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豪州の監査制度と監査報告書

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(1)

l ほ じ め に  

現代においては︑交通機関および通信手段の著しい発展に伴なつて︑文化および思想の交流ほ国境を越えて国際  

的に広く拡大され︑ある山つの制度をとり出して見ても︑その生成︑発展に多くの国際的な影響を見出すことが出  

来る︒しかもその国際的な影響がどの特定の国によるものであるかを明確に分析するのが不可能である程︑国際的  

な影響関係ほ複雑かつ多岐である︒ここに株式会社の決算書類の監査制度について豪州の場合をとりあげたのほこ  

のような国際的影響の血つの事例を研究するためである︒更に我が国の監査制度は主として米国の監査制度に範を  

とつて作られたものであるが︑その発展に資するために各国の事情を参考にすることが必要であろう︒   

家州における株式会社の決算書類の監査は会社法に基ずくものである︒これは豪州が英国の植民地より自治領へ  

︵1︶  

と発展したという歴史的事情より︑蒙州の監査制度が基本的に英国の制度に倣って作られたことは疑いの余地のな  

いことである︒唯豪州は六州と二地区よりなる連邦制度を採用し︑各州にほ政治上︑経済上大きな権限が与えられ  

ており︑各州が独自な方針で会社法を制定しているために︑各州で監査制度についての会社法の規定にほ若干の差  

異がある︒  

豪州の監査制度と監査報告番   豪州の監査制度と監査報告書  

︵山一九︶  一   

(2)

第三十四巻 第三号   ︵一二〇︶  二   

これに対して米国の場合にほ法律の制定以前に会社の職業会計士による監査の自発的採用が可成広く行なわれて  

おり︑そ抄ような慣行の社会的必要性を連邦政府が認識した結果として︑証券取引所に有価証券を上場し︑流通さ  

せようとする株式会社に対して︑有価証券法および証券取引所法によつて職業会計士よる財務諸表監査を受けるぺ  

きことを強制されるものであ㌣英国および豪州とはその制度の特徴を異にする︒しかし米国の職業会計士による  

監査理論および実務の発展は著しいものであり︑現代で濾世界各国の先端を行く指導的なものであることは周知の  

通りである︒国際的にも米国の監査理論および実務が各国に影響を与えていることは︑英︑独の場合についても多  

く指摘される所であり︑又我が国も戦後その大きな影響を受けていることは言うまでもない︒豪州ほ第叫次大戦後  

ウェスー︑︑︑ソスター条約によつて英国と対等な地位を得︑第二次大戦後は政治的︑経済的に米国に非常に大きく接  

近するようになつたといわれている︒叉米国と家州との間の学問および文化の交流も盛であり︑豪州の各地で米国  

の著名な会計学暑が講演している︒このような事情から︑家州の監査理論および実務に対して米国の影響が入りつ  

つあると思われるのである︒その一つの現われはオーストラリア勅許会計士挽会の﹁職業的監査業務の劇般原則に  

関する声明書﹂が一九五山年に出されたことであり︑これほ米国の﹁仙般に認められた監査基準﹂に影響を受けた  

︵2︶  

ものである︒   

このように豪州の監査制度は伝統的ばは英国的な制度を基礎な置くものであるが︑現代においては米国的な理論  

および実務が影響を与えつつあると思われる︒以下家州の監査制度および実務の個々の問題について論じる︒  

︵1︶ 豪州の監査制度の背景として︑豪州の政治および歴史を簡韓匿知つておく必要があるであろう︒豪州ほ血七七〇年のクッ  

クの探険により発見されて以米英領になつたのであるが︑英国はほじめはこの大陸を流刑植民地として利用した凸やがて牧  

羊に成功し︑この大陸が牧羊に好適であることが知れたので︑十九世紀以後自由移民の数が増加し︑更に又小麦の栽培が広   

(3)

く行なわれるよう紅なつた︒その後十九世紀半ばごろに金鉱が多く発見され︑そこ紅生じたゴールドラッシュによつて多数  

の移民が流入し︑人口が急激に増加したという事情がある︒  

一方十九世紀初めごろより︑英本国に対する自給要求の運動が起り︑十九世紀後半以後六つの州紅つぎ′〜に月給が認め  

られ︑それ﹀ぐの政府を特つに至った︒そして十九世紀末以降これらの各州を統一する運邦政府をつくろうとする気運が生  

じ︑一九〇仙年に連邦政府が成立した︒連邦はニューサウスウェルズ︑ビクトリア︑クイーンズランド︑サウスオーストラ  

リア︑ウエスタンオーストラリア︑︑タスマニアの六州とノーザンデリートHノとキャピタルテリトリの二地方からなつている︒  

連邦の政治制度でほ英国の政治的億統に米国の連邦組織を採り入れ︑州に大きい権限を与えており︑連邦は州のやらないこ  

とだけをするとさえいわれている︒教育︑物価︑商工業︑鉱山権等はいずれも州の権限紅属し︑連邦は対外国関係および州  

際事項を管理するにとどまり︑戦時中の全国統制を戦後に残そうという試みも成功しなかつたといわれる︒  

豪州は第一次大戦後︑一九三一年のクエストミンスタ・▲・・・条令によつて︑豪州ほ英連邦内の自治領として英本国と全く同等  

な地位をうるようになつた︒しかし第二次大戦後ほ政治的および経済的に米国に接近している︒平凡社国民百科辞典第一巻  

五一七−五山九真参縄︒   

︵2︶ この声明審の内容の簡単な説明および吟味は香川大学経済論革帯三十三巻第六号所載の拙稿﹁オース上フリヤの監査基準  

﹂紅おいて既に行なつた所である︒  

 監査人 の資格   

監査人がその昔任を完全に果すことができるためには︑監査人はそれにたえうるだけの学識および経験をもつて  

いなければならないばかりでなく︑又監査人として適当な人的資性を備えていることが必要である︒監査を行なう  

に必要な技術的知識とんて︑蒙州では監査理論および実務︑財務会計および原価計算の理論︑経営手続︑経営組織  

象州の監査制度と監査報告書   ︵山二こ  三   

(4)

︵一二二︶  四   第三十田巻 第三号  

︵l︶  

および財務︑租税︑会社法および商法︑および経済理論等があげられている︒このような技術的知識については蒙  

州の各会計土協会が試験を行なつている︒豪州では公共会計士を職業としてうまくやって行くためには有名な会計  

士協会に所属することが必要である︒というのは財界の人々は一般に有名な会計士協会の所属ということによつて  

公共会計苦しての専門的能力の判定を行なつているからである町㌢﹂で家相では二つの州を除い職業会計士  

を規制する法規を持たないのであるが︑前述したような事情から法的に公共会計士のために試験を強制されていな  

くても︑事実上は公共会計士として営業するには有名な会計士協会に所属することが必要であるので︑有名な会計  

士協会の試験を受けることが強制されているのと変らない︒  

︵4︶   

又職業監査人として必要な人的資性としては大体次のようなものがあげられている︒第一に完全な公正不偏性お  

よび何者をも恐れない誠実性であり︑それは監査の結果の信根性の点から見て欠くべからざる資性の山つである︒  

次に監査人が分析的かつ批判的思考を持たねばならないことは監査の性質から当然に要求されることである︒更に  

監査人には建設的思考および想像的思考を持つことが要求される︒このような思考態度は先の分析的および批判的  

思考と対照的のようであるが︑その分析および批判は究極においては建設的効果を意図とするのでなければ︑監査  

は十分な機能の発輝を行ないえないであろう︒それに関連して叉監査人にビジネスセンスが要求されることも理解  

されるであろう︒最後に︑公共的な職業家としてほ当然要求されることであるが監査人ほ俵転入の秘密を守るだけ  

の資性ほもたねばならない︒   

このように監査人にほ多くの技術的知識および資性をもつことを要求されるが︑株式会社の監査人となるにほ法  

律によつて規制される路条件を満足しなければならない︒即ち株式会社の監査人は各州会社法および公共会計士登  

︵β︶  

録法による資格証をうることが必要であり︑もし資格証をもたずして監査人となるときは法律によつて処罰される︒   

(5)

倫︑州によつて資格証を与えられる機関を異にしこいる︒′即ち資格証を与える放関には︑登録所︑株式会社監査人  

︵6︶  

串よび清算人委員会︑公共会計士登録委員会等がある︒   

監査人の資格についての会社法の規定は米国での独立性の規定に類似するものである︒豪州の規定は一般的にい  

って大体の州では会社の取締役︑役員︑従業員︑および上記のもののバーーナー或は被雇傭者︑更に上記のものの  

雇主︑法人︑および会社の債務者等を監査人として不適格であるとして小る︒その規定の個々の部分については各  

州で若干の差異がある︒例えば会社の債務者を監査人としては不適格であるとする規定にほ︑その債務の金額につ  

いて基準を設けているのであるが︑クエストオースーニフリアでほ二〇〇ポンド以上︑−言−サウスウェルズ︑ビク  

L∫日ソアでは二五〇ポンド以上︑サクスオースーラリア︑タスマニアでは鼠○ポンド以上と規定されて︑債務の金額が  

各州で異なり︑叉クイーンズランドでは債務者を不適格者とする規定を欠いでいる︒又取締役および役員を不適格  

者とする規定についてもどクトリアおよぴクイーンズラン下では子会社および持株会社の役員関係にまで不適格者  

の範囲を拡大してh軋︒   

簡︑以上のような法律の規定に加えて会社の定款にはって監査人の資格にその他の諸要件を追加することほ可能  

︵8︶ であるが︑通常ほ会社法の鹿足そのまゝであるといわれている︒   

英国の一九四人年会教法の規定に比較して顧著な相違点ほ︑英国では監査人ほ公共会計士でなけれぼならないと  

︵9︶  

規定されているのに対して︑家州の会社法にほこのような規定が含まれていないということである︒しかしこのよ  

ぅな法律の規定がなくても︑実際の凝済社会では公共会計士よつて作成された監査報告書でなければ︑価値のある  

ものとして受け入れをことができないとされているので︑事実上は英国の場合と大きな違いはない︒もう仙つの相  

違点は豪州では会社の債務者が不適格者とされているのに対して︑英国ではその点については何等規定−ておらな  

豪州の濫査制度と監査報告窃   ︵一二三︶  五   

(6)

い︒   

英国の会社法の場合に不適格者の範囲が債務者におよんでいないのは︑英国では監査人が会社の経営者より独立  

な立場にあることが重視され︑不適格者の規定ほもつぱら会社の取締役および役員︑更にそれらのものと雇傭或は  

被雇傭関係にあるも﹄は監査を行なうべき立場になく︑或は監査を行なう公正な立場にないことを強調しているた  

めである︒これほ英国の監査制度が専ら株主の利益保護を目的として︑監査人が株主の代表として会社の道営貿任  

者である経営者の財務責任が誠実に遂行されているか否かを検討し︑かつ監督するために設けられたという伝統的  

な思考に起因する︒従つて株主という仙特定利害関係者の利害の保護のみが目的であり︑米国におけるような利害  

調整の機能が会社の多くの利害関係者のために必要であるという考え方でほなかったので︑その他の利害関係者か  

らの独立性が考慮されず︑又監査に必要な公正不偏性を会社経営者からの独立性によつてえられると判断したのに  

他ならない︒蒙州の場合に債野者を不適格者と規定したのは︑英国のこのような考え方より拡大されて︑株主と債  

権者との利害調整を予定したためであろう︒そうとすればこの点においてやゝ米国的な考えに接近しているものと  

いえる︒   

このように英国と東川との会社法では監査人としての禾適格者の規定について若干の相違があるが︑両者が同じ  

基磐にあることは両者が共に株主を監査人として不適格者としていない所に明らかである︒この点は米国の独立  

性の規定と対照的である︒米国の証券取引委員会現則二−〇一では事実において独立でないものとして︑会社に対  

して直接或は間接に相当の利害関係を有するもの︑および会社の発起人︑・引受人︑議決権受託者︑役員等をあげて  

いる︒又実際の事例では被監査会社の株式を相当数所持する者を相当の利害関係を有するものとして事実において  

︵11︶  

独立でないと判定されている旬 このように米国の監査制度では株主は監査人としては不適格であると考えられてい    第三十四巻 第三号  

︵10︶  

︵一二四︶  六  

(7)

る︒これは米国の監査制度では会社をとりまく多くの諸利害関係者の相互に矛盾する利害を調整して会社を正常  

に維持︑発展させる機能が監査人に課せられているためである︒そこにおいては監査人は単に株主のみのために奉仕  

しているので′はなくて︑株主の利害はその他の利害関係者の利害と調整されねばならないので︑監査人は株主から  

も独立であることが必要とされるのである︒現代の企業はその大規模化に伴なつて社会的に重要な位置を占膠るこ  

ととなり︑経営者は企業を株主の利益保護の目的に沿って運営するのではなく︑企業に対して種々の関係をもつ多・  

くの利害関係者の利害を考慮して公正な運営を行なわねばならない︒監査制度もこのような企業を前提にして︑諸  

利害関係者の利害調整を目的とする︒又米国では会社の外部者である債権者のための信周監査が盛に行なわれてい  

たという経験をもつので︑利害調整という機能がより容易に認識されたであろうことが想像される︒   

このような米国の事情に対して︑英国では別の事情があつたのである︒即ち英国では︑監査制度を最初に採用し  

た一入四五年の会社法ほ監査人は株主でなけれほならないと規定して︑監査人が株主の利益代表である性格を明ら  

かにしている︒そして同時に監査人が会社の経営者より独立した立場のものであることを規定Lていた︒しかしその  

ような素人の株主による監査が実際に十分な効果がないことほいうまでもない︒従って山八重ハ年の会社法になる  

と監査人は株主でなくてもよいとして︑株主以外の鴻の︑それは主として職業的専門家としての公共会計士が監査  

人として選ばれる可能性が与えられたのである︒そこに﹁素人による監査﹂より﹁専門家による監査﹂への発展の.  

契機がある︒しかし簡監査人としての不適格者の内にあくまでも株主を入れないま1に今日に至つているのは︑仙  

八四五年の﹁株主でなければならない﹂という規定の意味する株主の利益代表としての監査という根本目的を継続  

してもつていることを暗に示し︑﹁株主でなくてもよい﹂という規定ほそういう根本目的を否定するものでなく︑  

株主のための監査の技術的な代行者として公共会計士の選任を許したものと理解できる︒豪州においてもこのよう  

豪州の監査制度と監査報告書   ︵山二五︶  七   

(8)

︵三六︶ 八   第三十四巻第三号  

な英国の会社法の考え方を根本的に受けついだものであることが監査人の資格の規定からうかがわれる︒   

︵l︶ RO旨ld A.−ri各︸A已iting︸pp・﹇〜−N・   

︵2︶ Hbid−p●E●   

︵3︶ クイーンズランドおよび言1サウスウェルズの二州は公共会計士登録法を制定している︒言−サウスウェルズは一九  

四五年の同法紅より職集会計士として営業するものは︑公共会計士登録所に氏名を登録すること︑および公共会計士登録所.  

が資格試験を行なう旨を規定している︒尚一九五三年後は会計士協会が代って試験を行なうことになつている︒叉クインズ  

ランドでも同じ法律によつて公共会計士登録所が試験を行なうことを規定していたが︑一九五三年に改正されて︑大学およ  

び協会が行なう試験を認めるようになつている︒村瀬玄稿﹁豪州連邦の職業会計士制度管見﹂産業経理 昭和三十四年九月  

号山五−一六貫参照︒   

︵4︶ RO旨−d A●Hrish︸Op・Cざ一pp・卜N〜−∽・   

︵S︶−bid:p●−ふ●   

︵6︶ Ibidこp●ト晶・即ち︑資格証を与える機関はウェスタンオーストラリアでは登録所でありYピク1﹁=ノア︑タスマニア︑  

サウスオーストラリアでは株式会社監査人および滑静人委員会であり︑言−サウスウェルズ︑クイーンズランドでほ公共  

会計士登録所である︒   

︵フ︶ ROna−dA●HrisF Op・Cit・︸pp・−や〜−ご   

︵8︶−bid■.p●Pり・   

︵9︶ RObert C00mberu A已iting苫acticタp・N芦   

︵18︶−bid︸ p● N5・   

正︶ JOFnL◆Caぺ学PrOffessiO邑囲tEcs︒f︑P一変iのAccO§ting︶pp・UN£U・   

(9)

︵2︶   

株式会社の監査人の任命に関する会社法の規定は英国の場合と同じである︒即ち会社が設立されて︑最初の株主  

総会が開かれるまでの最初の監査人は取締役が任命し︑又監査人に欠員が生じたとき︑その欠員を補充するために  

監査人邪任命する︒しかし通常の場合の監査人の任命は株主の権限にある︒そしてもし株主総会によつて監査人が  

任命されなかったようなときは政府機関によつて任命が行なわれる︒東に監査人の解任の権限も株主総会が所持す  

︵き︶  

る︒監査人の解任についてはそれに対して株主の意志が十分に反映することを保証し︑かつ又経営者の慈恵的な解  

任によつて監査人の独立性がおかされないように︑監査人の地位を支持する規定を設けているのほ英国と同じであ  

︵4︶  

る︒即ち豪州の会社法では現在の監査人以外のものを新しく監査人に指名しょうとするときには︑あらかじめ株主  

総会の開かれる少くとも二週間前までにこの指名の意志を会社に通知すると共に︑株主総会開催の一週間前までに  

解任を予定する現在め監査人および全株主にそのことを通知しなければならないと規定されている︒文豪州の会計  

士協会の倫理規定には新しく指名されようとするものは︑現在の監査人にそのことを知らせるのが至当な注意であ   い︒又・二つの会計士事務所から協働すべき監査人を抜き出して契約することも可能である   ︵望 英国の監査役の独立性︑﹁素人による監査﹂より﹁専門家紅よる監査﹂への移行︑および監査制度の歴史的事情について  

は次の拙稿を参照されたい︒﹁英国紅おける限定監査報告書の背景﹂会計 昭和三十四年十二月︒﹁英国における監査役の  

独立性と限定監査報告審﹂香川大学経済論叢 昭和ニー十四年十二月︒  

三 監査人の任免および報酬  

監査人は個人で監査兼務を行なつてもよいし︑叉パートナーシップで監査業務を行なつてもよい︒パートナーシ  

ップの場合には︑パートナーである個人と契約してもよいし︑パートナーシップ自体と契約してもどちらでもよ   

豪州の監査制度と監査報告書   ︵一二七︶  九   

0  ︵1︶  

(10)

ー︵学︶ るとしている︒   

これらの監査人の地位を支持する規定の存在によつて︑監査人の独立性が十分保証されていもように思われる  

が︑実情はかならずしもそう簡単ではないようである︒蒙州め財務論の学者であるチェンバースは監査人の地位につ  

いて次のように観察している︒﹁監査人はかならずしも確聞たる地位を占めるものでほない︒英国および家州では  

技術的には株主によつて任命されることになつているが︑実際には監査人の任命は取締役の好意に依存するのであ  

︵6︶  

る︒﹂このような事情のために監査人ほ自巳の地位を保持するために︑実際に発言すべきことでも発言することが  

少なくなることを指摘している︒これは監査人の独立性がかならずしも十分に保証されていないことを意味する︒   

英国および蒙州では監査人の任命権者は原則として株主とされているが︑これほ株式会社の監査制度の目的が株  

主の利益保護であるので︑監査人の任命および解任を株主の権限にしておくことによつて︑監査人の独立性が最も  

長く確保され︑か︵一又監査の効果が完全に達成されるという基本的思考が会社法の規定の背後にあるためである︒  

これに対して米国では周知のようにこの問題は選任母体の問題として論ぜられたものである︒米国でほ監査人の選  

任母体ほ︑株主総会︑取締役会︑更に取締役会の内の非執行取締役によつ・て構成された選衡委員会の三つのうちの  

いずれかであり︑必らずしも二定していない︒米国の証券取引委員会は取締役会︑或は選衡委員会による選任をお  

︵7︶  

している︒このことは英国および豪州の立場と全く対立するようであるが︑これは株式会社の監査の目的について  

の英国および豪州の会社法の考え方と米国の証券取引委員会の考え方の相遵がここに現われたのである︒  

︵8︶   

英国および豪州ではあくまで株主の利益の保護が主目的であることは既にふれたところであるが︑米国の監査制  

度では株式会社の発展に伴なつて生じた会社の外部の多くの利害関係者の利害調整の目的が重要であり︑株主はそ  

の内の山つの利害関係者として見られるのである︒従って︑株主が監査人の選任母体となることは必らずしも適当    第三十四巻 第三号   ︵一二八︶ 一〇  

(11)

とは考えられない︒そこで多くの利害関係者の関心の中心である会社の貴任者である取締役会が選任する方が︑公  正な立場から公共会計士を監査人として選ぶことができると思われる︒′勿論このような経営者に対する理解の背後   には︑現代の株式会社の大規模化に伴なう株式会社の性格の公共化が生じ︑従って又会社の経営者は単なる利潤の   追求者ではなく︑会社をとりまく相互に利害を異にする社会の多くの利害関係者の利害を適正に調整するという︑   畳大な社会的責任を与えられ︑かつそれを自覚せんとしている経営者で卦ることを前提としている︒しかしながら   取締役会は経営執行責任者であるので︑それが監査人を選んで監査を行なわせることは︑形式的に見て自己監査の   ような印象を与える︒そこで取締役のうちで直接業務にタッチしない非執行取締役が監査人の選衝撃貝会を構成し  

て選任する方式も適当と考えられているのである︒    しかし実質的に考えれば︑英国および豪州が株主魔会による選任を固執するとしても︑今日のように株式が社会の   各層に非常に広範囲に分散した会社では︑経営者としての取締役は通常少数株主であるが︑かれらほ経営者の地位   を利用して︑分散し︑かつ無汲能化して会社経営に直接の関心をもたなくなつた投資株主から︑抹主総会の議決に   必要な委任状を集めることができる︒従って取締役会の忠志は︑結局株主総会を支配する意志として現われるのが   実状であり︑株主総会が監査人を選んでも︑取締役会が監査人を選んでも実質的に大差がない︒要するに監査人の   独立性によつて期待される監査の信根性ほ︑監査人自身の職業的専門家としての知識︑経験および資性の向上と︑   監査を受ける会社の経営者の社会的責任の自覚と監査制度の十分な認識と︑一般社会の人々の監査制度の意義の十   分な理解に依存する︒従ってこれら三つの要件が満足されゝほ選任母体は単なる形式上の問題にすぎないが︑現実   はそこまで進んでいないので︑現在では形式的な選任の問題もその背後に実質的な患味がかくされていると解さね  

ばならない︒  

豪州の監査制度と監査報告裔   二二九︶  劇一   

(12)

︵一三〇︶ 一二    第三十四巻第三号  

監査人の報酬に関する規定も監査人の独立性に影響するので重要であるが︑大体において英国の規定と大差のな  

いものである︒会社の規定では報酬が株主によつて決定されることによつて︑経営者に対する監査人の独立性が保  

持ぶれると考えているようである︒   

即ち設立時の最初の監査人の場合︑および監査人に欠員が生じた場合には取締役が任命を行ない︑同時に監査人  

︵9︶ の報酬をも取締役が決定するが︑それ以外の通常の場合ほ株主繚会が監査人の報酬を決定すると規定している︒  

唯英国の山九四八年の会社法の規定にほ︑通常の場合の監査人の報酬ほ﹁株主総会によつて定められるか︑或ほ株  

︵10︶  

主総会が決定した方法によつて定められる﹂と規定されている︒この規定の後半によつて︑監査人の報酬の金額が  

株主総会によつてでなく︑取締役によつて定められる道が閃かれている︒即ちこの規定を利用して︑株主総会が  

﹁報酬ほ取締役が定める﹂と決議すれば取締役が報酬を定めることができるからである︒これは監査人の報酬ほ基  

太的には株主によつて定められねばならないが︑実際問題としてほ取締役が定める方が適当であることが多いの  

で︑実際の便宜手段として株主の決議があれば取締役による決定を許すのである︒何故この方が実際的であるかと  

いえば︑通常では株主総会で監査人の任命と同時に報酬を定めるのであるが︑その時に将来の監査業務を予想して  

合理的な金額を決定するのほ困難なことである︒これほ特に拡張されつつある会社の場合にいえることである︒こ  

のような取締役による監査人の報酬の決定ほ︑ 

︵︶  

四八年の会社法によつて許されることになつた︒東川の場合はまだ英国の旧会社法の規定の通りで︑便宣手段を認  

めるには至っていない段階といえる︒   

尚もしも監査人の報酬が定められなかつた場合には︑監査人が行なつた仕事に対して正常かつ適正な報酬を請求  

する権利がある︒如何なる金額が正常かつ適正であるかについては︑豪州の会計士の団体は参考となるべき報酬の   

(13)

︵12︶ 表を公表している︒又正当な報酬については裁判によつても争うことができる︒   

更に監査人の自発的な辞任についてどう考えられているかについてふれねばならない︒監査人は契約した監査の  

仕事が完成するまでほ依扱者の承認がなければ辞任するととはできない︒個人企業の監査のような場合であれば︑  

︑ 依覇者の記録が非常に不完全であるために︑監査人が財務諸表に対して誠実な意見を表明することができない場合  

には︑監査人の辞任ほ適当であるかも知れない︒しかし株式会社の監査人の場合には任命された期間中の監査はど  

うしても行なうぺきであつて︑もし依穐者の会計記録の状態が不満足なものであれば︑その不満足である事実を報告  

︵柑︶  

すべき義務がある︒その結果として︑限定監査報告書を作成せねばならないようなとき︑自分から監査人の地位を  

退いて箕任を逃れるよりも︑むしろ限定監査報告書を作成することが真の義務の遂行になることを豪州の職業会計  

士が自覚してきたものと考えられるのである︒従来では取締役と衝突した監査人は自発的に辞任することが多かつ  

︵14︶ たと思われる︒  

︵1︶ RO旨−d A●ⅠユsデOp●Cit:p●トり●   

︵2︶ R◇訂rt C00mber▼Op.Citこp● Nロ■   

︵3︶ ROna冨A.HrisF.〇p−Cit:p●︸∞・   

︵4︶ RObert C00mber:Op●Cit:p●NトN●   

︵5︶ ROna−d A■−risF op.cttこp●ト00●   

︵6︶ R.1.CFam訂r00一TFe 句巨CtiOnand DesignOf cOmpany An−岩a−RepOtS.p●のN■   

︵7︶ 久保田音二郎著 財務諸表監査 山四五1一四六買春照   

︵8︶ 英国の監査制度の根本的性格が株主目的が主要で︑その他の諸利害関係者の利害調整の性格の稀薄なことについて久保田  

豪州の監査制定と監査報告醤   ︵一三こ  岬三   

(14)

︵一三二︶ 一四   ︑第三十田巻 欝三骨  

博士も同様な意見を示されておられる︒即ら﹁英国における監査の一般的な色彩は・::⁝東国の財務辞表監査の狙うところ  

に較ぺると︑必ずしもそれほど外部の利害関係省に区別をせず︑広く取上げているといえぬと考えている︒・:⁝株主の利  

害を中心忙して小る色彩が強く︑他の外部利害関係者紅ほ︑これと頬似するはど強い考慮がなく︑むしろ副次的に考えてい  

るのである︒﹂久保田音二郎著前掲書二五貢︒   

︵9︶ RO茫−d A.HrisデOp● Citこp−﹁P   

︵叫︶ R.G−yne Wi≡a・m¢.望emFtsOf Auditing−p●∽L   

︵⊥1︶ ROpert C00日berOp.Oit●.p●N忘・   

︵12︶ RO臣−d A◆lri各u Op●Cit●も●−p   

︵u︶ ROヨーd A◆iri算﹀Op●Cit●も●−P   

︵空 英国では今世紀初頭にほ監査人が点心的に︑かつ株主に忠実に監査兼務を行なつたことによつて︑取締役に邪魔になつた  

監査人は取締役と争うために報告竃で限定意見を表明するよりも︑むしろ自発的に監査人の地位を去るのが普通であつたと  

いう事情が指摘されている︒従って豪州においても同様な状態であつたことがアイリッシュの言葉の背後にうかがえるので  

ある︒L.R.Dicksee.A已itingu−岩も.uuL 拙稿﹁英国における監査役の独立性と限定監査報薯苔﹂香川大学経済  

論叢昭和三十四年十二月 三二七−⊥三ニ○頁︒  

四 監査人の権利および義務  

監査人の権利および義務は口頭又は文薯による依頼者との契約︑関係法規例えば会社法︑更に被監査会社内部の  

︵l︶ 

規則例えば会社の定款︑およびコモンローによつて定められる︒監査人に与えられる権利については英由の場合と  

あまり大差はない︒主な権利は次めようである︒   

(15)

ハ2︶  先ず第一に監査人は監査を行なうのに必要な資料および情報を入手する権利をもつ︒各州の会社法では監査人は  

何時でも会社の帳亀︑諸勘定および諸証憑を検討する権利を認められている︒しかし会社ほ監査人をやめさせるこ  

とができるので︑この権利を裁判所が強制することはできない︒聴この場合︑監査人の解任は株主の権限であるこ  

とに注意されねばならない︒  

倫監査資料の内の議事録についてほ︑ウェスタンオーストラリアで明文化されているだけで︑他の州では何ら規定  

しておらない︒しかしそれらの州でも監査人の取締役会の議事録閲覧の権利は推定されている︒特に会社法の要求  

する諸帳薄が適正に作成されているか否かについて︑監査報告書で報告すべきであると規定している州では︑当然  

にその権利の存在が推定される︒更に監査人は正常な監査業務として︑会社が会社法および定款に従って運営され  

ているか香かを検討するためには︑取締役会の議事録の閲覧が重要であるこどからも︑か1る権利の推定は当然で  

ある︒   

更に各州では監査人ほ自己の職務の遂行に必要な情報を取締役あるいは適当な役員に要求する権利をもつてい  

る︒会社は監査人が自己の判断において監査遂行上で必要であると認める監査上の資料を得る自由を制限すること  

はできない︒   

第二に監査人は自己の職務の遂行払対して正当な報酬を受取る権利を有する︒この報酬については前節でふれた  

ように通常の場合にほ全て株主によつて報酬が決定されねばならない︒英国のように取締役による報酬決定を認め  

ているのはー脚ユーサウスウェルズ一州のみである  

第三に監査人は自分が監査し︑かつ監査報告書を作成した財務譜表に関係する監査詞書を所有する権利をもつ︒  

この監査調書の所有権の問題については︑豪州では英国および米国の判例を承認しているので︑英国および米国が  

豪州の監査制度と監査報告沓  

○  ︵3し  

︵仙三三︶ 一五   

(16)

︵4︶  

とつている立場と変らない︒  

︵5︶   

第四は監査人が株主総会へ出席する権利であるが︑タスマーこ′な除いた全ての州で認められている︒英国では株  

主総会への出席の権利と共に株主と同じように全ての通知および株主総会に関する情報連絡を受ける権利︑および  

監査に関係する事項について発言する権利が認められている︒勿論︑監査人が株主総会へ出席することは任意的なも  

︵6︶  

ので強制的なものではない︒しかしその細部については州によつて若干の差異がある︒即ち監査人への株主総会の  

通知を規定しているのはクエスタンオース上フリアのみである︒株主総会での財務諸表についての監査人の説明の  

権利は︑大体の州で認められているが︑ニヱーサウスウェルズおよびオーストラリアンキャピタルテ‖ノiPリでは株  

へS︶   

次に会社法の下における株式会社の監査人には次のような義務がある︒先ず第山に監査人は監査した諸勘定およ  

び株主総会に提出される貸借対欺表︵ピク11‖ノアおよびウエスタンオーストラリアでは損益計算書をも含まねばな  

らない︶について株主に対して次のことを報告しなければならない︒山︑監査人が要求した全ての情報および説明が  

えられたかどうか︒二︑監査した貸借対照表が与えられた情報および説明に照して︑会社の帳簿に示された通りに︑  

会社の財政状態を真実かつ正確に表示するように作成されているかどうかについての意見︵ピクL・‖ソアおよびウエ  

スタンオース上フリアにおいては恕益計界雷が当該会計年度の経営成辟の真実かつ正確な表示を行なうように作成  

されているかどうかについての意見を含まねばならない︶︒三︑ニューサクスウェルズバクイーンズランド︑ウエ  

スタンオーストラリアでは癌律︑或は定款の要求する株主名籍およびその他の記録が適正に作成されているかどう  

かの意見︒四︑ウェスタンオース上アクアにおいての▼み︑減価償却引当金および貸倒引当金がその事業の性質に照  

して︑十分なものであるか香かについての意見が要求される︒    主が特に説明を要求した時に限って説明することができ︑自発的な発言は許されていない︒   第三十田巻 第三号   ︵一三四︶ ハ  

︵7︶  

(17)

以上は監査報告書で報告すべき事項について説明したのであるが︑監査人が監査すべき事項については次のよう  

︵9︶  

に規定されている︒ビクLrmリア︑タスマニア︑サウスオーストラリア︑クエスタンオースーラリア︑ウエスタンオー  

ス土アリアの儲州では会社の諸帳簿が適正に作成されており︑かつ会社の状況および諸取引を正確に記録している  

か香かを慎重に確めねばならないとされている︒このような明文の規定をもたない︼−ユーサウスクエルズ︑および  

クイーンズランドでも会社法および定款軋よつて要求される株主名簿およぴその他の藷帳簿が︑適正に作成されて  

いるか否かを報告せねばならないとされているので︑この義務ほ当然に推定される︒   

又サウスオーストラリアおよびウエスタンオーストラリアでほ会社の資産および有価証券が実在し︑かつ適当に  

保管されていることを慎重に確めねばならない︒このような監査手続ほ正規の監査業務に含まれるべきであつて︑  

特別の規定のない他の州でも等しく適用される︒更にビクトリアおよぴタスマニアでは監査報告書を作成するまえ  

に︑監査人は株主に提出する貸借対照表の基礎になる会社の内部目的の詳細な貸借対照表を︑取締役および経営者  

に要求しなければならない︒尚ビクー・‖ノアにおいてのみ監査人ほ貸借対照表に影響する詳細な事項および情報を提  

供するように取締役および経営者に要求することができる︒   

更に︑タスマニア以外の全ての州でほ︑財務諸表に取締役および役員に対する貸付金の詳細︑および取締役の報  

酬等が記載されていないときは監査報告書にそのことを記載しなければならない︒   

次に豪州での監査報告書に記載すべき事項について英国の場合と比較する︒英国の一九四八年の会社法では︑常山  

に監査に必要な全ての情報および説明をえたか香か︑第二に適正 

見︑第三の仙として貸借対照表および損益計算書が会計帳蛮正二致しているか否か︑第三の二として貸借対照表が  

会社の財政状態を︑扱益計算書が損益を真実かつ適正に表示しているか否かの意見︑第四に連結財務諸表を株主に  

豪州の監査制度と監査報告書   ︵一三五︶ .一七   

(18)

︵;一六︶ 一八   第三十四巻 第三号  

提出する持株会社の場合に︑その連結財務諸表が会社法の規定に一致し︑真実かつ適正な表示を行なうように作成  

︵10︶  

されているか否かについての意見等を述べるように規定している︒又取締役の報酬および役員に対する貸付金が株  

︵11︶ 主に提出される財務諸表に記載されていないときには︑監査報告書の中で報告しなけれはならない︒   

家州と英国とで相違する点としては︑英国でほ単に会計帳簿が適正に作成されているか否かの意見の表明が要求  

されているが︑家州では株主名簿およびその他の会社法および定款の要求する諸帳簿が適正に作成されているか否  

かの意見の表明が要求されており︑英国の場合より意見のおよぷ帳簿の範囲が広い︒又英国でほ貸借対照表および  

損益計算書の双方について意見を表明すべきことになつているが︑豪州では山部の州でのみ両者についての意見の  

表明が要求され︑全部の州におよんでいない︒しかし英国でも則九二九年の会社法でほ損益計算重症ついての意見  

を要求していなかつたのであるが︑一九四八年の会社法になつて要求されることになつたので︑歴史的にあまり古  

いととではない︒豪州の損益計算書について意見を要求していない州でほ古い考えのま1で会社法の規定が改正さ  

れるに至っていないだけで︑特別の理由によつて貸借対照表に意見の表明を限つているのではない︒   

又実際の監査実務としても法律の規定の枠内にとどまつているものでほない︒近代の監査理論および監査手続の  

発展に伴なつて︑法律の要件をみたしっつ︑或は監査理論との妥協を行ないつつ︑更には法律の枠を越えた体系的  

な監査を実務でほ行なつている︒従って法律では貸借対照表についてのみ意見が要求されている州であつても︑現代  

の監査人としてほ損益計算書の正確性を確かめなければ︑貸借対照表の正確性についての慮見を表明することがで  

︵12︶  

きないことが一般に認められている︒即ち法的に規定されていないでも︑現代の体系的な監査の理論としてほ︑貸  

借対照表の監査と共に損益計算書の監査をも含むことが当然なのである︒   

更に監査人の意見の記載内容の規定についても会社法が合理的であるとはいえない︒この点は英国と東川は同じ   

(19)

であるが︑会社法は財務諸表が会社の状態或は損益の真実かつ正確な表示を行なうように作成されているか否かに  

ついての意見︵英国でほ﹁真実かつ適正な﹂という表現になつている︶を述べろことを要求している︒これに対して蒙  

州の赦許会計士協会が﹁職業的監査業務の一般原則に関する声明書﹂で指摘するように︑財務諸表は歴史的な性質  

のものであり︑かつ財務諸表の作成には慣習︑評価︑菟には取締役およびその部下の判断等の諸要素に大きく影響  

されるものであるので︑絶対的事実の表示を行なうものではなく︑叉そうしようとすることほ不可能なものであ  

る︒従って法律が要求するような絶対的意味の正確性叱ついては監査人は証明することはできない︒監査人が行な  

いうることは︑財務諸表を作成する際に採用された会計処理の方法が健全なものであるか否か︑又その会計処理が  

毎期閤継続的に嵐用されているか否か︑東に財務諸費の表示が適正であるか香か等の問題について︑一般に認めら  

︵13︶ れた会計原則に従って作成されているか否かについての意見を表明することである︒   

このような家州の勅許会計士協会の忠見はむしろ米国の監査理論および実務の影響を受けたものであるというこ  

とがでぎる︒即ち米国の監査基準の内の報告基準の内容をとり入れたものである︒このことから明らかなように︑  

会社法の規定とは別に︑実質的に監査理論に基ずいた実務が行なわれている︒その意味では︑法律的には依然とし  

て英国の伝統をそのま1うけついでいるが︑内容的には監査理論および実務において米国の影響を受けながら発展  

しっつあるといえる︒   

次に連結財務諸表についての意見の問題がある︒即ち︑英国では持株会社の場合には連結財務諸表の表示につい  

て︑監査人の意見を表明すべきことが要求されているが︑家州では連結財務諸表の表示に対する監査人の意見の表  

明は要求されていない︒豪州で連結財務諸表についての法規そのものが︑ビクトリアおよぴウエスタンオーストラ  

リア以外は不十分な状態にある︒これら二つの州では持株会社は子会社の貸借対照表および損益計算書︑或はそれ  

豪州の監査制度と監査報告書   ︵一三七︶ 一九   

(20)

二三八︶ 二〇   第三十四巻 第三骨  

らを合併した連結財務諸表を作成して︑株主に報告すべきことが規定されている︒そして子会社の貸借対照表につ  

いての監査報告書に限定事項が記載されていれば︑持株会社の貸借対照表にそれらを記載しなければならないとさ  

れている︒その他の州では連結財務諸表についての何らの規定をもつていないが︑豪州の全ての証券取引所は連結  

︵14︶  

財務譜表を株主に提供することを会社に要求する規則をもつている︒このような情勢から判断すれば︑漸次英国の  

ような規定が採用されてくるものと思われる︒   

監査人の報告義務として更にウエスタンオーストリアでは︑減価償却および貸倒引当金の金額が事業の性質から  

判断して十分であるか否かについての意見の表明を要求しているが︑このことは特に会社法で規定していないで  

も︑現在の監査理論でほ当然監査の過程においてそれらの金額の十分佐を検討して︑もしそれが不十分なものであ  

り︑かつ又その財務諸表におよぼす影響が重大なものであれば︑それは限定事項として監査報告書に記載するであ  

ろう︒従ってこの規定の実質的意味ほ特別にないと思ゎれる︒   

会社での監査人の義務は株主に対するものとして規定されており︑一第三者に対しては法的義務をもたない︒しか  

しながら監査と一般公衆との間にほ二種の信託関係というペきものが見られる︒即ら公衆ほ監査人の専門的技能に  

信頼をおき監査の結果に依存して判断を行ない︑或は行動するからである︒従って営業上の債権者︑抵当権者︑銀  

行屈よび政府機関等のような外部利害関係者に対しては法的義務はなくても︑道徳的.な責任をもたなければならな   ︶  い哺これらの考え方ほ英国での考え方と変らない︒   

監査が実際に監査人を行なう場合には︑会社法に直接定めてあることだけを確かめればよいのではないeそこでは  

現代の監査理論に従つて体系的に監査業務を行なわねばならない︒例えば現代の財務諸表監査は会社に設けられて  

いる内部統制組織の整備および運用の適否の検討を行ない︑その結果に依存して試査によつて会計資料の監査を行   

\ 

(21)

なうも咽であるこせを前提としている︒従つ七監査人の義務を遂行するとは︑このような監査理論に基ずいて︑山  

︵16︶ 般に承認された技能および注意の水準によつて監査を行なうことである︒   

最後に簡単k監査人の権利および義務について要約すれば︑法律的にほ英国の伝統に従うものであるといえる︒  

しかも薗英国の法律の新しい行き方よりまだ若干のおくれが存在する︒しかし職業的専門家としての監査人が現実  

に行なつている監査実務︑およびその背景にある監査理論には︑米国の影響が大きくなつていることを看取するこ  

とができる︒   

︵1︶/R8a−dA・IrisアOp・Cit・︐pp・−pI心〇・   

︵2︶ Hbid●︸p.uNP   

︵3︶ Ibid:p●uu〇・   

︵4︶ lbid:pp●LuuO〜uU−●   

︵5︶ Idid.︸p−NO●   

︵6︶ RObert C00mber■Op● Cit●︸ q・NPふ・   

︵フ︶ ROna−d−A.1riのF Op.Cit.﹀p●N〇・   

︵8︶ lb芦▼p●UUU●  

︵9︶  

︵ュ0︶  

︵ュ1︶  

︵12︶  

︵ロ︶   

Ibidこ pp.uOu〜uN瓜●    RO訂rt C00mber.〇p.Cit.u pp● Nト∽〜N−P    R.Geyne宅i≡ams−Op.Citこp●∽ト    カ○訂Ht A Iri各.cit●︸ p● u■    ︶bid.︸pp.Nふ〜N∽.   

豪州の監査制度と監査報告苔   ︵一三九︶ 二一   

(22)

五 監査制度および監査人の職能   

蒙州の株式会社の監査制度は英国におけると同じように会社法に基ずくものである︒会社法では監査人の義務が  

株主に対するものであり︑又監査人の任命および解任︑更に報酬の決定の憮限等ほ原則として株主に与えられるこ  

とが定められている︒従ってこのような監査制度が株主の利益保護を主目的とすることが明らかであり︑このよう  

な目的を与えられた監査制度の効果を支持するために︑監査人の地位が株主以外のもの︑特に会社の経営者によつ  

て左右されることにより︑監査人の独立性が侵害されるようなことがないように︑監査人の任免および報酬の決定  

のような重要な問題は︑株主の忠志に基ずいて行なわれるぺきことが規定されている︒又監査人の資格のところで  

もふれたように︑監査人としての不適格者の内に株主を含めていないのは︑逆に監査人が株主の代表として︑株主  

の観点に立って︑株主の利益保護を目的として監査を行なうぺきことを意味する︒  

︵1︶  従って︑豪州では属々監査人は株主の番犬であるというような表現が現在でも使用されているのを見る︒即ち監  

査人は取締役がその財務的責任を誠実に履行しているかどうかを確める株主の手段である︒その意味で監査人の義  

務は取締役に対してではなく︑株主に対するものであることが注意されねばならない︒換言すれば監査人は株主の  

利益代表としての性格をもつている︒このような家州の監査制度の理解は米国︑と比べて非常に対照的である︒米国  

では単に株主といつた特定の利害関係者の利益保護を目的とするものではなく︑会社をとり書いて存覆し︑かつ相  

互にその利害を異にする多くの利害関係者の利害を︑社会的観点にたって公正に調整することを目打としている︒   

第三十田巻 第三号  

\√  

︵14︶ lbidこp●−㌶  

︵15︶ lbid.︸p.uUN  

︵遁︶−bid:p●NO●   二四〇︶ 二二  

(23)

従って米国では株主のみでなくその他の第三者の利害をも監査人は考慮しなければならない︒   

しかしここにのぺた監査制度の理解は会社法の規定に基ずくものであり︑職業的専門家としての公共会計士の考  

え方が︑必らザしもこのような段階にとどまつていることを意味しない︒公共会討士は︑現代の株式会社の大規模  

化に伴なつて生じた︑会社の社会的重要性︑従って会社会計の社会的重要性等を認識し︑その基礎の上にたつて発  

展せしめられた会計および監査理論に基ずいて︑現代の株式会社の監査制度を理解しようとしている︒従って単に  

株主のみのために︑取締役の財務的責任の誠実な遂行を監督するのではなくして︑会社の多くの利害関係者が依存  

している財務諸表の適正性を監査し︑この監査の過程において諸利害関係者の利害を調整しようとするのが︑現代  

の監査制度の主たる目的と考える︒そこで監査人はこのような財務諸表の表示の適正性についての意見の表明に依  

存している︑株主以外の諸利害関係者に対しても監査の結果についての貴任を引き受けねばならないという考え方  

が承認されてきているのである︒  

このように監査人の果すぺき職能も現代の監常澄論の下において理解されるようになつている︒その山つに不正  

︵2︶  

の摘発は監査人の職能ではないといわれることである︒もしも監査人の行なう監査が︑株主の完全な保護のために  

不正の摘発を冒的とするのであれば︑そのためには会計期問に生じた全ての諸取引を非常に精細に照合しなけれ  

ばならない︒現代のように非常に成長し︑かつ拡大した企業の場合には︑会計記録ほ複雑かつその最が蒐大である  

ので︑そのような精細な照合を全ての取引について行なうと︑費用が大きすぎて︑それによつてえられる効果を償  

うことができない︒従つてそのような職能を職業的監査人に期待することは不適当である︒   

本質的には不正の摘発の貴任は経営者にあり︑経営者はそのために内部統制組織を設定し︑かつ運用しているの  

で︑監査人は不正の摘発は内部統制組織にまかせ︑又監査においても内部統制組織を利用する︒即ち監査人は会社  

豪州の監査制度と監査報告凄   ︵一四一︶ 二三   

(24)

︵山四二︶ 二田   第三十田巻 第三骨  

に設定された内部統制組織を検討し︑それに欠陥があればそれを指摘し︑この内部統制組織の有効性に応じて試査  

の範囲を決定して︑財務諸表の表示の適正性に対する意見の表明が行なえるように監査する︒従って不正の摘発と  

いうことは︑監査の主要目的が財務諸表の表示の適正性について意見を表明することであるに対して副次的なもの  

である︒たとえ会社内部に不正が生じており︑かつ監査人がそれを発見しえなかつた場合でも︑監査の範囲の決  

定︑或は監査の実施において重大な過失がなければ︑なんら責任の追求は受けない︒監査人の行なう監査では︑そ  

の性質上内部統制組織が行なブような不正の早期の摘発はできないが︑監査人は会社の設定した内部統制組織の有  

効性の検討とか︑不正の生じるおそれのある欠陥については︑経営者に直接に注意することによつて不正の予防の  

職能を果すことができる︒このような考え方が豪州では︑職業会計士および二般公衆にどの程度認識されているか  

については疑問であるが︑仙九五四年の﹁職業的監査業務の一般原則に関する声明書﹂にこのことがかなり詳細に       ︵  8︶   記述されているのを見ると︑まだ啓蒙が必要な段階であると思われる︒   

次に監査人の職能として経営者に助言を与えるのは監査人の義務ではないといわれる︒この場合の助言の範囲に  

ついてどう解すぺきかほ疑問であるが︑会計に遣接関係しない経営上の諸問題については︑職業的専門家としての  

学識および経験の故に助言を求められること鬼実際には多いであろうが︑公共会計士が監査人として業務を行なつ  

ているセきに︑このような経営上の諸問題について助言を与えることが監査人の義務でないことほ︑米国でも認め  

られているところであり︑英国及び豪州でも正当な考え方であ藩︒   

そこで監査人の助言を会計上の問題に限定して考えるとすれば︑英国の伝統的な考え方すれば︑監査の批判的  

な性格に重点が置かれるので︑会計上の助言はあまり重要視されていない︒家州でもこの点は同じであろう︒監査  

の批判的性格から監査人に助言の義務がないのほ当然のことであるが︑︑しかし監査の究極の目的は信轍しうる適正   

(25)

な財務諸表の公表であり︑それは又監査では限定事項のついていない無限定監査報告書を作成することであつて︑  

不完全で欠陥のある財務諸表をそのま1公開すること︑それは又限定事項のついた限定報告書の作成にあるのでな  

いことほいうまでも隠い︒従って会社において︑不通正な会計処理が行なわれているこ・ととか︑財務諸表の表示が  

不完全であることを︑監査人が発見したような場合には︑経営者に対してそれらの事実を指摘し︑かつ適正な会計  

処理方法︑或は完全な表示の様式を助言して︑経営者にそれらの修正をうながし︑適正な財務諸表が公開されるよ  

うにするのが︑職業専門家としての至当な処置であり︑かつ又監査の効果の十分な発輝をうることでもある︒勿論  

監査人自身が会計処理或は表示様式を修正することは︑監査人の権限に属するものでもなく︑又そのような義務も  

存在しない︒何故ならば財務諸表の作成の責任者は経営者であり︑経営者が財務諸表の作成について直接の責任を  

負うぺきであつて︑監査人は財務諸表作成の責任者でほないからである︒㌃︶   

しかし監査人が経営者に与えた助言に対して︑経営者がそれに従うか︑或はそれを拒否するかは全く経営者の自由  

であるJ︒しかし監査人の助言を受け入れて適正な財務諸表を作成して︑公開するのが望ましいのはいうまでもな  

い︒もしも監査人の助言を拒否した場合︑それが財務諸表に対して重大な影響をもつものであれば︑監査人ほその  

問題を限定車項とした限定監査報告書を作成して︑株主総会へ提出するので︑株主総会では経営者の責任が問題に  

な・るであろう︒このような関係で経営者は監査人の助言に従うととを強制される︒   

しかしこのことは形式的に考えた場合であつて︑実際にほ監査人の助言にはこれはどの強制力はない︒というの  

は監査人の地位ほ︑実際的には経営者の好意に依存しているので︑監査人が自分の地位を保つためにあまり積極的  

ヘム︶  

に発言しないという状態にあるからである︒従ってチェンバースほ監査人の影響力ほ命令的であるよりも︑むしろ  

︵6︶  

説得的であることを指摘している︒結局︑監査人の人格が説得力のある人であればあるはど︑監査の効果が期待で  

豪州の監査制度と監査報告書   ︵一四三︶ 二五   

(26)

きるのである︒助言においても監査人の影響力が説得的であることと結びつけて考えられねばならない︒助言を行   なう場合でも︑監査人が説得的に努力することによつて監査の効果をあげることができる︒従って監査人としては   助言を行なうことは監査人の義務ではないとして︑助言に対して消極的態度をとらずに︑監査の効果を高めるため   に積極的に助言をおこなつて︑経営者を説得するのが監査の本質に適合するものである︒唯ここでの蒜のは︑豪   州で助言がこのように理解されているというのではない︒蒙州のチェンバースが指摘した︑監査人の影響力が説得  

的であるということにより︑その助言の瞭極的利用の論理がえられる可能性を示したにすぎない︒ 叉監査人は経営の書の仕方が健全であるかどうかについて︑株主に報告する義務をもたない諾芸人の職能  

は︑会社の行なつた会計業務の面を対象とするのであつて︑結局財務諸表の表示の適正性についての意見の表明を   目的とする︒従って監査人の意見は経営の良否の判定にまで垂らない︒勿論︑監査人が職業的専門家としての技能   および経験によつて︑会社の経営が良好であるか否かを判定することができる場合もあるであろうが︑これは株主  

に対する報告義務とは無関係のものである︒    以上は家州の監査制度および監査人の職能についての考え方を説明したのであるが︑一般的にいつて英国の伝統   的な考え方を法律面ではうけついでいるが︑実際上においては米国的な監査理論の発展を吸収し︑その下における  

監査制度および監査人の職能の理解が行なわれてきているといえる︒   

︵ュ︶ RO計−dA●IrisF.〇p・Cit:p・UuA・   

︵2︶ ︻biチ一p■∽uA・   

︵3︶ :Ed・I p・UU∽・   

︵4︶ lbid∴p■ふ●   

(27)

︵5︶ R.J●C訂mber∽︸ Op●Ct:p●のN●   

︵6︶ Hbid:p・のN●   

︵フ︶ ROnald A●Ⅰ昇F−Op・Cit・︐p・bu・  

六 監査報告書  

監査報告書の性格については︑それが株式会社の初期では会社の定款rの規定に従って︑監査人が証明書を作成し  

ていたが︑現代では証明するとか証明書といつた言葉の使用が︑不適当であり︑かつ叉不正確であることが認識さ  

︵l︶ れるに至っている︒即ち家州の勅許会計士協会は︑﹁職業的監査業務の山般原則についての声明書﹂の中で︑財務  

諸表ほ本質的に絶対的事実の表示を行なうものではないので︑監査人が財務諸表について証明を行なうことは不可  

能であり︑監査人は財務諸表が会社の状態の琴不として適正なものであるか香かについて報告することを職務とす  

︵2︶  

ることを明らかにしている︒この点英国と同じように蒙州も米国の考え方に接近しているといえる︒   

監査報告書の文言についてほ︑ずつと古い時代に監査報告書が貸借対照表の末尾に記載された慣行のあつた時の  

ように︑﹁監査し︑かつ正確であることを確めた﹂というような極端に簡単な文言では十分でなく︑法律上の責任  

に対して完全でないので︑法律上の貴任を限定する意味でも︑又監査契約および法律上の諸条件に合致するために  

︵さ︶ も︑それ相応の文言が必要であり︑かつ叉注意深い言葉使いが必要であるとされている︒   

監査報告書の記載内容としては︑行なつたこと︑行なわなかつたこと︑および監査人の意見をのべなければな  

︵4︶  

すない︒株式会社の監査人が何をなすぺきか︑および監査人の意見は何について表明されねぼならないかについ  

は︑前に監査人の権利および義務の節でのべたように会社法で規定されており︑かつ又それは州によつて若干相違  

豪州の監査制度と監査報告審   ︵劇四五︶ 二七   

参照

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