研究開発センターPJ D
2018年 度 報 告
統合アセスメントの推進に関する研究
研究代表者 川越 雅弘 所属・職位 大学院研究科・教授
[概要]
医療・介護の包括的ニーズを有する85歳以上高齢者が急増するなか、ケアマネジメントを担う介護支援専 門員には、生活機能3要素(心身機能/活動/参加)と関連3要素(個人因子/環境因子/健康状態)の6要素 を総合的にアセスメントした上で課題を適切に設定し、要因分析に基づく対策を検討し、課題解決に向けて 多職種チームを機能させることが求められている。しかしながら、①約8割は福祉系出身者であり、医療面の アセスメントが弱い、②状態像の今後の見通しに対するイメージが持てないなど、アセスメントとそれに基 づく課題抽出・設定に関する課題が指摘されている。
そこで、本研究では、介護支援専門員の利用者本人の生活機能とその影響要因を総合的に捉える力(=統 合アセスメント力)を高めるための手法を検討・開発することとした。具体的には、①アンケートに基づく 介護支援専門員のアセスメント上の課題把握、②主な疾患を有する生活障がい者に対する課題領域とアセス メントの構造、及び具体的な項目の整理、③②に基づくテキスト作成、④③を用いた研修の試行と評価を行 う。2年計画の初年度は、①及び②を中心に検討を進め、現在テキストの一部を作成中である。また、来年 度の研修実施に向け、関係団体との調整を現在進めている。
[研究組織]
(1) 研究分担者
田口孝行(理学療法学科・教授)、臼倉京子(作業療法学科・教授)、柴山志穂美(看護学科・准教授)、
丸山優(看護学科・准教授)、河合綾香(研究開発センター・研究員)
(2) 外部委員
伴正海(医師・横浜市立大学)、阿部佳子(医師・日吉慶友クリニック)、柴崎智美・金田光平(医師・
埼玉医科大学)、磯野祐子(看護師・地域まるごとケアステーション川崎)、野上めぐみ(看護師・越谷 市医療と介護の連携窓口)、神原舞子(理学療法士・株式会社ピュア・ハート訪問看護ステーション青い 空)、竹澤直城(理学療法士・とちぎメディカルセンター訪問看護ステーション)、茂木有希子(作業療 法士・株式会社ハート&アートリハビリ&デイサービスダイアリー)、横山誠治(作業療法士・介護老人 保健施設ハートケア市川)、山崎勇太(言語聴覚士・らいおんハート整形外科リハビリクリニック)、細 谷治(薬剤師・城西大学)、阿久津勝則(薬剤師・株式会社アインホールディングス)、井上まや(管理 栄養士・つくば栄養医療調理製菓専門学校)、白島智子(主任ケアマネジャー・株式会社トータルサポー ト・ノダ)、佐々木千賀子(主任ケアマネジャー・にじの里居宅介護支援センター)、野口祐子・勝木祐 二(日本工業大学)、村上佑順(理事長・一般財団法人オレンジクロス)
1. 研究背景
団塊の世代が90代に入る2040年に向けて、85歳以 上高齢者(以下、超高齢者)が急増し、総人口の約1 割に達すると見込まれている。
超高齢者は、①複数の疾患や症状を有しやすい、
②日常生活活動(ADL)や手段的ADL(IADL)に課題 を有しやすい、③入院や死亡のリスクが高い、④生 活支援に対するニーズが高いなどの特徴を有する。
こうした、複数領域に生活課題を有する超高齢者の 自立した生活を支援するためには、個々のサービス の質に加えて、全体計画(課題解決に向けたシナリ オ)を検討し、推進する介護支援専門員の役割が非 常に重要となる。
さて、ケアマネジメントを担う介護支援専門員に は、国際生活機能分類(ICF)に沿って、生活機能3 要素(心身機能/活動/参加)と関連3要素(個人因 子/環境因子/健康状態)の6要素を総合的にアセス メントした上で課題を適切に設定し、要因分析に基 づく対策を検討し、課題解決に向けて多職種チーム を機能させることが求められているが、①約8割は福 祉系出身者であり、医療面のアセスメントが弱い、
②状態像の見通しに対するイメージが持てないなど、
特に、アセスメントとそれに基づく課題抽出・設定 に関する課題が指摘されており、介護支援専門員の アセスメント力強化が喫緊の課題となっている。
資料8
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2. 目的
マネジメントプロセスは、インテーク(本人・家 族の意向確認)~アセスメント~課題抽出・整理~
要因分析~ケアプラン原案作成~関係者間での共有
(サービス担当者会議)~対策の検討・共有~サー ビス提供~モニタリング~計画見直しなどで構成さ れるが、適切な課題の把握と対策の実行のためには、
アセスメントの質が重要となる。
本研究では、多職種のアセスメントの視点の統合、
ならびに研修カリキュラムの試行・評価を通じて、
介護支援専門員のアセスメント力の強化を図ること を目的とする。
3. 方法
本研究では、1)ケアマネジメントの課題の把握、
2)主な疾患を有する生活障がい者に対する課題領 域とアセスメントの構造、及び具体的な項目の整理、
3)テキスト作成、4)研修の試行と評価を行う。
1)に関しては、研究組織のコアメンバー間で主 な疾患(脳血管疾患、パーキンソン病など)に対す る標準的なアセスメント内容を検討した上で調査票 を作成し、調査協力地区(大阪府大東市)にて介護 支援専門員向けアンケートを行う。
2)に関しては、研究組織の全メンバーを入れた メーリングリストを用いて、主な疾患ごとに、①主 な課題、②アセスメントすべき項目とその理由につ いてヒアリングを実施する。
3)に関しては、マネジメントの基本的視点と進 め方に関する解説、ならびに2)で検討した内容を 網羅したテキストを作成する。
4)に関しては、3)で作成したテキストを用い て、県関係部署及び県内職能団体の協力を得て、研 修の試行を行う。評価としては、①研修受講前後で の理解度の変化、②研修内容及び方法に対する評価、
③研修終了一定期間後の実践レベルの変化と評価を 検討している。
4. 進捗状況
1)アンケートデータ分析
昨年度末に行った介護支援専門員向けアンケート の分析を実施した。脳血管疾患患者に対してアセス メントすべき25項目の実施率をみた結果、「排尿回 数、尿の変化を確認していますか?」30.2%、「脳 の損傷部位や損傷の程度を確認していますか?」
48.2%、「再発予防に対する助言を受けていますか?」
59.3%などが低かった。
2)課題とアセスメントの構造整理及びアセスメン ト項目の具体的検討
ケアマネジメントを担う介護支援専門員には、多 職種のアセスメント情報を統合し、課題を総合的に 捉えた上で、本人の価値観や意向、緊急性などをも とに課題の優先順位を付け、課題解決策を関係者で
共有し、展開する役割が求められている。従って、
詳細なアセスメントを自身がすべて行う必要性はな いものの、「何をアセスメントすべきか」の全体像 をイメージしておく必要はある。そこで、本年度は、
「脳梗塞」「誤嚥性肺炎」にまず焦点を当てた上で、
課題とアセスメント領域の概念図の整理(ICFに準拠)
を行った。図1に、脳梗塞に対する概念図案を示す。
今後、①アセスメントすべき具体的項目、②同項目 をアセスメントすべき理由を整理し、テキストにま とめていく予定である。
また、来年度(最終年度)は、作成したテキスト を用いて埼玉県関係部署や県内職能団体と連携し、
介護支援専門員向け研修会を実施し、研修内容や方 法、効果に対する評価を行う予定である。
図1. 課題とアセスメント領域に関する概念図
(脳梗塞を有する生活障がい者の場合)
5. 到達度
疾患別課題とアセスメント項目の整理に関しては、
基本的な考え方などの共有・確立に多くの時間を割 いたため当初の研究計画よりやや遅れが生じている が、方法論がほぼ整理できたため、今後作業の遅れ を取り戻せると考えている。
6. 引用文献
1) 川越雅弘:ケアマネジメントの課題と改善策,
医療百論2015,先見創意の会(編),東京法規出 版,東京,25-35,2015.
2) 株式会社日本総合研究所:平成29年度厚生労働 省老人保健健康増進等事業「適切なケアマネジ メント手法の策定に向けた調査研究事業報告書」
2018.3.
7. 研究発表
1) 公表した又は公表予定の論文
月刊ケアマネジメント(環境新聞社)に投稿予 定。
2) 公表した又は公表予定の学会発表:未定 8.本研究と関係する獲得した外部資金:なし