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ロビンソン資本蓄積論の研究(3)

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(1)

ロビンソン資本蓄積論の研究(3)

その他のタイトル A Study of Mrs. Robinson's Theory of Capital Accumulation (3)

著者 三谷 友吉

雑誌名 關西大學經済論集

巻 10

号 5

ページ 453‑472

発行年 1961‑01‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/15536

(2)

453 

ず技術進歩の概念であるが︑

は技術的知識の発達にもとずくものにほかならない︒彼女によれば︑技術の変化には﹁発明と発見から生ずるもの

と︑所与の技術的知識の状態において賃銀の利潤にたいする相対的な変化によって生ずるもの﹂があるが︑技術進

( 1 )  

歩は前者をさすわけである︒そしてそれは生産方法の改善となつてあらわれるけれども︑

態に相応して︑各々の型の商品や設備のために︑ただひとつの可能な生産方法しか存在しない﹂という仮定がつづ

( 2 )  

けられるのである︒

ロビンソンはこれまでの﹁不変の技術﹂という仮定をすて︑

ロビンソンはそれをもつて発明や発見による技術の変化を意味する︒すなわち︑それ

ロビンソンは生産方法の改善を革新とよび︑企業者たちによる﹁革新の普及﹂について論じている︒

( 3 )  

すなわち︑革新は労働者一人あたりの産出量を増加し︑商品の生産費を低減するものであって︑進歩的企業者は低

ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

ロ ビ ン ソ

党(二)

﹁各々の技術的知識の状 ﹁技術進歩﹂をとりいれて資本蓄積を分析する︒ま

ン 資 本 蓄 積 論 の 研 究

(

3)

 

(3)

45

たり産出量とともに上昇し︑利潤率は不変にとどまる︒﹂

費用にもとずく超過利潤を獲得するために新しい生産方法を採用するのであるが︑それはおそかれはやかれ他の企

( 4 )

5) 業者たちの模倣によって普及するのである︒彼女のくわしい叙述のなかには若干の興味ある発言もないではない

が︑ここでそれにたちいることは省略して︑つぎにすすむこととしよう︒

さてロビンソンはまず技術進歩がおこる場合における'﹁安定のための諸条件﹂について論ずるが︑そのさいに彼

女のしめている若干の仮定や命題はその後の諸議論にたいする基礎をなすものであり︑この意味において重要であ

る︒彼女が冒頭においてのべているところを引用するならば︑左のとおりである︒

ペての生産部面においてひとしい一様な歩調でおこなわれるならば︑その増加は︑潜在的産出量という観点からす ﹁一人あたり産出量の増加がす

れば︑それに相応する率での労働力の増加と同義である︒説明をかんたんにするために︑人口は不変であると仮定

しよう︒そうすれば︑われわれは︑生産力の増大だけから生ずる潜在的産出量の増加に分析を限定することができ

( 6 )  

る︒さて︑生産キャ︒ハシティが一人あたり産出量の増加とおなじ歩調で増大してゆくというような仕方で︑経済体

系が活動している場合には︑所与の労働力の恒常的な雇用が長期にわたつて存在する︒その場合︑労働力の︵およ

び資本財の生産キャパシティの︶投資部門と消費部門への分割は︑時がたつても不変にとどまる︒投資部門における一定数の労働者は生産キャ。ハシティのたえず増加してゆくプラントを(両部門のために)生産し、•そして消費部

門における一定数の労働者はそのプラントを操作して︑たえず増加してゆく産出量を生産する︒実質賃銀は一人あ

﹁生産力が変化する場合には︑貨幣や︑労働や︑商品や︑資本財のそれぞれの価値のあいだの関係は変化する︒

実質賃銀が一人あたり産出量とともに上昇するときには︵そして一人あたり産出量の上昇が経済全体に一様にゆき

(4)

455 

商品で表示した資本財の費用は不変である︒その場合︑貨幣価格水準は貨幣賃銀水準に依存す

る︒たとえば︑貨幣賃銀が不変であれば︑商品の貨幣価格は一人あたり産出量の上昇につれて下落し︑そして機械

( 7 )  

の費用もそうである︒もし貨幣賃銀が一人あたり産出量とともに上昇するならば︑貨幣価格は不変である︒﹂

ここでロビンソンは︑技術進歩による﹁一人あたり産出量の増加がすべての生産部面において︑ひとしい一様な

歩調でおこなわれる﹂という仮定と︑それから﹁人口は不変である﹂という仮定をもうけている︒前者の仮定のも

とでは技術進歩は中立的であるといわれる︒ロビンソンはこれらの仮定のもとに﹁生産キャパシティが一人あたり

産出量の増加とおなじ歩調で増大してゆく﹂場合について考察し︑

が長期にわたつて存在する﹂とか︑ その帰結として﹁所与の労働力の恒常的な雇用

﹁実質賃銀は一人あたり産出量とともに上昇し︑利潤率は不変にとどまる﹂と

いう命題をみちびきだしているのである︒そして彼女によれば︑実質賃銀が一人あたり産出量とともに上昇すると

きには︑商品で表示した資本財の費用は不変である︒なぜなれば︑商品の価格と資本財の価格とはおなじようにう

ごくからである︒産出量L単位あたりの︑商品表示の労働費用は不変であるから︑

( 8 )  

であるということになる︒

つづいてロビンソンは安定のために必要な諸条件を指摘し︑それからそれらの条件がみたされない諸々の場合を

あげて︑くわしく論じているが︑以下においては︑そのうち資本蓄積に直接かんれんあるものだけについて考察す

る︒その他のものにはのちの機会に言及するであろう︒

( 1 )

R o b i n s o n T,  

he

 A c c u m u l a t i o n   of   Ca p j t a l ,   p .  

70 . 

邦訳︑七八ベージ︒

'

2)  I b

i d. ,

  p . 

85 . 

邦訳︑九ニページ︒

ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

それと資本費用との比率も不変

(5)

ll6

( 3 )

ロピソソンは﹁革新は︑それが資本を節約するといなとにかかわらず︑つうれい労働を節約する﹂という︒

( Ro b i ns o n , Th eR Q  t e   of Interest•  

p . 

46

. 

邦訳︑五八ページ︒︶それゆえに︑すくなくとも商品一単位あたりの労働はつねに低減

( 4 )  R o b i . n s o n , T   he   Ac cu mu la ti on   of Capital•  

pp

, 

8 5 ‑ 8 7 .  

邦訳︑九ニー九四ページ0

( 5 )

ロピンソンによれば︑革新の過程にかんする彼女の見解は﹁マルクスからッュムペーターを経由してみちびかれた︒こ

れは他のどんな見解よりも経験に照応しているようにおもわれる︒﹂

( Ro b i ns o n , Th e  R at e  o f  Interest•

p . 

36 . 

t n o t e .  

邦訳︑五0

( 6 )

ロピンソンにあっては︑生産キャパッティは﹁物理的な性質と将来のクイム・パターンとが特定しているところの産出

葦の一つの流れを生産するために︑適当な労働者によって使用されるところの資本財装備﹂を意味する︒

( Ro b i ns o n , Th e  Ac cu mu la ti on   of  Capital•

p . 

12

2.

 邦訳︑一三一ページ︒︶

( 7 )  R ob in so n,  T he c   A cu mu la ti on   of  Capital•

pp

. 

8 7 ‑ 8 8 .  

邦訳︑九五ー九六ページ︒・

( 8 )

ロビンソンは︑資本財の費用︵商品表示の︶が実質賃銀率と投資部門における労働の生産力とによって支配されるとみ

なしている︒

( I b i d . ,

pp

. 

8 8

9.

邦訳︑九六ページ︒︶利潤率︵利子率︶が不変であるから資本財の費用は実質賃銀率

と資本財の生産に必要な労働量とに依存することとなるのである︒

( C f . i b i d . ,   pp . 

10 4 10 5, 4  23

4 25

邦訳︑一︱一ー

︱一三︑四六四ー四六六ページ︒︶

まずロビンソンのあげている進歩的な経済の円滑な発展のための必須条件についてみるに︑第一の条件は技術進

歩とともに資本が増加するということであるが︑これはつぎのように表現されている︒すなわち︑﹁機械のストック

現におこりつつある一人あたり産出量の増大に相応した率で増加しつつあ

る﹂ということである︒それからもうひとつの条件は技術進歩とともに実質賃銀率が上昇するということである︒ ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

ーヽヽ=・ヽ―--~- ‑ ‑‑

(6)

457 

﹁競争の結果︑貨幣賃銀率にたいする価格の動きが︑設備の正常キャ︒ハシティをもつての稼動を・

維持するようなもの︑換言すれば︑実質賃銀水準を一人あたり産出量とともに上昇せしめるようなものであり︑し

たがつて︑たえず増大する設備のストックからのたえず増大する産出量を吸収するに十分なほどの需要がつねに存

. ( 1 )  

︑在している﹂ということである︒このような実質賃銀水準の上昇のために利潤率は不変にとどまるのである︒

これらの条件のもとでの資本蓄積の成行はさきにかかげた蓄積の表式でしめすことができるであろう︒ただしい

まの場合には人口が不変であるが︑技術進歩によって一人あたり産出量が増加するのである︒そして賃銀額の増大

は実質賃銀率の上昇を意味する︒他方︑利潤率は不変である︒資本ストックと実質賃銀率は一年につきニパーセン

右は資本の蓄積率が技術の進歩率︵一人あたり産出量の増加率︶にひとしいという条件がはじめから成立している

いまやロビンソンはこの条件が成立していない場合において﹁蓄積と技術進歩﹂の関係を論じ︑過

程分析的な議論をこころみる︒

積﹂と﹁強い蓄積﹂を区別している︒まず前者にかんする彼女の議論をしめしておこう︒

ティを一人ー一時間あたり産出量の上昇とおなじ速さでたえず拡大させることができない場合には︑労働時間数で

表示した雇用は減少する︒もし労働時間が同時に︵労働週または労働寿命を短縮することによって︶減少されつ

つあるならば︑調和は依然として保持されるであろう︒この救済法が作用しない︵あるいはあまりにも弱く作用し

一人あたり産出量の増加は雇用労働者を減少せしめる︵人口は不変であるが︶︒これは普通にている︶場合には︑

は技術的失業とよばれている︒けだしそれは表面上はおこりつつある生産力増大の直接的な結果のようにみえるか

そのさいに彼女は前述の﹁労働の過剰﹂﹁労働の不足﹂に対応して

トという恒常的な率で増加するのである︒

(7)

45 

もとずく実質賃銀の低落の傾向は︑ ﹁労働力と技術があたえられている場合には︑可能的な蓄積率の上の限界はどんな時点においてもインフレー

ション障壁によって設定される︒技術進歩がつづいており︑競争のメカニズムが作用している場合には︑実質賃銀

率は時のたつにつれて上昇するかたむきがある︒そこでインフレーション障壁は旅行者のながめる地平線のように

前方へ移動してゆく︒なぜなれば︑インフレーション障壁を作用せしめるものは︑実質賃銀が現在あるかもしれな

い水準以下に低落するということよりもむしろ過去にあった水準以下に低落するということであるからである︒し

たがつて︑蓄積率︵生産キャパシティの増大で表わした︶は累進的に上昇することが可能である︵蓄積率の上昇に

技術進歩にもとずくその上昇の傾向にうちかつことはないが︑これを圧迫す

る ︒ つぎに︑強い蓄積すなわち﹁蓄積が技術進歩に先んずる場合﹂

ロピンソンは左のように論じてい らである︒しかしそれは本質的には蓄積が人口増加と歩調をあわせえないために生ずる失業とおなじ性質のもので

﹁労働過剰の発生は実質賃銀の上昇を阻止する︒そして︵投資部門にたいする支出が維持されるかたむきがある

とすれば︶矯正的のメカニズムが作用しはじめて︑生産力と歩調をそろえるところまで蓄積をスビード・アップす

る︒しかし技術進歩は同時にそれじしん緩慢化される傾向があるのである︒失業の増加につれて︑労働者たちは生

産力の増大にラダイット的な抵抗を展開する︒そして︑つねに利用しうる労働者があるので︑企業者たちは技術改

善の導入に気をつかう動機をほとんどもたない︒要するに︑蓄積が技術の可能ならしめる率よりも緩慢になる傾向

がある場合には︑失業の増加が蓄積を引上げるかたむきがあるが︑しかし同時にそれじしんの緩慢化という重しが

( 2 )  

技術進歩の率をおくらせるのである︒﹂

ロピンソン資本蓄菰論の研究︵三谷︶

a‑,  "一~·~-.,― , .  

(8)

459 

きい場合に生ずるものと本質上おなじなのである︒ る︵企業者たちが蓄積率をそういうように上昇せしめるほど十分に活動的であるかぎり︶︒

労働不足の状態があらわれはじめる︒それは︑技術の不変な場合に︑蓄稜が人口の成長に先んずるときに生ずるの

とちょうどおなじである︒

きがある︒そして消費財にたいする需要の増加は投資部門から労働を引きぬき︑

﹁しかし同時に技術進歩は蓄積と歩調をそろえるところまでスビード・アップされつつある︒進歩の率は滋雨の

一人あたり産出量を高めるための経済的刺戟が存在するときには︑企

業者たちは発明と改善をさがしもとめる︒発見をスピード・アッ︒フすることよりもさらに重要なことは革新の普及

( 3 )  

率をスビード・アップすることである︒﹂

ロビンソンによれば︑弱い蓄積の場合または強い蓄積の場合には労働の過剰または労働の不足が生ず

︵一家族あたりの労働供給が一生のあいだの労働時間がへるにつれて減少しつつある

実質賃銀は一人あたり産出量よりもより急速に上昇し︑利潤率は低下するかたむ

それは資本の蓄積率が人口の増加率よりも小さい場合または資本の蓄積率が人口の増加率よりも大

実質賃銀率が一人あたり産出量よりもより少く上昇するかより多く上昇するかが問題である︒︶

ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶ ように天から降つてくる自然現象ではない︒ 調にまで緩慢化されるかたむきがある︒ ならば︑なおさらそうである︒︶ 蓄積がしばらくのあいだより急速であった場合には︑ る ︶

かくて蓄積率はインフレーション障壁につきあたることなしにある点まで加速的に上昇することが可能であ

︵所与の労働力をもつて︶技術進歩よりもより急速な率で永久につづくことはできない︒

人力を必要とする新資本財の増加が毎月々々生ずるから︑

したがつて蓄積率は技術進歩の歩

︵ただしいまの場合には労働の過剰または労働の不足のために

それら

(9)

460 

ちは技術改善の導入に気をつかう動機をほとんどもたない﹂と論じている︒しかし︑彼女が他の箇所でのべている

ように︑企業者はたえず利潤を事業につぎこんで生産を拡大しなければならない︒けだしそうしなければかれの事

. ( 4 )  

業は衰退せざるをえないからである︒また企業者はかれの雇用する労働者に複雑な設備をあてがわなければならな

( 5 )  

い︒かれは他の企業者よりも安く売るという競争によってそうすることをせまられるのである︒かくて︑たとえつ

ねに利用しうる労働者があっても︑企業者は競争の圧力によって技術改善の導入を強制されるであろう︒

ロビンソンは右の場合にけつきよく利潤率が上昇または低下するというのであるが︑

注意しなければならないことがある︒技術進歩がおこるならば︑資本財のストックには質的な変化が生ずる︒それ に技術進歩の緩慢化ということはどうであろうか︒ロビンソンは﹁つねに利用しうる労働者があるので︑企業者た ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

の場合にあらわれる諸結果についても︑おなじようにかんがえることができるのである︒ただ技術進歩が緩慢化さ

れたりスビード・アップされたりするという影響がつけくわわることとなる︒そしてけつきよく資本の蓄稜率と技

ロビンソンが右において技術の進歩率を自然的にあたえられるものではなく経済的条件によって左右されるもの

とみなしているのは注目にあたいする︒しかし彼女はいわゆる技術的失業の一時的な発生をみとめてもその長期的

な存在に重きをおかない︒たとえ失業労働予備軍があらわれても︑ 術の進歩率とは歩調をそろえるようになるのである︒

それは蓄積率のスビード・アップと技術進歩の

緩慢化によって減退しうるとかんがえるのである︒しかしここでつぎのことを指摘しておかなければならない︒

ビンソンは既述のような矯正的のメカニズムを援用している︒しかし︑

これによって蓄積率が十分にスビード・ア

ップされ︑投資部門における設備のストックそのものが十分に増大しうるかどうかはうたがわしいのである︒

これにかんれんして

(10)

41

はなんらかの量的な大きさとして表示されなければならない︒ロビンソンは蓄積を生産キャパシティでもつて表示

しているが︑しかし利潤率の上昇または低下が問題であるときには資本財ストックが資本価値としてあらわされな

ければならないであろう︒ここにおいて資本評価の問題がおこってくるのである︒しかしロビンソンはいまはこの

( 6 )  

問題にたちいることをわざとさけているようにみえるのである︒

( 1 )

Ro

bi

ns

on

, 

Th

e 

Ac cu m1

 ̀ 

l at i

o n  o

f 

Capital•

p . 

89 . 

邦訳︑九六ページ︒

(2

)I

bi

d.

pp.

94

95

. 

0‑10

(3

)I

bi

d.

pp.

95

9 6.

 0

0

( 4 )  I b

i d. ,

  p . 

40

. 

邦訳︑四五ページ︒

(5

)I

bi

d

'p

. 

6.

  邦訳︑七ページ︒

( 6 )

ロピンソンは第二部﹁技術的フロンティア﹂の第十章および第十一章においてはじめてこの問題をとりあっかうのであ る ︒

さてロビンソンのいわゆる﹁偏俺的技術進歩﹂の場合にふれておこう︒これまでロビンソンは﹁技術進歩が経済の

全体に一様にゆきわたつている﹂こと︑したがつて技術進歩が中立的であることを仮定してきた︒いまや彼女はそ

れとことなり技術進歩が偏筒をもつ場合について論ずるのである︒

ロビンソンはまず二つの経済ー│'アラフとベー

.トーー上を想定し︑両者における過去の技術進歩の差異によって生じている資本使用的偏荷と資本節約的偏侍につい

てつぎのように説明している︒﹁まず第一に︑.発明と発見が資本ストックのなかに十分に消化されているときの状

ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

(11)

4ol 

ま ︑

' ,.  

況を検討しよう︒ベートとアラフとにおいて労働力はおなじようである︒そして商品産出率︑実質賃銀率および資

本利潤率は両方においてまったく同一である︒二つの経済のあいだの唯一の差異は左の点にある︒すなわち︑過去

の技術進歩における偏俺のために︑アラフは︑消費部門における一人あたりの商品の産出率がより高く︑投資部門

における産出率がより低いー投資部門の産出量は一定の生産キャパシティをもつ機械で測る︒

ベートにおけるよりも︑労働力のより大きな割合が投資部門に雇用され︑

キャパシティをもつ︶の費用はより高い︒この状況を消費部門の労働者の観点からみれば︑

れの産出量はより高いが︑

り高い︵一人あたり産出量がより高くて︑.実質賃銀は同一であるから︒︶ アラフにおいて

そして商品で表示した機械︵一定の

この資本使用的偏荷や資本節約的偏荷が資本比率にたいしてもつ関係は重要であるが︑

がのちにのべている中立性の基準にかんれんして考察することとし︑ アラフにおいては︑か

かれはかれのもちいる設備を供給してもらうためにかれの産出量のうちのより大きな割

合を手ばなさなければならない︒企業者の鍛点からすれば︑消費部門における雇用労働者一人あたりの準地代はよ

しかし雇用労働者一人あたりの資本財装

備の費用はそれに相応してより高く︑そして利潤率は同一である︒アラフにおける生産技術はベートにおけるそれ

にくらべて資本使用的偏俺をもつといえよう︒またはベートにおける技術はアラフにおけるそれにくらべて資本節

( 1 )

約的偏僑をもつといえよう︒﹂

ただちにつぎにうつろう︒

ロビンソンはこんどは﹁︱つの経済における技術進歩が資本使用的偏侮をもつようになること﹂すなわち﹁革新

が消費部門では一人ー一時間あたり産出量を以前よりもより急速に上昇せしめ︑投資部門ではより緩慢に上昇せし

めること﹂を仮定して︑議論をすすめる︒そしてそういう偏荷によって実質賃銀率や利潤率︵蓄積率︶にある変化

10

 

・‑‑‑パヽ‑,.... 曹一-~-~-、-- , ..., .. ̲ 

(12)

463 

その部門における一人あたり産出量は不変であるが︶︑ 労働不足が消費部門において展開 ﹁投資部門においては一人あたり が生ずる過程について論ずるのである︒いわく﹁単純化のために︑消費部門においてひとつづきの発明がおこっているのに︑投資部門においてはしばらくのあいだ改善がまったくおこらず︑したがつて一定の生産キャパシティをもつ機械を生産するのに不変の労働量が必要とされるものと仮定しよう︒いま導入される革新の直接的な効果は消費部門における雇用の減少ということである︒けだし︑はじめに新しい生産キャパシティが以前とおなじ率であら

われているが︑消費部門で利用される各々の新しい機械装備は︑それに配置しなければならない労働者数が︑それ

によって置換えられた装備におけるよりも少くてすむからである︒失業が実質賃銀の上昇を阻止する︒そして︑前

述のメカニズムによって︑蓄積率︵生産キャパシティで表示した︶がスビード・アップされ︑消費部門から駆逐さ

れた労働の一部分は投資部門において雇用を見出す︒実質賃銀率は︵たとえ上昇したとしても︶消費部門における

一人あたり産出量よりもより少く上昇している︒そして利潤率はさしあたり以前よりも高い︒この状況は企業者た

ちにとつては投資プームとして映る︒もつともその根源は失業の出現にあったのであるが︒しばらくすると︑設備

そして︵もしそれ以上に攪乱がおこらないならば︶蓄積率と利潤のストックは新しい技術状況に適合せしめられ︑

( 2 )  

率とは以前の水準に復帰する︒﹂

つぎに資本節約的偏俺の場合についてはロビンソンは左のようにのべている︒

産出量を上昇せしめるが︑消費部門においてはこれを変化させずにおくところの︑

生産キャパシティの増加率は一時的にスビード・アップされる︒ ひとつづきの発明が︑おこなわ

( 3 )  

る︒けつきよく︑平衡を回復するに十分な労働が投資部門から消費部門のなかに引きいれられる︒﹂

(13)

lt:Er4 

ロビンソンは技術進歩における資本使用的偏俺と資本節約的偏侍がもたらす諸結果について右のようにのぺてい

るのである︒要するに︑二つの偏俯は中立的進歩をまんなかにして左右に位するものであるが︑両偏侮の諸結果は

かならずしも対称的ではない︒いまその諸結果の要点をあげるならば︑

には︑消費部門において労働過剰︵失業︶があらわれ︑実質賃銀の上昇が阻止または抑制され︑

る︒失業者の一部分は投資部門で雇用されている︒けつきよく設備のストックは新しい技術状況に適合したものと

なり︑失業は消失し︑そして利潤率は旧水準に復帰する︒資本節約的偏侮の場合には︑消費部門において労働不足

が生じ︑実質賃銀率は上昇し︑利潤率は低下する︒そのあいだ投資部門から消費部門への労働の移動がおこってい

る︒そしてその十分な移動がおこなわれたとき平衡が回復されるのである︒

ここでもロビンソンは資本使用的偏箭の場合に投資部門における現存の設備の正常キャパシティをこえる稼動を

想定して議論をすすめているようである︒しかし︑そういう稼動率の増大による産出量の増加だけで投資部門にお

( 4 )  

ける設備のストックが十分に増大し︑彼女がのべているような最終の結果が生ずるかどうかは︑疑問であろう︒な

ぉロビンソンは右の場合にも利潤率の変化について語っているが︑資本評価の問題︵および資本比率の問題︶には

10

0

( 1 )

Ro bi ns on

̀ 

 

Th e 

Ac

cu

mu

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on

  of a p   C i t a l ,   p .  

97 . 

(2 )  I b i d . ,   pp . 

97

9 8.

 0

(3 )I bi d.

p p.

98

99 .

邦訳︑一0五ー一〇六ページ︒

( 4 )

ロピンソンによれば︑資本使用的な革新の場合には︑﹁経済体系が完全雇用において運行しつづけるには加速的な蓄積 が必要であり︑そしてもし蓄積が加速されないならば︑﹃改善﹄のおこなわれる唯一の結果は全般的な窮乏の増大であ

すこしもふれていないのである︒ ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

利潤率は増大され つぎのようになる︒資本使用的偏筒の場合

―', ..'‑‑‑. ―→ → ---~---—• →  ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑

(14)

465 

る︒﹂この場合︑長期的失業が生じ.︑総消費が減退して︑産出量は減少するのである︒

(I

bi

d.

, ・ p p . 

322 

32 3.

 邦訳︑三

ロビンソンが進歩的な経済の円滑な発展のための必須条件についてのべるさいに﹁人口は不変である﹂との仮定

をもうけていることはすでにみたとおりである︒最後にロビンソンはこの仮定をすて︑人口の増加︑技術の進歩︑

資本の蓄積がすべておこる場合の︑いわゆる﹁黄金時代﹂について論じている︒その全文を左に引用しよう︒﹁技

術進歩が中立的であって︑生産のクイム・パターンのどんな変化もなしに恒常的に進行しつつあり︑競争のメカニ

ズムが自由に作用しており︑人口は︵いやしくも増加しているとすれば︶恒常的な率で増加しつつあり︑

積はすべての利用しうる労働力にたいして生産キャパシティを供給するに十分なほど急速におこっている場合に

はどんな内的矛盾も存在しない︒政治的な事件がどんな攪乱もひきおこさないとすれば︑ は︑利潤率は不変にとどまり︑実質賃銀水準は一人あたり産出量とともに上昇する傾向がある︒そこで経済体系に

そして企業者たちが将来

について確信をもち︑かれらが過去においておこなつてきたとおなじ比率でもつて蓄積することをのぞむとすれ

ば︑そこにはかれらがそうしつづけることをさまたげるどんな障碍も存在しない︒かれらがそうするかぎり︑経済

体系は攪乱なしに円滑に発展する︒その場合︑年々の総産出量と資本のストック︵商品表示で評価した︶は︑労働

( 1 )  

カの増加率と一人あたり産出量の増加率から合成される不変の比率で︑ともに成長する︒われわれはこの状態を黄

金時代とよんでもよいであろう︒

ロビンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

︵このようによぶことによって︑ そして蓄

それがどんな現実の経済においてもおこなわれ

(15)

66

ロビンソンによれば︑

﹁潜在成長率が実現されるときに 蓄積は以前とおなじ速さで進行しているの そうにない神話的状態をあらわすものであることを︑しめそうとするのである︒︶

﹁技術の進歩率と人口の成長率とを自然によってあたえられるものとかんがえるならば︑あたえられた諸条件に

そうおうした黄金時代は経済的至福の状態をあらわすものといえよう︒なぜなれば︑そのとき消費は右の増加率を

( 2 )  

維持することと矛盾しないところの技術的に可能な極大率で増加しつつあるからである︒しかしこれはきわめて啓

発的なものの見方とはいえない︒けだし︑技術進歩は自然現象ではなく︑そして人間の発明のオには限界がないか

らである︒黄金時代において︑どんな進歩率が維持されていようとも︑いつそう速かに進歩することはつねに可能

であろう︒もし蓄積率がスピード・アップされるならば.︵あるいは︑

に︑人口の成長率が低下するか︑または利用しうる労働の供給が︹労働︺時間の短縮によって減少せしめられるか

するならば︶︑労働不足の圧力が賃銀率をおしあげ︑いつそう多くの発明をおこなわしめ︑既知の諸改善の普及を促

進するであろう︒したがつて︑実質賃銀はますます速かに上昇するであろう︒長期においては︑富の成長率への制

限は︑技術的な限界によってあたえられるのではなくて︑競争の刺戟と賃銀率の上昇とが鈍化した場合に生ずる惰

.

8) 眠によってあたえられるのである︒﹂

ロビンソンがここで黄金時代の諸条件についてのべていることは︑既述のような円滑な発展のための必須条件の

なかに人口の増加率にかんするものをとりいれて敷行したものにすぎないが︑それにかんれんして若干の補註をし

出量の成長率を支配する﹂のであって︑ ﹁技術の進歩率︹一人あたり産出量の増加率︺と労働力の増加率︵一家族あた

りの労働時間の変化を考慮にいれての︶が︑不変の利潤率において恒久的に維持されうるところの︑

この成長率は潜在的成長率とよばれる︒

‑.  . ... ‑・...  ・. .. ..

(16)

467 

かけてそれに近づくであろう︒あるいは︑・失業労働予備軍がなお存在する場合には︑

て︑失業量を減少せしめるであろう︒﹂

潤率の低下を経験しつつあり︑ ﹁失業労働予備軍が存在しない場合においてさえも︑

長率よりも速かな率で蓄積され︑したがつて機械化の程度を高めるであろう︒そのとき経済は長期間にわたつて利

( 4 )

5) そして蓄積率は減退して成長率に近づきつつある︒﹂

自然的にあたえられるものではない︒けだし発明や改善の普及は経済的条件によって促進されうるからである︒か

くて蓄積率の上昇が技術の進歩率に影響する場合がみとめられるのである︒しかし︑技術の進歩率の︑したがつて

潜在的成長率の頻繁なかつ不規則な変化︑または技術進歩の偏俺におけるそういう変化は︑黄金時代のための諸条

( 6 )  

件を破壊するものとみなされるのである︒

これまでのロビンソンの議論が︑ボェーム・バウェルクやウィクセルの資本理論における静態分析の域を

はるかにこえるものであることは︑あきらかである︒またそれはハロッドの動態理論とくらべてもいちじるしい相

( 7 )  

違をしめしているのである︒なによりもまず両者の理論的な重点のおきどころのちがいが目につくのであるが︑と

くにロビンソンのいわゆる黄金時代にかんれんしているそういう相違は重要であろう︒ハロッドの動態方程式にお

いつつある経済は失業の増加を経験しつつある︒﹂

資本はしばらくは成 一時的には成長率を追いこし しかし﹁しばらく成長率におくれたのち︑蓄積率はそれを追い ﹁より低い率で蓄積をおこな したものでなければならない︒︶ おこなわれているのである︒ は︑経済は黄金時代にある﹂が︑その場合には中立的技術進歩のもとに恒常的な成長率とおなじ速さで資本蓄積が

︵資本財の懐妊期間は平均して不変であり︑資本ストックの年齢構成は成長率に適当

もちろん潜在的成長率と資本蓄積率とは一致しないかもしれない︒しかしながら

潜在成長率は﹁不変の利潤率で恒久的に維持されうる最高の資本蓄積率﹂をしめす︒

なお技術の進歩率はけつして

(17)

468 

マルクスのとはちがつて︑ いう命題や︑利潤率は不変にとどまるという命題などが︑注意さるべきであろう︒

ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶

いて現実成長率と保証成長率と自然成長率の乖離による経済の不安定や長期停滞が重視されているのに反して︑

ビンソンの黄金時代のモデルにおいては﹁現実成長率と自然成長率とは相互にひとしく︑そして保証成長率はそれ

( 8 )  

らにみずからを適応させている﹂とみなされ︑そういった誦和的な発展に重点がおかれているのである︒

つぎにロビンソンの議論をマルクスの資本蓄積論とくらぺるときは︑個々の概念や考え方における若干の相似を

( 9 )  

見出しうるけれども︑むしろ黄金時代にかんれんしての方法や仮定の相違と理論的命題の相違がめだつのである︒

方法の相違はくわしく指摘するまでもなく顕著であるが︑そのうち重要なひとつにはすぐあとでふれておきたい︒

仮定の相違については︑技術進歩が中立的であるとする仮定や︑潜在的成長率とおなじ速さで資本蓄積がおこると

ロビンソンのアカデミックの方法は﹁マアシャルからリカアドウやマルクスヘの復帰﹂をしめすものであるとみ

( 1 0 )  

なす見解がある︒しかしこれはなっとくできない︒ロビンソンはマルクスから資本蓄積の問題を学んだけれど

( 1 1 )  

も︑これをマルクスの方法とはことなるアカデミックの方法で解決しようとしたのである︒右の見解によれば︑

ビンソンの主要な議論はリカアドウやマルクスにおけるとおなじように言語数学でなされ︑ときどき算術的例証が

あたえられている︒しかしそれはリカアドウやマルクスのよりもむずかしい︒それがむずかしいのは︑

しば抽象的非現実的仮定に依頼しているからではなくて︑ それがしば

それが一般的均衡体系に接近しているからである︒その

( 1 2 )  

ために読者はかれの頭のなかで半ダースの連立方程式を解かなければならない︒たしかに︑

一般的均衡体系︑とくに比較静学的方法を想起せしめるものがある︒しかしこれこそ彼 する仮定などが︑注目される︒理論的命題の相違については︑

一人あたり産出量とともに実質賃銀率が上昇すると

↓  - ~ —-- --—---- ‑‑

(18)

469 

かがあらためて問われなければならない︒ 女のアカデミックの方法の一特徴をしめすものであろう︒

マルクスが資本の蓄積過程を自己運動としてとらえ︑その本質的傾向をあきらかにするのとことなり︑

ンは︑与件としての人口増加が技術進歩とともに経済成長率を支配するところの長期均衡をば分析し︑その必要条

( 1 3 )  

件をしめすのである︒前述のように︑彼女はときどき過程分析的な議論をこころみているけれども︑これは右の長

(1 4)  

期均衡の分析を中心としてこれにたいして求心的な関係をもつているにすぎないのであるC

ロビンソンのいわゆる黄金時代については︑

それが現実にたいしてどのような関係をもつものである

ロビンソンによれば︑それは単純なモデルにほかならないのであって︑

さきの引用文では﹁どんな現実の経済においてもおこなわれそうにない神話的状態﹂をあらわすものとみなされて

( 1 5 )  

いる︒またそれは﹁はなはだ人為的であるばかりでなく︑いくぶんか形而上学的でもある﹂という批判ものべられ

( 1 6 )  

ロビンソンは黄金時代における﹁恒常的な発展のモデルは恒常的でない発展を論ずることを可能

( 1 7 )  

ならしめる分析上の工夫である﹂とかんがえるのである︒これはずつとまえに彼女の方法について指摘しておいた

ロビンソンは黄金時代の恒常的な発展を想定するが︑見解とおなじである︒すなわち︑

のとみなすのではなく︑むしろこれを現実の不安定な経済の循環的変動やその結果としてあらわれる趨勢と対比し

( 1 8 )

1 9

)  

て︑そのあいだの距離を問題とするのである︒そしてこれによって資本主義経済の不安定性をあきらかにしようと

( 2 0 )  

するのである︒

(1 )

これをもっと正確に表現するならば︑左のとおりである︒aを労働力の増加率︑

ロピンソン資本蓄積論の研究︵三谷︶ これをただちに現実的なも

bを一人あたり産出量の増加率とすれ

参照

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