リズム に合わせるのは苦手だなと思う」と苦手意識が払拭されていない。Ⅳ リズミカルに動けるようになりましたかについては,その理由として「リズムを感 じながら楽しく動けるようになった」(
43
%),「楽しく動けるようになった」(7
%) を挙げ,その記述例をみると,授業の始めでは恥ずかしかった学生も授業の中でリズミカルに様々 に動く中で,友達と一緒に動き関わることによって,次第に楽しくリズミカルに動けるよ うになったといえよう。
99
%の学生がリズミカルに動くことができるようになったと感じ ているが,1
名の学生が「どちらでもない」と答え,理由の中で「でも,努力しました」と努 力したが苦手意識が払拭されなかったことがわかる。またその他の理由として,授業の中 で音楽に合わせてたくさん身体を動かしたこと,いろいろな運動の種類を動いて学んだこ と,授業で教わったことを意識して動き,努力したこと,そしてその結果「リズミカルに 動けるようになった」と,全授業を通しての様々な取り組みからリズミカルに動けるよう になったことがわかる。Ⅴ 人の動きを見ることができるようになりましたかについては,その理由として「人 の動きを見ることから多くのことを学んだ」(
38
%) ,「人によって動きや表現の違いがあ ることがわかり楽しい」(30
%),「他の人の動きをよく見ることができた」(17
%)が挙げられた。その記述例をみると,授業を通して人の動きをみることの大切さを学び,それを 行うことによって良い動き,改善すべき動きに気がつき,人の動きをみて学ぶ姿勢ができ たといえよう。また,さらに自分では思いつかない表現や動きをする他の学生に気がつき,
人によって様々な表現があること,個性があっておもしろいと気づいている。これらのこ とから学生自身の動きの向上だけでなく,子どもの動きを見る目や姿勢が養われ,さらに 異なる様々な個性を認めるという,将来保育者として子どもを援助・指導するのに必要な 資質の養成になっていると考える。
Ⅵ 自分で多様な動きを見つける方法が理解できましたかについては,その理由として
「多様な動きを見つける方法がわかった」(
24
%),「自分が思ったままに体を動かしてみる」(
18
%),「色々なことをイメージしながら身体を動かす」(19
%),「人の動きを見ることか ら多くの動きを見つけられた」(7
%)が挙げられた。その記述例をみると,授業を通して 運動の種類や身体の部位など動きを見つける方法がある程度理解でき,授業中自分が思っ たままに,イメージしながらどんどん動くことによって,さらに友達同士で動きを見るこ とによって理解できるようになったといえよう。Ⅶ 自分で多様な動きを見つけることができるようになりましたかについては,その理 由として「動くことによって様々な動きを見つけられるようになった」(
25
%),「イメージ して動きを見つけられるようになった」(23
%),「友達との関わりの中で動きを見つける」(
13
%),「授業を通して少しずつできるようになった」(7
%)が挙げられた。その記述例 をみると,多様な動きを見つけるための授業の方法からできるようになったといえよう。つまり,身体の部位や運動の種類からイメージして即動くことを少人数のグループでの活 動から学んだといえよう。これらのことから,身体の部位を様々に動かして動きを見つけ られるようになり,次第にイメージしたことや表現したいことから動きを見つけられるよ うになったといえよう。
Ⅷ ある感じをとらえた一連の動きを作る方法が理解できましたかについては,その理 由として「一連の動きを作る方法が具体的に理解できた」(
23
%)として,「特徴をとらえ る・デッサンから動きを膨らませる・イメージしたものから身体の部位を動かしてみる・見つけた動きに異なった種類の運動をつなぐ・同じ動きを繰り返す・メリハリをつける・
高さや速さを変える・まず動き,つなげる」などであった。他の理由として「授業の様々 な内容・方法を通して理解できた」(
14
%),「先生や友達から学んだ」(5
%) が挙げられた。それらの記述例をみると,授業で提示して行ったことは一通り挙がっており,ある程度一 連の動きを作る方法が理解できたと思われ,身体で表現することの楽しさを授業で感じて いることがわかる。
Ⅸ ある感じをとらえた一連の動きを作れるようになりましたかについては,その理由 として「一連の動きを作る方法を学ぶ中でできた」(
31
%),「グループで友達と意見を出 しあって作れた」(18
%),「一連の動きを作ることが難しかった」(14
%)が挙げられた。その記述例をみると,授業で教わった一連の動きを作る方法をふまえて一連の動きを作れ るようになり,学生の記述,「イメージを身体を動かして自然に作れるようになる」のよう に身体を動かすことによりイメージを自然と一連の動きに作ることができるようになり,
さらに学生の記述,「
3
人の言い合いによって,こうしたほうがいいと意見を出しあってよ り良いもの,一連の動きができた」のようにグループで友達とのやり取りの中でアイディ アが出され,一連の動きつくりにつながったといえよう。かなりできるようになった学生 が35
%,少しできるようになった学生が60
%と示すように,95
%の学生がある感じをとら えた一連の動きを作ることができるようになったといえるが,一部の学生は方法を理解は できたが十分にできるようになったとは言いきれず課題が残った。Ⅹ 身体で表現できるようになりましたかについては,その理由として「表したいこと を多様な動きで表現できるようになった」(
50
%),「身体で表現することをのびのび楽し んでできるようになった」(25
%)が挙げられた。その記述例を見ると,「伸びるところや 縮むところなどメリハリをつけてできるようになった」,「自分の表したいことの特徴を考 え,動くことができるようになった」などのように,概ねこの授業により身体で表現する 方法を知ることによって多様な動きで表現できるようになり,身体で表現することを楽し んでできるようになったといえよう。④ 結 論
学生の自己評価およびその理由を検討した結果,Ⅰ~
X
の各項目についてほとんどの学 生がのびのびと大きく動くことを理解し,動けるようになったと実感し,リズミカルに動 くことができるようになり楽しめると実感している。またほとんどの学生が自分で多様な 動きを見つける方法を理解し,自分で多様な動きを見つけることができるようになったと 実感している。そして,ほとんどの学生がある感じをとらえた一連の動きを作る方法が理 解でき,作れるようになったと実感している。さらに表したいことを多様な動きで表現で きるようになり身体で表現することをのびのび楽しんでできるようになったと実感してい る。そして人によって動きや表現の違いがあることがわかり,人の動きを見ることから保 育者として必要な資質の大事なことを学んだといえよう。以上のことから保育者養成としての「体育」における「自ら動ける身体作り」に向けて の指導は,授業目標,内容について概ね学生の理解を得,「自ら動ける身体作り」の目標 はある程度達成されたと考えられる。
2
.授業の実施内容が授業の目標および自ら動ける身体作りをどれだけ遂行できているか を学生の授業後の記述から検討する学生の毎授業後の記述(感想と学んだこと)から自ら動ける身体作りを中核とした授業 を検討する。全回出席の学生から無作為で
2
名抽出し,その記述を全文そのままを紹介し,授業の目標と自ら動ける身体作りとのかかわりについて質的に考察する。
授業実践①(
2005
.4
.8
)記述
1
;今までラジオ体操をなんとなくやっていたが,これからは保育者として子どもの手本になるよ うに動かなければと思いました。記述
2
;保育者は見られるのだから意識して大きく動く必要があることがわかりました。そして子ども と一緒に体を動かして楽しむことが大切だと言うことがわかりました。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)保育者になることを意識しての体育であ ることを認識した。2
)保育者自身も子どもと一緒に体を動かし,楽しむことが大切だと 認識した。すなわち,体育の授業目標を理解し,今までとは違う,保育者養成としての体育の目標 を認識して授業への意欲をもったといえよう。
授業実践②(
2005
.4
.15
)記述
1
;ラジオ体操とは違いからだの伸縮を感じながら体操をすることができました。思い切り伸びた り縮むことがとても気持ちよかったです。体操をするだけで汗をかきました。普段運動をするこ とも少なくなったためとても体がついていきませんでした。ダンスでは友達とニコッとするだけで楽しさがこみ上げて来ました。体を動かすことの楽しさ を知りました。
恥ずかしいという気持ちがあると「極限までのびのびと」はできない。踊ることが好きな人も いれば,苦手な人もいると思う。上手・下手は関係ない。恥ずかしがらなくても大丈夫。楽しく やろうよというそれぞれの表現を受け容れる雰囲気は大事だと思う。
記述
2
;始めは,仲の良い人で固まるが,だんだんと散らばる。音楽があって体を動かしているからか。普段は喋らない友達とも笑顔で関われる。すごく気持ちがいい。
友達の動きを見て良いところは「良いね」と伝える。よく見て,助言や提案もしっかり伝えら れるようになりたい。
以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)体操は伸縮を意識して動くようになりそ のことが気持ち良いと感じている。2
) リズミカルに動くことは最初恥ずかしかったけれ ど友達と動くことによって楽しくなった。3
)音楽にのりリズミカルに動く中,普段あま り付き合いのない学生同士が笑顔で関われ親しくなり,いろいろな友達を受け容れ助言や 提案をしようという意欲を持つ。すなわち,準備体操の習得を通してしっかり伸びることを意識するようになり,友達の 動きを見ることからも学んでいる。また,リズミカルに動くことでは,友達とやることに よって,恥ずかしさから楽しさへと変わり,いろいろな人と親しみ次第に受け容れる気持 ちになっているといえよう。
授業実践③(
2005
.4
.22
)記述
1
;来週体操のテストなのに難しいステップの動きがなかなかできませんでした。友達と「のびて~あるいて~のばす」と言いながらたくさん練習しました。体操するのにも伸びている所をしっ かり意識して体操するようにしたいと思います。
幸せなら手をたたこうではクラス全体で楽しんで行うことができました。友達と手をたたくさ いに3人になった場合に3人で輪になり「パンパン」と手をたたきとても楽しかったです。
記述
2
;準備体操は,どこを伸ばすのかを意識するのとしないのでは伸びが違う。意識して取り組んだ ので先週よりも「伸びてる」という実感があった。「幸せなら手をたたこう」は,始め一人で出発する。自分からどんどんいろんな子と関わろ うとする子にとってはいいが,それが苦手な子もいる。そのことに他の子どもが気づくことを期 待したいが,必要なときは自分が(先生になった時は)入ろうと思った。
以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)体操はのびのびと動くことを友達と意識 して練習することにより上達した実感や意欲をもてる。2
) リズミカルな動きでは,友達 みんなで関わりながら踊るのが楽しい。すなわち,準備体操の習得を通して,運動の極限までのびのびと動くことを意識してす るようになり,学生同士互いに動きを見合うことからも学んでいる。また,リズミカルに 動く内容では,友達と繰り返し動く中で友達と親しみ,リズミカルに動くことを楽しむこ とが出来たといえよう。
授業実践④(
2005
.5
.6
)学生の記述
1
;出席番号が一番という事でなんでも一番はじめににやることは慣れていますが,「人の 振り見て我がふり直せ」ということができませんでしたが,他の人のを見て,元気よく大きく動 いている人のほうがとっても目だってきれいに見えると思いました。体操では全員から見られて 恥ずかしい気持ちもありましたが,伸びるときを意識して行うことができました。先生に注意し ていただいたとおりに後ろに体を曲げるところがあまり曲げられていなくて自分の体の硬さと腹 筋のなさに驚きました。腹筋を鍛え改善できるようにしたいと思います。学生の記述
2
;伸ばすところは極限まで伸ばし,脱力するところは脱力すると気持ちがいいです。皆 がみている中で動くことはとても緊張しました。友達も緊張しているようでした。目線は前を見 るときは前,指先を見るときは指先を,とメリハリをつけている人は堂々としていて良いなと思 いました。つま先,指先を意識しているのもきれいだなと思いました。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
) 体操のテストを通してのびのびと元気に 動くことが大切であり,動きにメリハリをつけて大きく堂々と動くことがきれいな動きで あることがわかった。2
)運動の極限までのびのび動くには柔軟性や筋力などの体力がい ることを学んだ。すなわち,準備体操のテストを通して,運動の極限までのびのびと堂々と動くことが大 切であることを認識し,意識して動くようになっている。また,他の人の動きをしっかり 見,そこから学びとっているといえよう。
授業実践⑤(
2005
.5
.13
)学生の記述
1
;「さ」という所でいろいろなポーズをするのがとても楽しくて2人でポーズを考えるのがス ムースにいって楽しかったです。他のチームのも見ていろいろなポーズがあることを知りました。友達とフォークダンスを踊るのは楽しかったけれど疲れた。
学生の記述
2
;「あんたがたどこさ」に合わせて体で窓を作る運動では,自分では思いつかないような ポーズを友達がたくさんやっているのを見ました。寝転んでみたり,足を交差してみたりと,体(+友達,床,壁)があればいろいろな動きが出来るんだなと思いました。
みんなでリズミカルにフォークダンスを踊るのは,友達の笑顔を見て私も楽しいなと思った。
これなら子どももできるので実習でやってみたい。
以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)フォークダンスは,笑顔で元気よくやる ことでみんなが楽しむことが出来る。そして,実習で子どもとやってみたい。2
)身体で 窓を作ることから自分で考えていろいろな動きができる。3
)友達が動くのを見ることに よりいろいろな動きができるのだと知った。すなわち,リズミカルに動くでは,楽しんでリズミカルに動くことが出来るようになっ た。また自分で多様な動きを見つけるための指導の一つである「身体で窓を作る」では友 達とやることによって楽しく自ら動くことの最初の課題をクリアーしたといえよう。そし て体があればいろいろな動きができることを学んだといえよう。
授業実践⑥(
2005
.6
.10
)学生の記述
1
;準備体操は音を聴けばあわせてできるようになりました。体が勝手に動くようになり 何度もやることの大切さを知りました。体操の順番は覚えたので次は伸びや縮みなどを意識して 行いたいと思います。補強運動は自分の体力の落ちに驚きました。汗をたくさんかいて終わるとぐったりしました。
グループに別れ各自担当となったフリをやるのでは私は回転だったのですが,1つしか思いつ かず,他のチームの子など参考にして行い,一人一人違う動きをしていて楽しかったです。みん なで連続性のある動きを作り身体を動かしてとても良い運動になりました。
学生の記述
2
;頭肩膝ポンはいろいろな身体の部位を意識して動かせた。子どもも楽しめそう。運動の種類では,どんなふりをしようか迷ったが,みんな楽しんで合わせてくれるだろうとい う安心感があったのでできた。色々な動きを考えるのは,想像力豊かな子どものほうが得意だろ うと思いました。今回はアップテンポの曲でしたがスローな曲でやるとまた違った動きが想像さ れておもしろそうだと感じました。同じ動きであっても方向・高低・速度を変えるだけで印象が 変わることがわかった。
以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)頭,肩,膝ポンは自分で工夫していろい ろな時に活かせる。2
)身体の部位や運動の種類を意識して動きを考えるのは難しかった が,みんなで一緒に動くことにより次第に自分で考えて動けるようになった。みんなで動 くことにより新しい動きの発見にもなった。3
)方向・高低・速度を変えることによって動きは違った感じになる。
すなわち,身体の部位を「頭・肩・膝ポン」から楽しんで認識し,いろいろな身体の部 位をいろいろな方法で動かす(運動の種類)こと,そして,動きに方向・高低・速度の変 化をつけることを学ぶことにより,次第に自分で多様な動きを見つける方法がわかったと いえよう。さらに友達とやることによって,新しい動きの発見につながったといえよう。
授業実践⑦(
2005
.6
.17
)学生の記述
1
;準備体操はしっかり伸びを意識して行いました。補強運動はいつも通り大変で汗をた くさんかきました。ペアになって動きを考えるやつは,「・・・・パ」という動きを考えて動きました。他の人達 の動きもテーマにあっていてみていてとても楽しかったです。
学生の記述
2
;皆の発表を見て本当にたくさんの動きがあるんだなあと思った。一人で考えるのも良 いけど,二人でアイディアを出し合うことでより多様な動きが生まれる。伸びて・縮んで・回転 し・跳ぶことを一連の動きとしてやることで何かを表現できるのだということが分かりました。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)二人で走・止から咄嗟にポーズや動くで は二人だから多様な動きができる。2
)伸縮・回転・跳躍の一連の動きからあるものにな りきって動くのが楽しく,一連の動きでやると何かを表現できる。3
)いろいろな表現が あることを知り,楽しい。すなわち,スピード感をもって走る・止まるから伸びる・縮むの動きの探求をし,さら に伸縮・回転・跳躍の一連の動きの探求をすることによって,イメージをもった一連の動 きを短時間で創作し,表現し,発表した。そのことからあまり悩まずに感じをとらえた動 きを創ることができ,伸縮・回転・跳躍の一連の動きは何かを表現することができること を学んでいる。つまり,動きは感情やイメージと結びついてこそ生き生きとするというこ とである。また表現は人それぞれ違っておもしろいことが理解されたといえよう。
授業実践⑧(
2005
.6
.24
)学生の記述
1
;新聞を使って身体表現することは私たちでもとても楽しかったので子どもは想像力が 豊かなのでもっと楽しいのではないかと思いました。新聞紙だけど,発想してみると,いろいろ なものに見えてきた。学生の記述
2
;新聞紙たった1枚で遊びがたくさん生まれることを実感できた。新聞紙は造形のときに も,体を動かす時にも使えてとても便利。シンプルなものほど子どもの想像性・創造性が発揮で きると思った。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)新聞紙1
枚で体を色々に動かして身体表現 を楽しむことが出来る。2
)新聞紙から様々な発想がわきいろいろな遊びがたくさん生ま れる。3
)新聞紙を使って身体表現をすることは子どもも楽しくできる。すなわち,新聞紙を使っての活動から新聞紙を何かに見立てる・ふりをして遊ぶ,新聞 紙と共に自ら様々に動く,新聞紙の様々な様態を身体で表現するなど,
1
)発想を豊かにする
2
)自ら多様に動き遊ぶ3
)身体で表現することを体得したといえよう。授業実践⑨(
2005
.7
.1
)学生の記述
1
;準備体操はもう完璧にできるようになりました。リズムにのって身体表現ではたくさんの表現が見つからず動物ばかりやってしまいました。他 の人は同じ動物を表現しているようでも高さが違ったり,手,足,の動きが違ったりして人によっ て違うんだと思った。もっとたくさんの表現を見つけられたら子どもたちと行うときも良いと思 いました。
学生の記述
2
;跳ぶを担当した。跳ぶ=カエル,ちょうちょ…で想像力が止まってしまい,自分の 想像力のなさが残念。けれど実際に音楽を聴き体を動かし始めると次々と動きが出て大きく動く ことができた。なんでもとりあえず「やってみる」ことで何かが生まれるのだと感じた。他のグ ループの発表を見ても思いっきり動いているのは何を表現しているかわかり感心した。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)音楽にのって這う・歩く・走る・跳ぶか ら動物や様々なものをイメージして動くことは楽しく,大きく動くことができた2
)イメー ジして動くことは人それぞれ違っていておもしろい。すなわち,「這う・歩く・走る・跳ぶ」の運動からいろいろなものをイメージしてその 特徴をとらえて動くにはオーバーに動くことが大切であることに気がついている。それは,
指導の中で高低,速さ,方向の変化を示唆した結果である。また,学生は動きや表現が人 それぞれ違っているのが楽しいと感じその良さに気づいている。
授業実践⑩(
2005
.7
.8
)学生の記述
1
;補強運動は何度やっても体がついていかないなと思いました。馬とびが6回目にはもう バテバテで体つくりはしっかりしないといけないなと思いました。リズムにのって身体表現では,私はうさぎを跳ねると言う担当でやったのですが,うさぎ以外 跳ねる動きが見つからず他の人の動きを見てあーゆう動きもあるんだなと参考になりました。
学生の記述
2
;さんぽの曲にのってイメージしたものになって動いたら今日は前回よりもイメージも わいてきたし,表現したいものの特徴をとらえてオーバーに動けて楽しかった。グループの友達 も楽しそうに身体表現していた。表現には上手も下手も,正解も間違いもないと思った。一人一 人発想が違うからおもしろい。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)リズムから身体表現では想像性も豊かに なり運動からイメージしたものになってオーバーに動くことが大切2
)表現は上手・下手 というのではなく一人ひとり発想が違っていておもしろい。すなわち,学生は異なる運動の種類からイメージしたものの動きのデッサンが様々でき ることに気がつき,人によって動きや表現が異なることがおもしろいと感じ,大切である と気づいているといえよう。
授業実践⑪(
2005
.7
.8
)学生の記述
1
;動きのデッサンでは自分が昔やっていたバレーボールを表現しました。いろいろなスポーツを思い起こしながら動いてみるとイメージに合った動きが出てきた。それをつなげてやる とすごくおもしろかったです。
学生の記述
2
;創作活動では,テーマはすぐに決まっても構成を練る段階で少し行き詰まる。複雑な構 成にしてあれもこれも盛り込むのではなく,起-承-転-結のようにポイントを抑えて考えるとス ムーズに進みやすいと感じた。大体の流れが決まったので,頭の中で動きを考えるよりも実際に体 を動かしてみるほうがアイディアが出た。曲選びは苦戦しそう。テーマにあった曲が見つかるか。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)創作では~になったつもりで考えたらイ メージがわいた2
)頭の中で考えるよりもイメージしながら先ず実際に体を動かしてみる と創作ができる。すなわち,何かになったつもりで動くこと,先ず動いてみることにより創作活動は進む ことを知り,一方,まだ創作の難しさに苦闘している姿も見られる。このように今までの 授業で先ず動くことを率先して行ってきたことにより,動きのデッサンの段階ではイメー ジしながらどんどん動くようになっているといえる。
授業実践⑫(
2005
.7
.15
)学生の記述
1
;準備体操ではついに前に呼ばれて見本になりました。左ではなく右からやることで頭 がパニックになったりしました。見本になることはとても難しいと思いました。もっと自信を持っ て堂々と動けるようにしよう。一つながりの動きの練習で,這うでは,へびがニョロニョロ這う,頭を挙げて回す,えさを食 べるを表現した。走るでは,飛行機が飛んで乱高下して空中回転して墜落を表現した。跳ぶでは,
うさぎが跳んで跳んで大きく跳んで穴に逃げるを表現しました。感じをとらえた一つながりの動 きができて楽しかったです。
学生の記述
2
;今日の創作活動で自分たちは,「これは蚊の動き」「これは蚊取り線香」と一つながり の動きを考えたが,自分たちはわかっていても見る側には伝わるかなあと不安に思う。もっと特 徴をとらえてオーバーに動こう。フロアーも大きいのでフロアーを広々と使った動きを考えたほ うがいいなと思った。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)感じをとらえた一つながりの動きを創作 するには表現したいイメージを動き,つなげることでできる。2
)創作では表現したいこ との特徴をとらえてオーバーに動くことが大切。すなわちリズムから表現への授業過程で運動からイメージして動く,運動からイメージ したものの特徴をとらえてオーバーに動く,そして感じをとらえた一つながりの動きを学 ぶことで,動きのデッサン,特徴をとらえた一つながりの動きなど創作活動の要とも言う べきことを理解したといえよう。
授業実践⑬(
2005
.7
.21
)学生の記述
1
;メインの動きでは,見つけた感じをとらえた動きを繰り返し動いていたら自然と動き がつながっていった。先生からのアドバイスでそれをもっと繰り返したら動きも大きくなりそれらしく表現できてきた。
学生の記述
2
;創作活動では蚊はどんな動きをするかグループで話しました。ふわふわしている,空 中の同じ場所で羽ばたいてから刺しにくる,たたかれてあわてて飛び立つ,たたかれてつぶれる が出てきた。それをイメージしながらどんどん動いたら一つながりの動きになりました。そした ら本当に蚊に刺されて,蚊を殺してしまい蚊ってかわいそうだねって話になりました。蚊はきら いだけど忍び足で近寄ってくる蚊と殺されてしまう蚊を表現したいと思いました。以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)動きのデッサンで見つけた動きを繰り返 し動くことから感じをとらえた一連の動きができる。2
) いろいろな側面から表現したい ものをとらえつなげると感じをとらえた一連の動きができる。すなわち,デッサンした動きの反復や違った側面から動きを見つけてつなげることで特 徴をとらえた一連の動きができることを学んだといえよう。
授業実践⑭(
2005
.7
.22
)創作ダンスの発表授業実践⑮(
2005
.7
.22
)発表後のまとめ・自己評価学生の記述
1
;発表では最初緊張したけれど動いているうちに表現って楽しいなと思いました。練習 した通りにできてよかったです。しかし先生に注意していただいたように,動きの範囲が小さかっ たのでもっと大きくやれば良かったと思いました。他の班も面白い発表や衣装ですごく見ていて 面白かったし場面のつかい方や身体の使い方がすごく参考になりました。学生の記述
2
;自分達の作品について,物をつかわないで体一つで表現したところは良かったと思う。蚊→香取線香→蚊と表現する対象が変わるので香取線香をどう表現したら伝わるか作る段階で悩 んだ。蚊がもがき苦しむ様子を表現するために舞台いっぱい使って走り回るところは自分でやっ ていて楽しかった。
他の作品について,波をスカートのような白い布を用いて表現していて手だけで表現するより もより波らしさがでていた。水(プール)を表現しているグループがいくつかあったが,人工呼 吸の表現を取り入れたりそのグループによって個性がでていて見ていて楽しかった。
子どもがのびのびと自分を表現するためには,安心して表現できる場の雰囲気があることが必 要だと思った。皆で楽しもう!という雰囲気作りが保育者の大切な役割であると感じた。
以上の記述から学生は次のことを学んだ。
1
)人前で発表することは緊張したが,思い きり動き,身体で表現できたときは楽しいという気持ちをもった。2
)いろいろなグルー プの身体表現を見て,それぞれの個性や良さ・おもしろさに気づいている。すなわち,人前で自分の身体で表現することの緊張感と楽しさを味わい,また他の表現 の違いや良さ,個性に気づき認めることができている。さらに子どもがのびのび表現でき るための保育者の役割にも考えが及んでいる。
以上,各授業後の学生の記述を検討した結果,本授業により自ら動ける身体作りの具体 的な目標は,概ね学生に認識され習得されたといえよう。
以上,
1
) 学生の自己評価およびその理由の検討,2
) 授業後の学生の記述の検討の結果,保育者養成としての「体育」における「自ら動ける身体作り」に向けての指導は,概ね学 生の理解と充足感を得,
2005
年度も「自ら動ける身体作り」の目標はある程度達成された と考える。このことから
2004
年度と同様に2005
年度も保育者養成としての「体育」における「自ら 動ける身体作り」の授業内容はその目標を概ね達成でき信頼性があると考える。Ⅳ 保育者養成としての「体育」における「自ら動ける身体作り」の授業構成要素
「はじめに」に記したが,「体育」の授業目標は,前期は,保育者として必要な身体運動 に関する基礎的な知識と技能を習得させ,自ら動ける身体を作り体力の維持増強をはかる である。後期は,子どもの発達をふまえ,保育における運動遊びの援助・指導に関する基 礎的な知識や技能の習得を目指し実践的に学ばせるである。したがって,保育者養成のカ リキュラムにおける「体育」において,自立して創造的に動け,子どもの動きを見守り,関 わり,指導できる保育者を養成すべく,前期の授業目標の一部に「自ら動ける身体作り」を 設定したわけである。
これまでの
2004
年度,2005
年度の検討により,保育者養成としての「体育」における「自 ら動ける身体作り」の目標は概ね達成され,その授業内容は保育者養成としてのメソッド として位置づけることができると考える。そしてその内容はこれまでの検討から次の4
つ の構成要素から成り立つと考える。① リズム
学生の恥ずかしさに配慮して一斉に動くことを基本とし,だれもが親しみやすい手遊び,
わらべうた,フォークダンスそしてなじみのあるリズミカルな曲にのって動くことを授業 の初期の頃,さらに授業の導入で行った。その結果,
2004
年度,2005
年度の自己評価が示 すようにほとんどの学生はリズミカルに動くことを楽しいと感じ,リズミカルに動けるよ うになったと答えている。さらに,学生の動きに伴う恥ずかしさは,一斉に動くことで次 第に払拭され,友達と関わりながら動くことによってさらにリズミカルに動くことを楽し いと感じるようになったといえよう。手あそびやわらべ歌,フォークダンスなどのリズミカルな身体活動の特性は,
1
) 誰も が楽しめ友達と親しくなれる,2
) 楽しんでリズミカルに動けるようになるである(若松,1979
)。したがって,本授業のように授業の初期や導入には,手あそび,わらべ歌,リズ ミカルな身体活動は学生の恥ずかしさや苦手意識を解消し友達との関係を作り,リズミカ ルに動くことを楽しみ,そのことから自分を開放し授業への意欲につながると考える。さらに友達と関わりながらリズミカルに一緒に動くことは楽しいと感じ,そのことは子ど もの指導でも同様に大切であると学生は気づき認識している。
また,授業の初期から準備体操の習得を通して,運動の極限までのびのびとリズミカル に動くことを強調してきた。大きくのびのびと粘りをもって動き,また短くさっと動くこ とにより動きにはメリハリがあり,動きにリズムができることも学んでいる。またのびの びとリズミカルに動くと動きは見栄えして美しく,人をひきつけることを認識している。
以上,授業内容の構成要素,「リズム」は次のようにまとめることができる。
1
) 手遊び,わらべうた,フォークダンス,なじみのあるリズミカルな曲にのって,リ ズミカルに身体を動かすことを楽しむ2
) 準備体操など基本の動きを学ぶことをとおして,運動の極限までのびのびとリズミ カルに身体を動かすことを学ぶ3
) 一斉に動くことにより恥ずかしさを取り除き,友達と親しみ授業への意欲を持つ② 動き (身体の部位 運動の種類 動きの構成要素)
授業の初期から準備体操の習得を通して,身体の部位,運動の種類を明らかにした。さ らに運動の極限までのびのび動くことを強調して行った。その過程において
2
人組で互い に動きを見合い,助言をすることを行った。そのことを通してほとんどの学生はのびのび と大きく動くことを理解し,動けるようになったと答えている。つまり,運動の極限まで のびのびと堂々と動くことが大切であると認識し,そのことを意識して動こうとするよう になった。身体の部位を意識しながら「身体で窓を作る」,「走る・止まるから伸縮・回転・跳躍そ してイメージして動く」を行い,その過程で「高・低」,「前・後・左・右・斜め」などの空 間把握,「ゆっくり・速い」「気持ちのままにリズムを作る」などの時間把握を学ばせた。こ のような動きの構成要素をさらに「リズムから表現」の指導過程でも多様な動き,多様なイ メージを伴った動きを導くために繰り返し取り上げた。その結果,ほとんどの学生は自分 で多様な動きを見つける方法が理解でき,自分で多様な動きを見つけることができたと答 えている。つまり,自分で多様な動きを見つける手立てが理解でき,次第に多様な動きを 豊富に見つけ動けるようになったといえよう。
以上,授業の構成要素,「動き」は次のようにまとめることができる。
1
) 身体の部位,運動の種類を様々な方法で学ぶ2
) 運動の種類の組み合わせをイメージと結びつけて一連の動き作りを体得する3
) 動きの構成要素;空間(高低・方向・大小) 時間(遅速・急激的変化・漸次的変化)力性(強弱)を様々な方法で学ぶ
③ 表現
多様な動きを見つける方法を学び,多様な動きを豊富に見つけ動けるようにする過程で 少しずつ「何かになって動く」ことを行った。学生は伸縮・回転・跳躍の一連の運動課題か
らイメージを持って動く授業内容の中で,「ただ動きを追求するよりも,イメージして動 いたほうが動きやすい」と記述していた。(若松,
2007
)さらに馴染みのあるリズミカルな曲にのって,①運動からイメージしたものになって動 く,②運動からイメージしたものの特徴をとらえてオーバーに動く,③-が~している のように感じをとらえた一連の動きで表現することを行った。
「新聞紙」では,新聞紙を何かに見立てて遊ぶ,新聞紙と共に自ら様々に動く,新聞紙の 様々な様態を身体で表現する指導内容から,学生は発想を豊かにし,自ら多様に動く,身 体で表現することを楽しむことを体得している。
課題「夏」からの創作ダンスの創作過程における指導で,学生は,創作では何かになった つもりで考えたらイメージがわくこと,頭で考えるだけでなくまず動く,すなわち「イメー ジしながらまず身体の部位を色々に動かしてみる」と動きが出てくることを学んでいる。
これらの一連の授業の指導内容,方法の結果,ほとんどの学生は,ある感じをとらえた 一連の動きを作る方法が理解できた,ある感じをとらえた一連の動きを作れるようになり,
身体で表現できるようになったと答えている。つまり,まず表現したいものになって動く,
身体の部位や運動の種類を意識しながらイメージのままに動いてみる,そしてその特徴を オーバーに反復して動き,つなげてみることによって,ある感じをとらえた一連の動きを 創ることができるようになり,身体で表現でき楽しむことができるようになったといえる。
以上,授業の構成要素,「表現」は次のようにまとめることができる。
1
) 運動課題からイメージしたものになって動くことを楽しむ2
) 運動課題からイメージしたものの特徴をとらえ誇張して動く(動きのデッサン)3
) デッサンした動きから一連の動きを作る(反復,異なる動きとの組み合わせ)④ 個の尊重とグループ活動
学生の記述や自己評価の理由から,友達とのかかわりの中で楽しく動けるようになり,
他の人の動きから多くのことを学んでいることがわかる。すなわち,各授業で一斉に動く,
2
人組で動きを見合う,少人数での活動を一斉に行い,発表・鑑賞を行うという授業方法 により学生は次のことを学んだ。
1
)友達と一緒に動くことは楽しく多くの学びがある,2
)運動の極限まで伸びるとはど のような動きなのか理解した,3
)同じ課題でも一人ひとりあるいはグループによって 様々な表現の仕方がある,4
)そのものの気持ちになって大きく動くことにより表現が伝 わる,5
)他の人達の違った発想や動きに気がつき,皆それぞれが違っているのが良いと 認める,6
)のびのびと動くこと,なりきって表現することが結果,堂々とした見栄えの する動きになり,特徴をとらえた印象的な身体表現になる。すなわち一斉に動くことと少人数グループの活動および発表・鑑賞を行うことによって,
授業で学び取ってほしい内容を学生は学べたといえよう。