1.はじめに
1992 年にブラジルのリオデジャネイロで 開 催 さ れ た 国 連 環 境 開 発 会 議 (
U n i t e d Nations Conference on Environment and Development
:UNCED
)(地球サミット)から 10 年余りを経て,生物多様性に関する 条 約1( 生 物 多 様 性 条 約 )(
Convention on Biological Diversity
:以下,「CBD
」という。) がようやく我が国において認知され始めてい る。同じ会議で署名開放されたにもかかわら ず , 気 候 変 動 に 関 す る 国 際 連 合 枠 組 条 約(
United Nations Framework Convention on Climate Change
:UNFCCC
)2が当初から注 目を集め続けてきたのとは極めて対照的であ る。CBD
は,_生物多様性の保全,`その構 成要素の持続可能な利用,a遺伝資源の利用 から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的 とし,これらの目的は,①遺伝資源の取得の 適当な機会の提供,②関連のある技術の適当 な移転(これらの提供及び移転は,当該遺伝 資源及び当該関連のある技術についてのすべ ての権利を考慮して行う。),③適当な資金供 与の方法を通じて達成される(CBD
第1条)。 しかし,CBD
は枠組み条約であるため,履 行確保と見直しのために定期的に締約国会議(
COP
)が開催されることになっている3。そ こで,1993 年の条約発効以降,これまで計6回の締約国会議が開催され,また,2004 年2月には第7回締約国会議(
COP
7)の開 催が予定されている。さらに,地球サミット から 10 年目にあたる 2002 年には「持続可能 な開発に関する世界首脳会議(World Sum- mit on Sustainable Development
:WSSD
)(通称:ヨハネスブルグ・サミット)」が開催 され,10 年前に策定された計画の見直しや 新たに生じた課題等についての議論が行われ た。
これらの会議における論点は多岐に渡るが,
これまで先進国と開発途上国の主な争点と なってきたのが遺伝資源及び伝統的知識への アクセス及び利益配分の問題であり,その中 でもとりわけ遺伝資源及び伝統的知識に係る 知的財産権の問題は常に交渉の議題の一つと なっている。特に開発途上国は,それぞれの 国内で特別の制度(
sui generis
制度)を整 備する等,独自に遺伝資源及び伝統的知識へ のアクセス規制を強めるとともに,世界知的 所 有 権 機 関 (World Intellectual Property Organization
:WIPO
)やCBD
締約国会議等 の 場 で 法 的 拘 束 力 の あ る 国 際 的 な 制 度(
International Regime
)の構築を強く求め ている。本プロジェクトは,遺伝資源及び伝統的知 識に係る知的財産権の問題―特に伝統的知 識の保護に係る問題を中心に―について,
広く情報発信を行うとともに,多様な観点か ら広く検討を行い,今後の議論への示唆を与 えることを目的としている。そこで,プロ ジェクトの出発点となる今回の紀要では,問
伝統的知識の保護と知的財産権に 係る国際的な取り組み
※大澤麻衣子
** 九州大学大学院法学府博士後期課程。
題の概要を鳥瞰することを主題にしている。
「伝統的知識」とは何かについては他稿に譲 り,本稿では伝統的知識の保護と知的財産権 に係る国際的な取り組みの進展について概説 する。以下では,まず,
WIPO
による取り組 みと各国における特別の制度(sui generis
制度)の整備状況について概観し,さらに国 際的な制度(International Regime
)の構築 をめぐる議論の展開について紹介することと する。2.WIPOの取り組み
WIPO
の伝統的知識の保護に関する取り組 みは,古くは 1970 年代の国連教育科学文化 機関(United Nations Educational, Scientif- ic and Cultural Organization
:UNESCO
) とのフォークロアの表現の保護に関する共同 プロジェクト等がある。しかし,遺伝資源や 狭義の伝統的知識も含む伝統的知識の問題一 般についても取り扱うようになったのは,1997 年に知的財産制度が現在の世界で直面 する問題に対応するための専門部局(
Global Intellectual Property Issues Division
:GIPID
) を 設 置 し て 以 降 の こ と で あ る4。WIPO
は,1998 年から 1999 年にかけて,世 界の9つの地域,計 28 か国で,遺伝資源へ のアクセス及び利益配分並びに伝統的知識の 保護に関する実態調査を行っている5。1999 年9月の
WIPO
第3回特許法常設委員 会(Standing Committee on the Law of Patents
:以下,「SCP
」という。)では特許 法条約(Patent Law Treaty
:以下,「PLT
」 という。)の検討が行われたが,ここでコロ ンビアが特許明細書における遺伝資源の出所 開示と合法アクセス証明を法的に義務付ける ことを求める具体的な提案を行い,以後,WIPO
における議論が開始された6。このコロンビア提案は,遺伝資源の保護の 観点から,特許権等の出願の際に遺伝資源の 出所に関する情報の開示を義務づける規定を
PLT
に盛り込むことを求めるものであり,具体的には「特許保護を求める物又はサービ スが,本条約の締約国の一つを原産国とする 遺伝資源から製造又は開発されたものである 場合には,特許出願書類に当該遺伝資源への アクセスを認める契約書の番号を明記し,当 該契約の写しを添付しなければならない。」7 という内容であった。
この提案に対し,先進国は,遺伝資源に関 する情報を特許出願書類に記載することは実 体的な特許要件に関連することであり,手続 的事項・方式的事項の国際調和を取り扱う
PLT
に規定するのは適切でないこと,議論 が十分に行われていないためPLT
に盛り込 むのは時期尚早であること等を理由に強く反 発したことから,議論が紛糾した8。同年 11 月に開催された
WIPO
バイオテク ノロジー・ワーキング・グループ(WIPO Working Group on Biotechnology
) で も , 上記コロンビア提案が議題の一つにあがった ものの,実質的な交渉には入らず情報提供に とどまったため,具体的な結論には至らな かった。ここでも,コロンビアやブラジル等 の開発途上国は,特許出願書類への遺伝資源 の出所開示の義務化については,国内法で規 定するのみでは実効性の観点からは不十分で あり,国際法レベルでの規定が必要との主張 を行っている9。続く 2000 年4月に行われた知的財産と遺 伝資源会合(
Meeting on Intellectual Prop- erty and Genetic Resources
)では,コロン ビアが上記の提案の修正案を提出し,再度PLT
への盛り込みを図った10。その後,PLT
採択を目指した 2000 年5月〜6月のPLT
外 交会議でも同様の議論が繰り返されたため,協議を重ねた結果,
PLT
の締結を優先する ために当該問題をPLT
外で検討すること,具体的には
WIPO
に新たに政府間委員会を創 設することで合意し,2000 年9月 25 日〜 10 月3日に開催された第 26 回WIPO
一般総会 において,「知的財産並びに遺伝資源,伝統的知識及びフォークロアに関する政府間委員 会(
Intergovernmental Committee on Intel- lectual Property and Genetic Resources, Traditional Knowledge and Folklore
:以下,「
IGC
」という。)」を設置することが決定さ れた11。IGC
に与えられたマンデートは,遺伝資源 へのアクセス及び利益配分,伝統的知識の保 護(遺伝資源に関連するか否かは問わない。), フォークロアの表現の保護に関する知的財産 権の問題を検討することである12。2001 年5 月に第一回目の会合を開催して以来,2003 年 12 月までに合計5回の会合が行われ,各 国の法制等に関する調査研究とともに当面実 行可能な措置及び広汎な法的問題についての 分析・検討が行われている。これまでの主な取り組みとしては,①伝統 的知識等の用語の定義,現行の知的財産制度 による保護の可能性及び適切性,特別の制度
(
sui generis
制度)の必要性に関する検討,②知的財産並びに遺伝資源へのアクセス及び 利益配分に関連した既存の契約事例集(契約 データベース)の策定並びにそれを基にした 知的財産権モデル条項の検討,③遺伝資源及 び伝統的知識の出所開示並びに事前の同意
(
Prior Informed Consent
:PIC
)の取得を 証明する文書の提出等の特許出願要件に関す る各国法についての技術的調査研究の実施,④伝統的知識に関連した定期刊行物及びデー タベースに係る目録の作成13,⑤伝統的知識 データベースのポータルサイトの開設・整備14,
⑥パブリック・ドメインとなっている伝統的 知識の文書化支援(文書化前の先住民及び地 域コミュニティによる利益評価並びに文書化 後の知的財産権の管理のためのツールキッ ト15の整備),⑦サーチツールの改善を目的 とした国際特許分類(
International Patent Classification
:IPC
)における遺伝資源及び 伝統的知識用の独自の分類の新設に関する検 討16,⑧フォークロアの表現の保護に関する 各国のこれまでの経験(国内法の制定及び保護実績等)に関する調査研究の分析17等があ り,様々な成果をあげているものの,今後に 残された課題も多い。
例えば,知的財産並びに遺伝資源へのアク セス及び利益配分に関連した既存の契約事例 集(契約データベース)の策定については,
一部既存のマテリアル・トランスファー・ア グ リ ー メ ン ト (
MTA
) がWIPO
の ホ ー ム ページで公開されているが18,実際にどの程 度十分な実例が収集・掲載できるかは定かで なく,またトレード・シークレットとの関係 もあり,どこまで契約の核心的部分を開示で きるかは不明である。加えて,データベース を充実させるためには,技術的,財政的問題 も指摘されている。一方,保護客体である伝 統的知識の定義については,そもそも定義を 行うこと自体の是非及びその内容について意 見が分かれており,今後も検討が行われる予 定である。さらに,遺伝資源及び伝統的知識 の文書化における知的財産管理ツールキット については,支持国も多いものの,文書化に 懐疑的又は無関心な先住民もいることから,事前の同意(
PIC
)を確保する必要性,先住 民との意見交換の必要性及び第三者による利 用のリスクの確認並びにフィールド・テスト の蓄積等を通じて,実効性について更なる検 討が必要となっている。このように現在のところ成果が上がってい る事項についても課題は多いが,伝統的知識 に係る新たな知的財産権の創設等をめぐって は,各国の思惑が錯綜し,全く調和点を見出 せずにいる。2003 年7月7日〜 15 日に開催 された第5回
IGC
では,IGC
の次期マンデー ト(2004 − 2005 年予算会期)をめぐって,激しい議論が行われた。開発途上国を中心と した諸国は,
IGC
での議論には目立った進展 がないと判断し,次期マンデートとして法的 拘束力のある国際的な条約等の策定を強く求 めたのに対し,先進諸国は上記のようなIGC
のこれまでの成果を評価し,今後も現在のマ ンデートの継続及び非拘束的な検討を望み,対立した。多くの開発途上国は,遺伝資源,
伝統的知識及びフォークロアの保護のための 国際的な制度の構築(
International Regime
) については総じて支持したものの,その制度 の法的性質については各国の立場は分かれて いた19。例えば,ラテン・アメリカ及びアジ アの開発途上国は,法的拘束力のある国際文 書の策定の可能性についての共同勧告(Joint Recommendation
)や原則の採択を求めたが,アフリカ・グループは,今後2年間以内での 条約の策定を強硬に求めた。これに対し,米 国は,法的拘束力を有する文書の作成につい ては,いかなるものであっても反対するとい う強固な姿勢を示した。
公式会合及び非公式会合において調整が続 けられたものの,最後までアフリカ・グルー プが遺伝資源,伝統的知識及びフォークロア の三分野における保護のための拘束力ある国 際文書の策定に固執したために,最終的に合 意が得られず,結論は一般総会(2003 年9 月 22 日〜 10 月1日)へ先送りされた20。
開発途上国がこうした強靱な姿勢をとった 背景には,
IGC
の後にも9月初めのWTO
カ ンクン閣僚会議及び9月のWIPO
一般総会と 2度の交渉の場が控えていることがあったが,希望を託していたカンクン交渉が最終的に決 裂したため,第 30 回
WIPO
一般総会では,ある程度の妥協の姿勢も示しつつ交渉が行わ れた。一般総会においても,次期マンデート として法的拘束力のある条約を策定すること を盛り込むか否かに議論が集中したが21,結 局,①
IGC
は現在のマンデートを次期予算会 期も継続する,②今後IGC
における検討を加 速させ,知的財産並びに遺伝資源,伝統的知 識及びフォークロアの国際的な重要性に焦点 を合わせた検討を行う,③最終的な交渉の結 果 に つ い て は , 国 際 文 書 (International instrument
)の策定を排除しない,という玉 虫色の決着となった22。なお,次回の第6回
IGC
の開催は,2004 年3月 15 日〜 19 日に予定されている。3.特別の制度(
Sui generis
制度)によ る保護既存の知的財産権制度においても,保護対 象が伝統的なものか否かにはかかわらず,そ れぞれの法制度の要件を満たしたものが,保 護を受けることができる。しかし,多くの伝 統的知識は既に公知となって新規性を喪失し ていたり,発明者や著作者の特定が困難で あったりするために,保護を受けることがで きない場合が少なくないのが現状である。こ のように,既存の知的財産権制度の枠内では 伝統的知識の保護に限界があるため,開発途 上国,先住民,研究者,
NGO
や活動家等が 中心となって,特別の制度(sui generis
制 度)による伝統的知識の保護を主張している。これまでも技術の進歩とともに,新たな保護 対象が出現し,知的財産権制度はその都度,
適切な保護の形を模索してきた。例えば,バ イオテクノロジー関連技術23,ビジネス方法,
コンピュータ・プログラム,データベース及 びデータ編集物等については,特許法や著作 権法による保護の範囲を拡大する形で対応を 行ってきた。しかし,植物新品種や半導体集 積回路の回路配置等については,既存の制度 に よ る 保 護 で は な く , 新 た な 特 別 の 制 度
(
sui generis
制度)による保護という形を選 択した。このことから,開発途上国,先住民 及びNGO
等は,伝統的知識についても特別 の制度(sui generis
制度)を新設し,保護 するよう求めている。実際に数多くの論文や報告書において,既 存の知的財産権とは異なる新しい権利として,
伝統的資源権(
Traditional Resource Rights
:TRR
)24やコミュニティ知的権利(Communi- ty Intellectual Rights
)25, 共 同 知 的 財 産 権(
Common Intellectual Property Rights
:CIPRs
)26,慣習的知的権利(Conventional Intellectual Rights
)27, 伝 統 的 知 的 財 産 権(
Traditional Intellectual Property Rights
)28,コミュニティ知的財産権(
Community Intel- lectual Property Rights
:CIPR
)29, 遺 伝 資 源権(Genetic Resource Right
)30,生物財産 権(Bioproperty Rights
)31等の新しい権利の 創設が提案されている32。また,国家実行としても,特に開発途上国 を中心として,既に特別の制度(
sui gener- is
制度)の整備が進んでいる。わかっている だけでも 2001 年1月の時点で 50 を超える国 家が遺伝資源のアクセス及び利益配分に関す る国内法を,また,22 か国及び3つの地域 機構が伝統的知識に関連した法律を既に制定 済み又は現在起草中であると言われている33。例えば,国内法として世界初の特別の制度
(
sui generis
制 度 ) で あ る フ ィ リ ピ ン の 1995 年 大 統 領 令 第 247 号34, コ ス タ リ カ の 1998 年生物多様性法35,インドの 2002 年生物 多様性法36,ブータンの 2003 年生物多様性法37,ネパールの遺伝資源へのアクセス及び利 益配分法案38等がある39。また,先進国でも,
オーストラリアが環境保護及び生物多様性保 全に関する施行規則40を整備している。
一方,地域的な取り組みとしてはアンデス 共 同 体 (
Comunidad Andina
:CAN
) カ ル タヘナ協定委員会41の決定第 486 号知的財産 共通レジーム42がある43。この他にも,東南 アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations
:以下,「ASEAN
」という。)諸国が生物遺伝資源へのアクセスに関する
ASEAN
枠組み協定案44を,中央アメリカ諸国は,遺伝資源へのアクセス並びに生化学製 品及び関連する伝統的知識に関する協定45を 策定中である。これらの国内法の多くは,遺 伝資源及び伝統的知識へのアクセス及び利益 配分に主眼をおいており,遺伝資源や伝統的 知識の入手や利用の際に先住民又は地域コ ミュニティの事前の同意(
PIC
)を得ること,彼らの慣習法等を尊重すること及び特許出願 の際に遺伝資源又は伝統的知識の出所を開示 すること等を規定している。
これに対し,伝統的知識についてより詳細
に規定し,先住民又は地域コミュニティに具 体的な権利を認めている国内法もある。既に 効力を有している法律等を見てみると,フィ リピンでは,1997 年に先住民権法46が可決さ れ た47。 同 法 で は ,「 先 祖 伝 来 領 域 」 及 び
「先祖伝来地」という概念が使用されている。
「先祖伝来領域」及び「先祖伝来地」とは,
戦争,不可抗力,強制移動,詐欺,略奪又は 政府事業その他,政府及び民間の個人若しく は企業により締結された自発的な取引の結果 として中断された時期を除き,先住民文化コ ミュニティ及び先住民(
ICCs/IPs
)が自ら又 は祖先を通じて,太古から現在に至るまで継 続的に,「全住民が共同若しくは個別に,所 有権の請求権に基づいて保有,占有若しくは 所有している土地,内水,沿岸域及びそこに 存在する天然資源からなるすべての地域(先 祖伝来領域)」及び「個別若しくは伝統的集 団の所有権の請求権に基づき,ICCs/IPs
の構 成員である個人,家族及び部族が占有,所有 及び使用している土地(先祖伝来地)」であ ると定義される(第3条)。また,先祖伝来 領域及び先祖伝来地は,物理的環境に限定さ れず,ICCs/IPs
が所有,占有,使用し,所有 権の申請権を有する地域への精神的及び文化 的な繋がりを含めた全体的な環境を含む領域 として観念される(第4条)。そして,この よ う な 先 祖 伝 来 領 域 及 び 先 祖 伝 来 地 とICCs/IPs
との結びつきを根拠として,先祖伝来領域に対する権利として,所有権や土地及 び天然資源の開発権,領域内の移住権等が
(第7条),先祖伝来地に対する権利として,
土地及び財産の譲渡権や買戻権が
ICCs/IPs
に付与される(第8条)。一方,同法の第 32 条には,コミュニティ の知的権利について規定されている。同条に よると,
ICCs/IPs
は,自らの文化的伝統及び 慣習を実施し,復興させる権利を有する。国 は,過去,現在,将来における彼らの文化の 発現とともに,彼らの自由かつ事前の情報に 基づく同意(PIC
)を得ずに取得された又は彼らの法,伝統若しくは慣習に反して取得さ れた文化的,知的,宗教的及び精神的財産を 回復する権利を保全し,保護し,発展させな ければならない(第 29 条,第 32 条及び第 34 条)。また,
ICCs/IPs
には,自らの精神的及 び宗教的伝統,慣習,儀式を発現,実施,発 展及び教導する権利,宗教に係る土地及び文 化的場所を維持,保護及び利用する権利,儀 式的事物を使用し,管理する権利並びに遺体 を引き取る権利等(第 33 条),非常に多様な 権利が与えられている。しかし,その一方で,ICCs/IPs
に 対 す る 権 利 ば か り で は な く ,ICCs/IPs
が先祖伝来領域に対して負う責任についても規定されている点は特徴的である。
ICCs/IPs
は,先祖伝来領域内の動植物,水系の流域,その他の保護地を保護することによ り,均衡のとれた生態系の保全,復元及び維 持に努める責任を負う(第9条_)。また,
公正かつ妥当な報酬を得て,荒廃地の植林や その他の開発計画及びプロジェクトを積極的 に先導,実行しかつそれに参加する責任も負 う(同条_)。さらに,本法及びその効果的 な実施のための諸規則の規定を遵守しなけれ ばならない(同条a)。
これに対し,ブラジルは,2001 年8月 23 日に遺伝資源,関連する伝統的知識及び技術 移転に関する暫定措置令第 2186
-
16 号48を制 定している。この暫定措置令第 2186-
16 号の 保護対象は,生物多様性に関連する伝統的知 識であり,遺伝資源及び関連する伝統的知識 利用から生ずる利益の配分を確保することに 主眼が置かれている。暫定措置令第 2186-
16 号の第8条では,本暫定措置令及びこれに基 づく規則で定めるところにより,先住民及び 地域コミュニティが遺伝資源に関連する自身 の伝統的知識の利用について決定する権利を 認めている(第1項)。続く第9条では,生 物多様性に関連した伝統的知識を創作,発展,保持又は保全している先住民及び地域コミュ ニティについて,①すべての出版,使用,開 発及び公開の際に当該伝統的知識へのアクセ
スについて言及することを求める権利,②第 三者が許可を得ずに次のことを行った場合に 差し止める権利(½Ë当該伝統的知識の使用,
試験,研究又は開発,½Ì当該伝統的知識に含 まれる又は伝統的知識を構成するデータ又は 情報の公開,移転又は再移転),③関連する 伝統的知識を第三者が直接的又は間接的な形 で経済的に活用した結果として利益が生まれ た場合に,公正かつ衡平な利益配分を受ける 権利が認められている。また,同条ではただ し書きとして,本暫定措置令の目的の下,遺 伝資源に関連する伝統的知識は,たとえその 知識をコミュニティのただ一人が保有してい る場合であっても,コミュニティが所有する ものとすることが規定されている。一方,国 内の遺伝資源に由来する製品及び方法につい て知的財産権を取得するためには,遺伝資源 及び関連する伝統的知識の出所開示等,暫定 措置令第 2186
-
16 号を遵守していなければな らない(第 31 条)。さらにブラジル暫定措置 令は,罰金,違法な素材及び違法な素材を含 む製品の差押,頒布の禁止,特許権の無効等 の制裁についても規定している。この他にも,タイの 1999 年知的伝統医薬 保護促進法49,パナマの 2000 年先住民の文化 的アイデンティティ及び伝統的知識の保護及 び防御のための集団的権利の登録に関する特 別制度50,ペルーの 2002 年生物資源に由来す る先住民の集団的知識の保護制度に関する法 律51,ポルトガルの 2002 年法律第 118
/
2002 号52等,伝統的知識の保護に係る国内法の制 定が続いている。また,州レベルでは,マレーシアのサラワ ク州53の 1997 年サラワク生物多様性(アクセ ス,収集及び研究)に関する規則54が有名で ある。同規則によると,サラワク州における 生物資源の収集等にはサラワク生物多様性評 議会の許可が必要であるが,この許可証に基 づき行われる民族生物学研究に関連して先住 民から伝統的知識等を入手した場合は,当該 研究による成果の有無にかかわらず,先住民
に対して対価を支払うよう評議会に求められ る場合があることが規定されている(第 28 条第1項)。また,先住民により提供された 伝統的知識に基づき研究成果が出た場合,関 連する知的財産権は,関与した先住民と協議 の上,評議会によって定められる範囲におい て,当該先住民と共有されるものとされてお り(同第2項),先住民に対するインセン ティブの付与と保護を規定している。
地 域 レ ベ ル で は , ア フ リ カ 統 一 機 構
(
Organization of African Unity
:OAU
) の コミュニティ,農民及び育成者の権利並びに 生物資源アクセス管理に関するモデル法55が,先住民及び地域コミュニティの権利を規定し ている。本モデル法によると,国は,以下の 事項に係るコミュニティの権利を承認する。
すなわち,①コミュニティの生物資源,②コ ミュニティの生物資源の利用から生ずる集合 的な利益に対する権利,③世代を通じて取得 されたコミュニティの工夫,慣行,知識及び 技術,④コミュニティの工夫,慣行,知識及 び技術の利用から生ずる集合的な利益に対す る権利,⑤生物多様性の保全と持続可能な利 用におけるコミュニティの工夫,慣行,知識 及び技術を利用する権利,⑥コミュニティの 生物資源の正当な管理人であり,利用者とし ての集団的な権利の行使である(第 16 条)。
生物資源,工夫,慣行,知識及び技術へアク セスするためには,一又は複数の関係コミュ ニティの事前の情報に基づく合意(
PIC
)が 必要であり(第 18 条),コミュニティは,当 該アクセスがコミュニティの自然遺産又は文 化遺産のインテグリティ(完全性)を毀損す る可能性がある場合には,アクセスを拒否す る権利(第 19 条)及び事後的に同意を撤回 する権利又はアクセスに関連する活動に制限 を加える権利を有する(第 20 条)。また,ア クセスされた生物資源若しくは知識のいずれ か又はその両方の利用により,生産プロセス で使用される製品が直接又は間接的に生まれ た場合,国及び一又は複数のコミュニティは利益配分を受ける権利を有し(第 12 条第2 項),配分された利益の少なくとも 50 %がコ ミュニティに対して保証される(第 22 条第 1項)。
一方,伝統的な専門家集団,特に伝統的な 治療師を含む地域コミュニティのコミュニ ティ知的権利は,常に不可譲で,本モデル法 によって設立されるメカニズムの下で一層保 護されることも規定されている(第 23 条第 1項)。コミュニティの工夫,慣行,知識若 しくは技術の項目又は生物資源若しくはその 他の天然資源の特定の使用については,コ ミュニティの慣行と慣習法に従い,当該コ ミュニティによって特定され,解釈され,確 認されなければならない。この時,当該慣習 法が成文化されているか否かは問わない(同 第2項)。さらに,動植物の遺伝資源に関連 する農民の伝統的知識の保護や動植物の遺伝 資源の利用から生ずる利益の衡平な配分の取 得等に係る農民の権利についても規定されて いる(第 26 条)。
この他に,太平洋諸島フォーラム(
Pacif- ic Islands Forum
:PIF
)56は,2002 年に伝統 的知識及び文化表現の保護に係るの地域的な 特別の制度(sui generis
制度)のモデル法57 を策定している。本モデル法は,既存の著作 権制度を原型とし,伝統的知識の保護のため に修正を加えた制度である。伝統的知識又は 文化表現の伝統的所有者には,伝統文化権が 付与される(第6条)。伝統文化権の効力と して,伝統的知識又は文化表現の複製,公表,展示等の行為について,慣習的な使用によら ずに行われる場合には,営利目的か否かにか かわらず,伝統的所有者に情報を提供した上 で,同意を得なければならない(第7条第1 項〜第3項)。当該伝統文化権は,特許権や 著作権のような知的財産権とは別個の権利と して観念され(第 11 条),権利は永久に存続 し(第9条),不可譲性を有する(第 10 条)。
また,伝統文化権とは別に,伝統的知識又は 文化表現の伝統的所有者には,伝統的知識又
は文化表現に関する人格権が与えられる(第 13 条第1項)。この人格権とは,①伝統的知 識又は文化表現に関する所有権の帰属に係る 権利(すなわち,自らの伝統的知識又は文化 表現の所有者として指名される権利),②伝 統的知識又は文化表現に関する所有権の帰属 を誤って受けない権利(すなわち,自らが所 有しない伝統的知識又は文化表現の所有者と して指名されない権利),③自らの伝統的知 識又は文化表現に対して毀損行為58を受けな い権利である(同一性保持権)(同条第2項)。 この人格権は,永久に存続し,不可譲であり,
放棄又は譲渡することはできない(同条第3 項)。他の法律は,伝統的知識に係る権利を 知的権利等として一義的に捉えているのが多 いのに対し,本モデル法では,著作権法にお ける著作権及び人格権の関係に倣い,伝統文 化権と人格権により構成されている点で,特 色がある。
以上のように,各国は独自に国内法を制定 し,遺伝資源や伝統的知識の保護を図ろうと している。先住民又は地域コミュニティには,
遺伝資源や伝統的知識の利用について同意を 与える権利や利益配分を受ける権利,出所と して表示される権利,慣習法や文化の尊重を 受ける権利等が与えられている。これらの法 律については,実際にどのように運用されて いるかに関する実証的なデータなくして考察 を行うことはあまり意味がない。例えば,
フィリピンの 1995 年大統領令第 247 号は,非 常に革新的で厳格なアクセス規制法として注 目を集めたが,厳格な規制が現実に即してい なかったため,これまで適用例は一つもなく,
現在政府が改正を検討中であると言われてい る59。よって,本稿では比較検討を行わない が,国際的な傾向として,伝統的知識の保護 を求める動きが高まっているのは事実である。
しかし,国内法の規制だけでは規制の実効 性やエンフォースメント等が十分でないため,
開発途上国は国際的なレベルでの特別の制度
(
sui generis
制度)の構築を求めている。これに対し,先進国は,伝統的知識を新たな知 的財産権として保護する国際的な条約を策定 するためには,権利者の特定,保護客体であ る「伝統的知識」の定義(又は特定),権利 発生要件,権利の開始時期,権利存続期間,
過去の使用に対する権利の遡及効の問題,目 的による規制の区別(営利か非営利か),先 住民又は地域コミュニティの慣習法と現在の 法体系の調和,効果的なエンフォースメント の確保等,解決を必要とする課題は未だ多く,
新たな知的財産権制度の創設は時期尚早であ ると反対している。特別の制度(
sui gener- is
制度)による伝統的知識の保護の問題は,諸国の国家的利害が複雑に錯綜・対立してお り,今後どのような展開に至るかは予断を許 さないといえる。
一方,遺伝資源及び伝統的知識へのアクセ スに関し,各国が独自に国内法を制定するこ とにより,利用者は各国の国内法をそれぞれ 調査し,遵守しなければならない。こうした 手続の複雑化及び運用の不透明性からくる法 的安定性の欠如等により,結果として遺伝資 源及び伝統的知識へのアクセスが阻害される とともに,移転コストが上昇する結果になっ ている。一般に遺伝資源や伝統的知識の持ち 出しがなされればなされるほど,開発途上国 はアクセス規制を厳しくしようとするであろ うが,途上国が規制を強めれば強めるほど,
先進国の資本はより規制の緩い国家に移動し ていくであろう。また,
CBD
第 15 条第2項 には,「締約国は,他の締約国が遺伝資源を 環境上適正に利用するために取得することを 容易にするような条件を整えるよう努力し,また,この条約の目的に反するような制限を 課さないよう努力する。」と規定されている が,特別の制度(
sui generis
制度)により 過大な規制を行うことは,「遺伝資源へのア クセスの容易化」及び「条約目的に反する制 限を課さない」という同条の規定に抵触する 可能性もある。よって,現在のところかなり 厳しい規制を行っている国についても,時間が経つにつれ,市場の原理等に従って見直し を余儀なくされるであろう。
4.国際的な制度(International Regime)
の構築
遺伝資源及び伝統的知識へのアクセス及び 利益配分に関しては,様々な議論が行われて きたが,2000 年5月 15 日〜 26 日に開催され た第5回締約国会議(
COP
5)では,アクセ ス及び利益配分に関するフレキシビリティー のある国際的ガイドラインの策定が決定さ れ60,その起草のための「遺伝資源へのアク セスと利益配分に関するアドホック・オープ ン エ ン ド 作 業 部 会 (Ad Hoc Open-ended Working Group on Access and Benefitshar- ing
)」(以下,「アクセス及び利益配分に関す る 作 業 部 会 」 と い う 。) が 設 置 さ れ た61。 2001 年 10 月には,ドイツのボンで第1回ア クセス及び利益配分に関する作業部会が開催 され,各国の専門家や政策担当者がガイドラ インの起草を行った。そして,翌 2002 年4月7日〜 16 日にオラ ンダのハーグで開催された第6回締約国会議
(
COP
6)において,各締約国が利益配分に 関する立法上,行政上又は政策上の措置を講 ずる際の指針となる「遺伝資源へのアクセス とその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な 配分に関するボン・ガイドライン(通称:ボ ン・ガイドライン)62」が採択された63。このボン・ガイドラインは
CBD
締結後の 最大の成果であるが,ボン・ガイドラインに は法的拘束力がないため,本ガイドラインの 採択直後から多くの開発途上国が法的拘束力 のある国際的な制度(International Regime
) の樹立を求め始めた。既にCBD
第6回締約 国会議(COP
6)に先立つ 2002 年2月 16 日〜18 日には,メガ・ダイバシティー・カント リーの中の開発途上国の環境大臣がメキシコ のカンクンで会合を持ち,「
Group of Like- minded Megadiverse Countries
」64を結成し ,遺伝資源等の原産国の正当な利益を守るため には,現在の国際条約等の枠組みでは限界が あることを指摘し,遺伝資源等の利用から生 ずる利益配分を確保するための国際的な制度 の設置を目指した事業等を推進することを規 定したカンクン宣言65を取りまとめている。
同宣言で例示されている国際的な制度として は,特許の出願及び付与の要件として,生物 素材の出所の開示,事前の同意,相互に同意 する条件での遺伝資源の移転を求めること等 が記載されている。
こうした開発途上国の主張に対し,日本や
EC
を含む先進国は,新たな国際的な制度の 創設は時期尚早で,まずは,ボン・ガイドラ インの成果について判断すべきであるとの立 場を堅持した。その後,2002 年8月 26 日〜9月4日に開 催されたヨハネスブルグ・サミットでは,
「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣 言 (
Johannesburg Declaration on Sustai- nable Development
)」とともに,アジェン ダ 21 の実施促進のための取組に関する合意 文書である「持続可能な開発に関する世界首 脳会議実施計画66」が採択されたが,このヨ ハネスブルグ・サミット実施計画のパラグラ フ 44 において,「(生物多様性)条約の3つ の目的をより効率的かつ一貫した形で実施す るためには,また,2010 年までに現在の生 物多様性損失速度を著しく減少させるために は,新たな又は追加的な資金及び技術資源を 開発途上国に提供する必要があり,またあら ゆるレベルにおける以下の行動が必要であ る。」と規定され,「国家の法律に従い,伝統 的知識,工夫及び慣行の所有者である地域及 び先住民コミュニティの権利を認め,これら 知識,工夫及び慣行の所有者の承認と参加に より,相互が同意した条件に基づいて,これ らの知識,工夫及び慣行の利用のための利益 配分メカニズムを策定し,実施すること。」が必要であると明記された(パラグラフ 44 h)。また,「アクセスと利益配分に関する法
的,行政的又は政策的な措置及びアクセスと 利益配分のための相互に同意した条件下での 契約その他の取極めを締約国が策定及び起草 するための一助となるインプットとして,条 約に規定された遺伝資源へのアクセスとその 利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に 関するボン・ガイドラインの広範な実施と,
同ガイドラインに関する作業の継続を推進す る」(パラグラフl)67とともに,「ボン・ガ イドラインを念頭におき,遺伝資源の利用か ら生ずる利益の公正かつ衡平な配分を促進,
保護するための国際的な制度(
international regime
)について,CBD
の枠組み内で交渉 を行う」(パラグラフm)ことが盛り込まれ た68。このように,
CBD
に関連した国際的な制 度の構築を求める声が次第に高まってきてい るが,こうした国際的な制度を考える際には,①当該制度の範囲,②当該国際的制度の性質 が問題となる。①制度の範囲については,上 記のヨハネスブルグ・サミット実施計画には,
「ボン・ガイドラインを念頭におき,遺伝資 源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配 分を促進,保護するための国際的な制度につ いて,
CBD
の枠組み内で交渉を行う」〔強調 筆者〕とあり,伝統的知識には触れられてい ない。また,②当該国際的レジームの法的性質に ついては,上記パラグラフの起草過程で,ボ ン・ガイドラインに基づく法的拘束力のある 制度の構築を求める開発途上国に対し,あく まで非拘束的なものを求める先進国の意見が 対立した。当初は,[
a legally binding
][an
]international regime
となっており,a legally
binding
がブラケットに入った形で交渉が続けられていた。先進国から,
a legally binding
をa new and additional
へ変更することやin- ternational regime
をinternational arrange- ment
に変更すること等が提案されたが,最 終的にはa legally binding
を削除し,inter- national regime
を維持することで合意したという経緯がある69。
さらに,2003 年3月 17 日〜 20 日にカナダ のモントリオールで開催された生物多様性条 約多年次作業計画会合(
Open-ended Inter- Sessional Meeting on the Multi-Year Pro- gramme of Work for the Conference of the Parties
(COP
)to the Convention on Bio- logical Diversity
(CBD
) :MYPOW
) で も 国際的な制度の構築について議論が行われた。ここでも国際的な制度の法的性質に関しては,
ヨハネスブルグ・サミットと同様の意見の対 立が起こり,途上国が法的拘束力のある制度 を求めたのに対し,米国は,ヨハネスブル グ・サミットでは意図的に「
a legally bind- ing
」が削除されたことを指摘し,国際的な 制度は非拘束的なものであることを主張した。今後この国際的な制度の構築については,
2004 年2月に開催が予定されている
CBD
の 第7回締約国会議(COP
7)で議論が行われ るが,伝統的知識も国際的な制度において保 護される対象として,議論されることになっ ている70。COP
7 に先立って 2003 年 12 月1日〜5日に開催された第2回アクセス及び利益 配分に関する作業部会では,国際的な制度の 策定の是非や法的性質等に係る論点で意見が 対立し,結果としてコンセンサスの形成には 至らなかったため,多くのブラケット付きの 勧告が採択され,議論は
COP
7 へ先送りされ た71。5.まとめ
以上のように,遺伝資源及び伝統的知識に 係る知的財産権の問題については,今まさに 議論が進行中であり,早急に取り組まねばな らない大きな課題の一つである。こうした課 題を解決するために現在最も必要とされるの は,開発途上国,先進国,先住民及び地域コ ミュニティ間の相互理解の増進であろう。
よって,本プロジェクトでは,各国の政策担 当者,研究者及び実務家等との意見交換や共
同の検討を通じて認識を共有しつつ,伝統的 知識の保護の在り方を考える際の理論的及び 政策的視座を提供していきたいと考えている。
注
※本稿は,2003年 12月に九州大学大学院法学 府へ提出した博士論文の一部を基に,加筆及 び修正を加えたものである。
1 See Convention on Biological Diversity (June 5, 1992), UNEP Doc. UNEP/Bio.Div/
N7-INC.S/4, United Nations Treaty Series [hereinafter U.N.T.S.], Vol.1760, p.79.
一般に使用される生物多様性(Biodiversi- ty)という語は,「biological diversity」を縮 めた用語である。「生物の多様性」とは,す べての生物(陸上生態系,海洋その他の水界 生態系,これらが複合した生態系その他生息 又は生育の場のいかんを問わない。)の間の 変異性をいうものとし,種内の多様性,種間 の多様性及び生態系の多様性を含む(CBD 第2条)。
2 Climate Change Convention United Nations Framework Convention on Climate Change (May 9, 1992), U.N.T.S., Vol.1771, p.107. 気 候 変 動 枠 組 条 約 (UNFCCC) は , 気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこ ととならない水準において大気中の温室効果 ガスの濃度を安定化させることを究極の目的 とする条約で,1992年の地球サミットにおい て我が国を含む 155か国が署名,1994年3月 に発効している。
3 1996年のCOP3までは毎年開催されたが,
その後は隔年開催となっている。
4 See WIPO, Main Program 11: Global Intellectual Property Issues, at http://www.
wipo.org/documents/en/document/gov- body/wo_gb_ab/prg11.htm (last visited De- cember 14, 2003).
5 WIPO Secretariat, Intellectual Property Needs and Expectations of Traditional Knowledge Holders: WIPO Report on Fact- finding Missions (1998-1999), WIPO Pub- lication 768E/F/S (2001).
6 これに先立つ 1997年には,インドがWTO の貿易環境委員会(CTE)において出所開示 等を議題として初めて提案し,議論を呼んで いる。See The Relationship Between the TRIPS Agreement and the Convention on Biodiversity, Communication from Indi- an delegation, WTO Doc. WT/CTE/W/65
(September 29, 1997), paras. 7, 12-14and 16; Committee on Trade and Environment, Report of Meeting Held on 22-24Septem- ber 1997, WTO Doc. WTE/CTE/M/15 (No- vember 20, 1997).
7 Protection of Biological and Genetic Resources, Proposal by the Delegation of Colombia, WIPO Doc. WIPO/SCP/3/10(Sep- tember 8, 1999).
8 コロンビア提案を支持した国は,ボリビア,
パラグアイ,中国,ナミビア,カメルーン,
メキシコ,南アフリカ,チリ,キューバ,イ ンド,ケニア,コスタリカ,及びバルバドス である。これに対し,ドイツ,米国,日本,
フランス,韓国,ルーマニア及びフィンラン ド(EC及びその加盟国の代表として発言)
は,同提案が実体法に関するものであり,手 続きの統一化及び簡素化を目的とするPLT 草案に規定するのは適切ではない等として反 対の意を表明した。SCP, Report of Third Session, Geneva, September 6to 14, 1999, WIPO Doc. SCP/3/11(September 14, 1999), paras. 202-209.
9 See Information Provided by WIPO Member States Concerning Provisions to Ensure the Recording of Some Contribu- tions to Inventions, WIPO Doc.
WIPO/IP/GR/00/3Rev.1(April 14, 2000).
10 See WIPO Doc. WIPO/IP/GR/00/4 (April 14, 2000). 本修正案は以下のような内容であ る。「発明が,遺伝資源及び/又は生物資源か ら得られた場合であって,その必要があると きには,締約国は,これらの資源へのアクセ スの合法性を証明する書面であって,関係国 内機関が発行したものの写しを国内特許庁に 提出することを求めることができる。」
本新提案は,すべての締約国に正当な遺伝 資源アクセス証明を求めることを義務付ける
(国際法上の義務とする)原案とは異なり,
希望する締約国がアクセス証明を要求するこ とを容認する(こうした国内法の規定をPLT 上容認する)という規定になっている。これ は,コロンビア等はアンデス共同体決定等の 下で,既に国内法で同種の規定をおいている ため,この規定がPLT参加の際の障害とな らないようにPLT上容認されるものである ことを明確にすることを意図したものであっ た。
11 See WIPO, Matters Concerning Intellec- tual Property and Genetic Resources, Traditional Knowledge and Folklore,
WIPO Doc. WO/GA/26/6 (August 25, 2000);
Report of the WIPO General Assembly, Twenty-Sixth (12th Extraordinary) Ses- sion, Geneva, September 25to October 3, 2000, WIPO Doc. WO/GA/26/10(October 3, 2000), para. 71.
12 遺伝資源及び伝統的知識の問題は,WIPO の他の交渉の場でも議題に挙がっている。
IGCの他にも,SCP,著作権及び隣接権に関 する常設委員会(SCCR),商標,意匠及び 地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT), 情報技術に関する常設委員会(SCIT)等が ある。
13 成果として,WIPO Inventory of TK-relat- ed Periodicals; WIPO Inventory of TK-relat- ed Databases等 が あ る 。See Progress Report on the Status of Traditional Knowledge as Prior Art, WIPO Doc.
IPO/GRTKF/IC/2/6(July 1, 2001); Inventory of Traditional Knowledge-related Period- icals, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/3/5 (April 30, 2002); Inventory of Existing Online Databases Containing Traditional Knowledge Documentation Data, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/3/6 (May 10, 2002);
Report on Electronic Database of Contrac- tual Practices and Clauses Relating to Intellectual Property, Access to Genetic Resources and Benefit-Sharing, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/4/10 (October 20, 2002); PCT Minimum Documentation, WIPO Doc. PCT/CTC/20/4 (August 27, 2002);
Report of PCT Committee for Technical Cooperation, Twentieth Session, Geneva, September 23 to October 1, 2002, WIPO Doc. PCT/CTC/20/5 (September 26, 2002);
PCT Minimum Documentation, WIPO Doc. PCT/MIA/7/3 (December 20, 2002);
Report of Meeting of International Authorities under the PCT, Seventh Ses- sion Geneva, February 10 to 14, 2003, WIPO Doc. PCT/MIA/7/5 (February 14, 2003).
14 WIPO, The Traditional Knowledge Por- tal of Online Databases, available at http://www.wipo.int/globalissues/databases/t kportal/index.html (last visited December 14, 200).
15 WIPO, Report on the Toolkit for Manag- ing Intellectual Property When Docu- menting Traditional Knowledge and
Genetic Resources, WIPO Doc. WIPO/
GRTKF/IC/5/5(April 1, 2003).
16 Special Union for the International Patent Classification (IPC Union), Report of Thir- ty-Second Session, WIPO Doc. IPC/CE/32/ 12(February 28, 2003), paras. 83-91. 国際特 許分類(IPC)についてはIPC改正のタスク フォースの中で検討が進められており,伝統 医薬植物に関し 2005年から適用される第8 版に約 200のサブグループをもつ新分類が追 加される予定になっている。
17 WIPO, Comparative Summary of Sui Generis Legislation for the Protection of Traditional Cultural Expressions, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/5/INF/3 (April 28, 2003).
18 WIPO, Database of Contractual Prac- tices and Clauses relating to Intellectual Property, Access to Genetic Resources and Benefit-sharing, at http://www.wipo.
int/tk/en/databases/contracts/index.html (last visited December 14, 2003).
19 Report of Fifth Session of the IGC, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/5/15(August 4, 2003), para. 130.
20 Id., para. 176.
21 Report of WIPO General Assembly, Thirtieth (16th Ordinary) Session, Gene- va, September 22to October 1, 2003, WIPO Doc. WO/GA/30/8 (October 1, 2003), paras.
56-97. 22 Id., para. 93.
23 日本も,1975年に物質特許,1979年に微 生物特許,1980 年代に遺伝子組換え特許,
1988年に動物特許を認める等,技術の発展と 共に保護対象を拡大してきた。
24 See Darrell A. Posey, Traditional Resource Rights: International Instru- ments for Protection and Compensation for Indigenous Peoples and Local Com- muni-ties(Gland: IUCN, 1996), p.17; Posey
& Graham Dutfield, Beyond Intellectual Property: Toward Traditional Resource Rights for Indigenous Peoples and Local Communities (Ottawa: International Deve- lopment Research Centre, 1996), pp.95-96. See also Dutfield, Can the TRIPS Agree- ment Protect Biological and Cultural Diversity?, Biopolicy International No.19 (Nairobi: ACTS Press, 1997), pp.39-40. 25 SeeGurdial S. Nijar, In Defence of Local
Community Knowledge and Biodiversity:
A Conceptual Framework and the Essen- tial Elements of a Rights Regime, Third Net-work Paper1 (Penang, Malaysia: TWN, 1996), pp.22-30.
26 See Vndana Shiva et al., The Enclosure and Recovery of the Common: Biodiversi- ty, Indigenous Knowledge and Intellectu- al Property Rights (New Delhi: Research Foundation for Science, Technology and Ecology, 1997), pp.163-174.
27 Intergovernmental Committee (IGC) on Intellectual Property and Genetic Resources, Traditional Knowledge and Folk- lore, Draft Report, WIPO Doc.
WIPO/GRTKF/1C/2/16(December 14, 2001), p.12, para. 29.
28 See Thomas Cottier, “The Protection of Genetic Resources and Traditional Knowl- edge: Towards a More Specific Rights and Obligations in World Trade Law,” Journal of International Economic Law, Vol.1 (1998), p.573.
29 The Crucible Group, People, Plants, and Patents: the Impact of Intellectual Proper- ty on Biodiversity, Conservation, Trade, and Rural Society (Ottawa: International Deve-lopment Research Centre, 1994).
30 Arvind Subramanian, “Genetic Resources, Biodiversity and Environmental Protection:
An Analysis, and Proposals toward a Solu- tion,” Journal of World Trade, Vol.26 (1992), p.105.
31 David R. Downes, “New Diplomacy for the Biodiversity Trade: Biodiversity, Biotechnol- ogy and Intellectual Property in the Conven- tion on Biological Diversity,”Touro Journal of Transnational Law, Vol.4 (1993), pp.
35-37.
32 See also, Srividhya Ragavan, “Protection of Traditional Knowledge,”Minnesota Intel- lectual Property Review, Vol.2(2001), p.1; Miriam Latorre Quinn, “Protection for Indigenous Knowledge: An International Law Analysis,” St. Thomas Law Review, Vol.14 (2001), p.287; David R. Downes,
“How Intellectual Property Could Be a Tool to Protect Traditional Knowledge,” Colum- bia Journal of Environmental Law, Vol.
25(2000), p.253.
33 See Proposals for an International
Regime on Access and Benefit-sharing, UNEP Doc. UNEP/CBD/MYPOW/6 (January 7, 2003), para. 10; UNEP-WCMC, Composite Report on the Status and Trends Regard- ing the Knowledge, Innovations and Practices of Indigenous and Local Com- munities Relevant to the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity, UNEP Doc. UNEP/CBD/WG8J/3/INF/1, Appendix 2(September 28, 2003), pp.50- 66; Kerry ten Kate & Sarah A. Laird, The Commercial Use of Biodiversity: Access to Genetic Resources and Benefit-sharing (London: Earthscan, 1999), p.4.
34 Executive Order No.247(May 18, 1995).
35 Ley de Biodiversidad, Ley No7788(30de abril de 1998).
36 The Biological Diversity Act, 2002, No.18 of 2003 (February 5, 2003), athttp://envfor.
nic.in/divisions/biodiv/act/bio_div_act.htm (last visited December 14, 2003). See also, Draft Biological Diversity Rules 2003, at http://envfor.nic.in/divisions/biodiv/biodiv/db dr2003-table.htm (last visited December 14, 2003).
37 Biodiversity Act to Benefit Bhutanese Farmers, KUENSEL (August 12, 2003), at http://www.kuenselonline.com/article.php?si d=3151(last visited December 14, 2003). 38 Uday Sharma, “Draft Bill on Access to
Genetic Resources and Benefit Sharing in the Context of Implementing CBD in Nepal,”at http://www.iucnnepal.org/ Divi- sion/Setlpu/EnvLaw/pdf/Dr.%20U.%20R.%20 Sharma.PDF (last visited December 14, 2003).
39 様々な国の特別の制度(sui generis制度)
を比較したものとして,例えばGraham Dut- field, Developing and Implementing National Systems for Protecting Tradi- tional Knowledge: A Review of Experi- ences in Selected Developing Countries (Paper for UNCTAD Expert Meeting on Sys- tems and National Experiences for Protect- ing Traditional Knowledge, Innovations and Practices, Geneva, October 30-Novemver 1, 2000), at http://www.unctad.org/trade_env /docs/dutfield.pdf (last visited December 14, 2002) 及び林希一郎「生物遺伝資源アクセス と利益配分に関する途上国の国内法と国際 ルールの発展―生物多様性条約における利
益配分と知的財産―」所報第 41号(三菱 総合研究所,2003 年)160-199 頁等がある。
特に前者は各国法の起草過程を追い,先 住 民の参画の程度等について比較検討を加えて いる。
40 Environment Protection and Biodiversity Conservation Regulations 2000 (Statutory Rules 2000No.181as amended made under the Environment Protection and Biodiversi- ty Conservation Act 1999.) Environment Protection and Biodiversity Conservation Amendment Regulations 2003 (No.1) (Statutory Rule No.2003/354) (December 23, 2003).
41 ボリビア,コロンビア,エクアドル,ペ ルー及びベネズエラが共通レジームに対応し た国内法を整備している。
42 Decisión 486: Régimen Común sobre Propiedad Industrial, Publicada en Gaceta Oficial 600 (14 de septiembre de 2000), at http://www.comunidadandina.org/normati- va/dec/d486.HTM (last visited December 14, 2003).
43 さらに,現在,「伝統的知識の保護に関す る共通レジームに関する決定(Decisión rel- ativa a un Régimen Común sobre la Pro- tección de los Conocimientos Tradi- cionales)」を起草中であると報告されている。
See Documents submitted by the Member States of the Andean Community, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/1/11(May 1, 2001), para. 3.
44 Seethe draft text of the ASEAN Frame- work Agreement on Access to Biological and Genetic Resources (February 24, 2000), at http://216.15.202.3/docs/asean-access-2000- en.pdf (last visited December 14, 2002).
45 Central American Agreement on Access to Genetic Resources and Bio-chemicals and related Traditional Knowledge.
46 Indigenous Peoples Rights Act of 1997: IPRA (An Act To Recognize, Protect And Promote The Rights of Indigenous Cultural Communities/Indigenous Peoples, Creating a National Commission on Indigenous Peo- ples, Establishing Implementing Mecha- nisms, Appropriating Funds thereof, and for Other Purpose (Republic Act No.8371) (October 29, 1997)). この他に,1997年伝統 代 替 医 療 法 (Traditional and Alternative Medicine Act of 1997(TAMA) (Republic Act
No. 8423))もある。
47 フィリピンではこの他にも,現在「コミュ ニティの知的権利保護制度構築等関連法案」
が議会で審議されている。An Act Providing for the Establishment of a System of Com- munity Intellectual Rights Protection and for Other Purposes (HBN 2714).
48 SeeMedida Provisória No2.186-16, Regula- menta o inciso II do §1oe o §4odo art. 225 da Constituição, os arts. 1o, 8o, alínea “j”, 10, alínea “c”, 15 e 16, al neas 3 e 4 da Convenção sobre Diversidade Biolóica, dispõesobre o acesso ao patrimôio genéico, a proteção e o acesso ao conhecimento tradi- cional associado, a repartição de benefíos e o acesso átecnologia e transferêcia de tec- nologia para sua conservação e utilização, e dá outras providêPcias (23 de agosto de 2001) (antiga Medida Provisóia No2.052), at http://www.planalto.gov.br/ccivil/mpv/2186- 16.htm (last vsited December 14, 2003). ブラ ジルは 2000年6月 29日に暫定措置第2.052 号(Medida Provisóia No2.052)を制定,さ らに 2001年8月 23日にこれを改定した(暫 定 措 置 第 2.186-16号 (Medida Provisóia No 2.186-16))。また州法レベルでも,遺伝資源 へのアクセスについて規定したアクレ州法
(Acesso a Recursos Genéticos: Lei Estadual No1235(9de Julho de 1997), Publicada no Diário Oficial do Estado do Acre de No7.608 A (10de Julho de 1997))及び生物多様性へ のアクセス規制を定めたアマパ州法(State of Amapá Lei No 0388/97, Dispõe sobre os instrumentos de controle do acesso àbiodi- versidade do estado do Amapá e dáoutras providêcias) (1de Janeiro de 1997) がある。
49 Protection and Promotion of Thai Tradi- tional Medicine Intelligence Act of 1999. こ の他に,関連する法律として 1999年植物・
植物品種保護法(Plant and Plant Varieties Protection Act of 1999)もある。
50 Ley No 20, Del régimen especial de propiedad intellectual, sobre los derechos colectivos de los pueblos indígenas, para la protección y defensa de su identidad cultur- al y de sus conocimientos tradicionales, y se dictan otras disposiciones, Gaceta Oficial, No 24,083(26de junio de 2000).
51 Ley No 27811, Ley que establece el Régimen de Protección de los Conocimien- tos Colectivos de los Pueblos Indígenas vin-
culados a los Recursos Biológicos (publicada en el Diario Oficial “El Peruano” el 10 de agosto de 2002). ペルー法制定の経緯等につ い て は ,Manuel Ruiz, Protecting Indige- nous Peoples Knowledge: A Policy and Legislative Perspective from Peru, Policy and Environmental Law Series, SPDA, No. 2 (May, 1999).
52 Decreto-Lei n.o118/2002, DR 93, I-A Série de 2002.04.20, Conselho de Ministros.
53 マレーシアは 13州(マレー半島部の 11州,
北ボルネオのサバ州,サラワク州)と連邦直 轄区(クアラ・ルンプール,ラブアン,プト ラジャヤ)よりなる連邦国家であるが,マ レーシアの中でもサバ州,サラワク州は特に 生物多様性が高く固有種が多いと言われてい る。
54 The Sarawak Biodiversity (Access, Collec- tion and Research) Regulations, 1998. この 規則は,サラワク州法第 24号 1997年サラワ ク生物多様性センター法の第 35条第1項に 基づき制定された。サラワク生物多様性セン タ ー 法 は , 1997 年 11 月 27 日 に 公 布 さ れ , 1998年1月1日から施行されている。同法は,
生物多様性評議会及び生物多様性センターの 設立,サラワクの生物資源に関わる研究許可 申請書,サラワクの生物資源に関わる研究契 約及び研究許可証等について規定している。
55 OAU, The African Model Legislation for the Protection of Rights of Local Communi- ties, Farmers, Breeders and for the Regula- tion of Access to Biological Resources, at http://216.15.202.3/docs/oua-modellaw-2000- en.doc (last visited December 14, 2003); J.
A. Ekpere, OAU Model Law: African Model Legislation for the Protection of the Right of Local Communities, Farmers and Breeders, and for the Regulation of Access to Biological Resources (Geneva: October 30-Nov. 1, 2000), at http://www.unctad.org/
trade_env/docs/oaulaw.pdf (last visited De- cember 14, 2003). このモデル法は,1998年 6月にOAUの閣僚理事会において採択され,
2000年にアルジェリアで行われた貿易に関す るOAU閣僚会議においても承認されている。
See Submission by the African Group, WIPO Doc. WIPO/GRTKF/IC/1/10 (May 1, 2001); J. A. Ekpere, The OAU’s Model Law, The Protection of the Rights of Local Com- munities, Farmers and Breeders, and for the Regulation of Access to Biological
Resources- An Explanatory Booklet (Lagos: Organization of African Unity, 2001).
56 オーストラリア,ニュージーランド,パプ アニューギニア,フィジー,サモア,ソロモ ン諸島,ヴァヌアツ,トンガ,ナウル,キリ バス,トゥヴァル,ミクロネシア連邦,マー シャル諸島,パラオ,クック諸島,ニウエ
(現在16か国・地域)。
57 Model Law for the Protection of Tradition- al Knowledge and Expression of Culture, 2002.
58 伝統的知識又は文化表現に係る毀損行為に は,伝統的所有者の名誉若しくは評価又は伝 統的知識若しくは文化表現の完全性を害する ことになる伝統的知識又は文化表現の実質的 な歪曲,切除又は改変を生じさせる作為又は 不作為が含まれる(第4条)。
59 一方で,フィリピンを皮切りに開発途上国 等における国内法が多数整備され,これらの 国内法の下での各国の経験や意義が明らかに されてきたことにより,他国の成功や失敗を 学んだ上で,国内法を整備する国も出始めて いる。
60 COP5 Decision V/26, Access to Genetic Resources, at http://www.biodiv.org/deci- sions/default.aspx?lg=0&m=cop-05&d=26 (last visited December, 14, 2003).
61 COP5Decision V/26, id, para. 11.
62 Bonn Guidelines on Access to Genetic Resources and Fair and Equitable Shar- ing of the Benefits Arising out of their Utilization, UNEP Doc. UNEP/CBD/COP/6 /20(May 27, 2002), pp.253-269. ボンで起草 されたことにちなみ,ボン・ガイドラインと 名付けられた。
63 本ボン・ガイドラインには,知的財産に関 連する規定も盛り込まれている。例えば,遺 伝資源の利用者を管轄内に置く締約国は,知 的財産権の申請において原産国や先住民及び 地域コミュニティの伝統的知識,工夫及び慣 行の出所の開示を奨励する措置を執るよう要 請されている。その他,契約締結に際しては,
取得した特許権等を実施する義務や当事者の 合意によって実施権を許諾する義務を含める こと,貢献度に応じた知的財産権の共有の可 能性等を考慮すること等も盛り込まれている。
64 当初のGroup of Like-minded Megadiverse
Countriesは,ブラジル,中国,コロンビア,
コスタリカ,エクアドル,インド,インドネ シア,ケニア,メキシコ,ペルー,南アフリ カ,ベネズエラの 12か国。後にマレーシア,