修士学位論文
題名
Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の整数点における値 について
指導教授 津村 博文 教授
平成 24 年 1 月 10 目 提出
首都大学東京大学院
理工学研究科 数理情報科学
学修番号 10878310 氏 名 鈴木 勘太
専攻
Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数 の整数点における値について(要旨)
修士(理学) 10878310 鈴木 勘太
本論文ではMorde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の整数点における値につい ての一般論を述べ,その関数の部分和として定義されるゼータ関数について考察
する.
本論文は以下の三つの章で構成される.第一章ではRiemamゼータ関数を定 義し,その拡張版の」つとしてMorde11−Tomheim型の二重ゼータ関数を紹介し,
その関数に関する歴史的な事柄を述べる.
第二章ではMorde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の基本的性質とその関数の 特殊値の明示公式を紹介する.
第三章ではKomori−Matsumoto−Tsumura[2]が示したMorde11−Tomheim型の二 重ゼータ関数の部分和として定義されるゼータ関数についての定理の別証明を与 える.これが本論文の主結果である.さらにこの関数の具体的な計算例を示し,
本論文を締めくくる.
Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数は以下で定義される.
De丘nition1.負でない整数ザ,3,古に対し,
oo
l
/岬(州:Σ榊(肌・〃 (1)
1950年,関数(1)に関し,Tomheim[5]は次のような結論にたどり着いた.
Theorem2(Tomheim[5]).負でない整数ηが3以上の奇数のとき,ζM・乃2(r,8,η_
r_8)はζ(ゴ)(ゴは2≦ゴ≦ηを満たす整数)の有理係数多項式で表される.
!958年,Tomheimとは独立に,Morde11[31は次の関係式を得た.
Theorem3(Morde11[31).自然数ザについて,
oo
1
㎞(軌沙)=石榊(・・rへ
ただし,ん、は有理数である.
Examp1e4.
π6 ζ〃T,。(2,2,2)=一.
2835
この関数の部分和として定義されるゼータ関数についてKomori−Matsumoto−
Tsumura[2]は次の定理を示した.
Theorem5(Komori−Matsumoto−Tsumura[2]).
負でない整数r,8,左に対し,
1
/ル・・(})一Σ市(。十、)1
肌,η≧1 m≡η(mod3)
とおくとき,ζル町2(2r,2r,2r)∈Qπ6「である.
主結果
Zagier[61−Nakamura[41の方法を利用して,このTheorem5の別証明を与える、
Examp1e6.
!87 ζ沁(2,2,2)= π6.
688905
参考文献
[!]荒川亘男・伊吹山知義・金子昌信,ベルヌーイ数とゼータ関数,牧野書店,
2001.
[21Y.Komori and−K.Matsumoto and−H.Tsumura,A survey on the theory of mu1tip1e Bemou11i po1ynomia1s and mu1tip1e L−functions of root systems,
RIMS Kokyuroku Bessatsu B28(2011),pp.99−120.
[31L.J.Mord−e11,ρn the eva1uation of some mu1tip1e series,J.London Math.
S・・.33(1958),368−371.
[41T.Nakamura,Afunctiona1re1ationsfor theTomheimd−oub1ezetafunctions,
Acta Arith.125,No.3(2006),257−263.
[5]L−Tomheim,Harmonic doub1e series,Amer.J.Math.72(1950),303−314.
[61D.Zagier,Va.1ues of zeta functions and their app1ica.tions,in First Euro−
pean Congress of Mathematics VoL II,A.Joseph et a1.(eds.),Progr,120,
Birkh註user,1994,pp.497−512.
Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数 の整数点における値について
鈴木勘太
目次
1 Introduction
1.1Riemannゼータ関数の整数点における値..
1.2Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の定義
2 Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の性質 2.1Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の収
束域 .....................
2.2 TomheimとMorde11.............
2.3 さらなる明示公式..............
3 主結果
3.1Theorem3.1の別証明
3.2計算例 ........
2
2 3
3
3 4 6
11
11 15
1 Int;roduction
1.1 Riemamゼータ関数の整数点における値
Riemamゼータ関数とは,無限級数 oo
ζ(・)一Σ÷ (1・1)
η=1
によってまず導入される,変数8の関数のことである.Riemannゼータ関数は今 日では8を複素変数として扱われているが,歴史的にみれば,初期では8が実数 の場合だけが考察の対象となっていた.
17世紀,NewtonとLeibnizによって微積分法が整備されるようになると,その 微積分法を応用して,それまで求められていなかった様々な無限級数の和を正確 に求めることが可能になった.その中でも,当時の数学者たちが好んで取り上げ た問題の一つが,正の整数ん≧2に対するζ(ん)の値を求める,というものだった.
この問題をんが偶数の場合に解いたのは,18世紀最大の数学者といわれるEu1er である:
ζ(。。)一(一1)m−1(2π)2㎜・、、、Q、・一(。∈・)
2 (2m)!
ただし,BmとはBemou11i数であり,
倉(∵)い・1ト山・・/
で定義1れ1数であ11! i1)は二項係数
(1)⊥1)ト音 い十1)
である、
Examp1e1.1.
π2 π4 π6
ζ(2)=一,ζ(4)=一,ζ(6)=一・
6 90 945
Remark1.2.んが3以上の奇数のときのζ(ん)の値について知られていることは 少なく,ζ(3)が無理数であること,ζ(2ん十1)の申に無理数であるものが無限個あ ることなどが証明されているにすぎない.
1.2 Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の定義
次に,式(1.1)の拡張版として次の関数を紹介する.
De丘nition1.3.変数r,3,左に対し,
oo
1
ζ岬(州=肌ξ、1榊(・。・・。)士 (1.2)
今日この関数は,1950年代にTomheim[191とMorde11[111によって,
ζMT,2(ん1,ん2,ん3)(ん1,ん2,ん3は0以上の整数)の値が研究され,これらの値と(1,1)と
の間の非自明な関係式が得られたことから,Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関 数と呼ばれている.特に,
ζ岬(2ん,2ん,2ん)∈Qπ6ん(ん∈N)
である.
Morde11とTomheimの研究以降,1985年にSubbarao−Siteramachandrarao[13],
1996年にHurad−Wi11iams−Zhang[21が,ζMT,2(ん1,た2,ん3)の明示公式を示してい る.さらに21世紀に入ると,Matsumotoは(1.2)の三変数の有理型関数としての C3への解析接続を示した([6]).さらにMatsumotoは(1.2)を一般化したMorde11−
Tomheim型のr重ゼータ関数
oo
1
ζ岬(8ユ,5・,糾・・): 黶Cξ=ユ岬剛・。・・叫)}(13)
(ただし,81ゾ..,8、十1は変数)を定義し,その関数の(r+1)変数の有理型関数とし てのC「十!への解析接続を示した([7]).またTsumuraはparameter uを導入して 収束を良くした級数を考えること(咋methodという)により,(1.1)やその交代級 数型類似,また(1.3)の整数点における値に対して種々の公式を示しているなど
([14H15][16][17]),Morde11−Tomheim型の多重ゼータ関数についての研究は現在 も続けられている.
本論文では,Mlorde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の整数点における値につい て知られていることを紹介し,Komori−Matsumoto−Tsumura[4]が示したその関 数の部分和として定義されるゼータ関数についての定理の別証明を与える.
2 Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の性質
2.1 Morde11−Tomheim型の二重ゼータ関数の収束域
1Lemma2.1.ζMT,2(r,5,亡)(r,8,亡は。以上の整数)が有限な値をとるための必要 十分条件は,
r+左>1,3+左>↓,r+8+亡>2
を満たすことである.
ζM・T,2(グ,8,亡)の基本的性質は次の通りである.
ζM・,。(・,・,亡)こζM・,。(・,・,亡) (2.1)
ζM・。,。(・,・,0)=ζ(・)ζ(・) (2.2)
ζM・,・(・,0,亡)十ζ〃。,。(亡,0,・):ζ(・)ζ(亡)イ(ヅ十亡),・≧2 (2.3)
ζMτ,・(ヅ,・一1,左十1)十ζM・,・(グーユ,・,左十1)=ζMτ,・(・,・,左),ヅ≧1,・≧1(2・4)
2.2 TomheimとMorde11
以下,Tomheim[191による結果をまとめる.
Theorem2.2(Tomheim[191,Theorem1).
ζMτ,・(上1,1,0):・・,ζM・・,。(上1,0,1)=・・,ζ〃T,・(η,0,0):・・.
Theorem2.3(Tomheim[19],Theorem2).nを3以上の整数とすると,
n−2
ζ岬(1,1,上2)一(上1)ζ(η)一Σζ(α)ζ(卜α), (2・5)
α=2肌.2
/卿(卜・,・,1)一1((叶1)/(肌)一Σl/(1)/(べ一1)),(…)
二:l
/一乃。(・,・,上1)一1((上1)/(η)一Σ/(α)/(∴)).(・。・)
α=2
Theorem2.4(Tomheim[19],Theorem3).
ζMT,。(α,卜α一1,1)
α η一2
斗1)α(Σ(一・)l/(1)/(η一1)・1Σ/(1)/(上1)一芸(叶1)/(η))・
乞=2 ゴニ2
今後,[mlをmを超えない最大の整数とする.
4
Theorem2.5(Tomheim[191,Theorem4)川を奇数,すなわちη=2m+1,ま
たα>η/2とすると,
ζM・τ,。(α,η一α一2,2)
1肌/21
一(一・)α(・1一・・一1)(Σ/(・/)/(卜・1)一士(叶・)/(η))
ん=1 α
・(一1)αΣ(一1)4(α一1・・)ζ(1)ζ(上1)・
卜m+1
Theorem2.6(Tomheim[19],Theorem5).
η>1のとき,ζMT,2(0,0,肌)=ζ(η一1)一ζ(η).
Theorem2.7(Tomheim[19],Theorem6).nを偶数,すなわちη;2mのとき,
1
ζM。,。(m,0,m)=一(ζ(m)2一ζ(2m)).
2
場emma2.8(Tomheim[191,Lemma3).α:2,_,η一2に対し,
1
ζ〃,・(α,0,卜α):一仏十ム、.
2
ただし,
べさ)(一1ゾゴ((、1ゴ)・(、㌃11))/小一・1)・
また工、はζ(2),...,ζ(η)を含む多項式で,m:[η/21である.
Lemma2.9(Tomheim[19],Lemma4).
‡(∵11)ん一ξ伽(叶・1)・
ただし,
α<η一2ゴ もしくは,
ゴ>α,ゴ>η一2α なら,6、ゴ=0である.
最終的にTomheimは次のような結論にたどり着くことができた.
Theorem2.10(Tomheim[191,Theorem7).r,8が0以上の整数で,ηが3以上
の奇数のとき,ζMT,2(ザ,8,η_ザ_8)はζ(ゴ)(ゴは2≦ゴ≦ηを満たす整数)の有理 係数多項式で表現できる.
1958年,Tomheimとは独立に,Morde11[11]は次の級数を考えた.
Σ・/1・…1・(1・・…・1・・α)(1・・…十1・十α・・)
〜1,、..,王r
・(1。十…十1、十α十・).
ただし,和は1≦14<oo (乞:1,...,ヅ)を満たす整数1台の集合(11ゾ..,1、)すべて
にわたる.またヅと8はそれぞれr≧!,8≧0を満たす整数で,αはα>イを満 たす実数である.
特に彼は
oo
1
エξユ111。(11・1。)=2ζ(3)
を示し,ここから彼は次の結論に達した.
Theorem2.11(Morde11[11]).整数rがr≧1を満たすとき,
oo
1
え1m仲(m・η)加;へ (2.8)
ただし,ん、は有理数である.
Examp1e2.12.
1
ζM。,。(2,2,2)=一π6.
2835 19
ζ〃。,。(4,4,4)二 π12 273648375
2.3 さらなる明示公式
1985年,Subbarao−Sitaramachandrarao[131は次の関係式を得た.
Theorem2.13(Subbarao−Sitaramachandrarao[131,Theorem4.1).
m,η,ρ∈Z>oに対し,
ζM・。,。(2m,2η,2ρ)十ζM・,・(2η,2ρ,2m)十ζ〃・,・(2ρ,2m,2η)
一(。、)1(肋)1λ(…)/・(γ)・η(2㌘)/
・(2m+2η一2・一1)!(2・)!ζ(2ヅ)ζ(2m+2叶2ρ一2・).
6
この定理から,Morde11の式(2.8)のさらなる明示公式を得た.
ζM。,。(2m,2m,2m)
一。((券、正(㌘)(・・)一(・・一ト!)帆(・・一が)(・・)
次に,Huard−Wi11iams−Zhang[2](1996年)によるζMT,2(r,8,亡)の明示公式に関 する結果をまとめる.
Theorem2.14(Huard−Wi11iams−Zhang[21,Theorem1).
NをW≧3を満たす奇数とする.そのとき乞=1,...,N−2について,
/一(叶1)一(一11㌻](∵1■1)/(・1)/(・一・1)
・(一11貫(∵)/(・1)/(・一・1)・/(・)/(・)・
Theorem2.15(Huard−Wi11iams−Zhang[21,Theorem2).
NをW≧3を満たす奇数とする.r,8を
1≦r+8≦N−1,r≦W−2,8≦W−2
を満たす負でない整数とする.
1州一(一・1[n)ρコ(N■㌃1−1)/(・1)/(ト・1)
・(一・1旨(㌻二∵)/(・1)/(・一・1)
と置くと,
ζM。,。(ヅ,・,N一・一・)=亙W(・,・)十伽(・,・)・
Examp1e2.16.
ζM。,。(1,五,3):4ζ(5)一2ζ(2)ζ(3),
ζM・。,。(2,1,4):一5ζ(7)十3ζ(2)ζ(5),
ζM・・,。(3,3,1):4ζ(7)一2ζ(2)ζ(5).
Theorem2.15でr=8=亡;2ん十1(ん≧o)とおくと,次の式が得られる.
ζ〃・,・(2ん十1,2ん十1,2ん十1)
一一・ξ(4㌧1+1)/(・1)/(・/一・1・・)(…)
さらに彼らはSubbarao−Sitaramachandraraoが与えた式(2.9)よりシンプルな 明示公式を得た.
/一(・榊)一1ξ(4㌃㌃1)/(・1)/(l/一・1)・
この式と(2.10)をまとめると次の定理が得られる.
Theorem2.17(Huard−Wi11iams−Zhang[21,Theorem3).
r>1に対し,
/一〜一、十姜.1、旨(㌃㌃1)ψ)/(H)
Remark2.18.r+8+亡=Nが偶数のときのζMT,2(r,8,亡)の明示公式を与える ことは難しい問題となっており,下の表のような少数の事例にとどまっている.
r 8 亡 備考
0 0 N r加。ザθm2.6
r N−r 0 式(2.2)
1 1 N−2 式(2.5)
1 0 W−1 式(2.7)
r N一ツー1 1 珊eoグem2.4
W/2 O N/2 肋eoザem2.7
W/3 N/3 W/3 式(2.9)
市/3 N/3−1 W/3+1 式(2.4)
また,ζM−T,2(乞,0,W一)に関しても同様である.
Examp1e2.19.W=4のとき,
1 3
ζM・。,・(1,0,3)=一ζ(4),ζM。,・(2,0,2):一ζ(4)・
4 4 N=6のとき,
1 3 4
ζ岬(1,・,・)rζ(・)2・互ζ(・),ζ・η・(・,・,・)一ζ(3)し喜ζ(6),
1 1 25
ζ〃。,。(3,0,3):一ζ(3)2一一ζ(6),ζM乃。(4,0,2):一ζ(3)2+一ζ(6).
2 2 12 8
Remark2.20.[坤の論文の最後で,二つの級数
R(r,8,亡)
3(r,8,τ)
o。 (一1)m
:= ホ1市(m・η)ポ
o。 (一1)m+れ
:= フ1州(m・η)1
は,ζ(ゴ)(ゴは2≦ゴ≦肌を満たす整数)の有理係数多項式で表現できるか否かに ついて問題提起されていたが,この問題はTsumuraのu−methodによってすでに 解決されている([ノ51岬)j
Theorem2.21(Tsumura[15]).自然数んに対して,
五(2ん十1,2ん十1,2ん十1)
一一汁1ウ(4ん■ガ)/(・1)/(・/一・1・・)・・州)
一4(・一㍗/(・・一ル馳甘㌃
ただし,ρ∈{0,1}に対して,
伽)一 │!(・出)薫(2m+1∴■2η)
×ψ(2ん十2m−2ρ十3+2リー2η)
(一1)η(π/2)2η十ρ
(2η十ρ)!
であり,また
!(・)一 フ(。≒㌦
ψ(5) = (1−2−8)ζ(8)
である、
Examp1e2.22.
253 2545 R(3,3,3)二一π2ζ(7)一一ζ(9),
256 256 2039 285565
R(5,5,5)= π4ζ(1!)十 π2ζ(13)一 18432 24576
2056257
ζ(15).
16384
Theorem2.23(Tsumura〔16]).自然数ん,1,んがん十1+ん≡1(mod2)を満たす
とき,
舳)一(一1)O㌣lll■1)1(・!)1(用・/一・!)
・(一1)!岩(Z+仁1グ)1(・/)/(用・/一・1)
1(ト1)/21
−2Σφ(2ゴ)
卜O
・/(一1)ん着1(・!)㌻)/2](ん十仁㌶†1)
×ζ(ん十Z+ん_2ゴ_2ρ_2μ)
(乞π)2μ
(2μ十1)!
・(一1)五
ケ1(・!)工(エ■ξ)/2](Z+1二㌶†1)
・/(/・1・ゲ・ゾ・1一・1)(讐)一/
Examp1e2.24.
8(1,2,2)
3(2,4,1)
3(3,5,1)
1 17
一ζ(3)π2一一ζ(5),
16 32
7 5 129
一ζ(3)π4+一ζ(5)π2一一ζ(7),
960 32 64
7 4 21 2769
一一ト(5)π一一ζ(7)π十一ζ(9).
768 128 256
10
3 主結果
Witten[20]の数理物理的な考察から,Zagier[21]は半単純Lie環に付随するWit−
tenゼータ関数と呼ばれるものを定義した.Riemannゼータ関数は51(2)に付随 し,Morde!1−Tomheim型の二重ゼータ関数は51(3)に対応している.
その観点からKomori−Matsumoto−Tsumura[51によって,その部分和をとって 合同条件をつけた
1
/㍍か,1)一Σ州(。十、)l
m,η≧1 肌…η(mod3)
が定義され,次が得られた.
Theorem3.1(Komori−Matsumoto−Tsumura[4]).
んを自然数とするとき,ζ沁2(2ん,2た,2ん)∈Qπ6たである.
この結果は{ζ加2(2ん,2ん,2ん)1ん≧1,ん∈N}の母関数を考えることで証明され ているが,本論文ではそれとは全く異なる手法を用いて証明する.
主結果
Zagier[211−Nakamura[121によるMorde11の結果(Theorem2.11)の証明の方法を利 用して,このTheorem3.1の別証明を与える.具体的に,Bemou11i多項式を用い て,この二重ゼータ値の明示的な計算方法を与える.
3.1 Theorem3.1の別証明
このTheorem3.1の別証明のために,次の定理と命題を用いる.([11を参照)
Theorem3.2.んを自然数,」{ }を の小数部分とするとき,
珊)一一(ふ芦 (・1)
η≠0
がん≧2ならばすべての実数 について,ん:1ならば ¢Zに対して成り立つ.
ただし,域( )はBemou11i多項式,すなわち
十1
∫ 域(μ)ψ:〆
を満たす唯一の多項式である.例えば,
B。( )=1,
1 Bユ( ):卜一,
2 1
B。(・)=・2一・十一, (3.2)
6 3 1 B。(工):・3一一・2+一・,
2 2 1 B。(工)=・4−2・3+・2一一,
30 5 5 1 B。(・):π5一一・4+一・3一一・,
2 3 6
6 . 5, 12 1 B6( )= 一3 十一 一一 十r 2 2 42
また(3.1)の右辺の和はηが0でない整数全体をわたることを意味する.ただし ん;1のとき右辺の無限和は
W 2π包η
担Σe,
n討
と理解する、た≧2ならば式(3.1)g右辺は絶対かつπについて一様に収束する.
Proposition3.3.ρ,q,rは正の偶数とする.このとき,
1
Q(舳ヅ)一Σmρ、。(m+、)・∈Qπρ十q打 雌鴻
Proposition3.3で1:一(m+n)とおいて1を定める、Q(ρ,q,r)を積分表示す
ると,
Q(ρ,q,r): 1 Σ m、、、z,
m,η,1∈Z m,η,1≠O,m+η十J=O
一、えゾ缶㌦
m,n,1≠O
一∫、∵箒㌦
m,肌,!≠0
一㍍宇ξ芋ξ芋ぬ
γη。≠O n≠O !≠O
一∫( 1)キ11件τ洲)耳(せ/)州)ぬ (3.3)
12
Theorem3.1の別証明
ω=e2π乞/3として
ωゴ(昨η)
ぴ(川, )=肌果、。榊(・・小(H1,2)
m+η≠O とおく.特にゴ;0のときは,
Q*(ρ,q,r;1):Q(ρ,9,r).
ここで,次の補題を与える.
Lemma3.4.
2
1
Σぴ(舳1,ω3)一3Σ1。ρ、。(。十、)・ (3・4)
ゴ=O ητ,汎ヲ60,η①十肌≠O
m…η(mod3)
Proof.1+ω十ω2=0を利用すると,
2 .・ 1+ω(・一η)十ω2(…)
Σぴ(舳ψ)一Σ 。。、。(。十、)・
ゴ=O m,η≠0,m+η≠0
1 −3Σ。ρ、。(。十、)・
m,η≠0,m+n≠O m≡η(mod3)
となり,Lemma3.4が成り立つ.。
そこで,z=_(m+η)とおくと,
ろ:イ、∵mガ箒÷㌦
一∫Σ〃、㍍、γ伽
μ鴨
=(一1)「Q*(ρ,q,グ;ωゴ)
=Q*(ρ,q,・;ωゴ).
他方,ろに関して次の補題を示す.
lLemma3.5.
卜(一1)エπげμ(用)耳(H/)叫)い・)
Proof. (3.3)と同様な方法でろを計算すると,
ト∫1Σω3等㎜Σω芋Σe2声・・
η①≠0 n≠O J≠0
一∫1Σe㎞箒十舌)Σe÷)Σe2幕㌦
η↑≠0 η≠O {≠O
(■1)キllπ戸仲μ(/工・ξ/)耳(/卜ξ/)恥)伽
なので,Lemma3.5が成り立つ.・
式(3.5)の被積分関数は積分範囲を分ければ有理係数多項式なので,その積分 の値も有理数である.以上から,ろ∈Qπρ十q+「がわかり,式(3.4)から
2
1
Σ上3Σ1耐、。(。十、)・∈Qπ中
ゴ;O m,η≠0,γπ十肌≠O
m≡れ(mod3)
が成り立つ.また,
Σ 一 Σ・Σ・Σ・Σ (3・6)
m,η≠0 m,η≧1 m≦一1,肌≧1 m≧1,η≦一1 m,η≦一1 m…η(mod3) m+肌≠0 m+η≠0 m+η≠0 m+η≠0 m…η(mod3) m≡れ(mod3) m≡η(mod3) m…肌(mod3)
1 1
一Σ。ρ、。(。、、)・・Σ(.、)1、。(.、、、)・
肌,η≧1 α,η≧1 m≡η(mod3) 一α十肌≠0
一α…n(mod3)
1 1
・Σ。ρ(.。)。(。、。)・・Σ(.、)ρ(.。)。(.、.。)・
m,6≧1 α,b≧1 m−6≠O ・ 一α一6≠O
m≡一6(mod3) 一α…一b(mod3)
(3.7)
のように(3.6)の第2項でα=一m,第3項で6:一η,第4項でα=一m,6:一η として変形した.さらに,(3.7)の第2項,第3項をそれぞれ
α>η=》ノ1=α一η{
α<γ乙=》一8=η一α
{ η7>ん=今0:η7一た η7<ん=÷D:ん一η7 として変形し,さらにρ:q=r=2ん(ん∈N)とすると,
1 1
_、え、。榊(・・η)・1=6ぶ、・・仰・η)・l
m…n(mod3) m…肌(mod3)
14
(3.8)
となり,(3.8)の右辺∈Qπ舳であることがわかった.
明が完成した..
これでTheorem3.1の別記
3.2 計算例
ここでは,具体的に軌丁,2(2,2,2),ζ加,2(4,4,4),ζルT,2(6,6,6)の計算を示し,本
論文を締めくくる.
まず,ρ=q=r:2の場合を計算する.
ろ一∫1・・(/・・ll)・・(H/)・・(・)ゐ (…)
とすると,ゴ:1のとき,
トl/−/1二1/1;1;l/
H一に1に;l/
なので,
ムー∫1・・(1叶1)・・(/・一1/)・・(・)伽
一∫1/3・・(/叶1/)・・(/・一1/)・・(・)伽
・∫二3・・(/・・l/)・・(/・一1/)・・(・)伽
・!13・・(/叶ル・(1 ・・(・)伽
二J・,・十J1,・十J1,3 としてJ1を求める.(3.2)から,
ト∫1/3・・(・・1)・・(科1)・・(・)伽
一∫1/3[/(・・1)2一(・・1)・l//(∬・;)2+1)・ll・
・(・・一・・1)1ゐ
一∫1/3(・・一・・十・・1・・一品・・÷・1土、)曲 53
918540
J1,2,J1,3に関しではそれぞれ, 一1/3:眈, 一2/3=μ2と変数変換をすれば,
J11と同じ値が出るので,
53 Jl,2=Jl,3:
918540 したがって,
53 53 53 159
/1; 十 十 ;
918540 918540 918540 918540 ゴ:2については,J1と同様の計算によって,
159 J2=
918540 また,ゴ:0について,
ゐ一 轤P・・(・)…一9篇。
したがって,
2
243 159 159 561 Σろ一。1。。。。・。1。。。。・。1。。。。一。。。。。。
ゴ=O
以上から,ρ:q=r=2の場合,(3.5),(3.8)から
2 (一1)2+2去2−2(2π)2・2・2561 Σろ一 。、。,。, 。。。。。。
ゴ:0
561 =8π6×
918540
1
−3Σ
。,、。。,。十肌。。m2η2(m+η)2 m…η(mod3)
1 −18Σ。・、・(。十、)・
m,肌≧1 m≡肌(mod3)
1 187
/ル乃・(2,2,2)一Σ。・、・(。十肌)・一。。。。。。π6 m,肌≧1
m≡η(mod3)
となり,[51の4節で出た値と一致している.
ρ:g=r二4,6の場合も同様な方法で,Pari−GPを利用して計算すると,
3279473
ζル八・(・,4,4)一。。。。。。。。。。。1。。π12,
、53109402098
如(・,・,・)一。。。。。。。。。。1。。1。。。。。。。。π18
16
Remark3.6.(2.9)の類似として,ζル八2(2ん,2ん,2ん)(ん≧1)の明示公式を導くこ とは可能だが,上で見た通り,場合分けが多く,かなり複雑な形になる.
謝辞.この修士論文の作成にあたり,ご指導を頂いた指導教官の津村博文先生 に感謝致します.さらに論文の副査として助言をいただいた中村憲先生,倉田和 浩先生に感謝致します.また,今年度の集中講義において多重ゼータ関数につい て講義して頂いた松本耕二先生(名古屋大学)に感謝致します.
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18