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山崎 猛・金子一夫 (1986年11月5日受理)

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茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)69 一 76 69

児童・生徒の美術教育に関する意欲・意識の基礎的研究(1)

一図画工作科・美術科及びその各領域に対する意欲度一

山崎 猛・金子一夫

   (1986年11月5日受理)

璽.はじめに一調査の目的

 教育内容に認る児童・生徒の意識の研究は,教育実践上必要である。美術教育の分野においても美 術教育内容に対する児童・生徒の好悪とその睡由の調査が,現場の教師たちによってよくなされているi3 それらの調査は美術教育に対する児童・生徒の好悪について,おおよそ一致した傾向を明らかにしてい る。すなわち,小学校低・中学年において図画工作科は非常に好まれ,高学年,中学校と上るにつれて 好まれる割合が小さくなっていく。領域では小学校において彫塑,工作,中学校において鑑賞が好まれ

るというものである。

 ただ,それらの調査はそれぞれ興味ある結果を示しているのであるが,一番好きな領域のアンケート のため,一番ではないが好きな領域が評価されなかったり,調査項目が現状とあっていなかったりして,

必ずしも満足のいくものばかりではない。そこで,それらの不備と思われる点を改良した調査を行うこ とにした。

2.調査の内容と方法

 今回の調査では図画工作科・美術科という教科と,その中の絵画,彫塑,デザイン,工作(工芸),

鑑賞という各領域の意欲度をアンケートすることにした。現行学習指導要領は,五領域ではなく表現と 鑑賞の二領域を,それも鑑賞は表現に付随して行うとしている。しかし,「表現」の中には目立たない ようにしてあるが,実質的に四領域が規定されている。それゆえ,調査項目としては五領域とした。

 そして,「すき・きらい」ではなく,より具体的に自分の気持ちが捉えやすいように「やる気がする

・しない」という意欲の調査にした。 「とてもやる気がする・すこしやる気がする・ふつう・あまりや る気がしない・ぜんぜんやる気がしない」という五段階の評価枠を設定し,自分の気持ちにあうところ に丸をつけてもらった。領域間の順位は問わなかった。各学年の各領域,各評価枠ごとなどについて回 答数を集計した。そして,五段階の評価枠に「2・1・0・1−1・一2」という評点をつけ,各学年 の各領域の得点を算出し,さらに回答数で割って平均点を出した。以上はいわゆる評価法アンケート調 査であり,なぜそのような評点になるのかなど難しい問題もあるが,結果はおおよその目安を示すもの と思われる。なお,小学校1・2年生に対するアンケートの文章や領域名だけは,他の学年のそれより やさしい言葉にし,やる気ではなく,「すき・すこしすき・きらい」の三段階で調査している29  この調査法に関して参考となったのが,東京都立教育研究所の古川清行他「児童・生徒の問題行動に 関する基礎研究」3)中にある「各教科に対する学習意欲の傾向」の調査法である。各教科に関する調査 を図画工作科・美術科とその中の各領域に関する調査に変更しただけで,今回の調査形式はこの研究の

(2)

70       茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

それを踏襲している。

 ちなみに,今回は素材に関するアンケートもあわせて行ったが,紙数の関係でその結果を報告するこ とはできないので,次回に発表することにした。

      3.調 査 対 象

 今回の調査は茨城大学教育学部附属小学校および中学校の児童・生徒を対象とした。他校とは違った 特殊性が結果にあらわれているのかもしれないが,それは他校での調査結果との比較をまたなければは っきりしない。また,附属小学校の1・2学年においては,図画工作科という独立した教科はなく,総 合活動のうちに解消されている。それゆえ,アンケートではそのような活動の「すき・きらい」を問う たが,3学年以上の結果とは違い,若干の保留をつけて見る必要がある。

      4.調 査 結 果

図画工作科・美術科という教科,絵画,彫塑,デザイン,工作(工芸),鑑賞の順に,それらに対す る意欲度の調査結果表,そして,それらの意欲度の学年変化のグラフを掲げる。

表1.図画工作科・美術科に対する意欲

とてもやる

Cがする

すこしやる

Cがする ふつう

あまりやる Cがしない

ぜんぜんやる

Cがしない

回答数

㈹v 得点 指数(平均点)

小学1年   88i46,42)   25i12,13)

  2 i0,2)

  115 i58,57)

  199 i104,95)

  1.73 iL79,1.67)

2   80i45,35)

  27 i13,14)

  0 i0,0)

  107 i58,49)

  187 i103,84)

  1.75 i1.78,1.71)

3   87i48,39)

  16

i7,9)

  10 i4,6)

   2

i1,1)

  0

i0,0)

  115 i60,5①

  188 i102,86)

  1.63 i1.70,1.56)

4   88i40,48)   15i10,5)

    4

i3,D

   1

i1,0)  0 i0,0)

 .108 i54,54)

  191 i89,102)

  1.77 i1.65,1.89)

5   63i28,35)

  20 i14,6)

  25 i10,5)

   6

i5,1)

  2

i1,1)

  U6 i58,58)

  136 i63,73)

  1.17 i1.09,1.26)

6   78i39,39)   26i7,19)

   15 i10,、5)

   1

i1,0)

  1

i1,0)

  121 i58,63)

  179 i82,97)

  1.48 i1.41,1.54)

中学1年   28i10,18)

  22 i12,10)

   25 i12,13)

  13

i10,3)  3 i1,2)

   91 i45,46)

   59

i20,39)

  0.65 i0.44,0.85)

2   16 i8,8)

  29 i16,エ3)

   19

i8,11)

  19 i10,9)

  7

i3,4)

   89 i44,45)

   28 iエ6,12)

  0.31 i0.36,0.27)

3   24i13,11)

  24 i15,9)

  25 i10,15)

  10 i3,7)

  2

i2,0)

   86 i43,43)

   58

i34,24)

  0.65 i0.79,0。56)

(  , )内は男,女の数値

(3)

山崎他:児童e生徒の美術教育に関する意欲。意識の基礎的研究(1) 71

表2.絵画に対する意欲

とてもやる

Cがする

すこしやる

Cがする ふつう

あまりやる Cがしない

ぜんぜんやる

Cがしない

回答数

㈹v 得点 指数(平均点)

小学1年   82i39,43)

    9

i4,5)

   エ7

i11,6)

   6

i3,3)

  1

i1,0)

  115 i58,57)

 エ65 i77,88)

   ユ.43 i1.33,1.54)

2   75i38,37)   20i11,9)

    8

i5,3)

   3

i3,0)

  1

i1,0)

  107

i58,49)  165 i82,83)

   1.54 i1.41,1.69)

3   77i38,39)   20 i11,9)

   11

i5,6)

   4

i3,1)

  3

i3,0)

  115

i60,55)  164 i78,86)

   1.43 i1.30,1.56)

4   58i27,31)   26i9,17)    15i12,3)    7 i5,2)

  2

i1,1)

  108

i54,54)  132

i57,75)

   1.22 i1.06,1.39)

5   37i15,22)   22i11,11)    3αi18,12)   23i11,12)   4i3,1)   116i58,58)   65i24,41)    0.56i0.41,0.70)

6   54 1 i19,35)

  18 i10,8)

   31 i15,16)

  15 i12,3)

  3

i2,1)

  121 i58,63)

105

i32,73)

   0,87 i0.56,1。16)

中学1年   23i10,13)   21i8,13)   20i10,10)   22i13,9)   5i4,1)    91i45,46)   35i7,28)    0。38i0.16,0.61)

2   12 i6,6)

  27 i11,16)

   19

i11,8)

  25 i13,12)

  6 i3,3)

   89 i44,45)

  ユ4 i4,10)

   0。15 i0.09,0.22)

3   27i11,16)   17 i9,8)

   13

i7,6)

  24 i13,11)

  5 i3,2)

   86 i43,43)

   37 i12,25)

   α43 i0.28,0,58)

( , )内は男女の数値

表3.彫塑に対する意欲

とてもやる

Cがする

すこしやる

Cがする ふつう

あまりやる Cがしない

ぜんぜんやる

Cがしない

回答数

㈹v 得点 指数(平均点)

小学1年   50

i36,14)

  30 i!7,13)

  11

i2,9)

   8

i2,6)

 16

i1, 15)

115

i58,57)

   90 i85,5)

   0.78 i1.47,0.09)

2   48 i35,13)

  20 i14,6)

  18 i2,16)

  14 i3,11)

  7 i4,3)

107

i58,49)

   91 i73,ユ7)

   0.85 i1.26,0.35)

3   68 i37,31)

  18 i11,7)

  18 i4,14)

   7

i5,2)

  2 i1,1)

113

i58,55)

  143 i78,65)

   1.27 i1.34,1.18)

4   60 i34,26)

  19 i12,7)

  22 i6,16)

   5

i2,3)

  2 i0,2)

108

i54,54)

  130 i78,52)

   1.20 i1.44,0.96)

5   58 i33,25)

  26 i17,9)

  20 i4,16)

   9

i2,7)

  3 i2,1)

116

i58,54)

  127 i77,50)

   1.09 i1.33,0.86)

6   46 i22,24)

  36 i13,23)

  24 i14,10)

   9

i4,5)

  4 i4,0)

119

i57,62)

  111 i45,66)

   0.94 i0.79,LO6)

申学ユ年   17 i9,8)

  28 i16,12)

  22 i9,13)

  20 i10,10)

  4 i1,3)

  91 i45,46)

   34 i22,12)

   0.37 i0。49,0.26)

2   12 i5,7)

  10

i8,2)

  29 i10,19)

  27 i15,12)

 10 i6,4)

  88 i44,44)

  一13 i一9,一4)

  一〇.15 i一〇.20,一〇.09

3   15 i4, ll)

  20 i15,5)

  29 i17,12)

  16 i4,12)

  6 i3,3)

  86 i43,43)

   22 i13,9)

   0.26 i0.30,0.21)

( , )内は男女の数値

(4)

72 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1997)

   表4.デザインに対する意欲

とてもやる

Cがする

すこしやる

Cがする ふつう

あまりやる Cがしない

ぜんぜんやる

Cがしない

回答数

㈹v 得点 指数(平均点)

小学1年   61i22,39)   17i9,8)   10i5,5)   6i4,2)   17i17,0)   111i57,54)   95i15,80)    0.86i0.26,1.48)

2   57 i21,36)

  27 i15,12)

   9

i8,1)

  8 i8,0)

   6

i6,0)

  107 i58,49)

エ21 i37,84)

   1.13 i0.64,1.71)

3   58 i28,30)

  25

曹S,1D

  22 i10,12)

  4 i3,1)

   3

i2,1)

  112 i57,55)

131

i63,68)

   1.17 i1.10,1.24)

4   64 i29,35)

  26 i11,15)

  11

i8,3)

  7 i6,1)

   0

i0,0)

  108 i54,54)

147

i63,84)

   エ.36 i1。17,1.56)

5   43 i16,27)

  19 i9,10)

  33 i18,15)

 10

i6,4)

  1エ

i9,11)

  116 i58,58)

  71 i17,54)

   0.6エ i0.29,0.93)

6   58 i21,37)

  25 i9,16)

  21 i13,8)

  7 i6,1)

   4

i4,0)

  ユ15 i53,62)

126

i37,89)

   1.10 i0.70,1.44)

申学1年   24i11,13)   20i9,11)   23i11,12)  22

i13,9)

   2

i1,1)

   91 i45,46)

  42 i16,26)

   0.46 i0。36,0.57)

2   14 i6,8)

  23 i11,12)

  37 i22,15)

  9 i3,6)

   5

i2,3)

   88 i44,44)

  32 i16,16)

   0.36 i0.36,0.36)

3   20 i10,10)

  24 i12,12)

  22 i11,11)

 15 i7,8)

   5

i3,2)

   86 i43,43)

  39 i19,20)

   0.45 i0.44,α46)

( , )内は男,女の数値

表5.工作・工芸に対する意欲

とてもやる

Cがする

すこしやる

Cがする ふつう

あまりやる Cがしない

ぜんぜんやる

Cがしない

回答数

㈹v 得点 指数(平均点)

小学1年   59i37,22)   19i8,11)   10i4,6)  14i5,9)  10i3,7) 112

i57,55)

  103 i71,32)

  0.92 iユ.25,0.58)

2   71 i44,27)

  18

i9,9)

  11

i3,8)

  6 i2,4)

  1 i0,1)

107

i58,49)

  152 i95,57)

   1.42 i1.64,1.16)

3   88 i51,37)

  12

i4,8)

   8

i1,7)

   5

i3,2)

  2 i1,1)

 115

i60,55)  179

i101,78)

   1.56 i1.68,1.42)

4   79 i44,35)

  17

i7,10)

   7

i2,5)

   4 i1,3)

  1 i0,1)

108

i54,54)

  169 i94,75)

   1.56 i1.74,1.39)

5   75 i45,30)

  24

i8,16)

  10

i4,6)

  4 i0,4)

  3 i1,2)

 116 i58,58)

  164 i96,68)

   1.41 i1,66,1。17)

6   74 i45,29)

  27

i6,21)

   8

i4,4)

   7

i0,7)

  3 i2,1)

119

i57,62)

  162 i92,70)

   1.36 i1.70,1。13)

中学1年   33i19,14)   26

i12,14)

  16

i7,9)  14

i6,8)

  2 i1,1)

  91 i45,46)

   74 i42,32)

   0.81 i0.93,0.70)

2   18 i13,5)

  25 i11, 14)

  27 i11,16)

 15 i6,9)

  4 i3,1)

  89 i44,45)

   38 i25,13)

  0.43 i0。57,0.29)

3   23 i14,9)

  31 i17,14)

  17

i8,9)

  11 i2,9)

  4 i2,2)

  86 i43,43)

  58 i39,19)

   0.67 i0.90,0.44)

( , )内の男,女の数値

(5)

山崎他:児童・生徒の美術教育に関する意欲・意識の基礎的研究(1) 73

表6.鑑賞に対する意欲

とてもやる

Cがする

すこしやる

Cがする ふつう

あまりやる Cがしない

ぜんぜんやる

Cがしない

回答数

㈹v 得点 指数(平均点)

小学1年    57i22,35)   28i14,14)    7i6,1)  10i5,5)    9i8,1)   110i55。55)   114i37,77)     1.04i0.67,1.40)

2    64 E(32,32)

  21

f2,9)

  11 i7,4)

  6 i2,4)

   5

i5,0)

  107 i58,49)

  133 i64,69)

    1.24 i1.10,1.40)

3    51 i20,31)

  27 i17,10)

  15 i8,7)

 10 i3,7)

   9

i9,0)

 112

i57,55)

 101

i36,65)

    0.90 i0.63,1ユ8)

4    40

i19,21)

  17 i5,12)

  33 i20,13)

  9 i5,4)

   8

i4,4)

  107 i53,54)

   72 i30,42)

    0.67 i0.57,0.78)

5    36 i13,23)

  15

i6,9)

  35 i16,19)

18

i14,4)

  12 i9,3)

  116 i58,58)

   45

i0,45)

    0.39 i 0,0,78)

6   32 i9,23)

  22 i6,16)

  30 i16,14)

 17 i9,8)

  15 i14,1)

  116 i54,62)

   39 iヨ3、,52)

    0.34 i一〇.24,0.84)

中学1年    31i14,17)   21i10,11)   23i12,U)   8i5,3)    7i4,3)    90i45,45)    6ii25,36)     0。68i0。56,0.80)

2    24 i6,18)

  18 i8,10)

  19 i10,9)

 17 i13,4)

  10 i6,4)

   88 i43,45)

   29 i一5,34)

    0.33 i一〇.12,0.75)

3    24 i9,15)

  15 i11,4)

  21 i10,11)

 15 i7,8)

  11 i6,5)

   86 i43,43)

   26 i10,16)

    0。30 i0.23,0.37)

( , )内は男,女の数値

2D

1.5

1.e

O.5

o

一〇.2

魍画工作・美術科

 絵画        ,__哺紹・噸  \      ノ      、、

    ,ノ       、\、

讃九ン〉ぐ製 XNX

       .・/ NKx iA NN

      \▽ 鴫.\ /={ 工芸        鰹\/2.轄轡科

      絵画       \         鑑賞       、       ノ        \      /\彫塑        × 一 /       x    /

N  lV

小1 2 3 4 5 6 中1 2 3

図1.図画工作科。美術科と各領域に対する意欲度の学年変化

(6)

74      茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

2,0

         /へ

         / \      実線=男

  !へ\ノ \   破轍

1・5 @    \ /N

      、V//  \

焔         \\

      \

o・5@       \  ///

       V!

1.

 小1  2   3   4   5   6  中1  2   3 図2.図画工作科・美術科に対する男女の意欲度

2.0

       実線需男        破線=女

1.5

       ハ

・・@  /\\ /へ       / } \

      ノ

・・@ /        \

     ノ      、

   //       \\ 。/

  !      \   

_o.2       .\1

  11、ユ23456中123

    図4.彫塑に対する男女の意欲度

2.0

      実線繍男       破線=女

1.5

      /た、、\

     〆/         \\隔、

    /      、蝋\

1・o@ /      \    /       \   /       \\

o・5@       \\  /        V/

 0

 !j、123456中123

  図6.工作・工芸に対する男女の意欲度

2.0

      む 

  //\\       破線置女

L5 @         \\\\

      \

、   \\〈

      〉\ 、

α5 @     \\/

      \〉/

o

 ,INI 23456【#123

    図3.絵画に対する男女の意欲度

2、0

      実線=男       破線置女    //へ\

卍\

      \/ \

1.・       〉  \       . \

      \O・5

@       \\\   

,〆

G ,

 Ij、i 23456中123

   図5.デザインに対する男女の意欲度

2.0

       実線=男        破線=女

i.5

  }  謄へ\\

      \\

        \

1・0@        \\

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    図7.鑑賞に対する男女の意欲度

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山崎他:児童・生徒の美術教育に関する意欲・意識の基礎的研究(1) 75

      5.結果に対する考察

 前節の諸表や諸図に示された結果から次のようなことがわかる。まず,図画工作科・美術科という教 科に対する意欲は,小学校低中学年において(ただし今回の調査校では低学年では教科として存在しな いのでそれに該当する活動),非常に高い値を示す。小学5年において小さく落ちこみ,中学に入って 大きく落ちこみ,中学3年で上向きに転じる。小学5年での落ちこみは今回の調査結果の方がやや大き

いかもしれないが,全体的に前に触れた東京都立教育研究所の調査結果と似たような意欲の変化を示し ている。そこでも,小学5年と中学2年では落ちこんでいる。

 ここで誤解してならないのは,本調査で意欲の0度が意欲の全くない状態を示すのではなく,普通の,

好きでもきらいでない状態を示すことである。全く意欲のない状態は一2度で示される。それゆえ,本 調査結果は総体的に高い意欲を示していると思う。東京都立教育研究所の調査結果においても,他教科 よりずっと高い値になっている。また,グラフに表された指数は平均点であり,現実にはさまざまな意 欲度の児童・生徒が混在していることは諸表からわかる通りである。さらに,諸表には表れていない が,クラスによっても意欲度が大きく違うこともあった。

 次に各領域の意欲度の変化を見ると,三つの型に類別できる。第一の型は絵画とデザインで,小学5 年で落ちこみのあるのが特徴である。そして,これらが値こそ違え,図画工作科・美術科という教科の 意欲の変化と酷似しているのに気づく。特に絵画は似ている。これは,児童・生徒たちにとって教科の イメージが,絵画やデザインのイメージとして捉えられていることを示すものではないかと思う。第二 の型は,彫塑と工作・工芸の意欲の変化である。これらには小学5年での落ちこみはなく,小学校全体 では高原状の線を描く。中学2年での落ちこみは,絵画やデザイン同様ある。彫塑はマイナス度にまで なってしまう。また,小学1,2年での彫塑の低位は意外に思われるかもしれない。それは,後に触れ るように油土を特に女子がいやがっているためである。

 第三の型は鑑賞である。他の四領域の線とは対照的な変化をする。小学校の間,ずっと低位である。

これは,作品を見るより自分で作った方がよいというのが理由の大部分である。小学校から中学校にか けて,五領域の中で唯一上昇している。にもかかわらず,中学2年から3年にかけて唯一下降している。

このように他の領域とは大きく違う。そして,後に述べるが男女によっても大きく違う。

 以上のように値は違うが,変化のしかたは三型に分類できるように思う。絵画やデザインが小学5年 で落ちこむのに対し,彫塑や工作が落ちこまないのはなぜであろうか。前者が主に平面であり,後者が 主に立体であるというところに理由があるのであろうか。絵画的表現がこの時期に児童にとってうまく いかなくなることは知られている。おそらく,デザインも同じ平面ということで,絵画と全く分離した 意識になれず意欲が低下してしまうのではないかと思う。彫塑や工作においては,絵画における写実的 表現のように,表現上の困難な操作の急な出現がそれほどないので,目立った落ちこみがないのだと思 われる。中学2年での落ちこみは,美術科の落ちこみというより,各教科全体の落ちこみと思われ,生 徒の一般的な意識や現行の教育制度との関係で分析した方がよいと思われる含)

 次に男女の性差による意欲の違いを検討してみる。違いには値の違いと変化のしかたの違いが考えら れる。また,本調査では男女数はほぼ同じなので,図2から7のグラフにおいて,男女の中間点を結ぶ と図1に示した各領域の線となる。教科に対する意欲では,小学1,2年と中学3年という最初と最後 以外は,ずっと女子が上にある。絵画は,男女とも同じような変化をする。そして,女子が常に上にあ る。彫塑においては,小学6年以上では男女による意欲度の違いは不安定である。小学1,2年では女 子がずっと低位なのは,油土のにおいや感触をきらっているからである。男子はそれが気にならないの

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76 茨城大学教育学部教育研究所紀要19号(1987)

か,それを意欲が打消してしまうのか高い意欲を示す。デザインは小学校において男女の意欲度に差は あるが,変化のしかたは類似している。小学1,2年の男子が低いのは質問を「もようをつくること」

とアレンジしたためなのかもしれない。工作・工芸はずっと男子の意欲度が高いが,変化のしかたはほ ぼ同じである。

 次に鑑賞であるが,これは男女によって値も変化のしかたも違う。女子がゆるやかに変化していくの に対し,男子は変化が激しい。小学6年のマイナス度までずっと降下していき,中学1年で急激に上昇,

申学2年で再びマイナスに降下,中学3年で再び上昇という変化となる。おそらく,興味はもっている のだが十分にそれを伸ばせないで再び落ちこんでしまうのであろう。それに対して女子は,中学1,2 年の五領域の中で鑑賞が最も高い意欲度を示しつづける。

 以上が,結果に対して気づく点である。これが一般性をもつのかどうかは,本調査一回のみで判断で きない。年度を違えたり,他校,他地域での調査と比較検討することが必要である。さらに,その上で,

ある意欲度の変化のパターンが指導によって変るのかどうかを研究する必要である。もちろん,教育に は児童・生徒が意欲をもたないものでも指導しなくてはならないものもあろうが,図画工作科・美術科 のように児童・生徒の表現を主とする教科においては,意欲度が実践を進める上において重要な指標に なることは確かである。今後,さらに調査を重ねていく必要がある。

1)たとえば,昭和60年11月の第30次茨城県教育研究集会の美術分科会での発表において,実践研究の予備調査と  いった意味で簡単な調査がなされている。発表者とタイトルを掲げておく。

 堀江俊夫(生瀬中) 「意欲と表現を高める絵画指導J

 市村正巳(谷田部中) 「生徒の意欲的な表現態度をめざす工作指導」

2)この変更に関して附属小学校の雨貝義孝教官の御尽力を得た。

3)『東京都立教育研究所紀要』第22号,1978年。この研究は本学の片上宗二教官の『社会科授業の改革と展望』

 (明治図書,1986)で紹介されている。

4)東京都立教育研究所の同上論文中のグラフを見ると,ほとんどの教科が中学2年で意欲度が低下している。

(附記)

 今回の調査には茨城大学教育学部附属小学校および同中学校の協力を得た。関係者,特に附属小学校の五島光治,

雨貝義孝,安西仁人,附属中学校の篠原洋,.長谷川泰弘の各教官には多大の御協力をいただいたこと感謝申し上げま す。また,集計を手伝ってくれた学生諸君にも御礼申し上げる。

参照

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