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104 情報科学研究 表 3 情報活用能力習熟度の推移 全くできない 少しできる かなりできる (3) キーボード操作

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1.研究の背景と目的 本研究の背景としては,学生の学力低下,特に 数理的・論理的思考力の低下,さらに最近の入試 システムの変革等による学生の個性の多様化が挙 げられる。プログラミング論において,最も重要 な履修内容はアルゴリズムの習得であるが,アル ゴリズムの習得は数理的な思考力を基盤とし,プ ログラム作成においては何回も誤りを経験するの で,注意力や忍耐力を必要とする。近時,その教 育は極めて困難となる傾向がある。学生の情報活 用能力及び,意識の変化を示す調査結果として, 拓殖短期大学の最近7か年における入学時情報活 用能力習熟度の推移及び,5か年間における学習に 関する意識調査結果を挙げる。大学入学時におけ る情報活用能力に関して,大学側から見た調査は 余り実施されておらず,稀少な調査結果と言える。 拓殖短期大学における1996年以降の新入生の出 身校種別学生構成,各学校段階におけるコンピュ ータの導入状況および,情報活用能力習熟度の推 移を示すと表1,表2,表3のようである。 表1 出身校種別学生構成 1996 97 98 99 00 01 02 1996 97 98 99 00 01 02 1996 97 98 99 00 01 02 普 通 科 商 業 科 工 業 科 (1)出身高校 の校種 - .78 .77 .80 .80 .79 .69 - .16 .17 .13 .10 .12 .14 - .03 .01 .01 .02 .03 .02 ●各表で数値は割合(小数点以下2桁の数字)を示す。 ●対象新入生は1996年248名,1997年246名,1998年252名,1999年244名,2000年260名,2001年224名,2002年252名である。 表2 各学校段階におけるコンピュータの導入状況 1996 97 98 99 00 01 02 1996 97 98 99 00 01 02 あった 無かった (2)小学校のPCの有無 .09 .14 .11 .13 .22 .26 .31 .91 .86 .89 .84 .74 .71 .65 中学校のPCの有無 .54 .75 .81 .88 .88 .88 .91 .46 .25 .15 .11 .10 .10 .07 高 校のPCの有無 .72 .85 .84 .86 .87 .86 .94 .28 .15 .14 .12 .12 .12 .04 自 宅のPCの有無 .24 .31 .32 .40 .47 .67 .65 .74 .69 .62 .60 .51 .31 .33 ●各表で合計が1にならない場合があるのは,欠損値(無回答)があるためである。

形成的なプログラミング教育とその評価

森 園 子

Fostering Skill of Programming and the Formative Evaluation

Sonoko Mori

〈要旨〉 学生の数理的な学力の低下や論理的な思考力の欠如が問題視される現在,文科系大学においては特にその 傾向が甚だしい。本研究では,文科系大学におけるプログラミング論の習得において,学生が興味や意欲を もってその解決に臨み,アルゴリズム的思考力を伸張させるために工夫・考案した新しい教育方法と評価の 実践について述べる。対象は獨協大学経済学部の学生であるが,拓殖短期大学の例を参考として挙げる。 〈キーワード〉 形成的評価,プログラミング,アルゴリズム,Visual Basic,情報リテラシー

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表3 情報活用能力習熟度の推移 97 98 99 00 01 02 97 98 99 00 01 02 97 98 99 00 01 02 全 く で き な い 少 し で き る か な り で き る (3)キーボード操作 .51 .38 .27 .24 .23 .17 .15 .47 .58 .67 .71 .65 .71 .73 .02 .04 .06 .04 .11 .11 .11 (4)マウス操作 .49 .28 .21 .16 .14 .13 .12 .41 .55 .63 .73 .68 .64 .65 .10 .17 .16 .10 .17 .22 .23 (5)PCによる図形処理 .72 .50 .44 .42 .40 .40 .37 .25 .43 .48 .52 .55 .52 .57 .03 .07 .09 .06 .05 .07 .05 (6)PCによる文書作成 .42 .29 .24 .20 .22 .21 .14 .48 .52 .54 .61 .62 .64 .69 .10 .19 .22 .19 .15 .15 .17 経験が無い 経験がある (7)PCによる表計算 デ-タ処理 .86 .74 .69 .68 .68 .67 .61 .14 .26 .31 .32 .32 .34 .39 全く無い ゲームを写す BASICで20行程度 (8)プログラミング 経験の有無 .82 .83 .81 .78 .82 .83 .82 .07 .03 .02 .05 .04 .02 .03 .09 .08 .13 .11 .09 .08 .08 経験が無い 経験がある (9)シミュレーション 操作経験(理科/数学) .88 .87 .87 .88 .87 .88 .90 .12 .13 .13 .12 .12 .11 .08 表1より,1996年度から2001年度にかけては毎年, 高校の普通科からの入学者が79%前後を占め,職 業科から入学してくる学生が,残りを占めている ことが分かる。2002年度において普通科高校出身 者が69%に減少しているのは,高校の種別が多様 化していることと,2002度において大幅にAO入 試制度を取り入れた影響と思われる。 表2の各学校段階におけるコンピュータの導入 状況においては,中学校,高等学校における導入 が,大きく進んでいることが分かる。 さらに,5%有意水準でχ2 検定を行った結果, ①中学校においては1996年から1997年及び,1998 年にかけて有意差が見られる。特に,1996年と 2002年では54%から91%と大きく増加している ことが分かる。 ②高校においては1996年から1997年にかけて有意 差が見られる。①②のことから学生の意識では, 特に中学校でコンピュータの導入が進んでいる という意識が強いことが分かる。 ③自宅におけるコンピュータ所有率の伸びも大き く,2002年度における所有率は65%である。 表3における情報活用能力習熟度の推移では, ①キーボード操作,文書作成ともに,リテラシー 能力の向上がよく表れている。 ②2002年で見れば,キーボード操作は84%,文書 作成では,86%が「少しできる」あるいは「か なりできる」と答えている。このことから,入 学してくる学生のほぼ85%強は,文書作成の経 験があると考えてよいと思われる。この調査結 果からも,大学における今後の情報リテラシー 教育の再検討が望まれるところである。 ③プログラミング経験においては,1996年から 2002年に至るまで,経験が「全く無い」が80% を越える。中等教育において,これらの教育が あまり行われていないことが分かる。 また,学生の学習に対する意識を探ると以下の 図1,図2のようである。 図1 過去5年間における出席状況推移 図2 過去5年間における学生の取り組みの推移 ●平成14年度拓殖短期大学授業評価報告書による 1996 1996 1996

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図1は,過去5年間における出席状況推移,図2 は学生の取り組みの推移を示している。どちらも, 平成13年度,14年度において著しい減少が見られ る。前述のように,拓殖短期大学においては,平 成13年度よりAO入試を大幅に取り入れている。 出席状況や取り組みの意識の減少は,この影響か と考えられる。この調査結果からも,学生の個性 の多様化が見て取れるが,このような情報活用能 力に関する傾向及び学習に関する意識の変化は, 現在多くの大学及び短期大学において同様に見ら れる傾向であると思われる。本研究においては, 上記のような現状を踏まえ,学習内容のレベルを 落とすことなく,学生が生き生きと課題に取り組 み,アルゴリズムを習得することを目指した教育 方法を開発し,この有効性を検証・考察すること を目的とする。 2.研究の方法と履修内容 2.1 研究の方法 (1)対象と時期 対象:獨協大学経済学部プログラム論履修者 Aクラス 47名 Bクラス 51名 参考として 拓殖短期大学2学年プログラム演習履修者 Cクラス 36名 Dクラス 35名 履修ソフト:VisualBasic6.0 Professional 時期:2001年4月-2002年1月 (2)授業形態 授業科目名:プログラム論/プログラム演習 学部・学科:獨協大学経済学部/拓殖短期大 学経営・貿易学科 授業形態:一斉授業 授業計画:半期(前期及び,後期)/通年 週1単位時間(90分/70分) 単位数:2単位×2/4単位 2.2 履修内容 本研究における課題とアルゴリズム上の習得内 容及び,VisualBasicにおける主な操作とコントロ ールの取り扱いを述べると,以下のようである。 課題と習得内容 主な操作とコントロール 初めてのVisualBasic Visibleプロパティの操作 文字の入出力の取り扱い LabelBox CommandButton プロパティウィンドウ・コードウィンドウ フォーム・ツールボックスの取り扱い データの入出力 TextBox PictureBox 四則演算 イベントプロシージャとモジュール構造 変数の取り扱いと型宣言

クイズ課題 MsgBox Image Button If Then...Elseif 構造文の取り扱い

For Next...構造文 繰り返しのあるプログラム

Do While...Loop Timer Button

動画の取り扱い ListBox ComboBox CheckBox 情報データベース課題

アニメーション課題 コントロール配列の取り扱い

配列(1次元配列/2次元配列)の取り扱い

アニメーション+CG(ComputerGraphics) スクロールバー(VScrollBar HScrollBar)制御 Formの追加と削除/複数のFormの取り扱い サウンドファイル等マルチメディアコント コンポーネント MMControl 等の取り扱い ロールの取り扱い Waveファイル及びMidiファイル等の取り扱い CG(Pset line circle QBColor RGB等の取り扱い) ペイントソフトの図形処理 ShapeBox FrameBox

メニューエディタの取り扱い(メニューの追加と削除) 右ボタンポップアップメニュー

MouseDown MouseMove MouseUp等マウス制御 DrugDropの取り扱い

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3.本プログラミング教育の課題提示と評価 本プログラミング教育における重要なポイント は,課題提示と評価方法であると思われるので, 以下,それらに焦点を当てその特徴と手順を示す。 3.1 課題提示について ①課題の提示には心を砕く。 学生の興味や意欲を引き出し,アルゴリズム が正しいか否かを,学生の視点でビジュアルか つ明確に判定できるような素材を選ぶ。 例題1:if文の習得(アルゴリズムは分岐)の場合 従来の数式やユ-クリッドの互除法等を学生 に提示しても,コマンドや数字が並び,学生に はこれらの数や式の意味が掴みにくい。そのた めここではクイズを課題として提示する。この 例では,答えが正解であれば次の問題が提示さ れ,不正解であれば誤りというメッセ-ジが出 るようにプログラムが組まれるので,if文によ る分岐の構造を極めて明確に判別できる。 例題1におけるソ-スコ-ド

Private Sub Command1_Click() If Label1(0).Visible = True Then MsgBox ("正解です")

Label1(0).Visible = False Label1(1).Visible = True

ElseIf Label1(1).Visible = True Then MsgBox ("正解です")

Label1(0).Visible = True Label1(1).Visible = False

End If

End Sub

Private Sub Command2_Click() MsgBox ("残念でした") End Sub 例題2:コンピュ-タ・グラフィックスの習得 の場合 ディスプレイ上の座標の概念を,1つのオブジ ェクトを用意し,その動きのなかでビジュアル に把握させる。+-の符号を反転させたり,動 かす座標のピクセル数を変化させることにより, CGの様々な概念を予想し,確認することがで きる。 例題2におけるソ-スコ-ド Private Sub Command1_Click() Image1.Move Image1.Left + 60

If Image1.Left > Form1.Width Then End End Sub

Private Sub Command2_Click()

Image1.Move Image1.Left + 0, Image1.Top + 30 End Sub ②習得すべきアルゴリズムを,全員の学生が確実 に理解できるよう解説し,学生が自分自身で作 成して実行し,プログラムの構造を確認する。 ③一斉指導と個別指導を並行させる。 ②までの指導は一斉指導で行う。これに対して, 以下の④及び評価における指導は個別指導であ り,その到達点は多様で,学生自らが決めるも のである。この教育方法では,このような一斉 指導と個別指導を交互に,又ある時は並列させ て行う。 ④③で作成したプログラムをさらに工夫・発展さ せ,可能な限りのテクニックを用いて,独自の プログラムを組むよう指示する。この時,履修 すべき条件をいくつか設ける。この段階から, 個々の学生によるアルゴリズム的な思考と試行 錯誤が始まる。さらに課題の発展のさせ方には 各学生の個性がでるところである。 ⑤課題提示後,授業では次の段階の課題提示に進 む(①の一斉指導に移る)。 3.2 本プログラミング教育における新しい評価 教育評価(assesment,及びevaluation)は非常に 大きな分野であり,教育学上さまざまな側面から 研究が進められているが,特に,授業に焦点を当

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てれば,診断的評価,形成的評価,総括的評価と いう3つの評価を挙げることができる。このうち, 診断的評価とは,教育活動の開始前に行われる評 価で,学習者のレディネス状態を調査するもので ある。入学試験や,クラス編成のための判別試験 などがこれに当たる。拓殖短期大学においては, 情報教育において,新入生の入学時にこの評価が 行われ,学生はこの結果をもとに習熟度別にクラ ス編成されている。 総括的評価とは,教育活動の締めくくりとして, 教育成果を把握し,位置付けようとするものであ る。各学期ごとの学業成績評価及び,「学生による 授業評価アンケート」がこれにあたる。現在,各 大学その他で行われている評価の殆どが,この総 括的評価である。 形成的評価とは,教育活動の過程において学習 者の反応を把握し,次の段階への教育活動へフィ ードバックさせていくものであり,評価即ち指導 といった理念がここにはある。教育効果を上げる ための本質的な評価ともいえる。しかし,この評 価を具体的に押し進めることは,内容に踏み込ん だ指導法と連動しているため,それだけに実施は 難しいものである。本プログラミング教育におけ る評価には,この形成的評価の一面を大きく取り 入れる。即ち,以下のような視点に立ち評価の観 点を変えるものとする。 一般に,処理が速くて正確であれば優等生にな れる。現在のペーパー試験やその他の試験,プロ グラミング試験においてもこの迅速性と正確性を 問うものが多い。反面,処理や理解が遅いタイプ の学生も往々にして見受けられる。遅くてしかも 不正確である。しかし,これらの多くの学生を見 ていると,これは思考や処理のタイプの相違なの であって,もともとの理解力や吸収力が無いとい ったことにはならないと思われる。それ故,アル ゴリズム的な思考力を定着させ,学生が個々に持 っている力を伸ばすには,この迅速性と正確性を 競うという要素を評価から取り除いた新しい評価 方法を考えなければならない。以下,本プログラ ミング教育において現在実践している評価方法を, 具体的に挙げる。 ①ペーパーによる試験は最小限度にとどめ,課題 による独自のプログラムを作成させる。 ②評価の観点を,プログラムのアルゴリズムの構 成,テクニック,独自性,内容の豊かさ等とする。 ③評価基準は絶対的評価とし,評価の観点と尺度 をあらかじめ,学生に明示しておく。 ④課題提出には,時間的な制約を設けない(提出 期日は設けるが,後述する様に再提出を認める ので,実質的に制限は無い状態になる)。 ⑤評価は学生と共に,合意の上で行う。 評価を実施するときは,学生一人一人または集 団で面談をし,テクニック等について話し合う。 ⑥到達点は学生自身が自ら設ける。 ⑦再提出を何度でも認める。 ⑧参考となるプログラムはActiveXを用いてWeb 上にUploadしたり,授業時にプレゼンテーショ ンを行う。 図3 学内LANに学生作品をUploadする 学生の作品の向上には,学生同士のプログラム 作品を相互に公表し,切磋琢磨することが非常に 有効である。そのためのプレゼンテーションを行う。 4.本プログラミング教育の実際 本プログラミング教育では,課題提示後,学生 の活動を観察し,その思考過程をおおよそ把握し ておくことが形成的な評価及び,指導を行う上で 重要である。ここでは,いくつかの課題の中の1 つ“My電卓”について触れる。“My電卓”の作成 は,最も初歩の段階における四則演算を取り扱っ たもので,学生に課せられる最初の課題である。

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4.1 例題の提示と課題の与え方

2つの変数の四則演算の提示において,以下のよ うな簡単な例題を提示し,データの入出力方法と 四則演算方法を説明する。

Private Sub Command1_Click()

Label3.Caption =Val(Text1.Text)+Val(Text2.Text) End Sub

Private Sub Command2_Click() a = Val(Text1.Text)

b = Val(Text2.Text) c = a + b

Label3.Caption = c

End Sub

Private Sub Command3_Click()

Label3.Caption = Val(Text1.Text)/Val(Text2.Text) End Sub

Private Sub Command4_Click() Text1.Text = "" Text2.Text = "" Label3.Caption = "" End Sub 以下のような課題を与え,評価の観点を明示する。 表4 プログラム課題提示 ①課題1 My 電卓 授業中に取り扱った,四則演算の方法(+-*/)を踏まえて,皆さん独自の電卓を作成してください。 ②評価の観点の提示 授業時の内容がクリアされていること。その得点に以下の観点からみた得点が加算されます。 1 授業時に完成させてあるプログラムを踏まえて,アルゴリズムがきちんとできているか? 2 背景画面や画像取り込みなど,工夫がなされているか?(画像上の工夫) 3 プログラムの上で,さまざまなテクニックや工夫を試みているか?(使われているテクニック) 4 ストーリー性があるか? 5 内容が豊かで,しっかりとしているか(内容の充実度) 6 作品の中に生きているアイディア(テクニックが同じでも使われているアイディアの良い作品があります) ●12月の最終授業時にプレゼンテーション(できたところまで)を行います。 ●自分の組んだプログラムについて説明したい方は,常時,受け付けます。 4.2 学生の組んだ“My電卓”プログラムについて 学生の組んだ“My電卓”のプログラムを分類す ると,およそ,次のような2つのタイプといくつか のレベルに分けられる。本プログラミング教育に おいては,このように,提示した課題に対する学 生の活動を観察し,学生の思考過程を把握してお く。それにより,学生に適切なアドバイスを与え, 学生の活動を活発にさせることができるからである。 Aタイプ:例題のプログラムを発展させたもの A-1 例題のプログラムと同じ,または殆ど同じもの A-2 例題のプログラムに,クリア機能や累乗を付 加したもの A-3 例題のプログラムに画像を貼り込んだもの A-4 例題のプログラムに税金,金利,為替,レス トランのメニュ-等を付加したもの Bタイプ:TextBoxその他の入力方法を参考にし て,実物の電卓システムと同様にしたもの B-1 四則演算及びクリア機能のみのもの B-2 メモリー機能を付加したもの B-3 さらに小数点及び税金の設定等付加したもの Bタイプの数字の入力に関するコ-ド及びアル ゴリズムについては,およそ以下の4通りである。 ①TextBoxを用いたもの ②10進数を作るアルゴリズムを用いたもの ③String機能を用いたもの ④その他 上記の各タイプとレベルにおいて,学生の人数 と割合を示すと表5のようである。

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表5 “My電卓”課題における学生プログラムのタイプ別分類 Aタイプ:例題のプログラムを発展させたもの A人数(%) B人数(%) A-1 例題のプログラムと同じ,または殆ど同じもの 4( 9) 7(13) A-2 例題のプログラムに,クリア機能や累乗を付加したもの 14(30) 15(30) A-3 例題のプログラムに画像を貼り込んだもの 38(81) 42(82) A-4 例題のプログラムに税金,金利,為替,レストランのメニュ-等を付加 したもの 11(23) 13(25) Bタイプ:TextBoxその他の入力方法を参考にして, 実物の電卓システムと同様にしたもの B-1 四則演算及びクリア機能のみのもの 8(17) 7(13) B-2 メモリ-機能を付加したもの 0( 0) 2( 4) B-3 さらに小数点及び税金の設定等付加したもの 0( 0) 2( 4) ●獨協大学プログラミング履修者Aクラス47名,Bクラス51名である。 Bタイプの数字の入力に関するコ-ド及びアル ゴリズムについては,およそ以下の4通りである。 ①TextBoxを用いたもの 8名 ②10進数を作るアルゴリズムを用いたもの 3名 ③String機能を用いたもの 2名 ④その他 2名 5.本プログラミング教育の評価 本プログラミング教育に対する評価は,教員の 学生に対する到達度評価及び,学生による本プロ グラミング教育に対する評価の双方から行った。 さらに,学生の自由意見から本プログラミング教 育の特性を探った。 5.1 教員の学生に対する到達度評価 授業時に学習した例題プログラムを0とし,課題 プログラムに対する評価を5段階評定で行った到 達度評価の結果,出席率・Paperテスト・プログラ ム課題得点との相関及び,拓殖短期大学の場合の 相関を示すと表6,表7,表8のようである。 表6 教員の学生の課題プログラムに対する評価 獨協大学プログラム論履修者 A(47名) B(51名) 平 均 課題プログラム 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 A B 全 6 27 9 3 2 4 23 14 7 3 2.3 2.6 2.4 My 電卓 .13 .57 .19 .06 .04 .08 .45 .27 .14 .06 5 17 15 7 3 7 15 18 6 5 2.7 2.7 2.7 前 期 My クイズ .11 .36 .02 .19 .06 .14 .29 .35 .12 .09 2 12 21 6 5 9 15 17 6 4 3.0 2.6 2.8 My DataBase .04 .26 .45 .13 .11 .18 .29 .33 .12 .08 6 8 11 15 6 4 13 11 16 6 3.2 3.1 3.1 My PaintSoft .13 .17 .02 .32 .13 .08 .25 .22 .31 .12 3 8 14 16 6 5 13 12 14 7 3.3 3.1 3.2 後 期 My CG .06 .17 .30 .34 .18 .10 .25 .23 .27 .14 ●各項目の上段は人数,下段は割合(小数点以下2桁)を示す。 表7 出席率・Paperテスト・プログラム課題得点との相関 単相関 出席率 Paperテスト プログラム課題 出席率 1.0000 Paperテスト 0.3813** 1.0000 プログラム課題 0.1914* -0.0880 1.0000 ●無相関の検定 * :5% ** :1% 表8 出席率・Paperテスト・プログラム課題得点との相関 単相関 出席率 Paperテスト プログラム課題 出席率 1.0000 Paperテスト 0.4013** 1.0000 プログラム課題 0.2914** -0.0980 1.0000 ●無相関の検定 * :5% ** :1%

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表6より,前期課題の平均が2.4~2.8であるのに 対して,後期最終課題の平均は3.2と大きく上回り, 履修が進むに従って技術が充実していく様子が分 かる。AクラスとBクラスの間に,大きな差は見ら れない。さらに,学生の出席率,Paperテスト,プ ログラム課題得点との相関を見てみよう。 表7から,出席率とPaperテスト結果には0.38, 有意水準1%の相関が見られ,これほどではないが, 出席率とプログラム課題との相関も0.19あること が分かる。さらに,Paperテストとプログラム課題 との相関は-0.88と小さいため,本研究におけるプ ログラム課題評価とPaperテストとは異なった能 力を捕らえ,評価していることが分かる。参考ま でに,拓殖短期大学の場合を見ると,表8から,出 席率とPaperテスト結果には0.40,有意水準1%の相 関が見られ,出席率とプログラム課題との相関も 0.29あることが分かる。 5.2 学生による本プログラミング教育に対する評価 学生に,本プログラミング教育における課題提 示や内容,評価方法に関して,4段階評定でアンケ ートを取った結果は,以下の表9のようである。 表9 学生の本プログラミング教育に対する評価 獨協大学プログラミング論 拓殖短期大学プログラム 履 修 者 演習履修者 (1)課題提示や内容 A人数 割合 B人数 割合 C人数 割合 D人数 割合 全く面白くない 0 0.00 0 0.00 0 0.00 0 0.00 あまり面白くない 1 0.02 1 0.02 1 0.03 1 0.03 少し面白い 17 0.40 14 0.31 16 0.44 12 0.34 とても面白い 25 0.58 30 0.66 19 0.53 22 0.63 (2)評価方法 A人数 割合 B人数 割合 C人数 割合 D人数 割合 全く良くない 0 0 0 0 0 0 0 0 あまり良くない 2 0.04 1 0.02 2 0.06 1 0.03 少し良い 13 0.30 12 0.26 13 0.36 10 0.29 とても良い 28 0.66 32 0.71 21 0.58 24 0.68 ●獨協大学プログラム論履修回答者Aクラス(43名),Bクラス(45名),参考までに拓殖短期大学プログラム演習履修者Cクラス (36名),Dクラス(35名)である。 表9より,課題提示においては97%の学生が「少 し面白い」または「とても面白い」と答えている。 また,評価方法においては96%の学生が「少し良 い」,または「とても良い」と答えている。Aクラ スとBクラスの間に,大きな差は見られない。こ のことから,本プログラミング教育の課題提示や 評価方法が,学生に高く評価され,受け入れられ ている様子が分かる。 学生の自由記述を分析することは,本プログラ ミング教育の特性を掴む上で非常に有効である。 学生による評価の自由記述をまとめると,次頁の 表10のようである。 自由記述で学生が,最も多く挙げているのが, 楽しさと面白さである。学習意欲が持続する事も 挙げており,プログラミングに関する意欲が喚起 されていること,充実感や達成感を得ている様子 が感じられる。さらに,Paperテストとの比較では, 「Paperテストは暗記だが,プログラムを実際に組 むことは,実践的で身に付く」といった感想を述 べた学生が多い。また,「Paperテストは,できて もできなくてもその場で終わるが,課題によるプ ログラミングは,やればきりがない」といった意 見から分かるように,取り組み方が深いほど時間 を必要とするので,時間の不足を感じる学生もい た。さらに,「課題について話し合ったり,プログ ラムテクニックについて教え合ったりしたことが, 非常に刺激になった」といった,友人とのコミュ ニケーションの有効性を挙げた感想もあり,学生 同士が切磋琢磨していく様子が感じ取れた。大学 の電算実習室環境やIT環境にも言及し,実習室の 開放及びインストラクタの必要性を訴えた意見も あった。 今後,これらの自由意見をさらに分析し,反映 させる意向である。

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表10 本プログラミング教育の特性 (1)学習意欲・理解・充実感 A(人数) B(人数) 楽しさ・面白さ・感動する 33 31 学習意欲の喚起・やる気の持続 20 24 理解の深化・自分の頭で考える 22 14 充実感・達成感・自信 18 12 個性の伸張・自分を引き出す 14 13 PCの仕組みの理解 6 8 (2)Paperテストとの比較 Paperは暗記だが,プログラム 作成は実践し,身に付く 20 25 時間がかかる 足りない 22 20 やればきりがない 3 2 学生の格差が増大 4 1 Paperは不要 8 5 (3)学習・IT環境 自宅にパソコンが必要 2 1 実習室利用環境への不満 0 1 インストラクタが欲しい 4 5 (4)友人とのコミュニケ-ション 8 5 ●獨協大学プログラム論履修回答者Aクラス(43名),Bクラス(45名)である。 6.今後の課題 本プログラミング教育の評価を鑑み,本プログ ラミング教育の課題提示及び形成的な評価方法は 有効であることが,検証されたと思われる。プロ グラミング課題作成の過程で,学生は時間を気に せず試行錯誤を繰り返しながら,少しでも多くの テクニックを盛り込んだプログラムの作成を目指 していく。この過程における学生の活動が,最も 重要であると思われる。 これらの教育方法の開発においては学生の活動 や思考過程,プロセスを常に把握し特性を分析す ることが求められる。今後,これらの特性の分析 及び,各評価の観点に関する研究をさらに押し進 める必要がある。また,大学教育では,その講座 を取り巻くシステムや学習環境が大きく影響して くる。以下,現状の問題点と今後の課題に触れる。 ①セメスター制導入の流れの中で 昨今の大学改革の流れのなかで,セメスター 制を導入する大学が増加している。セメスター 制においては授業内容が短期集中型になり易く, 本研究で実施したプログラミング論のような1 年間を通して,長い目で見て学生の能力の伸張 を図ろうとするような教育は実施することが困 難な側面がある。成績評価にしても半期毎に提 出しなければならず,形成的な教育の側面を出 しづらい傾向がある。 ②TAの必要性と実習室の環境の問題点 本研究におけるプログラム論においては,授 業中や課外学習として,プログラム作成を具体 的に支援するための幾つかの配慮が必要である。 教員のアドバイスもさることながら, 技術指導 に当たってはティーチング・アシスタントが必 要である。さらに,学生のコンピュータ所有率 を考慮すると,実習室の使用状況も大きな問題 点として挙げられる。 参考文献 [1]立田ルミ: VisualBasicと教育情報システム, 朝倉書 店,1999 [2]森園子:文科系短期大学における総合的な情報活用 能力の育成, 情報教育方法研究第2巻第1号, pp1-6, 1999 [3]森園子: 拓殖大学における教育研究情報ネットワー ク シ ス テ ム と 情 報 教 育 , 私 情 協 ジ ャ ー ナ ル Vol.6 No.1, pp.34-36, 1997

参照

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