新体操選手の下肢筋形態と筋出力発揮特性
The characteristics of muscle structure and force output in male rhythmic gymnastics players
山 田 小太郎*,朝 倉 正 昭**,田 中 重 陽***
熊 川 大 介****,角 田 直 也*****
Kotaro YAMADA*,Masaaki ASAKURA**,Shigeharu TANAKA***
Daisuke KUMAGAWA**** and Naoya TSUNODA*****
ABSTRACT
The purpose of this study was clarifying the characteristic muscle structure and force output production in male rhythmic gymnastics players. Nine teen male rhythmic gymnastics players of university students were participated as subjects.
Muscle thickness for anterior and lateral and posterior in thigh was determined B-mode ultrasonic method. Maximal voluntary peak torque with isokinetic and isometric of the knee flexor and extensor muscles were measured by BIODEX SystemⅢ.
Bilateral difference of the muscle thickness in thigh muscle and also, maximal muscle force outputs were not significant differed in all trials with isometric and isotonic actions. Force-Velocity relation was observed from 0deg/sec to 180deg/sec in both knee extensors.
From these results it was considered that male rhythmic gymnastic exercise may require muscle activities in both legs.
Key wards; male Muscle thickness, rhythmic gymnastics players, BIODEX SystemⅢ.
は じ め に
これまでに筋出力発揮特性については多くの研 究がなされてきた
4)6)9)また、特定競技種目にお ける長期にわたるトレーニングの継続は各種目に
よってトレーニング内容や身体の活動様式が異な ることから、各種目特有の筋形態や筋機能を示す ことが考えられる。
過去の先行研究において競技種目の違いにより 筋の発達している部位が異なることが指摘されて
* 国士舘大学体育学部非常勤講師(Lecturer Faculty of Physical Education, Kokushikan University)
** 国士舘大学体育学部(Faculty of Physical Education, Kokushikan University)
*** 国士舘大学体育学部研究助手(Research Assistant Faculty of Physical Education, Kokushikan University)
**** 国士舘大学大学院スポーツ・システム研究科助手(Assistant of Graduate School of Sport System, Kokushikan University)
***** 国士舘大学大学院スポーツ・システム研究科(Faculty of Graduate School of Sport System, Kokushikan University)
AND SPORT SCIENCE VOL.26, 15-20, 2007
原 著
いる
5)2)。また、筋力は筋の横断面積に比例し肥 大することも報告されている
3)7)。これまで様々 なスポーツ種目の選手を対象とした研究は多くな されてきたが、男子新体操選手を対象とした報告 はなされていない。
そこで、本研究においては男子新体操選手を被 検者とし、超音波測定装置を用いて下肢における 大腿前部、外部、後部の筋厚と等速性筋力測定装 置を用い膝関節の屈曲、伸展運動における等尺性 及び等速性による筋力を測定し、新体操競技にお ける下肢の筋形態と機能特性について明らかにす ることを目的とした。
方 法
Ⅰ.被検者
本研究の被検者は、 大学男子新体操部 19 名で あった。被検者の中には全国大会で上位入賞の経 験をもつ者もいた。各被検者には測定に先立って 研究の目的及び測定方法を充分に説明し任意によ る測定の同意を得た。
被検者の年令と身体特性、経験年数は平均値と 標準偏差で表1に示した。全被検者とも競技年数 は4年以上であった。
Ⅱ.筋厚の測定
大腿部における筋厚の測定は超音波 B-mode法 による超音波診断測定装置(Echo Camera SSD- 650CL,ALOKA社製)を用いて行った。測定部 位は全被検者とも左右大腿長の50%の前側、外側、
後側の3部位を測定した。各部位における測定は 全被検者とも立位の状態で実施した。また、測定 時の超音波発信周波数は5MHzであった。
Ⅲ.筋力測定
1)測定姿勢及び測定装置
等尺性及び等速性による膝関節の伸展と屈曲時 の筋力測定はBIODEX SystemⅢ(Biodex社製)
を用い測定を行った。
測定姿勢としては各被検者とも、椅座位姿勢を とらせ、レバーアームに接続したアタッチメント の中央部を外果点に設定し、大腿部、体幹部を測 定椅子にシートベルトで固定した。重力補正は筋 力測定装置をコントロールしているコンピュータ ー に 内 蔵 さ れ て い る プ ロ グ ラ ム(Biodex Advance Software Ver.3.03)により行った。
2)等尺性最大筋力の測定
等尺性最大筋力の測定は屈曲動作時(以下 FLX)で 40deg 及び伸展動作時(以下 EXT)で 80deg にて測定を実施した。 各被検者とも FLX 及び EXT ともに8秒間の随意最大努力による筋 力発揮を3回行わせ、そのうち最も高い値を最大 トルク(PT)とした。
3)等速性最大筋力の測定
等速性最大筋力の測定は FLX 及び EXT とも 60deg/sec、120deg/sec、180deg/sec の角速 度にて実施した。各被検者とも十分なウォーミン グアップを行わせ、モニター内の動作開始合図に 合わせ最大努力にて3回の膝伸展動作を実施し た。また、測定に際し筋疲労が測定値に影響を及
Table.1 Physical Characteristics and Training year of Subjects
ぼさぬよう、各測定間において十分な休息を与え た。 各速度とも3回の実施の中で最も高い値を PT とし採用した。また、等速性に対する等尺性 の比率も算出した。更に屈伸比においても同様に 算出した。
Ⅳ.統計処理
測定した値は平均値及び標準偏差で示した。ま た、筋力測定において得られた PTの各運動速度 間における有意差検定は分散分析を用いて行い、
有意な差が認められた項目についてはpost-hoc測 定(Bonferoni)を実施した。左右差の検定につ いては対応のある t-testを行った。それぞれ危険 率5%以内を有意水準とした。
結 果
表2は、超音波法で測定した大腿前部、外部、
後部における筋厚を全被検者の平均値と標準偏差 を示したものである。大腿前部、外部、後部にお いて有意な左右差は認められなかった。先行研究 において
10)レスリング、水泳、長距離選手におけ る右足大腿部の筋厚値は、レスリングの選手が最 も高く大腿前部において 5.75 ± 0.65(cm) の値 を示した。また、水泳選手においては 4.49± 0.61
(cm)、 長距離選手においては 5.12 ± 0.49(cm)
の値を示した。本研究における新体操選手の値は 右大腿前部において 5.87 ± 0.51(cm) と先行研 究のレスリング選手よりも高い値を示した。一方、
大腿後部においてはレスリング選手が 7.10± 0.62
(cm)であったのに対して本研究の新体操選手は 6.69±0.45(cm)と低い値を示した。
次に等速性筋力における FLX 及び EXT の PT 値を角速度毎に表3に示した。右足 EXT は角速 度の増加に伴い筋力が低下する傾向が見られた。
本測定結果において最も高い値をしめしたのは 0deg/sec で 270.1 ± 44.8N/m であった。 また、
最も低い値は 180deg/sec における 142.5 ± 23.8 N/m であった。この結果から角測度の増加に伴 いPTが減少する関係が認められた。また0deg/
secと60deg/sec、120deg/sec、180deg/sec間 と60deg/secと120deg/sec、180deg/sec間に おいて有意な差が認められた(P<0.05)。しかし、
120deg/secから 180deg/sec間に有意な関係が 認められず、EXT において中速から高速での力 発揮は殆ど差が見られなかった。同様の傾向が左 足においても認められた。
右足 FLX において最も高い値を示したのは 0deg/sec で 105.6 ± 20.7N/m であった。 また、
最も低い値は120deg/secにおける84.7±17.3N/
mであった。角速度間に有意な差が認められたの は 左 右 と も 等 尺 性 0deg/sec と 120deg/sec、
Table.2 Comparisons of muscle thickness on Right and Left Thigh
180deg/sec 間で認められた(P<0.05)。 左足に おいても同様の傾向が認められた。また、伸展筋 の左右差について検討したところ、等尺性及び等 速性ともに有意な差は認められず、ほぼ同様の値 を示した。
次に等尺性に対する等速性の値を比率で示した
(図1)。EXT において角速度の増加に伴い比率 は低下する傾向が認められた。また FLX におい ては 120deg/sec までは EXT と同様の傾向が見 られたが、180deg/secにおいて再び上昇する傾 向が見られた。EXT及び FLXともに左右で著し い差は認められなかった。
次に伸屈比における左右差の検討を行った。右 足において最も高い値を示したのは 180deg/sec で 62.3 ± 8.1%であった。 また、 最も低い値は 0
deg/sec における 39.2 ± 5.3%であった。 また 0deg/secと60deg/sec、120deg/sec、180deg
/sec間と60deg/secと120deg/sec、180deg/
sec間において有意な差が認められた(P<0.05)。
左足について最も高い値を示したのは 180deg
/sec で 62.2 ± 11.2%であった。また、最も低い 値は 0deg/sec における 39.2 ± 5.8%であった。
ま た 0deg/sec と 60deg/sec、120deg/sec、
180deg/sec間と60deg/secと180deg/sec間と、
120deg/secと 180deg/sec間において有意な差 が認められた(P<0.05)。屈伸比についても絶対 値と変わらぬ傾向が認められた。各速度とも速度 の増加に伴い、その比率も増大することが認めら れた。本研究で得た結果は先行研究を支持する結 果であった
10)1)。
Table.3 Comparisons of Peak torque on knee joint in Men's RG players
Table.4 Flexion/Extension Peak torque on knee joint in Men's RG players
考 察
以上の結果から新体操競技においては宙返りや 徒手運動における動作の中で、屈曲する動きより 伸展する動作の方が多いため新体操選手の筋厚に おいて、このような結果が得られたものと考えら れる。また、先行研究
2)では野球選手の投球動作 が筋に与える影響を示しているが、本研究におい て測定された大腿各部位では左右における有意な 差が認められなかった。新体操は両足での動作が 多いため、それに伴うトレーニングによって筋の 形態は左右とも著しい差が認められなかったもの と考えられる。
これまで等速性による筋収縮速度と筋力に関す る研究では収縮速度増加に伴い筋力は低下する傾 向が見られることが報告されている。
8)本研究に おいても同様に力速度関係が確認されたことか ら、先行研究を支持する結果であった。
ま と め
本研究では男子新体操選手の筋力特性を明らか にしていくため、大学生男子 19名を被検者とし、
超音波診断測定装置及びBIODEX SystemⅡを使
用して下肢大腿部位における測定を行った。角速 度間における力―測度関係については有意な差が 認められたが、筋厚及び筋力について有意な左右 差を認めることができなかった。これらのことは 新体操の競技において左右どちらの足においても 均等な筋力が必要とされる動きが多いためこのよ うな結果が得られたと考えられるが、男子新体操 選手種目特有の筋の形態、筋出力発揮特性につい ては確認できなかった。
今後の課題として、本研究では男子新体操選手 のみを被検者としたため、他の競技種目選手との 筋形態を比較検討することができなかった。今後、
研究を進めていくにあたり男子新体操選手の身体 特性を明らかにするためにも、他種目間との比較 が必要であると考えられる。また、同じ新体操種 目であるが男性よりも柔軟能力が優れていると考 えられる女子新体操選手との性差についても比較 検討の必要もあると考える。
謝 辞
本稿を終えるにあたり、懇切なるご指導頂きま
した国士舘大学大学院スポーツ・システム研究科
角田直也教授をはじめ、朝倉正昭教授、田中重陽
Fig.1 Extension & Flexion研究助手、熊川大介助手に実験及び論文作成に対 する貴重なご指摘、 ご指導を深く感謝いたしま す。
本研究の実施にあたり、被検者として多大なご 協力を頂いた、国士舘大学新体操部男子の皆様に 心から感謝申し上げます。
参考文献
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ツ競技の種目別に見た筋力発揮特性について−大 腿四頭筋の伸張性筋活動と短縮性筋活動 トレー ニング科学 4:84-91, 1992
7) 角田直也 金久博昭 福永哲夫 近藤正勝 池川 繁樹:大腿四頭筋断面積における各種競技選手の 特性 体力科学 35(4):192-199 1986
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9) 福永哲夫:身体運動における筋収縮のバイオメカ ニクス 体育学研究 42:337-348, 1998
10) 角田直也 松本高明 滝山将剛 西山一行 中野 雅之:筋形態と筋出力特性に及ぼすスポーツ競技 種目特性The Annual Reports of Health Physical Education and Sport Science Vol.14 47-52, 1995