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三橋 泰仁 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 みはし やすひと

三橋 泰仁

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第

1707

学位授与の日付

平成

30

3

15

学位授与の要件

学位規則第

4

条第

1

項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

C-MYC and Its Main Ubiquitin Ligase, FBXW7, Influence Cell Proliferation and Prognosis in Adult T-cell Leukemia/Lymphoma

(成人 T 細胞性白血病/リンパ腫における C-MYC およびそのユビ キチンリガーゼである FBXW7 の発現と予後との関係)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

竹下 盛重

(副 査) 福岡大学 教授

白澤 専二

福岡大学 教授

鍋島 一樹

福岡大学 准教授

田中 俊裕

内 容 の 要 旨

【目的】

癌遺伝子である C-MYC は B 細胞性リンパ腫や様々な癌腫において変異や発現が報告さ れている。近年では、B 細胞性リンパ腫(びまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫)において C-MYC が予後不良因子であることが報告されている。しかしながら、これまでに T 細胞性 リンパ腫における C-MYC の発現と予後に関する報告はない。

T 細胞性リンパ腫の一つである成人 T 細胞性白血病/リンパ腫(以下、ATLL)には 4 つの 臨床病型(くすぶり型、慢性型、リンパ腫型、急性型)が存在し、病型により予後が異な る。くすぶり型と慢性型は慢性の経過をとり比較的予後良好であるが、リンパ腫型と急性 型は極めて不良である。

今回、我々は B 細胞性リンパ腫と同様に ATLL においても C-MYC が予後不良因子となり 得るのかについて検討を行った。

【対象と方法】

今回我々は、137 例の ATLL を対象に、4 病型間での C-MYC とそのユビキチン化に関わ

る FBXW7 の発現を蛋白レベル(免疫組織化学染色法:IHC) 、mRNA レベル(Real-time PCR

法)で測定し検討した。さらに C-MYC や FBXW7 の発現と予後との関係について解析を行

った。また FISH 法を用いて遺伝子レベルで C-MYC の発現をみた。

(2)

【結果】

高 C-MYC IHC(≧50%)例は、リンパ腫型と急性型ではそれぞれ 78.7%(48/61 例)、

64.9%(24/37 例)であるのに対し、くすぶり型(3.6%)と慢性型(9.1%)では有意に低か った( P <0.01) 。また高 C-MYC mRNA(≧7.5)例は、リンパ腫型・急性型に比べてくすぶ り型において有意に低かった( P <0.01)。また、FBXW7 の発現は蛋白および mRNA レベル両 方において、リンパ腫型に対してくすぶり型で有意に高かった( P <0.01)。予後解析におい て、高 C-MYC IHC、高 C-MYC mRNA、低 FBXW7 IHC(<50%) 、低 FBXW7 mRNA(<0.17)例は 有意に予後不良であった(それぞれ、 P =0.0004、 P =0.033、 P =0.0006、 P =0.016)。

【結論】

ATLL において、C-MYC や FBXW7 の発現は、臨床病型と有意な関連があるとともに、予 後を推定する上で有用であると考えられた。

審査の結果の要旨

本論文は、成人 T 細胞性白血病/リンパ腫(以下、ATLL)の組織標本を対象として細胞 増殖にかかわる C-MYC とその分解にかかわる FBXW7 の発現と予後をみた初めての論文であ る。C-MYC は、B 細胞性リンパ腫のびまん性大細胞 B 細胞性リンパ腫(以下、DLBCL)にお いて独立予後因子として報告されており、現在では診断する際に調べる必要があると考え られている。今回の研究では、C-MYC 高値と FBXW7 低値は予後不良因子であることが証明 され、ATLL を診断する際にこれらを検索することで患者の予後を推測するのに有用であ ると考えられた。また、C-MYC の機能を抑制し抗腫瘍効果の示す薬剤による ATLL の新たな 治療法の可能性についても言及されている。

1.斬新さ

これまで B 細胞性リンパ腫や様々な癌腫において C-MYC が予後因子として報告されてい る。しかし ATLL を対象とした C-MYC の検討は未だなく、本論文が最初の報告である。

ATLL は非常に予後不良な疾患であることが知られているが、4 つの臨床病型(くすぶり

型、慢性型、リンパ腫型、急性型)があり、くすぶり型と慢性型は比較的予後良好、リン

パ腫型と急性型は極めて予後不良である。このように同一の疾患でありなが臨床経過が全

く異なることから、この病型間に C-MYC や FBXW7 など細胞増殖経路に関わる因子に着目し

差異を確認されている。さらに ATLL はこれまでにいくつかの予後因子が報告されている

が、病理組織学的な予後因子の報告はない。今回、病理組織学的に C-MYC や FBXW7 が ATLL

の予後因子であるという初めての報告である。

(3)

2.重要性

ATLL は極めて予後不良な疾患であり、治療抵抗性である。予後の決定には下山の臨床病 型分類が非常に重要なことは知られており、今回の研究でも下山の分類に準ずる結果であ った。データとしては下山分類を超えるデータではないが、ATLL の腫瘍増殖においても C- MYC や FBXW7 等の細胞増殖に関わる因子であり、予後をみる上において重要であることが 証明できた。他の T/NK 細胞リンパ腫のおける C-MYC や FBXW7 の位置づけの指標になると 考えられる。これらの C-MYC や FBXW7 等を標的対象とした新たな epigenetic な抗がん治 療が最近は注目されており、治療抵抗性といわれている ATLL においてもこれらの新たな 治療が可能となるかもしれない、という事が非常に意義のある報告である。

3.研究方法の正確性

本研究のプロトコールは福岡大学病院研究倫理審査委員会 (15-1-11)で承認されてい る。

C-MYC と FBXW7 の検出には、免疫組織化学染色(IHC) 、real time PCR 法を用いて蛋白レ ベル、 mRNA レベルで、 そして C-MYC についてはさらに fluorescence in situ hybridization

(FISH)を行い、染色体レベルでも評価しており、研究方法の正確性は十分あると考える。

統計学的には、χ2、Steel-Dwass、Spearman、Kaplan-Meier 法等を用い群間比較、予後解 析を行っている。

4.表現の明瞭性

本論文は英語論文であり、すでに American Journal of Surgical Pathology に掲載さ えており、研究背景、目的、結果、考察を簡潔かつ明瞭に記載され十分に評価されている。

5.主な質疑応答

Q:考察に C-MYC のアセチル化と記載されていたがどのような意味か?

A:HTLV1p30

蛋白という分子があり、これは HTLV1 の潜伏感染や感染細胞の増殖などに 関与しているといわれている。この p30

蛋白と C-MYC が協力することで機能を発揮 し、この際に C-MYC のアセチル化が必要であると引用文献では記載がされていた。

Q:引用文献を参考に書かれていたと思われるが、ATLL において FBXW7 の mutation が癌遺 伝子として働くようになるその仕組みは?

A:FBXW7 は癌抑制遺伝子である。しかし FBXW7 に mutation をきたすことで癌抑制遺伝子

として正常に働くことができなくなり、C-MYC などの癌遺伝子、細胞増殖因子を抑制

できなくなり、その結果として癌遺伝子のように振る舞うという表現をされていると

考えている。

(4)

Q:くすぶり型や慢性型の中に FBXW7 が異常に高値な症例はなかったか?もしあればそれ は何を意味していると考えますか?

A:高値な症例は存在した。これは C-MYC を抑制し、細胞増殖を stop させているのではな いかと考える。

→質問者より、癌幹細胞では FBXW7 が非常に発現している。そのため FBXW7 高値にな っている細胞が ATLL の癌幹細胞なのではないかと助言があった。

Q:C-MYC の expression の制御について説明を。また FISH で C-MYC のシグナルが 3 個以 上を amplification とカウントするのは一般的なのか?

A:これまでの B 細胞性リンパ腫などによる C-MYC の報告では、IHC と FISH の結果が相関 するという報告や相関せずという報告などさまざまである。B 細胞性リンパ腫では IHC と遺伝子 rearrangement を検索することが推奨されている。今回の結果では、ATLL に おいては C-MYC IHC と FISH の相関係数は 0.3 と弱い相関を認める程度で、あまり染 色体の増幅との関連性はない可能性がある。

また、 FISH では一般的に 2N の場合、3、 4 個は duplication で 5 個以上を amplification とする。ATLL では C-MYC が FISH で 5 個以上の症例は少なく、ほとんどが duplication であった。

→B 細胞性リンパ腫と T 細胞性リンパ腫で C-MYC の expression の発現経路が異なる のではないか。T 細胞性リンパ腫では、C-MYC は genetic ではなく epigenetic に働い ている可能性や FBXW7 がより調整的に働いているのかもしれない。この点に着目して 検討するのも非常に面白いと思うと助言を頂いた。

Q:くすぶり型の生存曲線が最終的にほぼ横ばいになっているがこれは?

A:カルテから生存しているが、その後の予後が追えておらず、生存打ち切りとなってい る。

→くすぶり型の中で C-MYC の cut-off 値を変えて予後を解析することで、indolent か ら aggressive ATLL への移行例を抽出できると非常に面白いと助言を頂いた。

Q:C-MYC と MIB1 の使い分けは?

A:今回の結果では C-MYC と MIB1 の間には強い相関を認めた。しかしながら必ずしも C- MYC 高値だからといって MIB1 高値となるわけではなく。MIB1 は細胞の G0 期を除く すべての周期をみるものであり、C-MYC は主に G1 期に作用する転写因子である。

Q:C-MYC や FBXW7 が関係していることをより証明するには、今後どのようなことをやって いけばいいと思いますか?

A:in vitro での研究では可能と思われる。

→治療薬などを用いた研究などを行い、その前後の値をみていく方法があると助言を

(5)

頂いた。

その他、いくつかの質問があったが、いずれに対しても的確に応答した。またこの研究の さらなる進展や新たな検討項目などに対する非常に興味深い質問、ご助言があった。

以上の審査結果により、本論文は斬新さ、重要性、的確な質疑応答により学位論文に値す

ると評価された。

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