幼保一元化への提言
一子ども・保護者・保育者のための保育・教育を求めて一
学 校 教 育 専 攻 幼児教育コース 峯 田 郁 美
はじめに
現在の日本において、小学校就学前の子ども たちの多くは管轄も目的も異にする幼稚園もし くは保育所での集団生活を経験する。この就学 前の幼保二元化に対しては今までも様々な議論 がなされ、幾度となく一元化への言及が繰り返 されてきた。近年になり少しずつ両者間の距離 が縮まるような動きが見られ、自治体レベルで 地域に即した幼保一元化が実現しやすい状況と なっている。そこで本研究では、変化の一途をた どる現代社会の中で、幼保一元化への取り組み をどう捉えていけばよいのか、さらには子ども・
保護者・保育者にとっての幼保一元化とは何か を明らかにすることを目的とする。
第1章平成時代における保育事業の変遷 政府により策定された「緊急保育対策等 5カ 年事業J及び「新エンゼ、ルプラン」の中で提示さ れた目標数値がどれだけ達成されたかを検討し てみると、「一時保育J
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子育て支援センターJ以 外の「低年齢児保育」・「延長保育Jなど、ほとん どの項目で目標が達成されている。達成されな かった 2事業は、比較的緊急性が少ないことと ニーズのつかみにくさに原因があるものと思わ れる。もっとも、達成はされなかったものの取り 組みは着々と進んでいる。これは、社会支援なしでは子どもを育てにくくなっている現代社会を 背景として展開されていることが分かる。
さらに、新聞の切抜き記事内容の変遷を調べ
指 導 教 官 橋 川 喜 美 代
てみると、時代のニーズに応えるべく幼稚園で 施行されている「預かり保育」や、「統廃合Jに関 する掲載頻度が高い。また、「幼保一元イ七」につい ての記事も増えてきている。これは、「預かり保 育」で幼稚園の保育所化が言われ、「統廃合」の動 きが活発化している中で、幼稚園・保育所相互の 存続のための新たな模索が「幼保一元化Jの動き
に影響しているものと推察される。
第 2章 幼 保 一 元 化 の 現 状
一口に幼保一元化と言っても、保育の形から みると次の 3形態に分類される。①「年齢・施設 区分型J…就学前の 5歳児全員が公立幼稚園に 入園する形態。あるいは、3歳児までは必要であ れば保育所での保育を受け、4・5歳児は幼稚園 へ入園する形態。②「施設合併型J…幼稚園と保 育所を同じ敷地内に併設する形態。③「同一施 設型」…幼稚園児と保育所児が同一施設内で生 活を共にする形態。
3形態の 1つである「同一施設型J幼保一元化 を施行している北須磨保育センターでは、一元 化を実施することで①子どもの発達権②保育 者の研修権③母親の労働権を同時保障する保 育体制の創造を基本理念としている。幼稚園児・
保育園児の区別なく、同一施設内、同一カリキュ ラムによる集団保育が行われている。
また、もう 1つの形態である「年齢・施設区分 型J幼保一元化は徳島県鳴門市に見られる。これ は行政が働きかけたものではない。 r3歳までは
保育所、4歳からは幼稚園Jという住民意識から 生じた年齢区分も、少子化による幼稚園・保育所 の統廃合や財政難、午後保育についての諸問題 などが、保護者の不満や迷いを生み出している。
そうした実情を踏まえ、幼児や保護者のニーズ、
地域の実情に即した、「同一施設型J幼保一元化 への検討が今まさに進められようとしている。
鳴門市のように財政面での合理化を前提とした 一元化構想を計画している例は近年の幼保一元 化の特徴である。このようにハード面重視の構 想をやむを得ないとしても、子ども・保護者・保 育者にとってのソフト面の充実も忘れてはなら ない。
第3章鳴門市における幼保一元化への提言 子どもの発達権の保障を中核とした「同一施 設型」幼保一元化の施行は、子ども・保護者・保育 者にとって次のようなメリットにつながるもの
と考えられる。
《子どもにとっての幼保一元化》
0歳から 5歳児が同じ施設の中で生活するこ とで、異年齢児との人間関係を結ぶことができ る。人間関係の希薄化が言われている現代にお いて、幼児教育・保育を担う施設が、積極的に異 年齢児間交流を促す役目を果たすことは必要で ある。異年齢の中で子どもたちは、知的好奇心の 喚起や自己発揮の機会を得、遊びをはじめとす る生活全般において幅をもたらすことになる。
また、幼稚園での受け入れが不十分である障害 児との関係もでき、互いに理解し合い、尊重でき
る心を育むことになる。
さらに、幼稚園児と保育所児の経験的交流が 期待できるのも「同一施設型」幼保一元化のメリ
ットだと考えられる。幼稚園児と保育所児が午 後から違った世界で異なる経験し、それぞれの 世界での経験を互いに影響させ合うことで、両
者の世界はさらなる広がりを見せるものと推察 する。遊びに関しでも、幼稚園児がもってくる圏 外での情報と、保育所児が深めた園での情報が 交換され、世界の拡大は遊びの深まりをもたら すものと思われる。
《保護者にとっての幼保一元化》
同じ保育内容の元で生活しながら、かつ午後 からの保育に欠ける子どもについては同一施設 内で、引き続き夕方まで預けられるという形は、
保護者にとって安心できる環境であると考えら れる。
また、保護者がもっ、5歳まで保育所に入所さ せることへの後ろめたさの解消につながる。鳴 門市のような形態の場合、保育所での 4・5歳児 の在籍児は少なく、その存在の軽視につながり かねない。このような軽視を打ち破るためにも、
保育に欠ける、欠けないに関わらず、同じ保育内 容の元で幼児が生活することが望まれる。
《保育者にとっての幼保一元化》
幼稚園児が帰る午後からローテーションを組 むことで、子どもの保育を担当する者と研修を する者とを二分することが可能となり、保育者 に研修時聞が与えられることになる。研修時間 を得ることは、保育の現場で起こる多様な現実 的問題を対処するための研修会や保育カンフア
レンスの機会を得ることにつながる。その機会 を得ることで、現実的問題の解決の糸口を見つ けたり、保育者自身の成長発達につながったり することが期待できる。
また、午後からの研修時間において、子どもの 活動や様子、保護者の悩みや質問などへの答え を記すことが重要である。家庭と園の連携を丁 寧に図ることは、相互の関係を円滑に進める 1 つの方法で、あり、園・保育内容への理解、また子 育てへの支援につながることが推察される。