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知的財産の保護一般

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Academic year: 2021

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(1)

︿ 論 説 ﹀

知 的 財 産 の 保 護 一 般

千 野 直 邦

五 目 次

は じ め に

明 治 三 二 年 法 制 の 沿 革

知 的 財 産 の 概 念

物 と 知 的 財 産 の 関 係 む す び に

183

(2)

一 は じ め に

イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 取 引 の 対 象 と な っ て い る 電 子 情 報 な ど ︑ 精 神 的 労 務 の 所 産 で あ る 知 的 財 産 を 法 概 念 上 ど の よ う

に 取 扱 う べ き か ︑ そ れ は 如 何 な る 権 利 の 客 体 で 私 権 の 如 何 な る 種 類 に 属 す る の か ︒

電 子 商 取 引 の 対 象 と な る ソ フ ト な ど 電 子 情 報 に つ い て は ︑ 民 法 の 想 定 し て い る ﹁ 物 ﹂ す な わ ち ﹁ 有 体 物 ﹂ ( 八 五 条 )

や サ ー ビ ス と 異 な る た め ︑ 現 在 は 法 律 上 財 産 と し て 位 置 付 け ら れ て い な い ︒ デ ー タ サ ー ビ ス に つ い て は ︑ 著 作 権 法 の

要 件 を 満 た せ ば ︑ 法 的 に 保 護 さ れ る ︒ た だ ︑ デ ー タ ベ ー ス の 中 の 情 報 そ れ 自 体 は 著 作 権 法 に よ っ て 保 護 さ れ な い も の

も 多 い ︒ こ の 場 合 ︑ い わ ゆ る ラ イ セ ン ス 契 約 が 締 結 さ れ て い る 等 ︑ 事 実 上 財 産 と し て 観 念 さ れ て い る が ︑ こ れ で は ネ ッ

ト 時 代 に 十 分 に 対 応 で き な い と な れ ば ︑ 民 法 の 存 在 意 義 そ の も の が 問 わ れ か ね な い ︒ 法 務 省 は ︑ 経 済 構 造 改 革 を 推 進

す る た め ︑ 二 〇 〇 〇 年 秋 に ︑ 民 法 ︑ 商 法 ︑ 刑 法 の 基 本 三 法 の 抜 本 改 正 の 方 針 を 打 ち 出 し た が ︑ 改 正 の 中 核 は ネ ッ ト 時

代 に 対 応 す る た め の 民 法 改 正 で あ る と さ れ る ︒ そ こ で は 経 済 的 な 価 値 が あ り ︑ 取 引 対 象 と な る ソ フ ト を ﹁ 情 報 財 ﹂ と

し て 根 拠 を 持 た せ ︑ 保 護 す る こ と が 最 大 の 柱 に な る と さ れ て い る ︒ そ れ は 知 的 財 産 の 保 護 の 位 置 付 け に 連 動 し ︑ ﹁ 物 ﹂

概 念 の 再 検 討 を 要 す る も の と も な ろ う ︒

本 稿 で は ︑ 知 的 財 産 を め ぐ る 基 本 的 な 問 題 に つ い て ︑ 明 治 三 二 年 に 制 定 さ れ た 著 作 権 法 と 工 業 所 権 法 な ど 知 的 財 産

法 の 沿 革 ︑ 国 際 条 約 上 の 定 義 ︑ 知 的 財 産 の 語 義 ︑ そ の 本 質 論 ︑ 物 と 知 的 財 産 の 関 係 等 に つ い て 考 察 し ︑ 若 干 の 私 見 を

加 え て み る ︒

( 1 ) 二 〇 〇 〇 年 一 〇 月 三 一 日 付 日 本 経 済 新 聞 ︒

(3)

二 明 治 三 二 年 法 制 の 沿 革

知 的 財 産 の 保 護 一 般 185

O 知 的 財 産 法 的 観 念 の 導 入

知 的 財 産 と は ︑ 人 間 の 知 的 活 動 の 成 果 と 営 業 上 の 標 識 を 包 摂 す る 概 念 で あ る ︒ 知 的 活 動 は ︑ そ の 成 果 と し て 著 作 物 ︑

発 明 品 な ど の 文 化 財 を 創 り 出 す ︒ こ の 場 合 ︑ 文 化 財 に 具 現 化 さ れ た 知 的 な 創 作 活 動 と い う 無 形 の も の に 価 値 が 認 め ら

れ る ︒ 一 方 ︑ 商 品 商 標 ( ト レ ー ド ・ マ ー ク )︑ 役 務 商 標 ( サ ー ビ ス ・ マ ー ク ) な ど の 商 標 や 商 号 の よ う な 営 業 上 の 標 識 に

つ い て は ︑ 創 作 性 を 必 要 と せ ず ︑ 文 化 財 と し て 扱 う こ と も で き な い が ︑ 営 業 上 の 識 別 力 が あ る こ と か ら ︑ 営 業 上 の 信

用 を 化 体 す る も の と し て 無 形 的 な 価 値 が 認 め ら れ る ︒

こ の よ う な 知 的 財 産 の 価 値 を 保 全 し ︑ そ の 機 能 を 発 揮 さ せ る た め に は ︑ そ れ に 対 応 し た 保 護 制 度 が 必 要 と な る ︒ 知

的 財 産 法 と い わ れ る も の は ︑ そ れ ら の 保 護 法 の 総 称 で あ る ︒ た だ 知 的 財 産 は 無 形 の 思 想 や 価 値 を 内 容 と し ︑ そ の 性 質

上 有 体 物 に 認 め ら れ る 排 他 性 が な い の で ︑ そ の 支 配 ・ 利 用 に つ い て 当 然 に は 物 権 的 な 権 利 の 対 象 に な り に く い ︒ 従 来 ︑

人 の 精 神 的 活 動 の 所 産 で あ る 無 体 物 を 独 占 的 に 支 配 す る こ と が で き る 権 利 を 無 体 財 産 権 と 呼 び ︑ 有 体 物 を 対 象 と す る

所 有 権 そ の 他 の 物 権 や 金 銭 債 権 な ど の 通 常 の 財 産 権 と 区 別 し て い た ︒

知 的 財 産 は ︑ そ れ が 作 成 さ れ た 後 ︑ そ の 創 作 者 を 離 れ ︑ 多 く の 人 に よ り 同 時 に 国 の 内 外 に お い て 利 用 さ れ 得 る ︒ 特

許 制 度 お よ び 著 作 権 制 度 は い ず れ も 新 規 な 発 明 や 著 作 物 に 対 し て 独 占 的 特 権 を 与 え る も の で あ る ︒ そ の 沿 革 を 探 る と ︑

国 王 が 特 定 の 商 工 業 者 や 印 刷 業 者 に 対 し て 恩 恵 的 利 益 を 得 さ し め る た め に 与 え た 独 占 的 特 権 を 純 化 し た も の で あ る こ

と が わ か る ︒ し か し ︑ 知 的 財 産 が 一 種 の 財 産 権 と し て 保 護 の 対 象 と さ れ る よ う に な っ た の は 近 代 に 入 っ て か ら の こ と

で あ り ︑ 各 国 は 知 的 財 産 法 を 整 備 し ︑ 諸 外 国 と の 通 商 条 約 締 結 に 際 し て 知 的 財 産 の 保 護 を 主 張 す る と と も に ︑ 知 的 財

(4)

産 の 国 際 的 保 護 が 要 請 さ れ る こ と に な る ︒

我 が 国 に 知 的 財 産 法 的 観 念 が 導 入 さ れ た の は 明 治 に な っ て か ら で あ る ︒ そ れ 以 前 に も 西 欧 諸 国 と 同 様 ︑ 一 定 の 業 者

に 独 占 を 与 え ︑ そ の 反 射 的 効 果 と し て 利 益 を 得 る と い う こ と は 存 在 し た が ︑ 現 在 の 知 的 財 産 制 度 と 異 な る も の で あ っ

た ︒ 福 沢 諭 吉 の ﹃ 西 洋 事 情 外 編 ﹄ で は コ ピ ラ イ ト の 訳 語 と し て ﹁ 蔵 版 の 免 許 ﹂ の 語 が 登 場 し ︑ 欧 米 先 進 国 の 蔵 版 保 護

政 策 と 併 せ て 特 許 制 度 の 説 明 が な さ れ て い る が ︑ こ れ が 我 が 国 に お い て 知 的 財 産 制 度 を 最 初 に 紹 介 し た も の と 言 わ れ

て い る ︒

⇔ 不 平 等 条 約 の 改 正 と 知 的 財 産 法 の 整 備

明 治 政 府 は ︑ 国 の 富 強 と 殖 産 興 業 を 政 策 に 掲 げ ︑ 不 平 等 条 約 の 改 正 を 企 図 し て 西 欧 列 強 に お け る 法 制 の 摂 取 に 努 め

た ︒ そ こ で は 民 法 の よ う に 法 典 論 争 が 生 じ て 立 法 化 の 遅 れ た も の も あ る が ︑ 著 作 権 制 度 や 特 許 制 度 の よ う に 文 化 政 策 ・

産 業 政 策 的 な も の に つ い て は 比 較 的 早 期 の 立 法 を み て い る ︒

明 治 二 年 五 月 = 二 日 ︑ 出 版 に 関 し て は 最 初 の 法 制 と な る ﹁ 出 版 条 例 ﹂ (行 政 官 達 四 四 四 号 ) が 発 令 さ れ る ︒ こ の 条 例

は 主 と し て 出 版 の 取 締 り に 関 す る 事 項 を 規 定 し た も の で あ る が ︑ そ の 中 に は 次 の よ う な 条 項 が み ら れ る ︒

﹁ 圖 書 ヲ 出 版 ス ル 者 ハ 官 ヨ リ 之 ヲ 保 護 シ テ 專 費 ノ 利 ヲ 収 メ シ ム 保 護 ノ 年 限 ハ 率 ネ 著 述 者 ノ 生 涯 中 二 限 ル ト 錐 モ 其 親

屡 之 ヲ 保 績 セ ン ト 欲 ス ル 者 ハ 聴 ス ﹂

特 許 制 度 に つ い て は ︑ 明 治 四 年 に 専 売 略 規 則 (太 政 官 布 告 一 七 五 号 ) が 初 め て 布 告 さ れ た が ︑ 当 時 の 産 業 事 情 下 で

は 時 期 尚 早 で あ っ た の か 翌 明 治 五 年 に は 一 件 の 官 許 も な い ま ま 廃 止 ( 太 政 官 布 告 一 〇 五 号 ) さ れ て お り ︑ 一 八 年 の 専

売 特 許 条 例 ( 太 政 官 布 告 七 号 ) ま で 特 許 法 制 は 存 在 し な か っ た ︒ 専 売 特 許 条 例 は 主 と し て フ ラ ン ス 特 許 法 に な ら っ た

も の で ︑ 現 行 特 許 法 の 母 体 と な っ て い る ︒ こ の 条 例 は 改 正 さ れ ︑ 明 治 二 一 年 に 特 許 条 例 (勅 令 八 四 号 ) が 制 定 さ れ た ︒

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知 的 財 産 の保 護 一 般 187

商 標 制 度 に つ い て は ︑ 明 治 ︼ 七 年 に 商 標 条 例 (太 政 官 布 告 一 九 号 ) が 制 定 さ れ ︑ こ れ が 明 治 二 一 年 に 改 正 (勅 令 八 六 号 )

さ れ て 明 治 三 二 年 ま で 実 施 さ れ た ︒ こ れ ら と 並 ん で 意 匠 制 度 の 整 備 も 進 み ︑ 明 治 一 二 年 に 最 初 の 意 匠 条 例 (勅 令 八 五

号 ) が 制 定 さ れ た ︒ 以 上 の 三 条 例 に よ っ て 我 が 国 の 工 業 所 有 権 は ︑ 一 応 そ の 最 初 の 体 裁 を 整 え る こ と に な る ︒

こ の 時 代 に は ︑ 知 的 財 産 の 国 際 的 保 護 が 企 図 さ れ ︑ 明 治 一 六 ( 一 八 八 三 ) 年 に ﹁ 工 業 所 有 権 保 護 に 関 す る パ リ 条 約 ﹂

が 成 立 し ︑ 明 治 } 九 ( 一 八 八 六 ) 年 に は ﹁ 著 作 権 保 護 に 関 す る ベ ル ヌ 条 約 ﹂ が 成 立 し て い る ︒ 我 が 国 は 両 創 設 条 約 に

加 盟 し て い な か っ た が ︑ 両 条 約 の 成 立 に よ り 知 的 財 産 法 の 整 備 を 促 さ れ る こ と に な る ︒ そ の 背 景 に は ︑ 不 平 等 条 約 の

撤 廃 問 題 が 絡 ん で い る ︒ 安 政 条 約 改 正 の 機 運 は 日 英 間 か ら 芽 生 え る が ︑ 条 約 改 正 は 日 本 の 文 化 レ ベ ル に 大 き な 影 響 を

与 え る も の と な っ た ︒ 明 治 二 七 ( 一 八 九 四 ) 年 七 月 に 日 英 通 商 航 海 条 約 が 締 結 さ れ ︑ こ れ を 皮 切 り に 諸 外 国 と の 通 商

航 海 条 約 が 締 結 さ れ る こ と と な る ︒ こ の 日 英 条 約 附 属 議 定 書 第 三 款 に は ﹁ 日 本 政 府 ハ 日 本 国 二 於 ケ ル 大 不 列 顛 国 領 事

裁 判 権 ノ 廃 止 二 先 タ チ テ 工 業 ノ 所 有 権 及 版 権 ノ 保 護 二 関 ス ル 列 国 同 盟 条 約 二 加 入 ス ヘ キ コ ト ヲ 約 ス ﹂ と 約 定 さ れ た ( フ

ラ ン ス ︑ イ タ リ ア の 両 国 と 締 結 さ れ た 通 商 航 海 条 約 に お い て も 同 旨 )︒ こ の 条 約 は 五 年 後 の 明 治 三 二 二 八 九 九 ) 年 に 発 効

す る が ︑ こ こ に 政 府 は 万 国 版 権 保 護 条 約 ︑ つ ま り ベ ル ヌ 条 約 へ 加 盟 す る こ と を 公 約 し た の で あ る ︒ 不 平 等 条 約 の 撤 廃

と し て 領 事 裁 判 制 の 廃 止 ︑ 関 税 率 の 引 き 上 げ が 明 治 三 二 年 か ら 実 施 さ れ る こ と と な っ た (関 税 自 主 権 に つ い て は 明 治 四

四 ︹ 一 九 = ︺ 年 の 日 米 新 通 商 航 海 条 約 ま で 待 た な け れ ば な ら な か っ た )︒

以 上 の 経 過 を 踏 ま え て ︑ 明 治 三 二 年 に ︑ 特 許 法 (明 治 三 二 年 法 律 三 六 号 )︑ 意 匠 法 ( 同 法 律 三 七 号 )︑ 商 標 法 (同 法 律

三 八 号 )︑ 著 作 権 法 (同 法 律 三 九 号 ) な ど の 知 的 財 産 関 連 諸 法 が 一 斉 に 整 備 さ れ る こ と と な る ︒ 明 治 三 二 年 に 成 立 し た

知 的 財 産 関 連 諸 法 は ︑ 諸 外 国 と の 通 商 航 海 条 約 の 中 で 約 束 し て い た パ リ 条 約 と ベ ル ヌ 条 約 へ の 加 盟 に 備 え て 制 定 さ れ

た も の で ︑ こ れ に よ り 同 年 に 両 条 約 へ の 加 盟 を 果 た し た が ︑ そ の 内 容 は 内 外 人 平 等 原 則 を 採 用 し た 画 期 的 な も の で あ っ

た ︒ そ の 後 ︑ 昭 和 九 年 に は 我 が 国 初 の 不 正 競 争 防 止 法 (昭 和 九 年 法 一 四 ) が 成 立 し て い る ︒ 不 正 競 争 防 止 法 の 最 初 の

(6)

草 案 は 明 治 四 二 年 に 作 成 さ れ て い た が ︑ 当 時 の 我 が 国 の 経 済 事 情 で は 不 正 競 争 禁 圧 の 要 請 は 結 実 せ ず ︑ 時 期 尚 早 を 理

由 に 成 立 に 至 ら な か っ た ︒ 昭 和 九 年 の 不 正 競 争 防 止 法 は ︑ 昭 和 九 年 に 開 催 予 定 の パ リ 条 約 ロ ン ド ン 会 議 に 参 加 す る た

め ︑ 条 約 上 の 最 低 限 の 義 務 を 果 た し て お く 必 要 が あ っ た こ と か ら 制 定 さ れ た も の で ︑ そ の 規 定 事 項 も 六 ケ 条 に 止 ま り

僅 少 で あ っ た ︒ し か し ︑ と に か く 不 正 競 争 防 止 法 の 制 定 を 倹 っ て 我 が 国 の 知 的 財 産 全 般 に わ た る 法 制 も こ こ に 一 応 完

備 し た わ け で あ る ︒

( 1 ) 我 が 国 の 工 業 所 有 権 制 度 史 に 触 れ た 文 献 は 多 い ︒ 本 稿 で は ︑ そ の 基 本 文 献 と し て ︑ 特 許 庁 編 ﹃ 工 業 所 有 権 制 度 百 年 史 (上 ・

下 ・ 別 巻 )﹄ ( 発 明 協 会 ︑ 一 九 八 四 ) ︑ 同 編 ﹃ 工 業 所 有 権 法 規 沿 革 ( 1 ・ 11 ・ m 巻 )﹄ ( 弁 理 士 会 ︑ 一 九 九 五 ) を 掲 げ る ︒ そ の

他 の 文 献 と し て ︑ 特 許 局 編 ﹃ 特 許 局 五 〇 年 史 ﹄ ( 特 許 法 施 行 五 十 年 記 念 会 ︑ 一 九 三 四 ) ︑ 特 許 庁 編 ﹃ 特 許 制 度 七 十 年 史 ﹄ (発

明 協 会 ︑ 一 九 五 五 )︑ 清 瀬   郎 ﹃ 発 明 特 許 制 度 ノ 起 源 及 発 達 ﹂ ( 学 術 選 書 ︑ 一 九 七 〇 ) ︑ 特 許 庁 工 業 所 有 権 制 度 史 研 究 会 ﹃ 特

許 制 度 の 発 生 と 変 遷 ﹄ ( 大 蔵 省 印 刷 局 ︑ 一 九 八 二 )︑ 中 山 信 弘 ﹃ 発 明 者 権 の 研 究 ﹄ (東 大 出 版 会 ︑ 一 九 八 七 ) な ど を 参 照 し た ︒

我 が 国 の 著 作 権 制 度 史 に 関 し て は ︑ 文 化 庁 監 修 ﹃ 著 作 権 法 百 年 史 ・ 同 資 料 編 ﹄ ( 著 作 権 情 報 セ ン タ ー ︑ 二 〇 〇 〇 ) が 基 本

文 献 と し て 圧 巻 で あ る ︒ ま た ︑ 長 野 伝 蔵 ﹃ わ が 国 著 作 権 法 制 の 沿 革 ﹄ ( 著 作 権 資 料 協 会 ︑ 一 九 六 八 ) ︑ 伊 藤 信 男 編 ﹃ 著 作 権 一

〇 〇 年 史 年 表 ﹄ ( 文 化 庁 ︑ 一 九 六 九 ー 本 書 は ﹃ 綜 合 近 代 著 作 権 文 化 史 年 表 ﹄ ( 文 部 省 ︑ 一 九 六 〇 ) の 改 訂 増 補 版 ) ︑ 日 本 音

楽 著 作 権 協 会 編 ﹃ 日 本 音 楽 著 作 権 史 ﹄ ( 日 本 音 楽 著 作 権 協 会 ︑ 一 九 九 〇 ) な ど は ︑ 我 が 国 の 法 律 の 変 遷 史 を 知 る 上 に 便 利 で

あ る ︒ こ の 他 に ︑ 水 野 錬 太 郎 ﹃ 本 邦 著 作 権 法 の 沿 革 ﹄ ( 法 協 雑 誌 二 〇 巻 八 号 ︑ 一 九 〇 二 ) ︑ 勝 本 正 晃 ﹃ 日 本 著 作 権 法 ﹄ ( 巖 松

堂 ︑ } 九 四 〇 ) ︑ 阿 部 浩 二 ﹁ 著 作 権 法 前 史 ﹂ ( 岡 山 大 学 法 経 学 会 雑 誌 二 八 ・ 二 九 号 )︑ 倉 田 喜 弘 ﹃ 著 作 権 史 話 ﹄ ( 千 人 社 ︑ 一 九

八 三 ) ︑ 吉 村 保 ﹃ 発 掘 日 本 著 作 権 史 ﹄ (第 一 書 房 ︑ 一 九 九 三 ) ︑ 日 本 放 送 協 会 編 ﹃ 二 〇 世 紀 放 送 史 ( 上 ・ 下 ・ 年 表 ) ﹄ ( 日 本 放

送 出 版 協 会 ︑ 二 〇 〇 ﹁ ) な ど を 参 照 し た ︒

( 2 ) 福 沢 諭 吉 ﹃ 西 洋 事 情 外 編 ﹄ 巻 之 三 ( ﹃ 福 沢 諭 吉 全 集 ﹄ ︹ 岩 波 書 店 ︑ 一 九 五 八 ︺ 所 収 ︑ 一 八 六 七 ) 参 照 ︒

( 3 ) 前 掲 ・ 工 業 所 有 権 制 度 百 年 史 も 明 治 一 八 年 を 特 許 法 制 史 の 起 算 点 と し て い る ︒

(7)

三 知 的 財 産 の 概 念

知 的 財 産 の保 護 一 般 189

O 知 的 財 産 の 定 義

一 九 六 七 (昭 和 四 二 ) 年 に ス ト ッ ク ホ ル ム で 採 択 さ れ た ﹁ 世 界 知 的 所 有 権 機 関 を 設 立 す る 条 約 ﹂ 二 条 八 号 は 知 的 財

産 (巨 Φぎ ︒ε 巴 甲 8 霞 身 ) を 定 義 し ︑ ① 文 芸 ︑ 美 術 及 び 学 術 の 著 作 物 ︑ ② 実 演 家 の 実 演 ︑ レ コ ー ド 及 び 放 送 ︑ ③ 人 間

の 活 動 の す べ て の 分 野 に お け る 発 明 ︑ ④ 科 学 的 発 見 ︑ ⑤ 意 匠 ︑ ⑥ 商 標 ︑ サ ー ビ ス ・ マ ー ク 及 び 商 号 そ の 他 の 商 業 上 の

表 示 ︑ ⑦ 不 正 競 争 に 対 す る 保 護 に 関 す る 権 利 ︑ 並 び に ⑧ 産 業 ︑ 学 術 ︑ 文 芸 又 は 美 術 の 分 野 に お け る 知 的 活 動 か ら 生 ず

る 他 の す べ て の 権 利 を い う と ︑ そ の 内 容 を 列 挙 し て い る (① 〜 ⑨ の ノ ン ブ ル は 便 宜 上 筆 者 付 記 )︒ こ の 条 約 の ﹁ 世 界 知

的 所 有 権 機 関 ﹂ の 名 称 は ≦ σ 二 α 壇暮 巴 Φ9 ロ 巴 中 o b Φ ﹃ 身 ○ 贔 ㊤ 巳 N9 二 8 11 ≦ 弓 ○ の 公 定 訳 で あ る ︒

知 的 財 産 の 公 式 的 な 定 義 と し て は ︑ そ の 内 容 を 列 挙 し た W I P O の 右 規 定 を 見 い 出 し 得 る だ け で あ る ︒ 我 が 国 で は ︑

こ の 規 定 中 ︑ ④ の 科 学 的 発 見 に 関 す る 権 利 は 未 だ 承 認 さ れ ず ︑ ⑦ の 不 正 競 争 に 対 す る 保 護 法 制 と し て は 不 正 競 争 防 止

法 に 基 づ く 差 止 請 求 権 ︑ 損 害 賠 償 請 求 権 等 が 挙 げ ら れ る ︒ W I P O の 定 義 に よ れ ば ︑ 知 的 財 産 の 保 護 対 象 は ︑ 著 作 権 ︑

著 作 隣 接 権 等 の 著 作 権 法 上 の 権 利 ︑ 最 広 義 の 工 業 所 有 権 の 全 て が 含 ま れ る ほ か ︑ 半 導 体 チ ッ プ 保 護 法 上 の 権 利 ︑ 動 植

物 の 新 品 種 や バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー ︑ マ ル チ メ デ ィ ア ・ ソ フ ト 等 の 権 利 ︑ あ る い は 独 占 的 な 排 他 権 で は な い 営 業 秘 密 (ノ

ウ ハ ゥ や ト レ ー ド ・ シ ー ク レ ッ ト )︑ そ の 他 権 利 と し て 立 法 化 さ れ て い な い も の と し て ︑ キ ャ ラ ク タ ー ︑ パ ブ リ シ テ ィ

等 も 含 ま れ る こ と と な り ︑ 極 め て 広 い 範 囲 に 及 ぶ も の と な る ︒ し た が っ て ︑ 知 的 財 産 の 概 念 は 著 作 権 と 工 業 所 有 権 に

限 定 さ れ る 従 前 の 無 体 財 産 の 概 念 と 異 な り ︑ お よ そ 人 の 知 的 活 動 の 領 域 に お い て 保 護 の 対 象 と な り 得 る も の を ほ と ん

ど 全 て 包 含 し ︑ そ の 範 囲 は 精 神 文 化 を 尊 重 す る 度 合 い に 応 じ て 拡 大 す る ︒ こ こ に 知 的 財 産 と い う 包 括 的 な 概 念 を 提 示

(8)

す る 意 義 は ︑ も と よ り 著 作 権 や 特 許 権 な ど 諸 種 の 権 利 を 保 護 す る 既 存 の 法 制 を 廃 し て 一 元 化 を 図 ろ う と し た り ︑ 逆 に

個 別 の 権 利 を 単 に 帰 納 的 に 包 括 す る 上 位 概 念 を 設 け る に と ど め よ う と す る も の で も な い ︒ 本 来 ︑ こ の 種 の 領 域 の 法 制

は 事 実 の 変 遷 の 中 で 内 容 が 発 見 さ れ 具 体 化 さ れ る も の で あ る か ら ︑ 知 的 財 産 は 単 な る 諸 権 利 の 上 位 概 念 に と ど ま る も

の で は な く ︑ そ の 包 括 性 に は 積 極 的 な 意 義 を 認 め る こ と が で き る ︒ そ れ は ︑ こ れ ら の 権 利 間 に 整 合 性 を 持 た せ ︑ 結 果

と し て 総 合 的 に こ の 領 域 で の よ り よ い 法 制 の 確 立 を 図 ろ う と い う こ と で あ る ︒

知 的 財 産 法 制 は ︑ 人 間 の 精 神 的 創 作 物 に 関 す る 権 利 と 営 業 上 の 信 用 を 化 体 し た 標 識 に 関 す る 権 利 を 包 摂 す る ︒ 知 的

財 産 の 法 体 系 を 構 築 す る 試 み と し て 従 来 の 主 流 を 占 め て い た も の は ︑ 著 作 権 法 や 特 許 法 ︑ 商 標 法 等 の 個 別 法 に よ り 保

護 さ れ る 権 利 の 性 質 に 着 目 し ︑ 諸 種 の 個 別 法 を 創 作 法 と 標 識 法 に 分 類 す る ︒ 創 作 法 と し て 著 作 権 法 ︑ 特 許 法 ︑ 実 用 新

案 法 ︑ 意 匠 法 ︑ 半 導 体 チ ッ プ 保 護 法 ︑ 種 苗 法 等 が 挙 げ ら れ ︑ ま た 標 識 法 と し て 商 標 法 ︑ 商 法 (商 号 に 関 す る 部 分 )︑ 不

正 競 争 防 止 法 な ど が 挙 げ ら れ る ︒ と の 種 の 個 別 法 に つ い て は ︑ 技 術 の 発 展 に 対 応 し て ︑ 今 後 も 立 法 が 進 む で あ ろ う し ︑

そ の 範 囲 は 経 済 の 国 際 化 ︑ ソ フ ト 化 に 伴 っ て 広 が る 傾 向 に あ る た め ︑ 知 的 財 産 に 理 論 上 の 限 界 を 画 す る こ と は で き な

い ︒ こ の よ う な 個 別 の 法 制 度 に よ り 保 護 さ れ た 情 報 の 性 質 に 着 目 す る 知 的 財 産 法 の 分 類 方 法 は ︑ 現 行 法 上 の 権 利 の 認

識 論 に 基 づ く も の で あ る ︒ し か し ︑ こ の よ う な 方 法 論 に 基 づ く 分 類 は ︑ 例 え ば 顧 客 情 報 や 株 価 情 報 に 係 る ﹁ 営 業 秘 密 ﹂

の 不 正 利 用 行 為 の 規 制 の よ う に ︑ 必 ず し も 創 作 さ れ た も の で は な い も の を も 保 護 し つ つ ︑ 同 時 に 標 識 法 に 分 類 さ れ る

わ け で も な い も の の 位 置 付 け の 説 明 に 苦 慮 す る な ど ︑ 現 行 法 の 認 識 論 と し て 課 題 が 残 る ︒ 不 正 競 争 防 止 法 で 保 護 さ れ

て い る 営 業 秘 密 は ︑ 財 産 で は あ る が ︑ 特 許 権 の よ う な 財 産 権 で は な い ︒ 現 行 法 の 認 識 論 に 資 す た め に は ︑ 営 業 秘 密 に

つ い て は 少 な く と も ︑ 市 場 に 事 実 と し て 存 在 す る 営 業 秘 密 の 保 護 立 法 と の 関 わ り 方 に 配 慮 し た 体 系 を 構 築 す べ き で あ

ろ う ︒

(9)

知 的 財 産 の保 護i一般

191

⇔ 知 的 財 産 と い う 語

従 来 ︑ 知 的 財 産 と い う 語 は ︑ 国 際 通 商 上 の 重 要 問 題 で あ る コ ン ピ ュ ー タ ・ プ ロ グ ラ ム や デ ー タ ベ ー ス の 保 護 の 問 題

な ど に や や 偏 っ て 使 用 さ れ て き た ︒ そ こ で は 知 的 財 産 は 著 作 権 と 同 義 語 と 思 わ れ た り ︑ コ ン ピ ュ ー タ ・ ソ フ ト ゥ ェ ア ー

一 般 に 成 立 す る 権 利 で あ る か の よ う に 誤 解 さ れ る と こ ろ も あ っ た が ︑ 今 日 の 情 報 化 社 会 に 生 起 す る 諸 問 題 を 考 え る 際

に は ︑ そ の 包 括 性 の 積 極 的 意 義 を 改 め て 確 認 す る 必 要 が あ る ︒

著 作 権 と 工 業 所 有 権 を 含 む 上 位 概 念 と し て は ︑ 無 体 財 産 権 ( 巨 8 暮 Φ二 巴 σQ 彗 ① 霞 Φ ︒暮 ) と い う 語 が 長 い 間 用 い ら れ て

き た ︒ こ の 語 は 知 的 財 産 の 法 的 性 格 に 着 目 し た も の で ︑ ド イ ツ の ヨ ゼ フ ・ コ ー ラ ー の 提 唱 に か か り ︑ ス イ ス や オ ー ス

ト リ ア な ど ド イ ッ 系 の 法 律 学 を は じ め ︑ 我 が 国 の 法 律 学 で も 広 く 用 い ら れ て き た こ と は 周 知 の と お り で あ る ︒ し か し ︑

最 近 で は ︑ 無 体 財 産 権 と い う 語 に 代 え て 知 的 所 有 権 と い う 語 が 用 い ら れ ︑ あ る い は 知 的 財 産 と い う 語 の 方 が 多 く 使 わ

れ る よ う に な っ て い る ︒ 米 国 で は 知 的 成 果 を 保 護 す る 趣 旨 を 強 調 す る た め ︑ 従 来 か ら 通 常 は 無 体 財 産 権 と 訳 さ れ る

ぎ 蜜 口 σq 諺 ① 中 o ℃ 興 身 の 語 を 使 わ ず ︑ ぎ け 巴 Φ o ε 巴 ℃ 8 b 零 身 と い う 語 の 方 を 用 い て い る ︒

知 的 所 有 権 の 語 は ︑ 一 九 六 七 年 に ス ト ッ ク ホ ル ム 会 議 で 設 立 さ れ た ○ 村 σq 9 巳 ︒︒ 9 鉱 8 ζ o 昌 象 艶 Φ 9 ① 冨 勺 8 胃 叡 9

H暮 Φ   ①9 ⊆ ①  Φ 目 ○ ζ ℃ ♂ 英 語 名 で ≦ ︑〇 二 q ぎ け 巴 ① o ε 巴 ℃ Ho b 霞 身 ○ 村 σq 9 巳 N p 菖 o ロ ー1 ≦ ‑弓 ○ の 公 定 訳 で あ る ︑ 世 界 知 的 所

有 権 機 関 と い う 語 の 一 部 に 使 わ れ て い る ︒ 世 界 知 的 所 有 権 機 関 は 現 在 の 世 界 に お け る 知 的 財 産 法 制 の 中 心 的 な 機 関 と

し て W I P O の 略 称 で 広 く 知 ら れ る が ︑ そ の 前 身 は ﹁ 著 作 権 の 保 護 に 関 す る ベ ル ヌ 同 盟 条 約 ﹂ と ﹁ 工 業 所 有 権 の 保 護

に 関 す る パ リ 同 盟 条 約 ﹂ の 合 同 事 務 機 構 と し て 一 八 九 三 年 に 設 立 さ れ た しQ 霞 8 黄 討 9 3 9 試 o 轟 ロ × 國 曾 巳 の b o 彗 寅

勺 8 けΦ ︒試 o 昌 9 Φ 冨 勺 ﹃o ℃ ほ ひ $ ぢ け巴 Φ 0 9 亀 ① 11 U口 田 国 で あ っ て ︑ 同 機 構 は 我 が 国 で は 古 く か ら ﹁ 知 的 所 有 権 保 護 国 際 合

同 事 務 局 ﹂ と 訳 さ れ て い る ︒ W I P O は 設 立 条 約 に よ り 右 両 条 約 の 上 部 機 関 と し て 改 組 さ れ た も の で ︑ 一 九 七 四 年 に

は 国 連 の 一 四 番 目 の 専 門 機 関 と し て の 地 位 を 認 め ら れ ︑ 我 が 国 も 一 九 七 五 年 に ︑ 設 立 条 約 に 加 入 し て い る ︒

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﹁ イ ン テ レ ク チ ュ ア ル ・ プ ロ パ テ ィ ﹂ の 翻 訳 語 に つ い て は 批 判 が 強 い ︒ 所 有 権 概 念 は 有 体 物 を 対 象 と し て 構 成 さ れ

た の で あ る か ら ︑ 法 律 用 語 と し て み る と ︑ 概 念 構 成 上 も 表 現 上 も 知 的 所 有 権 の 語 は 不 適 切 で あ り ︑ む し ろ 知 的 財 産 の

語 を 用 い る べ き で あ る と い う 見 解 が 主 張 さ れ て い る ︒ こ れ に 対 す る 反 論 と し て は ︑ 次 の よ う な 見 解 が 主 張 さ れ て い る ︒

す な わ ち ︑ 我 が 国 で は 政 府 は じ め 他 の 公 的 機 関 の 多 く は 公 定 訳 と し て の 的 所 有 権 と い う 語 を 用 い て い る ︒ ま た ︑ 知 的

所 有 権 の 一 部 を 成 す 訂 O 霧 ひ識 巴 胃 o b 興 身 の 語 を 既 に 工 業 所 有 権 と 訳 し て い た こ と も あ り ︑ 長 く 定 着 し て い る 工 業 所

有 権 と い う 公 定 訳 語 と の 整 合 性 を 図 る 必 要 も あ る た め ︑ 今 直 ち に 知 的 所 有 権 と い う 公 定 訳 語 を 否 定 し て ま で ︑ 敢 え て

知 的 財 産 権 の 語 に 置 き 替 え な け れ ば な ら な い 必 然 性 を 見 い だ す こ と は 困 難 で あ る ︒ さ ら に は ︑ 著 作 隣 接 権 が 相 隣 権 と

区 別 さ れ る よ う に ︑ 知 的 所 有 権 の 語 が 意 味 す る と こ ろ ︑ 物 権 と し て の 所 有 権 と 混 同 す る お そ れ は な い ︒ こ の よ う な 用

語 を め ぐ る 論 争 に 関 連 し て ︑ 近 年 ︑ 企 業 や 大 学 ︑ 工 業 所 有 権 を 所 管 す る 特 許 庁 及 び ︑ こ れ を 外 局 と す る 産 業 経 済 省

( 旧 通 商 産 業 省 以 来 )︑ 裁 判 所 ︑ ﹂ 部 の マ ス コ ミ や 学 者 等 が 知 的 財 産 の 語 を 使 い 始 め て お り ︑ こ の 用 語 が 実 務 界 に お

い て 徐 々 に 定 着 し つ つ あ る の は 注 目 さ れ る と こ ろ で あ る ︒

知 的 財 産 の 一 分 野 で あ る 著 作 権 と い う 語 は 紆 ○ 騨 創 ︑鋤 暮 Φ霞 と い う フ ラ ン ス 語 の 翻 訳 で あ っ て ︑ 我 が 国 の 法 制 上 明 治

三 二 年 の 旧 著 作 権 法 で 初 め て 使 わ れ た ︒ 著 作 権 の 語 は ︑ 広 義 に は 著 作 者 人 格 権 と 著 作 財 産 権 の 両 者 を 含 む が ︑ 通 常 は

狭 義 に 用 い ︑ 後 者 を 指 し て い る ︒ す な わ ち ︑ 著 作 権 は ︑ 絵 画 ︑ 音 楽 ︑ 学 術 書 な ど 文 芸 ︑ 学 術 ︑ 美 術 な ど の 精 神 的 創 作

物 (著 作 物 ) に 与 え ら れ る 独 占 的 な 支 配 権 で あ り ︑ 近 年 の 高 度 情 報 化 社 会 に お い て は ︑ 著 作 権 に 関 わ る 事 例 が た い へ

ん 多 く な っ て い る ︒ 著 作 権 法 は 著 作 者 の 権 利 の ほ か ︑ 実 演 家 ︑ レ コ ー ド 製 作 者 ︑ 放 送 事 業 者 及 び 有 線 放 送 事 業 者 の 四

者 に そ れ ぞ れ 著 作 物 の 利 用 に 関 し て 著 作 権 類 似 の 排 他 的 権 利 を 与 え て い る が ︑ こ れ ら を 一 括 し て 著 作 隣 接 権 と い う ︒

こ れ ら 四 者 は 通 常 既 存 の 著 作 物 を 利 用 す る 立 場 に あ り ︑ 著 作 者 と は い え な い の で ︑ 著 作 権 に よ っ て 保 護 を 与 え る こ と

は 適 当 で な い ︒ そ こ で 新 た に 創 設 さ れ た の が 著 作 隣 接 権 制 度 で あ る ︒

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知 的 財 産 の保 護 一 般 193

著 作 権 に 対 峙 す る 法 制 と し て 工 業 所 有 権 が あ る ︒ 工 業 所 有 権 と い う 語 は ︑ 明 治 二 七 ( 一 八 九 四 ) 年 に 締 結 し た 日 英

通 商 条 約 に お い て 我 が 国 が ﹁ 工 業 所 有 権 の 保 護 に 関 す る 一 八 八 三 年 三 月 二 〇 日 の パ リ 条 約 ﹂ (略 称 ・ パ リ 条 約 ) に 加 盟

す る こ と を 公 約 し た と き に ︑ 同 条 約 名 中 胃 o 胃 鰹 ひ 言 9 の9 Φ= ① の 部 分 の 公 定 訳 と し て 用 い ら れ て い る ︒ 当 時 す で に

フ ラ ン ス 民 法 第 二 編 第 二 章 は q ① 冨 胃 o b 忌 $ と い う 表 題 で 有 体 物 に 対 す る 所 有 権 を 規 定 し て お り ︑ ま た ド イ ツ 法 系

国 で は σq ① 蓉 お 霧 田 σq Φ 暮 億 菖 (精 神 的 所 有 権 ) と い う 表 題 で 無 体 財 産 権 の 性 質 が 論 じ ら れ て い た こ と か ら ︑ そ れ ら に 影

響 さ れ て 工 業 所 有 権 と 訳 し た も の と 考 え ら れ て い る ︒ パ リ 条 約 で は ﹁ 工 業 所 有 権 の 保 護 は ︑ 特 許 ︑ 実 用 新 案 ︑ 意 匠 ︑

商 標 ︑ サ ー ビ ス ・ マ ー ク ︑ 商 号 ︑ 原 産 地 表 示 ︑ 原 産 地 名 称 及 び 不 正 競 争 の 防 止 に 関 す る も の ﹂ ( 一 条 二 項 ) と さ れ ︑

そ の 保 護 の 範 囲 も 本 来 の 工 業 に 限 定 さ れ ず ︑ 商 業 ︑ 農 業 な ど 広 く 産 業 全 般 に 及 ん で い る ︒ ま た ︑ パ リ 条 約 一 条 三 項 は

﹁ 工 業 所 有 権 の 語 は ︑ 最 も 広 義 に 解 釈 す る も の と し ︑ 本 来 の 工 業 及 び 商 業 の み な ら ず ︑ 農 業 及 び 採 取 産 業 の 分 野 並 び

に 製 造 し た 又 は 天 然 の す べ て の 産 品 (例 え ば ︑ 葡 萄 酒 ︑ 穀 物 ︑ 煙 草 の 葉 ︑ 果 実 ︑ 家 畜 ︑ 鉱 物 ︑ 鉱 水 ︑ ビ ー ル ︑ 花 ︑ 穀 粉 ) に

つ い て も 用 い ら れ る ﹂ と 規 定 し て い る ︒ こ の パ リ 条 約 の 趣 旨 か ら み て も 工 業 所 有 権 と い う 訳 語 は 狭 義 に す ぎ て 不 適 訳

で あ り ︑ む し ろ 産 業 的 財 産 権 と で も 訳 す べ き で あ る と い う 見 解 も 有 力 に 主 張 さ れ て い る ︒ も っ と も ︑ 我 が 国 で は ︑ 工

業 所 有 権 制 度 を 規 制 す る の は ︑ 特 許 法 ︑ 実 用 新 案 法 ︑ 意 匠 法 お よ び 商 標 法 の 四 つ の 特 別 法 を は じ め ︑ 関 係 法 令 ・ 条 約

等 で あ り ︑ 工 業 所 有 権 法 と い う 実 定 法 は 存 在 し な い ︒

著 作 権 と 工 業 所 有 権 は ︑ い ず れ も 人 間 の 知 的 活 動 の 所 産 で あ る 無 体 物 を 排 他 的 に 支 配 す る 権 利 で あ り ︑ 客 体 が 有 体

物 で あ る 所 有 権 に 対 し ︑ ほ ぼ 共 通 の 特 色 を 有 し て い る ︒ だ が ︑ 著 作 権 の 客 体 は 著 作 者 の 人 格 的 利 益 (著 作 者 人 格 権 )

と も 関 連 し ︑ 文 化 の 向 上 維 持 を 目 的 と す る の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 の 客 体 は 競 業 的 色 彩 が 強 く ︑ 産 業 の 発 達 を 目 的 と す

る ︒ 両 法 制 に お け る 客 体 の 差 異 は ︑ 以 下 の よ う に ︑ 著 作 権 と 工 業 所 有 権 と の 間 に 種 々 の 相 違 を 生 ず る こ と に な る ︒

そ の 一 は ︑ 権 利 の 発 生 に つ き ︑ 著 作 権 に お い て は 無 方 式 主 義 を 採 用 し て い る の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 に あ っ て は 先 願 ・

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審 査 ・ 登 録 等 の 方 式 主 義 を 採 用 し て い る ︒ そ の 二 は ︑ 権 利 の 性 格 に つ き ︑ 著 作 権 に お い て は 権 利 の 独 占 的 排 他 性 は 当

該 著 作 物 に 対 し て の み 認 め ら れ ︑ 独 自 に 創 作 さ れ た 同 一 内 容 の 著 作 物 に は 及 ば ず ︑ し た が っ て ︑ 権 利 の 独 占 性 は 相 対

的 で あ る の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 に あ っ て は 産 業 政 策 上 ︑ 権 利 の 独 占 性 は 絶 対 的 な も の と な っ て い る ︒ そ の 三 は ︑ 権 利

の 維 持 に つ き ︑ 著 作 権 に お い て は 権 利 の 存 続 期 間 中 一 定 の 料 金 を 納 付 す る 義 務 は な く ︑ ま た 著 作 物 の 利 用 義 務 も な い

の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 に あ っ て は 特 許 料 な い し 登 録 料 を 納 付 す る 義 務 が あ り ︑ ま た 実 施 な い し 使 用 義 務 が あ る (な お ︑

意 匠 権 に つ い て は 実 施 義 務 は な い )︒ そ の 四 は ︑ 権 利 の 効 力 に つ き ︑ 著 作 権 に お い て は 著 作 物 の 有 形 ・ 無 形 ・ 変 形 的 複

製 に と ど ま る の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 に あ っ て は 発 明 ・ 商 標 等 の 実 施 な い し 使 用 が 認 め ら れ ︑ 実 施 概 念 が 著 作 物 の 利 用

概 念 よ り 広 い ︒ そ の 五 は ︑ 権 利 の 存 続 期 間 に つ き ︑ 著 作 権 に お い て は 原 則 と し て 創 作 時 よ り 著 作 者 の 生 存 中 お よ び 死

後 五 〇 年 ( 死 後 五 〇 年 主 義 の 採 用 ) と さ れ て い る の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 に あ っ て は 特 許 権 が 出 願 日 か ら 二 〇 年 (平 成 六

年 特 許 法 改 正 ) を 越 え る こ と が で き な い と さ れ る な ど ︑ 比 較 的 短 い (な お ︑ 商 標 権 に つ い て の み 更 新 を 認 め て い る )︒ そ

の 六 は ︑ 権 利 の 属 地 性 に つ き ︑ 著 作 権 も 工 業 所 有 権 も 共 に 属 地 主 義 の 原 則 が 支 配 し て い る が ︑ 著 作 権 の 場 合 は 緩 和 さ

れ て い る の に 対 し ︑ 工 業 所 有 権 に あ っ て は 強 調 さ れ て い る ( な お ︑ 商 標 権 に つ い て は 一 部 修 正 な い し 緩 和 さ れ て い る )︒

た だ ︑ 今 日 ︑ 属 地 主 義 の 妥 当 性 が 問 わ れ て い る ︒ そ れ は ︑ イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 知 的 財 産 が 国 境 を 越 え て 情 報 と し て 流

通 す る 場 合 に も ︑ 一 国 の 知 的 財 産 権 の 効 力 が 及 ぶ の か ど う か と い う 問 題 で あ る ︒ そ の 場 合 の 裁 判 管 轄 権 お よ び 準 拠 法

の 問 題 な ど も 生 じ て い る ︒

㊧ 知 的 財 産 の 本 質 論

精 神 的 労 務 の 所 産 (知 的 財 産 ) を 法 概 念 上 ど の よ う に 取 扱 う べ き か ︑ そ れ は 如 何 な る 権 利 の 客 体 で 私 権 の 如 何 な る

種 類 に 属 す る か ︒ こ の 問 題 は 一 九 世 紀 後 半 よ り 二 〇 世 紀 初 頭 の ド イ ツ に お い て ︑ 経 済 生 活 が 勃 興 し ︑ そ の 固 有 法 の 適

(13)

知 的 財 産 の 保 護 一 般

195

用 や ロ ー マ 法 の 継 受 に よ る も 国 民 生 活 を 規 律 す る こ と が 不 可 能 と な っ た 領 域 と し て 提 起 さ れ て い る ︒ 無 体 (知 的 ) 財

産 権 の 本 質 論 は 当 時 の 経 済 社 会 を 背 景 に ド イ ツ の 学 者 を 中 心 と し て 盛 ん に 論 じ ら れ ︑ 殊 に 無 体 財 産 に つ い て は 当 時 有

名 で あ っ た ギ ー ル ケ や コ ー ラ ー 等 が 競 っ て 著 作 権 や 工 業 所 有 権 ︑ 不 正 競 業 の 本 質 の 考 察 に 関 連 す る 新 学 説 を 樹 立 し ︑

無 体 財 産 法 規 の 法 典 上 の 地 位 を 定 め よ う と 努 め た ︒ 当 時 提 唱 さ れ た 本 質 論 は 学 者 の 数 に 応 じ て 多 数 存 在 す る が ︑ 以 下

に 主 要 な 学 説 に つ い て 考 察 す る ︒

(迫

精 神 的 所 有 権 説 デ ル ン ブ ル ヒ (出 Φ 5 巨 筈 U Φ 琶 げ 霞 σq ) を 代 表 と す る 精 神 的 所 有 権 説 (Ω Φ 翼 茜 ① ω9 σq 8 ε 日 の夢 Φ o 村邑

は ︑ 文 学 ︑ 美 術 の 作 品 ︑ 発 明 ︑ 意 匠 等 の 精 神 的 産 物 を 有 体 物 と 同 一 視 し て ︑ こ れ に 対 す る 支 配 関 係 を 所 有 権 の 概 念 で

捉 え よ う と す る 学 説 で あ る ︒ こ の 学 説 は フ ラ ン ス 革 命 時 に 高 揚 し ︑ 欧 州 各 国 の 法 律 に 採 用 さ れ た ︒ 例 え ば ︑ 一 八 七 一

年 ド イ ツ 憲 法 第 四 条 第 五 号 は σq Φ聾 お ① ω 田 σq Φ客 錫 日 の 語 を 用 い ︑ 一 七 九 三 年 フ ラ ン ス 著 作 権 法 第 一 条 は 勺 8 胃 宿 $ の 文

字 を 採 用 し た ︒ 問 題 は 所 有 権 と い う 概 念 で 捉 え よ う と す る と 実 定 法 上 の 議 論 が 生 じ る こ と で あ る ︒

人 格 権 説 ギ ー ル ケ ( () けけ ○ ︼⁝﹁ 円 一① 画 円一 〇 げ く O b﹁ (︺ 一① 匡 匹 Φ ) が 完 成 し た 人 格 権 説 (勺 Φ 窃 α 巳 一魯 屏 9 $ 冨 筈 " ︒︒爵 Φ o ユ ① ) は ︑

精 神 的 産 物 を 人 格 の 一 部 構 成 物 と 把 握 し て ︑ 法 律 上 こ れ を 人 格 権 の 一 種 (個 別 人 格 権 ) と し て 保 護 す べ き で あ る と す

る 学 説 で あ る ︒ こ の 学 説 は 著 作 権 を 念 頭 に 置 い た 議 論 で あ り ︑ 工 業 所 有 権 を 合 理 的 に 説 明 す る こ と は 不 可 能 で あ る ︒

無 体 財 産 権 説 コ ー ラ ー (q o ωΦ 喜 凶 ○ 巨 霞 ) が 提 唱 し た 無 体 財 産 権 説 (一 日 巳 鉾 Φ 二 巴 σq 彗 ① 霞 Φ 畠 廿 ︒︒岳 ①o 臨 融 ) は ︑ 精

神 的 産 物 が 一 種 無 形 の 財 産 と し て 社 会 に 現 存 し 重 要 な る 役 目 を 演 ず る 事 実 を 直 視 し ︑ こ れ を 所 有 権 や 人 格 権 の よ う な

既 存 の 権 利 と は 別 個 の 新 し い 権 利 で あ る と 強 調 す る 学 説 で あ る ︒ こ の 学 説 は 学 界 の 通 説 と な り ︑ 我 が 国 に お い て も 法

学 の 分 野 で 普 及 し た が ︑ 有 体 財 産 と 判 然 と 区 別 し つ つ ︑ 未 だ 別 個 の 権 利 の 本 質 論 を 展 開 し て い な い ︒ 本 説 の 提 唱 者 で

あ る コ ー ラ ー 自 身 も 新 体 系 を 定 立 す る に 至 っ て い な い ︒

精 神 財 競 業 権 説 エ ル ス タ ー ( ≧ Φ × き α 霞 国 ω け 9 の 提 唱 し た 精 神 財 競 業 権 説 (Ω Φ 蓉 窃 σq 旨 ≦ σ 暮 げ 霧 ① 吾 巽 ⑦ o 暮 ω 夢 8 忌 )

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は ︑ 精 神 的 産 物 が 産 業 上 の 権 利 の 目 的 と し て 法 律 上 保 護 さ れ る に は 競 業 の 世 界 (≦ Φ 崔 ロ ⑦ ω σq ① ≦ Φ き 賦 魯 魯 ≦ σ けけ げ ① ≦ ①筈 ︒・ )

に 進 入 し ︑ 競 業 的 思 想 を 加 え る こ と が 必 要 で あ る と す る 学 説 で あ る ︒ こ の 説 は 人 格 的 要 素 と 財 産 的 要 素 の 外 に 競 業 的

要 素 を 認 め ︑ こ の 競 業 性 に よ っ て 精 神 的 産 物 の 統 一 的 把 握 を 試 み た こ と で ︑ 今 日 の 産 業 社 会 に お い て 最 も 注 目 す べ き

学 説 と な っ て い る ︒ し か し ︑ 文 化 法 た る 著 作 権 法 上 の 著 作 者 人 格 権 を 説 明 す る の に 窮 し ︑ 競 業 的 観 点 か ら の み 無 体 財

産 を 把 握 す る こ と は 困 難 で あ る ︒

あ 

そ の 他 の 学 説 と し て は 契 約 説 ︑ 禁 止 説 ︑ 特 権 説 ︑ 財 産 権 説 等 が 揚 げ ら れ て い る が ︑ そ も そ も 無 体 財 産 の 名 称 す ら 定

ま ら な い 当 時 に お い て は ︑ い ず れ の 学 説 も 未 だ 無 体 財 産 全 般 に 通 ず る 性 質 を 明 ら か に す る に 至 ら ず ︑ そ の 概 念 を 確 立

し た も の と は 言 い 難 か っ た ︒ こ れ に 反 し て ︑ フ ラ ン ス に お い て は ︑ 大 革 命 後 に 無 体 財 産 権 を 工 業 上 の 所 有 権 ( 勺 ﹃o 胃 騨 ひ

ぎ 側 ま ε 巴 Φ ) と 定 め ︑ 民 法 所 有 権 の 規 定 に よ っ て 処 理 し ︑ そ の 本 質 に つ い て 特 に 論 議 す る に 至 ら な か っ た ︒ ま た ︑

不 正 競 争 は 民 法 不 法 行 為 の 規 定 に よ り 処 理 さ れ 特 別 法 が な い ︒ 英 国 や 米 国 に お い て も 法 理 的 研 究 の 見 る べ き も の は な

く ︑ こ の 種 の 論 議 は 主 と し て ド イ ッ に お い て 展 開 さ れ る と こ ろ と な っ た ︒

知 的 財 産 権 の 本 質 に 関 す る 議 論 は ︑ 歴 史 的 に は 極 め て 重 要 な 意 味 を 有 し て お り ︑ か つ 知 的 財 産 法 制 の 確 立 に 大 い に

寄 与 し た と 考 え ら れ る 点 で 評 価 で き る ︒ し か し ︑ 本 来 ︑ 知 的 財 産 法 は 著 作 権 法 や 工 業 所 有 権 法 ︑ 不 正 競 争 防 止 法 な ど

個 別 の 法 制 を 総 称 す る も の で あ る た め ︑ そ の 保 護 対 象 や 保 護 理 由 を 異 に す る 知 的 財 産 権 の 本 質 を 一 義 的 に 把 握 す る こ

と は 不 可 能 と 考 え ら れ る ︒ し か も ︑ 今 日 に お い て は ︑ 知 的 財 産 の 概 念 は W I P O 設 立 条 約 の 定 義 規 定 ( 二 条 八 項 ) で

明 確 と な り ︑ ま た 時 代 の 進 展 に 伴 っ て 新 規 に 出 現 し 拡 大 す る 知 的 財 産 の 種 類 や 範 囲 に つ い て は 条 約 や 国 内 法 の 整 備 に

よ る 適 宜 の 対 応 が 期 待 さ れ る た め ︑ 本 質 論 に よ り 解 釈 や 立 法 に 大 き な 差 異 の 生 ず る 余 地 は ほ と ん ど な い で あ ろ う ︒

( 1 ) 田 村 善 之 ﹃ 知 的 財 産 法 ( 二 版 )﹄ ( 有 斐 閣 ︑ 二 〇 〇 〇 ) は ︑ 知 的 財 産 法 を 体 系 化 す る 試 み と し て ︑ 従 来 の 主 流 で あ る ﹁ 創 作

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知 的 財 産 の保 護 一 般

法 ﹂ と ﹁標 識 法 ﹂ の 分 類 に 代 え て ﹁ イ ン セ ン テ ィ ブ 支 援 型 ﹂ と ﹁ イ ン セ ン テ ィ ブ 創 設 型 ﹂ に 分 類 す る ︒

( 2 ) 中 山 信 弘 ﹃ 工 業 所 有 権 法 上 ﹄ ( 弘 文 堂 ︑ 一 九 九 三 ) 二 〇 頁 ︒

( 3 ) 阿 部 浩 二 ﹁ 知 的 所 有 権 ︑ 知 的 財 産 権 と 文 学 的 著 作 物 ﹂ コ ピ ラ イ ト 三 四 七 号 一 一 頁 ︒ 筆 者 も ︑ か か る 観 点 か ら ︑ 当 面 は ﹁ 知

的 所 有 権 ﹂ の 語 を 用 い る 旨 を 説 い た こ と が あ る (拙 稿 ﹁ 知 的 所 有 権 ー ハ イ テ ク と 法 ﹂ 大 学 時 報 [日 本 私 立 大 学 連 盟 誌 ] 四

一 巻 二 二 四 号 九 四 ‑ 九 九 頁 )︒

( 4 ) 末 弘 厳 太 郎 ﹃ 工 業 所 有 権 法 ﹄ ( 日 本 評 論 社 ︑ 一 九 四 二 ) 一 頁 ︑ 中 山 ・ 前 掲 一 八 頁 ︒

︹ 5 ) 無 体 財 産 の 本 質 に 関 す る 学 説 を 比 較 的 詳 細 に 記 述 す る 我 が 国 の 著 書 と し て ︑ 飯 塚 半 衛 ﹃ 無 禮 財 産 法 論 ﹄ (巌 松 堂 ︑ 一 九 四

〇 ) 七 九 頁 以 下 を 参 照 ︒

( 6 ) ∪ ① ヨ げ 霞 鱒 U p ω げ 貯 σq Φ 島 畠 Φ 図 Φ o 算 蕊 ⑩ α . ≦ ・ o︒ ︒① 1 8 飯 塚 ・ 前 掲 注 ( 5 ) 八 三 頁 以 下 ︒

( 7 ) O ざ 鱒 P U Φ暮 の o 匿 畠 Φ の 勺 臥 く ⑳ 曾 Φ o茸 一〇︒ ⑩ 9 ω 為 O 鳴 臣 ● G︒ .置 ○︒ 鴫 ● 飯 塚 ・ 前 掲 注 ( 5 ) 八 六 頁 以 下 ︒

( 8 ) 内 o 巨 ① さ q 筈 Φ げ ① 昌 Φ 魯 廿 碧 oQ 魯 集 晋 Φ 芽 曾 一◎︒ c︒ 8 ω . 一 h 匝 飯 塚 ・ 前 掲 注 ( 5 ) 九 〇 頁 以 下 ︒

( 9 ) 田 ︒・ 8 ♪ ∪ 霧 創 ㊦ 暮 ω o 冨 ご 島 Φ げ 雪 ‑ § α < Φ 二 9 σq ︒︒お ︒ 暮 一 Q︒ ㊤ P ω .一 笛 . 我 が 国 で は 飯 塚 ・ 前 掲 九 七 頁 以 下 が エ ル ス タ ー の 説 を

支 持 し て 同 著 を 著 さ れ ︑ 不 正 競 業 法 こ そ が ﹁ 各 無 体 財 産 法 を 統 括 す る 根 本 法 ﹂ と 言 わ れ て い る ( 六 一 頁 )︒

( 10 ) そ の 他 の 学 説 と し て 契 約 説 等 に つ い て は ︑ コ ー ラ ー ︑ ギ ー ル ケ 等 が 各 自 の 学 説 中 に 記 述 し て い る ( 特 権 説 の 詳 細 な 批 判 に

つ い て は 囚 o 巳 Φ さ o P 簿 こ GQ ・ Q︒ 象 h ● ) が ︑ こ こ で は 特 に 論 述 す る 必 要 を 認 め な い ︒

四 物 と 知 的 財 産 の 関 係

197

O 総 説

著 作 権 法 や 特 許 法 等 の 知 的 財 産 関 係 法 は 基 本 的 に は 私 法 に 属 す る ︒ 民 法 は 私 法 の 一 般 法 と し て ︑ 特 別 法 で あ る 知 的

財 産 法 制 の 基 礎 た る 関 係 に あ り ︑ 補 充 的 に 適 用 さ れ る ︒

明 治 三 二 二 八 九 九 ) 年 に 著 作 権 法 や 特 許 法 な ど の 知 的 財 産 権 関 係 法 が 整 備 さ れ た が ︑ そ の 背 景 に は 当 時 不 平 等 条

(16)

約 改 正 の た め に 諸 外 国 と 締 結 さ れ て い た 通 商 航 海 条 約 の 中 で 国 際 公 約 と な っ て い た ﹁ 工 業 所 有 権 の 保 護 に 関 す る パ リ

条 約 ﹂ 二 八 八 三 年 成 立 ) と ﹁ 文 学 的 及 び 美 術 的 著 作 物 の 保 護 に 関 す る ベ ル ヌ 条 約 ﹂ ( 一 八 八 六 年 成 立 ) の 両 条 約 へ の 加

盟 問 題 が あ っ た ︒ ま た ︑ 明 治 二 九 ( 一 八 九 六 ) 年 に 民 法 典 (法 律 八 九 号 ︑ 以 下 ﹁ 現 行 民 法 ﹂ と い う ︒ ) が 成 立 し (明 治 三

一 年 施 行 )︑ 旧 民 法 (い わ ゆ る ﹁ ボ ア ソ ナ ! ド 民 法 ﹂ ) で 規 定 さ れ て い た 著 作 権 や 特 許 権 な ど の 知 的 財 産 権 が 外 さ れ た こ

と も ︑ 新 た な 知 的 財 産 法 制 度 の 整 備 が 必 要 と さ れ た 原 因 の 一 つ と さ れ た ︒

我 が 国 の 旧 民 法 で は ︑ 所 有 権 は 物 の 支 配 権 原 で あ る が ︑ 物 に は 有 体 の も の と 無 体 の も の と が 含 ま れ (六 条 )︑ 著 作

物 や 発 明 等 の 無 体 財 産 の 上 に 所 有 権 が 成 立 す る と さ れ て い た ︒ 旧 民 法 は 明 治 二 六 ( 一 八 九 三 ) 年 一 月 一 日 か ら 施 行 さ

れ る 予 定 で あ っ た が ︑ そ の 施 行 を 巡 っ て ︑ い わ ゆ る ﹁ 法 典 論 争 ﹂ が 生 起 し ︑ そ の 結 果 ︑ 明 治 二 五 二 八 九 二 ) 年 六 月

の 第 三 回 帝 国 議 会 で 無 期 延 期 さ れ ︑ 結 局 施 行 さ れ な い ま ま 明 治 三 一 年 に 廃 止 さ れ た ︒ 現 行 民 法 は 第 一 編 総 則 第 三 章 を

﹁ 物 ﹂ と 題 し ︑ 八 五 条 以 下 五 箇 条 の 規 定 を 設 け て い る ︒ そ の 第 三 章 は 民 法 三 起 草 委 員 の 一 人 で あ る 富 井 政 章 の 起 草 し

た 部 分 で あ る が ︑ こ の 部 分 は 旧 民 法 の 修 正 が 多 い ︒ こ の 修 正 の 過 程 に お い て ド イ ツ 民 法 が 頻 繁 に 参 照 さ れ た が ︑ そ れ

は 特 に 物 の 定 義 で あ る 八 五 条 に つ い て 顕 著 で あ る ︒ 八 五 条 以 下 の 規 定 の 範 と な っ た ド イ ツ 民 法 の 第 一 草 案 ( 国 冨 け霞

国 馨 ≦ 霞 霞 捨 H Q︒ Q︒ 刈 ) 七 七 九 条 は 物 権 と く に 所 有 権 の 客 体 た る 物 に 関 す る 規 定 で あ る ︒

⇔ 物 に 関 す る 旧 民 法 の 規 定

} 般 に ︑ 人 の 資 産 を 形 成 す る 財 物 に は 有 体 物 と 無 体 物 と が あ る ︒ 我 が 国 の 現 行 民 法 は 物 を 有 体 物 に 限 定 し て い る が ︑

ロ ー マ 法 以 来 ︑ 外 国 の 幾 つ か の 立 法 例 や 我 が 国 の 旧 民 法 に お い て は 無 体 物 を も 物 概 念 の 中 に 含 め て い る ︒ ロ ー マ 法 ( ガ

イ ウ ス の 法 学 提 要 ) は 物 ( ﹃ ① oQ ) を 有 体 物 ( お ︒︒ o o 吋 雷 b 自 巴 霧 ) と 無 体 物 ( お ︒︒ ヨ o 自 田 ℃ 霞 巴 ① ︒︒ ) と 分 け て 整 理 し ︑ フ ラ

ン ス 民 法 で も 有 体 財 ( 三 窪 ω 8 壱 o 匡 ω ) ︑ 無 体 財 ( 菖 Φ 蕊 ぽ o o 唇 o 邑 ︒・ ) の 区 別 が 一 般 に な さ れ ︑ 学 説 に は 無 体 物 を も 含

(17)

め て 物 を 考 え る も の が あ る ︒ 我 が 国 で 最 初 の 民 法 ( 旧 民 法 ) 草 案 の 起 草 者 で あ る フ ラ ン ス 人 の ボ ア ソ ナ ー ド ( Ω ● 国 ・

しU 9 の のo 舜 創 ρ 一 c︒ 謡 ー 一 曽 O ) は ︑ フ ラ ン ス 民 法 を 基 礎 に 無 体 の 精 神 的 産 物 で あ る 著 作 物 と 発 明 に つ い て 草 案 五 〇 四 条 ( 旧

民 法 財 産 編 四 条 に 該 る ) に 規 定 す る と と も に ︑ 物 に つ い て も 草 案 五 〇 六 条 (旧 民 法 財 産 編 六 条 に 該 る ) に 規 定 し た ︒

知 的 財 産 の保 護一 般

旧 民 法 草 案 五 〇 四 条 著 述 者 其 著 書 ノ 発 行 技 術 者 其 技 術 物 ノ 製 出 又 ハ 嚢 明 者 其 嚢 明 ノ 適 用 二 就 テ ノ 権 利 ハ 特 別 ノ 法

律 二 因 リ 規 定 ス

旧 民 法 草 案 五 〇 六 条 物 二 有 膣 ナ ル ア リ 又 無 膿 ナ ル ア リ

② 有 膿 ナ ル 物 ト ハ 人 ノ 感 官 二 燭 ル ル モ ノ ヲ 云 フ 例 ハ 地 所 ︑ 建 物 ︑ 活 動 物 ︑ 器 具 ノ 如 シ

③ 無 体 ナ ル 者 ト ハ 智 能 ノ ミ ニ テ 理 會 ス ル モ ノ ヲ 云 フ 即 チ 左 ノ 如 シ

第 一 物 権 又 ハ 人 権

第 二 五 〇 四 條 二 記 載 シ タ ル 著 述 技 術 又 ハ 製 作 ノ 所 有 謹

第 三 (略 )

199

旧 民 法 の 編 纂 に 際 し て は ︑ 現 行 民 法 に お け る 前 三 編 (総 則 ・ 物 権 ・ 債 権 ) の 財 産 法 に 相 当 す る 部 分 に つ い て ボ ア ソ

ナ ー ド が 草 案 を 作 成 し ︑ 法 律 取 調 委 員 会 に お い て 翻 訳 と 議 論 の 末 に 法 文 を 確 定 し た が ︑ そ こ で の ボ ア ソ ナ ー ド の 権 威

は 圧 倒 的 で あ っ た よ う で あ る ︒ 旧 民 法 は フ ラ ン ス 民 法 の 影 響 を 受 け つ つ も ︑ 編 別 構 成 に お い て は 別 異 に 独 自 の 立 場 で

人 事 編 (能 力 規 定 ・ 親 族 法 )︑ 財 産 編 (物 権 ・ 債 権 総 論 )︑ 財 産 取 得 法 (契 約 法 ・ 相 続 法 )︑ 債 権 担 保 法 (担 保 物 権 ・ 保 証 等 )︑

証 拠 編 (時 効 そ の 他 ) の 五 編 構 成 を 選 び ︑ 結 果 的 に は 通 し の 条 数 は 設 け ず ︑ 各 編 別 に 条 数 を 設 け て い る ︒

旧 民 法 は ︑ 精 神 的 産 物 で あ る 著 作 物 と 発 明 の 保 護 に つ い て 財 産 編 四 条 に 規 定 し す る と と も に ︑ 物 に つ い て 同 六 条 に

(18)

規 定 し た ︒

旧 民 法 財 産 編 四 条 著 述 家 技 術 家 及 ヒ 発 明 者 其 著 作 物 又 ハ 其 著 作 ヲ 公 ケ ニ シ 其 発 明 ヲ 適 施 ル ニ 付 テ ノ 権 ハ 別 段 ノ 法

律 ヲ 以 テ 之 ヲ 規 定 ス

旧 民 法 財 産 編 六 条 物 二 有 膿 ナ ル ア リ 無 朧 ナ ル ア リ

② 有 禮 物 ト ハ 人 ノ 感 官 二 鰯 ル ル モ ノ ヲ 謂 フ 即 チ 地 所 ︑ 建 物 ︑ 動 物 ︑ 器 具 ノ 如 シ

③ 無 腱 物 ト ハ 智 能 ノ ミ ヲ 以 テ 理 會 ス ル モ ノ ヲ 謂 フ 即 チ 左 ノ 如 シ

第 一 物 権 及 ヒ 人 権

第 二 著 述 ︑ 技 術 及 ヒ 獲 明 二 関 ス ル 権 利

第 三 略

現 行 民 法 典 の 三 起 草 委 員 の } 人 で あ る 穂 積 陳 重 は 旧 民 法 財 産 編 四 条 に つ い て ︑ ﹁ 著 述 家 ト ハ 政 学 文 学 医 学 理 学 等 一

切 ノ 学 問 二 関 ス ル 書 ヲ 著 ハ ス 学 者 ヲ 云 フ 発 明 者 ト ハ 或 ハ 汽 車 人 力 車 電 信 機 其 他 工 業 諸 機 械 ノ 未 タ 人 ノ 知 ラ サ ル 事 ヲ 初

メ テ 発 見 セ シ 者 ヲ 云 フ 著 述 家 ニ シ テ 著 作 ヲ 公 ケ ニ シ 技 術 家 ニ シ テ 其 技 術 ヲ 公 ニ シ 発 明 者 ニ シ テ 其 発 明 セ シ 事 業 ヲ 実 施

ス ル 権 例 ヘ ハ 板 権 専 売 ノ 権 ノ 如 キ ハ 別 段 ノ 法 律 ヲ 以 テ 之 ヲ 定 メ 今 此 民 法 中 二 之 ヲ 定 メ ス 其 所 謂 ル 別 段 ノ 法 律 ト ハ 出 版

条 例 専 売 規 則 等 ノ 類 ヲ 云 フ (以 下 ︑ 略 )﹂ と 注 釈 し て い る ︒ 著 作 権 や 特 許 権 な ど の 知 的 財 産 権 を 現 行 民 法 典 に 規 定 し

な い こ と に つ い て は ︑ ﹁ イ カ カ ナ レ ハ 本 ヲ 作 リ タ ル 人 ︑ 始 テ 便 利 ノ 事 柄 ヲ 考 エ タ ル 人 ナ ト ノ 納 得 ナ ク シ テ 外 ノ 人 力 基

本 ヲ 世 間 二 弘 メ 又 ハ 便 利 ノ 事 柄 ヲ 致 セ ハ 贋 物 ヲ 致 シ タ ル 罪 ア リ 因 テ 損 金 ヲ 出 シ 其 上 刑 ヲ 受 ケ ル 筋 ア ル カ ユ エ ニ 民 法 ニ

ハ 拘 ハ ラ ヌ ナ リ (ボ ア ソ ナ ー ド 注 釈 書 十 一 丁 背 )﹂ (起 案 者 不 明 ) と の 付 箋 が つ い て い る ︒

(19)

知 的 財 産 の 保 護 一 般 201

次 に ︑ 第 六 条 に つ い て は ︑ ﹁ 物 品 ノ 区 別 ヲ 説 ク モ ノ ナ リ 其 第 一 ノ 区 別 ヲ 有 形 物 及 ヒ 無 形 物 ト ナ ス ﹂ と 説 い た 上 で ︑

﹁ 第 四 条 二 記 載 ス ル 著 書 ノ 所 有 権 技 術 上 の 所 有 権 又 ハ 製 造 上 ノ 所 有 権 ﹂ に つ い て ︑ ﹁ 此 類 ノ 所 有 権 ハ 時 ト シ テ ハ 物 権

ト ナ ル コ ト ア リ 時 ト シ テ ハ 人 権 ト ナ ル コ ト ア リ 例 ヘ ハ 蔽 二 著 述 家 ア リ テ 一 書 ヲ 著 ハ セ シ ト キ 其 著 述 家 ハ 適 宜 ノ 方 法 ヲ

以 テ 之 ヲ 公 ケ ニ シ 他 人 ノ 専 マ マ ニ 之 ヲ 公 ニ ス ル ヲ 禁 止 ス ル ノ 権 ア リ 此 等 ノ 権 利 ハ 即 チ 物 権 ナ リ 何 ト ナ レ ハ 其 権 利 ノ 目

的 タ ル 物 品 上 二 直 二 之 ヲ 行 フ ヲ 得 可 ク 且 ツ 一 般 ノ 人 二 之 ヲ 対 抗 ス ル ヲ 得 可 ケ レ ハ ナ リ 又 例 ヘ ハ 薙 二 著 述 家 ア リ 其 著 ス

所 ノ 書 ヲ 出 板 ス ル 為 メ 書 躍 ト 契 約 シ 書 騨 ヲ シ テ 其 草 稿 料 ヲ 一 時 払 ハ シ メ 又 ハ 書 籍 ノ 売 高 二 応 シ テ 之 ヲ 払 ハ シ ム ル 旨 ヲ

取 極 メ シ 時 ノ 如 キ 其 権 利 ハ 即 チ 人 権 ナ リ 何 ト ナ レ ハ 其 権 利 ハ 特 定 ノ 人 即 チ 書 躍 二 対 ス ル ノ 外 之 ヲ 行 フ ヲ 得 サ レ ハ ナ リ

夫 此 二 個 ノ 権 利 ヲ 混 有 ス 故 二 本 条 二 於 テ ハ 之 ヲ 前 項 二 加 ヘ ス シ テ 故 二 一 項 ヲ 為 セ シ モ ノ ナ リ ﹂ と 注 釈 し て い る ︒

⇔ 物 の 有 体 性

旧 民 法 は ロ ー マ 法 や フ ラ ン ス 民 法 ( 五 一 七 条 以 下 ) に 倣 っ て ︑ 無 体 物 の 観 念 を 認 め ︑ 全 て の 物 権 ・ 人 権 ︑ 知 的 財 産

権 を 無 体 物 と し た (旧 民 財 産 編 六 条 三 項 ) が ︑ そ れ は む し ろ 現 在 の 経 済 社 会 に お け る 常 識 的 な 物 の 観 念 に 適 合 す る も

の と も 考 え ら れ る ︒ そ れ に も か か わ ら ず ︑ 現 行 民 法 ( 八 五 条 ) が ド イ ツ 民 法 (九 〇 条 ) と 同 じ よ う に 物 を 有 体 物 に 限

定 し た の は ︑ ド イ ツ 民 法 九 〇 条 の も と に な っ た そ の 第 一 草 案 七 七 八 条 が 物 の 観 念 を 有 体 物 に 限 定 し た 例 に 倣 っ た も の

で あ る ︒ 梅 博 士 は ︑ 物 の 観 念 に 有 体 物 と 並 ん で 無 体 物 を 認 め る と き に は ︑ ﹁ 無 体 物 中 ニ ハ 物 権 ︑ 人 権 等 ノ 権 利 ヲ モ 包

含 ス ル コ ト 固 ヨ リ ナ ル カ 故 二 (否 法 文 中 無 体 物 ト 云 ヘ ル ハ 大 抵 権 利 ノ ミ ヲ 云 ヘ リ ) 物 ノ 上 二 存 ス ル 権 利 即 チ 物 権 ハ 他 ノ

物 権 又 ハ 人 権 ノ 上 二 存 ス ル コ ト ヲ 得 ル モ ノ ト 云 ハ サ ル コ ト ヲ 得 ス 此 ノ 如 ク ン ハ 債 権 ノ 所 有 権 ︑ 地 上 権 ノ 所 有 権 等 ノ 如

キ モ ノ ヲ 認 メ サ ル コ ト ヲ 得 ス シ テ 藪 二 権 利 ノ 種 別 ヲ シ テ 錯 雑 ︑ 混 清 全 ク 識 別 ス ル コ ト ヲ 得 サ ラ シ ム ル ニ 至 ル ヘ シ 蓋 シ

羅 馬 法 二 於 テ 有 体 物 ト 無 体 物 ト ヲ 区 別 シ タ ル ハ 寧 ロ 所 有 権 ト 他 ノ 権 利 ト ヲ 区 別 シ テ 云 ヘ ル モ ノ ニ シ テ 此 区 別 ハ 多 少 実

(20)

際 ノ 必 要 ナ キ ニ 非 ス ト 錐 モ 所 有 権 モ 亦 権 利 ニ シ テ 即 チ 無 体 物 ナ ル カ 故 二 有 形 ノ 物 ト 権 利 其 他 ノ 無 体 物 ト ヲ 区 別 ス ル ハ

何 等 ノ 実 用 ア ル コ ト ナ シ 此 区 別 ヨ リ 推 論 ス レ ハ 或 ハ 所 有 権 ノ 所 有 権 ナ ル モ ノ ヲ モ 認 メ サ ル コ ト ヲ 得 サ ル ニ 至 ル ヘ シ 故

二 新 民 法 二 於 テ ハ 全 ク 此 区 別 ヲ 採 ラ ス 法 文 中 単 二 物 ト 云 ヘ ル ト キ ハ 必 ス 有 体 物 (有 体 物 ノ 定 義 ハ 触 官 二 感 ス ル 物 ト ス ヘ

キ ヵ ) ノ ミ ヲ 指 シ 権 利 ハ 之 ヲ 権 利 ト 日 ヒ テ 物 ト 日 ワ ス 其 他 名 誉 ︑ 行 為 等 ノ 如 キ 無 体 物 モ 亦 各 々 其 名 称 二 依 リ 決 シ テ 無

体 物 ナ ル 総 称 ヲ 用 ヒ ス 是 レ 実 際 便 利 ナ ル コ ト 多 カ ル ヘ シ ト 信 ス ﹂ と 説 か れ る ︒ 物 を 有 体 物 に 限 定 し な い と ﹁ 物 権 ︑ 人

権 モ 亦 常 二 権 利 ノ 目 的 物 ト シ タ ル カ 為 メ 頗 ル 奇 異 ナ ル 結 果 ヲ 生 ス ル ﹂ こ と に な る ︒ 例 え ば ︑ ﹁ 債 権 ノ 所 有 権 ︑ 地 上 権

ノ 所 有 権 等 ノ 如 キ モ ノ ヲ 認 メ サ ル コ ト ヲ 得 ﹂ な く な り ︑ = 般 権 利 ノ 種 別 殊 二 財 産 権 ノ 一 大 分 類 ト セ ル 物 権 ト 債 権 ト

ノ 区 別 ( 財 一 条 ) ヲ シ テ 紛 清 錯 雑 セ シ メ 遂 二 之 ヲ 識 別 ス ル 標 準 ナ キ ニ 至 レ ル ﹂ た め ︑ 特 に ﹁ 所 有 権 ノ 所 有 権 ﹂ ま で 認

め る に 至 っ て は 困 惑 す る ︒ そ こ で ︑ ﹁ 此 事 ハ 特 二 一 条 ヲ 設 ケ テ 之 ヲ 明 示 ス ル ノ 必 要 ナ キ カ 如 シ ト 錐 モ 物 ノ 如 キ 普 通 ノ

用 語 ニ シ テ 既 成 法 典 二 於 ケ ル ト 大 イ ニ 異 ナ リ タ ル 意 義 ヲ 以 テ 之 ヲ 用 ユ ル カ 故 二 本 章 ノ 首 条 二 於 テ 之 ヲ 明 言 ス ル コ ト ト

為 ﹂ し た も の と さ れ る ︒ な お ︑ 旧 民 法 財 産 編 第 一 三 条 は ﹁ 法 律 ノ 規 定 ニ ヨ ル 動 産 ハ 左 ノ 如 シ ﹂ と し ︑ そ の 第 五 に ﹁著

述 者 技 術 者 及 嚢 明 者 構 利 ﹂ と 規 定 し て い る ︒

現 行 民 法 は ︑ 旧 民 法 財 産 編 総 則 ﹁ 財 産 及 ヒ 物 ノ 区 別 ﹂ の う ち 有 体 物 ・ 無 体 物 の 区 別 を す る 規 定 ( 六 条 ) を 改 め て ︑

﹁ 本 法 二 於 テ 物 ト ハ 有 体 物 ヲ 謂 フ ﹂ ( 八 五 条 ) と 規 定 し ︑ 物 を 有 体 物 に 限 定 し た ︒ 現 行 民 法 が 物 を 有 体 物 に 限 定 し た

の は ︑ 有 体 物 だ け が 排 他 的 支 配 の 可 能 な も の と し て 所 有 権 (物 権 ) の 客 体 適 格 を 有 す る と 考 え た か ら で あ り ︑ そ れ は

有 体 物 が 明 確 に 外 界 か ら 区 別 さ れ た 財 産 的 価 値 で あ る と さ れ る ︒ な お ︑ 物 は 物 権 と 必 然 的 関 係 が あ る た め ︑ 物 に 関 す

る 規 定 は 物 権 編 に 置 く の が 適 当 と も 考 え ら れ よ う ︒ し か し ︑ 債 権 法 に お い て も 物 は 債 権 の 目 的 物 と し て 重 要 な 地 位 を

占 め ︑ ま た 私 法 の 他 の 部 分 で も 常 に 問 題 に な る た め ︑ 民 法 は 総 則 編 に 権 利 の 主 体 を 規 定 し た 後 に ︑ 権 利 の 対 象 と い う

意 味 で 物 に つ い て の 一 般 的 規 定 を 掲 げ た の で あ る ︑ と 一 般 に 説 か れ る ︒ し か し ︑ 物 を 有 体 物 に 限 定 す る 現 行 民 法 の 態

(21)

度 に つ い て は ︑ ﹁ こ れ は 一 つ の 立 法 論 的 な 立 場 で あ る に す ぎ ず ︑ ア プ リ オ リ に 所 有 権 の 対 象 は 有 体 物 で な け れ ば な ら

な い ︑ と 硬 直 的 に 考 え る の は 適 当 で な い ︒ む し ろ ︑ 無 体 物 を 中 心 と し た 各 種 の 利 益 を 排 他 的 に 支 配 す る 権 利 を 構 想 す

る こ と を 可 能 に す る 旧 民 法 典 の 立 場 は ︑ 実 は 極 め て 現 代 的 な 立 場 で も あ っ た ︒ 現 行 八 五 条 の 解 釈 と し て は と も か く ︑

発 想 と し て は 参 考 に す べ き 点 が 多 い ︒ ﹂ と さ れ る ︒

知 的 財 産 の 保 護 一 般 203

⑳ 物 概 念 の 拡 張 論

現 行 民 法 で は ︑ 人 権 ︑ 物 権 ︑ 債 権 ︑ 相 続 財 産 ︑ 破 産 財 団 等 は 物 の 観 念 か ら 除 外 さ れ ︑ 同 時 に 著 述 ︑ 技 術 ま た は 製 作

な ど の 精 神 的 産 物 の 民 法 上 の 地 位 は 不 明 と な っ た の で あ る ︒ 有 体 物 以 外 の も の に つ い て は ︑ ﹁ 法 の 欠 鉄 と 考 え ︑ そ の

性 質 と 問 題 に 応 じ て 物 ま た は 物 権 に 関 す る 規 定 を 類 推 適 用 す れ ば 足 り る ﹂ と 解 す る 立 場 が あ る ︒ 精 神 的 産 物 の よ う に

私 的 支 配 を 承 認 し 保 障 す る こ と が 必 要 と さ れ ︑ か つ ︑ こ れ が 技 術 的 に 可 能 で あ る 無 体 物 に つ い て は ︑ 有 体 物 に 準 じ て

所 有 権 の 客 体 と す る 実 益 が あ る も の と さ れ よ う ︒ も っ と も ︑ 法 技 術 と し て は ︑ 無 体 物 を ﹁ 物 に 対 す る 所 有 権 ﹂ に 包 摂

せ ず ︑ 特 別 の 権 利 の 客 体 と す る こ と に よ っ て 保 護 す る こ と も で き る た め ︑ 必 ず し も 民 法 の 物 概 念 の 解 釈 に 拘 わ っ て ︑

物 概 念 の 拡 張 を 図 る こ と が 必 要 で は な い ︑ と 一 般 に 考 え ら れ て い る ︒

と こ ろ で ︑ 特 許 庁 は ︑ 二 〇 〇 〇 年 一 二 月 二 八 日 ︑ 改 訂 し た 特 許 ・ 実 用 新 案 審 査 基 準 を 公 表 し ︑ そ の 中 で コ ン ピ ュ ー

タ ・ ソ フ ト ウ ェ ア 関 連 発 明 の 審 査 基 準 改 訂 ( 二 〇 〇 一 年 一 月 一 〇 日 以 降 の 出 願 に 適 用 ) も 行 な っ た ︒ 特 許 法 で は ︑ ﹁ 特 許

発 明 ﹂ の 種 類 と し て ︑ 大 ま か に ﹁ 物 ﹂ に 関 す る 発 明 ︑ ﹁ 方 法 ﹂ に 関 す る 発 明 に 大 別 (法 二 条 三 項 ) さ れ て お り ︑ こ こ で

い う ﹁ 物 ﹂ と は 通 説 と し て ︑ 民 法 上 の ﹁ 物 ﹂ (民 法 八 五 ) の 解 釈 に 合 わ せ て ︑ 物 理 的 実 体 の あ る 有 体 物 と 解 さ れ て い

た ︒ こ の た め 特 許 庁 は ︑ 一 九 九 七 年 か ら ﹁物 の 発 明 ﹂ に 対 す る 新 た な 審 査 運 用 指 針 ( 一 九 九 六 年 ) の 適 用 に よ っ て ︑

F D や C D ‑ R O M 等 の ソ フ ト ウ ェ ア を 保 存 し た 記 録 媒 体 に つ い て も ︑ 特 許 法 上 の ﹁物 ﹂ に 関 す る 発 明 を 構 成 す る と

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