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奥行知覚研究の動向

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(1)

奥行知覚研究の動向

−1978−

A Survey of Paperson the VisualDepth Perception

−1978−

林 部 敬 吉 Keikichi HAYASHIBE

(Received Oct.12,1981)

目    次

Ⅰ は じ め に

Ⅱ 奥行知覚の手がかり分析

(1)眼球調節作用・両眼編棒作用

(2)運動視差

(3)経験的要因

Ⅱ 実 体 錆 視

(1)実体鏡視能力

(2)ダイナミック・ヴィジュアル・ノイズ

(3)その他の研究

Ⅳ 大きさ一距離関係

(1)奥行距離

(2)大きさ一距離仮説

Ⅴ 運動の奥行視

(1)Pulfrich現象

(2)その他の研究

Ⅵ 視空間残効

Ⅶ 平面画像の奥行祝

(1)幾何学的鋳視とperspective theory

(2)発達的研究

(3)交差文化的研究

Ⅷ ヒトの乳児と動物を対象とした奥行知覚研究

Ⅲ 視覚的断崖法及び視覚的陥穴法による奥行知覚の研究

(2)その他の研究

Ⅸ その他の奥行知覚研究

Ⅹ お わ り に

Ⅰ は じ め に

本報には,奥行知覚研究に関連した論文を,PsychologicalAbstract誌の1978年版から 心理学関係雑誌に発表されたものに限定して選択し,日次に示した各領域に分類して締介して

(2)

ある。

1 奥行知覚の手かかり分析

(1)眼球調節作用,両眼舶榛作用

EbenhoIz(1974),EbenhoIz&Wolfsen(1975)は,29.4cm前後の観察距離にある対 象を5〜6分持続祝した後,他の対象を注視すると,その対象が29,4cm より遠くにあれば 距離の過少視が,29.4cm より近くにあれば過大視が生起することを兄い出した。この種の aftereffectは,eXtraOCular muscleの筋緊張(eye muscle potentiation.EMP)が注視 解除後も持続するために生じるとされる。一方,Wallach&Frey(1972,a,b)は,眼球調 節及び幅捧作用を変える眼鏡を装着させた場合,near glass への順応には距離の過大視が,

far glassへの順応には過少視が生起すると報告した。

Ebenholtz らは,Wallach らの示した現象をEMPで説明しようと試みた。すなわち,

nearglassへの装着は,29.4cmより近いところに転換させることと等価であり,farglass の装着はこれより遠点の注視と等しい。ゆえに.両現象は,ともに眼筋緊張のaftereffect によると主張する。これに対して,Wallach&Halperin(38)は,レンズ装着によっても たらされた眼球手かかりの変容にもとづく aftereffectは,EMPによるのでなく,眼筋手が かりの順応的再調整によるものと考える。実験的検討が試みられた。実験は,順応過程(ex−

posure)とテスト過程に分けてなされた。EMP条件の順応には,25cmの観察距離にある TVスクリーン上に投映した黒十字形の20分間凝視を,眼鏡順応条件のそれには,nearglass

を20分間装着させ,この間室内外の歩行を,各々行わせた。次いでテスト過程に入り,観察距 離66.7cm にテスト刺激としてピラミッド模型を提示し,その底辺の大きさマッチングがも

とめられた。もし,EMPあるいは眼鏡順応による奥行手がかりの変容が奥行距離の過大視を もたらせば,順応後の知覚された大きさは,順応前のそれより過大視されると考えられる。眼 球調節と転換作用のみが手がかり条件の下で実験した結果,EMP条件,眼鏡順応条件とも大 きさの過大視が生起したが,しかし眼鏡順応条件の過大視はEMP 条件のそれの約3倍も大 きいことがわかった。そこでさらに,転軽作用の働きは同一に保ち,かつその他の奥行手がか りは異なる条件を設定して実験が試みられた。ここでは,EMP条件,眼鏡順応条件とも順応 過程でnear glassの装着を施した上,EMP条件は,50,200,350cmの距離にある円盤の顔 面固定しての20分間観察,一方眼鏡順応条件は,同様な観察距離に置かれた1ドル紙幣の自由 観察とした。この場合,眼鏡順応条件には,パースペクティブ,大きさ,運動視差要因が存在 するが,EMP条件では働いていない。順応後のテストは,同様に,ピラミッド模型の底辺の 大きさマッチングがもとめられた。その結果,大きさ過大視は眼鏡順応条件では生起したが,

EMP条件ではほとんど生起しなかった。これらの結果から,EMP効果と眼鏡順応効果とは 別種の現象であり,眼鏡順応効果は眼筋の筋緊張にもとづく aftereffectではなく,動眼手が かりの順応的再調整であることが明らかにされている。

一方,Paap&Ebenholtz(30)は,EMP効果についてさらに実験的検討を進め,次のこ とを明らかにした。④順応時に誘導された幅摸角の程度と distance aftereffect との関係を しらべてみると,転稜角が増大するにつれてdistance aftere任ectは直線的に増大すること,

㊥また,対象の方向についても aftereHect(direction aftereffect)が生起するか否かをみ ると,距離過大視を生じさせる条件−(nearfixation)では対象の鼻側への変位が,距離過少 視を生じさせる条件(far丘Xation)では,こめかみ側への変位が生起すること,⑨さらに,

(3)

順応中,1点を凝視させるのではなく(この場合,眼球は静止),凝視点を中心にして同距離異 方向にある左右の対象を交互に注視させると(この時には,眼球は水平方向に交互に移動),

幅稜角の順応が維持されているにもかかわらず,distance及びdirectionaftereHectは顕 著に減じてしまうこと・等が明らかにされたoPaapらは,これらの結果にもとづき,プリズ ム順応現象は,知覚学習あるいは手がかり機能の再調整(recalibration)によって生起する のではなく,EMPによって生じることを再度強調している。

(2)運動視差

Hell&Freeman(15)は,対象間のlateralseparation及び対象と背景間のmotion COntraStが変化した場合の運動視差の有効性について検討した。実験は,明るい背景下に2 個の刺激を提示し・近刺激の横幅に対し遠刺激のそれがどの程度かについてのマッチングによ

って行われた〔ここで求められた横幅のマッチングは,運動視差の有効性を示す測度とみなさ れている0すなわち,いま,奥行手かかりが何ら存在しない場合,対象の視えの大きさは網膜 像の大きさによって規定される。また,手かかりが豊富な場合には大きさの恒常性が生起し,

対象の距離が異なっても広い範囲にわたってその大きさは等しいと知覚される。もし,奥行手 かかりが運動視差に限定されている場合に近刺激の大きさに対し遠刺激のそれのマッチングを 求めた時,その大きさが過少祝されればされる程,奥行距離知覚に果す運動視差の有効性は低 いと考えられる0したがって,大きさマッチングは,奥行手がかりの有効性をしらべる指標と なる〔Hellらは・運動視差のみが奥行手がかりである条件下で,奥行距離を異にする2個の対 象のangularseparationを増大させ・その時の大きさマッチングを求めたところ,angular Separationの増大に伴い大きさは過少祝されることが示された0このことから,angularse−

parationの増大は運動視差の有効性を減少させる0同様に,運動視差の有効性は,対象と背 景間の距離が大きい程,また2個の対象間の奥行判断時には,その背景に肌理のある場合に,

いずれも劣ることが明らかにされた0これらのことから,運動視差は,運動の検出性が高い 程・すなわち運動検出閲が低い程その有効性は増大すると考えられる。

嘲 経験的要因

Farne(4)は,経験的手がかりである明るさ要因の効果をその背景の輝度を変化させるこ とによって吟味した。刺激には・灰色背景下,自及び黒のパッチを提示し,背景輝度を5段 階,白黒比を5段階に変化してその視えの奥行を恒常法によって測定した。その結果,背景輝 度が増大するに伴い黒刺激の視えの奥行は浅くなり,逆に白刺激のそれは深くなることが示さ れた0これは,より明るいものの視えの奥行は常に近いとする従来の定説に反する結果であ

り,暗い領域でもその背景のとり方によっては・明るい領域より手前に見えることを明らかに している。

Farne&Campione(6)は,色相がそれ自体で視えの奥行効果をもつのか,あるいは背景 との対比によっているのかについてしらべた02刺激(背と黄)が3色の背景下(黄,背,灰)

で提示され,視えの奥行がもとめられた。その結果,背景との対比効果が大きい場合にはその 対象はより手前に見えることが示された。

廿 実 体 鎌 視

(1)実体鏡視能力

ランダム・ドット・ステレオグラムには,その立体像出現までに相当の潜時を必要とするも のがあることが知られているoMacCracken,Bourne&Hayes(22)は,前年に引き続き,

(4)

その学習効果について吟味した。訓練は,1日4回,日をおいて2日間にわたってなされた。

その結果,1日目の潜時は訓練回数に伴なって減少すること,また,日をあけた2日目の第1 試行の潜時は,1日目の最終日の潜時よりも長いことが明らかにされている。

また,実体鏡視研究でランダム・ドット・ステレオグラムが有効とされたのは,輪郭などの 絵画的手がかり要因を完全に除去し,両眼視差のみを分離して引き出せるためであった。そこ で,この方法をさらに進めるためには,運動視差,眼球調節,梅鞍作用など眼球的手かかり要 因をも除去することが望ましい。Richards(32)は,短時間刺激提示法を用いることによっ て眼球的手がかりを除去し,その時の奥行出現の程度を測定した。そのため,CRT 上にドッ

トパターンによる矩形と輪郭線による矩形とを200msec各々提示し,その奥行感を量推定法 によって報告させた。その結果,輪郭線図形の場合には視角変化に対応してその奥行が変化す るにもかかわらず,ランダム・ドット・ステレオグラムの場合には奥行そのものが出現してこ なかった。この結果は,実体鏡視のメカニズムには眼球的手がかり要因が不可欠もなのとして 関係していることを示唆する。

(2)ダイナミック・ヴィジュアル・ノイズ

流動する視覚ノイズを両眼観察する際,片眼に減衰フィルターを装着させる等の方法によっ て片眼の入力に恒常な遅延をもたらせば,その流動するノイズパターンは水平方向にちょうど ドラムのように奥行回転するのが見られる。dynamic visualnoiseを使用したこのmotion−

StereOpSisの研究は,Ross(1974,1976),Tyler(1974)によって行われているが,その刺 激条件が異なると観察される現象にも若干の差が生じている。Mezrich&Rose(24)は,こ

の種の現象を理解するための実証的データを得るために種々の実験を試みた。刺激は,TVス クリーン上に投映されたdynamic random dot noiseで,1/60sec ごとに完全にノイズが 交替するように調整されている。片眼には,density丘Iter(1.ON.D.)を装着させてある。

第1実験は,観察時に出現するパターンの流動速度とdot densityの関係をみたものである。

その結果,視えの流動速度はかなりの範囲において dot density とは無関係であること,し たがってドット間の空間的距離は視えの速度にとって重要でないことが確認された。一方,

dot density はこの種の現象のあらわれ方に関係し,highdotdensity時には後退面と前出 面とが同時に出現するのか観察されるが,low density時には流動する後退面しか観察されな

い。highdensityとlow densityの丁度境目のdensity(threshold dot density)時に は,後退面は明瞭には出現しないが,ノイズからなる一面が側方向に流動するのが観察され る。そこで,第2実験として,この threshold dot density とノイズ刺激の提示されるディ スプレイ面の面積との関係かしらべられた。その結果,threshold dot densityは,ある範囲 内(視角15′〜30′)ではディスプレイ面面積が大きくなるに従って減少することが示された。

このことは次のように解されよう。threshold dot density近辺では,ddt pair は両眼視融 合が可能な範囲内に投影されると考えてもよい。視野が拡大すれば中心視の制約から離れて周 辺視効果も生起してくる。この時には,両眼視差の限界も中心視から離れるにしたがい増大し よう。したがって,ノイズ面積の増大は可能なdisparitylimitの拡大をもたらし,そのため dotdensityが減少しても同様な効果を生起させえたと考えられる。第3実験では,図1に示 された矩形波分布をしたdynamic dot noiseを用いて行われた。この種のバクpンでも容易 にステレオスコピックな効果が観察されるが,その効果は空間周波数によって規定される。空 間周波数が1C/deg以 ̄卜では,各々のドット嵩領域内でmotion−StereOpSisが出現するが,

空間周波数が2C/deg以上になると,所々ボケた黒帯のフェンス状の単一のノイズ後退両が出

(5)

現してしまう。2C/degでは,前出面は出現しない。第4実験で は,mOtion−StereOpSis 効果を出現させるための visual noise の時間的条件が吟味された。いままで,Visualnoise の交替頻 度を1/60secで行ってきたが,1/12sec以下ではstereoscopic detection mechanismが働かないという研究結果もある。そこ で,1/24,1/30,1/50sec のノイズ頻度で観察を行った。その結 果,いずれの頻度でも motion・StereOpSis が出現することがわ かった。このことから,disparity detectionのSummationに 必要な時間(約1/12sec間継続される)は,mOtion−StereOpSis にとってはそれ程重要な条件ではないと思われる。以上の諸結果 から,mOtion・StereOpSis効果はPulfrich現象をより一般化し

た現象と考えられる。

(3)その他の研究

図1矩形波分布したダイナ

ミック・ドット・ノイズ

(Mezrich,J.J.&

Rose,A.1977)

近年,三次元の世界は空間内の物体のisomorphicな表象から構成された内的過程によって 媒介されているという考え方が再び強まってきている。Shepard

2に示されたように,同一対象物の種々な角度か らの投影図を描き,他の対象の投影図とも組み合 わせて提示し,標準刺激と同一のものか否かのマ ッチングをもとめ,その反応時間を測定したとこ ろ,反応時間は対象の回転(rotation)角度に伴 なってlinear に増大することを兄い出した。こ の種のlinearityは,対象図形間のマッチング がなされるまで対象図形を回転させる内的重ね合 わせのプロセス(mental rotation)を仮定しな

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&Metzler(1971)は,図

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図2 メンタルローテーション図形

(Shepard,R.&Metzler,J.1971)

いと説明しにくい。Klein(18)は,実体鏡視能力がこの種の内的プロセスである三次元空間 を構成するのに重要な要因であるか否かを,実体鏡祝能力を欠く者に mental rotation課題 を課すことによって吟味した。被験者は,片眼が弱視あるいは強度の斜視の者で,実体鏡視テ ストによりその能力の欠如を認められた者である。実験の結果,欠損者はmentalrotation 課題に対し健常者と同等の成績を示すことが明らかにされた。実体鏡視能力欠損者は,運動視

差,密度勾配,パースペクティブなど他の奥行手がかり要因によって内的三次元空間を構成す ると考えられる。ただ,健常者はミ内的に回転するメ ことを良く理解できたと報告するのに対

し,欠損者は課題の実行に際し,「ブロックの数をかぞえる」,「パースペクティブサイズを用い る」,「対象の1部を指でほじく」,等を内観報告していることは注目されよう。

Lema&Blake(20)は,実体鏡視能力欠損者を対象にして,明るさの対比閥を単眼視−と 両眼視条件で比較した。刺激は,CRT 上に縦縞の格子パターンを提示し,・電圧を変化させる ことによってその対比率を操作した。実験の結果,健常者は両眼視条件で閲伯が郎著に低下す るのに対し,実体鏡視能力欠損者はこの種の聞値の低下は示さなかった。このことから,両眼 加重現象は実体鏡視と同一のメカニズムによっているのではないかと考えられる。

一般に,観察距離(絶対的奥行距離)が変化しても,ものの相互間の奥行(相対的奥行距離)

は恒常に知覚されることが知られている(depth constancy)。Ritter(33)は,この恒常性 と奥行手がかり安閑との関係をしらべるために,相対的奥行距離要田として両眼視差を,絶対

(6)

的奥行距離要因として眼球調節と幅横作用とを操作した。はじめに,depth constancyが生 起するか否かを確認するために,ピラミッド模型の底辺を観察者に前額平行にその頂点を観察 者から遠去かるように提示し,ピラミッドの奥行と観察距離との関係を測定した。その結果,

観察距離が変化しても相対的奥行距離は一定となることが確かめられた。そこで次に,ピラミ ッド模型の底辺が観察者と前額平行になるようにリアスクリーンに2台のプロジェクターで投 影し,その虚像を観察させた。同様に,相対的奥行距離と観察距離との関係を吟味するが,こ の際,観察距離が変化しても両眼視差及びピラミッドの大きさは常に一定を保つように操作さ れた。実験の結果,両眼視差が恒常な場合には,観察距離の増大に伴う相対的奥行距離は2次 関数的に変化することが示された。これらのことから,相対的奥行距離は,両眼視差と観察距 離の両要因によって規定されると思われる。なお,観察距離の手がかり要因は眼球調節と幅極 作用であるが,この両要因を各々分離しその単独の効果をみたところ,主要因は転換作用であ ることも確認された。結局,depth constancy は,基本的には,両眼視差と幅槙作用によっ て規定される現象と考えられる。

W 大きさ−距離関係

(1)奥行距離

奥行距離知覚は,たんに対象までの距離を知るだけではなく,知覚された距離にもとづいて 行動するための指針となる。したがって,その研究にあたっては,対象までの距離知覚をもと めるだけではなく,その知覚にもとづいて実際に行動させてみる必要があろう。Foley(7)

は,対象までの奥行距離をverbal(inch)による報告と対象まで手を伸ばさせるmanualな 方法とを用い,奥行手がかり条件を種々変えて測定した。奥行手がかりは,運動視差条件,両 眼視差条件,複合手がかり条件の3段階が設定された。実験の結果,Verbalによる報告及び manualによる方法とも,距離の増大に伴う視えの奥行距離はlinearに増大すること,また Verbalな方法はmanualなそれに較べ距離が過大視されること,さらに奥行手がかり条件に よって距離知覚に差が生じ,なかでも複合手かかり条件で距離の増大に伴う視えの奥行距離知 覚の変化勾配がもっとも大きくなることが明らかにされた。Verbalな方法とmanualな方法 とで知覚された奥行距離に差が生じたことから,真に知覚された奥行距離は奥行知覚理論の文 脈の中でしか有効に規定できないのではないかと思われる。

絶対的奥行距離の測定は,Verbalな報告,rOpe・pulling,ball−throwing等多様な方法が 用いられるが,しかし各々の方法はそれ自体に内在する個有な反応バイアスを受けてしまい,

結局,視えの距離を直接に表示することができない。そのため,Gogel,etC(1968,1973)は,

calibrationequation を用いることを勧めた。Calibrationequationとは,full・Cue条

件下で得られた個人の判断値を

Dr=KDm(Dr:判断値,D:物理的距離)

にあてはめ,最小自乗法により,K,mの定数を決定し,これにもとづいて奥行手がか、り縮減 下での個々の実測値を修正しようとするものである。Mershon,Kennedy&Falacara(23)

は,Calibrationequationの有用性について,手がかり縮減下でverbal法とrope−pulling 法により得られた視えの距離の判断値をcalibrationequationをあてはめた場合とそうでな い場合とで比較することによって検討した。その結果,各測度間の群間差はcalibrationの手 続きによって顕著に減少したが,しかし各個入内のバイアスは消去されず,測度間の一致につ いては改善は示されなかった。これらの結果から,Calibrationequation技法は,その代数

(7)

的操作を再度検討することによって有効性が増大する 山 と考えられている。

Gogel&Tiez(13)は,凝視と注意が視えの奥行 距離の修正要因として働くことを明らかにした。一般 に,1点を凝視して頭部を左右に振った時,凝視点よ

り手前にある対象は反対方向に,遠くにあるものは同 方向に動いて見える。これは運動視差の特性のひとつ として良く知られているが,何を意味しているかは明 確ではない。図3をみよう。ここでは,頭部の水平回 転運動(K)に随伴して生起する視えの運動(W′)及 びその時に操作した対象の物理的運動(W)との関係 が例示されている。図中Aでは,頭部を水平に回転さ せながら観察距離(Dm)にある静止対象(m)を注

ド:K 〉; 与︑・ 一◎バー円=

図3 頭部運動に随伴した対象の物理的 運動と視えの運動との関係を示した 模式図(Gogel,W.G.&Tiez,J.

D.1977)

祝した事態である。この時,もし対象が実際の距離Dmより手前にあると知覚されたとする と,この対象は,実際は静止しているにもかかわらず,頭部回転に随伴して頭部回転と同方向 に動いてみえる。逆に,より遠方にあるとされれば,頭部回転とは反対方向に動いてみえる。

つまり,対象の視えの奥行距離が物理的距離と一致しない限り,観察者の頭部回転に伴なって 見かけ上動いてみえることになる。視かけの距離(D′)と知覚された対象の随伴運動(W′)

との関係は,

D′=D(K−W/)/K(D:静止対象までの物理的距離,K:頭部回転量)rll)

であらわされる。一方,図中Bでは,対象(m)は視かけ上,より手前に,すなわちD′mに 知覚されている。この時,対象(m)を頭部回転に同期させて水平運動(W)させれば,対象

(m)と左右眼とを結ぶ視線の交点Dpは,対象の振幅の大きさによってきめられる。もしDp と視えの奥行距離D′nとが等価になれば,対象は見かけ上静止して知覚される。換言すれば,

対象が静止して見えるようになるまで随伴運動(W)を調整することによってD′皿を測定す ることが可能となる。視かけの奥行距離(D′)と物理的随伴運動(W)との関係は,

D′=KD/(K−D)   一一(2)

図4 運動光点の物理的傾きと祝えの傾きの関係を表わした模式図

(Gogel,W.C.&Tiez,J.D.1977)

(8)

で示される。対象(m)が実際より遠くに知覚された場合(図中C)も全く同様な関係が成立 する。Gogelらは,凝視距離が視かけの奥行に与える影響を,視かけの運動(W′)から(D′)

を推定することによって求めようと試みた。そのため,図4に示された装置が考案された。図 中Aでは,距離(Dm)にある光点は垂直に運動するように操作される。もし光点がより手前 に知覚されれば,光点の視かけの運動軌跡は反時計廻り水平方向より90㌦以上傾いてみえる。

逆に,光点が実際より遠くにあるとされれば,光点の視かけの傾きは反時計廻りに水平方向よ り900以内におさまる。一方,図中B,Cでは,運動光点の実際の傾きが物理的距離よりも手 前にあると知覚された場合(B)及び遠くにあるとされた場合(C)とも,その視かけの距離 面で光点が視かけ上垂直に運動するように操作される。図中A事態での実験(Ⅰ)は,観察者 に頭部を左右に振りながら,④光点(観察距離135cm)凝視,@近点凝視(距離57cm,対 象は矩形),㊥遠点凝視(距離292cm)の3条件で対象を各々凝視させ,視かけの運動光点

の傾き(α)を測定することによって行われた。一方,図中B及びC事態での実験(Ⅱ)は,

同様に頭部を左右に振りながら,観察距離136cmに提示した矩形を凝視させ,同時に距離 180cm(近点)あるいは199cm(遠点)に提示される運動光点を視かけ上垂直になるように 調整させることによってなされた。実験(Ⅰ)で求められた視えの傾きα′からは,視えの距 離が公式(1)の変形,すなわち

D′=KD/(K−Vcotα′)(Ⅴ:光点の運動距離,K:頭部の回転運動距離)

によって算出された。一方,実験(Ⅱ)で求められた視かけ上垂直になるように調整された光 点角度(α)からは,公式(2)により,同様に視かけの距離D′が算出された。その結果,

対象が静止している場合でも,頭部回転運動によって視かけの随伴運動が両眼視,単眼視両条 件ともに生じること,またその視かけの運動方向は凝視距離によって規定されること,結局,

対象までの視かけの距離は凝視距離によって変位されることが示された。頭部回転によって随 伴生起する視かけの運動は自然な事態でもしばしば生じているため,視かけの奥行距離のこの 種の誤差は常に生起していると思われる。

(2)大きさ距離仮説

Higashiyama(16)は,物理的に等しい距離に視角の異なる対象を継時的に提示した時の 視えの大きさと視えの距離関係について吟味した。刺激は,観察距離106cmの所に1辺1,3,

5cmの3稀の正方形が提示される。観察条件は∴単眼視条件,両眼視条件,full−Cue条件が,

設定され,また,大きさと距離の評定は知覚された絶対的大きさと距離について,メートル中 位を用い言語報告させた。報吾された視えの大きさ及び視えの距離の各々についてその比をと り各実験条件ごとに比較してみると,full−Cue条件では対象は観察者から同距離にあるもの として知覚され,またこの時の視えの大きさの比は視角のそれに等しいことが示された。しか しながら,奥行手がかりが減じるにつれ,対象は距離を異にするものとして知覚され,しかも その視えの大きさ比は視角のそれと一致しなくなる傾向が増大した。これは,観察者が対象を 大きさが異なるものとして知覚するのではなく,単一のものあるいは大きさが同一のものとし て知覚しているためと考えられる。このことから,primaryな知覚とsecondaryなそれと の間の知覚的抗争という観点からの分析が試みられている。

他に,Garling(9)は,廊下様の perspectiveを付した条件下で大きさp距離関係を吟味 した。その結果,視えの大きさと距離との関係はnolinearであることを確認している。

(9)

Ⅴ 運動の奥行視

(1)Pulfrich現象

Pulfrich現象は,前額平行面上を水平方向に往復運動する対象を片眼に density Blter を装着させて観察した時,その対象が奥行方向に楕円回転してみえる現象をいう。density 別terの装着は,網膜への刺激の到達に遅延を生じさせる。この時,両眼が移動面の1点を凝 視点としている場合には,装着側の網膜への投影点は,遅延のため,他眼のそれと非対応にな

る。Pulfrich現象は,この種の遅延によって生起した両眼視差によって生じる。Wallach

&Goldberg(39)は,この現象のメカニズムについて種々実験的検討を試みている。その1 は,移動対象の背景野を homogeneous なそれに変えることによって凝視すべき静止点を取

り除き,この操作によって両眼視差が生じることを妨げ,奥行手がかり要因としては転換作用 にのみ限定した場合,その2は,移動対象の背景野をトノトで埋め,このドット面を凝視した 時に生起する両眼視差にtransverse disparityを付加した場合について各々吟味した。実験 の結果,転換作用のみが手がかりである場合には,Pulfrich現象は著しく減少すること,

transverse disparityの導入は現象生起の程度には影響を与えないが,その潜時は著しく短 縮されることが明らかにされた。

Pulfrich現象に類似したものに Mach−Dvorak現象がある。Mach・Dvorak 現象を観察 するには,Pulfrich現象と同様,前額平行面上を水平に振子運動する対象を両眼観察させる が,その際片眼を交互に閉眼させて行う。このようにすると,対象のある時点での位置が片眼 に,別の時点の位置が他眼に入力され,その結果,対象は奥行方向に楕円回転して見える。

Michaels,Carello,Shapiro&Steiz(25)は,この現象を解 明するためにその基本的要因である時間要因について吟味し た。時間要因としては,図5に示されているように,片眼への 刺激持続時間(ED),眼球間遅延時間(Interocular delay IOD)が独立に操作されねばならない。そのため,刺激には振 子のかわりに前額平行面で回転する4本のスポークをもつ卓輪 を用い,スリットを通して観察させた。ED,IODは,車輪の 回転速度,スリットの幅の調整によった。また,回転に伴う視 えの奥行の変化は,前額に対し直角方向に変化するマーカーを 調整させることによって測定された。実験の結果,何片眼への 刺激提示から他眼への刺激提示までの時間(onset−OnSet)を 長くすると,これに伴い視えの奥行距離(illusion)も増人す ること,④また,EDとIODは,それらがonset−OnSet時 間を変化させる場合にのみillusionに影響すること,③さら に,OnSet・OnSet時間が60ないし70msecを越えると,OnSeト OnSet法則は希薄になること,等が明らかにされた。これらの 結果にもとづき,illusionの程度を予測するものとして次式が

たてられた。

I=(D・Ⅴ・T)(IPD+Ⅴ・T)

ここで,D:観察距離,V:回転速度,IPD:眼球聞距離,T

:時間測度をあらわす。この時,問題になる変数はTである。

▼07▲L TIH亡 OHS亡T・ONStT

L R

llll亡ROCUt▲R DlST▲HCf

図5 Mach−Dvorak現象に類似 した現象を生起させる条件の概 観図(Michaels,C.F.;Care1−

10,C.;Shapiro,B.&Steitz,

C.1977)

(10)

Tに対してonset−OnSet時間(T=ED+IOD)をあてるのか,あるいはonset−0Hset(T=

2ED+IOD),ないしは0Hset・OnSet(T=IOD)をあてた方が正しい予測が得られるかが問 題となる。あてはめの結果,OnSet−OnSet時間にもとづく予測値が実測値にもっとも近似する ことがわかった。これらのことから,時間的に分離した2種類のOn反応が,両眼視において 統合されることが明らかにされている。

Pulfrich現象については,この他にMorgan(26)が両眼間にvisualpersistence差を 導入することによって生じる奥行運動現象から新たに説明しようと試みている。

(2)その他の研究

Farnる(5)は,一定の輝度をもつ対象の背景の輝度を連続的に変化させた場合に生起する いくつかの現象を観察し報告した。それによると,まず背景はその輝度変化に伴い前後に移動 するようにみえ,それとともに一定輝度の対象は背景の輝度変化に応じて拡大・縮少するよう になり,次いでその後,対象そのものが背景の輝度変化に応じて前後に進出・後退を繰り返す ようになるという。

Ⅵ 視空間残効

奥行方向に傾いた刺激を長時間凝視した後,前額に乎行な面をみると凝視刺激とは反対方向 に傾いて知覚される。この種の傾き残効(slantaftereHect)は,両眼視,単眼視いずれの条 件下でも生起するとされているが明確ではない。Balch,Milewski&Yonas(1)は,この 点を吟味するために奥行手がかり条件と傾き残効量との関係を,特に幅操作用,両眼視差が手

がかりとなる両眼視観察条件,linear perspectiveと肌理の密度が手がかりとなる単眼視観 察条件において吟味した。両眼観察条件では,垂直線の描かれたカードが450傾けられて提示

され,単眼視条件では,絵画的に傾いて描かれた台形のカードが前額平行に提示された(この 場合,台形の網膜像は正方形になるように描かれている)。実験の結果,単眼視・絵画条件で

も傾き残効が生起すること,しかし残効の程度は両眼視条件の方が強いことが明らかにされ た。さらに興味深いことは,単眼乱一両眼視,あるいは両眼視一一一単眼視のように,観察条件と

テスト条件をクロスさせた場合にも傾き残効が生起することが示されたことである。そこで傾 いて描かれた台形を単眼観察で順応後,描線の存在しないサンドペーパーを前額平行に提示し て両眼観察させたところ,傾き残効が生起することがわかった。このことから,傾き残効を2 次元面の傾き特徴検出器の順応によって生じるとする考えが排される。線分が傾き残効を媒介 しないことが,このように明らかにされたが,しかし肌理勾配がそれを生起させているかも知 れない。これを確かめるために,観察条件では垂直線の描かれたカードを450傾けて両眼観察

させた後,前額平行に提示された正方形の描かれたカードを単眼観察させてみた。その結果,

両眼観察一単眼テスト条件のみ傾き残効が生起した。このことは,肌理勾配が傾き残効生起に 必要との仮説を棄却する。以上の結果から,傾き残効は特定の手かかりに固有なメカニズムに よって生起するのではなく,もっと一般的なメカニズムによっていることが示唆される。

1・∬ 平面画像の奥行視

(1)幾何学的錯視とPerspective theory

SchiHman&Thompson(35)は,inappropriate size constancy scaling理論をボン ゾー錯視で検討した。図6のように,幅榛する両側線の中央に垂線を引き,その中点を求めた 場合,もしこの種の図形パターンが遠近性を誘導しているならば,幅極する角の変化に伴なっ

(11)

て垂直線の中点判断が影響を受けると考えられる。実験の結果は,し かしながら,この仮説を支持しなかった。

Day,Dickinson&Jory(3)は,ポゲンドルフ錯視の斜線逸脱効 果が主観的輪郭線によっても生起するか否かを,図7のパターンでし らべた。その結果,パターンD,F,Gでは,通常のパターンAより もその効果はやや減じるものの,鎗視は生起することが示された。

Gauld(10)は,Gregory のinappropriate size constancy SCaling理論でミュラーリエル錯視を説明することについて,④矢羽 線の角度変化に対応して奥行はlinearに変化するはずなのに,錯視 量の変化は必ずしもそれに対応しないこと,④矢羽線の長さが大きく なるとそれだけ perspective も変化すると考えられるのに対し,錯

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図6 変形ボンゾー鉛視

(Schiffman,H.R.

&Thompson,J.G.

1977)

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図7 ポゲンドルフ錯視と主観的輪郭

(Day,R.H.;Dickinson,R.G.&Jory,M.K.1977)

視蛍は必ずしも大きくならない,などの難点を挙げ,批判した。

同様に,Lester(21)は,ミュラ,リエル錯視がsize constancy scalingによって生起す るのであれば,矢羽の角度によって主線の太さも相違してみえるはずであると考え,実験を試 みた。その結果,この種の傾向は生起しないことが明らかにされた。ここでも,Size constan−

Cy SCaling理論は支持されていない。

(2)発達的研究

Gibson(1971)によれば,絵画は,それに光があたり眼に反映される時には,現実世界が 光によって眼に反映されるのと同様な構造的情報をもたらす故に知覚的には現実世界の表象と して機能しうるとされる。すなわち,現実世界と絵画世界とは,光学的配列に関して等価であ るという。Hagen&Glick(14)は,このことを確かめるべく,絵画的図版とこれの実景モ デル間の遠近的関係について検討した。刺激には,図8のような図版及びこれの実景が用い られ,各々その背景刺激を変化することによって絵画的遠近の主要因である大きさ,linear

(12)

perspective,teXtureが操作された。手続きは,図版あるいは実景を観 察刺激として提示し,次いで選択刺激として提示した4種の実景の中か

ら正しいものを選ばせることによった。この場合,異なった距離に同一 の大きさの対象があると知覚すればjl三しい選択をなしているが,吊一距 離に同一の大きさの対象がある,あるいは異なる距離に大きさの異なる 対象がある,ないしは同一の距離に大きさの異なる対象があるとすれ ば,誤った知覚をなしたことになる。小学校3年,6年,大学生につい て単眼視条件で実験した結果,観察刺激として絵画的図版を提示し,選 択刺激である実景の中から該当するものを選ばせた場合には,エラー,

特に異なる距離に異なる大きさの対象があるとするエラーが多く発生し

図81inear−perSpeC−

tiveな図版(Hagen,

M.H.& Glick,R.

1977)

た0この傾向には発達差はみられなかった○これらの結果は,単眼視・静止条件下では,絵画 と現実世界とはその奥行情報に関し等価であるとするGibsonの考えを否定するものとなっ ている。

桓)交差文化的研究

NichoIson&Seddon(27)は,ナイジェリアの13〜20才齢者を対象とし,絵画の中に遠 近関係をどの程度よみとることができるかを,諸手かかり要因を変化させることによってしら べた。絵画的手かかり要因は,モノクロ写真,諸要因を網羅した線画そして上一一下配置要因の みによる線画というように組織的に操作された。その結果,絵画的手がかり要因が豊富なはど 遠近関係はよく理解されること,しかしモノクロ写真と手がかり網羅の線画間には差がない等 が示された。

また同様に,NichoIson&Seddon(28)は,ナイジェリアの・中学生(2年壁と5年蛙,

10〜18才齢)を対象にし絵画的遠近関係の

理解力をしらべた。刺激は,図9に示さた ような四角形あるいは六角形の結晶格子様 立体モデル及びこれの写貞像である。方法

は,フレームの各所にはめられた球の位置 関係を問うことによってなされた。実験の 結果,平面画像によるテストでは,5年生 は2年生に較べて成績が良いこと,しかし 統制群として用いられた英国の中学3年蝮 よりは成組が劣ること,また平面画像テス

ト前に立体モデルテストを経験させること が遠近理解に必要であること等が明らかに された。

そこで,NichoIson&Seddon(29)は,

ナイジェリアの2つの部族Yoruba と Hansaの中学生(11〜21才齢)に,絵画

HEXAGONAL FRAMEWORK

CUBOID FRAMEWORK

壬一一一一一一一一一二【6cm −一一一一 一=丁子

図9 空間関係知覚テストに用いられた結晶格子様立休 模型(NichoIson,J.R.&Seddon,G.M.1977)

的遠近学習を施した。Pre・及びPost・のテスト刺激には,結晶格子様の立体モデルの写●真像を 用い,その前後に,テスト刺激の立体モデル,実体鏡視像,写真像,線画像と立体モデルの組 合せ,のいずれかを学習訓練として挿入した。その結果,Yorubaの中学生は実体鏡視像を挿 入された場合にのみ成績の向上が示され,一方Hansaの中学生は,どの訓練プログラムでも

(13)

成績が向上したo Hansaはイスラム教徒の人々が多く,その周岡に比較的絵画的表現が多い ためと考えられる。

Leach(19)は,ローデシアの′J学3年生を対象とし,重なり,パースペクティブ等の絵画 的要因から構成された写真や図版中に描かれた対象の遠近的関係理解が,質問の問い方によっ てどの程度変わるかをためした0特に,「〜より近いのは何か」と質問する方が「〜より遠い のは何か」より正しい答を多く引き出せるのではないかと想定されたが,実験結果はこれを支 持しなかった。

Ⅵm ヒトの乳児及び動物を対象とした奥行知覚研究

(1)視覚的断崖法及び視覚的陥穴法による奥行知覚研究

Walk&Gibson(1961)のVisualcliffを用いての実験は,垂迫方向への奥行弁別が他 方向のそれと比較して特殊なものであることを示唆した。生体には,その生存を保存するため に,移動能力発現時には落差を弁別し,これを回避する能力があらかじめ付与されているらし Somervil&Somervil(36,37)は,垂直方向の落差と水平方向の奥行のどちらが生休に より嫌悪を生じさせるかをニワトリのヒナ(Leghornchick,6〜24月齢)とラット(Long Evans,成体)でしらべた0実験は,垂直方向落差に深,浅の2条件,水平方向奥行に遠,近 の2条件を設定し,これを各々組み合わせて5条件の選択事態(浅直遠,深一一一近,深一遠,浅 一一近,近一遍条件)で行われた0その結果,ニワトリのヒナは浅刺激,近刺激を有意に選択す

る傾向を示すこと,またラットは近一一一一遠条件でのみ近刺激を有意に選択することがわかった。

(2)その他の奥行知覚研究

Rose(34)は,22〜26週齢の乳児(70名)を対象とし,形と奥行の知覚能力についてしら べた0刺激としては,種々の幾何学的パターン及びこれらの3次元模型を用い,指標反応には 注視時間を採った。手続きは,初めにhabituation(2刺激1組の刺激を30秒間提示)を行 い,次いでテスト(片方の刺激が新奇なものあるいは奥行次元の異なるものに代えて提示)に 移行し,刺激の注視時間が測定された。その結果,6カ月齢の乳児は

2次元パターンと3次元パターンの識別能力を有していることが示さ れている。

Yonas,Oberg&Norica(41)は,対象に伺って手を伸ばすこと のできる14週齢と20週齢の乳児の実体鏡視能力をしらべた。立体像 は,図10に示されたように,2台のプロジェクターによりポラロイド フィルターを適してリア・スクリーン上に物体を投映させ,この投映 像をポラロイドフィルターをかけて観察させることによって現出させ た。測定は,リア・スクリーンとプロジェクター間の対象(正方形)

を前後に移動させることによって,物体が視かけ上衝突してくるよう にし,その際の被験児の反応を観察することによって行った。実験の 結果,20週齢児は立体像に対してより多く手伸ばし反応を生起させ,

また視かけ上の衝突に対し首をうしろへ引くなど防御反応をとった。

これに対し,14週齢児は,2次元像より立体像の方が注視時間は長い ものの,しかし他の手伸ばし,防御反応等では有意な差は生じなかっ た。これらの結果から,少くとも20週齢児は実体鏡視能力を有してい

図10 実体鏡視影絵像投 影図

(Yonas,A.;Oberg,

C.&Norica,A.

1978)

(14)

ると思われる。また,14過齢段階では明確な結論は出せないが,実体鏡視能力を有している場 合には,その能力を引き出すために指標反応の採り方が課題となろう。

近年,ネコ及びサルを対象とした研究から,両眼視差に対して特有の感受性を示すニューロ ンが視覚領に存在するとの結果が多く報告されている。しかし,このdisparitysensitiveニ ューロンが視覚儀の17,18野のいずれにあるか未だに確定されていない。これは,従来の研究 が麻酔下でなされ,自発的な眼球運動を阻止されていたことにその一因がある。Poggio&

Fischer(31)は,覚醒条件下で観察行動を遂行中のサルの視覚儀のニューロン活動の測定を 試みた。はじめに,サルの眼前にレーザー光によるスポット光を提示し,これの凝視訓練を施 した。サルは,スポット光が提示されたら数百ミリセコンド内に keyを押し,さらに引き続 いてスポット光が消光するまで押し続けるように,そして消光したら300msec内にkeyを 離すように訓練される。この課題を十分に習得したら,次いで頭部固定,片眼閉眼下でも遂行

できるように訓練を施す。ユニットニューロンの活動電位は,スポット光の凝視中に,それに 重なるように前額平行に提示した細く明るい斜線分を前後に移動させながら測定した。測定さ れた部位は,fovealstriate(A17)とprestriate(18A)である。その結果,第1に凝視距 離(38cm)に刺激線分が提示された条件下では,これらの領域のほとんどのニューロンは両 眼から入力信号を受けていること,そしてこの両眼ニューロン(binocularneuron)は単眼 化条件での反応を基準にして2種軌すなわち左右の各眼からの刺激に対して同種の反応をす るもの(ocular balance)と異種の反応をするもの(ocular unbalance)に大別でき,この

うち異種の反応をするものは,さらに3種類,すなわち(a)左右の各眼の刺激のどちらかにより 強く反応するもの(この種のニューロンがもっとも多く分布),(b)どちらかの刺激に対してのみ 興奮するもの,(C)より複雑な反応をするもの,例えば片眼からの刺激に対し左右逆方向の反応 を示すもの,あるいは片眼からの刺激に対し括抗的な発火を示し,他眼からの入力が加わった 時には急激な反応変化を起すもの,に区別できることが示された。また,OCular unbalance

ニュ,ロンは,Striate領により多く分布することが観察された。第2に,凝視点をはさんで 刺激線分が奥行方向に前後移動して提示した場合には,大部分のニューロン(84%)は刺激の 奥行方向の位置に感受性が高く,またこれも4種類に大別できることがわかった。すなわち,

(a)両眼入力に同期する ocular balance 型であるが,刺激が凝視距離上のごく近傍にある時 にのみ興奮反応を示すもの(tuned excitatory neurones,Striate 領に多くみられる),(b)片 眼からの入力にのみ反応する ocular unbalance 型のニューロンであるが,凝視距離点の近 傍に刺激が存在する時には抑制反応を起すもの(tunedinhibitory neurones,Striate 領に みられる),(C)凝視距離の手前方向に対する感受性が高く,興奮反応を生起し,遠方向時には 抑制反応を示すもの(near neurones,OCularunbalance型でpristriate領にみられる),(d)

逆に,刺激が凝視点の遠方にある時に興奮し,手前にある時に抑制を起すもの(far neurones,

ocular unbalance型で,pristriate領にみられる)。第3に,これらのユニットニュ,ロン の奥行感受性のピークは,凝視距離点のごく近傍,視差にして士0.40内にあり,一方これらの ユニットニューロンの両眼相互作用の範囲は,視差にして士lO以上に及んでいる。第4に,

17,18野における奥行感受性ニュrロン(depth sensitive neuron)の分布を,両眼性につ いての型(ocular balanceあるいはunbalance)別に示すと,図11Tのようになる。これら の結果から,tuned excitatory neuron は,その両眼性がbalance型でもあることから,

水平方向の視差の検出を行い,従って奥行弁別のための神経生理的な基礎となっていると考え られるのに対し,tunedinhibitory neuronはOCular unbalance型であると同時に,刺激

(15)

対象が凝視距離点のある範囲外にある時にの み興奮反応を生起させることから,奥行情報 を伴わない二重像の検出を行うと思われる。

そしてこれらを補うものとして,凝視距離点 からかなり離れたところの刺激を検出する near neuron と far neuron が二重像出現

時点でのきわめて大まかな遠近情報の検出を 担っているのではないかと推定される。

一方,Veraart(40)は,pulvinar,lateral・

posterior及びsuprageniculate の神経核 の両眼視細胞(binocular cell)を測定する ことによって,ネコの各眼の視野決定を試み た。1眼を刺激することによって示される視 覚特性は他眼のそれと良く類似している。し たがって,受容野の活動の中心を決めること によって前述の3つの脳領域内のdisparity を測定することができる。測定の結果は,実

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図1117,18野における奥行感受性ニューロンの分布。

図中Te:tuned excitatoryneuron,ti:tuned inhibitory neuron,N/F:near and far neu−

ronを各々表している。(Poggio,G.H.&Fis−

cher.B.1977)

体鏡視のしくみにはlateral・pOSterior thalamusの連合核が介在するとの考え方を支持した ものになっている。

Ingle&Cook(17)は,カエル(Rana pipiens)の餌の大きさに対する偏好反応をその 観察距離との関係でしらべている。その結果,対象(餌)が15cm 以内にある時は,視角の 大きさよりは実物の大きさに対して偏好反応が示されること,またより遠方に対象がある時に は,視角要因が餌選択を決めていること,さらに円の大きさ弁別実験では,観察距離に関係な く視角によって弁別行動が決まること等が示された。これらのことから,カエルにおいては,

大きさの恒常性は動機づけの過程と関連していることが示唆される。

Fox,Lehmkuhle&Bush(8)は,ハヤブサの実体鏡視能力をしらべている。被験体には,

American kestrel(Falco sparverius)を用い,2刺激選択課題で立体像を選択するように 訓練した。その結果,ハヤブサは実体鏡視能力を有していることを示し,このことから,実体 鏡視能力は哺乳類に固有のものではなく脊椎動物に一般的な能力ではないかと思われる。

Ⅸ その他の奥行知覚研究

Gogel&Mershon(12)は,adjacency principleについて,知覚情報源をabsolute Cue と relative cueに分割して分析する2要因知覚理論の中で,その妥当性を検討した。

それによると,一般に対象の知覚特性を担う情報がすべて等価な意味を有しているわけではな−

い。対象間での情報の有効性は,対象間の知覚された距離(前額平行上及び奥行上の距離)が 大きくなるに従い反比例的に減少する。対象間に働いている情報(手がかり)の有効性につい てのこの種の効果がadjacencyprincipleといわれる。一方,絶対的手がかり(absolute cue)

とは,視空間内に1個の対象しか存在しない場合に,その対象の知覚特性にかかわる情報をい い,単独対象注視時の両眼幅換作用がこれにあたる。視空間内にもうひとつの対象を導入する と,この影響を受けてもとの対象(テスト対象)の知覚特性が変る。この種の変容を担うもの が相対的手がかりである。adjacency principle によれば,相対的手がかりの有効性はテス

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