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 4.イギリス法における法曹倫理上の守秘義務

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(1)

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶

手 賀   寛

︵六.英米法における弁護士の秘密保持︶

 4.イギリス法における法曹倫理上の守秘義務

 ︵一︶ソリシタ行為規範       ヘ    イギリス︵以下︑イングランド及びウェールズを指すものとする︶の弁護士制度がバリスタとソリシタに二分

  されるのは周知の通りである︒顧客から直接に業務を依頼されるのはソリシタであるため︑弁護士と依頼者との

  関係に着目して守秘義務について論ずる本稿では︑ソリシタについて論じてゆくこととしたい︒検討の中心は弁

  護士依頼者間の秘匿特権にあるが︑その前提として︑アメリカ法と同様に︑ソリシタの法曹倫理上の義務として

  の守秘義務についても概観しておこう︒

   ソリシタについて倫理規範を定めるのは︑ソリシタ規制委員会︵白りo宮ぎ易問①σ︒巳註o白﹀已日o巳×以下o力男﹀と略

  す︶の定めるソリシタ行為規範︵白りO=0詳O︹o力︑ 否O△O O咋 ∩︸OO△已O﹇︶である︵末尾の資料五.参照︶︒ω男﹀は二〇〇七

   弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二二七

(2)

二二八

年一月︑前身の冨乞o︒o巳6q国ooq巳昌自U︒o胃△より名称を変更したもので︑イングランド及びウェールズのソリシ

タ一〇万人以上を統制している︒専門職たるソリシタに対する社会的信頼を確保すること︑及び︑法的サービス

に対する社会的利益を守り消費者を保護することを目的として︑ソリシタの資格や業務に関する規範の制定やソ        ︵即︶ リシタの活動の監視を行っている機関である︒ソリシタ行為規範も︑この活動の一環として二〇〇七年三月に

制定されたものであるが︑後述の二〇〇七年法的サービス法の成立を受け︑既に二〇〇九年三月に各条項︵守秘

義務及び開示に関する第四条を含む︶の改正が行われている︒       ︵皿︶  なお︑ソリシタ行為規範に付されているωカ﹀の指針によれば︑同四条は二〇〇五年に白りo浮ぎ﹃︑ψ︒㊥轟&8      輌︶ 国巨o︒︒戸㊤㊤Oに追加された規範︵一六E条︶を引き継いだものであり︑ソリシタの守秘義務について明文で定め

られたのはこの二〇〇五年の改正がはじめてであったとのことで︑ごく最近まで︑ソリシタの法曹倫理上の守秘

義務に関する明文の規範は存在しなかったこととなる︒もっともこれは︑ソリシタの守秘義務が認知されていな

かったというわけではなく︑判例や冨乞白︒8芭ぺの指針においては︑守秘義務の存在が以前より認識されていた       ︵鴇︶ とのことである︒

︵二︶ソリシタの秘密保持義務

 ソリシタ行為規範の定めるソリシタの秘密保持義務は︑概略以下の通りである︒①ソリシタ及びその所属事務

所は︑依頼者︵及び依頼者であった者︶に関する事柄について︑機密を保持しなければならない︵行為規範四.

〇一条︶︒②例外として︑依頼者自身が要求し︑または許可した場合には︑開示が許される︵同四.〇一条︶︒③

さらに︑ソリシタは依頼者に対して事件に関する重要な情報を原則として全て開示する義務があるが︑秘密保持

義務は︑この開示義務に優先する︵同四.〇二条︵a︶︶︒

(3)

 さらに︑行為規範は︑ソリシタの活動によって依頼者︵または依頼者であった者︶の機密情報が侵害される危

険が生じうる場合には︑機密情報の主体である依頼人と現在の依頼人の双方からインフォームド・コンセントが

得られるなど一定の場合を除いては︑そのような活動をなしえないと定め︑間接的にも依頼者の秘密を保護しよ

うとしている︵同四.〇三条︶︒これらソリシタに課される依頼者の秘密保持のための義務は︑白力力﹀自身であって

もこれを放棄することはできない︵同四.〇六条︶︒ソリシタ行為規範の定める秘密保持義務は︑先に検討した

≧W>の模範規則と比べ︑弁護士の秘密保持義務を依頼者との利益相反に対する規律の派生類型として捉えてい

る側面が強い︒模範規則が第一に現在の依頼者の秘密が︵他の依頼者も含めた︶第三者に漏れないこと自体を求

めるのに対し︑ソリシタ行為規範は︑典型的にはソリシタが現在の依頼者の利益のためにかつての依頼者につい

ての秘密を開示すべく求められる場合を想定し︑依頼者の秘密を他の依頼者のために︵ひいてはソリシタの職務

遂行のために︶利用しないよう求めている︑と評価できようか︒

5.イギリス法における弁護士依頼者間の秘匿特権        ︵14︶

(一

j↑oぬ巴︾含一8㊥ユ<苦oq⑦

 ︵1︶先に見たとおり︑アメリカ法における巨8∋o寸Ωδ葺勺民己oぬ①は︑エリザベス一世治下のイギリスにお

   いて生まれた弁護士依頼者間の秘匿特権を継受し︑発展を遂げたものであった︒この弁護士依頼者間の秘匿        ︵541︶   特権は︑母法たるイギリス法においても︑↑而ぬ巴﹀ユ己8勺5己ooQ①として判例法上承認されている︒また︑こ

   の↑Φぬ巴﹀△己8印宣冨oqoは︑訴訟準備のためになされたコミュニケーションについての秘匿特権

   ︵↑宣ぬ呂8㊥民昆6ぬ①︶とあわせて↑Φぬ巴印o甘︒・°・一8巴勺民註紹6を構成すると捉えられており︑後に触れる﹁主

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二二九

(4)

二三〇

 要な目的基準﹂のように︑↑宣鳴吟80勺民≦ゆぬ6に関して行われた議論が︑同じ↑6鵯一㊥8﹃8︒︒一〇昌巴勺民<︷一①oQ6

 であるということから↑oσQ巴︾ユ≦oΦ㊥﹁︷≦①ぬ6においても論じられることがあるのは︑アメリカ法の

 ﹀口o日6ぺわ一一〇暮㊥ユ<〜一6ΦQoとは異なった特徴である︒

︵2︶↑而σq巴︾ユ己8勺ユ≦oσQoは︑弁護士依頼者間でなされたコミュニケーションについて︑それが係属中の訴

 訟または予期される訴訟に関するものでなくても︑そのコミュニケーションを秘匿特権により強制的な開示        ︵燭︶      ︵即︶  から保護するものであり︑依頼者の権利として認められる︒その適用範囲は拡大傾向にあり︑本来的な意

 味での法律家︵バリスタ︑ソリシタ︑外国の弁護士等︶のみならず︑依頼者との関係で法律家と同等な助言

 機能を果たすその他の専門職とのコミュニケーションも︑ピ①ぬ巴﹀ユ≦8㊥ユ<︷冨ぬΦにより保護される︒例え

 ば︑弁理士︵田けo巳>oqΦ艮⇒巴①呂自民﹀㈹o口古︶︑認定不動産取引士︵い﹂8口ωoユOo妻而吉巨︒窪︶︑権限を与えら        ︵姻︶  れた調停人︵戸⊆巳﹈O口NOユ︑ ﹀ユ<OO①﹇Φ︶等とのコミュニケーションが保護の対象とされる︒しかし︑銀行員︑

 僧侶︑精神科医︑心理カウンセラー等との間で機密性あるコミュニケーションがなされても︑↑ooq巴﹀ユ<︷8        ︵941︶  ㊦民≦①oq①の保護対象とはならない︒

  ここで特に注目すべきは︑弁護士以外にも︑その助言が法律家と同等の機能を果たす専門職については︑

 い6ぬ巴﹀口己06犀3庁oq而が認められていることである︒この点は特に︑後述する二〇〇七年法的サービス法

 の成立によって︑多種の専門職による共同経営事務所の設立が許容されるようになったことと関連して︑秘

 匿特権の範囲に大きな影響を与えることとなっている︒

︵3︶このほかの面でも︑い①⑯巴﹀ユ己8勺﹃3一6ぬ①の適用は広範に認められている︒控訴院におけるリーディン        爾︶  グ.ケースとされるヒo巴書巴子≧二昆當は︑以下のように説示して↑①ぬ巴﹀ユ己9㊥民く箒ぬ而の保護が広範囲

(5)

 に及ぶべきであるとした︒

   ﹁多くのソリシタと依頼者との関係において⁝⁝種々の段階の大小様々な事項について助言が必要とされ︑

 また助言がなされることが適切である︒そこには︑ソリシタと依頼者との間のコミュニケーションと打合せ

 からなる連続体がある︒⁝⁝助言が求められまた要求に応じて与えられるために双方が十分に情報を与えら

 れた状態を保つことを目的とする連続体の一部としてソリシタまたは依頼者の一方から他方へ情報が渡され

 る限り︑秘匿特権は与えられる⁝⁝﹂

  また︑↑Φoq巴﹀△己8勺民邑①ぬ6は︑印宣冨ぬ6を有する依頼者が︑関連する秘密について︑もはや現実の利       ︵皿︶  益を有しない場合であっても認められており︑この意昧でも↑⑦σq巴﹀ユ己8勺匡邑①湾の適用に際しては寛容

 な態度がとられているといえよう︒

︵4︶もっとも︑↑Φ窓一︾含一8㊥ユ<一一6鷺も無制限に認められるわけではなく︑一定の例外が存在する︒例えば︑

 依頼者が犯罪︑または詐欺を犯すことを目的として法的助言を求めている場合には㊥民<一一①ぬoによる保護が       ︵些  与えられないのは︑︾口o日Φ寸Ω冨巨勺民邑①ぬoと共通する︒また︑法令によっていΦひq巴﹀△≦8㊦民庄Φぬoを制

 限することも可能であるが︑この場合には︑立法府の制定する第一次的な法令︵即目①昌↑Φぬ邑註o口︶によ

 って明示的に制約がなされる必要があり︑立法府の委任により行政府が制定する︑第二次的な法令

 ︵ωΦ8ロ合目い6ぬ芭豊o目︶にょる↑oぬ巴﹀△忌8勺﹁︷≦①σqΦの制限は︑当該法令の根拠となる法令により明示的       ︵皿︶  にその権限が与えられている場合に限られる︒

︵5︶↑oΦq巴﹀△<﹂8勺ユ<一一Φ湾に関しては︑近年︑これに﹁主要な目的﹂基準を適用すべきか︑が問題とされた︒

  ﹁主要な目的﹂基準とは︑本来︑≦ざoQ庁くbO巳冨ロ間邑綱昌︒・ヒ08且事件におけるピ亘ぬ昌oロ㊥巳く︷一〇ぬ①の適用

 弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶       ︵都法五十−二︶ 二=二

(6)

       二三二

      ︵励︶ に関して貴族院が採用した基準であり︑e亘oq昌oロ勺ユ<一一〇σqΦの範囲を︑当事者が訴訟における利用を﹁主要

な目的﹂として行ったコミュニケーションないし作成した資料に限定するものであるが︑この﹁主要な目       ︵551︶ 的﹂基準を↑①oq巴﹀ユ己no勺民≦oぬoにも及ぼすべきであるとする主張がなされた︒すなわち︑ピoo︒巴﹀△<一〇6

零宣一60Qoの対象となるコミュニケーションは︑法的な助言を得ること︑または法的な助言を与えることを

主要な目的としていなければならず︑他にこれと同等の目的が存在していた場合には︑秘匿特権による保護

を及ぼすべきではない︑とするのである︵もっとも︑このように主張した担×裁判官は︑弁護士依頼者間で

助言に対する弁護士料の支払があれば︑依頼者の法的権利を確実にするという主要な目的を認めることがで

きる︑として︑当該事案の解決としては︑問題となったコミュニケーションについて秘匿特権による保護を

認めている︶︒

 このようにピoσ︒巴﹀ユ<一8印︷≦oぬ6への適用を主張された﹁主要な目的﹂基準であるが︑担×裁判官のこ

の主張は第一審裁判所の先例とは異なっていた上︑この基準が↑6σq巴﹀含一8㊥民く︷一〇ぬ6の範囲決定に際して       ︵些 本当に必要な︑ないしは有用な基準を提供するものであるか否かも明確ではなかった︒これに対して︑二

〇〇三年︑↓宮㊦6担く2︒︒O一︒︒艮900巨⇔一一臼Oぱ子↓冨Oo<o﹁口o︹臼Oo日冨昌o︹書ob︒芦民o︷国ロ巴き口事件に

おける控訴院の判決では︑前記壽己讐く卑亘ω庁智一一乞昌︒︒ヒuo曽ユ事件における﹁主要な目的﹂基準の採用は        ︵田︶ い亘ぬ豊oロ勺臥≦Φぬ6を対象としたものであり︑いΦぬ巴﹀ユ庄8㊥民<一一①oqoについては及ばない︑と判断している︒

結局︑↑Φo︒巴﹀ユ己oo印宣一〇ぬoに﹁主要な目的﹂基準を適用しようとする立場︑すなわち︑↑6鵯一﹀ユ己6ゆ

勺ユ<︷冨ΦQ⑦についても︑その保護の対象となるコミュニケーションは訴訟の準備ないし対応を主要な目的と

していなければならないと考える立場は十分な支持を得られておらず︑↑①oQ巴﹀ユ<︷8勺ユ<一一60︒Φによる保護

(7)

 は︑訴訟における利用を主要な目的とするものでなくとも︑弁護士依頼者間でなされた機密性を有するあら

 ゆるコミュニケーションに及ぶとする立場が支配的である︒

︵6︶↑①窓一﹀△i⇔o㊥ユ︿︷一①oq6は︑その原初を﹀口o日①ぺΩ一〇巳㊥民≦①σQ①と同じくするものであり︑その根拠につ

 いても︑﹀暮o日①寸Ω冨巳勺ユ<︷冨ぬ6と同様に考えられているといってよい︒すなわち︑弁護士とのコミュニ

 ケーションが機密性を保たれることで︑市民は︑法的問題ないし権利に関して弁護士に率直に打ち明け相談

 することができるようになるのであり︑これは公益上︑また憲法上重要な価値を有する︑というものである︒

 このほか︑民事訴訟は個人または私的団体と国家または強力な公的機関との間の紛争をその対象に含むので

 あるから︑法律家は独立の専門的地位を形成し︑国家の干渉から自由であることを要求する必要があり︑弁       ︵851︶  護士が単なる国家の役人となるべきではない︑として︑秘匿特権の必要性を訴える指摘もなされている︒

 また︑↑oぬ巴﹀△i8℃ユ<︷一〇ぬoの存在意義については︑裁判例においてもしばしば説示がなされているから︑

 以下では代表的なものをいくつか簡単に引用しておくこととしたい︒

 .↑而Φq巴牢o甘︒・ωざコ巴㊥民く︷一①ぬ⑦の根拠は︑依頼者が弁護士に率直に情報開示し︑弁護士が自由に助言できる

  ようにすることで︑見込みのない請求や答弁を裁判所によらずに解決することに公益が認められることに    ︵皿︶   ある︒

 ・いoぬ巴淳o甘︒・︒︒δ昌巴㊥ユくまぬ⑦は︑裁判所及び法的助言へのスムーズなアクセスという主要な原理を支える       ︵㎜︶   重要な付随的原理に基づいている︒

 .↑6ぬ巴牢昆①ωω8ロ巴牢︷己一①oq⑦はコモン・ローにおいて長きにわたって構築された基本的人権である︒それ

  は︑全ての者が法について専門家の助言を得る権利を有することの必然的な帰結である︒そのような助言

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二三三

(8)

二三四

   は︑助言者に開示した情報が後に開示され自身の不利益に用いられる恐れなしに事実を開示しなくては︑        ︵理    効果的に得ることができない︒

 ︵7︶以上の通りやooQ巴﹀ユ忌8勺ユ<﹇一60︒ゆの内容︑適用範囲︑及びその根拠について概観してきたのであるが︑

  ここから読み取れるのは︑やはり弁護士︑ないしは依頼者への助言という面で弁護士と同等の機能を果たす

  専門職と依頼者との率直なコミュニケーションを促すことが︑依頼者自身にとっても司法制度自体にとって

  も保護に値する利益となり︑公益上重要な価値を有するとして︑広範に保護しようとする姿勢である︒

︵二︶近年の法曹制度改革と秘匿特権への影響

 ︵1︶法曹制度改革の流れ

   イギリスでは︑一九八〇年代の半ばから︑法的サービスに関して競争原理を積極的に導入し︑法曹人口を

  増加させ︑さらには弁護士業務の専門性・多様性を促進することを目指し︑継続的な法曹制度改革が行われ       ︵261︶   てきている︒競争原理導入の一例として︑これまでに既に︑ソリシタが独占していた不動産取引について︑

  認定不動産取引士の参入を認める︑上位裁判所の法廷における弁論権は従来バリスタが独占していたものを︑

  認定されたソリシタについてもこれを認める︑等の改革が︑連続的に進められてきた︒この一連の流れの中

  法的サービスにおける競争原理をより一層促進すると共に︑法的サービスの提供主体ごとに多様化している

  規制の枠組みを消費者保護の観点から統一的に再構築することを目的として︑二〇〇七年︑法的サービス法

  ︵↑①ぬ巴Q力2<︷8>9N⇔Oべ︶が成立したのであるが︑この中に︑ピ①ぬ巴﹀穿﹂8勺民邑①ぬ①に関しても規定が置か

  れている︒       ︵㎜︶  ︵2︶二〇〇七年法的サービス法によるζO㊥の導入

(9)

 二〇〇七年法的サービス法の立法にあたって︑大きな議論を呼んだ問題の一つが︑法律家の新たな業務形

態︵﹀=6峠遁<①・︒自・力︷︒6・り・︒・︒︷︹qn﹇⊆叶p>・d・力︶︑特に多業種共同霧所︵呂q津︹︒︷・り︒亘ロ①︹冒㊥﹃①︒江︒6㌘以下

呂O㊥と略す︶の導入に関する問題であった︒

 呂︶勺は︑法律専門職が法的サービスに限定されない他業種の専門職とともに共同経営を行う形態の共同

事務所であり︑ワンストップ・サービスの提供の観点から利用者にとって利便性が高いとされ︑世界的にそ        ︵焔︶ の導入の許否が議論されている︒我が国においても︑司法制度改革審議会意見書において︑﹁弁護士と隣接

法律専門職種その他の専門資格者による協働については︑依頼者の利便の向上を図る観点から︑ワンストッ

プ・サービス︵総合的法律経済関係事務所︶を積極的に推進し︑その実効を上げるための方策を講じるべき

である﹂との提言がなされている︒

 もっとも︑ζ一︶㊥という経営形態を導入することについては︑法曹倫理上・法規制上の様々な問題が考

えられる︒具体的には︑弁護士の独立性が損なわれるのではないか︑また︑弁護士と他の専門職とで法規

制や行為規範・倫理に差異がある場合に︑これをどのように扱うか︑等であり︑現時点での導入にはまだ課

題が多い︒このため同意見書でも︑﹁収支共同型や相互雇用型等の形態などいわゆる異業種間共同事業の容

認の可否については︑更に検討すべきである﹂として︑導入自体についてはさらなる検討課題とされている︒

 二〇〇七年法的サービス法の制定にあたってζO勺を導入するについても︑この︑弁護士と他の専門職と

の法規制の違いが︑まさにピ⑦σQ巴︾ユ<︷8憎﹁才一一①αQ6について議論されることとなった︒忌O勺で法律専門職

以外の者がパートナーシップに参加する場合において︑秘匿特権の範囲が︑法律専門家と依頼人との間の法

的サービスだけに限定されるのか︑あるいは︑法律家以外の専門家による包括的なサービスにも一律に適用

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二三五

(10)

二三六

されるのかが︑問題とされたのである︒

︵3︶二〇〇七年法的サービス法の下での↑①ぬ巴﹀ユ≦8㌣才一一而oqo

 この呂O㊥のもとでの秘匿特権の範囲という問題に対して︑二〇〇七年法的サービス法は︑↑①σq巴

印o︵霧ω8ロ巴㊥ユ≦oσqo︵すなわち↑①oq巴﹀△庄9㊥ユ≦而oqo及び↑庄σQ①叶ざ口犀ヨ一6湾︶を一定の場合に拡張す

る特則を設けて対応した︵第一九〇条︑末尾の資料六.参照︶︒同条は︑①バリスタ・ソリシタ以外の者で

あっても︑所定の権限を与えられた者が所定の法的サービスを提供する場合︵︵1︶項︑︵3︶項︶︑及び②

法律家以外の者であっても︑法律家の指示と監督のもと法的サービスを提供する場合︵︵3︶項︑︵4︶

項︶に︑秘匿特権を保障するものである︒これにより︑例えば︑ソリシタが他の︵本来ならば秘匿特権を

有しない︶専門職と共同で事務所を運営する場合に︑この他の専門職についても一定の条件のもと秘匿特

権が認められうることとなる︒

 二〇〇七年法的サービス法は呂O勺の設立について認証を必要としているところ︑本稿の執筆時点におい

ては認証制度の整備が行われている段階であり︑従って同法の下での呂一︶勺における秘匿特権に関する展開

がいかなるものとなるか︑本稿で取り上げた秘匿特権の拡張がどこまでのものとなるのかについては未だ判

然とせず︑今後の運用を観察する必要がある︒が︑弁護士の新しい業務形態であるζO勺について︑資格や

サービスの種類を限定し︑または法律家の指示監督のもとという要件によって︑弁護士依頼者間の秘匿特権

を拡張しようという同法の規律は︑呂O勺における多業種の法規制ないし行為規範・倫理の調整という問題

に対する一つの解答であるとともに︑ワンストップ型の法的サービスの利用者︵すなわち依頼者︶にとって

は︑より安心して秘密を開示し率直なコミュニケーションをとることができるようになるものであるといえ

(11)

  る︒そして︑依頼者と法律家︵ないしは秘匿特権を認められる法的サービスの提供者︶との間の率直なコミ

  ュニケーションを促進することは︑依頼者がより質の高い法的サービスを享受できるようになるのみならず︑

  ひいては司法制度自体にとってもその利益につながるのである︒

︵三︶小括及び日本法への示唆

  以上検討したイギリスにおけるピ①ぬ巴﹀ユ<〜60印ヨ一6ぬ6の議論から見て取れるのは︑繰り返しになるが︑弁

 護士︵ないしは弁護士と同種の法的サービスを提供する一定の者︶と依頼者の間のコミュニケーションを秘匿

 特権によって広範に保護しようとする姿勢である︒そしてこの姿勢についてはやはり︑秘匿特権の保護により

 促進される率直なコミュニケーションが︑依頼者の権利利益を守ることはもとより︑司法制度自体の運営に関

 しても利益をもたらす︑との功利主義的な視点がその基盤を支えているものと評価できよう︒

  本稿では︑この︑依頼者が法的サービスを受けるためになしたコミュニケーションを広範に保護しようとす

 るイギリス法の姿勢の具体例として︑二〇〇七年法的サービス法における呂O勺の導入と秘匿特権の拡張の問

 題を検討したのであるが︑この議論は我が国における証言拒絶権の扱いに関してどのように参考とすることが

 できるであろうか︒       ︵聯︶   我が国においては︑既に簡単に触れたように︑司法制度改革審議会意見書において弁護士と他の専門職に

 ょる協働を積極的に推進すべきとされながらも︑呂﹈︶㊥の導入自体は今後の検討課題とされている︒呂O勺の          品︶  導入には問題も多く︑確かにその導入にあたっては慎重に議論を進める必要があると思われる︒だが︑呂O蜀

 という経営形態をとらずとも︑弁護士が他の専門職等と協働してワンストップの総合的サービスを提供するこ

 とは︑利用者の利便性の面からも︑また︑高度に複雑化した法的問題への対応という点からも︑好ましいもの

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二三七

(12)

二三八

と言えるし︑一つの流れとして今後ますます盛んになってゆくことが予想できる︒その場合にも︑依頼者が法

的サービスを受けるにあたって開示した秘密の保護について統一的な規範を備えておくことは有用であろう︒

この検討に際して︑二〇〇七年法的サービス法の規律は︑大変参考となるものと思われる︒

 もっとも︑先述のとおり︑我が国の支配的見解では︑職務上の秘密に関する証言拒絶権は︑その立法趣旨に        ︵塑 鑑み︑法令上の守秘義務が定められている者については証言拒絶権を認められるべきだとされている︒これに

従えば︑弁護士と公認会計士︑税理士︑司法書士等が協働した場合においても︑各専門職について個別に証言       厄︶ 拒絶権の成否を認めれば︑その限りにおいては︑実際上問題が生じないことも考えられる︒だが︑この見解

によっても︑法令上の守秘義務が定められていない者︑例えばパラリーガル等については︑依頼者が開示した

秘密が証言拒絶権による保護を受けられないこととなる上︑業務の拡大により︑各専門職として本来守秘義務

の範囲に含まれるか否かが微妙な領域も生まれうることを考えると︑やはり問題は残っていると言えよう︒

 本稿は︑依頼者と専門職との率直なコミュニケーションを促すことが法的サービスの質を向上させ︑もって

依頼者の権利利益の保護のみならず司法制度それ自体にとっても利益を生み出す︑とする視点に立つものであ

る︒この視点からすれば︑秘密を開示された者が︑その者自身が専門職として負っている法令上の守秘義務に

基づいて証言拒絶権を認められる場合以外にも︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権の範囲をより拡大

的にとらえ︑当該秘密の開示が︑どのような者に対して︑いかなる目的のためになされたのかを実質的に判断

して︑証言拒絶権を認めるべき場合も考えられるのではないだろうか︒具体的には︑弁護士以外の者と依頼者

とのコミュニケーションであっても︑それが弁護士の指示と監督の下︑法的サービスの提供のためになされた

ものであれば︑そのこと自体をもって︵その者が法令上の守秘義務を負わない場合であっても︑あるいは︑法

(13)

令上守秘義務を負う職務としてコミュニケーションを行った場合でなくとも︶︑当該コミュニケーションを職       ︵m︶ 務上の秘密に関する証言拒絶権により保護することも︑充分考えられよう︒先に︑立法論として︑職務上の

秘密に関する弁護士の証言拒絶権の主体を依頼者・弁護士及び﹁これに準ずる者﹂に拡張すべきであると主張

したが︑呂O㊥のようなワンストップ・サービスの提供という面からも︑証言拒絶権の主体を拡張する意義は

大きいと考える︒

七.まとめ及び今後の課題

 本稿は︑民事訴訟手続における職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権について︑各職業の専門性を顧慮しない

ままに権利内容を定めることに疑問を呈し︑弁護士の守秘義務の根拠を実質的に明らかにすることで︑訴訟手続上弁

護士に認められる秘密保護のあるべき姿を探ろうとするものであった︒結論として︑英米法における弁護士依頼者間

の秘匿特権の議論をもとに︑弁護士依頼者間のコミュニケーションが強制的な開示から保護されることにより︑司法

制度自体に大きな便益が生まれるのであり︑この功利主義的な正当化が弁護士に秘密保持を認めることの根拠となり

うる︑という視点を提示したのであるが︑日本法においても︑この視点のもとに弁護士の負う実体法上・法曹倫理上

の守秘義務や手続法上の証言拒絶権を統一的に再検討してゆくことは︑充分意義のあることだと思われる︒本稿では

さしあたり検討の対象を証言拒絶権に限定し︑各論として以下の三点を提案した︒

①弁護士依頼者間の機密性あるコミュニケーションについて︑原則として︵主観的・客観的な意味での秘密該当性

 を問うことなく︑形式判断により︶職務上の秘密にあたるものとして証言の拒絶を認めるべきこと︒

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二三九

(14)

二四〇

②弁護士依頼者間の機密性あるコミュニケーションについて︑証言拒絶権を依頼者の権利として構成し︑その行使

 の可否を依頼者の判断に委ねるべきこと︒

③弁護士以外の者と依頼者とのコミュニケーションであっても︑一定の要件のもとに弁護士と同様の証言拒絶権を

 認めるべき場合があること︒

 この三点の提案は︑いずれも︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権に関して︑依頼者と弁護士︵ないしはそ

れに準ずる者︶の間の機密性あるコミュニケーションについては︑他の専門職の職務上の秘密とは異なる基準によっ

てその保護を考えようとするものである︒本稿はその根拠として︑率直なコミュニケーションの促進により司法制度

自体に利益が生まれる︑という功利主義的な視点を提示したのであり︑この視点は有用なものと考えられる︒だが︑

この視点は厳密には︑弁護士と依頼者のコミュニケーションについて保護を与えることを正当化しうるものの︑弁護

士と依頼者のコミュニケーションについて︑他の専門職と異なった取扱いをすることまでは︑十分な説明をなしえて

いないようにも感じられる︒本稿は︑職務上の秘密に関する証言拒絶権の範囲はその根拠とされる守秘義務の内容と

連続性を有するべきであると考え︑とりわけ弁護士について英米法の秘匿特権に示唆を受けて結論に至ったものであ

る︒他の専門職については︑個別にその専門職の負担する守秘義務の内容を検討して証言拒絶権の範囲を実質化すべ

きであると考えるが︑このような各個区別した取扱いを正当化するだけの差異が真に存在するのかについては︑さら

なる考察が必要である︒この点については︑今後︑英米法の各種秘匿特権と弁護士依頼者間の秘匿特権との関係につ

いて調査検討を進めてゆきたいと考えている︒

 また︑本稿の見解は︑弁護士と依頼者とのコミュニケーションについてそれ以外の第三者とのコミュニケーション

(15)

とは別異に取り扱い︑その保護を考えるという意味において︑弁護士の守秘義務の範囲に関する限定説的な思考を内

包するものである︒だが︑依頼者とのコミュニケーションについて特に保護を考えることと︑依頼者以外の第三者の

秘密を保護すべきか否かということとは︑別の問題である︒民事訴訟法一九七条一項二号は文言上証言拒絶権の対象

を依頼者の秘密に限定していないのであり︑第三者の秘密について証言拒絶権をもって保護すべきか否かは︑別途判

断されなければならない︒実体法上の守秘義務の範囲についても︑現在の弁護士法二三条は職務基本規程と異なって

依頼者の秘密に限定する文言上の制約をおいていないのであるから︑依頼者の秘密とは別に第三者の秘密についても

守秘義務の対象と解することは充分に可能である︒弁護士による第三者の秘密の保護の問題については︑これを認め

る根拠について今後さらなる検討を予定しているが︑そのためには国dをはじめとした大陸法系の規律がどのように        ︵m︶ なっているかの調査が必要不可欠であろう︒

 さらに︑本稿では詳しく触れることができなかったが︑弁護士の守秘義務に関する近時の世界的な問題として︑

﹁犯罪による収益の移転防止に関する法律﹂︵平成一九年法律第二二号︶の制定に関し議論されたゲートキーパー問題

のような︑訴訟外での秘密開示の義務づけに関しても︑弁護士の秘密保護のあり方を論ずる上では忘れてはならない︒

訴訟における秘密保護についても︑今回は証言拒絶権に限定して検討を行ったが︑文書提出義務の範囲までを含めた

考察も必要であろう︒課題は山積しているが︑弁護士の守秘義務・秘密保護に関し︑実体法・訴訟法・法曹倫理の各

分野に渡って横断的な考察を行い︑今後の研究を進めてゆきたい︒

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二四一

(16)

二四二

︷資料︸

       ︵理 資料五.︵訳文︶二〇〇七年ソリシタ行為規範︵抄︶

四.〇一 秘密保持義務

   ソリシタ及びその事務所は︑依頼者及び依頼者であった者に関する事件について機密性を保たなければなら

  ない︒ただし︑当該依頼者︵または依頼者であった者︶によって︑開示が要求され︑または許可された場合を

  除く︒

四.〇二 開示義務

  ︑弁護士︵↑2く2︶または顧客から直接報酬を得る法律家︵ウ⑦6国曽昌臼︶として活動するソリシタは︑依頼

  者︵ソリシタがその者のために事件について自ら︵単独で︑もしくは集団の構成員として︶行動しているその

  者︑もしくはソリシタがその者の事件について自ら管理しているその者︶に対して︑当該依頼者の事件に関し

  て重要であると認識している全ての情報を︑当該情報の情報源にかかわらず︑以下の条件に従って開示しなけ

  ればならない︒

  ︵a︶前記四.〇一条の秘密保持義務は︑常に開示義務に優先する︒さらに

  ︵b︶以下の場合には開示義務は認められない︒

   ︵i︶当該開示が法により禁止されている場合︒

(17)

(・ P1︶開示義務が発生しない︑もしくは異なった開示基準が妥当する旨︑明示的に合意がなされている場合︒

 または

(…

香j当該情報が依頼者に開示されると︑ある者に深刻な肉体的ないし精神的損害が発生すると当該ソリシ

 タが合理的に信ずる場合

四.〇三 ⁝機密情報を危険にさらさないように活動する義務

   弁護士︵C乞吉﹁︶または顧客から直接報酬を得る法律家︵頴6国①日雲︶として活動するソリシタは︑自ら︑

  もしくはその事務所が︑依頼者または依頼者であった者の機密情報を有している場合には︑別の依頼者のため

  に︑以下のような事項について活動し︑または活動を継続することによって︑機密性が侵害される危険を生じ

  させてはならない︒

  ︵a︶当該情報が重要なものだと合理的に予測され︑かつ

  ︵b︶当該依頼者が機密情報を有する依頼者または依頼者であった者と利益を相反している事項

   ただし︑当該情報を保護するための適切な処置が後記四.〇四条及び四.〇五条に従ってなされうる場合を除

  く︒ 四.〇四 機密情報を危険にさらさないように活動する義務の例外−依頼者の同意

 ︵1︶ソリシタは︑以下のように両依頼者のインフォームド・コンセントが得られた場合に限り︑前記四.〇三条

  の禁ずる状況において︑活動し︑または活動を継続することができる︒

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二四三

(18)

二四四

︵a︶ソリシタがその者のために活動し︑または活動することを予定している依頼者が︑当該ソリシタの事務

 所またはその事務所に所属する弁護士︵ピ§ぺ2︶もしくは顧客から直接報酬を得る法律家︵頴①

 国自ロ2︶が当該依頼者の事件に関連して開示することのできない実質的な情報を︵四.〇三条で示された

 状況のもとで︶有していること︑または有しているおそれがあることを知っており︑

︵b︶ソリシタが︑両方の依頼者が共に︑関連する問題について留意した上で理解している︑と合理的に信じ

 ており︑

︵c︶両方の依頼者が共に︑ソリシタが活動することとなる︑または活動を継続することとなる事情について

 同意しており︑さらに︑

︵d︶あらゆる状況を考慮したうえで︑そうするのが合理的である場合︒

︵2︶四.〇四条︵1︶における﹁両方の依頼者﹂とは︑以下の者を意味する︒

 ︵a︶ソリシタの事務所︑または︑その事務所に所属する弁護士︵ζξ自︶もしくは顧客から直接報酬を得

   る法律家︵ブ6①囹▽①﹃口Φ叶︶が機密情報を有している︑現在の︑またはかつての依頼者︒及び︑

 ︵b︶ソリシタがその者のために活動し︑または活動しようとしている︑現在の︑または新規の依頼者であっ

   て︑その者にとって︑他の依頼者の利益のために保持されている情報が︵前記四.〇三条に示された状況

   のもとで︶重要である者︒

︵3︶ソリシタ︑またはソリシタ及びその事務所が︑二人またはそれ以上の依頼者のために︑本規則第三条︵利

(19)

益相反︶に準拠して活動していたが︑もはや同条の要件を満たすことができなくなった場合には︑ソリシタは︑

他の依頼者の同意のもと︑四.〇四条に適合する限りにおいて︑特定の依頼者のために活動を継続することが

できる︒

四.〇五 機密情報を危険にさらさないように活動する義務の例外ー依頼者の同意なき場合

   ソリシタは︑進行中の事件について︑または進行中の事件に関連する事件について︑本来前記四.〇三条に

  よって禁じられていた状況においても︑以下の場合に限り︑当該ソリシタの事務所︑またはその事務所に所属

  する弁護士︵い①亘2︶もしくは顧客から直接報酬を得る法律家︵零而国曽コ自︶がその者のために機密情報

  ︵四.〇三条に示された状況の下で当該ソリシタの依頼者にとって重要である機密情報︶を有している︑または

  有している可能性のある依頼者の同意を得ることなく︑当該ソリシタの依頼者のために活動を継続することが

  できる︒

  ︵a︶当該ソリシタの事務所︑またはその事務所に所属する弁護士︵冨毒臼︶もしくは顧客から直接報酬を

   得る法律家︵閤①①国︸①叶口Φ﹃︶がその者のために重要な機密情報を有している︑または有している可能性のある

   依頼者から︑前四.〇四条のインフォームド・コンセントを得ることが不可能であり︑

  ︵b︶当該ソリシタの依頼者が︑当該ソリシタの事務所︑またはその事務所に所属する弁護士︵ζξ2︶も

   しくは顧客から直接報酬を得る法律家︵頃①① 柏▽四﹁b﹇①︹︶が依頼者の事件について開示することのできない重要

   な情報を有している︑または有している可能性があると知りながら︑ソリシタが活動することに同意してお

   り︑

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二四五

(20)

二四六

︵c︶その時点の法が要求する基準に適合するあらゆる予防手段がとられており︑かつ

︵d︶あらゆる状況を考慮して︑そうするのが合理的である場合︒

四.〇六 放棄

   二二.〇一︵1︶条︵放棄︶の規定にかかわらず︑ソリシタ規制委員会︵書①o力o浮ぎ﹁ψ・間oぬ巳①﹇↑8>巳ぎユ蔓

  coo胃ユ︶は︑本条の各規定のいずれについても︑放棄する権限を持たない︒

資料六.︵訳文︶二〇〇七年法的サービス法︵抄︶

↑oσq巴買o⌒6ωω8昌巴冒﹂<︷一6σq①

第一九〇条 ↑o鵯一㊥峠ぽo°・︒︒︷自巴勺5<〜一ゆぬ①

 ︵1︶  ︵2︶項は︑バリスタまたはソリシタでない者︵以下︑Pとする︶が以下に該当する行為をなした場合

  に適用される︒

  ︵a︶顧客の権利を実行することに関連して権限を与えられた者として弁護士業のサービス︵︾△<068ぺ

   白︒2己6窃︶を提供した場合

  ︵b︶訴訟行為に関連して権限を与えられた者として訴訟サービス︵↑庄鵯け8昌oりo﹁<一8︒・︶を提供した場合

  ︵c︶留保された証書作成活動に関連して権限を与えられた者として譲渡証書作成サービス︵︹oロ<o吉ロ゜日ぬ

   白︒臼≦8ψ︒︶を提供した場合︑または

(21)

 ︵d︶遺言検認活動に関連して権限を与えられた者として遺言検認サービス︵涼09甘o力氏己8°・︶を提供した

  場合 ︵2︶問題となるサービスの提供に関連するあらゆるコミュニケーション︑文書︑資料または情報は︑Pがあら

ゆる重要な時点においてPの依頼人のソリシタとして行動していた場合と同様に︑開示手続から保護される秘

匿特権を与えられる︒

︵3︶  ︵4︶項は︑以下の場合に適用される︒

 ︵a︶許可を得た者が依頼者にサービスを提供し︑

 ︵b︶その者を通じて当該サービスが提供されるところの者︵以下︑Eとする︶が

  →︶法律家相当職︵男色Φ<①巳↑①32︶であるか︑または

  ︵・11︶法律家相当職の指示と監督のもと︵以下︑この法律家相当職を﹁監督者︵白︒ξΦ2°・o﹃︶﹂という︶行

   動している場合

︵4︶問題となるサービスの提供に関連するあらゆるコミュニケーション︑文書︑資料または情報は︑以下の場

合に限り︑本来秘匿特権が与えられていたであろうという範囲において︑開示手続から保護される秘匿特権を ︑

与えられる︒

 ︵a︶E︵Eが法律家相当職ではない場合は︑その監督者︶が当該サービスを提供しており︑かつ

 ︵b︶あらゆる重要な時点において︑依頼者がE︵Eが法律家相当職ではない場合は︑その監督者︶の依頼者

  であった場合

︵5︶﹁法律家相当職﹂とは︑以下の者をいう︒

 弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二四七

(22)

二四八

 ︵a︶ソリシタ

 ︵b︶バリスタ

 ︵c︶スコットランドにおけるソリシタ

 ︵d︶スコットランドにおける代理人︵﹀ユ<089︶

 ︵e︶北アイルランド最高裁判所︵書①Oo烏ε⌒言合⇔讐烏6寓20﹁日⑦日冒o一きO︶のソリシタ

 ︵f︶北アイルランド弁護士会︵庄而国自o⌒Zo詳ロoヨ胃⑦一きユ︶会員

−︵9︶︵一九九〇年裁判所及び法的サービス法︵庄ΦOo言冨昌ユピ①ぬ巴白06﹁<〜8︒︒>9戸㊤㊤O︶第八九条の意昧で

  の︶登録を受けた外国弁護士

 ︵h︶︵a︶ないし︵9︶に該当しない者で︑留保された法的活動である活動に関連して権限を与えられた者

 →︶︵一九七八年EC︵法律家サービス︶命令︵o︒﹄°H鶏望戸ΦドO︶による︶欧州弁護士

︵6︶本条においては︑

  ﹁弁護士業のサービス︵﹀含080ぺ白力氏忌8ω︶﹂とは︑何らかの手続︑または予定されている手続に関連して︑

顧客の権利を行使している︑または行使を予定している者が︑提供することを合理的に予期されるあらゆる業

務をいう︒

  ﹁訴訟サービス︵い宣鶴ま臣o力o自︷⇔o︒︒︶﹂とは︑何らかの手続︑または予定されている手続に関連して︑訴訟

を追行する権利を行使している︑または行使を予定している者が︑提供することを合理的に予期されるあらゆ

 る業務をいう︒

  ﹁譲渡証書作成サービス︵08<o竃口⇔日σqo力而2︷8切︶﹂とは︑譲渡書類︵印き︒・︷①房︶︑譲渡証書︵Oo昌くo竃口⇔oψ︒︶︑

(23)

 契約書︵否05﹇﹁四⇔吟ω︶その他の文書の準備で︑不動産もしくは土地に関する財産権︵冒け自窃﹇ψ︒冒↑芦O︶の譲渡

 もしくは取得に関連するもの︑または不動産もしくは土地に関する財産権の譲渡もしくは取得に付随するその

 他の業務を意味する︒

  ﹁遺言検認サービス︵即oひ彗60︒o﹁己8︒・︶﹂とは︑検認の許諾︵○日巳o︷淳合巴Φ︶または認可文書の許諾

 ︵○﹁①口けO︷﹈いOけ叶O叶ψ乃 O⌒︾ユ5⊇一コ一〇乃﹇﹁㏄﹇一〇目︶を得るため︑またはこれに反対するための文書の準備︑及び死亡した人

物の財産の管理を意味する︒

︵7︶本条は︑コミュニケーション︑文書︑資料または情報を開示から保護する効力を有する他のあらゆる法律

の制定または規定について︑これを害するものではない︒

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二四九

(24)

二五〇

︵041︶ソリシタに対する懲戒権限は︑別途︑後述の二〇〇七年法的サービス法によって制定された第三者機関である↑而ぬ巴

 oり而日討而゜・ヒ⇔8包︵公式ウェブサイト宮号⁚ミ萎庁ぬ巴゜︒6目︷8ωぴo閂△°o頃昆゜なお︑本稿で引用のd問やは︑全て平成二一︑年一二月

 時点でのアクセスを確認している︶が行使する︒C司白︒oo芭司以前も含め︑ソリシタに対する規制制度の歴史的発展について︑

 懲戒権限を中心として解説するものとして︑>o辞6乞出o旨自00き△080︒o昌印⑦<o詳8⊥o昌o°・O℃吋ロ6Q力合○ぎ﹁︑°・出営合oo村     

 NOOQ︒︵一﹃討①﹈﹇①乞ω06︷6吟×N⇔O◎◎︶︑讐ω゜また︑吉川精一﹁英国における弁護士の二極化と弁護士自治の弱体化﹂自由と正義六〇巻

  一〇号五七頁︵平成二一年︶は︑二〇〇七年法的サービス法において︑懲戒権限を第三者機関に委ねるに至った背景の一つ  として︑ソリシタの二極化現象について解説する︒その他SRAの位置づけ・役割については︑公式ウェブサイト

 ︵ゴ§⁚言゜・﹁①゜o﹁や已ミ巽§o≦占6−笥o済も①oqoなど︶も参考となる︒

︵141︶o力巨のウェブサイト︵宮8⁚﹂留po叶やρ更ωo陪一9更8△o−o︹8昆ξ苫①ひqΦ︶などより入手可能︒

︵241︶冨乞白︒o口而蔓のウェブサイト︵宮言⁚言鼠司ωo巳而碧o﹃や已竃08日而暮ぼ創o≦己o置笛8甘酔亘8ら轟ひ︷︷8問巳6°・も邑から入手可能

 である︒一六E条についての指針も︑同ウェブサイト

 ︵宮甘⁚言訂≦°・o巳①蔓自唄已竃02日Φ巳切\△o乞己o邑亀因ーOoロ法①馨︷書蔓Ω已合p⇔oも色参照︒

︵341︶﹀昌腎①乞国o暑自○ひ①且ρ而ぬo昌⇒6<2叶8⊥8①ω○ρ㊤ξ轟g甘に⇔彗畠゜

︵441︶↑6ぬ巴﹀ユ︿﹂8軍︷昆Φぬ①に関する文献として︑以下に引用のもののほか︑﹈o墨日§﹀呂旨目↑①ぽq巴㊥δ詩ωδo巴印︷<︷庁oq而冒乞陣

 ↓庁ΦOQ︵出胃50言巨昌ぴ︒ふOOO︶︑ド出゜OΦp巳禦↓ゴO↑①笥O︷国く己O昌8ω且国ら︵白り≦OΦ叶俸﹈≦賀乞O口NOO﹃︶︑>aユ知ロ民6①昌P↓庁而﹈≦OユΦ日

 一§o︷国く庄窪8べ筈国△°︵○×合﹁ユNOOo◎︶宕庄﹀づ貸o≦ψ・w内づぬ涜庁Ω≦甘昆8きユ男Φ日6庄6ω這﹁o噌㊦゜・°・きユ9巴庁ロσqo・︵邦題﹃英国民

 事司法制度と救済方法1その展開と展望﹄︶︵信山社︑平成一九年︶など参照︒

︵541︶子巳﹀昌合而嵩亘漏ぼ庁Ω庄印08合叶①昌註帥日6算①尻oご冨ZΦ乞Ω邑冒゜︒叶﹂8白︒ぺψ・甘日︵O×合﹃△ふ08︶三まωω゜

︵641︶29>づ貸①乞゜・︑°・毛轟8甘﹂冷三芸ωや

︵741︶Z昆︾邑8綱゜・ω毛轟目o冨忘獅陪Oωω゜これに対してe江Φq豊oo印3庁ぬ而が妥当するのは︑係属中のまたは予期される訴訟に準

 備対応することをその主要な目的としてなされたコミュニケーション︵または調査︶についてのみである︒

︵841︶Z而﹂︼︾且8≦︒︒三唇臣昌o甘﹂吟9陪ΦωP

︵941︶Z而工﹀匿お綱゜・︑切ε轟目o吟6﹂+押彗Oω口゜

︵051︶bd書9言≧二a﹂知ロΦ゜︒°︒﹈9ω弍ωω⇔ひ﹀も魯ば工自二゜

︵151︶2Φ=﹀邑苫≦ψ︒︑°・ξ冨g融忘切三仲①ωΦ゜

(25)

︵251︶Z①一一﹀邑﹁65︑°・唇日oo甘忘9讐Φω曽

︵351︶Z①︷;巳︹°5三毛日づo冨崔口陪Oω゜︒ΦωΦ゜

︵451︶ロΦ゜︒O﹈﹀ひ紹﹂亘↑Z6︷一﹀邑﹃①覆三ξ日目゜叶巴θ①︷法O°

︵551︶弓冨゜力①︒q9隅①一ロ8や﹈﹂=o盲︑ω図8声OO痴︷こ゜

︵651︶2①﹇三aお5三暑日o°g崔切三芸ωΦ゜

︵751︶冨8ω﹈国≦ひ﹀Ω<S戸

︵851︶2°一一﹀邑叶①ま三巷日ロo甘ぱμ馨Φ鵠−Φω㍍

︵951︶甘ぎ巨︒巨切く呂゜巨90じd日σq言日二ω巴伜ロ8品戸笥↑問03巴﹂お︾°

︵⁝⁝︶甘間く°り①RΦ訂目︒︷°︒︷①け①冒仔Φ=°日60Φ冨﹃g窪﹇も×冨箒汀66亡゜︒︷㊦胃二ω巴PロΦ㊤±○ヒd﹂㊤゜︒b﹂HN℃OP

︵161︶甘間︵ζo品芦ρg置一俸O°F巳︶<°り廿Φ゜芭9日目︒・︒︒一8而;︷甘8日6冒wやoa=昆日き・巴ら﹇N⇔ON﹈N≦↑男口Φ円=↑三Gぼ①S

︵261︶一九九〇年代以前の一連の民事訴訟改革についてまとめたものとして︑我妻学﹁英国における近時の民事司法改革の動向

 ︵一︶︵二︶︵三︶︵四・完︶﹂東京都立大学法学会雑誌三九巻一号一五一頁︵平成一〇年︶・同三九巻二号五頁︵平成一一年︶・

 同四〇巻一号八三頁︵平成一一年︶・同四〇巻二号一頁︵平成一二年︶︑同﹁英国における一九九九年司法へのアクセス法

 ︵一︶︵二・完︶﹂同四一巻一号四九頁︵平成一二年︶・同四一巻二号五三頁︵平成=二年︶︑幡新大実﹃イギリスの司法制度﹄

 ︵東新堂︑平成二一年︶一一九頁以下︒

︵361︶二〇〇七年法的サービス法に関するイギリスの法曹制度改革については︑我妻学﹁イギリス︵イングランド・ウエールズ︶

 における法曹制度改革の試み﹂法の支配一四六号六〇頁︵平成一九年︶︑同﹁イギリス︵イングランド・ウェールズ︶におけ

 る法曹制度改革の試み 1二〇〇七年法的サービス法1﹂首都大学東京法学会雑誌四九巻二号二九頁︵平成二一年︶︵以下︑

 我妻・法的サービス法として引用︶に詳しい︒

︵461︶二〇〇七年法的サービス法立法に際しての呂︼︶勺に関する議論は︑我妻・法的サービス法四六ー四九頁︑同六七−七一頁参

 照︒ ︵561︶ζO勺の利点と問題点︑その導入を巡る各国の動向についてまとめたものとして︑石畔重次﹁弁護士の業務形態と弁護士倫

 理﹂森際康友編﹃法曹の倫理﹄︵名古屋大学出版会︑平成一七年︶二四三頁︑二五六頁以下︒

︵661︶前記六.5.︵二︶︵2︶参照︒

︵761︶石畔・前掲注㎜二五九−二六〇頁は︑共同経営形態の呂O㊥は︑非弁護士が報酬目的で法律事務を取り扱うのと実質的に

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵三・完︶      ︵都法五十−二︶ 二五一

(26)

二五二

 異ならず︑弁護士法七二条及び弁護士法二七条に抵触する︑仮に直接弁護士法に反しないとしても︑少なくとも非弁護士と

 の報酬分配を禁じる職務基本規程一二条に明らかに反する︑とする︒

︵861︶前記注36参照︒

︵961︶特に従来は︑本稿のように実体法上の守秘義務と証言拒絶権の範囲とを整合的に捉えるべきだとの考え方を採っておらず︑

 保護すべき﹁職務上知り得た他人の秘密﹂の範囲を実体法上の守秘義務とは別個に抽象的に考えていたことから︑本来発生

 すべき︑専門職ごとの守秘義務の違いによる証言拒絶権の範囲のズレが問題とならなかった面もあるだろう︒

︵071︶前記六.3.︵三︶︵1︶参照︒

︵171︶この点に限らず︑大陸法の検討は今後の大きな課題である︒例えば︑春日偉知郎﹃民事証拠法論ー民事裁判における事案

 解明﹄︵商事法務︑平成二一年︶一七六頁以下で紹介されている︑医師の証言拒絶の可否に関するドイツの裁判例の判断基準

 などは︑証言拒絶に際して守秘義務の内容を個別詳細に具体化した検討が求められているが︑本稿の目指す︑守秘義務の内

 容と証言拒絶権との整合という方向性と相通ずるものがあるのではないかと感じられ︑興昧深い︒

︵271︶二〇〇七年ソリシタ行為規範の第四条は︑二〇〇七年法的サービス法による︑事務所ペースの規制及び︑呂∪勺と並ぶ新た

 な業務形態︵︾一けO﹃︹①叶︷<Φ 吊7﹄oカ一昌Oψ力o力 白力﹇﹃仁6口﹂﹁而︶である↑O㊥︵↑Φひq巴O︷︒︒6芭ぎ3㊥﹁①巳8°・ 法律共同事務所︶の導入に対応する

 ため︑二〇〇九年三月三一日付けで改正された︒本抄訳は改正後のものに基づく︒最新版はo︒Cのウェブサイトより入手可

 能︵ゴ§⁚ミ巳6︒・あpo﹃oq°已吋︶︒

本研究は︑科研費︵若手研究B 二一七三〇〇八九︶の助成を受けたものである︒

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