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別紙様式1(修士申請者用)

修 士 学 位 論 文

身体刺激を用いたメンタルローテーシ ョンの熟達化に関する検討

‐運動学習への効果的活用に向けて‐

201814 日 提出

首都大学東京大学院

人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻 ヘルスプロモーションサイエンス学域 学修番号:16899608

氏 名:日吉 亮太

(指導教員名:樋口 貴広 教授)

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要旨

メンタルローテーション(MR)とは,回転した状態で呈示された視覚刺激を 心的に回転し,正立した状態の図形を認識する認知活動である(Shepard&

Metzler,1971).本研究では,身体刺激(左右の手の形や方向を様々に組み合わせ

た刺激)を用いたMR課題を,運動学習の補助ツールとして利用するために有効 な呈示方法を検討することを目的として,3つの実験を行った.具体的な検証内 容として,繰り返し課題を行っても継続的にMRを遂行すること(条件1),お よび,身体表象を参照しながらMRを遂行すること(条件2)の2つの基準を満 たす刺激の呈示方法の同定を試みた.

実験 1-1 では,身体刺激の種類を多くすることにより,特に条件1を満たすこ とができるかについて検討した.参加者を,視覚刺激の種類が多い刺激群(多数 刺激群)と少ない刺激群(少数刺激群)の2群に分類したうえで,それぞれ4 間の介入実験に参加してもらった.また,身体表象を参照しているかどうかを確 認するため,1日目と4日目介入効果検証時には,拘束姿勢条件下でMRを行う 課題についても実施した.実験の結果,多数刺激群・少数刺激群のいずれも,4 間の練習後においても,呈示した刺激の回転角度に応じて反応時間が遅延した状 態を保持した.さらに,いずれの群においても,1日目に比べて4日目に反応時 間が短くなっていた.この結果は,多数刺激群だけでなく少数刺激群においても,

4日間の練習によって素早くMRが遂行できるようになったことを示唆する.

しかしながら,実験1では,拘束姿勢において反応時間が遅延するという結果 は得られなかった.このことから,条件2を満たすことができなかった.この背 景として,拘束の方法が先行知見(Ionta et al. 2007)とは異なった可能性を考えた.

そこで実験 1-2 では,拘束姿勢を先行知見の姿勢に変更して再検討した.実験の 結果,残念ながら,拘束姿勢を先行研究に合わせても,拘束姿勢の効果は認めら れなかった.これらの結果から,身体表象を参照しているという根拠を得るには 至らなかった.実験1-1より,繰り返し課題を行っても継続的にMRを遂行する という条件1については,多数刺激・少数刺激のいずれでも確認されたため,継 続的にMRを遂行するという観点からは介入課題としての必要条件を満たすもの として,介入効果としての有用性の検証に移ることとした.

実験2では,少数刺激を用いてMR介入の有用性の検証を行った.有用性を検

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討するための運動課題として,実際の手の回転運動に基づいた2つの運動課題を 用いた.実際の手を視覚刺激と同じ向きに合わせる課題(運動課題①),および,

物体を回転する課題(運動課題②)であった.実験の結果, いずれの運動課題に おいても,MR介入後にパフォーマンスが向上するという効果は得られなかった.

MR 介入効果が得られなかった理由として,測定課題としての有用性の再確認 と対象者の選定の必要性に関する追加分析を行った.その結果,運動課題①とMR 課題に関しては有意な正の相関が認められたが,運動課題②とMR課題に関して,

有意な正の相関は認められなかった.このことから,運動課題①について,MR 成績向上に伴い成績が向上する可能性が示唆された.また対象者の選定では,対 象者によって運動イメージ想起能力の改善効果が異なる可能性を考え,MR 測定 における介入前後の反応時間の差が大きい4人(上位群)と小さい4人(下位群)

を選出し比較した.その結果,MR介入には,MR測定の反応時間の改善が顕著に 見られた参加者において,運動課題の改善につながる可能性が示唆された.以上 の結果から,本実験の少数刺激を用いた3日間のMR介入は,対象者を選定する ことで運動学習の有効な補助ツールとなりうることが示唆された.

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目次

1章 緒言... 1

2章 本研究の理論的および方法論的背景 ... 4

1節 メンタルローテーション(MR)の特性 ... 4

1.1 メンタルローテーション ... 4

1.2 身体部位の視覚刺激を用いたメンタルローテーション ... 4

1.3 身体刺激を用いたMR課題の波及効果 ... 6

2節 運動イメージの特性 ... 8

2.1 運動イメージ ... 8

3節 メンタルローテーションの練習方法 ... 10

3.1 バーチャルな立体図形を用いた練習効果の研究 ... 10

4節 実験の全体像 ... 12

3章 実験報告 ... 13

1節 実験1-1 ... 13

1.1 方法 ... 13

1.1.1 実験参加者 ... 13

1.1.2 実験環境および使用機器 ... 14

1.1.3 実験課題:MR課題 ... 16

1.1.4 実験手続き ... 18

1.1.5 分析方法 ... 19

1.2 結果 ... 20

1.2.1 反応時間 ... 20

1.2.2 エラー率 ... 31

1.3 考察 ... 39

2節 実験1-2 ... 41

2.1 方法 ... 41

2.1.1 実験参加者 ... 41

2.1.2 実験環境および使用機器 ... 41

2.1.3 実験課題:MR課題 ... 42

2.1.4 実験手続き ... 44

(5)

2.1.5 分析方法 ... 44

2.2 結果 ... 44

2.2.1 反応時間 ... 44

2.2.2 エラー率 ... 47

2.3 考察 ... 49

3節 実験2 ... 51

3.1 方法 ... 51

3.1.1 実験参加者 ... 51

3.1.2 実験環境および使用機器 ... 51

3.1.3 実験課題 ... 53

3.1.4 実験手続き ... 60

3.1.5 分析方法 ... 60

3.2 結果 ... 61

3.2.1 MR課題の反応時間 ... 61

3.2.2 運動課題①の運動所要時間 ... 67

3.2.3 運動課題②の運動所要時間 ... 70

3.3 考察... 70

4節 追加分析(実験2) ... 72

4.1 本実験の測定課題としての有用性 ... 72

4.1.1 方法 ... 72

4.1.2 結果 ... 72

4.1.3 考察 ... 73

4.2 対象者の選定 ... 74

4.2.1 方法 ... 74

4.2.2 結果 ... 75

4.2.3 考察 ... 78

5章 総合考察 ... 80

引用文献 ... 85

謝辞 ... 88

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1 1章 緒言

メンタルローテーション(MR)とは,回転した状態で呈示された視覚刺激を心 的 に 回 転 し , 正 立 し た 状 態 の 図 形 を 認 識 す る 認 知 活 動 で あ る (Shepard

Metzler,1971).回転して呈示された視覚刺激に対する判断(たとえば,2つの視覚

刺激が同一かどうか)に必要な時間は,視覚刺激の回転角度が大きいほど遅延す る(Cooper &Shepard,1973).このことは,視覚刺激に対する判断は,視覚刺激に対 する心的イメージを心的に回転するという認知活動が関与していることを示唆し ている.このため,回転して呈示された視覚刺激に対する判断課題は,一般にMR 課題と呼ばれる.

身体部位の視覚刺激(身体刺激)を用いたMRの場合,脳内で身体の情報が統 合される場(表象)である,身体表象が関与していると考えられている.すなわ ち,身体刺激を用いたMRについては,必ずしも正立した状態に回転して判断す るのではなく,身体表象において表現された手の状態と比較照合する形で判断が なされているというものである.例えば,両手の甲同士(手背部)を合わせて,

手の平を外側に向けた姿勢の方が,手の平を机の上に置いた姿勢よりも反応時間 は長くなる(Parsons,1994).この結果は,現在の姿勢状況が身体表象にて表象さ れ,それが判断に利用されていることを示唆する.また別の研究では,両手をね じって握るような姿勢をとった状態ではMRの反応時間が遅延することも報告さ れている(Ionta et al.,2007).両手をねじって握ることで,現在の手の姿勢が視覚 刺激との比較照合する対照としては利用しにくくなったためと考えられる.この 結果もやはり,身体刺激を用いたMRについては身体表象との比較照合が関わっ ている可能性を示唆している.

身体刺激を用いたMRは,身体像を心的に操作するという点から,潜在的な運 動イメージの活動と表現されることがある.最近の認知科学研究では,運動イメ ージを運動学習の補助ツールとして利用しようという試みが数多くなされている

(メンタルプラクティス).このような機運が高まった一つの根拠は,運動イメー ジの想起中には,実際にその運動を行った際に賦活される脳内の運動関連領域(例 えば一次運動野,腹側運動前野)が活動するというものである(Holmes and Calmels, 2008; Loporto et al., 2011; Malouin and Richards, 2010).こうした報告に基づき,多 くの研究者が想定したのは,運動イメージの想起は,実際に運動は出力されない

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2

ものの(身体運動自体はおこらないものの),脳内情報処理としては,運動の計画 やリハーサルをしている状況に近いのではないかということである.

もしこの想定が正しければ,運動イメージを想起することは,運動学習の補助 ツールとして利用できる可能性がある.実際に,体を動かして行う練習に加えて,

メンタルプラクティスを組み合わせて行うことで,学習効果が高まったという報 告もある(Malouin and Richards, 2010).運動イメージを利用することで,怪我直後 の急性期のような運動が困難な場面において,MRを実施し,「脳が運動の仕方を 忘れてしまう」ことに一定の歯止めをかける,といった運動学習への寄与が考え られる.

しかしながら,運動イメージをメンタルプラクティスとして利用するには問題 1つある.実際の運動支援をする場面では,対象者が本当に適切なイメージを しているのかについて,脳活動を計測する以外に確認する手段がないということ である.もし対象者が運動を正確にイメージできていなかったり,単に休養して いたとしても,それを行動レベルでチェックができず,貴重な練習時間を無駄に することになりかねない.

そこで本研究では,運動イメージの代わりに,潜在的な運動イメージ活動と表 現されるMRを,運動学習の補助ツールとして利用することを着想した.身体刺 激を用いた典型的なMR課題は,呈示された身体刺激が右側(例,右手)か左側

(例,左手)かを判断する単純課題である.心的な回転活動を行ったかどうかは,

回転角度が大きいほど反応時間が長くなるかによってチェックが可能である.実 際,繰り返しMR課題を行うことで運動の改善やリハビリテーションの効果がみ られる可能性を指摘している報告もある.

本研究では,身体刺激を用いたMR課題を,運動学習の補助ツールとして利用 するために,使用する刺激の数や練習日数など,具体的にどのように設定すれば よいかについて検討することとした.運動学習の補助ツールとして使うというこ とは,身体を使った練習と同様,繰り返しMR課題を遂行するということである.

同じ課題を繰り返し行えば,単に回転した画像を記憶して,回答するだけ(つま り,MRを一切行わなくても即座に回答可能)となる懸念がある.つまり,身体刺 激を用いたMR課題を運動学習の補助ツールとして使うためには,繰り返し課題 を行っても継続的にMRを遂行することが重要である.さらに前述のように,身 体表象を参照しながらMRを遂行することも重要である.

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3

本研究では,全部で3つの実験を通して,こうした2つの基準を満たす刺激の 呈示の方法を検討した.Provost et al.(2013)は,バーチャル立体図形を用いたMR 課題について,非常に多くの刺激を用いれば,4日間にわたり課題を行っても,継 続的にMRを遂行すると報告した.そこで本研究(実験1)では,Provost et al.

の考え方に基づき視覚刺激を選定した.また,身体表象を参照しているかどうか を確認するため,拘束姿勢による反応時間遅延の効果を検討した.身体表象は,

常に現在の身体状況をオンラインでモニターするため,拘束姿勢下ではある種の 混乱が生じ,反応時間の遅延が起こることが知られている(Ionta et al.,2007).さ らに本研究(実験 2)では,実験1 で選定した身体刺激を繰り返し練習した直後 に,運動課題のパフォーマンスが向上するのかについても検討した.

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2章 本研究の理論的および方法論的背景

本章ではまず理論的背景として,第1節においてメンタルローテーション(MR)

に関する研究,身体部位を視覚刺激として用いたMRに関する研究についてまと める.MR課題を運動学習の補助ツールとして利用する根拠の一つは,MRが潜在 的な運動イメージ活動と表現される活動であること,および,運動イメージが運 動学習の補助ツールとして利用されていることである.そこで第2節では,運動 イメージが運動学習に貢献できる可能性を示唆した研究をまとめる.第3節では,

本研究において採用する手続きとして参照した,Provost et al. (2013)の概要につい て説明する.以上の内容を踏まえ,第4節にて本研究の全体像(Research Question)

について説明する.

第1節 メンタルローテーション(MR)の特性 1.1 メンタルローテーション

メンタルローテーションの存在を実験的に示した初期の研究では,図形刺激が利 用されていた(例えばCooper & Shepard, 1973).典型的な実験課題においては,

実験参加者は,2 つの立体図形の視覚刺激が同一か,もしくは鏡像関係にあるか を,できるだけ早く,かつ正確に判断することが求められる.2つの視覚刺激は,

一つを基準の視覚刺激として正立状態で呈示され,もう一方が回転刺激として呈 示される.回答に要する所要時間(反応時間)は,回転して呈示された刺激の回 転角度が大きいほど遅延する.この結果は,視覚刺激に対する判断は,呈示され た視覚刺激に対する心的イメージを心的に回転するという認知活動が関与してい ることを示唆している.

1.2 身体部位の視覚刺激を用いたメンタルローテーション

身体部位の視覚刺激(身体刺激)を用いたMRの場合,脳内で身体の情報が統 合される場(表象)である,身体表象が関与していると言われる.すなわち,身 体刺激を用いたMRについては,必ずしも正立した状態に回転して判断するので はなく,身体表象において表現された手の状態と比較照合する形で判断がなされ ているというものである.このことを示した研究をいくつか紹介する.

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Parsons(1994)は,5つの実験で現在の身体状況を起点として,MRに基づく判断

がなされている可能性を示した.そのうちの一つの実験では,両手の甲同士(手 背部)を合わせて,手の平を外側に向けた姿勢の方が,手の平を机の上に置いた 姿勢よりも反応時間は長かったことがわかった.その結果,反応時間は両手の手 背を合わせて掌を外側に向ける姿勢の方が両手の掌を机の上に置いた姿勢よりも 長かった.この結果は,現在の姿勢状況をモニタリングし,これを参照して判断 しされていることを示唆する.

Ionta et al.(2007)は,両手を膝の上に置く状態(通常姿勢)か両手をねじって握る 状態(拘束姿勢)にして手のMR課題を行い,両手をねじって握る状態にしたと きに反応時間が遅延することがわかった(図2-1-1).両手をねじって握ることで,

現在の手の姿勢が視覚刺激との比較照合する対象としては利用しにくくなったた めと考えられる.この結果もやはり,身体刺激を用いたMRについては身体表象 との比較照合が関わっている可能性を示唆している.

Coslett et al.,(2010)は,慢性的な肩や腕に痛みを抱える患者群と健常者を対象に MR 課題を行った.その結果,慢性的な肩や腕に痛みを抱える患者は,健常者に 比べて回転角度が大きいほど刺激に対する反応時間が遅延することがわかった.

これらの結果は,実際に腕を動かすことがないMRにおいて腕の特性が反映され ることを示唆する.

以上の事から,身体部位を用いたMR課題における反応時間は,現状の身体状 況の影響を受けるといえる.この結果は,身体刺激を用いたMRについては,必 ずしも正立した状態に回転して判断するのではなく,身体表象において表現され た手の状態と比較照合する形で判断がなされていることを示唆するものである.

2-1-1 Ionta et al.2007における手のMR課題の姿勢

A)両手を膝の上に置く状態(通常姿勢)

B)両手をねじって握る状態(拘束姿勢)

A) B)

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2-1-2 Ionta et al.2007における手のMR課題 各姿勢の反応時間

縦軸:反応時間 横軸:手刺激の回転角度

反応時間は,両手をねじって握る状態(拘束姿勢)で遅延される.

1.3 身体刺激を用いたMR課題の波及効果

このセクションでは,身体部位の視覚刺激を用いたMRの介入課題によって,

運動の改善やリハビリテーションの効果がみられたことを報告した研究について 説明する.

Kawasaki and Higuchi(2013)は,足の視覚刺激(足刺激)のMR介入によって,

姿勢制御の改善につながる可能性があることを,2 つの実験を通して示した.こ こでのMR課題は,呈示された足刺激が右足か左足かを回答する認知課題であっ た.実験 1 では介入課題として,約10 分間にわたって足刺激に対する MR課題 を用いた.その直後の立位姿勢動揺量を介入効果の検証として測定した.その結 果,足刺激に対するMRの代わりに車刺激(身体とは無関係の刺激)のMR介入 を行った統制群と比較し,MR 後の姿勢動揺量の減少の程度が大きいことがわか った.この結果を受け,実験2では,介入効果が本当に足刺激の“MR”によるも のか確認するため,比較するコントロール条件として,足刺激が出たらその回転 方向に関わらずボタンを押す単純反応課題を設定した.その結果,直後の姿勢動 揺量を減少させたのは,足刺激のMR課題を介入課題とした場合のみであること

通常姿勢 拘束姿勢

回転角度(°)

反応時間(msec

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を確認した.これらの結果は,足刺激のMR課題が,姿勢制御に波及しうる可能 性を示唆した.

山田らは(2009),肩関節周囲炎患者を対象に標準的リハビリテーションに加えて,

簡単に遂行できる簡易型 MR 課題を行った.簡易型 MR 課題とは,身体部位の 様々な回転角度写真(全120枚)を見せ,それが右側なのか左側なのかを次々と 判断させる課題である.介入群と統制群どちらも標準的リハビリテーションは週 2回行った.介入群では,それに加えて簡易型MR課題を毎日実施するように 指導した.リハビリテーション開始より1か月間の介入を実施し,その効果を検 証した.その結果,介入群では統制群に比べて肩関節機能,肩関節屈曲角度,外 転角度,外旋角度は顕著な改善を示した.この結果は,肩関節周囲炎患者におけ る肩関節機能向上に,簡易型MR介入が有用であることが示唆する.

Moseley(2006)は, 複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者に対して,MR課題

を含めた段階的な運動イメージプログラム(手のMR課題,運動イメージ想起課 題,ミラーセラピーを段階的に施行していく)を実施した.その結果,似たよう な介入課題が含まれない理学療法を行った統制群と比べて,疼痛が軽減すること を示した.この結果は,MR を含めた認知課題により,疾患箇所の機能や疼痛の 改善にもつながる可能性を示している.

Berneiser.et al. (2016)は,手を視覚刺激としてMR課題を3日間行い,fMRIによ

る脳活動を測定した.介入群は,1 日に 30分の MR 課題を2 回行ない,統制群 は,回転していない刺激を用いて左右判断課題を行った.その結果,介入群のみ MR課題の正答率や反応時間の改善が見られたまた,介入前では前被殻で活 性が見られたが,介入後では後被殻,運動皮質と縁上回でも活性が確認された.

このことから,MR 課題を繰り返すことで,行動的適応と神経的可塑性に関わる ことを示唆している.

以上のことから,繰り返しMR課題を行うことで,運動の改善やリハビリテー ションの効果が得られる可能性があるといえる.

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8 第2節 運動イメージの特性

運動イメージとは,運動を行う意図や内容への意識的な結果を表し,実際の運 動発揮する前の準備段階で無意識的に行われることを示す(Jeannerod, 1994).運 動イメージを想起することは,運動学習の補助ツールとして利用できる可能性が ある.実際に,体を動かして行う練習に加えて,メンタルプラクティスを組み合 わせて行うことで,学習効果が高まったという報告もある(Malouin and Richards, 2010).運動イメージを利用することで,怪我直後の急性期のような運動が困難な 場面において,MRを実施し,「脳が運動の仕方を忘れてしまう」ことに一定の歯 止めをかける,といった運動学習への寄与が考えられる.本節では,運動イメー ジが実際の運動遂行時と類似した脳活動が得られることから運動学習に貢献でき る可能性を紹介する.

2.1 運動イメージ

運動イメージとは,運動を行う意図や内容への意識的な結果を表し,実際の運 動発揮する前の準備段階で無意識的に行われることを示す(Jeannerod,1994).運 動イメージ時は,実際の運動に関与する様々な脳領域に活動が見られている

(Decety et al.,1990; Holmes and Calmels, 2008; Loporto et al., 2011; Malouin and

Richards, 2010; Lotze et al.,1999).運動を意図すると,運動実行までのプランおよ

びプログラムが生成される.この時の脳活動の部位は運動イメージ中にも同様に 賦活され,大脳皮質だけでなく,基底核,小脳が関与する(Decety et al.,1990; Bonda

et al.,1995; Lotze M et al.,1999).運動プログラムは,入力された運動感覚を予測す

る「期待される運動感覚」に基づき運動準備段階から生成される(Desmurget M et

al ,2009).振動刺激を用いた運動錯覚中の脳活動では,高次運動野,一次運動野,

頭頂連合野などで賦活される.運動プログラムは,運動の錯覚の程度や運動イメ ージの影響を受ける(Naito et al.,2002)

運動イメージを活用した介入研究のレビュー論文の中で,実際に体を動かして 行う練習に加えて,メンタルプラクティスを組み合わせて行うことで,学習効果 が高まったという報告を紹介している (Malouin and Richards, 2010). その中で,脳 血管患者を対象にした研究では,実運動とメンタルプラクティスを組み合わせて 立ち座りの訓練する際には,学習効果が見られたことが報告されている(Maloulin et al.,2004a; Malaulin et al.,2004b; Maloulin et al.,2009).これは,実運動を取り入れ

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ることによって課題の運動感覚の維持が出来るため学習効果が高まったことを示 唆している.

しかしながら,メンタルプラクティスの問題点としてメンタルプラクティスの 最中に,対象者が本当に適切なイメージをしているのかについて,脳活動を計測 する以外に確認する手段がないことが挙げられる.そこで,対象者が適切なイメ ージをしているかを確認する方法として,MR課題が有効だと考えられる.MR 題において判断に要した反応時間は,正立した位置からの回転角度が大きいほど 遅延することから,回転角度に対する反応時間の長さによって行動指標を確認で きる.こうしたことから,MR 課題を利用したメンタルプラクティスは有効であ る可能性がある.

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10 3節 メンタルローテーションの練習方法

本節では,身体刺激を用いたMR課題の呈示方法を検討するにあたり,バーチ ャルな立体図形の視覚刺激を用いて検討した Provost et al. (2013)について説明す る.この研究では,練習に伴ってMRの回答が素早くなるという練習効果につい て,そのメカニズムを検討した.

3.1 バーチャルな立体図形を用いた練習効果の研究

メンタルローテーション(MR)は,練習により刺激の判断能力が改善される

(Kail & Park,1990; Wright, Thompson, Ganis, Newcombe & Kosslyn,2008; Bethell-

Fox and Shepard,1988; Tarr and Pinker,1989).しかし,MRが素早くなる過程につ

いては2つの説で議論されている.第1の考え方は,心的回転(MR)そのもの の速度が速くなるという説である(Bethell-Fox and Shepard,1988).第2の考え方 は,練習により回転画像を記憶したために,MRを必要しなくなるという説であ る(Tarr and Pinker,1989).

Provost et al. (2013)は,練習によってMRが素早くなる現象についての2

の説明を,MR課題の呈示方法を変える実験によって示した.実験では,バー チャルな立体図形の視覚刺激を用いて画面上に呈示された2つの視覚刺激が 異同を回答する課題(MR課題)を行った.実験1では,少数の種類の視覚刺 激(10種類)を用いて4日間,MR課題を行った.試行は,1ブロック当たり 80試行行い,それぞれ無作為に視覚刺激が8回繰り返された.2日目と3 目では練習として10ブロック行った.また1日目と4日目では,8ブロック を行うほかに,脳活動の計測を行った.その結果,反応時間は全体的に短く なったが,練習後ではMRは見られなかった(図3-1-2a).また,課題中の脳 波計測により回転角度に関わる部位(事象関連電位におけるRRNという成 分)は練習後に見られなくなった.これは,練習により回転画像を記憶した ために,MRが必要なくなるという第2の説を支持する結果であった.実験2 では,多数の種類の視覚刺激(320種類)を用いて,実験1同様に4日間,

MR課題を実施した.その結果,反応時間は全体的に短くなったが,回転角度 に応じて遅延していたことから練習後もMRは保持された(図3-1-2b).脳波 計測により回転角度の大きい刺激に対して事象関連電位におけるRRN成分が

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大きくなることも確認できた.また,練習に使用していない視覚刺激(転移 刺激)を用いても練習後の結果同様に反応時間は短くなり,MRは保持されて いた.この結果は,心的回転そのものの速度が速くなる第1の説を支持する 結果であった.

以上の事から,Provost et al. (2013)は,バーチャルな立体図形の視覚刺激を用 いたMR課題について,多数の種類の視覚刺激を用いれば4日間にわたり課題を 行っても継続的にMRを遂行することを示した.

3-1-2 少数刺激と多数刺激の結果(Provost et al.,2013)

A) 実験1(少数刺激) 練習前後の反応時間とエラー率

練習前の反応時間は角度に応じて遅延する.練習後の反応時間は全体的に短くな るが角度に応じて遅延は見られない

B) 実験2(多数刺激) 練習前後,転移の反応時間とエラー率

*転移では練習に使用していない刺激を用いた

練習前の反応時間は角度に応じて遅延する.練習後の反応時間は全体的に短くな り角度に応じて遅延は見られる.転移でも練習後の反応時間と同様であった.

A)

B)

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12 4節 実験の全体像

本研究では,身体刺激を用いたMR課題を,運動学習の補助ツールとして利用 するために,使用する刺激の数や練習日数など,具体的にどのように設定すれば よいかについて検討することとした.運動学習の補助ツールとして使うというこ とは,身体を使った練習と同様,繰り返しMR課題を遂行するということである.

同じ課題を繰り返し行えば,単に回転した画像を記憶して,回答するだけ(つま り,MRを一切行わなくても即座に回答可能)となる懸念がある.つまり,身体刺 激を用いたMR課題を運動学習の補助ツールとして使うためには,繰り返し課題 を行っても継続的にMRを遂行することが重要である.さらに前述のように,身 体表象を参照しながらMRを遂行することも重要である.

本研究では,全部で3つの実験を通して,こうした2つの基準を満たす刺激の 呈示の方法を検討した.Provost et al.(2013)は,バーチャル立体図形を用いたMR 課題について,非常に多くの刺激を用いれば,4日間にわたり課題を行っても,継 続的にMRを遂行すると報告した.そこで本研究(実験1)では,Provost et al.

の考え方に基づき身体刺激の視覚刺激を選定し継続的にMRを遂行する呈示方法 を検討した.また,身体表象を参照しているかどうかを確認するため,拘束姿勢 によって反応時間が遅延するかどうかも検討した.さらに本研究(実験2)では,

実験1で選定した身体刺激を繰り返し練習した直後に,運動課題のパフォーマン スが向上するのかについても検討した.

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3章 実験報告

1節 実験1-1

本研究では,身体刺激を用いたMRの呈示方法を検討するにあたり,Provost et al.(2013)の実験手続きを踏襲した.Provost et al.(2013)は,バーチャルな 立体図形(コンピュータ上で再現された立体図形)を刺激として本研究と同様の 問題を検討していることから,本研究で採用する手続きとして最適と判断した.

参加者を,視覚刺激の種類が多い刺激群(多数刺激群)と少ない刺激群(少数刺 激群)の2群に分類したうえで,それぞれ4日間の介入実験に参加してもらっ た.身体表象に関与した心的イメージが可能かを確認するため,1日目と4日目 の介入効果検証時には,拘束姿勢条件下でMRを行う課題についても実施した.

1.1 方法

1.1.1 実験参加者

一般健常成人22名(男性11名,女性11名,平均年齢26.09±4.73歳)が参加し た.参加者を,多数刺激群10名(男性5名,女性5名,平均年齢27.5±5.52歳) 少数刺激群12名(男性6名,女性6名,平均年齢24.4±3.03歳)の2群に分 類した.参加者の分類にあたっては,男女の比率を合わせる条件付きでランダム に振り分けた.参加者の選択基準(inclusion criteria)は,右利きの者(エジンバ ラ利き手テスト,ラテラリティ係数89.06±12.69%),正常視力を有するもの

(メガネやコンタクトレンズ使用者の場合,使用中の視力で判断),および複雑 な手の動きが求められる習慣(例,楽器を弾くことや手の細かい作業課題を行う こと)がないものの3つであった.除外基準(exclusion criteria)は,整形疾患,

神経疾患を有するものであった.本研究は,首都大学東京研究安全倫理委員会で 承認されており(承認番号 28-91),各参加者は実験参加同意書に署名したうえ で実験に参加した.

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14 1.1.2 実験環境および使用機器

計測は,首都大学東京13号館2216号室,もしくは横浜市立みなと赤十字 病院リハビリテーションセンターのいずれかで行った.

メンタルローテーションの測定は,パーソナルコンピュータ(TOSHIBA

dynabook satellite B35 ディスプレイ解像度 1366×768,もしくはDell Inspiron

N301Z ディスプレイ解像度 1366×768)を用いた.反応時間計測用のソフトウ

ェア(Superlab,Cedrus社製)にて,視覚刺激の呈示および反応時間の測定を行っ た.反応方法として,反応ボックス(CURRENT,DESIGN社)のボタンを指で 押すという方法を用いた(図1-1-1)

実験刺激として用いる身体刺激は下記の通りとした.多数刺激群の場合は,計 192種類とした(図1-1-2).内訳として,12種類の手の形のそれぞれに対して,

左右,手掌側と手背側,回転角度の4つの要素で刺激を作成した(すなわち,種 類(12)×左右(2)×手掌側と手背側(2)×回転角度(4)).

一方,少数刺激群の場合は,計16種類とした(図1-1-3).内訳は,1種類の 手の形とし,多数刺激同様に4つの要素で刺激を作成した.(すなわち,種類

(1)×左右(2)×手掌側と手背側(2)×回転角度(4)).多数刺激群,少数刺 激群いずれにおいても,回転角度は各々時計回りに0°,90°,180°,270°の 4水準であった.

1-1-1 実験1-1で使用する実験器具:

A) パーソナルコンピュータ,B) 反応ボックス.

反応ボックスは,課題中,青いボタンと赤いボタンを使用した.

左人差し指で左端の青いボタンを,右人差し指で右端の赤いボタンを押し て反応した.

A) B)

(20)

15

1-1-2 多数刺激群で用いた視覚刺激

手の種類(12)×左右(2)×手掌側と手背側(2)で構成されている.

これらの刺激の全てを,4つの回転角度にて呈示した.

90° 180° 270°

右 手掌

右 手背

左 手掌

左 手背

(21)

16

1-1-3少数刺激群で用いた視覚刺激

手の種類(1)×左右(2)×手掌側と手背側(2)で構成されている.

これらの刺激の全てを,4つの回転角度にて呈示した.

1.1.3 実験課題:MR課題

実験課題であるMR課題において,参加者には,ディスプレイ上に呈示 された手が,左手もしくは右手かを,特定のボタン(左手であれば青いボタン,

右手であれば赤いボタン)を押して,出来るだけ素早く正確に回答することを求 めた.ボタンは左右の人差し指で押してもらった(図1-1-1B参照).各試行は参 加者のボタン押しによって開始された.参加者から約45㎝離れたパソコンの画 面上に注視点(1500ms)が呈示され,その直後に身体刺激が呈示された(図1- 1-4).反応終了後に正否のフィードバック情報が画面上に呈示された本実験で は,2つの姿勢(通常姿勢と拘束姿勢)があるが,ボタンの押し方は同じであっ た(図1-1-5).

90° 180° 270°

手掌

手背

手掌

手背

(22)

17

注視点

フィードバック

(正解/不正解)

視覚刺激 開始画面

休憩画面/終了画面

1-1-4 呈示刺激の構成

+

(23)

18

1-1-5 ボタン押しでの反応姿勢

A)通常姿勢 B) 拘束姿勢

呈示刺激が左手の場合,青いボタンを左人差し指で,

右手の場合,赤いボタンを右人差し指で押して回答する

1.1.4 実験手続き

実験は,8日間以内に4日行われた.参加者は,事前練習として16試行実施 した.本試行として,96試行×4セッションの計384試行実施した.セッション ごとに参加者の任意の休憩時間(およそ5分程度)を設けた.1日目と4日目は 通常姿勢の他に手を背中の後ろで反応する拘束姿勢で実験を行った(図1-1-6) 拘束姿勢における実験デザインおよび,試行数は,通常姿勢と同じ手続きで実施 した.4日間の手続きは下記に示す(図1-1-7).

1-1-6 本実験で採用する2つの反応姿勢

A)通常姿勢 B) 拘束姿勢

1-1-7 4日間の手続き

2 呈示刺激の構成

A) B)

2日目 通常

3日目 通常 1日目

通常 拘束

4日目 通常 拘束

400試行

400試行 400試行 400試行 400試行

400試行

A) B)

(24)

19 1.1.5 分析方法

従属変数として,MR 課題の呈示刺激に対する反応時間と,エラー率の2つを 計測した.このうち,介入に適した刺激条件を選定するために重要な従属変数は,

反応時間であった.エラー率については,反応時間が各条件において差が見られ た時に,単に反応時間とエラー率のトレードオフの関係としてその差が生じたわ けではないこと(つまり,回転角度に応じたMR所要時間の違いとして反応時間 の差が生じたのではなく,単に焦燥反応として特定の回転角度の反応時間が短く なったのではないこと)を検証するために,分析を行った.

反応時間,エラー率のいずれのデータについても,多数刺激群,少数刺激群で 独立に統計分析を行った.それぞれ,姿勢(通常姿勢,拘束姿勢)と日数(1日目 4日目)と回転角度(0°,90°,180°,270°)の3要因計画の分散分析を行った.

反応時間は,刺激が呈示されてから参加者がボタンを押すまでの時間とした.反 応時間の分析にあたり,MR を対象とした類似の先行研究の基準に沿って,除外 基準を設けた.具体的には,①誤答した試行,もしくは②反応時間が500msec

下または 3500msec 以上要した試行,のいずれかに合致した試行を除外した

(Parsons,1994; Ionta et al.,2007).各試行で測定された反応時間について,姿勢,

日数の回転角度ごとに平均値を算出し,各条件の反応時間として分析に用いた.

分析は,姿勢(2)×日数(2)×回転角度(4)の3要因分散分析を行った.継続的 MRを遂行することと身体表象を参照することを満たす刺激呈示方法を検証し た.エラー率について,全試行のうち誤った試行をエラー試行とし,全試行数に 占める割合であるエラー率を算出した.エラー率についてはデータの正規性を担 保するため,逆正弦変換を行った後に分散分析にかけた.分析は,姿勢(2)×日数

(2)×回転角度(4)の3要因分散分析を行った.

すべての統計的分析における有意水準は 5%とし,球面性の仮定が棄却された 場合には,Greenhouse-Geisser (グリーンハウス・ゲイザー)のイプシロンを利用し て自由度を修正したものを採用した.分散分析における事後検定にはボンフェロ ーニ法によって実施した.

(25)

20 1.2 結果

1.2.1 反応時間

各群における反応時間は,図1-2-1の通り.また,統計解析の詳細は表1-2-1~

1-2-11 の通り.多数刺激群において,日数,回転角度の主効果が有意であり,練

習後の反応時間は短くなったこと,および回転角度に応じて反応時間が遅延する ことが示唆された(日数: F(1,9)=88.41,p<.001,回転角度: F(3,27)=29.84,p<.001).日 数と回転角度の交互作用は有意であった(F(3,27)=4.71,p<.001).下位検定を行った ところ,すべての回転角度において日数の有意差が認められた.また,1日目にお

いて0°と180°,90°と180°,180°と270°の回転角度の有意差が認められ,

4日目において0°と270°,90°と270°以外で回転角度の有意差が認められた.

これらのことから,4 日間の練習後の反応時間は短くなるにもかかわらず,回転 角度に応じて反応時間が遅延するという傾向は保持されたといえる.

姿勢の主効果,および姿勢に関連した交互作用(姿勢×日数,姿勢×回転角度,

姿勢×日数×回転角度)に有意差は認められなかった(姿勢: F(1,9)=.00,p=.98,姿 勢×日数: F(1,9)=.06,p=.82,姿勢×回転角度: F(3,27)=.24, p=.87,姿勢×日数×回 転角度: F(3,27)=1.10,p=.37).このことから,拘束姿勢による反応時間の遅延は見 られなかったといえる.

少数刺激群において,日数,回転角度の主効果が有意であり,練習後の反応時 間は短くなったこと,回転角度に応じて反応時間が遅延することが示唆された(日 数: F(1,11)=52.93,p<.001,回転角度: F(3,33)=50.47,p<.001).日数と回転角度の交互 作用は有意であった(F(3,33)=16.69,p<.001).下位検定を行ったところ,すべての回 転角度で日数の有意差が認められた.また,1日目において0°と270°以外で回 転角度の有意差が認められ,4 日目において 90°と 270°以外の回転角度で有意 差が認められた.これらのことから,4 日間の練習後の反応時間は短くなるにも かかわらず,回転角度に応じて反応時間が遅延するという傾向は保持されたとい える.

姿勢×回転角度,および姿勢×日数×回転角度の交互作用は有意であった(姿勢

×回転角度: F(3,33)=3.1,p<.05,姿勢×日数×回転角度: F(3,33)=3.55,p<.05).姿勢

×回転角度における下位検定を行ったところ,すべての回転角度で姿勢の有意差 は認められなかった.次に,姿勢×日数×回転角度における下位検定を行ったと

(26)

21

ころ,すべての日数,回転角度で姿勢の有意差は認められなかった.その他の姿 勢の主効果および姿勢に関連した交互作用(姿勢×日数)に有意差は認められな かった(姿勢: F(1,11)=.36,p=.56,姿勢×日数: F(1,11)=.11,p=.75).これらのことか ら,拘束姿勢による反応時間の遅延は見られなかったといえる.

1-2-1 1日目と4日目の反応時間

A 多数刺激群(通常姿勢) B 少数刺激群(通常姿勢)

C 多数刺激群(拘束姿勢) D 多数刺激群(拘束姿勢)

0 500 1000 1500 2000

0 90 180 270

1日目 4日目

反応時間(msec)

回転角度(°)

0 500 1000 1500 2000

0 90 180 270

1日目 4日目

反応時間(msec)

回転角度(°)

B

0 500 1000 1500 2000

0 90 180 270

1日目 4日目

反応時間(msec)

C

0 500 1000 1500 2000

0 90 180 270

1日目 4日目

反応時間(msec)

回転角度(°) D

A

回転角度(°)

(27)

22

1-2-1 多数刺激群における回転角度の比較

1-2-2 多数刺激群における回転角度に対して日数の比較

回転角度 回転角度 p 0° vs 90° 0.06

180° 0.001***

270° 0.06 90° vs 0.06

180° 0.001***

270° 1.00 180°vs 0.001***

90° 0.001***

270° 0.002***

270°vs 0.06 90° 1.00 180° 0.002***

*p<.05,**p<.01,***p<.005,****p<.001 多重比較:Bonferroni

回転角度 日数 p

1日目 0.000****

4日目 0.000****

90° 1日目 0.000****

4日目 0.000****

180° 1日目 0.000****

4日目 0.000****

270° 1日目 0.000****

4日目 0.000****

*p<.05,**p<.01,***p<.005,****p<.001 多重比較:Bonferroni

(28)

23

1-2-3 多数刺激群における日数に対して回転角度の比較

日数 回転角度 回転角度 p

1日目 0° vs 90° 0.31

180° 0.001***

270° 0.82 90° vs 0° 0.31

180° 0.004***

270° 1.00 180°vs 0° 0.001***

90° 0.004***

270° 0.003***

270°vs 0° 0.82

90° 1.00

180° 0.003***

4日目 0° vs 90° 0.014*

180° 0.003***

270° 0.77 90° vs 0° 0.014*

180° 0.011*

270° 1.00 180°vs 0° 0.003***

90° 0.011*

270° 0.006**

270°vs 0° 0.77

90° 1.00

180° 0.006**

多重比較:Bonferroni

*p<.05,**p<.01,***p<.005,****p<.001

(29)

24

1-2-4 少数刺激群における回転角度の比較

1-2-5少数刺激群における回転角度に対して日数の比較

回転角度 回転角度 p

0° vs 90° 0.011*

180° 0.000****

270° 0.14

90° vs 0.011*

180° 0.000****

270° 0.032*

180°vs 0.000****

90° 0.000****

270° 0.000****

270°vs 0.14

90° 0.032*

180° 0.000****

*p<.05,**p<.01,***p<.005,****p<.001 多重比較:Bonferroni法

回転角度 日数 p

1日目 0.000****

4日目 0.000****

90° 1日目 0.000****

4日目 0.000****

180° 1日目 0.000****

4日目 0.000****

270° 1日目 0.000****

4日目 0.000****

*p<.05,**p<.01,***p<.005,****p<.001 多重比較:Bonferroni

(30)

25

1-2-6 少数刺激群における日数に対して回転角度の比較

日数 回転角度 回転角度 p

1日目 0° vs 90° 0.029*

180° 0.000****

270° 0.45

90° vs 0.029*

180° 0.001***

270° 0.033*

180°vs 0.000****

90° 0.001***

270° 0.000****

270°vs 0.45

90° 0.033*

180° 0.000****

4日目 0° vs 90° 0.007**

180° 0.000****

270° 0.008**

90° vs 0.007**

180° 0.002***

270° 0.22

180°vs 0.000****

90° 0.002***

270° 0.000****

270°vs 0.008**

90° 0.22

180° 0.000****

多重比較:Bonferroni

*p<.05,**p<.01,***p<.005,****p<.001

図 2-1-1  実験 1-2 で新たに使用する使用器具
図 3-1-1  実験 2 で新たに使用する使用器具:
図 3-1-7  呈示刺激の構成

参照

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