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若者の就業と結婚に関する意識

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No.31 明星大学社会学研究紀要 March 2011

《論 文》

若者の就業と結婚に関する意識

高校時代から高卒5年目への変化一1 元 治 恵 子

1.はじめに

 厚生労働省及び文部科学省による調査『平成 23年3月大学等卒業予定者の就職内定状況』

(2010年10月1日現在2010年11月16日発表)に おいて、大学生の就職内定率は57.6%と、前年 同期を4.9ポイント下回り、1996年度の調査開 始以来過去最低の水準となった。男女別にみる と、男子は59.5%(前年同期を3.8ポイント下回 る)、女子は55.3%(同6.3ポイント)であった。

また、完全失業率も、若年層で特に高い傾向が 続いている。このような数値(統計データ)に 象徴されるように、近年の経済状況の低迷をう け、若者をめぐる雇用環境は日々悪化していく かのように見える。新規学卒労働市場が縮小す るなか、女性のみならず、男性においても非正 規雇用労働者が増加しており、経済的に不安定 な層が拡大している。若年期の一時期に非正規 雇用労働者として働き、その間経済的に不安定 であったとしても、その後何らかの形で経済的 にも問題なく安定的な生活が送れるということ であれば、問題はそう大きくないかもしれない。

しかし、仕事に関わりはじめる時期に非正規就 労についた場合、その後の仕事人生に悪影響が 残る、すなわち、キャリアのはじめの不安定な 雇用が長期化し、その後のキャリア形成に障害

となり、格差が拡大するという(白波瀬 2010)。このような経済的な問題は、個人の問 題にとどまらない。現代日本の「少子化」の問

題の背景には、「未婚化、晩婚化」の問題があり、

さらにこの背景には、若年未婚層、特に若年男 性の経済力の低下もあることが指摘されている

(山田編著 2010)。このように、若者をめぐる 就業状況の問題は、家族形成の問題と密接にか かわっている。

 そこで、本稿では、若年層の就業と結婚をめ ぐる意識、具体的には、キャリアデザイン、結 婚アスピレーション、ライフデザインについて 検討する。その際、パネル調査データのメリッ トを活かし、高校3年生の時点と高校卒業後5 年目の時点での変化に焦点をあて、2時点で変 化が見られるのか、あるいは、見られないのか、

その実態ついて明らかにしていく。

2.先行研究の検討と分析課題

2.1.キャリアデザインに関連する先行研究  キャリアデザインに関連する研究としては、

女性の進路分化2、職業アスピレーション、キ ャリアアスピレーションなどの研究があげられ る(元治 2007, 2008)。それぞれの分野でさま ざまな知見が得られているが3、一時点の調査 結果に基づくものが多く、意識の変化を扱って いるものは、ほとんどない。変化に焦点を当て たものとしては、三輪(2007)が本稿と同じデ

タを用いて、高校3年生、高卒1年目、高卒 2年目の3時点でのキャリアデザインの変化お よびその規定因を分析している。分析の結果、

多くの者はどの時点においても「正社員」とし

(2)

2一 明星大学社会学研究紀要

て働くことを望んでいること、高校在学時から 卒業後2年目までの分布はほとんど変わらない こと、意識の性差は年齢が上がると拡大するこ となどが明らかになっている。

2.2.結婚アスピレーションに関連する先行     研究

 未婚化(晩婚化)・少子化を背景に、近年、

若者の結婚や出産に関する調査・研究が行われ ている。結婚意思をもつ未婚者は少なくないも のの、結婚を先延しする傾向が若干増加してい ること、男性では就業状況によって結婚への意 欲に違いが見られることが明らかになっている

(国立社会保障・人口問題研究所 2006)。また、

若い女性の保守化が指摘され(元治・片瀬 2008,松田 2005,中井 2000,谷田川 2010

など)4、結婚願望は決して弱くないという結 果も示されている。

2.3.ライフデザインに関連する先行研究  若い女性を対象としたライフデザインに関す

るさまざま研究が行われてきている。母親の属 性(就業形態、学歴など)や在籍している(あ るいは卒業した)教育機関の影響などが指摘さ れている。また、性別役割意識との関連につい ても多くの研究がなされ、性別役割意識に賛成 な者ほど家庭志向、否定的な者ほどキャリア志 向という関連が見出されている(元治・片瀬 2008,中井 2000など)。長尾(2008)では、

本稿と同じパネル調査を用いて検討がなされて いるが、女性では高卒3年目で家庭志向に傾く 傾向が見られ、これは漸進的に起こっていると いう。また、学歴や母親の就業状況の影響を受 けていることも明らかになっている。

2.4.分析課題

 以上の研究では、一時点の調査データや変化

No.31

や時点間の比較を行うという観点からサンプル の異なる複数時点での調査データを扱ったもの が多く、パネル調査データを用いて同一個人の 変化を中心に研究を進めたものは少ない。未成 年である高校3年生時点から成年後の高卒5年 目時点では、多くの者が「学校から職業」への 移行を経験している。青年期から成人期への移 行期は、その後の人生を左右するようなさまざ まな選択(たとえばどのような職業に就くかな ど)をする重要な時期である。その時期の個人 の意識の変化を連続して追うことは意義のある ことである(長尾 2008)。そこで、本稿では、

パネル調査データを用いて、高校3年生時点と 高校卒業後5年目時点の2時点でのキャリアデ ザイン、結婚アスピレーション、ライフデザイ ンの変化に焦点をあて、変化が見られるのか、

あるいは、見られないのかについて明らかにす ることを目指す。なお、分析においては、デー タ数の制約から有意性検定などによる一般化を することに問題がある場合もある。よって、本 稿は、今後の仮説構築や新たな調査のための探 索的データ解析(Bohrnstedt and Knoke 1988,

前田 2010)として位置付け、記述的な分析を 中心に検討していきたい5。

3.データの概要 3.1.データ

 分析には、東京大学社会科学研究所パネル調 査プロジェクトが実施している「高校生パネル 調査」のうち、高校3年生を対象とし、2004年 1月〜3月に実施した『高校生の生活と進路に 関するアンケート(第1ウエーブ:以下「高校 生調査」6)』と2008年10月〜2009年1月にかけ て高卒者を対象に実施した『第4回追跡調査(第 5ウエーブ:以下「高卒5年目調査」7)』のデ

タを用いる。分析対象は、『第4回追跡調査』

に回答した528人(男性209人、女性319人)で

(3)

March 2011

ある。

若者の就業と結婚に関する意識

3.2.変数

 本稿では、キャリアデザイン8、結婚アスピ レーション9、女性のライフデザイン10につい ての質問に対する回答を用いる。また、個人の 属性を表す変数として、性別、学歴11、現在の 地位12を用いる。

4.分析結果

4.1.キャリアデザインの変化

 まず、30歳時点でのキャリアデザインの変化 について見ると(図1)、男女では分布に大き な違いが見られる。男性の場合、高校3年生時 点で「正社員」を希望していた者のうち94.0%

(男性全体の86.4%)と多数が、高卒5年目に おいても「正社員」を希望しており、他のカテ ゴリーへと変化した者は少数である。一方、女 性の場合は、きわめて多様な変化が見られる。

高校3年生時点で「正社員」を希望していた者 について見ると、高卒5年目にも「正社員」を 希望している変化していない者は65.8%(女性 全体の49.5%)であり、11.1%が「非正社員」、

14.7%が「専業主婦」へと変化している。一方で、

3一

「非正社員→正社員」、「専業主婦→正社員」、「専 業主婦→非正社員」などの就労方向へ変化する 者も少なからずいる。しかし、全体としてみれ ば、女性の場合は、年齢進行とともに就労意欲 が増大する者はそう多くはなく、減少する者の 方が多い。これは、後述する女性のキャリアデ ザインについての問いに対する回答において高 校3年時点で「継続就業」が良いと答えた者の うち、高卒5年目時点でも良いと答えた者は約 半数にとどまり、3割強は「中断再就職」へと 変化していることとも非常に整合的である(4.

3節参照)。

 女性の場合は、きわめて多様な変化が見られ るが、このような変化は学歴や現在の地位によ って違いが見られるのだろうか。ここでは、高 校3年生時点で「正社員」を希望していた者の みに注目し、高卒5年目にどのように変化して いるのか、あるいは変化していないのかを見て

   ざ  へ

い・_つ。

 学歴別にみると(図2)、男女ともに「大学 以上」の方が、2時点において変化していない 者、すなわち「正社員」を一貫して希望してい る者が多い。しかし、一見してわかるように、

男女では変化の様子は違った様相を見せる。男

高校3年生時点

正社員(n・225) 1   65.8 」.・・二兀司… 8.4[1∨…肖

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高卒5年め時点

20% 40% 60% 80% 100%

rc正社員 rr非正社員  tL専業主婦・主夫  その他 図1 キャリアデザインの変化(男:df=2,ρ=.964 女:df=9,ρ=.000)

(4)

4一

学歴

明星大学社会学研究紀要          No.31 高校3年生時点:正社員

0%     20%

高卒5年め時点 E正社員

40% 60% 80% 100%

1非正社員i専業主婦・主夫 その他

図2 学歴別高校3年生時点で「正社員」を希望していた者の変化

性の場合、「大学以外」の者の方が「正社員」

を一貫して希望している者が少ないと言っても ほぼ9割近くに上っており、「大学以上」の 96.5%と比べても大きな違いは見られない。一 方女性の場合は、「大学以上」でも4分の1、「大 学以外」では4割の者に何らかの変更が見られ る。「非正社員」希望へ変わった者は、順に8.7%、

12.8%、「専業主婦」に変わった者は、順に10.9

現在の地位

%、17.3%であり、30歳時点における就労意欲 が低下している傾向が見られる。以上のことか ら、女性の場合は、年齢が変化するとともに、

将来の時点での就労意欲に減退傾向が見られ、

その意欲は、低学歴ほど影響を受けている様子 がうかがえる。

 次に現在の地位別にみると(図3)、男性では、

現在の地位によらず、「正社員」を一貫して希 高校3年生時点:正社員

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高卒5年め時点 =正社員

40% 60% 80% 100%

cr非正社員r専業主婦・主夫 その他 図3 地位別高校3年生時点で「正社員」を希望していた者のキャリアデザインの変化

(5)

March 2011 若者の就業と結婚に関する意識 望している者が多い。分析対象となっている「非

正社員」の人数が少ないので、解釈には留保が 必要だが、「正社員」よりも「非正社員」の方 が「正社員」を一貫して希望している者が多い。

これは、現在「正社員」ではないがゆえに30歳 時点では「正社員」になっていたいという強い 願望のあらわれかもしれない。

 しかし、女性では「正社員」希望で一貫して いる者は、「正社員」のうち68.1%、「非正社員」

では51.8%と20ポイント弱の開きがあり、「正 社員」で多い傾向が見られる。逆に、「正社員」

希望から「非正社員」、「専業主婦」へと変化し た者は、「非正社員」の方が多い。現在どのよ うな働き方をしているのかによって将来のキャ リアデザインが影響を受ける可能性が示唆され

る。

4.2.結婚に関する意識の変化

 次に、結婚アスピレーションについてそれぞ れの調査時点での全体的な傾向を見てみよう。

図には示さないが、高校3年生時点では、男性 の93.0%、女性の882%が結婚することを希望 しており、男性の方が結婚への意欲が高い傾向 が見られる。しかし、高卒5年目になると、男 性では69.0%と大幅な減少傾向が見られる一

5一 方、女性では82.6%と若干の減少に留まり、女 性の結婚アスピレーションが男性に比べ、10ポ イント強高い傾向が見られ、男女で逆転現象が 起きている。

 2時点での結婚アスピレーションの変化につ いてみれば(図4)、高校3年生時点で結婚を 希望している者のうち男性では70.9%(男性全 体の66.0%)、女性では86.5%(女性全体の75.6

%)が、高卒5年目においても結婚を希望して いる。一方高校3年生時点で結婚を希望してい ない者では、男性53.8%(同3.7%)、女性50.0

%(同6.3%)と約半数が、高卒5年目におい ても結婚を希望していない。

 一方、変化した者について見ると、「結婚希望」

から「結婚非希望」へ変化した者は、男性29.1

%(同27.1%)、女性13.5%(同11.8%)、「結婚 非希望」から「結婚希望」へ変化した者は、男 性46.2%(同32%)、女性50.0%(同6.3%)で あった。全体からみれば、男女ともに結婚を希 望しなくなった者の方が多い傾向が見られる。

結婚意思を持つ未婚者は多いものの、結婚を先 延しする傾向が若干増加しているという調査結 果も出ているが(国立社会保障・人口問題研究 所 2006)、本稿の分析対象者においても結婚 への意欲がなくなったというよりも、年齢を経

高校3年生時点

1

結婚希望(n・237} 86.5 ・35}

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高卒5年め時点

60% 80% 100%

E結婚希望[結婚非希望 図4 結婚アスピレーションの変化

(6)

6一

学歴

明星大学社会学研究紀要

高校3年生時点:結婚希望 No.31

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大学以上(n=100}

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大学以外(n=57)

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[結婚希望 ξ結婚非希望

100%

高卒5年め時点

図5 学歴別高校3年生時点で結婚を希望していた者の結婚アスピレーションの変化

ることによって遠い先のこと(夢)から近い未 来の現実のものとして意識し始めることによ り、先延ばしの傾向が表れたものと推測される。

 結婚アスピレーションに関して男女とも類似 する変化傾向を示していたが、学歴や現在の地 位によって意識の変化に違いが見られるのだろ うか。ここでは、高校3年生時点で結婚を希望 していた者のみに注目し、高卒5年目にどのよ

現在の地位

うに変化しているのか、あるいは変化していな いのかを見ていこう。

 学歴別に見ると(図5)、男女では逆の傾向 が見られる。男性の場合にはそれほど大きな差 ではないものの、「大学以上」の者よりも「大 学以外」の者の方が、「結婚希望」で変化のな い者が多い。一方女性の場合にはその逆で「大 学以上」の者で、「結婚希望」で変化のない者

高校3年生時点:結婚希望

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正社員(nニ138}

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0% 20%      40%

高卒5年め時点

60% 80% 100%

E結婚希望 r結婚非希望

図6 地位別高校3年生時点で結婚を希望していた者の結婚アスピレーションの変化

(7)

March 2011 若者の就業と結婚に関する意識 が多い。

 次に現在の地位別に結婚アスピレーションの 変化を見てみると(図6)、男女とも「正社員」

に比べ「非正社員」は、高校3年生時点で結婚 を希望しているものの、高卒5年目で非希望へ 変化した者が多い。就業状況、およびそれによ る経済状況が、結婚への意欲に影響を及ぼして いる可能性が示唆される。また、学生の場合に は、男女とも8割強が「結婚希望」のままであ るが、男性の場合には、「正社員」や「非正社員」

など就業している者に比べ変化しない者が多い のに対し、女性の場合には、働いている者より も少なく、性別によって異なる意味をもってい る可能性が示唆される。

4.3.女性のライフデザインに関する意識の     変化

 女性のライフデザインについての2時点の変 化を見てみよう(図7)。注10にもあるように、

男性には配偶者になる人への希望、女性には自

7一 分自身の希望をたずねている。興味深い点は、

高校3年生時点で「継続」や「中断」としてい た者では、男女で変化/無変化のパターンが類 似していることである。具体的には、「継続」

で変化のない者は半数強、「中断」で変化のな い者は6割程度、「継続」から「中断」へと変 化した者は3割強、そして、「中断」から「継続」

へと変化した者は3割弱であり、変化のない者 の方が多数を占めている。その一方で、高校3 年生時点で「専業主婦」や「その他」としてい た者では、変化/無変化のパターンに違いがみ られる。「専業主婦」について見れば、両時点 で変化していない者は、女性では3割弱なのに 対し、男性では2割弱にとどまっている。また、

女性の場合は変化した者の多くは、「中断」希 望へと変化しており、「専業主婦」になることは、

現実的に考えれば、難しいと判断した結果と言 えるのかもしれない。このことは男性にも同様 のことが言えそうで、「専業主婦→継続」25.8%、

「専業主婦→中断」35.5%となっており、妻を

高校3年生時点

継続(n・100)        ⊇…  r ⊇一…………一・「一一    r     i

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中断{n=134}

    

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中断(nニ74)

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その他(n=37) 1 _⊇_」「⊇ 顯 32.4

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100%

高卒5年め時点  亡継続 tt中断 ε専業主婦  その他 図7 女性のライフデザインに関する意識の変化(男:dfrg,ρ=.OOO女:df=9,ρ=.000)

(8)

8一 明星大学社会学研究紀要

専業主婦として養っていくことは現実的には難 しいと考えるようになった可能性が示唆され

る。

 男性の場合、将来の結婚相手に希望するキャ リァデザインということで、20歳を若干過ぎた 時点ではかなり不確定な要素が多いだろう。そ れに対し,女性の場合は、ある程度の理想を含 んだものとは言え自分自身のことであり、現実 的に描く将来像として考えることができるだろ う。そこで、以下では女性のみに焦点をあて、

学歴や現在の地位との関連を見ていくことにす

る。

 まず、学歴別にライフデザインの変化を見る と(図8)、高校3年生時点で「中断」を希望 していた者では、高卒5年目でも「中断」を希 望している者が6割前後と多数を占め、「中断

→継続」へと変化した者が4分の1程度いるな ど、両者に似たような分布が見られる。それに 対し、「継続」を希望していた者では違った傾 向が見られる。高卒5年目でも引き続き「継続」

を希望している者が、「大学以上」では66.7%

No.31

であるのに対し、「大学以外」では41.4%と25 ポイント強の開きがあり、「大学以上」の者で 継続一貫傾向が強い。その一方で、「継続→中断」

と変化した者は「大学以上」で262%、「大学 以外」では39.7%と、「大学以外」の方が10ポ イントほど多く、就労意欲が低減する者が多い 傾向が見られる。

 続いて、「正社員」と「非正社員」の者につ いて地位別にライフデザインの変化を見ると

(図9)、高校3年生時点で「継続」、「中断」を 希望していて変化のない者、すなわち「継続→

継続」(「正社員」55.9%、「非正社員」45.8%)

や「中断→中断」(順に64.5%、48.5%)は、「正 社員」の方が多い傾向が見られる。「中断→継続」

へと変化した者は両者とも4分の1程度で違い は見られない。しかし、「継続→中断」へと変 化した者は、「正社員」の場合27.1%であるの

に対し、「非正社員」の場合には41.7%と10ポ イント以上の開きがある。現在の地位が不安定 であることにより、仕事を継続していくという 将来像を描きにくい状況におかれていると考え

学歴 高校3年生時点 女性のみ

継続{n=42}

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大学以上

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(n=115)

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大学以外

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(9)

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られる(「非正社員」の場合、ケース数が少な いので、結果の解釈には一定の留保が必要では

あるが)。

4.4.ライフデザインとキャリアデザインの     関係

 現代社会においても女性が働く(働き続ける)

ことに関して、男性に比べさまざまな困難が見 られる。どのような人生を送りたいか、そして、

その人生において「働く」ということをどのよ ライフデザイン

 継続〔n=101}

うに位置づけるかということは密接に関連して いると考えられる。そこで、最後に各時点にお けるライフデザインとキャリアデザインの関連 を検討する13。図10が高校3年生時点、図11が 高卒5年目時点での関連を示したものである。

両時点を比較するとライフデザインで「継続」

と「専業主婦」を希望している者では、極めて 類似した傾向を示しているのに対し、「中断」

を希望している者では、キャリアデザインの分 布が大きく異なっていることが一見してわか

中断(nニ138)

専業主婦〔n=29)

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キャリアデザイン  図10

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(10)

一 10一 明星大学社会学研究紀要 No.31

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女性のみ

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キャリアデザイン  図11

40% 60% 80% 100%

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る。高校3年生時点では、「正社員」を希望す る者が74.6%と多数を占め、「非正社員」が5.8%、

「専業主婦」が12.3%であるのに対し、高卒5 年目時点では「正社員」を希望する者が最も多 いのは同様だが、48.4%に留まり、「非正社員」

が19.9%、「専業主婦」が20.5%となっている。

また、全般的にキャリアデザインの分布を改め て確認すると、どのライフデザインを描いてい ても、高校3年時点にくらべ高卒5年目では、

「正社員」を希望する者が減少し、「非正社員」、

「専業主婦」を希望する者が増加している。こ の違い(変化)はどのような要因によるものな のだろうか。キャリアデザインは30歳時点での 希望をたずねている。年齢が30歳に近付いたこ と、実際に社会に出て仕事を経験したことなど が影響を与え、理想ではなく、より現実的に予 想できるキャリアデザインと解釈できるのかも しれない。その変化は、就労意欲が増加する方 向ではなく、減少する方向である。女性の場合、

働くことをめぐるさまざまな困難を実際に経験 する前に、その時々で生じるであろう葛藤やス

トレスと折り合いをつけるために、それらが少 ない方へおりてしまっている可能性が示唆され

る。

5.考察

 本稿では、パネル調査データを用いて、キャ リアデザイン、結婚アスピレーション、ライフ デザインについて、高校3年生時点と高卒5年 目時点での変化に焦点をあて、分析を行ってき た。分析の結果、以下の点が明らかになった。

 第1に、キャリアデザインの変化は男女で大 きく異なる様相を示していた。男性の場合、変 化はあまり見られず、学歴や現在の地位の影響

も見られなかった。しかし、女性の場合、年齢 が変化するとともに、将来の時点での就労意欲 に減退傾向が見られ、それは、低学歴、現在の 地位が不安定な者ほど影響を受けていた。

 第2に、結婚アスピレーションの変化では、

男女ともに結婚を希望しなくなった者の方が多 く、とくに、現在の地位が不安定な者ほど、結 婚への意欲が減退している傾向が見られた。

 第3に、ライフデザインの変化では、男女で 変化/無変化のパターンが類似している傾向も 見られ、理想から現実的に実現しそうな予想へ

と変化している可能性が示唆された。女性の場 合、高学歴、現在の地位が安定していることに よって、2時点において就業継続希望を維持し やすい傾向が見られた。

(11)

March 2011 若者の就業と結婚に関する意識  第4に、女性のライフデザインとキャリァデ

ザインの関連の変化は、どのライフデザインを 描いていても、就労意欲が減退する傾向が見ら れ、働くことをめぐるさまざまな困難を実際に 経験する前に、あきらめている可能性が示唆さ

れた。

 以上のように、全体的には、男性の場合、高 卒5年目では大きな変化は見られなかったが、

女性の場合、高卒5年目でも既にさまざまな変 化が見られた。年齢を重ね、職業上のキャリア を積み、家族(配偶者や子ども)を持った時に、

一 11一 どのような変化が見られるのか、あるいは、変 化は見られないのか、非常に興味深いところで ある。個人のさまざまな意識の変化や形成過程 はパネル調査によって個人を追跡していく方法 でしか明らかにならない。調査の継続が望まれ

る。

 また、本稿では、調査データのサンプルの大 きさの制約により、意識の変化の規定要因など 詳細な分析ができなかった。パネル調査データ を分析するため手法を用いるなどしてある程度 可能な分析も考えられる。今後の課題としたい。

[謝辞]

 本研究は科学研究費補助金基盤研究(S)

(18103003,22223005)、厚生労働科学研究費補助 金政策科学推進事業(H16一政策一〇18)による 研究成果の一部である。また、調査の実施にあた

っては、東京大学社会科学研究所研究資金、株式 会社アウトソーシングからの奨学寄付金を受け た。記して、深く感謝申し上げます。

[文献]

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 ン・ライフデザインの変化一高校在学時から高  卒3年目への変化一』.

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 ミネルヴァ書房.

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三輪哲,2007,「現代若年層におけるキャリア意  識の変化 高校在学時から卒業2年後にかけて  のパネルデータ分析」佐藤博樹編「厚生労働科  学研究費補助金政策科学推進事業若年者の就  業行動・意識と少子高齢社会の関連に関する実  証分析 平成16〜18年度総合研究報告書 平成

(12)

12一 明星大学社会学研究紀要

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 しているのか一JGSSとNFRJによる意識構造・

 規定要因の比較一」朝井友紀子・佐藤博樹・田  中慶子・筒井淳也・中村真由美・永井暁子・水  落正明・三輪哲編『家族形成に関する実証研究』

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11」田昌弘編著,2010,『「婚活」現象の社会学一日  本の配偶者選択のいま』東洋経済新報社.

谷田川ルミ,2010,「若年女性の家庭志向は強ま  っているのか?一女子学生のライフコース展望  における10年間の変化一」『年報社会学論集』

 23:200−211.

[注]

1 本項は2010年9月18日〜19日に関西大学で開 催された日本教育社会学会第62回大会において 報告した「東大社研パネル調査(JLPS)に見  る若年者の教育・就業・家族形成」(石田浩(東

京大学)、佐藤香(東京大学)、大島真夫(東京 大学)、三輪哲(東北大学)、茂木暁(東京大学)

 との共同発表)の原稿をもとに加筆・修正した  ものである。

2 「どのような進路分化を希望するか」という 意識を扱う研究など。

3 詳しくは、元治(2008)を参照のこと。

4 一方で、結婚アスピレーションに限定した分

No.31

析ではないが、朝井ほか(2007)では、家族に ついてのさまざまな意識を分析し、若年女性が

「必ずしも保守化しているわけではない」とい  う結果もみられる。

5 図には、ケース数の少ない場合も、参考のた め提示する。

6 「高校生調査」は、進学率と無業率において 特徴の異なる4県を抽出し、4県から無作為抽 出した全日制高校のうち調査協力の得られた  101校の高校3年生男女を対象に実施された(回

収数7,563人、回収率69.1%)。

7 追跡調査は、高校生調査の回答者のうち、追 跡調査に協力することを了解した2,057人の卒 業生に対して郵送で実施されている。第4回追  跡調査(第5ウエーブ:「高卒5年目調査」)は、

 郵送とインターネットにより528名(回収率 25.7%)から調査票を回収した。

8 「30歳ごろになったときに、どのような働き  方をしていたいと思いますか。」という質問に  対し、「1.正社員として働きたい」、「2.自 分で事業を起こしたい」、「3.親の家業をつぎ  たい」、「4.独立して一人で仕事をしたい」、「5.

 アルバイトやパートで働きたい」、「6.専業主  婦・主夫になりたい」、「7.その他」、「8.わ  からない」の回答選択肢が設定されている。2  時点の回答それぞれについて、1〜4を「正社  員」、5を「非正社員」、6を「専業主婦」、そ  れ以外を「その他」に分類した。本稿と同じ(使  用した調査時点は異なるが)データを分析した  三輪(2007)では、同じ変数を「キャリア意識」

 と称している。

9 高校生調査では、何歳ごろになったときにし  ていたいかをたずねる形式(回答カテゴリーあ  り)で質問している。「そうするつもりはない」

 と回答した者を「結婚非希望」、それ以外の年  齢カテゴリーに具体的に回答した者を「結婚希  望」に分類した。高卒5年目調査では「結婚に

参照

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