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修士学位論文

ファミリー企業において社会的情緒資産が人的 資本を通じて業績に与える影響

頁 1~35

指導教員 高尾 義明

2020

1

10

日提出

首都大学東京大学院

経営学研究科(博士前期課程)経営学専攻

学修番号 :18836317 氏名

し め い

:

井関

い せ き

俊 介

しゅんすけ

(2)

2 目次

第一章 序論

第一節 はじめに ... 3

第二節 本論文の構成 ... 4

第二章 ファミリービジネスについて 第一節 ファミリービジネス(同族企業)に関する定義について ... 5

第二節 ファミリービジネスにおけるフレームワークについて ... 6

第三節 ファミリービジネスにおける主要理論について ... 7

第三章 先行研究について 第一節 過去の実証研究 ... 9

第二節 社会的情緒資産に関する先行研究 ... 11

第三節 先行研究の課題 ... 13

第四章 本研究の方法 第一節 本研究で使用する定義とデータ ... 14

第二節 質問紙調査の内容 ... 17

第三節 予備的分析 ... 21

第五章 実証分析 第一節 実証分析Ⅰの内容 ... 25

第二節 実証分析Ⅱの内容 ... 27

第三節 小括 ... 29

第六章 本研究の要約及び考察 第一節 本研究の要約及び考察 ... 30

第二節 本研究の課題と展望 ... 31

謝辞 ... 33

参考文献 ... 35

(3)

3 第一章 序論

第一節 はじめに

本研究の目的は、日本のファミリー企業において社会的情緒資産が資源ベース理論において 人的資本を通し業績にどのような影響を与えるかを明らかにするものである。

近年、日本でもファミリービジネスへの関心が強くなっており、ファミリー企業の長期間に わたる好業績や長寿性に関する議論が多くされている。そもそもファミリー企業とは創業者一 族で企業の株式を保有し、経営している企業をファミリー企業という。またその企業を維持、

繁栄していく事をファミリービジネスという。明確な定義付けはされていないが、現在、日本 でファミリー企業の割合は9割と大半がファミリー企業である。株式を市場に流動化している 上場企業でさえ4割を超える。またアメリカ、ドイツ、フランスの上場企業でもそれぞれ3 割、5割、6割がファミリー企業である。

一般にファミリー企業は長期的な経営の目線から業績が安定しており、先行研究でも倉科

(2008)はファミリー企業を非ファミリー企業と比較して業績が安定していると論じている。

後藤(2012)では日本のファミリー企業と非ファミリー企業の売上高経常利益率はそれぞれ

5.7%と4.5%、ROE1.9%と0.2%とそれぞれファミリー企業の方が高い。またアメリカのフ

ァミリー企業と非ファミリー企業の売上高利益率は0.1%と0.08%、ROE5.89%と4.26%と なっており、日本と同様にファミリー企業の方が高い。(日経ベンチャー2007年4月号)。

またファミリービジネスはその「長寿性」も特徴としてあげられる。後藤(2012)によれば 創業以来100年以上続くファミリービジネスの数は52,000社と推測している。さらに200年以 上続いた世界の長寿企業を8,785社とした中で、日本のファミリービジネス数を3,937社であ るとしている。

しかしファミリー企業にもいくつか問題点があり、2014年以降は出光と昭和シェルの統合 に対し異議を唱えた創業家やユニクロの後継者問題、武田薬品に外国人CEO就任に意義を唱え た創業家、サントリーの外部からの社長招集などがメディアを賑わせている。

その為、創業一族の発言権と企業の経営によるバランスが難しくガバナンスに課題があると されており、この点はファミリービジネスにおいて否定的な見方が強い。では、なぜそのよう な課題が発生するのかであるが、主な理由としてファミリーのメンバーは経営者、株主、家族 と複数の立場が存在し、それぞれにおいて発言力が強い事にある。企業のステージや規模によ ってどの立場を重要視するかは変わってくるが、他のステークホルダー、すなわち従業員、一 族外株主、一族外役員からすると、企業を長期にわたり維持、発展を目指すファミリーメンバ ーに対しその時々により優先順位が変わってくるためコンフリクトが発生する傾向がある。

またファミリー間の対立も発生するケースがある。2015年に大塚家具の経営陣が創業者と娘 の御家騒動により大きく変わっている。業態も過去からの高級路線から方向転換をしており大 きく変わっている。その後当社の業績はどうなったかというと2016年、2017年と大幅赤字、

また社内に創業者側の旧経営陣と娘側の新経営陣が滞在しガバナンスに大きく影響を与えたと いえる。

倉科(2010)ではファミリービジネスの独自の視点の必要性について、次のように述べてい る。「なぜファミリー企業独自の経営学が必要なのか。この経営学は普通の専門経営者企業の 場合より複雑である。ビジネス課題、ファミリー課題およびオーナー課題の常に三位一体での 解決が求められ、あまりに人間臭いから研究が十分に進んでおらず、実態把握と理論体系の整 理が遅れている分野である。」と論じている。以上より業績が安定し、長寿性のあるファミリ ー企業であるが問題点も多く、企業と家族という観点からどのようにバランスを取り経営して いくかによって、その組織の方向性は大きく変わっていくといえる。

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業績が安定し長寿性があると言われるファミリー企業であるが、先行研究においては上場企 業を中心に株式の所有や経営権に関する要因から財務分析について検証されているものがほと んどである。つまり、株式を保有するという今現在の状況について業績への影響度合いを検証 しているに留まっている。しかしファミリー企業の強みの一つである長寿性というのは業歴が 長ければ長いほど、組織に蓄積される為に優位性は強くなっていくと言われている。

つまり、ファミリー企業が長年培ってきたノウハウや暗黙知などは企業の資本構成や財務諸 表には計上されず簿外となり検証が進んでいないのが現状である。そこで、本研究では、ファ ミリー企業が他の企業にはない競争優位を明確にすることについて試みる。

第二節 本論文の構成

前述した研究目的のもと、第二章では先行研究を元にファミリービジネスに関する定義、主要 フレームワークで株主、経営者、家族という組織におけるそれぞれの立場について説明。その 上でファミリービジネスにおける主要理論について説明し、ファミリー企業特有のメリット、

デメリットを説明する。

次に第三章では、過去の先行研究をもとにファミリービジネスに関するリサーチデザインを 検討する。現状の先行研究でどこまで、研究が進んでおり、どの部分が進んでいないかを明ら かにする。また進んでいない部分をもとに本研究で使用するデータと、その内容を説明する。

第四章から本研究の方法について説明する。サンプル対象、調査方法について説明する。実 証分析をもとに社会的情緒資産が人的資源に与える影響について分析を進めるべく、まず本研 究の検証方法および分析手法についても説明する。

第五章では実証分析Ⅰとして社会的情緒資産と人的資源への影響について検証していく。ま たその後、実証分析Ⅱとしてファミリー企業における人的資源と売上高利益率の関係性につい て検証していく。

第六章では本研究の要約及び実証分析の結果について纏める。また、その内容についての考察 を進め、理論的含意と実践的含意を纏めた上で今後の展望を示す。

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5 第二章 ファミリービジネスについて

第一節 ファミリービジネス(同族企業)に関する定義について

ファミリー企業研究で一番の問題はファミリーの定義である。これまでの定義は下記の通り である。

図表1:ファミリービジネスの定義

このようにファミリー企業の定義は、まだ明確には決まっておらず企業の規模、業歴、株主 等によって変わってくるといえる。例えば倉科(2003)は、ファミリー企業は①事業承継者と してのファミリーの一族の名前がとりざたされている。②必ずしも資産形成を目的としている のではなく、ファミリーの義務として株式を保有している。③ファミリーが重要な経営トップ の地位に就任している。また入山・山野井(2014)では、一般に同族企業とは「創業者・ある いはその一族が経営に関与する企業」と定義されるとし、関与の方法として①創業者が企業の 株式を一定比率以上保有して、主要株主として間接的に関与することである。「同族所有」

(family ownership)と②創業家のメンバーが当該企業の社長・役員になることで、経営に直 接関与する「同族経営(family management)」の2つがあるとしている。

出典:今村明代『創業者一族の経営とコーポレート・ガバナンス』中央経済社,2017年

今村(2017) 創業者ないしは創業者の一族または創業者一族と密接な関係を持つ法人である有限会社や財団法人が 大株主10位以内に位置している企業

茶木(2008)

ファミリーとは創業家を指す。「10大株主の中に創業者または創業者一族およびその関連企業または 財団が名を連ねており、かつ一族が会長または社長の地位にある(定義1)」に該当する企業をファ ミリー企業と定義。ファミリー企業の形態は普遍的なものではなく歴史の中で、(定義1)から「10 大株主の中に創業者または創業者一族およびその関連企業または財団が名を連ねているが、会長また は社長に一族のものが就いていない(定義2)」、「10大株主には創業者または創業者一族およびそ の関連企業または財団が名を連ねていないが会長または社長には代々一族のものが就いている(定義 3)」へと時々の状況(創業家の家族構成、経営環境等)によって変化。経営のトップの定義は会長 もしくは社長。経営者が経営の実態を掌握するには、法律的に担保されている地位であり、しかも実 質的な人事権を掌握できる会長または社長の地位以外は考えられないこと

Saito2008 一族による持ち株比率が5%以上で一族出身者が社長もしくは会長を務めている

森川2008 ファミリー企業で一族の株式所有比率が高い

菊池(2010) 創業一族が当該企業の社長を世襲し、経営研を掌握していること

Demsets and Lehn1985 上位5位の株主に創業家の個人株主かその持株期間が含まれる

Leench and Leahy1995 創業家が会社を所有

anderson and Reeb2003 創業家メンバー取締役会に加わり、株式の5%を所有

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6 図表2:同族企業の分類

出典 入山・山野井(2014)をもとに筆者作成

ファミリービジネスに関する実証研究はまだ多くないが、その中で主要なフレームワーク及 び現在のファミリービジネスを研究する上で密接に関わる主要な理論について説明する。一つ 目がフレームワークとしてスリーサークルモデル、二つ目がスリーディメンションモデル、三 つ目が主要理論としてエージェンシー理論(Miller & Breton Miller, 2006)、四つ目がスチ ュワードシップ理論 (倉科2008)、五つ目が資源ベース理論、六つ目が社会情緒資産理論(SEW 理論)である。そのファミリービジネスにおけるフレームワーク、理論について次節以降で説明 していく。

第二節 ファミリービジネスにおけるフレームワークについて

ファミリービジネスにおけるフレームワークは、ファミリー企業特有のステークホルダーの 立場を説明するためのものである。非ファミリー企業において通常、意思決定する場合、会社 法に基づき取締役会と株主総会にて経営判断を行っていく。つまり株主から経営を任せられた 取締役が業務運営を行っていくというものである。しかしファミリー企業においては家族とい う立場が存在する。つまり、取締役や株主が経営判断を行ったとしても家族という立場で物事 を検討するという考え方がある。当然に経営判断の内容によっては取締役、株主、家族のそれ ぞれの立場において不一致となった場合、コンフリクトが発生する事もある。下記フレームワ ークにおいてはその立場について説明したものである。

≪スリーサークルモデル≫

スリーサークルモデルとはファミリー企業において主要なステークホルダーである、家族、

株主、経営者を三つのサークルで分け、それぞれの領域における立ち位置を示したものであ る。

ファミリービジネスを展開する同族企業のメンバーにも「家族(ファミリー)」、「所有

(オーナーシップ)」、「経営(マネジメント)」の3つに大きく分かれている。

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スリーサークルにおいてファミリー企業には非ファミリー企業と比較して多くのステークホ ルダーがいて、それぞれの立場で目的や利害が異なる事を意味している。例えば企業のトップ がする経営判断の内容によっては(1)と(3)で株式を所有するオーナー家から意見が出て くる事で折り合いのつかないケースがある。先に述べた事例として出光と昭和シェルとの統合 や大戸屋HDの創業家と経営陣との騒動はまさにこの複雑さに起因していると言える。また同じ ファミリーであったとしても、大塚家具のようにファミリー同士での対立が発生し経営に影響 を与えることもある。つまりファミリー企業においてこの構造により非ファミリー企業とは違 う特有の議論が行われるのである。

≪スリーディメンションモデル≫

二つ目のフレームワークとしてGersik et al.(1997)が論じていているスリーディメンショ ンモデルがある。これはスリーサークルモデルと同時に発表されたフレームワークであり、こ れは前述のスリーサークルモデルに時間軸の概念を入れたものである。時間の経過と共にファ ミリーの縁者は増大しビジネスは拡大し、オーナーシップは分散していく。

このスリーディメンションモデル(三次元発展型モデル)の中でのポジションを分析するこ とで、ファミリー企業の課題を環境や時間の変化に応じて深く理解するためのフレームワーク である。つまり一族内外に問わず、それぞれのステークホルダーが正当性を主張する場合、企 業の時間軸が重要となってくる。

第三節 ファミリービジネスにおける主要理論について

一方でファミリービジネスにおいて主要理論はファミリー企業の強み、弱みを分析する為の ものである。先に述べたフレームワークの通りファミリー企業には家族という立場が存在す る。その家族という立場が企業に存在する場合、組織運営上どのような違いがあるかを下記主 要理論にて説明する。

各領域におけるステークホルダー

(1)親族、社員以外の株主

(2)一般の役員・従業員

(3)株を保有せず、役員・従業員でない親族

(4)親族以外で株を保有する役員・従業員

(5)株を保有しない親族の役員・従業員

(6)株を保有し、役員・従業員ではない親族

(7)オーナー社長、株を保有する親族の役員、授業員

(出典)大和総研グループHP ファミリービジネスを構成する3要素(スリーサークルモデル)

図表3 3サークルモデル

Taguri and Davids,Bivalent attributes of the family firm(Family Business Review 1982)

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所有

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経営

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ファミリー

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≪エージェンシー理論≫

ファミリービジネスを説明する代表的な理論の一つとしてエージェンシー理論がある。経営 者である社長などが、自身の経営する企業の株式の大半を所有することが特徴としてあげられ る。つまり株式の所有と経営が一致している状態にある。一方、創業者一族ではない人材が社 長などの経営者として経営する企業においては、株式の所有と経営が分離している状態であ る。入山・山野井(2014)はエージェンシー関係を「あるビジネス行為において依頼人(プリ ンシバル)が代理人(エージェンシー)にその行為おいて焦点をあて企業ガバナンスにおいて は株主がプリンシバル、経営者がエージェントとなる。」と説明している。エージェンシー理 論では、依頼人=プリンシパルと代理人=エージェントとの間に情報の非対称性が存在し、株主 は経営者の行動を完全に把握することが出来ない。故に、株主の意に沿わずに経営者が自らの

便益だけを追求する為「エージェンシー問題」が発生すると言われている。

ファミリー企業においては正の影響としてエージェンシーコストが発生しない事が挙げられ る。後藤(2006)によると「所有と経営が分離している一般企業ではエージェンシーコストが 発生するが、ファミリービジネスにおいてはエージェンシー問題から比較的無縁であり、監視 やインセンティヴなど余計な経費を必要としない」としており、この点は一般的にファミリー ビジネスにおける強みとしている。一方で負の影響としては経営者の暴走が挙げられる。株主 と経営が一致している事からエントレンチメント効果が増大し経営者が自己利益を志向して利 己的行動が強まるとされている。エントレンチメント効果とは経営者の持株比率が大株主に存 在する企業においては経営者の自社株式所有が経営者自身の私的利益を追求してしまうという ものである。つまり短期的ビジョンの結果負の側面として経営者の暴走が考えられる。

≪スチュワードシップ理論≫

スチュワードシップ理論とは、他人から委託された仕事を委託者の為に実行する職務並びに 精神のことを言う。スチュワードシップ理論では、人は組織や社会の為に目的を達成しようと 行動をすることで個人の効用が最大化され、自己実現につながるという人物像を想定してお り、エージェンシー理論の自 己の効用を最大化するために合理的な行動をとる人物像とは反対 の人物像を想定している。後藤(2012)によると定義ではスチュワードシップとは受託責任と 訳され、他人から委託された仕事を委託者の為実行する職務ならびにその精神を意味する。多 くのリーダーや経営者は自らの経済的欲求を求めるよりも、むしろ担当する職業の目標達成に 向け利他主義的行動をとるというものである。このスチュワードシップは所有と経営が一致す るファミリー企業において顕著に見られる傾向である。つまりファミリー企業の経営者はファ ミリーや従業員を含む利害関係者を大切にし、組織全体の最善をつくそうとする動機づけが高 く、この行動が長期的な利益貢献を生み出す理論である。

≪資源ベース理論≫

資源ベース理論では、企業内部の経営資源に注目して経営戦略を立案する RBV(Resource Based View)という視点について、Barney は、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性 (In-imitability)、組織(Organization)という 4 つの視点を述べている。以下にあげる先行研 究では、ファミリービジネスはこのような資源が一般企業に比べ多く保有している可能性が示 されている。

第一には、人的資本があげられる。ファミリービジネスは世襲などによって早期から経営者 としての教育や専門的な知識・スキルの修得が可能である。また、ファミリーメンバーの企業

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に対する高いコミットメントや忠誠心、モチベーションを持つ人材を有すると倉科(2008)は 論じている。後藤(2006)は「ファミリーと個人及びビジネス間のシステム相互作用から生じ る企業に固有の資源の束」と定義している。この資源の束の根源はファミリービジネスにおい て創業者精神であり、世代を経由する伝統をえて凝縮され固有の企業文化として定着すると説 明している。そしてこの固有の企業文化が顧客に対してブランド認知される存在となり、暗黙 知として形成され競争優位の源泉になると述べている。また奥村(2015)においても永続する ファミリービジネスはその「ファミリー名」自体が強いブランド力を有しており、トヨタやス ズキなど規模のファミリー企業は、今日においてはそのブランド名ごとに価値があり希少で模 倣困難であると指摘している。

第二には、組織資本があげられる。所有と経営が一致していることで、株主への配当等を最 優先することなく、事業の継続や成長に導く為の長期展望を可能とする(Druex1980)。また、意 思決定権限が集中することで、あらゆる面において効率性が増加し、リーダーシップ効果が増 大(Tagiuri and Davis 1996)すると考えられている。その他にも、企業のブランドネームやフ ァミリーネームへの高い関心と注意(Ward 1997)を持つことで、経済状況に捉われない長期的な 視野に立った経営を可能とすると考えられている。このブランドネームやファミリーネーム は、一般企業には模倣が出来ない競争力の高い経営資源であると言える。

また事業承継の視点からみても創業者意識の持続性と事業承継能力の高さ、次世代に受け継 がれるため長期的視野での効率的投資が可能とされている、世襲によって暗黙的人的資本の蓄 積が促進されることが示される。

第三には、社会関係資本である。地元地域の取引先(仕入れ先、販売先、銀行など)、地元出 身の従業員、広く深い関係を持つ人脈など、過去からの企業活動の蓄積による地元地域のネッ トワークを持つ(Zahra 2010)。

≪社会的情緒資産理論(SEW)≫

ファミリービジネスにおいて創業者一族が非財務的効用を追求するという理論であり、入 山・山野井(2014)ではこの非財務的効用を三つ(Gomez-Mejia et al,2011)に整理している。

一つは、長年にわたる経営の経験について自身のアイデンティティと強く結びつけること で、自社を「保有・経営」することに強い関心を持ち、創業者一族の自社に対する強い感情的 な結びつきがあるということである。

二つは、創業者一族は、自らの象徴である自社を後継世代である子孫に伝えていく為に、

「事業による一族の永続」に関心を持つということ。

三つは、ファミリービジネスは、ファミリーメンバーの幸福に強い関心をもち、互いに助け 合うことを厭わない「創業者一族内の利他主義」をもつということである。

つまり社会的情緒資産とはファミリーとビジネスという2つのシステムの集まりによって特 徴づけられており、これらは双方において相乗効果を持ち、それゆえにファミリーとビジネス に分離ができずに模倣が難しい競争優位の源泉とされている。結果、資源間の相互作用を通じ て時間をかけてケイパビリティとして開発される。そのため社会的情緒資産はファミリー要因 によって影響をうけるすべての特徴と位置付けられ、資源と能力に深く繋がったものとして考 えられている。

上記から本理論はファミリー企業と非ファミリー企業を比較し、特有の行動をとると説明し ている理論である。しかし、奥村(2015)はあくまでも社会的情緒資産についてファミリー企 業がどのような思考により意思決定を行ったかについては説明可能であるが、なぜファミリー 企業が成功・失敗するかには答えられないと指摘している。つまり先行研究において社会的情 緒資産が資源ベース理論に与える影響は明確でなく、実際どの程度競争優位が図れているか判

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明していないのが現状である。そこで本研究では両理論についての関係性、影響について検証 をする。

第三章 先行研究について 第一節 過去の実証研究

国内の先行研究では財務分析によるエージェンシー理論やスチュワードシップ理論の研究は いくつかあるが一方でファミリービジネスにおける資源ベース理論や社会情緒資産理論に関す る実証研究は特に少ない。下記は財務分析の研究については先行研究においてファミリー企業 と非ファミリー企業を対象にそれぞれ異なった定義付けで異なった期間で実施されている。

Anderson and Reeb(2003)は1992年のアメリカS&P500社を対象に1992年~1999年の期間 において総資本当期純利益および総資本EBIDA率について検証をしている。結果はファミリー 企業の方が業績が良いとされている。

木村(2003)は1999年の東証一部上場企業のうち売上高500億円以上の代表30社を対象に 1984年~1998年の期間において株主資本当期利益率を検証している。また斎藤(2006)は 1990年時点の東証一部、二部、大証一部、二部に上場している企業を対象に1990年~1998年 の期間において総資本利益率について検証をしている。茶木(2008)は20043月末の東証一 部上場企業のうち、一定にファミリー企業の多い業種を対象に総資本営業利益率について検証 している。森川(2008)は経済産業省の「企業活動基本調査」と中小企業庁「企業経営実態調 査」の2つの個別データにおいて1998年にマッチングできた企業を対象に1998年~2004年ま での期間を対象に総資本営業利益率(ROA)の検証を実施している。倉科(2008)は金融機関を 除く東証一部、2部上場企業を対象に2002年~2006年の期間において売上高経常利益率および 総資本効率(ROA)、純資本効率(ROE)を検証している。また今村(2017)では製造業の上場 企業を1223社を対象に総資産税引前当期利益率について検証をしている。すべて業績の関係と してファミリー企業の方が優れているとしている。

上記の先行研究は主に財務分析における調査を行った論文が大半であり創業者やその一族が 経営に関与する企業と、それ以外の企業では、財政状態や経営成績にどのような差異が生じる のか、上場企業の膨大なデータベースをもとに分析したものである。上記分析についての検証 が大半はエージェンシー理論に関するものであり、検証したタイミングでの資本構成に基づい て分析をしている。また検証期間も5~10年程度のものが多く、検証するタイミングの資本構 成に基づくものである。また検証している情報も財務内容が公開情報されている上場企業を対 象としたものであり、バブル崩壊等のイベントにも大きく影響を受けていると言える。その為 ファミリー企業特有の長期的ビジョンに基づく業績に対して適切の検証できているかは不確か であると考えられる。

ファミリービジネスの理論を踏まえChrisman, Chua, and Sharma(1998)は下記2点を強みと して論じている。

① 経営と所有が一体であり、エージェンシーコストが発生しにくい。

② 生え抜きのサラリーマン社長と比較すると経営戦略が長期的目線となる。

つまりファミリーで企業経営に足しうる暗黙知のノウハウが世代を渡り蓄積されている。

① と②については上記財務分析を基にした先行研究のもと定量的な検証をしやすく公開情 報を元に実証研究が進んでいると言える。一方で暗黙知のノウハウとは非常に可視化しにくい ものであり、国内、海外ともに先行研究において定量分析主流であるファミリービジネスにお いて実証研究が進んでいない部分であると言える。

次に資源ベース理論に関する国内の先行研究は下記の通りである。嶋田(2013)では経営資 源による競争優位の分析評価フレームワークにより、ファミリー企業の優位性を経営資源とし てカテゴリー化している。しかしファミリー性の定義が国内では確一していないと論じてい

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る。また沈(2014)では一族の学歴、養子制度に着眼し、人的資源が業績に与える影響を定量 的に分析しており、学歴、養子制度は企業のパフォーマンスに優位性があるとしている。加藤

(2014)ではミツカンの事例によりファミリー企業における社内での企業家活動がオーナー経 営を続けていく為のガバナンスへの影響を論述したものである。田尻(2014)はファミリー企 業におけるオーナー家が社内に君臨している場合での従業員に対して満足度調査。従業員のモ チベーションには直接的な影響はないと結論づけている。中小ファミリービジネス企業におけ る社会的情緒資産と社会関係資本が与える業績への影響を検証している古手川(2016)は中小 ファミリービジネスの所有への関心、経営への関心、ファミリーの幸福への関心は売上高成長 率への影響を質問票により分析。それぞれの関心は売上高成長率に正の関係があるとしてい る。

倉科(2003)は「一般的にファミリーの持株を背景に、経営者は引退の土壇場になるまで、

あるいは後継者問題が企業やファミリーに 危機をもたらすまでは後継問題を真剣に考慮しな い」と論じている。一方で先に述べた通り ファミリー企業の特性としてSEW理論のように長期 的目線で経営を行う事に強みがある。 しかしその強みもファミリービジネスを維持していく上 で様々な弊害がありまたどのような効果があるかも、まだ証明されていないのが現状である。

例えばMiller and Steier(2004)は承継により外部から専門的経営者の登用がないこと、ファ

ミリーの事情や状況に左右される経営になること指摘している。

上記先行研究の中で唯一、ファミリービジネスに関する理論として社会的情緒資産について 古手川(2016)が実証研究として質問紙調査をもとに検証をしている。そこで次節でその内容 について詳しく説明をする。

第二節 社会的情緒資産に関する先行研究

≪研究内容≫

古手川(2016)の研究内容は大きく分けて二点あり、一点目はファミリー企業の経営者を対 象に社会的情緒資産に関する『保有・経営することに強い関心』、『事業による一族の永続』

『ファミリーメンバーの幸福に強い関心』が業績にどのように影響を与えるかについて検証し ている。二点目はファミリー企業の過去と現在における地場のステークホルダーとの結びつき が業績にどのように影響を与えるかを検証している。つまりファミリー企業において過去から のステークホルダーとの結びつきは有益であるが、ある程度企業として安定した後については 逆にステークホルダーとの結びつきが意思決定において柔軟性を欠如させ、適切な資源配分を 鈍らせる為に負の影響を与えるとしている。

ファミリービジネスにおいて財務指標以外の実証研究が少ない理由の一つとして、研究が経 営者一族を対象にしているからであると言える。会社役員や従業員を対象とした時、アンケー トや実験を用いた実証研究が通常あるが、経営者を対象にした場合、アンケートについてのサ ンプルを一定数以上、収集する事が困難であると考えられると論じており、社会的情緒資産と 業績の関連性を検証している先行研究は存在しないと述べている。

≪仮説≫

古手川の仮説は次の通りである。

仮説1:中小ファミリービジネス企業の所有への関心、経営への関心、ファミリーの幸福

への関心は売上高成長率に全て正の影響を与える。

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仮説2:中小ファミリービジネス企業の過去からのステークホルダーとの結びつきは売上高

成長率に正の影響を与えるが、現在のステークホルダーとの結びつきの強さは負の

影響を与える。

≪研究方法≫

質問紙調査としてマクロミルにアンケートを実施。対象者として①所属する組織が非上場企 業であること。②創業一族の2代目以降である。③回答者が経営者またはそれに準ずるもので ある事としている。

アンケートの内容は下記3点を主要の質問項目として実施。古手川(2013)が作成した質問 を対象者が5段階のリッカート尺度にて回答する形式となっている。

・社会的情緒資産に関する質問を所有への強さ、経営への関心の強さ、幸福への関心の強さ

・創業時から現在までのステークホルダーの影響の強さ

・現時点におけるステークホルダーの影響の強さ

また、ダミー変数として売上高、株式保有比率ダミーを投入している。

≪結果≫

社会的情緒資産については所有、経営、ファミリーの幸福とそれぞれ売上高成長率には正の 有意な関係にはないとした。理由として中小企業において創業経営者が2代目以降に承継した 際に後継者に十分な教育が出来てない可能性や、後継者のアントレブレナーシップの欠如を 示唆している。

また地場のステークホルダーとの結びつきは過去及び現在についてそれぞれ売上高成長率に について正の有意な関係であるとした。理由としては従来から現在においても地場とのステー クホルダーとの結びつきはファミリービジネスにおいて重要なリソースであり地域との強固な ネットワークや信頼関係は業績への貢献として不可欠であるからとしている。結果、仮説1、

仮説2とも不支持という内容となった。

≪限界≫

古手川(2016)の限界として、社会的情緒資産に対しての質問を独自に作成している事であ る。

しかし古手川(2016)では入山・山野井(2014)の論じた『保有・経営することに強い関 心』、『事業による一族の永続』『ファミリーメンバーの幸福に強い関心』という3つの定義 に基づき独自の質問を作成しており、社会的情緒資産の尺度は、実証研究が存在しないという 点で古手川(2016)の質問紙調査を非常に新規性の高いもので考えられる。しかし、社会的情 緒資産の尺度が売上高成長率に影響を与えるかについては、直接的な影響の間に中間変数とし て別の理由も検証できる余地があると考えられる。本研究においてはその中間変数を資源ベー ス理論の人的資本を挙げて検証する。

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13 第三節 先行研究の課題

先行研究の課題として、以下に述べる三点が挙げられる。一つ目は先に述べた通り、資源ベ ース理論と社会的情緒資産の関係性について論じている先行研究が極めて少ない事である。フ ァミリービジネスにおいて実証研究として検証されているのはエージェンシー理論、スチュワ ードシップ理論に関連する財務分析が大半である。その為、財務諸表が公開されている上場し ている大企業を中心としており、また資源ベース理論と社会的情緒資産についての関連性は検 証されていない。嶋田(2013)のように資源ベース理論をファミリー企業における競争優位と して捉えカテゴリー化している論文はあるが、その経営資源がどの程度業績に影響を与え、な ぜファミリー企業にとって優位にあるかは先行研究において検証が進んでいない。

二つ目がファミリー企業と非ファミリー企業を比較した研究は進んでいるがファミリー企業 というカテゴリーの中で創業者か2代目以降か分類せずに検証している事である。本来ファミ リー企業とは長期的なビジョンにおいて業績が長期に安定している事が正の影響として強みで ある。つまり代が重なれば重なるほど創業一族のノウハウは組織に蓄積される。しかし、先行 研究においては資本構成によるファミリー企業と非ファミリー企業の比較となっている為に、

本来のファミリービジネスの特色が考慮せずに検証されている可能性が示唆される。

三つ目がファミリー企業の業績に関する優位性は一定の期間での株の保有比率に合わせて測 定されているために、業歴が長い企業においては過去から蓄積されているノウハウや暗黙知の ようなものは測定されていない事である。つまりファミリー企業における業績が安定している という先行研究では、検証のタイミングにおいてエージェンシーコストについてファミリー企 業と非ファミリー企業を比較して発生していないという証明しているのみである。その為に創 業一族の長期ビジョンや、その長い年月をかけて蓄積された経営資源は測定されていないと考 えられる。

上記3つの課題から本研究のリサーチデザインとして先行研究において実証分析の進んでい ない社会的情緒資産及び資源ベース理論の関係性について検証する。嶋田(2009)で資源ベー ス理論について組織のケイパビリティ、社会的情緒資産をファミリー性であると論じており 図表4でその関係性をフレームワークで説明をしている。

図表4:競争優位とファミリー性の評価分析フレームワーク

出典 Habbershon and Williams(1999)

ではファミリー企業における上記ケイパビリティとは何かであるかだが、嶋田(2013)は、ファ ミリー企業の人的資本としてファミリーによる承継、世襲などによるリーダーシップの能力の 開発とエンパワーメントがあるとしている、また他に後継者は世襲に後継者は早期から経営者 として教育される為に企業への高いコミットメントと忠誠心、モチベーションを持つとされて いる。しかし通常経営者であればリーダーシップや忠誠心、モチベーションが持っている能力 の一つである。しかしそのような能力が実際備わっていない経営者がいる事の事実である。そ

ファミリー属性 (Family Input)

ファミリー性

(Familiness)

プロセス介入 (Process Intervention)

ケイパビリティ

Capabilities)

競争優位

Competitive Advantage)

戦略 (Strategy) 図表1 出典:Habbershon Williams(1999)

競争優位とファミリー性の評価分析フレームワーク

(14)

14

の為、本研究で検証する事は社会的情緒資産とケイパビリティの影響度である。つまりファミ リー性が高い人物が実際にケイパビリティにどのように影響を与えるかを、以下の仮説に基づ いて検証する。

≪仮説≫

仮説1 ファミリー企業において社会的情緒資産はケイパビリティに対して正の有意な関係に ある。

仮説2 ファミリー企業においてケイパビリティは売上高利益率に対し正の有意な関係にあ る。

仮説3 ファミリー企業においてファミリー性は売上高利益率に対し正の有意な関係にある。

第四章 本研究の方法

第一節 本研究で使用する定義とデータ

≪ファミリー企業の定義≫

先行研究においても様々な定義付けがなされているが、本研究においては社会的情緒資産が ケイパビリティにどのように関与するかを検証するために「ファミリーが2代目以降で取締役 として経営に関与しており、またその一族が株式について過半数以上を所有している企業」と いう定義とする。理由として、本研究において実証したい社会的情緒資産とは、先に述べた通 り、企業への強い感情的な結びつきと同族内での強い幸福への関心である。すなわち家族愛+

組織愛と呼べるものである。そしてその感情的な結びつきはどのように資源ベース理論におけ る人的資本に影響を与えるかを検証する必要がある。その為に家族経営をしている企業であ り、また取締役会及び株主総会において会社法の発行済株式数の過半数を一族で占める事によ り意思決定についても完全に家族内で判断できる企業を対象とする。

≪社会的情緒資産(SEW)の尺度≫

社会的情緒資産とはファミリー企業が経済合理性よりも非財務効用を追求するという理論で ある。先に述べた通り、Gomez-Mejia et al.(2011)では社会的情緒資産を「株式を保有、経 営し続ける関心」「事業による一族の永続」「創業家内での利他主義」である。この定義付け の中でも「株式を保有、経営し続ける関心」については所有と経営との関係性からエージェン シー理論、スチュワードシップ理論と親和性が非常に高い。一方で事業による一族の永続と、

創業家内での利他主義に関しては資源ベース理論と親和性が高い為、本研究の定義付けとして 社会的情緒資産(SEW)は、「事業による一族の永続」及び「創業家内での利他主義」とする。

質問紙調査の質問項目については下記の内容にて過去の先行研究から社会的情緒資産と関連 性の高いものを準用する。具体的には、ファミリー性に関する。Berrone et al(2012)の質問項 目として『会社とファミリーの認識』『家族の感情的な愛着』『社会的な結びつき』を準用す る。なお、国内の先行研究において社会的情緒資産について検証している論文は存在しない。

また、Berrone et al.(2012)の尺度を採用し,実証研究を検証した先行研究はまだない。

(15)

15 図表5 ファミリー性に関する項目

出典:Berrone et al.(2012)から引用し筆者が一部修正

≪資源ベース理論の尺度≫

社会的情緒資産と資源ベース理論の関連性を検証する為に、本研究では資源ベース理論の 中でも人的資本の項目をもって定義する。ファミリービジネスは世襲などによって早期から経 営者としての教育や専門的な知識・スキルの修得が可能とされており、嶋田(2013)はファミ リーメンバーの企業に対する高いコミットメントや忠誠心、モチベーションを持つ人材だと論 じている。

第一に、リーダーシップに関する質問項目として妹尾(2015)の変革型リーダーシップに関 する項目と横田(2012)の家父長型リーダーシップ、博愛主義的リーダーシップの項目を準用 する。具体的な項目は、図表6の通りである。

ファミリーは私にとっての同族経営に属しているという強い感覚を持っています。

ファミリーは、家族経営の成功は自分の成功であると感じます。

私にとっての同族経営は家族にとって非常に重要な意味を持ちます。

同族経営の一員であることは、私たちが誰であるかを定義するのに意味を持ちます。

家族は私たちが家族経営の一部であることを他の人に話すことを誇りに思っています。

顧客は、姓を家業の製品やサービスに関連付けることがよくあります。

【会社とファミリーの認識】

私のファミリーのビジネスでは、感情や感情が意思決定プロセスに影響を与えることがよくあります。

個人的な事業への貢献は別として、ファミリーの福祉を守ることは私たちにとって重要です。

私にとっての同族経営では、ファミリー間の感情的な絆が非常に強いです。

私にとっての同族経営では、感情的な配慮はしばしば経済的な配慮と同じくらい重要です。

ファミリー間の強い感情的な結びつきは、私たちが前向きな意識を維持するのを助けます。

私にとっての同族経営では、ファミリーはお互いに暖かさを感じます。

【家族の感情的な愛着】

【社会的な結びつき】

私にとってので同族経営は、地域社会レベルでの社会活動の促進に非常に積極的です。

私にとっての同族経営では、ファミリー以外の従業員はファミリーの一員として扱われます。

私にとっての同族経営では、契約関係は主に信頼と相互主義の規範に基づいています。

他の機関(すなわち、他の会社、専門協会、政府機関など)との強い関係を築くことは、私にとっての同族経営重要です。

サプライヤーとの契約は、私の家業における長期にわたる長期的な関係に基づいています。

(16)

16 図表6 リーダーシップに関する項目

出典:妹尾(2015)及び横田(2012)から引用し筆者が一部修正

第二に、モチベーションに関する質問項目は池田(2017)を準用する(図表7)。

図表7 モチベーションに関する項目

出典:池田(2017)から引用し筆者が一部修正

第三に、組織コミットメントに関する質問項目は鈴木(2009)の組織コミットメントと組織 を背負う意識に関する項目を準用する。(図表8)

【変革型リーダーシップ+家父長型リーダーシップ+博愛主義的リーダーシップ】

部下の将来のキャリアプランの構築を助けます 部下の任務を完遂させるために新しい見方を示します 部下に様々な角度から物事を考えさせます

将来的な魅力的なビジョンを明確に示します

付き合いの長い部下にも気遣う気持ちを持っています 部下の好みを把握しています

部下が仕事で困難に直面している時に励まします

部下の業績が満足のいかないものである真の原因について明らかにしようとします 部下が仕事で要求される能力について欠けているときに教育や指導をします 部下が他人とは異なる能力・熱意・ニーズをもっている

部下に対し、単なるグループのメンバーとしてではなく 集団として使命感をもつことの重要性を強調します 部下の教育や指導に時間をとっています

部下について仕事だけでなくプライベートについても気にかけます 部下の強みを伸ばすことを支援します

強い目的意識をもつことの重要性を明確にしています

【ワークモチベーション尺度】

私は自分の職務をこれまでよりも効率的に行う方法を考えている 私は自分の職務を完了させるまでに粘り強く取り組んでいる

私は自分に与えられた職務を完了させることに大きな意義を感じて職務に従事している 私は自分の職務を果たすことが同僚や職場、組織にどうように貢献するか具体的に理解している 私は仕事を達成するために、業務の優先順位を自分なりに掲げている

(17)

17 図表8 コミットメントに関する項目

出典:鈴木(2009)から引用し筆者が一部修正

以上の尺度を用いて、ファミリー性がリーダーシップ、モチベーション、組織コミットコメ ントのどの箇所に強く影響を及ぼすのかを検証し、またその項目が売上高利益率への影響を与 えているのかについて検証する。

第二節 質問紙調査の内容

≪アンケートの内容≫

国内企業のファミリー企業の経営者を対象に、FASTASK(インターネットアンケートサイト)

からアンケート調査を実施する。社会的情緒資産理論の質問項目によりファミリー企業の確認 及びファミリー性について質問。その回答結果がその後の資源ベース理論の質問項目であるリ ーダーシップ、モチベーション、組織コミットメントにどのような影響を与えるかを検証す る。

サンプルの抽出に関しては調査会社のFASTASKによるスクリーニングのアンケート配布を 20191025日~2019年1030日に行った。次に、スクリーニングで抽出した回答者に対 して2019118日~2019年1110日に本調査を実施した。

スクリーニングについては年齢20~70歳、役職として経営者・役員に就いており、配偶者・

子供が有の対象者に対し実施した。配信者数7,947人に対し1,911人から回答があった(2000 人の回答をFASTASKに依頼)。回収率は24.04%である。その中で今回のファミリー企業の対象 者となるように、社外取締役と創業1代目について除いた。結果として484人の対象者を抽出 し本調査を実施した。

本調査は、スクリーニングで抽出した484人に対し社会的情緒資産と組織ケイパビリティに 関するアンケートを実施した。配信者数278人に対し221人回答し、回収率は79.49%となっ た。

尚、統制変数として年齢、現在の役職、株式の保有比率、所属する組織の従業員数、何代目 の代表か、組織の業歴、在職年数、年間連結売上高を投入している。また結果変数として財務 指標の売上高利益率、ROA、自己資本比率に関する項目を導入している。

【組織コミットメントと組織を背負う意識】

私はこの会社に愛着を持っている

私はこの会社に対して忠誠心を持っている

今この会社を離れると決めたなら、自分の人生の大きな部分を失うであろう 私がそうしたくとも、今この会社を離れることは非常に難しい

私はこの会社を担っていく必要があると強く思う 私はこの会社の中心になっていかなければと思う 私はこの会社を背負っていくという自覚がある 私はこの会社の一員であることを誇りに思う

(18)

18

先に述べた通り経営者を対象にサンプルがあまり回収できない可能性が示唆されたが、古手 川(2016)はアンケートを利用した質問調査を行い、研究対象が経営者に限定した状態で103の 回答が得られていることから、本研究においても同程度のサンプルが回収できると想定し実施 をした。

回収の得られた本調査の対象者から得られたデータについて、ヒストグラムを図表9-1~10 に、要約統計量、相関行列を図表10に示す。

0 50 100 150 200 250

男性 女性

回答者数

図表9-2:性別のヒストグラム

200 4060 10080 120140 160

回答者数

図表

9-4

株式保有のヒストグラム

(19)

19 0

20 40 60 80 100 120 140

1代目 2代目 3代目 4代目 5代目 6代目 7代目 8代目

回答者数

図表9-5:何代目の代表かのヒストグラム

05 1015 2025 3035 4045 50

回答者数

図表9-7:業種のヒストグラム

(20)

20 図表10 対象者への相関行列

0 20 40 60 80 100 120 140

回答者数

図表9-10:売上高のヒストグラム

相関分析

平均値 標準偏差

1性別 0.050 0.219 1.000

2年齢 55.990 9.382 -.014 1.000

3配偶者はいますか 0.121 0.326 .127+ -.171* 1.000 4子供はいますか 0.171 0.377 -.043 -.065 .529** 1.000 5あなたの役職を教えてください 0.357 0.480 .261** -.125+ .143* .108 1.000 6あなたの企業の株式を何%くらい保有しているか教えてください 0.558 0.788 -.046 -.076 -.008 .085 .299** 1.000 7従業員数を教えてください 0.462 0.500 -.121+ -.055 -.096 -.019 .403** .201** 1.000 8所属する組織の代表者は何代目か教えてください 2.688 1.007 -.020 -.081 .038 -.032 .085 .048 .177* 1.000 9組織の業歴は何年くらいか教えてください 7.794 2.109 -.054 .335** -.147* -.032 -.201** -.319** -.010 .250** 1.000 10組織でのあなたの在籍年数を教えください 3.618 1.152 -.044 .439** -.119+ -.070 -.264** -.292** -.130+ -.086 .439** 1.000 11昨年度の年間連結売上高はどのくらいか教えてください。 1.015 2.219 -.105 -.040 -.065 .093 .142* .342** .235** .160* -.143* -.241** 1.000

** p < .01, * p < .05, + p < .10

7 8 9 10 11

1 2 3 4 5 6

(21)

21

売上高5億円以下、従業員10名以下が過半数の回答を占め、企業の代表、役員レベルがアン ケートの回答をしたと言える。創業2代目または3代目で、年齢60代、在籍年数が25年以上 超えている回答者が本調査の平均的な像といえる。過去の財務指標を対象とした先行研究はR OEやトービンのQによる分析を用いており規模の大きい企業を対象としているのに対し、今 回の質問調査票のサンプルは非上場企業で中小企業が大半であると言える。

第三節 予備的分析

本研究では重回帰分析にて、社会的情緒資産、ケイパビリティ、業績の関係を検討する。財 務の項目は質問として売上高利益率、自己資本比率、ROAについて調査を実施したが、相関行 列の結果、図表11の通り全てにおいて相関が高い為、ファミリービジネスの代表的分析指標で ある売上高利益率を分析に用いる事とした。

図表11 財務分析の相関行列

またファミリー性、リーダーシップ、モチベーション、コミットメントについてそれぞ れ因子分析を実施した。

【相関分析】

平均値 標準偏差 1 2 3 4 5 6

1同業他社全般と比較し過去5年間の売上高利益率 3.253 1.206 1.000

2同規模の同業他社と比較した過去5年間の売上高利益率 3.258 1.130 .880** 1.000

3同業他社全般と比較し過去5年間のROA 3.169 1.162 .820** .840** 1.000

4同規模の同業他社と比較し過去5年間のROA 3.185 1.147 .803** .843** .867** 1.000

5同業他社全般と比較し過去5年間の自己資本比率 3.163 1.165 .799** .839** .856** .873** 1.000

6同規模の同業他社と比較し過去5年間の自己資本比率 3.208 1.177 .750** .817** .842** .850** .906** 1.000

** p < .01, * p < .05, + p < .10

(22)

22

ファミリー性の測定には、Berrone et al(2012)が作成した社会的情緒資産の質問項目を 筆者が一部修正した17の質問項目を用いている。因子分析の結果、①会社との経営に関す る一体感、②家業への感情的な愛着、③会社と社会的な結びつきの因子が抽出された。ク ロンバックのαは0.8を上回っており、内的一貫性に問題はないといえる。なお、「社会 的な結びつき」因子については、本研究のファミリー企業における人的資本との関係が薄 いと考えられるため、以下の分析には使用していない。

図表12 社会的情緒資産に関する因子分析結果

項目 会社と家族の一体感家業への感情的な愛着 会社との社会的な結びつき

同族経営の一員であることは、自分自身にとって重要な意味を持ちます .927 -.085 -.016

私の一族は同族経営の一員であることを誇りに思ってます .909 .036 -.068

一族の資産と伝統を維持することは、私たちの同族経営にとって重要な目的です。 .854 .028 -.051

私の一族は同族経営の成功が自分の成功であると感じます .754 .097 -.074

私たちにとっての同族経営は長期的な経営を評価します .737 -.045 .138

私たちの同族経営は会社だけでなく私個人にとっても重要です .736 .000 .096

私たちの一族は自社の売却を検討する事はまずないでしょう .423 .058 .123

私たちの同族経営において感情的な配慮はしばしば経済的な配慮と同じくらい重要です -.003 .871 -.026

私たちの同族経営において家族間の感情的な繋がりは非常に強いです -.054 .842 .062

私たちの同族経営において感情が意思決定プロセスに影響を与える事はよくあります -.010 .781 -.100

家族感の強い感情的な結びつきは一族が前向きな気持ちを維持する為に重要です .131 .717 .040

私たちの同族経営において一族同士の関係はお互いに暖かさを感じます .292 .423 .217

私たちの同族経営では取引先との関係は主に信頼と互恵性に基づいています -.010 -.109 1.016

取引先と強い関係を築くことは私たちの同族経営にとって重要です -.022 -.035 .890

サプライヤーとの関係は私たちの同族経営において長期的な関係に基づいています .030 .145 .693

私たちの同族経営では一族以外の従業員も家族のように扱われます .036 .039 .623

α係数 .918 .897 .884

因子間相関

会社と家族の一体感家業への感情的な愛着 会社との社会的な結びつき

会社と家族の一体感 .713 .631

家業への感情的な愛着 .611

会社との社会的な結びつき

参照

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