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新規アザビシクロ

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Academic year: 2021

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(1)

新規アザビシクロ -N- オキシルの分子設計とアルコールの 不斉酸化に関する研究

長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 生命薬科学専攻 椎木啓文

[目的]

アルコール類のカルボニル化合物への酸化は有機合成における古典的かつ重要な 反応であり、数多くの合成に利用されている。近年、地球環境負荷の軽減を求める社 会的背景から、 TEMPO (1)(2,2,6,6,- テトラメチルピペリジン -1- オキシル ) を化学的、電 気化学的有機メディエーターとする酸化法が開発された (Fig. 1)

1)

。しかし 1 は活性部 位 (N-O ・ ) 近傍に 4 つのメチル基を有するため、立体障害の大きな基質に対する反応 性に課題を残していた。その後、新たに 1-Me-AZADO (2) が開発され嵩高いアルコー ルの酸化も可能となったが

2)

、剛直なアダマンタン骨格のため不斉酸化への応用は難 しかった。

私は 1、2 よりも優れた酸化能を有し、不斉酸化にも利用できるメディエーター開 発を指向し研究を進めることにした。先ず、合成容易なアザビシクロ (ABC) 骨格を有

する ABC-N- オキシル (3) を用いてその可能性を評価した

3)

。続いて、その 1 位又は 2

位を不斉に置換した ABC-1- キラル -N- オキシル (4)

4)

、 ABC-2- キラル -N- オキシル (5)

5)

の合成法を開発し、不斉酸化メディエーターとしての機能を精査した。

[結果及び考察]

1. 合成

N- オキシル 3 の ABC 骨格は式 1 に示す方法、即ち N- メトキシカルボニルピロリジ ン (A)を出発物質とし、窒素原子α位を電気化学的にジメトキシ化後、アリルシラン の環化付加により構築した。続いて脱保護後、 N- オキシル化することで 3 を得た。キ ラル -N- オキシル 45 はそれぞれ D- ピペコリン酸 (B) 、 L- ヒドロキシプロリン (C) を出発原料とし、式 2 及び 3 に従い合成した。

N

N

O

O

Cl

TEMPO (1) ABC-N-

オキシル (3) ABC-2-キラル- N-オキシル (5) N

O R1 N O

Me 1-Me-AZADO (2)

N O

Cl ABC-1-キラル-

N-オキシル (4) R2 O

Fig 1. 代表的N-オキシルの構造式

(1) N 3

CO2Me

N CO2Me

OMe MeO

( )n NCO2Me

Cl allylSiMe3

TiCl4 41% yield -4e

MeOH

77% yield (A)N-メトキシカルボニル

  ピロリジン

1)TMS-I, CH2Cl2 2)UHP, Na2WO4, MeOH

(2)

2. 酸化反応

ABC-N- オキシル (3) を酸化メディエーターとして用い、電気化学的酸化反応によ

り種々のアルコールを対応するカルボニル化合物に酸化した。比較のため TEMPO (1) を用いた収率を並べて Table 1 に示す。

TEMPO (1) では高収率で進行したベン

ジルアルコールの酸化を除くと立体障害が より大きな 2 級アルコールで収率低下が 観察され、置換基の大きさ増大に従い収率 が著しく低下した。一方、ABC-N-オキシ ル 3 では長鎖アルコールの酸化において 収率が 85% へ低下したが、 1 とは異なりその 他の立体障害の大きな基質に対しては影響 を受けることなく、ほぼ定量的に酸化生成 物が得られた。以上のように期待通り、立 体障害の大きなアルコールに対して 3

TEMPO (1) よりも有効な酸化メディエー

ターであることが明らかとなった。 3 には窒素原子α位に立体障害を誘発するメチル 基が存在しないために、1 に比べより大きな反応場が得られ、これが嵩高いアルコー ルの酸化に有効に作用したと考えられる。

3. 不斉酸化反応

次に種々の置換基 R

1

、R

2

を有する ABC-キラル-N-オキシル 4、5 を用いて DL-1-フ ェニルエタノール (6)の光学分割を行った(式 4)。代表的な結果を Table 2 に示す。

(2) NH CH2O2H

(B)D-ピペコリン酸

4 1)Moc-Cl, NaOH

2)HCl/MeOH 3)-2e, Et4NBF4, MeCN/MeOH

N O

OMe O MeO MeO

97% yield for three steps

BF3-Et2O, CH2Cl2 TMS

N O

OMe O MeO

72% yield cis : trans = 99.5 : 0.5

NCO2Me MeO2C

3)TMS-I 4)m-CPBA 1)NaOH, MeOH 2)condensation N

O OMe O MeO

HO 2)NaHMDS

83% yield for two steps, 99%e.e.

1)O3, CH2Cl2

1)p-Ts-Cl, Et3N, DMAP, CH2Cl2 2)NaBH4,

MeOH

81% yield for two steps

5 1)SOCl2, EtOH

2)Moc-Cl, Et3N, DMAP, CH2Cl2 3)-2e, Et4NBF4, MeCN/MeOH

quant. for three steps

TiCl4, CH2Cl2 TMS

45% yield

NCO2Me

3)m-CPBA 1)NaOH, MeOH

1)protection 2)TMS-I 2)-2e, NaOMe,

MeOH/MeCN 3)TiCl4, CH2Cl2

33% yield for three steps NH CO2H

HO

(C)L-ヒドロキシプロリン

N CO2Et HO

O MeO MeO

N CO2Et HO

O cis : trans = 65 : 35MeO

HO

Cl

(3)

Ph OH

OH Ph

O O

Yield (%) Carbonyl

compound Alcohol

Ph OH Ph O

99

99 85 99 Entry

2

4 3 1

1

72

23 41 99

3

OH O

Table 1.1と3の酸化メディエーターとしての比較

CH2Cl2/sat. aq. NaHCO3, rt -[e], NaBr (4.0 equiv)

1 or 3 (0.1 equiv) Carbonyl compound Alcohol

(3)

Ph OH

Ph O

Ph + OH

CH2Cl2/sat. aq. NaHCO3, rt -[e], NaBr (4.0 equiv)

4 or 5 (0.1 equiv)

6 (S)-6

(4) acetophenon (7)

いずれの ABC- キラル -N- オキシルを用いても酸化的速度論光学分割が進行するこ とが確認された。1 位と 2 位置換体の選択性を比較すると、2 位置換体の方が置換基 の種類が s 値に及ぼす影響は大きかった。2 位置換体の場合、末端置換基の大きさが 増すにつれて s 値が向上し、特に 1- ナフトイル基で修飾すると光学分割反応の実用化 目安とされる s 値=20 を達成できた。一方、 1 位置換体では R

1

基の影響は詳細不明で ある。

Fig. 2 に 2 位置換体を用いる酸化反応の想定する遷移状態を示す。側鎖カルボニル

基上の不対電子が窒素原子へ配位し、 2 位置換体はエステル結合の回転が抑制され末 端置換基 R

3

基が(R)-6 の場合には Me 基に、(S)-6 の場合には Ph 基に近接する。後者 の立体反発がより大きいため、 (R)-6 の酸化が優先される。従って、 R

3

基が Me 基か

ら Ph、Nap 基へ変化するとその効果はより大きくなり s 値が向上すると推測した。

N

Cl O

R3 OO O Me

H

b) (S)-6の酸化 S

N

Cl O

R3 OO O H

a) (R)-6の酸化 Me

R

以上の成果を触媒サイクル等、反応の詳細を含め、学術論文 3 編

3-5)

にまとめて発 表した。

1) Semmelhack, M. F.; Chou , C. S.; Cortes, D. A. J. Am. Chem. Soc. 1983, 105, 4492-4494.

2) Iwabuchi, Y.; et al. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8412-8413.

3) Demizu, Y.; Shiigi, H.; Oda, T.; Matsumura, Y.; Onomura, O. Tetrahedron Lett. 2008, 49, 48-52.

4) Demizu, Y.; Shiigi, H.; Mori, H.; Matsumoto, K.; Onomura, O. Tetrahedron Asymmetry 2008, 19, 2659-2665.

5) Shiigi, H.; Mori, H.; Tanaka, T.; Demizu, Y.; Onomura, O. Tetrahedron Lett. 2008, 49, 5247-5252.

[基礎となった学術論文]

前記論文 3)、4)、5)。

Fig. 2. 反応遷移状態

Entry

2

6 4 1

Table 2. キラル置換基R1、R2の光学分割に及ぼす影響 R1 / R2

50 50(59) 7

NH Ph

O

R2 R1

Yield, (e.e.) / %

7 (S)-6 s Value

43 56(64) 20 Ph

R2 O 38 57(47) 8

58 33(7) 1

R2 Me O

Ph:phenyl, Nap:naphthyl.

1-Nap O 5

59 49(41) 3

MeO R1 O

3 R1 N 64 36(53) 3

H Ph O

参照

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