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1804年 フ ラ ンス抵 当 法 の基 本 的 性 格(2)

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1804年 フ ラ ンス抵 当 法 の基 本 的 性 格(2)

香 山 高 広

目次 第1章 序論

第1節 課 題

第2節 コー ド ・シビル 第1款 抵 当法

第2款 夫婦 財 産関係 法 との 関係 第2章 国務 院

第1節 序 説(以 上 『商 学討 究』 第50巻 第2・3合 併 号) 第2節 抵 当観 の確 定

第1款 プ レア ム ヌウ報告

第1項 合 意 に よる抵 当権 一特定 の原 則 第2項 合 意 に よる抵 当権 一登記 第3項 妻 の法 定抵 当権

第4項 小 括

第2款 レアル報 告(以 上,本 号) 第3款 雨 月12日

第4款 雨 月19日 第3節 トレヤー ル草案 第3章 妻 の抵 当権 の機能 第4章 検討

結語

〔115〕

(2)

第2章 国務院

第2節 抵 当観 の確 定

コ ー ド ・シ ビ ル は,い か な る抵 当 観 を採 用 す るの で あ ろ うか?。 共 和 暦8年 草 案 が 提 案 した 包 括 ・非 公 示 の抵 当 制 度 か,あ る い は共 和 暦7年 法 が 採 用 した 特 定 ・公 示 の そ れ か 。 そ して そ れ は,い か な る理 由 に よ る も の な の か?。 国務 院 は プ リュ ヴ ィ オ ー ズ(雨 月)12日(2月2日)と 同19日(2月9日)の2度 の 会 議 で,そ れ を決 定 す る こ とに な る。 本 節 で は 国 務 院 が,基 本 的 な 抵 当 観 を 決 定 す る まで の 議 論 を 見 て い く こ と にす る。 順 序 と して,ま ず2月2日 に行 わ れ た プ レ ア ム ヌ ウ の 報 告(第1款)と レ ア ル の 報 告(第2款)106)を,次 に, そ の 報 告 直 後 の 議 事(第3款),そ して 最 後 に7日 後 の2月9日 の 議 事(第4款) を検 討 す る 。 そ の こ とに よ っ て本 節 は,包 括 的 ・非 公 示 的 な法 定 抵 当権 が1804 年 法 の性 格 を基 底 して い く経 緯 を 明 らか にす る で あ ろ う。 な お,そ の 原 因 につ い て は,第3章 ・第4章 で 検 討 す る。

第1款 プ レア ム ヌ ウ 報 告 ユ07)

革 命 期 の 議 論 は,近 世 法 の 否 定 を前 提 に行 わ れ た た め,そ こで は包 括 的 ・非 公 示 的 抵 当権 の 優 越 性 と特 定 的 ・公 示 的 抵 当権 の 問 題 点 が正 面 か ら主 張 され る こ と は な か っ た 。 ま た,共 和 暦8年 の抵 当草 案 が 近 世 法 の外 見 的 延 長 物(近 型 抵 当権)で あ っ た た め に,各 裁 判 所 の 意 見 書 は,特 定 ・公 示 の 抵 当 制 度 を支 持 す る陣 営 か らの 草 案 批 判 が 中心 で あ る。 「意 見 書observation」 とい う もの の 性 質 か ら,共 和 暦8年 委 員 会 と意 見 を同 じ くす る 裁 判 所 が,そ れ を 支 持 す る積 極 的 ・説 得 的 な 理 由 を提 示 して い な か っ た の は 当 然 の こ と とい っ て よい で あ ろ う。 した が っ て2月2日 の 冒 頭 で行 わ れ る プ レア ム ヌ ウ報 告 は,共 和 暦7年 抵 当 権(以 下 で は,合 意 に よ る抵 当権 の 公 示 ・特 定 と,法 定 抵 当 権 の 公 示 を基 礎 とす る抵 当 観 〔つ ま り共 和 暦7年 法 と破 殿 裁 判 所 案 の共 通 部 分 〕 を 「共 和 暦 7年 型 抵 当権 」 と表 現 す る 場 合 が あ る)に 対 す る,包 括 的 ・非 公 示 的抵 当 権 の

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1804年 フ ラ ン ス抵 当 法 の 基 本 的性 格(2) ヱヱ7

卓 越 性 を論 じた,最 初 で(結 果 的 に は)最 後 の もの で あ る(も っ と も実 際 に は 共 和 暦7年 型 抵 当 権 に 対 す る 批 判 に 重 点 が 置 か れ て い る)。 この 報 告 は 非 常 に 長 大 で あ る が,恐 ら く この こ と は,国 務 院 が 公 示 制 度 に 関す る 議 論 を留 保 して い た に も拘 わ らず,実 際 に は,そ の 採 用 の 方 向 に 大 き く傾 い て い た108)こ とに 対 す る危 機 感 に 由 来 す る もの で あ ろ う。 そ こ で,こ こで は草 案 起 草 者 と思 わ れ る プ レ ア ム ヌ ウ の 報 告 の 中 か ら,い くつ か の 論 点 を見 て い くこ と にす る109)。

本 款 の 検 討 は,基 本 的 に は,合 意 に よる 抵 当 権,妻 の 法 定 抵 当権 の 順 番 で行 う が,草 案 は,後 者 が 前 者 を基 底 して い る た め に,実 際 に は,法 定 抵 当 権 に 関 す

る理 論 が,合 意 に よ る抵 当権 の 検 討 の 随 所 で 現 れ る こ と に な る で あ ろ う。

と こ ろ で,彼 の 草 案 自体 は,最 終 的 に は全 面 的 に破 棄 さ れ る 運 命 に あ る 。 し か し,こ の こ とは 本 款 の検 討 が 全 く実 際 的 意 味 を持 た な い こ とを 意 味 す る わ け で は な い 。 消 極 的 に は,共 和 暦8年 の コー ド ・シ ビル 草 案 全 体 が,こ の抵 当観 (も し くは債 務 観110))を 前 提 と して構 成 さ れ て い る の で,草 案 全 体 の 性 格 を 把 握 す る た め に は,プ レア ム ヌ ウ の抵 当 観 の 理 解 が不 可 欠 で あ る との 理 由 が 挙 げ られ る。 しか し,よ り積 極 的 な理 由 は,共 和 暦8年 の 抵 当草 案 の 精 神 が,ト レヤ ー ル 草 案 との 融 合 に よっ て,一 部 は フ ラ ンス抵 当 法 の 中 に 生 き続 け る 点 に 求 め られ る。 とす れ ば,形 式 的 な破 棄 を 理 由 に,プ レ ア ム ヌ ウ の 抵 当 観 の検 討

を怠 る こ と は,フ ラ ンス 抵 当 法 自体 の 評価 を見 誤 る こ と に な る で あ ろ う。

共 和 暦7年 ブ リ ュ メ ール11日 法 ・破 殿 裁 判 所 案 ・共 和 暦8年 抵 当草 案 一 こ れ ら3 つ の 抵 当 法 の 全 体 像 と,そ の 評 価 に つ い て は,す で に 別 稿 で 検 討 した111)が,便 宜 の た め に,こ こ で 簡 単 に 説 明 し て お く。

共 和 暦7年 法 一本 法 の 最 大 の特 徴 は 「特 定 の 原 則 」 と 「公 示 の 原 則 」 を 採 用 し た 点 とい わ れ る 。3つ の 抵 当 類 型 の 全 て が 登 記 に よ っ て の み 順 位 を 取 得 し(法 定 抵 当 権 も例 外 で は な い),ま た,不 動 産 取 得 を 第 三 者 に 対 抗 す る た め に は 謄 記 が 要 求 さ れ る(も っ と も謄 記 を所 有 権 移 転 の 効 力 要 件 と捉 え る 余 地 あ り)。こ の 意 味 で 「公 示 の 原 則 」 は 貫 徹 さ れ て い る 。 しか し 「特 定 の 原 則 」 は,コ ー ド ・シ ビ ル が 後 に採 用 す る そ れ と は異 な っ て い る 。 と い う の も,抵 当 権 設 定 契 約 上 で は,抵 当 目 的 物 を

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特 定 しなけれ ば な らな いが,被 担 保債 権 の特定 は要 求 され ないか らで あ る。確 か に, 登 記 申請書 で被 担保 債権 の特 定 は要求 されるが,こ れ は 「登 記上 の特 定」 の要請 に 由来 す る もので あ って 厳密 には 「特 定の 原則 」 とは異 な る。 また,「 特 定の 原則 」 には広 範 な例外 が承 認 され る。例 え ば,妻 の法 定抵 当権 は登記 時 の(ア ロ ンデ ィス マ ン内の)夫 の全 ての現 在財 産 を 目的 とす る こ とが で き,ま た債権 額 は,登 記 申請 時 で さ え要 求 され ない。

破 殿裁 判所 案 一後 の トレヤ ー ル草 案 の基礎 とな る同案 は,基 本 的 には共和 暦 7年 法 の抵 当観 を継 受す るが,2つ の点 で基 本構造 に大 きな修 正が加 え られてい る。

まず所 有権 移転 の対抗 要 件(も しくは効 力 要件)と して の謄記 規 定が消 滅 してお り

公示 の原 則」 は一 歩後 退 して いる。 次 に合意 に よる抵 当権 に関 して設 定契 約時 で の債権 額 の特 定 とい う新 た な観念 が採 用 されて い る。 なお,法 定抵 当権 に関 しては 大 きな修 正 は ないが,同 案 は,夫 婦財 産契 約 で 目的物 と債権 額が 特定 され た場 合 に, そ の登 記 を承認 して い る。

共和暦8年 抵 当草 案 一3類 型の抵 当権 は,い ずれ も包括 性 ・秘密 性(非 公 示 性)・ 名義 成立 日主義 の 原則 を貫徹 してい る。つ ま り,合 意 に よる抵 当権 は,公 正 証 書 に よって設 定 され,債 務 者の現 在 ・将 来の全 て の財産 を 目的 とし,か つ 登記 は 要 求 され ない。 配 当は,公 正 証書 の 日付 に よって決 定 され るので あ る。 また,夫 婦 が 共通制 も し くは別 産制 を採用 した場合,妻 には法 定抵 当権が 認 め られ るが,登 記 の 必要性 はな い。 抵 当権 の順位 は,婚 姻 時 に夫婦 財 産契約 が存 在す れ ば当該 契約 時 に,そ れ が なけ れ ば挙式 時 に決 定 さ れ る(ロ ーマ 法上 の特 権付 抵 当権 の否定)。 も ちろ ん抵 当 目的物 は,夫 の全 ての 財産 であ る。 第三取 得者 は,裁 可状 に よる條 除制 度 に よっ て,抵 当権 の追 行か ら事 後的 に保護 され るに過 ぎな い(た だ し,こ れ は法 文 の形 式 的理解 に過 ぎず,そ の他 の方 法が なか った のか とい う点 は,こ こで は留 保 す る)。 なお,こ の條 除手 続 の プ ロセス に おい て,抵 当権者 は裁可 状押 印前 に故 障 申立 を行 わね ば権 利 を保 全で きず,法 定抵 当権 もそ の例外 で はな い(1771年6月 示 との重 要 な相 違点)。 従 って妻 は,法 定抵 当権 保 全 の ため に,被 譲 渡不 動 産 に対

して 自 ら故 障 申立 を行 わね ばな らな い。

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1804年 フ ラ ン ス抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2> 119 彼 の 報 告 書 の 全 体 的 内容 は,次 の発 言 に よ っ て要 約 され る。

「公 示 と特 定 の 新 制 度 は ,債 務者 の資 産 の認識 ・貸 手の安 全 ・借手 の信 用の 完全 性 の 何 れ を も与 え な い 。 … 公 共 の 秩 序 の 考 慮 に 基 づ く法 定 抵 当 権 は,単 な る 手 続 に [そ の 存 在 を]従 属 させ て は な ら な い 。 そ して,あ ら ゆ る所 有 の 権 利 を 維 持 す る 抵 当 制 度 が,好 ま れ ね ば な らな い 。 なぜ な ら,フ ラ ンス は,[こ の よ うな 制 度 の 下 で こ そ,]数 世 紀 前 か らの 高 度 な 繁 栄 の 段 階 に達 し た か らで あ る[傍 点 は 引 用 者 に よ る]。」112)

現 在 の フ ラ ンス の 基礎 を作 り上 げ た もの は 共 和 暦8年 草 案 が ベ ー ス と した 近 世 型 抵 当 制 度 で あ る とい う確 信 が,そ の基 礎 に横 た わ っ て い る。 そ の確 信 が あ ま りに も強 す ぎた た め に,共 和 暦8年 型 の抵 当 制 度 が,い か に して(自 称)堅 固 な金 融 法 体 系 を構 築 した か とい う点 は,報 告 の 中 で,ほ とん ど触 れ られ て い ない 。 報 告 書 の 内 容 は,先 の 要 約 の 他 の 部 分,す な わ ち,特 定 ・公 示 ・法 定 抵 当 権 の 問 題 に,ほ ぼ 限 定 され て い る 。 そ こ で 以 下 で は,こ れ ら の点 に つ い て の プ レ ァ ム ヌ ウ報 告 を検 討 して い こ う。

第1項 合 意 に よ る 抵 当 権 一特 定 の 原 則

共 和 暦7年 法 は 目 的物113)を,破 殿 裁 判 所 案 は 目 的 物 と債 権 額 の2つ114)を 抵 当 権 設 定 契 約 で 「特 定」 す る こ と を要 求 して い た 。 ま ず は 「特 定 の 原則 」 に 対 す る プ レア ム ヌ ウ の見 解 を検 討 す る。

特 定 の 原 則 一 コ ー ド ・シ ビ ル は,抵 当 権 設 定 契 約 上 で 目的 物 と被 担 保 債 権 の 特 定 を 要 求 して お り,「 特 定 の 原 則 」 は 厳 密 に は こ の 行 為 を 指 す 。 そ こ に お い て 「登 記 上 の 特 定 」 は,む しろ 「公 示 の 原 則 」 か ら の 要 請 で あ る に 過 ぎ な い 。 しか し,こ の よ う な 理 解 は,コ ー ド ・シ ビ ル 制 定 の 全 過 程 を通 し て 明 確 化 さ れ る た め,本 章 が 検 討 す る段 階 で は,そ の 概 念 は,コ ー ド ・シ ビ ル の そ れ と 同 一 で は な い 。 つ ま り,「特 定 の 原 則 」 と 「登 記 上 の 特 定 」 と が 未 分 化 な の で あ る 。 そ の 傾 向 は,次 款 で 検 討 す

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る レア ル に お い て 顕 著 で あ り,む し ろ 「特 定 の 原 則 」 を 否 定 す る プ レ ァ ム ヌ ウ の 理 解 の 方 が,コ ー ド ・シ ビ ル の そ れ に 近 い 。

(イ)プ レ ァ ム ヌ ウ は,抵 当 目的 物 を特 定 す る と い う理 念 を,明 確 に否 定 す る。 まず は,そ の 理 由 を見 て い こ う。

(A)「 自 ら義 務 を負 っ た 者 の信 用 と い う もの は,自 らの不 動 産 と現 在 財 産 だ け で な く,自 らの 良 き行 い ・事 業 ・相 続 の 自然 的 順 序 が 期 待 させ 得 る も の で 構 成 さ れ る」115)とい う考 え が,常 に プ レ ア ム ヌ ウ の 抵 当 観 の 中心 に据 え ら れ て い る。 彼 に と っ て,目 的 物 の 「特 定 」 は,こ の 基 本 原 理 に反 す る もの と考 え られ た の で あ る。 つ ま り,債 務 者 が 全 て の現 在 ・将 来 財 産 で 責 任 を負 う こ と は 理 の 当然 で あ り,特 定 的 に 限 定 され た 財 産 で しか 責 任 を負 わ な い と主 張 す る

こ と は 「非 道 徳 的 で あ り,公 の 秩 序 に 反 す る」116)と言 う こ と に な る。

実 際 的 に も 目的 物 の 「特 定 」に よ る信 用 の圧 迫 が 懸 念 され て い る。な ぜ な ら, この 原 則 は 必 然 的 に将 来 財 産 へ の抵 当 権 設 定 を 禁 じる もの だ か らで あ る。

「僅 か ば か りの 不 動 産 し か 有 さ な い 者,… あ る い は,[不 動 産 を]少 し も所 持 し な い 者 は,自 らの 現 在 財 産 と と もに 将 来 財 産 に抵 当権 を設 定 し得 る 場 合 と 同 様 に, 容 易 に 金 主 を 見 つ け る の で あ ろ う か 。」117)

将 来 財 産 の抵 当権 設 定 は 破 殿 裁 判 所 が 最 も嫌 悪 す る こ とで あ っ た。なぜ な ら, 相 続 財 産 を期 待 し て抵 当権 を設 定 す る こ と は,自 らの 家 族 の 死 亡 を期 待 す る に 等 し い行 為 だ か らで あ る118)。 しか し,プ レ ア ム ヌ ウ は,こ の 不 都 合 は 「相 続 財 産 に基 づ く取 引 の禁 止 」の 規 定(第1130条 第2項)に よっ て 回避 し得 る の で, 将 来 財 産 抵 当 目的 物 化 一 般 を禁 止 す る 理 由 とは な ら ない と反 論 す る119)。

また,プ レ ア ム ヌ ウ に よれ ば,そ もそ も,債 権 者 と い う もの は債 務 に見 合 っ た価 値 の不 動 産 に抵 当権 を設 定 す る こ とで 満 足 す る こ とは な い 。 した が って, 債 権 者 は様 々 な 事 情 を考 慮 し て,「 少 な く と も[債 務 の]2倍 の価 値 の不 動 産 」 を 担 保 と して 要 求 す る の が 普 通 で あ り,そ う で あ れ ば,目 的 物 の 「特 定」 を強

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1804年 フ ラ ンス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) 121

制 して も,債 権 者 は 全 て の現 在 財 産 上 に登 記 す る方 法 に よ って 包 括 抵 当 権 と類 似 の効 果 を得 よ う とす る で あ ろ う。そ の 結 果,「信 用 の 節 約 」とい う 目的 物 の 「 定 」の 利 点 は機 能 しな い と主 張 す る120)。確 か に,こ の プ レ ア ム ヌ ウ の 主 張 は, 目 的物 の 「特 定 」が19世 紀 に骨 抜 き に さ れ る 現 実121)を,見 事 に予 見 して い る。

な お,こ こ で プ レア ム ヌ ウ は,「 特 定 の 原 則 」 の 機 能 を 「信 用 の節 約 」 に 求 め て い る 点 が 注 目に値 す る122)。

(B)以 上 の よ う な プ レ ア ム ヌ ウ の 見 解 に対 して は,現 代 の 我 々 は,「 債 務Schuld」 と 「責 任 且aftung」 の概 念 上 の 混 同 が あ る,と の 批 判 が 可 能 で あ る123)124)。実 際,立 法 院 で の 理 由 開 示(3月15日)の 際 に,ト レ ヤ ー ル は 包 括 抵 当権 の 観 念 が 債 務obligationと 抵 当権 の 概 念 的混 同 に基 礎 を置 い て い る と 指 摘 して い る125)。 この よ う な見 解 に 対 して プ レア ム ヌ ウ は 次 の よ う に答 えて

い る。

「抵 当 権 設 定 能 力 を 現 在 財 産 に 減 少 さ せ る と い う 理 念 を 有 す る 者 は ,債 務 obligationの 性 質 を 十 分 に 理 解 し て い な い 。 … 財 産 が,債 務 者 に よ っ て 取 得 さ れ た 瞬 間 に,そ の 時 に存 在 す る[無 担 保]債 権 者 達 の 共 同 の 担 保 で あ らね ば な らな い と 主 張 す る こ と は 誤 り な の で あ る 。 …[そ して,]こ の 誤 り を一 掃 す る た め に は,次

の 点 を 思 い 起 こ す こ と で足 りる 。[す な わ ち,]債 務 の 性 質 自体 に よ っ て,こ の 将 来 財 産 が 条 件 付 きで 将 来 所 有 権[=抵 当 権 一 引 用 者 註]に 充 当 さ れ,そ して,そ れ が 充 当 さ れ た 以 上,同 じ衡 平 の 準 則 が,債 権 者 間 の優 先 権 の た め に,現 在 財 産 と 同様

に 将 来 財 産 上 に 存 在 し な け れ ば な ら な い 。」126)

彼 の 反 論 が 的 を得 た もの で あ る か否 か は別 と して,こ の よ うな 「債 務 」 概 念 が 包 括 抵 当権 を正 当化 す る基 礎 と して 用 い られ た こ と は無 視 す る こ とは で き な い で あ ろ う。 特 に,彼 が 『契 約 ・債 務 』(第3編 第3章)の 起 草 担 当 者 で あ っ た 以 上,な お さ らで あ る 。

(ロ)彼 の 共 和 暦7年 型 抵 当権 に 対 す る批 判 は,当 然 に被 担 保 債 権 の特 定 に も向 け られ る 。 で は,そ の 理 由 は何 か 。

(8)

(A)ま ず プ レ ア ム ヌ ウ は,抵 当 制 度 を利 用 す る 階層 を想 起 させ る。 彼 に よれ ば,当 時 の フ ラ ンス に お い て,抵 当 制 度 は 商取 引 ・産 業 取 引等 の 信 用 の授 受 に用 い られ る こ と は な く127),主 と し て本 質 的 に債 権 額 を特 定 す る こ とが 不 可 能 な債 権 を担 保 す る た め に用 い られ る。 こ こ か ら,彼 が 抵 当制 度 の 中核 に 法 定 抵 当権 を据 え て い る こ とが 窺 え る 。 す な わ ち,抵 当 権 は,「 数 人 の 者 だ け で な く,市 民 の全 て の 階 級 」128)が用 い る 制 度 な の で あ る。

共 和 暦7年 法 ・破 殿 裁 判 所 案 の 何 れ もが,法 定 抵 当 権 の 債 権 額 の特 定 を義 務 づ け て い な か っ た の で129),こ こで の議 論 の対 象 は専 ら合 意 に よ る抵 当 権 に 限 定 され る。 そ して,プ レア ム ヌ ウ は,債 権 額 の 特 定 を 要 求 し な い抵 当 類 型 が 存 在 す る 以 上,合 意 に よ る抵 当権 の み を特 定 して も意 味 は な い とい うの で あ る。

曰 く。

「非 特 定 的 な 抵 当 権 の 量 が 膨 大 で ,… 重 要 な もので あ る とい う ことを否 定す る こ と は で き な い 。 … 最 終 的 で確 定 的 な結 果 は,不 動 産 の 大 部 分 が 恒 常 的 に 非 特 定 的 な 抵 当 権 の 目的 と な っ て い る とい う こ とで あ る。 そ して,こ の 理 由 に よ っ て,大 多 数 の 所 有 者 の 資 産 の状 況 は 伺 い 知 る こ とは で き な い 。こ の よ う な 新 計 画 へ の 障 害 物 は, 克 服 しが た い も の で あ る 。」130)

確 か に,プ レ ア ム ヌ ウの 主 張 は,論 理 的 に は 正 当 な もの で あ ろ う131)。 とす れ ば,共 和 暦7年 型 抵 当 権 が,制 度 自体 の 基 礎 を揺 るが しか ね ない 例 外 を,な ぜ 承 認 した の か と い う基 本 的 な疑 問 が 沸 い て くる 。 この 問 い に 対 す る一 定 の 解 答 は,破 殿 裁 判 所 の 意 見 書 に よ っ て 示 さ れ て い た132)が,あ ま り説 得 的 な も の で は な か っ た(こ の 点 につ い て,さ ら に本 款 第3項(ロ)(C)参 照)。

(B)こ の よ う に,い く ら合 意 に よ る抵 当 権 の 債 権 額 を特 定 した と こ ろで, 法 定 抵 当 権 の そ れ が 特 定 され な け れ ば,「 特 定 の 原 則 」 は 十 分 に機 能 し な い 。 そ こで,立 法 論 と して法 定 抵 当権 の債 権 額 を特 定 す る こ と は で きな い の か,と い う点 が 問題 とな る。 こ の 問 い に対 して プ レ ア ム ヌ ウ は,そ れ は不 可 能 で あ る

と して 拒 絶 す る 。

(9)

1804年 フ ラ ンス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) 123

「婚 姻 の 全 期 間 中 ,夫 の財産 上 の抵 当権 に よって保 証 され る,妻 の[様 々な]権 利 を,ど の よ う に し て 評 価[=特 定 一引 用 者 註]す る の で あ ろ うか 。 悪 し き管 理 の 結 果,時 効 取 得 す る ま ま に し た権 利,相 続 等 に よ っ て 妻 が 取 得 す る 財 産,夫 が 異 議 申立 を行 わ ず 保 存 も しな か っ た 財 産 を,ど の よ う に 予 測 す る の で あ ろ う か 。つ ま り, 夫 が 責 任 を 負 う 全 て の 種 類 の 過 ちfauteを,ど の よ う に 予 測 す る の で あ ろ う か 。」

133)

で は,法 定 抵 当権 者 と債 務 者,言 い 換 え れ ば 妻 と夫 の 問 で,債 権 額 を特 定 す る契 約 を締 結 す る こ とは 可 能 な の で あ ろ うか?(破 殿 裁 判 所 案 第21条 ・第24条 は,こ の 可 能 性 を認 め て い る)。 この 点 に つ い て も彼 は 明 確 に否 定 す る。 な ぜ な ら,法 定 抵 当 権 は,「 法 律 と公 共 の秩 序 の 考 慮 に よ っ て創 設 さ れ るの で,契 約 に依 拠 して は な らな い か らで あ る」134)。

以 上 の 検 討 に よ っ て プ レア ム ヌ ウ は,「 一 方 で 不 動 産 の 大 部 分 は 非 特 定 的 抵 当権 の 目 的 と され,他 方 で こ の抵 当権 の[被 担 保 債 権 の]全 て の評 価[=特 定]

は不 可 能,か つ 不 公 正 な の で あ る」135)とい う結 論 に 達 す る。

第2項 合 意 に よ る抵 当権 一 登 記

次 に,公 示 制 度 に対 す る プ レ ア ム ヌ ウ の 考 え を検 討 す るが,彼 の 報 告 に は所 有 権 謄 記 に 関 す る 叙 述 は含 まれ て い な い(こ の 点 で 第2款 で検 討 す る レア ル 報 告 と議 論 が 噛 み 合 っ て い な い)。 こ の こ とは,本 報 告 の 重 点 を,共 和 暦7年 よ りも,破 殿 裁 判 所 案 批 判 に置 こ う と して い た136)こ と に,そ の 原 因 を 求 め る こ と も可 能 で あ る か も しれ な い 。 実 際 に,彼 は破 段 裁 判 所 案 を共 和 暦7年 法 支 持 者 の 提 出 した 修 正 案 と捉 え て お り137),従 っ て,謄 記 は撤 回 され た もの と理 解 した と も考 え られ る。 しか し,贈 与 で の 議 論 の 敗 北 に よ っ て,彼 は,謄 記 に 関 す る 議 論 は既 に 終 了 した と思 う よ う に な っ て い た と考 え る こ と もで き る で あ ろ う。い ず れ にせ よ,こ こで の 彼 の 批 判 は 「抵 当権 の 登 記 」 に限 定 さ れ て い る。

(イ)ま ず,彼 は,登 記 制 度 が,「 債 権 額 の 特 定 」 と の 関 係 で 理 論 的 基 礎 を欠 い て い る と の 主 張 を行 う。 す なわ ち,登 記 は債 務 者 の 義 務 の範 囲 を 第 三 者

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に 認 識 させ る こ と を 目的 とす るが,そ もそ も多 くの抵 当 権 は債 権 額 を特 定 し得 な い た め,登 記 制 度 を導 入 して も無 意 味 で あ る とす る138)。

次 に,登 記 制 度 は,個 人 の 自 由権 の1つ で あ る 「家 族 の 事 業 の 秘 密 を保 持 す る権 利 」 を侵 す もの で あ る,と 主 張 す る139)。 しか し,実 際 に は 秘 密 を 濫 用 し て詐 欺 的 な行 為 を行 う者 が 存 在 す る こ とを 否 定 で きず,登 記 制 度 は ま さ に こ の た め の 制 度 な の で あ るが,こ の 点 に 関 して,プ レア ム ヌ ウ は,ど の よ う に反 論 す る の で あ ろ う か?。

「そ の よ う な 秘 密 を濫 用 す る借 手 が 存 在 す る こ と を理 由 に ,… 一 般 的 な[自 由の]

権 利 を犠 牲 に し な け れ ば な ら な い の か?。 詐 欺 師 達 が 一 般 的 で あ り,誠 実 な 人 々 が 例 外 を な す と言 う よ う な,市 民 達 を侮 辱 す る者 に,耳 を 傾 け ね ば な ら な い の で あ ろ う か?。 そ の よ う な 理 論 に 基 づ い て 法 律 を 作 成 し な け れ ば な ら な い の で あ ろ う か

?。」140)

同 様 の見 解 は,ボ ル タ リ ス に よ る 『民 法 典 序 論 』の 中 で も言 及 され て い た141)。

(ロ)さ ら に,プ レア ム ヌ ウ は登 記 制 度 が 「所 有 権 の原 則 」 と両 立 し得 な い と説 く。 こ こで 彼 の述 べ る所 有 権 と は 「抵 当権 を所 有 す る権 利 」 の意 味 で あ る が,プ レ ア ム ヌ ウ は,仮 に 登 記 制 度 が 債 権 者 の安 全 の た め に 必 要 な制 度 で あ っ た と して も,そ れ が 「所 有 権 の 原 則 と両 立 す る こ とが で きな い の で あ れ ば,そ の よ う な手 段 を用 い て は な ら な い」142)と力 説 す る の で あ る 。

「一 方 で ,抵 当権 が法律 あるい は合 意の結 果 として生 じる所 有権 で ある こ とを承 認 す る に も拘 わ らず,他 方 で,ど の よ う に して,こ の 権 利 を手 続 に従 属 させ る こ と が で きる の で あ ろ う か 。」143)

彼 は,特 に法 定 抵 当権 を 登 記 手 続 に従 属 させ る 立 場 を強 く非 難 す る。 共和 暦 7年 法 等 の よ う に妻 に登 記 を 課 す こ とは,法 律 自体 に 理 論 的 な 矛 盾 が あ る とい うわ け で あ る。 す な わ ち,「 一 方 で,抵 当権 が 特 定 の 債 権 に 内在 的 で あ る こ と

(11)

1804年 フ ラ ン ス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) 125 を公 共 の 利 益 が 要 求 す る の に,他 方 で,法 律 は,無 意 識 あ るい は意 識 的 に 省 略 さ れ得 る登 記 に[法 定 抵 当権 を]従 属 させ る 。 これ は一 方 の 手 で 作 る もの を, 片 方 の 手 で 壊 す こ と に他 な ら な い」144)。こ の よ う に,妻 の 登 記 義 務 は,こ れ ま で に作 成 され た コー ド ・シ ビ ル の 他 の 部 分,言 い 換 え る な ら ば ナ ポ レオ ンの 言 う 「市 民 的 正 義 の 原 則 」 と も矛 盾 す る もの と捉 えた の で あ ろ う。

こ の よ う に,プ レア ム ヌ ウ に は,登 記 手 続 が コー ド ・シ ビル の 基 本 原 理 の1 つ で あ る 「所 有 権 の絶 対 性 」 と矛 盾 す る もの と感 じ られ た 。 とす れ ば,彼 に と っ て,登 記 と い う もの は,『 民 法 典 序 論 』 で ボ ル タ リ ス が 語 っ た よ う に145), 税 制 上 の 手段 で しか な い と い う こ と に な る146)。

(ハ)と ころ で,公 示 の支 持 者 達 の 一 部 は,ナ ン テ ィ ス マ ンnantissement147) こそ が ベ ル ギ ー 地 方 の 繁 栄 を もた ら した と主 張 して い た148)(本 節 第2款(イ) 参 照)。 プ レ ア ム ヌ ウは,こ の見 解 に対 して も反 論 を な して い る。彼 に よれ ば, ベ ル ギ ー の 繁 栄 は,「 そ の 土 地 の 肥 沃 さ,運 河 と河 川 が 与 え る 運 送 の 容 易 性, 対 内取 引 と同 様 に対 外 取 引 の た め の 幸 運 な 所 在 地 に 負 っ」149)たも の で あ り, ナ ン テ ィ ス マ ンが 原 因 とい う わ け で は ない 。む しろ,包 括 抵 当 権 の 理 論 こそ が, フ ラ ン ス の 繁 栄 を導 い た の で あ る150)。

第3項 妻 の 法 定 抵 当権

こ の よ うに,プ レア ム ヌ ウ に 「特 定 の 原 則 」 と登 記 制 度 の採 用 を否 定 させ る 原 因 の1つ(し か し,そ れ は大 きな1つ で あ る)が,法 定 抵 当権 の 存 在 に あ っ た こ と は 明 白 で あ ろ う。 で は,共 和 暦7年 型 抵 当 権 にお け る 法 定 抵 当権 の 問 題 ,点はイ可か?Q

(イ)プ レ ア ム ヌ ウ に と っ て合 意 に よ る抵 当権 で さ え 目的物 が 包 括 的 で あ る の で,法 定 抵 当 権 の 目的 物 を特 定 す る とい う見 解(実 際,こ の よ う な見 解 自 体 が 存 在 しな か っ た の で あ るが …)に 個 別 的 批 判 を加 え る必 要 性 は感 じ られ な か った 。 した が っ て,目 的 物 の 特 定 に 関 し て特 別 な検 討 は な され て い な い。 被 担 保 債 権 の特 定 に関 す る 批 判 は,既 に述 べ た の で 繰 り返 さ ない(本 款 第1項(ロ)

(B)参 照)。

(12)

(ロ)次 に妻 の 法 定 抵 当権 の 登 記 の是 非 につ い て 。 理 論 的 問題 点 につ い て は既 に 述 べ た(本 款 第2項(ロ)参 照)の で,こ こで は実 際 的 問 題 を見 て い く。

(A)コ ー ド ・シ ビ ル は,夫 婦 財 産 関係 法 に お い て 共 通 制 を法 定 制 と した が,法 定 抵 当権 の登 記 は,こ の 原 則 と矛 盾 す る と い う。 つ ま り,共 通 制 下 で の 妻 は単 独 で 登 記 費用 を捻 出す る 能 力 を有 さな い の で,妻 は登 記 を行 い た く と も, そ れ が で き な い状 態 に置 か れ る とい う の で あ る(も っ と も立 法 技 術 と して は登 記 費 用 を課 さ な い とい う方 法 も考 え られ る が,プ レア ム ヌ ウの 念 頭 に は,そ よ うな 考 え は な い 。 とい う の も,前 述 の よ う に彼 に とっ て 登 記 は収 税 目的 で し か な い の で,無 償 の 登 記 な ど とい う もの は 考 え られ な い か らで あ る)151)。

(B)問 題 は,妻 が 登 記 を行 い 得 る場 合 に も生 じる 。 共 和 暦7年 法(第4 条)・ 破 殿 裁 判 所 案(第20条)は,い ず れ も妻 の 法 定 抵 当 権 を包 括 抵 当 権 と構 成 した が,そ の 包 括 性 を登 記 時 に存 在 し て い る不 動 産 に 限 定 し て い た152)。 し た が っ て 登 記 後 に 夫 が 不 動 産 を取 得 した場 合 に,そ の不 動 産 を抵 当権 の 目的 物

とす る た め に は,更 な る登 記 が 要 求 され る。 ま さ に プ レア ム ヌ ウ は,こ の 点 を 非 難 す る 。 つ ま り,仮 に妻 が 登 記 を行 い 得 る とす れ ば,そ れ は婚 姻 時 で あ ろ う が,一 般 的 に夫 は婚 姻 時 に不 動 産 を有 さず,後 に相 続 に よっ て 両 親 か ら不 動 産 を承 継 す る も の で あ る。 こ の不 動 産 は,妻 の抵 当 権 の 目的 とす べ きで あ るが, 共 和 暦7年 型 抵 当権 に よれ ば,こ の 不 動 産 は,相 続 開始 後 に 妻 が 再 度 登 記 を行

う こ とに よ っ て しか,抵 当 目的物 と な し得 な い 。妻 の 登 記 が 少 しで も遅 れ れ ば, こ の不 動 産 は,夫 の他 の 債 権 者 の 引 当 とな っ て し ま う可 能性 が あ り,こ れ は不 公 正 で あ る と153)。

(C)要 す る に プ レア ム ヌ ウ は法 定 抵 当 権 の 効 果 を登 記 に従 属 させ る こ と を激 し く嫌 う わ け で あ るが,し か し実 際 問題 と し て,非 公 示 の 法 定 抵 当権 の 存 在 が 取 引 の 安 全 を 害 す る恐 れ は な い の で あ ろ うか?。 確 か に,彼 は合 意 に よ る 抵 当権 の 公 示 さ え 要 求 し な い の で,法 定 抵 当権 にそ れ を 要 求 しな い の は 当 然 で あ る。 また,土 地 を 重 要 な信 用 手段 と捉 え な い の で あ れ ば,仮 に非 公 示 性 が 取 引 安 全 を害 した と して も,そ れ は 些 細 な こ とな の で あ ろ う。 しか し,彼 は,こ の 点 に 関 し て は特 別 な 考 察 を行 っ て い る。

(13)

1804年 フ ラ ン ス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) 127

「登 記 を要 求 す る 理 由 は,後 順 位 債 権 者 達 の 利 益 の た め で あ る。[し か し,]法 抵 当 権 に 関 して は,そ れ は無 用 な 手 続 で あ る。[な ぜ な ら,]妻 の 状 態 は,挙 式 と 同 居 に よ っ て 完 全 に 周 知 な も の だ か ら で あ る 。」154)

彼 は合 意 に よ る抵 当権 の 公 示 は不 要 とい う の で あ るが,法 定抵 当 権 につ い て は,そ うは 言 っ て い な い 。 基 本 的 に 公 示 は必 要 で あ るが,法 定抵 当 権 は,婚 姻 事 実 を 通 して 公 示 され て い る とい うわ けで あ る 。 と こ ろで,現 代 的 観 点 か らの 抵 当権 の 公 示 の 意 義 は,本 来 観 念 的 な 権 利 を可 視 的 な もの にす る こ と に よ っ て 第 三 取 得 者 ・後 順 位 抵 当 権 者 の 取 引 安 全 を 保 護 し よ う とす る 点 に 求 め ら れ る155)。 そ し て こ の 目 的 の た め に,公 示 は登 記 とい う形 式 を 採 る よ う に な り, そ の 内容 も法 定 さ れ る よ う に な る。 つ ま り,目 的物 ・債 権 額 等 の抵 当 権 の 内容 が 公 示 され る必 要 が あ る。 こ の よ うに,抵 当権 の 公 示 は 「登 記 上 の 特 定 」 と融 合 す る こ と に よ っ て,初 め て 第 三 者 保 護 を貫 徹 す る こ とに な る(「特 定 の 原 則 」 との 融 合 で は ない156))。した が っ て,こ こ で プ レ ア ム ヌ ウ が 問 題 とす る公 示 は, 一 般 的 な 「公 示 の原 則 」 と は異 な る とい う こ とは,明 らか で あ る。 で は,プ ア ム ヌ ウ が 「公 示 の 原 則 」 の 意 義 を 理 解 し て い な か っ た と評 価 すべ きで あ ろ う か?。 法 定 抵 当 権 の公 示 を婚 姻 の事 実 的 公 知 性 と同 一 視 す る理 解 は,抵 当法 成 立 の 過 程 で,後 に も多 くの 者 に よっ て 主 張 さ れ る 。 とす れ ば,法 定 抵 当権 の 公 示 は,合 意 に よ る抵 当権 の 公 示 とは異 な る 目的 で 要 求 され た た め に,そ の形 態 が 必 ず し も登 記 で あ る 必 要 は な い と理 解 さ れ て い た の で は な い か との 疑 問 が 生

じて くる 。

実 を言 え ば,こ の よ う な推 測 を行 う理 由 は,他 に もあ る。 共 和 暦7年 法 ・破 殿 裁 判 所 案 は,法 定 抵 当 権 の存 在 自体 の登 記 上 で の 公 示 を要 求 す る が,目 的物 ・ 債 権 額 の特 定 を基 本 的 に免 除 す る の で,理 論 的 に抵 当 権 の公 示 と し て は,は な は だ不 完 全 で あ る157)(プ レア ム ヌ ウが,こ の こ とを根 拠 と して 「特 定 の 原 則 」 と登 記 制 度 の 導 入 を 無 意 味 と結 論 付 け た こ とは,既 に確 認 した)。 しか し,共 和 暦7年 型 抵 当法 の支 持 者 達 は,こ の 程 度 の公 示 で 十 分 と考 え た か らこ そ,こ れ 以 上 の厳 格 性 を要 求 し なか っ た の で あ ろ う。 実 際,登 記 上 で 認 識 で きる の は

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そ の 存 在 程 度 で,こ れ は 婚 姻 事 実 の周 知 性 か ら得 られ る情 報 と大 差 は ない 。 と

す れ ば,い か な る抵 当観 を採 用 す る に して も,法 定 抵 当 権 は そ の存 在 の み が 何 らか の 方 法 で 公 示 さ れ て い れ ば 十 分 で あ る と考 え られ て い た の で は な か ろ う か?。

また,か つ て破 殿 裁 判 所 は,そ の 意 見 書 の 中 で,被 担 保 債 権 額 の 非 特 定 性 は 近 世 型 抵 当法 で も存 在 した の で,破 殿 裁 判 所 案 が 妻 の 法 定 抵 当権 の 被 担 保 債 権 を特 定 しな い こ とは本 案 に反 対 す る理 由 とは な り得 な い と主 張 して い た158)。 こ の こ とは破 殿 裁 判 所 案 が,近 世 型 抵 当権 と同 一 の難 点 を含 む こ と を認 め て い る こ と に他 な ら な い。 とい う よ り もむ しろ,近 世 法 上 の 非 特 定性 を,さ ほ ど難 点 と考 えて い な か っ た為 に,破 殿 裁 判 所 は積 極 的 な解 決 を行 わ な か っ た と考 え る こ と もで きる。 とす れ ば,我 々 に は 難 問 と思 わ れ る こ とが,そ う思 わ れ て い な か っ た 理 由 は何 で あ る か とい う点 が 問 題 と な る。 い ず れ にせ よ,プ レ ァ ム ヌ ウ の い う公 示,共 和 暦7年 型 抵 当 権 の そ れ,そ して,そ の 折 衷 形 態 で あ る1804年 法 で の 法 定 抵 当権 の公 示 の 意 義 を探 る に は,近 世 法 で の 法 定 抵 当 権 の 意 義 を探 る 必 要 が あ りそ うで あ る。 この 点 につ い て は 章 を改 め て 再 び検 討 す る こ とに な る で あ ろ う。

(ハ)破 殿 裁 判 所 案 は,法 定 抵 当権 登 記 の 裁 判 所 に対 す る減 殺 手 続(こ 制 度 は 共 和 暦7年 法 に は 存 在 しな い)を 規 定 して お り,コ ー ド ・シ ビ ル も,こ の制 度 を採 用 す る こ とに な る159)。プ レア ム ヌ ウ は,こ れ に対 して も批 判 を繰 り 広 げ る160)。仮 に法 定 抵 当権 の登 記 が 承 認 され た と して も,こ の制 度 の 導 入 だ け は 断 固 と して 反 対 す る の で あ る。 何 故 か。 法 定 抵 当権 の 登 記 は妻 単 独 で 行 い得 る もの で あ る が,実 際 に は,共 通 制 の 下 で は 登 記 費 用 の 捻 出 の た め に夫 の 同 意 が 必 要 と さ れ る。 減 殺 手 続 は,こ の 夫 の 同 意 の 撤 回 を 認 め る こ とに 他 な らず, こ れ を承 認 す る と必 ず 「家 族 の平 和lapaixdesfamilles」161)が 乱 さ れ て し ま う か らで あ る。

と こ ろで,減 殺 制 度 の抵 当 法 にお け る位 置付 け は,本 稿 との 関係 で,非 常 に 大 きな 問 題 を含 ん で い る 。 夫 は 新 た な与 信 者 を探 す 前 提 と し て減 殺 請 求 を行 う の で あ るが,で は,減 殺 を 否 定 す る とい う こ と は,妻 の保 護 の観 点 か ら夫 が 新

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1804年 フ ラ ン ス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) 129 た な不 動 産 信 用 を得 られ な く と も良 い と考 え て い た為 で あ ろ うか?。 こ こで 結 論 は述 べ な い が,こ の よ う な疑 問 を提 示 した の は,減 殺 手 続 の 問 題 点 は,法 定 抵 当権 の 制 限 が 裁 判 所 の 決 定 で行 わ れ,そ こに 妻 の 関与 が何 ら要 求 さ れ な い 点 に あ っ た と考 え る こ とが で きる か らで あ る。 この 問 題 に つ い て は,後 に触 れ る こ と に な る で あ ろ う。

(二)ま た,彼 は,共 和 暦7年 法 下 で実 際 に行 わ れ た不 都 合 を指 摘 す る 。 こ れ は重 要 な指 摘 で あ る。

社 会 の 半 数 を な す 階 級[=妻 の こ と 一引 用 者 註]は ,そ れ ま で 保 護 さ れ て い た に も拘 わ らず,[共 和 暦7年 以 降,]決 定 的 に大 部 分 の 財 産 を 奪 わ れ て し ま っ た 。 … 妻 は,自 ら持 参 した 資 産 を奪 わ れ る。[妻 は,]夫 の た め に[彼 の 債 権 者 に 対 して,]

自 ら[抵 当]債 務 を 負 う結 果,[そ の 資 産 が,][夫 の]債 権 者 に 引 き渡 さ れ た か らで あ る。[し か し,実 際 に は,]夫 と[そ の 債 権 者 は]共 謀 し て い る 可 能 性 が あ る。」162)

こ れ ま で の 本 稿 の叙 述 か らは,プ レ ア ム ヌ ウの 言 説 の 意 味 は理 解 しが た い も の で あ ろ うが,こ れ は 言 い 換 え る と次 の よ うな こ とで あ る 。 夫 が 債 務 負 担 をす る時,妻 を 同 時 に債 務 者 とす る慣 行 が 既 に革 命 前 に発 展 す るの で あ る(第2135 条 第3項 参 照)が,こ の 目 的 は,決 して妻 の不 動 産 を夫 の 債 務 の 担 保 に 充 当 す る た め で は な く,妻 の抵 当 権 の優 先 的 順 位 を 夫 の 債 権 者 が 利 用 す る為 に他 な ら な い(妻 の抵 当 権 へ の抵 当 権 設 定)。 と こ ろ が,法 定 抵 当権 の 事 実 上 の 制 限(登 記 に よ る存 在 自体 の 制 限 と,名 義 成 立 日主 義 否 定 に よ る優 先 性 の 剥 奪)は,旧 来 か らの 夫婦 の 債 務 負 担 の 慣 行 か ら生 じる結 果 を,変 質 させ て し ま っ た 。 つ ま

り,今 後 は,妻 の抵 当権 で は な く,妻 の 不 動 産 そ の もの が,抵 当権 の 目的 と さ れ る よ うに な っ た の で あ る(な ぜ な ら,法 定抵 当 権 が 登 記 され な け れ ば,そ 存 在 が 否 定 され る の で,債 権 者 は,妻 の 不 動 産 を差 し押 さえ る しか な い か ら)。

そ して,こ の 結 果 は,債 権 者 が妻 の 不 動 産 を夫 の 債 権 の担 保 目的 物 とす る と い う よ う に,妻 の 債 務 負 担 の 目 的 自体 を変 化 させ た 。 ま た,夫 は,初 め か ら この 目的 の為 に,悪 意 で,妻 に債 務 を負 担 させ る よ う に な っ た とい う の で あ る。 プ

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レ ァ ム ヌ ウ が 法 定 抵 当権 を登 記 に従 属 させ ない の は,こ の よ う な事 態 を 回避 す る為 で も あ っ た 。

この 慣 行 に 関 して は,後 に 章 を改 め て検 討 す るが,こ こで は次 の2点 を確 認 して お く。 ① プ レア ム ヌ ウ が,こ の 慣 行 の存 在 自体 を認 識 して い た こ と(と い うの も,認 識 の 有 無 が19世 紀 に 議 論 さ れ る か らで あ る)。 ② こ の慣 行 を 否 定 的 に捉 え て はい な い こ と。

(ホ)以 上 の よ う に,プ レア ム ヌ ウ は,妻 の 保 護 を重 視 した た め に,法 定 抵 当権 を抵 当 制 度 の 中核 に据 え よ う と した こ とは 明 らか で あ ろ う。 問題 は 「 の 保 護 」 の 意 味 で あ る 。 そ もそ も,な ぜ 妻 は保 護 さ れ ね ば な ら な い の か 。 プ レ

ア ム ヌ ウ報 告 は,こ の 最 も基 本 的 な 疑 問 に何 ら言 及 して い な い 。 しか し,こ の 問 い へ の解 答 が,多 分 に 彼 の 「夫 婦 」 観 と密 接 な 関 係 を有 して い る とい う こ と は,容 易 に想 像 で きる で あ ろ う。 か つ て ボ ル タ リス は妻 の夫 へ の 服 従 を 語 っ て い た163)。 ボ ル タ リス の よ う に妻 の服 従 義 務 を前 提 とす る の で あ れ ば,法 定 抵 当権 を,そ の対 価 と して の 保 護 権(夫 の 権 限 濫 用 の 可 能 性 か らの 保 護)と し て 法 的 に位 置 付 け る こ とが 論 理 的 に可 能 で あ るか も しれ な い。 で は,プ レア ム ヌ ウ は,夫 婦 とい う もの を,ど の よ う に捉 え て い た の で あ ろ うか 。約4ヶ 月 前(共 和 暦12年 ヴ ァ ンデ ミエ ー ル6日 〔1803年9月29日 〕),彼は次 の よ う な発 言 を行 っ て い る。 国 務 院 で 共 通 制 と嫁 資 制 の何 れ を法 定 制 と して 採 用 す る か が 議 論 の対 象 とな った 時 の そ れ で あ る 。 本 款 の検 討 対 象 を逸 脱 す るが,非 常 に 重 要 で あ る の で,こ こ で引 用 す る。

「今 日,様 々な[夫 婦財 産 に関す る]制 度 の 問で,社 会秩 序 に最 も適切 と思 わ れ る もの を 選 択 し な け れ ば な ら な い 。[確 か に,]成 文 法 地 域 同 様 に,慣 習 法 地 域 に お い て も夫 に権 威 を付 与 し な け れ ば な ら な い 。[な ぜ な ら,]そ れ が な け れ ば,家 族 内 に は秩 序 も風 紀 も存 在 し な く な る か らで あ る。 し か し,そ れ に達 す る た め に,婚 姻 の よ う な 親 密 な 会 社societ6i64)の 公 平6quit6と 本 質natureに 嫌 悪 を抱 か せ る よ う な 権 利 を,夫 に 与 え る べ き で は な い 。 む し ろ,不 都 合 の な い 範 囲 で,妻 が 会 社 に 参 加 す る こ と を承 認 す る こ と に よ っ て,こ の 会 社 の 成 功 の 利 益 に妻 を あ ず か らせ る こ

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1804年 フ ラ ン ス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) との 方 が 良 い[傍 点 は引 用 者 に よ る]。」165)

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以 上 の 言 説 は,ボ ル タ リス の もの と は明 らか に 異 な る もの で は なか ろ うか 。 こ こで は服 従 よ り も協 力 とい う観 念 が 強 調 さ れ て い るか らで あ る。 とす れ ば, プ レ ア ム ヌ ウ の 夫 婦 観 は 決 して し支 配=従 属 とい う もの で は な い の で,夫 の 権 限 濫 用 の 可 能性 か らの保 護 を法 定 抵 当 権 の 根 拠 と して 据 え る こ と は理 論 的 に困 難 と思 わ れ る 。 この よ うな プ レア ム ヌ ウの 夫 婦 観 と法 定 抵 当権 の 関 係 とい う問 題 は,フ ラ ンス 抵 当法 に お け る法 定 抵 当 権 の意 義 とい う,本 稿 の 中 心 的課 題 に 繋 が る と思 わ れ るの で,詳 し くは後 に検 討 す る こ と に な る で あ ろ う。こ こ で は, プ レア ム ヌ ウ が 妻 の 法 定抵 当 権 の 強 化 を主 張 した こ と と,夫 権 を承 認 しつ つ も 夫 婦 間 に協 力 的 関 係 を望 ん だ こ との,2点 を確 認 す る に留 め る 。

第4項 小 括

(イ)長 大 か つ 詳 細 な プ レ ア ム ヌ ウ報 告 の全 て を こ こ で紹 介 す る こ とは で きな い が,彼 の特 定 観 ・登 記 観 の エ ッセ ンス は,以 上 の よ うな もの で あ っ た 。 もっ と も,不 明 瞭 な部 分 も少 な くな く,本 稿 は,あ えて そ の 詳述 を避 け た。 例 え ば,法 定 抵 当権 な ど は,当 時 の 実 際 的 運 用 が 明 らか と さ れ て い ない た め に, プ レア ム ヌ ウ の発 言 に対 して 十 分 な理 解 を得 られ な い よ う な箇 所 もあ っ た か ら で あ る 。 ま た,法 定 抵 当権 と夫 婦 観 との 緊 密 な 関係 は 推 測 し得 る と して も,実 際,両 者 間 に は,ど の よ うな 関 係 が あ る の か は 明 らか と は さ れ て い ない 。 しか

し,こ れ らの点 は,い ず れ本 稿 の 検 討 の 過 程 で 明 らか と さ れ る で あ ろ う。

(ロ)と こ ろ で,プ レア ム ヌ ウ報 告 の 検 討 か ら生 じた 大 きな 疑 問 が,わ わ れ の 頭 か ら離 れ ない 。 こ こで は,こ の 点 を指 摘 して 本 款 を締 め 括 りた い と考 え る。

彼 の 報 告 は,力 強 く理 論 的 で,説 得 力 の あ り,か つ 確 信 と 自信 に 満 ち た もの で あ っ た166)。「特 定 の 原 則 」 と 「公 示 の 原 則 」を絶 対 視 す る現 代 的観 点 か らは, こ の彼 の 自信 が,何 に 由 来 す る も の な の か 容 易 に理 解 しが た い 。 彼 は革 命 的 な 法 律 家 で あ っ た とは 言 い難 い との 評 価 もあ り167),確 か に報 告 中 に も革 命 前 の

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法 律 へ の 懐 古 も見 られ な い わ け で は な い。 しか し,彼 の確 信 を,そ れ だ け で説 明 し尽 くせ る わ け で は な い で あ ろ う(確 か に,彼 の確 信 は,近 世 型 抵 当 権 が,

コ ー ド ・シ ビ ル の既 に完 成 した 部 分 と整 合 的 で あ る とい う点 に よっ て も裏 付 け られ て い た で あ ろ う)。 と い うの も,仮 に妻 の 保 護 が 重 要 で あ っ た と して も, 次 款 で レア ルが 主 張 す る よ う に(本 節 第2款(イ)参 照)近 世 法 で の 抵 当制 度 が 現 実 に 産 業 の 発 展 を阻 害 して い た とす れ ば,プ レア ム ヌ ウが,こ れ ほ ど ま で に強 い確 信 と と もに そ の 正 当性 を 主 張 し得 た の で あ ろ うか,と い う疑 問 が 残 る か らで あ る。

確 か に,彼 の 抵 当観 は,法 定 抵 当 権 を 中核 に 据 え よ う とす る もの で あ っ た し, ま た抵 当権 が 信 用 手 段 と して 用 い ら れ る こ とが な い と明 言 す る 場 面 さ え あ っ た 。 こ こか ら,彼 が 信 用 手 段 と して の 抵 当権 な る も の を全 く観 念 して い なか っ た と結 論 付 け,抵 当 制 度 と産 業 の発 展 を無 関係 な も の と捉 えて い た と考 え る こ と も可 能 で あ ろ う168)。 とす れ ば,(両 者 が 無 関 係 で あ る以 上,)そ もそ も レ ア ル の よ うな 主 張 は 当 を 得 た も の で は な い の で,こ の よ うな 反 論 は プ レ ァ ム ヌ ウ の 確 信 を揺 るが す もの で は な か っ た こ とに な る。 しか し,こ の よ うな仮 説 は誤 っ た もの と言 わ ざ る を得 な い。 なぜ な ら,本 款 の 冒頭 で確 認 した よ う に,近 世 法 こそ が,妻 を保 護 した の と 同時 に,フ ラ ンス を 「高 度 な 繁 栄 の 段 階」 に導 い た とす る確 信 が,彼 に は あ っ た か らで あ る。 とす れ ば,決 して 不 動 産信 用 に無 関 心 で あ っ た わ け で は な い と い う こ と に な る 。 つ ま り,彼 の 抵 当観 は,妻 の利 益 と土 地 信 用 を天 秤 に掛 け て,専 ら前 者 に重 き を置 い た とい う よ うな 単 純 な も の で は な い の で あ る 。そ の 結 果,次 の よ う な疑 問 が 生 じる の は,当 然 で あ ろ う。

す な わ ち,近 世 法 上 の 抵 当 権(特 に 法 定 抵 当権 の 非 公 示 性 ・包 括 性)が 本 当 に 信 用 取 引 の足 枷 と な っ て い た の か?。 そ して,妻 の 保 護 の 貫 徹 と,不 動 産 信 用 の 確 立 とい う2つ の 目的 は,二 者 択 一 的 な もの なの で あ ろ うか?。

恐 ら く,こ れ らの疑 問 に答 え る た め に は,彼 が 前 提 と した 近 世 法 上 の 妻 の抵 当 権 の実 際 的 運 用 を 明 らか にす る作 業 が 必 要 と され る と思 わ れ る。 また,こ 作 業 に よ って 本 報 告 の 不 明 瞭 な 部 分 も明 確 に な るで あ ろ う。 い ず れ に せ よ,こ

こ で は プ レ ア ム ヌ ウ 報 告 に対 す る 疑 問 点 を指 摘 す る に留 め,こ の点 に 関 す る解

(19)

1804年 フ ラ ンス 抵 当 法 の 基 本 的 性 格(2) 133 答 は 後 に検 討 す る 。

(ハ)彼 の 草 案 は形 式 的 に は全 面 的 に破 棄 され る。 しか し,法 定 抵 当権 が 登 記 か ら独 立 した 存 在 と して位 置 付 け られ る とい う点 で1804年 法 の 抵 当観 に 大 きな足 跡 を残 して い る。 とす れ ば,彼 の 理 念 が ヴ ァ ン トー ズ28日 法 に大 きな 影 響 を与 え て い る こ と は,や は り否 定 で きな い で あ ろ う。

106)レ ア ル に よ れ ば,プ リ ュ ヴ ィ オ ー ズ7日(1月28日)に,国 務 院 立 法 部la sectiondel6gislationduconseild'6tatで 抵 当 法 の 議 論 が 行 わ れ,そ れ に 参 加 し た8人 の メ ン バ ー 中 の4人 が 共 和 暦7年 法 を,2人 が 草 案 を 支 持 し,残 り の2人 は 態 度 を 留 保 し た と さ れ る(Fenet,t.15,pp.282‑283〔 な お,Fenet,t15,p.

223.に は,こ の 日 に 抵 当 法 に 関 す る 議 論 が 行 わ れ た 旨 の 記 載 は あ る が,議 事 の 内 容 は 収 録 さ れ て い な い 〕)。恐 ら く,そ の 場 で 激 し い 議 論 が 行 わ れ た の で あ ろ う 。「執 政 」(こ の 日 は カ ン バ セ レ ス だ け で な く,ナ ポ レ オ ン も 登 院 し て い る の で,こ が 誰 を 指 す か は 不 明)の 提 案 で5日 後 に2つ の 報 告 が 行 わ れ る こ と に な っ た 。 ロ ク レ(Locr6,t.8,p.112.)に よ れ ば,草 案 を 支 持 し た2人 と い う の は ト ロ ン シ ェ と プ レ ァ ム ヌ ウ,態 度 を 留 保 し た2人 と い う の は ボ ル タ リ ス と マ ル ビ ル で あ る(ト ロ ン シ ェ と マ ル ビ ル は 国 務 院 構 成 員 で は な か っ た が,共 和 暦8年 テ ル ミ ドー ル24 日 ア レ テ 第7条 〔Locr6,t.1,p.41.〕 〔ア レ テ の 邦 語 訳 と し て ボ ル タ リ ス ・前 掲 註 85)96頁 〕 に 基 づ い て,議 論 に 参 加 し て い た)。 共 和 暦7年 法 を 支 持 し た4人 の2人 は レ ア ル と ト レ ヤ ー ル で あ る が,他 の2人 は 特 定 で き な か っ た(こ の 日 に は,コ ー ド ・シ ビ ル の 他 の 部 分 の 議 論 が 行 わ れ て い る の で,国 務 院 登 院 者 の リ ス

ト を 作 成 す る こ と は 可 能 で あ る 。cf.Fenet,t.11,p.56;t.13,p.313;t.14,pp.62 ets;t,14,pp.268ets;t,14,pp.526ets;t,15,pp.31ets;t,15,pp.549ets.)0

107)Fenet,t,15,pp.223‑271.

108)本 稿 「基 本 的 性 格(1)」243‑246頁 参 照 。

109)プ レ ア ム ヌ ウ 報 告 は,共 和 暦7年 法 と 破 殿 裁 判 所 案 の 双 方 に 対 す る 反 論 と い う 形 を 取 っ て い る 。

110)実 際,共 和 暦8年 草 案 第3編 第2章 『契 約 ・債 務 』(Fenet,t.2,pp.159‑200.)

は,プ レ ア ム ヌ ウ に よ っ て 作 成 さ れ て お り(詳 し く は 淡 路 剛 久 『連 帯 債 務 の 研 究 』 (弘 文 堂 ・1975年)91頁 参 照),彼 の 債 務 観(cf.ExposedesmotifsparBigot‑

Pr6ameneu,inFenet,t.13,pp.215‑311.)は,コ ー ド ・ シ ビ ル 全 体 に 大 き く 影 響 し て い る 。 と す れ ば,彼 の(債 務 観 と 密 接 な 関 係 を 有 す る)抵 当 観 は,コ ー ド ・ シ ビ ル に 無 関 係 と い う 訳 で な い と い う こ と に な る 。

111)共 和 暦7年 法 に つ い て 拙 稿 「意 義(1)」318‑・321頁,共 和 暦8年 抵 当 草 案 に つ い て 拙 稿 「意 義(1)」332‑345頁,破 殿 裁 判 所 案 に つ い て 拙 稿 「意 義(1)」346‑359

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