九州工業大学研究報告(工学)No.65 1993年3.月 7
特異点近傍における非線形システムのチェビシェフ
近似式による形式的線形化法
(平成4年11月30日 原稿受付)
電気工学科情報工学教室高田等 熊本電波高等専門学校小松一男 電気工学科(学部生)松岡康文
AFormal Linearization of Nonlinear Systems by Tshebyschew Interpolation About a Singular Point
by Hitoshi TAKATA Kazuo KOMATSU Yasufumi MATSUOKA
Abstract
In this paper we consider a formal linearization of nonlinear systems by the Tshebyschew inter−
polation about a singular point. The original nonlinear system is transformed into the same dimen.
sional linear system, in which the origin is a singular point in these systems. Because of using the Tshebyschew interpolation, this linearization can be automatically computed by a digital computer and has high accuracy in given region. It s inversion is carried out by Newton method.
Numerical examples show that our linearization is very effective in wider region and improved as the order of the Tshebyschew interpolation is increased.
最後に,数値実験により,特異点近傍の級数展開と低次
1・序論 項係数決定を基にしたボアンカレ流形式的線形化2)4)と
一般に,非線形システムは,非線形のため取り扱いに の精度比較を行った。これにより本手法は広領域での線 くく何らかの意味で線形化を施され,線形化システムに 形化が可能であることがわかった。
変換されて解かれる場合が多い一
2澗題の設定
本研究では,特異点近傍における非線形システムの形
式的線形化において,関数近似に優れた性質を持つチェ システムが非線形微分方程式
1還欝欝墓㌫㌫還籔 エーλ㊨(44τ) (・)
いて考察した。
:1㌘薪蕪議鷲 λ一[liiii1
伝)に変換する。逆変換は,φ伝)が多項式関数であるの
でニュートン法5)6)を用いて原システムの解エを求める。 エ=[エ、…エ。]T
∫一駈_∬ シェフ多項式表現のφ(〃):
λ1<・( 一・・…・〃) φ(〃)一万(y)一万(一晋)+皇卓(・)一万(一剖(8)
∫(エ):非線形解析関数で∫(0)=0
を導入する。これは,(1)式より で与えられているとする。原点が特異点である(1)式をN
次チェビシェフ多項式関数φω((、)式参照)を用、、る !竺( )=°なので・
ことによって, limφ(〃)=limφ(y(D)=0 →oo エー・0
φω一誓担φω (・)の条件を満たすものである.
ここで,未知量{72,…,夕N}を残差法で求める。残差 なる線形微分方程式へ形式的に変換する。
R(〃):
(2)式はφについて線形であるから,既存の線形理論で
解くことができる・なお・エについての逆変換は・二 @ 鋤≡撃醐一λφ(〃)
ユートン法を解くことによつて求められる゜ @ 一{1+£。⑤(,)}F( )
ノ=2 3.問題の解法
一λ〔T1(y)一τ1c芸)
区:↑㌘:㌶蒜ム嶽㌶)ご蕊 勒(・)一万(一晋)}| (・)
次の非線形システム において,
Σ1:Z=λエ+ノ(エ) (3) 呪(〃)≡Sノ(〃)F(y) (ノ=0,…,N) (10 エ(0)=エo
を定義する。
を考える。まず,変換関数として この(10式を次のチェビシェフ近似式
…ヂ (・) 呪(・)一菖・疏)(∫一・,…,N) (11)
を導入し,基本区間[−1,1]へ変換する。 で近似する。このときη+1(y)のN+1個の零点〃o,・・
このとき,(3),(4)式により次式を得る。 ・,抑すなわち
Σ・ ・∂一器一ナぬ+∫ω} 防一…誌・(z=0,…,」V) (1カ
ー耐十{λ殉吻+卿)}−F(・)(・)において,次の直交条件
万.1(〃)=2y7)(の一7)−1(の が満たされるので,係数は次のように定まる。
五(〃)=1, ハ(〃)=〃 (6)
また,チエビシエフ多項式の微分に関する靴式、ま …晶・誉醐
(・)式を〃で微分してふ(,)≡噺とお・ナば 口鯖呪ω⑭・≠・(・一・・・…め
(14 ⑤+1(〃)=2万(〃)+2y⑤(〃)−S,−1(y) (1φ式を(9)式に代入すると
S・ω=0,S1(の=1 (7) N 。 N
1〜(y)=Σ6、永τん(〃)+ΣΣちτゴκτん(y)
κ=・0 元=2永=0
(,)式を(,)式の線形方程式一変換するため,N次チェビ ーλ{醐一万(一晋)+皇皐(・)一刀(一チ)}}(19である。
特異点近傍における非線形システムのチェビシェフ近似式による形式的線形化法 9
を得る。 となる。これらをまとめれば
ここで残差R(y)がτ初(〃){勿=0,…,2V}に直交する:
ΣR(y∠)五(防)=0 (初=0,…,1V) (1θ
=O C=
ように係数{ヵ:∫=2,…,」V}を決める。ただし,未 知数{η}の数がN−1個に対し,(1θ式の方程式の数が N+1個なので,{η}は次の線形最小二乗法により求
まる。
丁初(〃)の〃2=0のとき
伽+λ先(吻♪)…孤(一晋)…・柵+λ万(一晋)
621 631 CNl
622一λ C32 … CN2 C23 633一λ … CN3 c2N 63N … 伽一λ
£Rω孔ω一〇 d=
=0 より(15)式から
ノ=2
一・1・一λτ1(祝ρ)
㌣
一ε13
−CIN c1・(2V十1)+Σ7」τ∫・(N+1) となる。よってαは
一λ{一万(卿力)一皇鵬(一晋)}(N+・)一・ α一(C・C)一・C・∂ (・・
として求まる。
故に
求めた解を(8)式に代入してφ(〃)が定まる。よって,(1)
〔砲・叫一斜巳・叫噺・・… 式は
…+λη(勿ρ)|α…1・一川(一晋)(1の 易:2=λ2 (21)
となる.ただしαは未知ベクトルの ・(・)一φ(〃(・))一φ(エ(°苦卿)
α一〔γ「2, γ「3, ,〕T ただし,・(・)一φ⑭)一φ∈詰勿)
である。勿=1のときは に変換された。
N なお逆変換は(8)式にφ(y(の)=θλ z(0)を代入し各時刻
黒Rω晦)=° ,ごとに,二_トン法を解いて ( )を求める.さら
より(19式から にエ(Dについては
…NG1+皇閉1N;1一λN;1−・ エ(の一力〃(r)+勿 (2カ 故に として求められる。
〔τ21, C31, ° ° ・, CIVl〕α=λ一一ε・・ (18 4.数値実験
となる。勿=κ(κ=2,3,…,1V)のときは 次の非線形スカラーシステムを考える。
£Rω㍗ω=0 詑二λエーエ2(λ=−0・8) (23
=0
より個式から ・ (8)式の次数Nをパラメータにしたときの計算結果を図に
ωNG・+差…N去LληN;1−・ 示㌫、、㈱、,寺間,をとり,⌒(。)−3。のと
故に きの解析的に求めた真値エ(の(true)と本手法によって 求めた計算値訊ののグラフである。
〔C、、,C,、,…,C、.1、,C・・一λ,6・+1・,…・εM〕α このシステムは⇔..のとき原点に収束しており,また,
一一・1・ (19 次数Nが大きくなるにしたがって近似が良くなっている
ことがわかる。 ノ(20)
Fig.2はFig.1において,真値∬( )と計算値訊Dの 差の絶対値
ノ(・)一ル(・)一工(・)14・ 佗・
200.0
のグラフである。次数Nの増加とともに誤差ノ(τ)の値 100・0 が小さくなっていくことがわかる。
Fig.3は初期値パ0)を横軸にとり,(3)式の区間を
[0,パ0)]に選んだときの, =20秒における⑭式の
ノ(20)のグラフを示したものである。 0.O X(0)
また,Fig.4はFig.3の問題をボアンカレ流形式的線 0・05・010・015・020・025・030.035.0 形化法2)41により求めた結果であり・F・酷5はF・酷・ @F・刷(2。)−X(。)、,、h。 p,ep_、 m。、h。d
x40・O N=2 ノ(20)
200.0 30.0
20.0
10.0
100.0
゜°
E.・2.55.・7.51・.6 °・宅.。1.。2.。3.。4.。5.8(・)
Fig・1X−tim・wh・n X(0)=30 Fig.4ノ(20)一又(0)by th。 P。i。,a,6・、 m。th。d
ノω ノ(20)
200.0 10.0
100.0
N=4⊂
N=5
5.0
0.0 τ 0.O X(0)
0・0 2・5 5・0 7.5 10.0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 Fig・2ノ(∫)in case of N=2〜5 Fig.5 The rectangu』r part in Fig.4
特異点近傍における非線形システムのチェビシェフ近似式による形式的線形化法 11
の斜線部の拡大図である。これらの結果から・本手法は 〈付録〉ボアンカレ流形式的線形化法2)4)
ボアンカレ流形式的線形化法と比較したとき,広範囲に
わたって有効であることがわかる。 (1)式における非線形システム
5.結言 品=λ品+万(エ)=・F,(め(1≦ ≦η)(付1)
システムが非線形微分方程式で記述される非線形シス をボアンカレの定理により線形化する。ボアンカレの多 テムに対し,特異点を考慮したチェビシェフ近似式と残 項式関数φ(∬)を
差法を用いて線形化する手法について考察した。考慮す
φ,(∬)二品+Σ〆 、.,。エ1 ・・エ。
るチェビシェフ多項式の次数の増加と共に,計算値工(『) 1・+…炉2
が真値エ(のへ近づき線形化近似精度の向上が確かめら =渇+1〜 (付2)
れた・本手法は特異点のある非線形システムの形式的線 と表す.このとき,
形化を可能にした。その際,原点近傍において高い精度
を持つボアンカレ流形式的線形化法と比較して,本手法 砺(エ)一量{恐一課(福+万ω)
は広範囲にわたって有効であることがわかった・ 一λ、φ、(、≦∫≦。) (付3)
参考文献 が成り立っている。但しλは次の条件
1) Y自稔;㌫㌫撒婁㌶誓三㌘ ゐ≠量硫λ・<・(・≦ノ≦・)
P13−46,(1991) 〃z,:正の数 (付4)
2)高田,牟田: 特異点近傍におけるボアンカレ流形式的線
形化法について ,第10回SICE九少卜1支部学術講…演会予稿 を満たしていなければならない。(付2)式を(付3)式に
緯』1°㌶3梁麗。近似、、よる特異点近傍の形式 代入した・
罐1ピ;,覧}1回SICE九州支部端演会予稿⌒ 書∂(エ,十Rノ∂渇)(畑綱)
4)S.Sternberg: Local contraction and a theorem of
Poincarぎ ,American J.Math、79, p809−823,(1957) =λノ(渇+1〜、) (付5)
5)洲之内: 数値計算 ,サイエンス社,理工系の数学=15,
(1988) の左辺と右辺の係数比較を行い(付2)式の係数 6)水元源: F°RTRANによ磁値言+算法入門 ・近代科 {〆、、..。}を求める.これにより, N次までのφ(∬)が 学社,(1986)
(付2)式より定まる。