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奥行知覚研究の動向 −1987−

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(1)

奥行知覚研究の動向 −1987−

ASurveyofPapersontheVisual DepthPerceptlOn 」987−

林 部 敬 吉

KeikichiHAYASHIBE

目   次

Ⅰ 奥行知覚の手がかり分析

(1)奥行手がかり間の相互作用

(2)光学的流動パターン

ⅠⅠ実体鏡視

(1)比較的大きい網膜非対応七小さい非対応の処理過程

(2)Glassパターンのステレオグラム

(3)網膜非対応勾配

(4)方向の網膜非対応

(5)実体鏡視融合領域の履歴効果

(6)ダブル・ネイル錯視

(7)眼球運動と実体鏡視

(8)ステレオ キャブチュア

(9)両眼視異常とホロブター

(10)実体鏡視力

(川 多義的なランダムドット ステレオグラム

(12)レオナルドの「窓」

(13)ステレオグラムにおける生態光学的要素のはたらき

ⅠⅠⅠ運動の奥行視

(1)Pulfricn現象

(2)奥行運動対象についての異方性知覚

(3)ステレオキネシス

(4)運動の奥行効果

(5)光学的拡大による奥行運動視

ⅠⅤ 平面画像の奥行視

(1)写真画像の奥行視

(2)

(2)主観的輪郭図形

(3)オプティカル・テクスチュアによる3次元知覚

(4)奥行反転

(5)その他

Ⅴ 交差文化的研究

ⅤⅠ乳児および動物を対象とした奥行知覚研究

(1)ヒトの乳児の実体鏡視力の発達

(2)ヒトの乳児の絵画的手がかり

(3)サルの眼球調節と両眼編棒作用

(4)ハトの両眼奥行視

ⅥI その他の奥行知覚の研究 YlII おわりに

はじめに

本報には,奥行知覚に関連した論文を,PsychologicalAbstract誌の1987年版から抽出し,目 次に示した各領域に分類して紹介してある。なお,文献抽出に際しては,DIALOGの文献検索シ ステムを利用し,DistancePerception,DepthPerception,StereoscopicVisionをキーワードと

して検索した。

Ⅰ 奥行知覚の手がかり分析

(1)奥行手がかり間の相互作用

Wallach,Moore&Davidson(1963)は,両眼球間距離を人工的に拡大することによって両眼 視差を増大して提示すると(このためには,図1に示されたような装置,拡大実体鏡を用いる),

対象の奥行(対象がもつ立体性)は拡大して視

Axis of rotation of

three dimensional form えるが,その後,対象を回転させ,しばらく順

応提示し,再度,対象の奥行を測定すると,対 象の奥行は対象のもつ固有な大きさまで縮小さ れて祝えることを,はじめて報告した。彼らは,

この現象を次のように考えた。順応期間に対象 を回転させるが,これは運動の奥行効果を生じ,

そのため,連続したパースペクティブ要因を働 かせる。単眼的手がかりであるパースペクティ ブ要因と両眼視差要因は,この時,抗争的とな

り,その結果,パースペクティブ要因が両眼視 差をその対象の実際の大きさに近づけるように 図1拡大実体鏡(Fisher&Ebenholtz1986)修正する。

この考え方に対して,Fisher&Ebenholtz(7)

は,この現象が順応期間中に両眼視差あるいは奥行運動効果が存在しなくても生起すること,し かし,順応期間中,人工瞳孔を装着して観察させると,奥行の縮小が生起しないこと,けれども,

人工瞳孔を用いない単眼視条件では生起することを実験的に明らかにした。これらのことから,

(3)

この種の奥行残効は,眼球調節作用が主要な役割を果たしている,と結論している。

(2)光学的流動パターン(opticflow)

Koenderink(12)は,計算機科学の立場から光学的流動パターンについてのこれまでの研究をレ ビューした。はじめに,Gibson(1950,1979)によって生態光学的立場からこの間題が取り上げ られたことに触れながら,3次元知覚を考える上で,光学的流動という概念の果たす重要性があ らためて強調される。その上で,光学的流動パターンを構成する要素について検討する。光学的 流動の検討にあたっては,まず,globalとlocalという2つの特徴が区別される。globalな特徴は,

観察点での回転運動(rotation)と並進運動

鳥ルー \上山此タ ノー山   tu」′

PURE DIVERGENCE PURE CURL

(a)       (b)

L r l

1

一「一丁

\\l

PURE DEFORMATJON GENERAL AFFINE TRAN・

(C) SFORMAT10N

(divergence,Curland deformation) (d)

図2 流動パターンにおける3種の変形,(a)

拡大(pure divergence),(b)回転(pure Curl),(C)シア(puredeformation),(d)

拡大,回転,シアが総合的に加わった

もの(Koenderink1986)

(translation)によって誘導される。localな特 徴には,2種類が区別される。1つは,ある位 置での平均的流動速度(flowvelocity)であり,

他は,隣接した部分での速度の部分的な変化で ある。後者は,運動視差として知られている。

速度の部分的変化は,流動パターンに変形

(deformation)をもたらす。この変形は,さら に,4種類の基本要素,並進(translation:こ こでは,変形はまったく生起しない),等方向的 拡大あるいは縮小(isotropic expansion or COntraCtion),回転(rotation),シア変形

(shear:ある位置での縮小とこれとは直交す る部分での拡大)から成り立つ。「拡大」,「回転」,

「シア」は,図2に例示されている。これらは,

流動パターンでの微分的不変数として数学的に 扱われ,主要な奥行手がかりとなる。Koender−

inkは,この微分的不変数を環境の空間的構造 と運動パラメータから数学的に規定し,流動パターンの科学に,運動学とは異なる力学を導入し,

ロボットビジョンに役立てようと考えている。

ⅠⅠ実体鏡視

(1)比較的大きい網膜非対応と小さい非対応

実体鏡視は,複視が生じる近辺の大きな網膜非対応とPanumの融合領域内の小さな非対応の 両領域で生起することが知られている。これは,実体鏡視が2つの独立したシステムに担われて いることを示唆する。このことを示す事実は,いくつか報告されている。例えば,Richards(1970)

は,小さな非対応では健常な実体鏡視を示すが,大きな非対応には立体視が生じない実体鏡視異 常者がいることを報告している。また,Mitchell&Baker(1973)は,網膜非対応に誘導された 残効が5arc minの非対応をもつ誘導刺激に対して最大となり,15−20arc minより大きくなる

と生起しなくなることを兄いだしている。同様な結果は,ランダム・ドット・ステレオグラムを 用いて,Long&Over(1973),Blakemore&Julesz(1971)によって報告された。

Norcia,Sutter&Tyler(20)は実体鏡視が2つの独立したシステムによってコントロールされて いることを実証するために,実体鏡視中の視覚誘発電位を測定することによって証拠を得ようと 考えた。刺激は,ダイナミック・ランダム・ドット・ステレオグラムで提示し,融合させると矩

(4)

二了 //ヘノ

紅∠∠[∠±

等[∠呈

1     3     10     30r/ノ\十//h

図3 網膜非対応を変化させたときの視覚誘 発電位の振幅(Norcia,Sutter&Tyler

1985)

形が奥行的にみえる。実験の結果,網膜非対応 に伴う視覚誘発電位の振幅は,非対応が15arc minまでは単調増加関数を示す(横軸は対数)

が,しかし,それ以上の大きな非対応では,単 調増加関数とはならず,26arcmin近辺では落 込みさえみられる(図3)。これらの結果は,実 体鏡視が非対応の増大にともなってある段階か

ら別の段階に移行するのか,あるいは,2つの 独立したシステムによって制御されているかの

いずれかを示唆している。

(2)Glassパターンのステレオグラム

Glassパターンとは,Glass(1969)によって 考案された図4のようなパターンを言う。図4

(a),(b)は,共に,ランダム・ドット・パターン で構成されたものの上に,最初のランダム・ドット・パターンをベースとしてそれにある幾何学 的変形を施したものを,さらに重ね合わせて作られたものである。図4(a)の場合には,ペアをな す2つのドットは共通の原点から放射状に位置するようにペアリングされ(この時,2つのドッ

ト間の距離はすべて等しい),図4(b)では,同心円を成すようにペアリングされている。このよう にすると,放射状あるいは同心円状のパターン構造が顕著に浮かび上がる。もし,このGlassパ ターンの数個のドットペアを残して他を覆い隠すと,もはや構造を持ったパターンには祝えなく なる。しかし,隠された領域をしだいに小さくしていくと,それにともなって構造的パターンが 再び浮かび上がる(Glass&Peretz1973,Stevens1978).このことから,Glassパターンには,局 所的にペアリングを行う過程とそれに基づいて全体のパターン構造を組み立てる過程とが存在す る。Stevens(1978)は,局所的ペアリングがどのようにして表象され,その表象がどのようにま

とめられるか,について次のような考えた。まず,局所的ペアリングによってある仮の線分が表 象される。この仮の線分は,各ペア間の位置,隔たり,方向について情報を提供する。次いで,

これらの仮の線分にもとづいて全体的なパターン構造が決められる。実際には,6−7個のペア から仮の線分が構成され,次いで,すべての仮の線分のヒストグラムが,位置,方向,隔たりな どの特徴ごとに作成され,最後に,そのヒストグラムに基づいてどの特徴のどの要素がもっとも 最頻値であるかが検出され,全体のパターン構造が決定される。Marr(1982)によって発展され た視覚理論によれば,パターンは,概略,上述のようなプロセスで計算され,知覚されるとする が,その計算過程は,基本的には.2次元の表象に基礎を置いている。

Earle(5)は,パターン認識の過程がそのような2次元の表象物に基礎を置いたものかを検証す るために,Glassパターンのステレオグラムを作成した。図4(C)のステレオグラムは,左側がGlass パターンで,右側は左側のパターンの各ドットペアの外側を右方向にわずかな距離了シフトさせ

たパターンで構成されている。これを実体鏡視すると,単眼視のとき祝えていたパターン構造が 失われ,その代わりに,2つの奥行距離を異にする面が浮かび上がる。図4(d)のステレオグラム は,左側がGlassパターン,右側がそのGlassパターンの各ドットをランダムに横方向にシフト

させたパターンである。この場合も,実体鏡視すると,Glassパターン構造が失われ,ドットがそ れぞれ,奥行距離を異にして配置されて祝える。図4(e)は,左側がGlassパターン,右側がその Glassパターンの各ドットをペアにしてランダムに選択し,ペアごとにシフトさせたパターンで,

(5)

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(C)

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● ● ヽヽ ●.

で ヽヽ ヽ●●

:: 〆

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●  ヽ ●

●..●・.ヽ:●

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∴●章圭●い膏・・

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●●ヽ

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・・′√∫.∴.・.r・ヾぐ・・二・・ハ㌧・・..÷で∵・い●●・.⁚・・V.⁚.︑rrrい⁝・・・.●.・・・∴・l∵︑・㌻;ノ・√⁝ヽで叫︑く●・・・′′ヾ.・ヽ⁝ヽ・・㍉て..・.ふ︑し..・⁚㌧ぺ√ノ・︑÷・ツ⁝く・●い.●●●・●h・・●.⁚

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実体鏡視すると,各ペアが奥行を異にして放射 状に配置されて祝える。この他に,右側が放射 状のパターン構造をもつGlassパターンにその Glassパターンの各ドットペアの方向をランダ ムに変えたものを重ね合わせたもの,左側が右 パターンの各ドットペアをシフトさせたものも 作成され,単眼視では,特定のパターン構造が

出現しないが,実体鏡視すると,奥行を異にす る2つの面が浮かびでる。これらの観察結果は,

単眼視でみえていたパターン構造が,実体鏡視 的奥行の導入によって消失し,新たな3次元構 造が出現すること,あるいは,その逆に単眼視 では特定のパターン構造が出現しないのに,実 体鏡視すると,3次元的パターン構造が生起す

ることを示している。これらの現象は,Marr理 論では説明が困難であり,Mayhew&Frisby

(1981)が提唱するように,パターン認識の初 期過程で網膜非対応に基づく両眼視の表象過程

を仮定する必要を支持する。

(3)網膜非対応勾配(disparitygradient)

:・∴   両眼祝した時に,左右両刺激が融合するか否 図4(a)と(b)はGlassパターン,(C)一(e)は かは・両刺激がPanumの融合領域内にあるか Glassパターンを用いたステレオグラ どうかによって決まる。Burt&Julesz(1980,

ム(Earle1985)         a,b)は,融合を決めるもう1つの基準として,

網膜非対応勾配(disparitygradient)なるもの を提唱した。非対応勾配とは,キクロピアン距離(cyclopeanseparation)に対する非対応量の比 をいう。図5に示されたように,片半分が2点からなるステレオグラムを考えたとき,キクロピ アン距離(S)は次式で示される。

S=〈[1/2(Ⅹ+Ⅹ′)]2 + y2 〉%

したがって,非対応勾配(rD)は,

rD=lX−Ⅹ′l/[1/4(Ⅹ+Ⅹ′)2+y2]兄

で示される。Burtらは,人間の知覚では,非対応勾配の値が1を越えると,融合が生じなくなる ことを明らかにした。

Pollard,Mayhew&Frisby(23)は,コンピュータ ヴィジョンの一環として,実体鏡視過程に おけるステレオ コレスポンデンス問題をこの非対応勾配の考え方を導入することによって解決 する新たなアルゴリズムの作成を試みた。PMFと名ずけられたこのアルゴリズムは,2段階の処 理過程からなる。第1段階では,潜在的な対応点でのマッチングの強さが,非対応勾配が1の範 囲内の全ての潜在的対応点から得られる得点値の総量から計算される。第2段階では,はじめに,

最も高いマッチング得点を示すものが,正しい対応点として選択される。次に,ユニーク条件に

(6)

Leftimage Cyclopeanimage Rightimage

●AlJ

ミ+ ズ +さ

Cyclopean Separation,S

AR

←∫′一一→

図5 網膜非対応勾配(disparitygradient)

(Pollard,Mayhew&Frisby1985)

もとづいて,その他のマッチングの組み合わせ が除かれる。ユニーク条件とは,ある対応点同

†士の片方が,同時に別の組合わせの一方を担う

i三宝‡崇…:二三千三‡三憲憲

という原則である。このステレオ アルゴリズ ムにもとづいて,人工的な,また,自然空間的 なステレオグラムを読み取らせたところ,相当 な成功を納められることが報告されている。

同様に,Trivedi&Lloyd(34)も,実体鏡視の 過程をコンピュータを用いてシミュレートしよ

うとするコンピュータ ヴィジョンの立場か ら,非対応勾配の指標は,コンピュータによる 実体鏡視過程のアルゴリズムを考える上で有効であることを理論的に検討している○

(4)方向非対応(orientationaldisparity)

Blakem。reetal.(1972)は,ネコの視覚領の線条皮質では,奥行方向にある傾きをもった線 分を左右眼に別々に提示すると(この場合,各眼に提示される線分の傾きは左右で幾分異なる),

ある一群の細胞は強く反応することを兄いだした。この結果は,水平,垂直の非対応の他に,方 向の非対応にもとづく実体鏡視が存在することを示唆する。

Nini。(1g)は,方向非対応が実体鏡視過程の中でどのような働きをしているかについて,方向非対 応と水平非対応との組合わせからなる様々なステレオグラムを作成して検討した。方向非対応と 水平非対応の組合わせは,図6に示されたように,4通り考えられる。

①UO+:2線分は傾きを幾分異にし,かつ両線分の上方と下方の間隔距離を異にするため,

方向非対応と水平非対応とが共に存在する条件。

②UO−:両線分の方向と長さは等しく,したがって,方向非対応,水平非対応は共に存在しない 条件。

③BO+:方向非対応は存在するが,両線分間の長さを等しくして水平非対応を抑制した条件0

④BO−:方向非対応をなくし,かつ,水平非対応を抑制しているが,両線分の上方と下方の間隔 距離を異ならせたため(u,Ⅴ),線分の断端間での水平非対応は有効な条件。

実験は,図7に示されたように,十文字線分

聖_.‥〈  plCtureplane

;;UO

_‥\二Ⅹ

(C)

図6 方向非対応と水平非対応の組合せ

(Ninio1985)

(cross)を要素としたステレオグラムと単線分

(needle)を要素としたもの2種類のそれぞれ について,上記のように方向,水平非対応を組 み合わせたステレオグラムを作成して行われ ̄、

た。観察の結果,「UO+」条件では,十文字線 分,単線分とも,浮き上がったビラミットの斜 面に滑らかに密着して祝えるのに対し,「BO−」

条件では,それらの線分はその斜面に突き刺 さったように祝え,したがって,ビラミットの 斜面は階段状に祝える。「UO−」,「BO+」条件 は,ある時には滑らかに,別の時は,突き刺さっ

(7)

図7 十文字線分を画素としたステレオグラ ム,上図は[UO+]条件,下図は[UO−]

条件(Ninio1985)

RWH 腋WH

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01雷P仙丹(mln0lrC)

NさMl T●mPql●l

図8 実体鏡視中に網膜非対応を変化させた と きの融合範囲と再融合範囲

(Piantanida1986)

たように祝え,その割合は,ほぼ等分である。

この結果から,方向非対応は,傾きの情報を伝 えるのに有効であることが明らかにされている。

(5)実体鏡視融合領域の履歴効果(hyster−

esis)

Fender&Julesz(1967)は,静止網膜像の技 法を応用することによって稿持作用の要因を除 去し,実体鏡視のための融合を純粋なかたちで 測定した。その研究の中で,一旦,融合が成立 すると,Panumの融合領域を越える値である2 deg以上非対応を設けても,複視(diplopia)が 生じないことを兄いだし,報告した。これに対 し,Duwaer(1983)は,融合後,非対応をしだ いに離した場合の複視の出現は,Panumの融合 領域内で生じると報告し,Fenderらの兄いだし た融合後に生起する融合領域の拡大を否定し た。同様な結果は,Boman&Kertesz(1985)

によっても報告された。一方,Hyson,et al.

(1983)は,融合後,視差を少しずつ離してい き,複視が生起するまでの稿按角度を測定し,

これを基にして非対応換算を求めたところ,融 合は4degを越えても存続することを示した。

Piantanida(2鋸ま,このよ うな履歴効果

(hysteresis)が実体鏡視の融合領域で存在す るかについて検討した。はじめに,ランダム・

ドット・ステレオグラム,あるいは,ライン ス テレオグラム(1本の黒線分からなるもの)を,

静止網膜の方法によって提示し,融合後,網膜 上のステレオペアを左右対称的に移動させなが ら,融合像が消失する限界(fusionallimit)を 測定した。fusionallimitが確定したら,引き続 き,ステレオペアの移動を運転させ,再融合限 界(refusionallimit)を測定した。融合領域,あるいは再融合領域の限界を確定するために,複 視の出現の代わりに融合像の消失を指標とした。これは,はじめに融合像の消失がおき,次いで,

複視が生起したためである。実験の結果は,図8に被験者別に示されている。明らかなように,

融合範囲は再融合範囲の2/3であり,融合を保持する非対応の範囲の方が,融合を成立させるそ れよりも広い。これは,融合を保持する能力と融合成立のためのそれとが,実体鏡視のしくみの 中で相違していることを示す。この結果は,再融合のための非対応範囲がPanumの融合領域の外 側で生じることを除けば,おおよそ,Fenderらの結果を支持する。

(6)ダブル・ネイル錯視(doublenailillusion)

ダブル・ネイル錯視(doublenailillusion)とは,図9のように,釘のような細長いもの(A.B)を

(8)

p uU EU Ud

d s t UJ j

図9 ダブルネイル錯視の模式図

(KroI&vandeGrind1986)

4 0 44 0

読書距離程度のところに奥行き数センチメータ 離して提示し,両眼で観察すると,視かけ上,

位置C,Dに前額に平行に位置するように祝え る現象を言う。この錯視を発見したKrol

(1978),Krol&vandeGrind(1980)は,図 9に示されたような投影経路を仮定すると,対 象A,Bは,両眼融合領域では,4つの潜在的 対応点を持つことになることから,その領域内 の相互作用で説明しようと試みる。この説に対 して,Foley(1976),Foley&Richards(1978),

Birch&Foley(1979)は,このような刺激事 態では,刺激間の対象の奥行は明度比によって 規定されることを示し,ダブル・ネイル錯視は 視かけの奥行がもっとも明るい対象へとシフト

されるために生じると論じた。

今回,Krol&vandeGrind(15)は,2つの対 象間の明度比要因が対象の奥行定位に影響する か否かについて実験的に検討し,凝視が変わる ことによる編棒(fixationdisparity)を厳密に 統制すれば,明度要因にもとづく奥行変化は生 起しないことを明らかにした。

(7)眼球運動と実体鏡視

Erkelens&Collewijn(1985)は,知覚的枠 組効果を除去するために視野全体を覆う大きな ランダム・ドット・ステレオグラムを提示し,

それを左右対称的に等速度で動かしても,ある 範囲内であれば,立体視が維持され,しかも対 象は静止して同一の奥行位置にみえることを報 告した。対象がこのように移動しても実体鏡視が 維持されるのは,編棒と融合の2つのメカニズム が何らかの補償を行っているためと考えられる。

2   Erkelens&Collewijn(6)は,同様に,視野全 体を覆う大きなランダム・ドット・ステレオグ 図10 実体鏡視中にステレオグラムを左右対 ラム(30×30degarc)を実体鏡視中の眼球運動 称的に運動させたときの水平眼球運動 の働きを,ステレオグラムを左右対称的にサイ

(Erkelens&Co ewijn1985)    ン波運動させながら測定した。実験の結果,左 右対称的な刺激の運動に対して,左右の眼球で は,刺激運動にほぼ同期した桓按運動が誘導され(図10),この時,刺激運動の頻度と大きさがあ る範囲内にあれば,融合とそれにともなう実体鏡視は維持され,しかも,非対応が変化している にもかかわらず,視かけ上,奥行関係は変化しない。融合と実体鏡視は,ステレオグラムの左右 領域の相対位置が6−13.5deg/Sの範囲内の速度であれば,維持される。刺激運動の速度が融合範

(9)

園を越えた場合の,運動に誘発された編棒運動は非対称的となる。また,ステレオグラムの片半 分を固定したまま,他の半分をサイン波的に運動させると,対称的な稿按運動と片眼に固有の眼 球運動とが共に誘導される。この事態での融合領域は,2degの値が示された。これらの結果か

ら,非対応の変化を補償するような形での補償的な編棒運動が存在し,この場合には,非対応が 変化しても視かけの奥行は変化を示さないことが明らかにされている。

(8)両眼視異常とホロブター

Reading(25)は,両眼視が異常であると診断された者(内斜視,外斜視,不等像視,Esophoria,

Exsophoria)を対象とし,両眼に等しいプリズム(1ateralprism)を装着させたときのホロブター を測定した。両眼にプリズムを装着すると,対象注視時の幅按が変わると共に,図11に示された

APEX

ぐ・\

図11プリズム装着による視野の歪み

(Reading1985)

POLARIZED CIRCLE TARGETS

ような非対称的な視野の歪みが生じる。ホロブ ターは,等距離法(stereoscopic distance matching)と,上下2線分の一致を求める副尺 法(noniusmeasurement)とで測定された。そ

の結果,両眼視が正常で普通の実体鏡視力を持 つものは,ホロブターがプリズムの歪みに一致 して変形するが,両眼視に異常を持ち実体鏡視 力の劣るものは,そのような対応関係が出現し なかった。両眼視に異常があるものが示すホロブ ターのこの種の変則性は,編棒の異常によると考 えられ,このことから,網膜非対応を検出するた めには,安定した幅検閲係が必要と考えられる。

(9)実体鏡視力

最近,奥行方向に運動する対象に対し,選択 的に反応するニューロンがClaire・Bishop領域

(medial bank oflateral suprasylvian

COrteX)で兄いだされている(Toyama & Kozasa1982)。Zinn&Solomon(36)は,従来,

tLIGHT眼科臨床に実体鏡視力テストとして,Titmus,

BOX Frisby,TNO,Randotなど静止刺激のステレ オグラムを用いた測定のみがなされていること

図12 運動刺激を用いた実体鏡視力の 測定装置(Zinn&So10mOn1985)

を反省し,実体鏡視力を運動刺激を用いて測定 しようと試みた。そのために考案された装置が 図12である。刺激提示箱には,非対応のある対 象が2組提示され,提示箱ごとある一定の速度 で被験者に接近する。被験者は,、・刺激が動き出 したら,なるべく早く,どちらの刺激の方がよ り手前にあるか,を判定して報告する。実験の 結果,静止刺激を用いた実体鏡視力と運動刺激 を用いたそれとの間には,何らの相関関係もないことが示され,両実体鏡視力は別種のシステム に担われていることが示唆されている。

(10)多義的なランダム・ドット・ステレオグラム

(10)

瑚㈱踊

ケ押押申呼声γ夢中脚抑粥榊榊

(a)

ヂ瑠

(b)

図13 多義的なランダム・ドット・ステレオ グラム

(Kontsevich1986)

て「:::享

士.:::_

(Cト1弼ヨ

(C)−2■巨二∃

図14 ステレオ・

1 J  J

f t

r

﹁﹁JJ

﹁ L

L

r ●  ● ●

」 ●  ● ●

● ●  ●・、

● ●  ● ■

(e)

キャプチャア

(Ramachandran1986)

Kontsevich(13)は,複数の祝え方が出現するラ ンダム・ドット・ステレオグラムを考案した。

それは,図13(a)に示されている。このステレオ グラムは,正方形と長方形の左右ペアからなり,

このうち,長方形をなす側は水平方向に周期性 を持って同一パターンが反復されている(但し,

1ピリオド内のパターン構成はランダム)。一 方,正方形をなす側では,12個のさらに小さな 正方形要素(21×21dot)が中央の白色正方形を 取り巻くように配され,しかも,この領域は,

長方形のある部分の正確なコピーから作られて いる。このため,正方形側の正方形要素は,長 方形側の複数の領域と非対応関係を持つ。これ を実体鏡視すると,図13(b)のような3次元パ ターンが出現して祝えるという。

(11)ステレオ キャブチュア(stereocapture)

Ramachandran&Cavanagh(1985)は,図 14(a)に示されたように,ドットや縦縞などの背 景を持つ主観的輪郭図形からなるステレオグラ ムを実体鏡視すると,主観的輪郭図形間に交差 非対応がある場合には,その部分が浮かび上が るとともに,その主観的輪郭図形に囲まれた ドットも,背景間には非対応が存在しないのに,

それに密着して浮かんでみえることを報告し,

これをstereocaptureと呼んだ。今回,Rama−

Chandran(24)は,このStereOCapture現象を規定 する要因を検討すると共に,mOtioncaptureな る新たな現象を発見している。StereOCapture 現象について検討された要因は,非対応要因,

視野闘争などとの関係についてである。非対応 要因については図14(b)に示されたように,主観 的輪郭を構成する要素である4個の小円そのも のの間に非対応を付した場合とその小円の切片 間に付した場合とで比較検討された.、0小円間に 付した場合には立体視が生起しないことが観察

された。また,視野闘争については,図14(C)に 示されたように,非対応を付した部分の左右で 抗争する条件の場合に視野闘争が強く生起し,

立体視そのものが生じないが((Cト1),しかし,

背景部分が抗争する条件では((C)−2),視野闘争が弱く立体視が生起すれば,StereOCapture現 象も生じることが示された0さらに,図14(d)に示されたように,主観的輪郭図形を2組重ね合わ

(11)

せたパターンでも非対応を付してあれば奥行を異にする面が浮かび,それにともなって背景のパ ターンもそれぞれの面に密着して祝えるという。また,mOtion captureとは,図14(e)に示され たような刺激を連続して映画のように提示すると,正方形が4個のドットの上を反復運動するよ うに祝え,しかもこの時,背景をなす肌理パターンが正方形の表面に密着して共に運動して祝え る現象を言う。これらの実験的観察から,Ramachandranらは,図と地の分割が実体鏡視や仮現 運動の初期過程を強く規定する,と主張する。

focallengthtransparency

図15 レオナルド・ウインドウ

(Kalaugher1985)

(12)レオナルドの「窓」(Leonardo′s win−

dow)

レオナルドの「窓」とは,図15に示されたよ うに,対象を画面上に忠実に模写することので きるデバイスをいう。このレオナルドの「窓」

には,対象の形や配置が遠近法的に再現される。

この時,もし,「窓」に映じた画像と観察者との 距離を調整すれば,肉眼で観察している対象と

この「窓」に写し取った画像との間で実体鏡視 が可能となる。Kalaugher(11)は,図15のような どュウアー(viewer)を考案し,風景などを撮 影した35mmのポジのカラーフィルムをこれ

にマウントして片眼で観察,同時に,スライド を撮影したのと正確に同一の地点からの光景を他眼で肉眼観察し,両眼祝融合させてみたところ,

通常のステレオグラムでは出現し得ない地形の変化が観察できることを兄いだした。スライドと 実景との実体鏡視の場合にも,通常のステレオグラム使用時と同様,実体鏡視時の眼球間距離や 配置を操作することによってhyperstereoscopic(過大な奥行距離の出現),pSeudoscopic(奥行 出現方向の逆転)が可能であり,同時に,スライドに線分を付加したり,あるいは過去に撮影し たスライドと現光景とを融合させることも可能となる。これらの技法を用いたKalaugherの観察 によれば,地形の変化(例えば,地滑りなどによる裂け目や隆起の出現)の検出が容易であり,

工学や地理学に広く応用できるとのことである。

(13)ステレオグラムにおける生態光学的要素のはたらき

Michaels(17)は,ステレオグラムパターンにおいて生態光学的不変項がもつ奥行情事削こついて分 析した。そのために,眼球間距離を一定にしたとき投影されるテクスチュアがかきこまれたステ

レオグラムが作成され,そのなかにあらわされた対象や空間の視かけの距離が評定法によって求 められた。それによれば,光学的不変項は,絶対的奥行距離についての情報を主として担ってい ることが確認されている。

ⅠⅠⅠ運動の奥行視

(1)Pulfrich現象

Pulfrich現象は,片眼に装着したdensityfilterのために刺激の網膜への遅延が両眼間で生じ,

その結果として生起する両眼間の視差によって奥行感をもった振子運動が視られる,と説明され る。この遅延仮説に対して,Rogersetal.(1974)は,刺激遅延によって両眼間に視差が形成さ れるためには,両眼は常に1点を凝視している必要があり,もし,運動する対象を追従すれば視 差は生じないことを明らかにした。そして,現象が生じている際の眼球運動を測定した結果,眼

(12)

図16 Pulfrich現象の実験装置

(Namba1985)

球は対象を追従していることから,刺激遅延が 生じるのは運動対象ではなく,両眼の背景間に ついてであり,この背景の奥行的変化に誘導さ れて対象の奥行運動が生起する,との仮説を提 唱した。

Namba(18)は,図16のように,2台のCRT上 に光点をハブロスコープを用いて片眼に別々に 提示,また背景は灰色の無地として背景刺激を 除去し,片眼にdensityfilterを装着させて観察

を試みた。観察は,凝視と追従の2条件を設定,

また,filterdensityも30,60%の2段階に変化 して行われた。その結果,凝視,追従の両条件 で現象が生起すること,奥行変化は,filterden−

sityが高いほど大きいこと,またPulfrich現象 を一度体験したものには,単眼でもその現象が感じられること,などが明らかにされた。このよ

うに,背景を取り除いた事態でも,Pulfrich現象が生起することから,この実験では,Rogersら の誘導仮説は否定されている。

(2)奥行運動についての異方性知覚

Perrone(紬は,実体をもつ対象が観察者に向かって前進してくる場合には,対象はその固有の形 のまま知覚されるが,対象が後退していく場合には,その対象の形と運動は,歪められて知覚さ

れることに気が付いた。そこで,図17に示され

.′y:下0・E・

亮十∴

//V2D;\\

一一Z→V3D

(C)

(b)

図17 奥行運動の異方性知覚の実験装置(a)

視線に対して平行に運動する場合の 知覚モデル(b)視線に対して垂直に 運動する場合の知覚モデル(C)

(Perrone1986)

たように,直方体が前進あるいは後退する事態 をCRT上にシミュレートし,単眼で観察,直方 体の前面と後面の縮小・拡大比を変化させ,ど の場合に最も正常に知覚されるか,について検 討した。その結果,前進事態では,前面に対す る後面の縮小比がほぼ100%の条件で対象はそ の形のまま知覚されるのに対し,後退事態では,

その縮小比がおおよそ70%にとどめないと,対 象は歪んで知覚されることが示された。一般に,

対象の奥行運動は,網膜上では2次元面上の運 動として投影されるが,この場合,Perroneは,

2つのシステムを考える。その1つは,図17(b)

に示されたように,視線に対して平行に運動す る場合(前後への運動)で,この時のp点の奥 行運動速度は次の式で表わされるという(シス

テム1)。

V3D=(−hf/(sin2α)(f2+y12)〉×V2D

ここで,α=tan−1(yl/f)+(tan.ly2/f),y2はp

の投影点から投影面内の中心点までの距離,y2

(13)

は投影面の中心点から拡大焦点(ここでは,地平面までの距離が非常に大きいため,投影面では 運動速度と方向は極小となる:点FOE)までの距離,fは観察者から投影面までの任意の距離,

hは観察者の眼の高さ,をそれぞれ表わす。

一方,視線に対して垂直方向に対象が運動する場合(観察者に対して横方向への運動)には,2 つのp点の運動は次の式で示される(システム2)。

V3D=(−fs)〈(Vl−V2)/S〉2

ここで,Vlはplの投影面での運動速度,V2はp2の投影面での運動速度,Sはplとp2間の物理的 距離,Sはplとp2の投影面での距離,fは観察者から投影面までの任意の距離,をそれぞれ示す。

Perroneは,対象が観察者に対し向かってくるように運動する場合には,システム1が作動し,後 退していく場合には,システム2が働くと考え,システム2式によって,実験結果がよく予測さ

れることを実証している。

(3)ステレオキネシス

偏 頗

偏卜廊

虎頗

図18 ステレオキネシスのための刺激パターン

(Robinson,Piggins&Wilson1986)

ステレオキネシスとは,図18に示されたよう なパターンを回転させながら観察すると,トン ネルあるいはとうもろこし状の3次元形が出現 して祝える現象を言う。Wilson,Robinson&

Piggins(1983)によれば,この現象は,パター ンが回転すると眼がそのパターンの輪郭の動き を追従できないため,回転についての手がかり が縮減されてしまい,代わりに,パターンの回 転が運動視差をシミュレートし,その結果,視 覚システムが3次元形を作り出す,と説明され る。今回,Robinson,Piggins&Wilson(26)は,

ステレオキネシスを規定する要因,なかでも,

とうもろこし状の3次元形を出現させるパター ンを用いたとき,その立体出現の程度を規定す る要因について検討した。検討された要因は,

パターンを構成する帯の数,パターンの遠近法 的要素,離心率(eccentricity)である。種々な パターンを作成して観察した結果,視かけの3 次元性の出現程度に強く関与するのは,離心率 の要因であり,その他の要因は影響を持たない

こと,さらに,離心率は回転軸の離心ではなく,

パターンそのものの中に離心性か内在されてい る必要があることなどが明らかにされている。

この結果で注目されるのは,平面画像の奥行視では常に重要な手がかりであるとされている遠近 法的要素が,ステレオキネシスでは,それほどの影響力を持たないことであろう。

(4)運動の奥行効果(stereokineticeffect)

Dosher,Sperling&Wurst(4)は,運動の奥行効果に与える2つの手がかり,両眼視差要因と 明るさの隣接的共変化要因(proximityluminancecovariance)について検討した。明るさの隣

(14)

田領

図19 明るさの隣接的共変化

(Dosher,Sperling&Wurst1986)

図20 光学的拡大による奥行運動視と 大きさ一距離不変仮説

(Swanston&GogeI1986)

接的共変化要因とは,立体物を回転させたとき に生じる奥行視の変化に伴う明るさの変化をさ し,例えば,立方体を回転すると,前面は後面 より一段と明るく祝えることを言う。実験は,

この2つの要因を単独,あるいは抗争的条件に おいて,奥行効果に与える手がかりとしての強 さを測った。刺激は,図19に示されたようなス テレオグラムとし,ネッカーの立方体が,あた かも回転しているかのように,連続提示した。

このようにすると,刺激は,立方体あるいは先 端を切ったビラミットのように祝えるので,ど の条件の時に立方体の方が多く出現するか,を 指標として手がかり効果を決めることができ る。その結果,両眼視差要因が運動の奥行効果 をきめる主たる手がかりであることが確認さ れ,また,2つの手がかりは加算的な効果を持 つことが推定されている。

(5)光学的拡大(opticalexpansion)による 奥行運動視

スクリーンの背後で刺激を拡大(縮小)させ ると,刺激が拡大(縮小)されたとは知覚され ず,対象が奥行方向に運動して祝える。Swan−

ston&Gogel(31)は,この現象を担う手がかりが 何んであるかについて,大きさ一距離不変仮説 を援用して分析しようと試みた。もし,この現 象下でも大きさ一距離不変仮説が成立している ならば,図20に示された知覚可能性のいずれか が,この種の事態で生じると予測される。いま,

観察者から一定の距離のところで対象がその大 きさをS.からSnへと拡大させると考えるとき(physical),第1の知覚可能性として(Perception A),対象Sfの大きさと奥行距離が物理的なそれらに一致するように正しく知覚され,その結果,

対象の視角が仇から鋸こ変化しても,視かけの大きさは変化せず(S′f=S′n),代わりに,対象が 奥行方向に視かけ上の距離d′だけで接近する。この場合には,光学的拡大要因が主要な手がかり

として作用する。第2の知覚可能性として(PerceptionB),最初に提示された対象Sfの知覚され一、L た大きさと奥行距離が物理的なそれより過大視された場合で,この時には,第1●の知覚可能性と 同様に,対象の視かけの大きさは固定されたままで(S′=S),奥行方向に視かけの距離(d′)だけ 運動して祝える。この場合の運動距離は,第1の知覚可能性より大きい。第3の知覚可能性とし て(PerceptionC),尭学的な刺激拡大にともなってその大きさもいくらか拡大して知覚される場 合である(S′。=S′f)。この時には,対象の大きさ変化が知覚される程度に応じて,対象の視かけ の奥行運動距離は小さくなる。第4の知覚可能性として(PerceptionD),光学的拡大は奥行手が かりとしての機能をまったく持たず,したがって,対象は物理的位置(視かけの奥行距離は,こ

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