学 位 論 文 の 要 旨
所 属 三重大学医学部(眼科学) 氏 名 杉本 浩多
主論文の題名
Supraciliochoroidal Fluid at an Early Stage After Trabeculectomy 隅角線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)術後早期の毛様体上腔液
主論文の要旨
緑内障の手術療法としては、近年マイトマイシンC(MMC)などの線維芽細胞増殖阻害剤を併用したトラベ クレクトミーが広く行なわれているが、この手術には浅前房、過剰濾過、脈絡膜剥離など様々な術後合併 症を引き起こす可能性がある。特に毛様体上腔液の貯留と低眼圧の持続が眼底黄斑部に襞壁を形成し、術 後視力低下を引き起こすことが問題となる。しかし、毛様体は本来光学的に観察が困難な部位であり、術 後の低眼圧の原因がなかなか解明できない場合も多い。近年、高周波の超音波によって、詳細に毛様体を 観察することが可能となってきた。また、術後の低眼圧は極端な低眼圧によって視力低下を引き起こす事 態にまで進行しなければ、特に末期の緑内障の場合は術後眼圧の目標となる。低眼圧の機序が解明されれ ば、トラベクレクトミーの術式の改善を図る大きなきっかけとなると考えられた。そこで我々は、術後十 分な眼圧下降が得られ、検眼鏡的に脈絡膜剥離を認めない症例において、観察困難な毛様体を超音波生体 顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)を用いることによって観察し、毛様体上腔液貯留の状態と経過を 観察して、トラベクレクトミーの影響を検討した。トラベクレクトミー術後早期、2週間以内にUBM検査を 施行した。33%で明らかな検眼鏡的脈絡膜剥離や濾過胞からの過剰濾過がないにもかかわらず、毛様体上腔 液が存在し、トラベクレクトミーの眼圧下降機序として結膜濾過胞への房水誘導の他に、毛様体上腔 へ の 房 水 流 出 も関与していることが示された。また、毛様体上腔 液が存在した症例と存在しなかった症例の UBM検査時の眼圧が前者で有意に低く、特に術後眼圧が低い場合には、より毛様体上腔 液の発生頻度が高い ことと関連していた。毛様体上腔 液の原因として、手術時の医原性毛様体解離が考えられるとの報告があ る。さらにサル眼を用いた実験的毛様体脈絡膜剥離や毛様体解離モデルにおいても、毛様体脈絡膜剥離が 存在しても房水産生は影響を受けず、ぶどう膜強膜流出路の増加によって低眼圧が生じるとの報告もある。
これらのことから、トラベクレクトミーの手術侵襲により毛様体筋束の流出抵抗が低下し、前房から毛様 (注)2,000字以内にまとめて記入すること。
体強膜間隙への房水流出が増加して、その結果、低眼圧となり、その時の眼圧が毛様体静脈圧よりも低い ために毛様体上腔 に液貯留を来たしたという機序が想定された。本結果はトラベクレクトミーの改善に貴 重な情報を提供すると考えられる。