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社会福祉と権利擁護―

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Academic year: 2021

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 立正大学社会福祉学会第13回大会のシンポジウムは,

「社会福祉と権利擁護 ―高齢者を中心に―」とのタイ トルで,平成23年11月13日に立正大学熊谷校舎アカデ ミックキューブにおいて開催された.企画趣旨は以下 の通りである.

企画趣旨

 少子高齢化の進展や核家族化等,社会情勢が変容す るにつれて,社会福祉の分野においても利用者の権利 擁護が重視されつつある.

 日本では2010年,高齢化率が22.7%であり,超高齢 社会と定義される21%を超えている(平成22年度高齢 社会白書).地域的にみると過疎地においては人口維持 が困難となる限界集落が現れ,他方で都心部において は独居や高齢者のみの世帯の増加が著しい.悪質商法 や「振り込め詐欺」被害など,高齢者をターゲットに した権利侵害も拡大の一途である.「介護の社会化」を 目的とした介護保険制度の導入により居宅介護サービ スの量的拡大が図られたものの,深刻な高齢者虐待事 件も相変わらず頻発している.孤立死に代表されるよ うに,困窮していても誰にも気づかれずに,助けを求 めることもない「無縁社会」が広がっているとの指摘 も見過ごせない.

 他方で,韓国における高齢化は日本の高齢化の進展 に比べるときわめて高速に進展することが見込まれて いる.韓国の高齢化率をみると,2000年に7%を超え,

17年後の2017年には14%に達し,その後2050年には

35.1%と,日本に次いで世界最高の水準にまで達する と見込まれている.韓国では高齢化率が7%から14%

に達するのが17年と,日本で24年要したことと比較し てもさらに急激に高齢化の進展が見込まれていること,

また急激な産業化,核家族化の進展により一人暮らし 高齢者数も増加する傾向にある(平成20年版高齢社会 白書).韓国の現状について,新羅大学校の楚義秀先生 に基調講演をいただく.

 日本においても,急速な高齢化に対応するため,利 用者の権利擁護という観点からのサービスの基盤整備 がこの10年で急速に進められてきた.成年後見制度や 日常生活自立支援事業,介護サービスの質的向上を目 指した福祉サービス第三者評価事業,苦情解決制度の 整備,地域包括支援センターによる虐待防止の取り組 みの開始等,新たな制度の開始と関係各機関の尽力に よりあらゆる手だてが打たれてきた.後半の討論では,

社会福祉協議会,特別養護老人ホーム,行政の立場か らそれぞれ実践に基づいた報告と,本学教員による若 干の理論的整理を行う.

 高齢者の生活のありようは以前と比べてどのように 変容しており,今後どのような変化をしつつあるのか.

介護保険制度が開始されて11年目にあたる現在,超高 齢社会の到来を前に,高齢者が権利を擁護されながら 生活を送ることができるための条件整備とはいかなる ものであるべきか,基調講演とシンポジウムを通じて 考えたい.

(企画:社会福祉学部講師 濵畑芳和)

立正大学社会福祉学会第13回大会シンポジウム報告

社会福祉と権利擁護

―高齢者を中心に―

 基調講演

  「老人虐待の対応に関する研究―申告義務者を中心として―」 楚 義秀(新羅大学人文社会科学部)

 シンポジスト   土屋 典子(立正大学社会福祉学部)

      田部井孝幸(大泉町社会福祉協議会)

      福嶋 克巳(立正たちばなホーム)

      遠藤 正芳(加須市役所)

 コーディネーター 濵畑 芳和(立正大学社会福祉学部)

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基調講演

 基調講演は,新羅大学人文社会科学部社会福祉学科,

楚義秀先生より「老人虐待の対応に関する研究―申告 義務者を中心として―」とのタイトルで,韓国の老人 虐待の特性と申告義務者についてお話いただいた.

 韓国を含めて東北アジアの文化の中では老人を尊敬 するという文化があり,韓国でも高齢者を尊敬するも のとして認識している.韓国も超高齢社会に直面して おり,準備を進めているところであるが,課題の一つ として老人虐待の問題をあげることができる.1980年 代以降になると老人に対する公的政策が作られ始め,

2000年代以降になると法整備が行われている.2004年 の老人福祉に関する法改正では,初めて虐待に関する 項目が盛り込まれ,老人が尊厳をもって生きていく権 利が保障されていると説明下さった.

 家族による老人の扶養や虐待が問題とされる背景と して,急速に高齢社会に入ったこと,日本と比較する と韓国では施設が負担するケアが少なく家族の負担が 大きくなっていることを指摘された.また,老人虐待 の申告件数を示され,2006年には3996件であったもの が2009年には6159件となり3年間のうちに35.1%に上 昇していること,老人虐待の経験があると答えた人は 65歳以上で35%となることをあげ,このデータは申告 されたデータであるので,実際には数十倍以上の老人 虐待のケースがあると考えられると説明された.2004 年度の法改正により,施設関係者や医師などは老人虐 待を見つけた時に申告することが義務付けられた.2006 年から2009年の「年度別申告義務者累計」から,申告 者数は老人施設従事者が増加,社会福祉専任公務員は 一定数を確立しているが,障害者施設,家庭暴力相談

/保護施設従事者は申告数が変化していないことを示 された.老人福祉施設従事者数の増加は教育の影響が 多く反映しているという.

 また,老人虐待累計をみると,重複虐待が56.5%で ある.また,単一の虐待では,情緒的虐待が40.1%と 最多となっている.虐待においての行為者は息子が最 も多く51.1%次いで娘11.3%,ついで嫁9.6%となって いる虐待の行為者として一番親密なものによるものが 大きく,被虐待高齢者の心の受ける傷も問題とされる という.

 次に,老人虐待に関する申告義務者の分析枠組みと して研究モデルを紹介下さった.研究モデルは,従属

変数を老人虐待に対する申告・介入と設定し,独立変 数の中で一番重要と考えたのが認識,2番目として知 識の有無,3番目として教育の経験の有無を考えたと のことである.統制変数に人口社会学的要因をおいて いる.釜山市広域届け出義務機関に勤務している220名 に行った調査結果を以下のように分析された.男性で あり社会福祉関連施設従事者であるものが,申告数が 多くなる傾向があり,教育の経験が多いほど申告行動 に影響を及ぼしている.したがって老人虐待に対する 多様な教育の機会の拡大,制度に関する情報提供と広 報の強化等,より積極的な努力が必要であることが示 唆されたという.また,老人虐待発見後の介入の程度 について分析すると,年齢が若く,施設従事者である 場合に積極的に老人虐待に介入していることが分かる.

年齢,制度的知識,教育的経験,職業の順で積極的介 入に影響を及ぼしているとのことである.

 最後に,老人虐待問題改善のため,実践的提言をさ れた.一つめは,まだ認識の低い,老人虐待に対する 社会的認識の改善の必要性,二つめは,ほとんどの人 が電話で申告をしているので,老人虐待の緊急電話の 広報の必要性,三つめとして,申告義務者それぞれの 対象者別に合わせた教育プログラムの開発,四つ目と して老人虐待申告義務者が積極的に申告できる環境,

条件を作ることが必要との内容であった.現在,申告 義務者の役割に関する規定が明示されてはいるが,処 罰規制がないため,実際には効果的な制度とはなって いないという.申告義務者に関する規定を強化し,申 告義務者だけに明示されている規程を申告しない場合 には法的に責任を負わせるように申告義務者に対する 法的制裁が強化されなければならないと訴え,基調講 演を終えられた.

シンポジウム

 続いて行われたシンポジウムでは,コーディネーター の濵畑講師より,シンポジウムの主旨が説明され,各 シンポジストより報告が行われた.

 はじめに,「虐待防止の取り組みとその課題」と題し て,土屋典子講師(立正大学社会福祉学部)より報告 があった.高齢者虐待防止法施行後4年間で高齢者虐 待の現状を確認すると,2006年からの相談通報件数は,

2009年には23,304件となり,1.2倍の増加となっている とのことであった.これらの結果は全国の市区町村か ら報告されたものであるが,地域間格差が生じている

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ことが確認されており,教育や広報などを熱心に行う 自治体では件数が上がるという傾向がデータから読み 取れると説明された.最も多く虐待を行っているのは 息子であり,さらデータを見ていくと同居家族が8割,

未婚の子どもが全体の4割を占めるとお話下さった.

最近の高齢者虐待の典型例を確認すると,1990年代,

虐待防止法・介護保険法の制定前は,嫁(息子の妻)

35.6%による世話の放棄が32.2%と多い事例であった.

2000年代になると息子(44.8%)による身体的虐待

(63.5%)が典型例と変化する.これはその時の主たる 介護者が誰であるかという問題とも関連すると考えら れているそうであるが,息子に見られる虐待の理由と して,不慣れな家事や介護のストレスが挙げられてい るという.その中で,介護者負担の軽減,サービスの 導入により虐待を防止できると考えられていたと説明 がされた.また,息子による虐待事例を分析していく と,二つのパターンが見えてきたという.一つは,成 人の子の孤立,老親の孤立,孤立する中でそれぞれが 貧困の問題を抱え,経済的虐待,ネグレクトへと発展 するパターンである.もう一つは,子どもの貧困,老 親の貧困から,それぞれの孤立という要素が加わり,

介護における二者間の濃密化が起こり,その中で生じ る介護ストレスから身体的虐待,心理的虐待,ネグレ クトへとつながるパターンがあることを説明された.

現在の虐待問題においては,単に介護負担だけでなく,

虐待者,被虐待者双方の孤立,孤独,貧困の問題が見 え隠れしており,サービス利用だけで解決できるもの ではないということが徐々に明らかになってきている とのことである.家庭内虐待の背景として経済的貧困,

社会的孤立,精神的健康の剥奪,自尊感情の傷つきな どが発生要因として考えられ,対応として,貧困への 対応,つながりの再生,精神的健康の回復,自尊感情 のケアなど多方面からの専門的関わりが求められてい る.虐待防止への対応機関として行政,地域包括支援 センターに期待が寄せられているとのお話しであった.

 最後に,虐待防止の取り組みにおける課題として,

現場の努力だけでは解決できない問題が出てきている 現在,制度のほころびへの対応が必要であり,また,

地域間格差の対応,虐待防止・介入アプローチの開発,

実践者のスキル獲得が求められているとして報告を終 えられた.

 続いて「社会福祉協議会における権利擁護実践」と のタイトルで田部井孝幸氏(大泉町社会福祉協議会)

より,群馬県大泉町社会福祉協議会で行っている日常 生活自立支援事業の現状と課題について報告いただい た.大泉町は群馬県で一番小さい面積であるが,人口 密度は最も高くなっている町であるという.特徴とし て,外国人登録者数が6,246人であり町に人口の14%と なっているそうだ.田部井氏は町に一か所の地域包括 支援センターに勤務しているとのことである.

 日常生活自立支援事業について,認知症高齢者,知 的障害者,精神障害者など判断能力が不十分な方を対 象としており,主に福祉サービスの利用援助,苦情解 決の利用援助,行政手続きの利用援助など,日常的な 金銭管理などを行っていると説明下さった.群馬県は 利用者数の多い県であり,大泉町では,9名の利用者 がおり,7名の支援員で支援しているという.今回の 報告では,4名の女性グループに年金を5年間にわた り搾取されていた男性の事例を通して同制度の現状と 課題を確認下さった.

 Aさん71歳男性,要介護1,日常生活自立度自立,

認知症Ⅱa,今回の問題が発覚するまで,介護保険等 の利用は全くなかった.搾取グループは老人センター で独居の男性高齢者に声をかけながら近づき金銭を引 き出していたという.Aさんも,通帳など財産をすべ て搾取され,グループメンバーとその家族がAさん宅 に同居していた.Aさん自身は,家の隣のお墓のお供 えを食べて生活している状況であったという.

 この事例から,日常生活自立支援事業の課題点は,

①事業の利用開始までに,専門医が本人と面談をして 通常は1カ月から場合によっては3カ月かかってしま うこと,この事例の場合は,契約前に搾取グループか ら通帳と印鑑を取り戻すという特殊なケースとなった そうだ.②本人の意思が尊重されるので,希望がない 場合利用に至らないこと,③本人の意向が確認できな いので重度の認知症では利用できないこと,④本人が 希望した場合,悪意のある第三者にも金銭管理を任せ なければならないこと,⑤成年後見になった場合も市 町村長申し立てになるので大変な時間がかかること,

⑥支援員の質の確保が難しいこと,⑦社会福祉協議会 がヘルパーの派遣などのサービスを提供している場合,

利益相反となってしまうこと,⑧重度身体障害者の方 で,判断能力が十分にある方の場合は利用ができない こと,などがあるという.

 また,地域包括がこの日常生活自立支援事業行う利 点として,様々な事業への橋渡しがしやすいこと,特

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に成年後見制度への橋渡しがしやすいと話された.処 遇困難事例についても総合的な支援がとりやすく,イ ンフォーマル,フォーマルなサービスを構築するとい うソーシャルワーク的な取り組みも地域包括として行っ ていくことが期待されており,総合的に日常生活を支 えることができるとお話下さった.

 日常生活自立支援事業は,本来,予防的で利用しや すい制度である.地域の中で潜在化しやすいニーズを 受け止めて支えていることをねらった制度であること を再確認して,すべての人が人間らしく,自身の人生 を主体的に生きる権利を守って,件の社会全体の権利 擁護のシステムを再構築する時期に来ていると報告を まとめられた.

 続いて,「特別養護老人ホームにおける権利擁護実 践」を福嶋克巳氏(立正たちばなホーム)がご報告下 さった.

 施設側から見た「高齢者虐待」と「権利擁護」は,

高齢者介護をしていく中で避けて通れない課題である と認識でき,虐待は家族だけの問題ではなく,介護を 職業としている職員の問題ともなっているという.施 設職員の虐待も408件あったことが平成21年度厚生労働 省調査でも明らかとなっており,職員自身が虐待をし ている意識がないというのが大きな問題であると話さ れた.施設内で研修等も行っているとのことであるが,

職員同士が指摘し合える雰囲気が虐待を未然に防ぐた めに必要となるとお考えであった.

 また,高齢者虐待の被害者を保護する立場としての 施設の役割をあげられ「やむを得ない事由による措置」

は定員の5%まで受け入れられることになっているが,

施設ごとに対応が異なるのが現状であると問題を指摘 された.実際の事例から,高齢者虐待の保護は命の危 険性があり迅速な対応が求められるが,「今日中に保護 してほしい」という要望にたいして,施設からは「明 日返答する」という回答が多かったという現状を紹介 下さった.制度が作られていても,現場の施設の対応 が施設によって異なるのは問題であると指摘された.

 成年後見制度から見た「権利擁護」について,現在 社会福祉士会で成年後見をなさっているそうだ.立正 たちばなホームにも成年後見が付いている利用者が二 名いるが,施設側として,家族以外の成年後見がつい ている利用者に対して,何かあった時の医療同意がで きないなど,敬遠する傾向があるとお話下さった.以 前より成年後見の認知が広がってはいるが,施設は理

解不足の部分から敬遠する傾向は残っているとのこと である.成年後見は,財産管理と身上監護が仕事であ る.2親等以内の親族がいない場合,市町村長申し立 てが出来ないシステムとなっている市町村が3割ある のが現状であることをあげられ,成年後見制度が権利 擁護を担うことになっている現在,法整備も必要となっ ているとお話下さった.

 次に行政の実践について「行政における虐待防止・

権利擁護実践」とのタイトルで遠藤正芳氏(加須市役 所)よりお話いただいた.加須市は人口11万7千人,

平成22年に加須市,騎西町,北川辺町,大利根町が合 併されたそうである.高齢化率は20.49%となっている が,何丁目の単位まで地域を掘り下げていくと,高齢 化率が35%を超える地域もあり,地域を掘り下げて考 えていかなければならないと地域について説明下さっ た.

 地域包括支援センターでの成年後見相談件数は,平 成19年は19件,平成22年には44件となっている.虐待 相談件数は,平成19年に19件,平成22年には30件となっ ているがこれはあくまでも通報件数であり,氷山の一 角なのではないかとお考えとのことである.

 現在社会福祉士として行政で勤務する中で難しさを 感じているのが,上司は行政のプロであるが,福祉の プロではないため理解を得ることが難しいことである そうだ.しかし,上司に理解をしてもらえなければ市 民の理解は得られないと感じていらっしゃり,専門職 として見たこと,聞いたこと,感じたことを伝える力 が求められているとお話下さった.

 高齢者虐待における対応として,加須市では,48時 間以内の事実確認,二人体制による対応,寄せられた 情報は放置しないなどのマニュアルが作成されている とのことである.専門職として,価値知識技術を持っ て支援しているが,かわいそう,助けてあげたいなど の感情をもってしまうこともある,しかし感情のコン トロールが出来ないまま支援をしてしまうと,法や秩 序が保てない,誤った方向に支援をしてしまう危険性 があるという.

 法や行政が介入することですべてが解決できるわけ ではなく,自分で解決が出来るように支援していくこ とが重要である.養護者に対する支援,制度による支 援,気付きに対する支援,パワレスに対する支援を行っ ているそうだ.それぞれの生活史が異なるので,虐待 の行為に限って介入するのではなく,その方の環境や

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生活史を踏まえて支援をしている.しかし,介入のタ イミングが遅れると,深刻な事態に陥り,生活を維持 することができなくなるという.市町村として与えら れている権限を施行しないと,タイミングを逃すこと となってしまうので緊急性の判断,危機介入のスキル が求められているとご説明下さった.

 憲法にも謳われている権利を守ることが,福祉の専 門職に求められているのではないかと話され,ご自身 が専門職として大切にしていることとして,社会福祉 士としての基礎を築くこと,法や制度をしっかりと理 解すること,福祉という枠組みにとらわれず幅広い見 識を持つこと,支援者として自分自身を理解すること の4点をあげられた.

 最後にコーディネーターでもある濵畑芳和講師(立 正大学社会福祉学部)より「権利擁護 この10年の到 達点と課題」として,権利擁護の10年の歩みがまとめ られた.そして,10年の到達点として,これまでの高 齢者福祉として捉えられなかった分野へ焦点があたっ たことに対する評価,金銭管理支援,虐待介入に関す るルール化が行われたこと,権利擁護という用語が広 まったことによって権利擁護機関の重層的法整備とネッ トワークが構築されたこと,行政,(市町村の高齢者福 祉課)社会福祉協議会の日常生活自立支援事業,地域 包括支援センター,それぞれが自らの役割を果たすこ とによって,介護保険事業者,司法関係者,消費者行 政,社協による地域福祉活動,民生委員,自治会,老 人クラブ,女性会等の地縁組織,権利擁護活動を行う NPO 法人等に至るまでの幅広い連携がとれるように なったことがあげられた.

 また,今後の課題として,①さらなる高齢化の進展 に伴う基盤整備の拡大,特に日常生活自立支援事業と 成年後見制度の担い手問題をどう考えるのか(市民後

見人等)について,②支援の迅速性の担保,特に助け てと言えない人に対する支援のあり方や適切な介入の 方法等,③地域間格差,平等性の確保の問題を提示し 報告を終えられた.

 以上五名の報告を受けて,フロアより,埼玉の社会 福祉士がパートナーとして権利擁護にどれくらい動い ているのかとの質問や,発見システムについて何か取 り組みが行われているのかなどの質問がだされた.

 質問の回答を含めたシンポジストからの発言では,

ぱあとなあ埼玉の活動として,弁護士会と協力して高 齢者虐待対応チームが作られていること,また,発見 システムについては,市町村での条例の作成,研修会 の実施,警察との連携,地域包括支援センターを中心 とした虐待発見ネットワークの作成など行われている ことが各シンポジストから説明された.虐待が発見さ れづらいメカニズムが発生しており,SOS を出せない パワレス状態になっている方,他者への信頼が持てな いという方がいまだ多く,地域包括の職員が何度訪問 しても受け入れられない方も多いのが現状であるとい う.虐待防止法の制定時から進んでいないのではない かという指摘もあったが,高齢者虐待への対応はそれ だけ困難なものであり,援助者,被虐待者,虐待者,

それぞれへの対応が求められていると現状が説明され た.コーディネーターの濵畑講師によって「この10年,

様々な取り組みが行われてきた.それらが遅々として 進まない苛立ちがあると一方では言える.一進一退し ながら,それでもとにかくやって行かなくてはという 部分について,現場の職員,研究者が連携をとりなが ら取り組んでいくことが重要である」と締めくくられ,

シンポジウムは終了した.

(構成:橋本理子)

参照

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