著者 伊藤 敦規
図書名 世界のなかのアイヌ・アート. 山崎幸治, 伊藤敦規 編著.(先住民族アート・プロジェクト報告書)
開始ページ 137
終了ページ 155
出版年月日 2012‑03
URL http://hdl.handle.net/10502/00008566
先住 民の 知 的財産 と『 先 住 民の 知的 財産 問題 』 伊 藤敦 規
先住 民の知 的財産 と 『 先住民 の知的財産 問題』
伊藤敦規 ※
1.知 的 財 産 と 知 的 財 産 権
法 律 用 語 で は 、 家 具 や 宝 飾 品 と い っ た 動 産 や 、 土 地 や 建 築 物 と い っ た 不 動 産 な ど の 可 視 的 な モ ノ(有 体 物)を 有 体 財 産(corporeal property)と 呼 び 、 そ れ ら に 対 し て 市 民 に よ る 独 占 的 な 支 配 権 を 「物 権 」(real rights)と 呼 ん で い ま す 。 そ れ と は 別 に 、 学 術 論 文 、 美 術 作 品 、 音 楽 作 品 、 発 明 、 発 見 、 デ ザ イ ン 、 商 標 、 デ ー タ ベ ー ス 、 コ ン ピ ュ ー タ ー の プ ロ グ ラ ム な ど は 、 無 体 財 産(intangible property)と 称 さ れ 、 有 体 財 産 と は 区 別 さ れ て い ま す 。 法 律 上 で い う 財 産 の 指 示 範 囲 に は 、 有 体 財 産 だ け で は な く、 預 金 債 権 と し て の 預 貯 金 、 店 舗 の 賃 借 権 の よ
う な 債 権 や そ れ を 紙 に した 有 価 証 券 や 、 先 に 挙 げ た 美 術 作 品 や 信 用 や 技 術 や 発 明 や 発 見 や ノ ウ ハ ウ と い っ た 目 に 見 え な い 無 形 の 精 神 的 創 作 活 動 の 所 産 で 財 産 的 価 値 の あ る も の 、 つ ま り、 知 識 や 情 報 と い っ た 知 的 財 産(intellectual property)
も含 ま れ る の で す 。 こ う し た 知 的 財 産 を 保 護 す る 諸 権 利 を 知 的 所 有 権 、も し く は 、 よ り汎 用 性 の あ る 用 語 とな っ た 知 的 財 産 権(Intellectual Property Rights、 以 下 IPRsと 略 称)と い い 、 そ の 諸 権 利 を 保 護 す る 法 律 の 総 称 が 知 的 財 産 法 で す 。 IPRsに 関 す る 初 期 の 国 際 条 約 に は 、 著 作 権 の 国 際 的 な 保 護 を 目 的 と し て ス イ ス の ベ ル ン で1886年 に 締 結 し た 「文 学 的 及 び 美 術 的 著 作 物 の 保 護 に 関 す る ベ ル ヌ 条 約(以 下 、 ベ ル ヌ 条 約 と略 称)」 と、 工 業 所 有 権 の 国 際 的 保 護 を 目 的 と し て1883年 に パ リ で 締 結 し た 「工 業 所 有 権 の 保 護 に 関 す る パ リ 条 約(以 下 、 パ
リ 同 盟 条 約 と略 称)」 が あ り ま す 。 こ れ ら 二 っ の 国 際 事 務 局 は1892年 に 知 的 所 有 権 保 護 合 同 国 際 事 務 局 と し て 統 合 さ れ ま し た 。 さ ら に1970年 に は 知 的 財 産 に 関 す る 国 際 事 務 局 の 世 界 知 的 所 有 権 機 関(World Intellectual Property
ワイポ
Organization、 以 下WIPOと 略 称)へ と 発 展 解 消 し ま し た 。 国 際 連 合(以 下 、 国 連 と略 称)の 専 門 機 関 の 一・ つ とな っ たWIPOは 、 現 代 に お い てIPRsに 関 す る 包 括 的 で 国 際 的 な 協 議 を 行 う場 と し て 機 能 し て い ま す 。 そ し て 、 数 あ る 国 際 的 フ ォ ー ラ ム の 中 で も知 的 財 産 権 や 遺 伝 子 資 源 の 問 題 に つ い て 最 も専 門 的 か つ 包 括 的 な 検 討 を行 っ て い る の が 、WIPOの 下 部 組 織 の 一 つ の 「知 的 財 産 並 び に 遺 伝 資 源 、 伝 統 的 知 識 及 び フ ォ ー ク ロ ア に 関 す る政 府 間 委 員 会 」 で す 。
で はWIPOが 定 め るIPRsと は ど う い っ た 内 容 な の で し ょ う か 。1967年 の WIPO設 立 条 約 は 、 以 下 の8点 か ら 知 的 財 産 と そ れ ら に 関 す る 諸 権 利 のIPRsを 定 義 し て い ま す 。
※ い と う あ つ の り 札幌 市 出 身 。 国 立 民 族 学 博 物 館 文 化 資 源 研 究 セ ン
タ ー 助 教 。 専 門 は 社 会 人
類学 、 ア メ リカ先 住 民 研
究。 ア リ ゾ ナ州 や ニ ュ ー
メ キ シ コ州 の先 住 民 と共
に、 博 物 館 資 料 や ア ー ト
商 品 な ど に つ い て 、 知 的
財産 権 の 側 面 か ら協 働 管
理 の 実 践 的 研 究 を 行 っ て
い る。 論 文 に 「 博 物 館 標
本 資 料 の 情 報 と知 識 の協
働 管 理 に 向 け て 」 『国 立
民 族 学 博 物 館 研 究 報 告 』
35巻3号(2011年)、 「 協
働 作 品 と して の 『ホ ピ ・
ズ ニ 作 家 展 』」 岸 上 伸 啓
(編)『 北 ア メ リ カ先 住 民
の 社 会 経 済 開 発 』(み ん
ぱ く実 践 人 類 学 シ リー ズ
4巻)(2008年)な どが
あ る。
「 知 的 財 産 」 と は 下 記 に 関 す る諸 権 利 を 包 含 す る:
1.文 芸 、 美 術 お よ び 学 術 の 著 作 物 に 関 す る(創 作 者 の)権 利 2.実 演 家 の 実 演 、 レ コ ー ドお よ び 放 送 に 関 す る(表 現 者 の)権 利 3.人 間 の 活 動 の 全 て の 分 野 に お け る 発 明 に 関 す る(発 明 者 の)権 利 4.科 学 的 発 見 に 関 す る(発 見 者 の)権 利
5.意 匠 に 関 す る(制 作 者 の)権 利
6.商 標 、サ ー ビ ス マ ー ク お よ び 商 号 そ の 他 の 商 業 上 の 表 示 に 関 す る(事 業 者 の) 権 利
7.(知 的 財 産 権 者 が)ニ セ モ ノ な どの 不 正 競 争 に 対 す る保 護 を 受 け る権 利 8.お よ び 、 産 業 、 学 術 、 文 芸 、 美 術 の 分 野 で の 知 的 活 動 か ら 生 ず る他 の 全 て の 権 利
(WIPO設 立 条 約 第2条 第8節 、 番 号 と括 弧 は 筆 者 に よ る)
条 約 に 加 盟 した 国 家 の 法 制 度 に よ っ て 差 異 が 生 じ る も の の 、 例 え ぼ 今 日 の 日 本 に お い て は 、IPRsは い くつ か の 法 律 で 保 護 さ れ る 以 下 に 列 挙 す る6つ の 権 利 の 総 称 とい う こ と に な り ま す 。
① 著 作 権(copyright)
文 芸 ・美 術 ・音 楽 ・学 術 な ど、 思 想 、 感 情 を 創 作 的 に 外 部 に 表 現 し た 創 作 者 が 有 す る 、 複 製 権 ・上 演 権 ・演 奏 権 ・頒 布 権 ・貸 与 権 ・翻 訳 権 と い う著 作 権 者 の 「 権 利 の 束 」 や 、著 作 者 人 格 権(公 表 権 ・ 氏 名 表 示 権 ・同 一1生保 持 権)、実 演 家(俳 優 、 歌 手 、 指 揮 者 、 演 出 家 、 監 督 な ど)と 放 送 事 業 者 な どの 権 利 で あ る 著 作 隣 接 権 を保 護 す る。
② 特 許 権(patent right)
技 術 の 進 歩 を 促 す た め 、 新 規 で 技 術 社 会 に 寄 与 貢 献 し、 産 業 上 利 用 し う る 発 明 を 社 会 に 開 示 す る 出 願 人 に 、 公 開 の 代 償 と し て 、 一 定 期 間 に 限 っ て 、 他 者 が 発 明 を 実 施 す る こ と を 禁 止 し う る権 利 を 保 護 す る。
③ 実 用 新 案 権(utility model right)
物 品 の 形 状 や 構 造 や そ れ ら の 組 合 せ の 考 案 を 対 象 と し た 、 創 作 者 の 独 占 権 を 保 護 す る 。
④ 意 匠 権(design right)
物 品 に つ い て 新 規 に 創 作 した 、 工 業 利 用 が 可 能 で 、 視 覚 を 通 じ て 美 感 を 起 こ さ せ る 審 美 的 創 作 物 の 意 匠 を 創 作 し た 者 に 与 え られ る独 占権 。
⑤ 商 標 権(trademark right)
事 業 者 が 製 作 し た 商 品 や サ ー ビ ス の 出 所 の 信 用 を 示 す 商 標 を 保 護 す る。
先 住民 の知 的 財産 と『 先住 民 の知 的財 産 問題 』 伊藤 敦規
⑥ 不 正 競 争 防 止 法(Unfair Competition Prevention Law)の 対 象 と な る ノ ウ ハ ウ を含 む 営 業 秘 密 を 保 護 す る 権 利 。
秘 密 と し て 管 理 さ れ て い る生 産 方 法 や 販 売 方 法 そ の 他 の 事 業 活 動 に 有 用 な 技 術 上 ま た は 営 業 上 の 情 報 で 、 か つ 公 然 と知 られ て い な い も の を 保 護 す る 。
上 記 し たWIPOの 定 義 に 照 ら し合 わ せ る と、 ① の 著 作 権 は1と2と8に 、 ② の 特 許 権 は3と8に 、 ③ の 実 用 新 案 権 は4と8に 、 ④ の 意 匠 権 は5と8に 、 ⑤ の 商 標 権 は6と8に 、 ⑥ の 不 正 競 争 防 止 法 で 保 護 さ れ る 権 利 が7と8に そ れ ぞ れ 該 当 し ま す 。 そ して 知 的 財 産 法 の 専 門 家 の 間 で は 、 これ ら の 諸 権 利 を 文 化 目 的 に 寄 与 す る① の 著 作 権 と、 産 業 目 的 に 寄 与 す る② 、 ③ 、 ④ 、 ⑤ 、 ⑥ か ら な る 工 業 所 有 権(industrial property right、 産 業 財 産 権 と も 呼 ば れ る)に 大 別 す る の が
一 般 的 と な っ て い ま す[小 野1998:8]
。
知 的 財 産 が 各 法 律 で 保 護 さ れ る と い う こ と は 、 各 国 の そ れ ぞ れ の 国 内 法 令 が 個 別 に 定 め る一・ 定 の 期 間 の 間 、創 作 者 が 複 製 す る権 利(使 用 権)を 占 有 で き る こ と、
つ ま り使 用 料 等 の 経 済 的 利 益 の 享 受 を 独 占 的 に 主 張 で き る こ と を 意 味 し ま す 。 法 に よ る保 護 期 間 の 間 は 、 創 作 者 が 知 的 財 産 を 独 占 的 に 使 用 で き る た め 、 第 三 者 に よ る 不 正 使 用 や そ れ に よ る 利 益 供 与 が 禁 止 さ れ る の で す 。 言 い 換 え れ ば 、 法 に
パブリソクトメイン
よ る 保 護 期 間 が 満 了 す る と、 創 作 者 が 独 占 的 に 行 使 で き る 知 的 財 産 は 公 共 領 域 (public domain)に 帰 す の で 、 第 三 者 に よ る 利 用 の 可 能 性 が 生 じ る の で す 。 さ て 、 知 的 財 産 が 国 際 的 に 協 議 さ れ て い っ た 一 つ の 背 景 と し て 、1980年 代 に
盛 ん に な っ た 日米 間 の 通 商 摩 擦 が あ り ま した 。 そ れ ま で の 個 々 の 日 米 間 の 通 商 摩 擦 は 、 日 本 が 輸 出 す る特 定 商 品 の 急 増 に 対 す る輸 出 自 主 規 制 要 請 と い う、 日本 企 業 の 対 米 キ ャ ッ チ ア ッ プ に 対 す る米 国 の 保 護 主 義 的 対 応 が 特 徴 的 で し た 。 そ の 後 1980年 代 に 入 る と、 防 衛 庁 の 次 期 支i援戦 闘 機i(FS‑X)の 開 発 な ど の 防 衛 関 連 技 術 の 双 方 交 流 問 題 を は じ め 、 半 導 体 や 光 フ ァ イ バ ー 製 造 技 術 とい っ た 日本 企 業 が 製 造 す る 特 定 ハ イ テ ク 商 品 の 正 当 な 評 価 や そ の 技 術 に 関 す る経 済 的 権 益 問 題 、 つ ま り工 業 所 有 権 の 帰 属 を め ぐ る 問 題 へ と焦 点 が 移 行 して い っ た の で す 。ロ ナ ル ド・
レ ー ガ ン政 権 下 の 米 国 は 、1988年 の 「 通 商 法 ス ー パ ー301条 」 の 制 定 や 同 年 の
「関 税 法337条 」 の 改 定 な ど に 代 表 さ れ る よ う に 、 国 内企 業 の技 術 開 発 強 化 努 力 を 奨 励 し ま した 。 ま た 、 特 許 専 門 の 裁 判 所 で あ る 連 邦 巡 回 控 訴 裁 判 所 を 設 立 した の も こ の 時 期 で した(1982年)。 米 国 は 行 政 と司 法 の 双 方 か ら 、 特 許 権 を保 護i強 化 す る プ ロ パ テ ン ト政 策 を 進 め て い っ た の で す[植 松1994:2‑5]。
加 え て 、 知 的 財 産 権 の 保 護 強 化 に 向 け た 政 策 的 動 向 に は 、 先 進 諸 国 に よ る途 上
国 諸 国 へ の 経 済 的 圧 力 とい う南 北 問 題 の 様 相 もみ ら れ ま す 。 知 的 財 産 を 争 点 とす
る 「 北 」 の 先 進 諸 国 と 「南 」 の 途 上 国 との 間 の 主 要 な 関 心 と い え ば 、 主 に途 上 国
内 で 行 わ れ るCDな どの 音 楽 著 作 物 や 、著 名 な ブ ラ ン ドの 商 標 が つ い た 製 造 物 や 、 プ ロ グ ラ ム 関 連 の ソ フ トウ ェ ア な ど の 模 倣 品 製 造 や そ の 輸 出 行 為 で し た 。 こ う し た 動 き に 対 し て 、 オ リ ジ ナ ル を 製 造 す る先 進 諸 国 の 企 業 や フ ラ ン ス の ユ ニ オ ン ・ デ ・フ ァ ブ リ カ ン な どの 業 界 団 体 ら が ロ ビ ー 活 動 を 展 開 し、 そ れ を 受 け た 先 進 諸
ガ ツ ト
国 政 府 は 「関 税 お よ び 貿 易 に 関 す る 一 般 協 定(以 下 、GATTと 略 称)」 や 「知 的 トリプス
所 有 権 の 貿 易 関 連 の 側 面 に 関 す る協 定(以 下 、TRIPS協 定 と略 称)」 の 違 反 と して 、 国 際 司 法 の 場 で こ う し た 問 題 を 指 摘 し た り、IPRsの 保 護 強 化 を 関 係 途 上 国 諸 政 府 機 関 に 要 請 ・交 渉 す る 政 策 を とっ て き た の で し た 。
ち な み に 近 年 の 日 本 国 政 府 の 知 的 財 産 戦 略 に つ い て み て み る と、 製 造 面 に お い て 急 成 長 を み せ る 発 展 途 上 国 の 技 術 力 や 価 格 競 争 力 に 対 応 す る た め に 、1996年
12月 に 「21世 紀 の 知 的 財 産 権 を 考 え る 懇 談 会 」 が 発 足 し た の を 皮 切 り に 、 小 泉 純 一一 郎 政 権 の 下 で2002年2月 に 首 相 直 属 の 知 的 財 産 戦 略 会 議 が 設 立 さ れ 、 翌 2003年 に は 通 称 「 知 的 財 産 戦 略 本 部 」 と して 知 られ て い る 知 的 財 産 基 本 法 施 行 ・ 知 的 財 産 戦 略 本 部 が 内 閣 官 房 下 に 発 足 し た こ と が 記 憶 に 新 し い と思 わ れ ま す1)。
今 日 、 知 的 財 産 立 国 を 目 指 す 国 家 は 、 途 上 国 な ど他 国 に よ る 知 的 財 産 の 不 正 使 用 を 防 ぎ 、 自 国 の 産 業 を 保 護 ・促 進 す る こ とで 将 来 的 な 国 益 を 確 保 す る た め に 、 以 前 に も増 してIPRsの 国 際 的 保 護 に 注 口 す る よ う に な っ て き て い ま す 。
2.先 住 民 の 知 的 財 産 と 「先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」
IPRsに 関 す る 各 国 政 府 の 主 た る政 策 は 、 近 年 経 済 的 価 値 の 重 要 性 が 増 大 し て い く知 的 財 産 に 関 連 す る 国 内 企 業 の 産 業 育 成 とい う経 済 保 護 政 策 と の 関 わ りが 強 い と い え る で し ょ う。 そ の た めIPRsの 国 際 的 な 議 論 は 、 上 記 し た よ う に 通 商 摩 擦 の 側 面 に 関 連 す る 内 容 が 多 く を 占 め て い て 、 結 果 と し て 工 業 所 有 権 の 特 許 権 の 帰 属 を 争 点 と した 係 争 や 協 議 が 目 立 ち ま す 。 しか し な が ら 、 一 般 的 な 知 的 財 産 問 題 に 対 す る、 「先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 とい う先 住 民 の 伝 統 的 知 識(Indigenous Traditional Knowledge)の 法 的 保 護 に 関 す る 問 題 系 も存 在 して い て 、 世 界 貿 易 機 構(以 下 、WTOと 略 称)や 国 連 や 国 連 の 専 門 機 関 で あ るWIPOな どの 国 家 間 協 議 の 場 で 同 時 並 行 的 に 活 発 に 議 論 さ れ る よ う に な っ て い ま す 。 以 下 で は 、 関 連 国 際 機 関 に お け る議 論 の 推 移 と そ こ で 争 点 と な る 諸 項 目 を 整 理 す る こ とで 、 「先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 な らで は の 特 徴 を 明 らか に し て み た い と思 い ま す 。
(1)「 伝 統 的 知 識 」 と 「 先 住 民 の 知 的 財 産 」
2010年10月 に 愛 知 県 名 古 屋 市 に て 生 物 多 様 性 条 約 第10回 締 約 国 会 議i(通 称
コ ソプ リテ ン
COPIO)が 開 催 さ れ ま し た 。 そ の 議 題 の 一・ つ は 、 先 住 民 居 住 地 か ら 採 取 さ れ る 遺 伝 子 資 源 に 関 す る 問 題 で し た2)。 「 先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 と は 、 下 記 に 詳 し
1)
知 的 財 産 戦 略 本 部 は 、 知 的 財 産 基 本 法(2002年 法 律 第122号)の 制 定 ・ 施 行 に よ っ て 設 置 さ れ た 、 本 部長 を 内 閣 総 理 大 臣 とす る政 策 会 議 の こ と で す[首 相 官 邸]。
2)
詳 細 は 細 川 の 連 載 記 事 を 参 照
[ 糸出 月12009a、 2009b、
2009c, 2009d, 2009e, 2009f, 2010a, 2010b, 2010c, 2010d, 2010e, 2010f, 20108, 2010h, 2010i, 2011]o
先 住 民の 知 的財産 と『 先住 民 の知 的 財産 問題 』 伊藤 敦規
3)
先 住 性 を 有 さ な い も の の 、 強 制 移 住 な ど に よ っ て 故 地 を 離 れ た 後 に 長 年 に 渡 っ て 独 自 の コ ミ ュ ニ テ ィ を 形 成 し て き た 、 カ リ ブ 海 地 域 の ア フ リ カ 系 住 民 や 、 米 国 ペ ン シ ル バ ニ ア 州 の ア ー ミ ッ シ ュ 、 ミ シ シ ッ ピ 海 岸 の ベ トナ ム 系 漁 民 、 ブ ラ ジ ル の ヨ ー ロ ッ パ 系 と の 混 血 で あ る カ ボ ク ロ ス (Caboclos)な ど は 、 「伝 統 的 コ ミ ュ ニ テ ィ 」 と 呼 ば れ る こ と も あ り、 彼 ら のTCEsも 法 的 保 護 に 向 け た 対 象 と な る 場 合
も あ り ま す[TORSEN and ANDERSON 2010 Note 12]o
4)
国 連 経 済 社 会 理 事 会 は 1982年 に 「差 別 防 止 ・ 少 数 者 保 護 小 委 員 会(人 権 小 委 員 会 と しば し略 称 さ れ る)を 設 置 し、 同 小 委 員 会 は1999年 に 人 権 促 進 保 護 小 委 員 会 に 改 称 し ま し た。 先 住 民 作 業 部 会 は 、 この 小 委 員 会 の 中 の … つ の部 会 で す。
く記 す バ イ オ ・パ イ ラ シ ー(生 物 遺 伝 子 資 源 へ の 海 賊 行 為)や 、 フ ォ ー ク ロ ア の 表 現(Expressions of Folklore、 以 下EoFと 略 称)も し く は 伝 統 的 文 化 の 表 現 (Traditional Cultural Expressions、 以 下TCEsと 略 称)の 第 三 者 に よ る 不 正 使 用 な ど の 問 題 視 さ れ る行 為 の こ と を 指 す 場 合 と3)、 先 住 民 に よ る伝 統 的 知 識 へ の ア ク セ ス 権 や 慣 習 法 に 基 づ い た 管 理 方 法 と い っ た 先 住 民 が 集 団 的 に 保 持 す る諸 権 利 に つ い て 、 現 行 知 的 財 産 法 制 との 整 合 性 を 検 討 した り、 国 際 的 な 枠 組 み に お い て 法 整 備 を 進 め て 保 護 の 実 現 を 目指 す 一連 の 議 論 を 指 す 場 合 とが あ り ま す 。 ま ず 、 「 先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 の 文 脈 で 頻 繁 に 登 場 す る 「 伝 統 的 知 識 」 と い
う用 語 の 指 示 範 囲 に つ い て 簡 単 に 紹 介 し ま す 。 こ こ で い う 先 住 民 の 伝 統 的 知 識 は 、 対 象 を ど の よ う に 設 定 す る か に よ っ て 、 し ば し ば 、 狭 義 ・広 義 ・よ り広 義 の 伝 統 的 知 識 と し て3類 型 さ れ ま す 。 分 類 を 行 っ た の は 、 国 連 人 権 委 員 会(通 称UNHCHR)の 先 住 民 作 業 部 会 の エ リ カ ・イ レ ー ヌ ・ ダ エ ス(Daes, Erica‑
Irene)議 長(当 時)で し た4)。 彼 女 は 、① 狭 義 の 伝 統 的 知 識 を 「自然 との 密 接 な 関 わ りの 中 で 集 団 に よ っ て 世 代 を 越 え て 培 わ れ た 農 業 的 知 識 、 科 学 的 知 識 、 技 術 的 知 識 、 生 態 学 的 知 識 、 医 学 的 知 識 お よ び 生 物 多 様 性 関 連 知 識 等 の 総 体 」 と し、
② 広 義 の 伝 統 的 知 識 を 、 「狭 義 の 伝 統 的 知 識 に 、EoF、 言 語 的 要 素(地 理 的 表 示)、
意 匠 、 動 産 文 化 財(美 術 工 芸 品 ・民 俗 資 料 ・歴 史 資 料)な ど を 加 え た も の 」、 そ し て ③ よ り広 義 の 伝 統 的 知 識 と し て 「 遺 産(広 義 の 伝 統 的 知 識 に 加 え 、 人 間 の 遺 体 及 び ゲ ノ ム 情 報 等)、 聖 地 や 遺 跡 ・史 跡 お よ び 埋 葬 地 の よ う な 不 動 文 化 財,先 住 民 の 生 活 を 記 録 し た 写 真 や 映 画 等 の 民 族 誌 的 記 録 物 」 と分 類 し た の で す 。 EoFの 不 正 使 用 に 関 す る 法 的 保 護 に 限 定 し て み る と、 既 に1967年 の ベ ル ヌ 条 約 の 改 訂 に 向 け た ス ト ッ ク ホ ル ム 外 交 会 議 に お い て 、 現 行 著 作 権 法 に 基 づ く 保 護 の 可 能 性 の 可 否 が 議 論 さ れ ま し た 。 そ の 後1970年 代 後 半 に な る と、 不 正 使 用 さ れ る の は 多 く が そ の 国 外 で あ る た め に 国 内 法 の み で の 対 応 が 十 分 で は な い と し て 、 新 た な 特 別 立 法 の 制 定 に よ る 保 護 がWIPOで 協 議 さ れ て い く こ と に な り ま し た 。 そ の 流 れ に お い て1982年 の 「不 正 利 用 及 び そ の 他 の 侵 害 行 為 か ら フ ォ ー ク ロ ア の 表 現 を 保 護 す る 各 国 国 内(立)法 の た め の モ デ ル 規 定 」
ユ ネ ス コ
(WIPO‑UNESCOモ デ ル 法 令)が 検 討 さ れ 、 さ ら に1994年 に は 、 国 連 の 先 住 民
に 関 す る 作 業 部 会 が 「 先 住 民 の 権 利 宣 言 原 案 」 を 提 出 し ま した 。 そ の 後 ダ エ ス は 、
1998年7月 に 開 催 し たWIPOの 第 一 回 「 知 的 財 産 と先 住 民 会 議 」の 基 調 演 説 に て 、
生 物 多 様 性 、EoF、伝 統 的 知 識 の 法 的 保 護 を 「 先 住 民 の 知 的 財 産 」 の 問 題 と ま とめ 、
以 後 様 々 な 国 家 間 協 議 の 場 で 議 論 さ れ る 際 に 「 先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 と総 称 さ
れ る こ とが 多 くな っ た の で す[高 倉2000:659]。 さ ら に 、 国 連 教 育 科 学 文 化 機
関(通 称UNESCO)は 、2003年 に 「無 形 文 化 遺 産 の 保 護 に 関 す る 条 約 」(2006
年 発 効)を 採 択 し、2005年 に は 「文 化 的 表 現 の 多 様 性 の 保 護 及 び 促 進 に 関 す る
条 約 」(2007年 発 効)を 採 択 し て 、EoFの 国 際 的 保 護 に 向 け た 取 り組 み を 実 行 し て い ま す 。
そ し て 、 「先 住 民 の 知 的 財 産 」 に 関 す る 権 利 の 範 囲 は 、2007年9月 に 国 連 が 採 択 した 「先 住 民 族 の 権 利 に 関 す る 国 際 連 合 宣 言 」 の 、 文 化 や 宗 教 や 歴 史 な どの 権 利 に つ い て 規 定 した 第ll条 、 第12条 、 第13条 、 第31条 に お い て 、 国 家 が
と る べ き 措 置 と と も に 明 記 さ れ る こ と に な っ た の で す 。
第ll条
1.先 住 民族 は、 その文化 的 な伝統及 び慣 習 を実践 し、及 び再活性 化 させ る 権利 を有 す る。 これ には、考 古学的及 び歴史 的な場所、工芸 品、意匠、儀 式、
技術並 び に視覚 的及 び舞 台的芸術並 び に文学 の よ うな、 自己の文化 の過 去、
現在及 び未 来の表現 を維持 し、保 護 し、及 び発展 させ る権利 が含 まれ る。
2.国 は、 先住 民族 の 自由で 事前 の及 び事情 を了承 した上 で の同意 な しに、
又 はその法、伝 統及 び慣 習 に反 して奪 われた先 住民族 の文 化 的、 知 的、宗 教 的及 び精神 的財産 につ いて は、先住 民族 と協 力 して設 けた、原状 回復 を 含 む、効 果的 な仕組 み による救済 を行 わな けれ ばな らない。
第12条
1.先 住民族 は、その精神 的及 び宗教 的な伝 統、 慣 習及 び儀式 を表現 し、 実践 し、
発展 させ、及 び教 育す る権 利、 その宗教 的及 び文化 的 な場所 を維 持 し、保 護 し及 び干 渉 を受 け るこ とな く立 ち入 る権 利、儀 式用 具 の使 用及 び管理 の 権 利並 びにその遺体及 び遺骨 の返還 に対す る権利 を有す る。
2.国 は、 関係 す る先住 民族 と協 力 して設 けた公 正で透 明か つ効果 的 な措 置 によって、 国が保 有す る儀 式用 具並 び に その遺 体及 び遺骨 へ の アクセス並 び に/又 は返還 を可能 にす るよう努 め なけれ ばな らない。
第13条
1.先 住 民族 は、 その歴 史、言 語、 口承伝 統、哲 学、表 記方 法及 び文学 を再 活性 化 し、使 用 し、 発展 させ 、及 び未来 の世代 に伝達 し、 並 び に共 同体、
場所及 び人 にその固有 の名称 を付 し、及 び継続 的に使用 す る権 利 を有 す る。
2.国 は、 この権利 が保 障 され る こ とを確 保 す るた め、 また、必 要 な場 合 に は通 訳 の提供 又 は その他 の適 当 な手 段 に よって、先 住民族 が政 治 的,法 的 及 び 行 政 的 手 続 を理 解 し、 及 び そ れ らの 手 続 に お い て 理 解 さ れ る こ とを確 保 す るため、効果 的な措 置 を とらな ければな らない。
第31条
1.先 住民族 は、 その文化 財、 伝統 的知識 及 び伝統 的 な文化 的表 現並 び に人
間や その他 の遺伝物 質、 種子 、薬 品、 動植物 の特 性 につ いて の知 識、 口承
「
先住 民 の知 的 財産 と『 先住 民 の知 的財 産 問題 』 伊藤 敦規
伝 統 、 文 学 、 意 匠 、 ス ポ ー ツ と伝 統 的 競 技 並 び に 視 覚 的 及 び 舞 台 的 芸 術 を 含 む 自 己 の 科 学 、 技 術 及 び 文 化 の 表 現 を 維 持 し、 管 理 し、 保 護 し、 及 び 発 展 さ せ る 権 利 を 有 す る 。 ま た 、 先 住 民 族 は 、 こ の 文 化 財 、 伝 統 的 知 識 及 び 伝 統 的 な 文 化 的 表 現 に 係 る 知 的 財 産 を 維 持 し、 管 理 し、 保 護 し、 及 び 発 展 させ る権 利 を 有 す る。
2.国 は 、 先 住 民 族 と協 力 し て 、 こ れ ら の 権 利 の 行 使 を 承 認 し 、 及 び 保 護 す る た め 、 効 果 的 な 措 置 を と ら な け れ ば な ら な い 。
[北 海 道 大 学 ア イ ヌ ・先 住 民 研 究 セ ン タ ー 訳2008]
5)
バ イ オ ・パ イ ラ シ ー の 具 体例 と、 諸 国 際 機 関 に お け る議 論 の 詳 細 は、 田 ヒ を参 照[田r̲2008]。
(2)バ イ オ ・パ イ ラ シ ー と そ の 対 応
「 先 住 民 の 知 的 財 産 」の 「不 正 使 用 」に 関 す る 問 題 の 概 要 を 把 握 す る た め 、バ イ オ ・ パ イ ラ シ ー とEoFも し く はTCEsの 不 正 使 用 の 具 体 例 を 紹 介 し て お くの が 有 益 だ と思 わ れ ま す 。 バ イ オ ・パ イ ラ シ ー とは 、 先 進 国 企 業 が 生 物 多 様 性(biological diversity)の 豊 富 な 先 住 民 の 居 住 地 域 に 押 し寄 せ(グ リ ー ン ・ラ ッ シ ュ)、 先 住 民 や 先 住 民 を 包 含 す る 国 家 か ら許 可 を 得 ず に伝 統 的 医 療 の 知 識 な ど を 国 外 に 持 ち 出 し、 主 に 先 進 国 内 で 製 薬 特 許 を 取 得 し て 、 製 薬 か ら発 生 す る 商 業 的 利 益 を 先 住 民 に 分 配 せ ず に 特 許 取 得 企 業 が 独 占 す る 行 為 の こ と を い い ま す 。
こ の 問 題 に つ い て 、 イ ン ド 出 身 の 科 学 者 で 環 境 活 動 家 の ヴ ァ ン ダ ナ ・シ ヴ ァ (Vandana Shiva)や 、 カ ナ ダ を 本 拠 地 と す る 国 際NGOの 農 村 生 活 向 上 国 際 基 金(通 称RAFI)ら が 非 難 を 行 っ た こ と が 一 つ の き っ か け と な っ て 、 一 般 に 地 球 サ ミ ッ ト と呼 ば れ る1992年 に リ オ デ ジ ャ ネ イ ロ で 開 催 さ れ た 「環 境 と 開 発 に 関 す る 国 際 連 合 会 議(通 称UNCED)」 に お い て 、 先 住 民 の 伝 統 的 知 識 の 保 護 や 、 特 許 申 請 と製 品 化 に よ る 商 業 的 利 益 配 分 に つ い て 定 め た 生 物 多 様 性 条 約 (Convention on Biological Diversity、 以 下CBDと 略 称)の 締 結 に 向 け た 道 筋 が 整 い 、CBDは 翌 年 の1993年 に 発 効 し ま し た[大 澤2002a:1]5)。 ま た 、 国 連 食 糧 農 業 機i関(通 称FAO)は 、2001年 に 「 食 料 及 び 農 業 に 用 い ら れ る 植 物 遺 伝 資 源 に 関 す る 条 約 」 を 採 択 し、2004年 に 発 効 し て い ま す 。
(3)EoFの 不 正 利 用 と そ の 対 応
続 い てEoFも し く はTCEsの 具 体 的 な 紹 介 を し ま す 。 そ の 前 に こ の 文 脈 に お
け る 「フ ォ ー ク ロ ア 」 の 定 義 を み て み ま し ょ う。WIPOは そ れ を 、 「『民 間 伝 承 』
や 『民 族 文 化 財 』 な ど と呼 ば れ る も の で あ り、 あ る社 会 の 構 成 員 が 共 有 す る文 化
的 資 産 で あ る伝 承 の 文 化 表 現 を 意 味 す る。 具 体 的 に は 、 民 族 特 有 の 絵 画 、 彫 刻 、
モ ザ イ ク 等 の 有 形 な もの の ほ か 、 歌 、 音 楽 、 踊 り等 の 無 形 の も の も 含 まれ る 」 と
定 義 し て い ま す[文 化 審 議 会 著 作 権 分 科 会2006]。
さ ら に 、 先 に 挙 げ たWIPOのIGCに 関 し て 日本 の 担 当 窓 口 と な っ て い る 文 化 庁 文 化 審 議 会 著 作 権 分 科 会 に よ れ ば 、 諸 国 際 機 関 に お い て 議 論 さ れ て い る 先 住 民 等 のEoFも し くはTCEsの 不 正 利 用 と は 、 特 定 の コ ミ ュ ニ テ ィ に お い て 伝 承 さ れ て き た 、 コ ミ ュ ニ テ ィ に と っ て 精 神 的 価 値 の 高 い 儀 式 や 音 楽 や 美 術 工 芸 品 な ど が 、 コ ミ ュ ニ テ ィ成 員 以 外 の 者 に よ っ て 大 量 生 産 さ れ た り、 コ ミ ュ ニ テ ィ 内 に お け る あ るべ き 利 用 形 態 を 越 え た 「不 適 切 」 な ア レ ン ジ に よ っ て 第 三 者 に 公 開 さ れ た り、 そ も そ も コ ミ ュ ニ テ ィ に と っ て 門 外 不 出 の 内 容 で あ っ た りす る聖 物 や 儀 礼 の 様 子 な ど が 公 開 さ れ る こ と に よ っ て 、 そ れ ら の 伝 統 的 な 価 値 が 損 な わ れ た り、
コ ミ ュ ニ テ ィ に と っ て の 尊 厳 を 傷 つ け る結 果 に つ な が る こ との 懸 念 の こ と を い い ま す[文 化 審 議 会 著 作 権 分 科 会2006]。 こ の 定 義 や 説 明 か ら は 、 先 住 民 の 文 化 の 商 品 化 や 慣 習 法 に 基 づ く秘 匿 陸 と密 接 に 関 連 す る 問 題 で あ る こ とが 理 解 で き ま す 。
で は 具 体 的 に 、EoFも し く はTCEsの 不 正 使 用 の 事 例 を み て み ま し ょ う。 以 下 で は オ ー ス トラ リ ア の 先 住 民 で あ る ア ボ リ ジ ニ の 裁 判 事 例 を 中 心 に い くつ か 挙 げ て み ま す 。 一 つ は 、「ユ ン ブ ル ル 対 オ ー ス トラ リ ア 準 備 銀 行 事 件 」 で す 。1988年 、 オ ー ス ト ラ リ ア 準 備 銀 行 は 、 オ ー ス ト ラ リ ア 建 国200周 年 を 記 念 し た10豪 ドル 紙 幣 の デ ザ イ ン と して 、 北 部 ア ー ネ ム ラ ン ド出 身 の テ リ ー ・ユ ン ブ ル ル が 儀 礼 具 と して 制 作 し た モ ー ニ ン グ ・ス タ ー ・ポ ー ル の イ メ ー ジ 画 像 を 採 用 し ま し た 。 こ の 紙 幣 は ポ リ マ ー 紙 幣 と い う合 成 樹 脂 が 素 材 と して 利 用 さ れ た た め 技 術 的 な 側 面 か ら注 目 さ れ る こ と に な っ た の で す が 、 デ ザ イ ン に 関 し て は制 作 者 と事 前 に 交 渉 す る こ と な く複 製 し ま し た 。 こ の 行 為 に 対 し て 制 作 者 の ユ ン ブ ル ル は 個 人 で 提 訴 し、 創 作 者 の 著 作 権 侵 害 が 認 め られ て 勝 訴 し ま し た[シ ャ ー マ ン と ワ イ ズ マ ン 2008:196, 207‑209]〇
二 つ 目 は 「ミル プ ル ル 対 イ ン ド フ ァ ー ン 事 件 」で す 。 ア ボ リ ジ ニ の 画 家 の ジ ョ ー ジ ・ミル プ ル ル ら先 住 民 ア ー テ ィ ス ト達 は 、ベ トナ ム の 工 場 で 製 造 さ れ た 後 に オ ー ス ト ラ リ ア に 逆 輸 入 さ れ て 販 売 さ れ た 絨 毯 に 、 事 前 の 問 い 合 わ せ な く 自分 た ち の 作 品 が 画 像 印 刷 と し て 複 製 さ れ た こ とに 対 し、 そ の 製 造 元 で あ る オ ー ス トラ リ ア の 企 業 を 相 手 取 っ て 集 団 訴 訟 を 起 こ し ま した 。 こ ち ら も 判 決 は 著 作 権 侵 害 が 認 め ら れ て 原 告 団 の 勝 訴 と な り ま した[青 柳2006:189‑190]。
三 っ 目 に 「ブ ル ン ブ ル ン 対R&Tテ キ ス タ イ ル 社 事 件 」 を 紹 介 し ま す 。 ア ボ リ ジ ニ の ア ー テ ィ ス トで あ り宗 教 的 指 導 者 で も あ る ジ ョニ ー ・ブ ル ン ブ ル ン が 制 作
した 『泉 の カ サ サ ギ ガ ン と睡 蓮 』 と題 し た 樹 皮 画 作 品 が 、 制 作 者 か ら 許 可 を 得
ず にTシ ャ ツ に 印 刷 して 販 売 し て い た こ と に 対 す る 訴 訟 で す 。 こ の 係 争 に つ い
て も 同 じ く原 告 勝 訴 と い う結 果 に な っ た の で す が 、 単 に 制 作 者 個 人 の 著 作 権 侵
害 が 認 め ら れ た だ け で は な く、 制 作 者 の ブ ル ン ブ ル ン が 属 す ガ ナ ル ピ ュ イ ン グ
6)
例 え ば、 ア ボ リ ジ ニ の ヨ ル ン グ の人 々 が 制 作 す る 樹 皮 画 な どの 美 術 工 芸 品 に描 か れ る 神 話 の デ ザ イ ンや 、 意 味 や 、 集 団 的 な 知 識 の 管 理 、 商 業 的 利 益 の 分 配 の 様 相 に つ い て は 、 窪 田 や シ ャ ー マ ン と ワ イ ズ マ ン を 参 照 [窪 田2007:190‑193;
シ ャー マ ン とワ イ ズ マ ン 2008]0
7)
ト イ ・ イ ホ は 美 術 工 芸 品 の 制 作 者 や 販 売 者 を 細 分 化 し て お り、 ① マ オ リ の 個 人 お よ び 集 団 に よ る 「 マ オ リ 製 (Maori made)」 、(月)主 に マ オ リ の ア ー テ ィ ス
ト を 多 く 含 む 集 団 制 作 製 で あ る 「主 に マ オ リ 製(Mainly Maori)」 、
② 「マ オ リ と 非 マ オ リ の 共 同 開 発(Maori Co‑
production)」 、 ③ 「ホ ン モ ノ 」 の マ オ リ ・ア ー ト を 取 り 扱 う 小 売 業 者 や ギ ャ ラ リ ー を 対 象 と し た
「マ オ リ ・ ア ー ト取 扱 業 者(Licensed Stockist)」
の 四 つ の 登 録 商 標 を 区 別 し て い ま した[toi iho]。
先住 民の 知 的財 産 と『 先 住 民の 知的 財産 問題 』 伊 藤敦 規
(Ganalbingu)の 人 々 が ク ラ ン や コ ミ ュ ニ テ ィ と し て 管 理 し て い る 知 識 を 、 ブ ル ン ブ ル ン が 美 術 作 品 と して 表 現 し た も の で あ っ た た め 、 も し制 作 者 個 人 で は な く
レ メ デ イ
ク ラ ン や コ ミ ュ ニ テ ィ と し て 提 訴 して も衡 平 法 上 の 救 済 措 置 を 受 け る 権 利 を 有 し て い た こ とが 判 決 で 認 め ら れ た 稀 な 例 と な り ま し た[JANKE l 998;BROWN
2003:43‑68;久 保2003;シ ャ ー マ ン と ワ イ ズ マ ン2008:197‑198]6)。
EoFも し く はTCEsの 不 正 使 用 に つ い て は 、 著 作 権 侵 害 を 争 点 とす る訴 訟 が 行 わ れ て い る ば か りで な く、 商 標 登 録 に よ る ア ー ト作 品 の 保 護 とい う行 政 と の 連 携 事 業 も行 わ れ て い ま す 。 オ ー ス ト ラ リ ア で は 、2000年 に 国 立 先 住 民 美 術 工 芸 局 が 「真 正 性 保 証 書 」 と して 知 られ る認 証 マ ー ク を 登 録 し、 市 場 に お い て 「ホ ン モ ノ」 の 先 住 民 製 の 商 品 を 非 先 住 民 製 の 製 品 か ら 区 別 す る 消 費 者 教 育 に寄 与 し て い ま す 。
加 え て い う と、 こ う し た 商 標 登 録 や 先 住 民 製 の 真 正 性 を 主 張 す る タ グ を 付 す こ と は 、 他 の 先 住 民 に も み ら れ る 知 的 財 産 権 に よ る 保 護 で す 。 例 え ば 、 非 サ ー ミ成 員 に よ る 工 場 製 の 類 似 品 に 対 し て 、 北 欧 の 先 住 民 サ ー ミが 伝 統 的 な 素 材 を 用 い て 手 作 業 で 制 作 し た 美 術 工 芸 品 で あ る との 品 質 保 証 を 証 明 す る 「サ ー ミ ・ ド ゥ オ ッ チ 」 と い う商 標 を 登 録 し て い た り[葛 野1990:233、1996:121、1998:
177‑178]、 カ ナ ダ 政 府 が イ ヌ イ ッ ト製 の ア ー ト を ニ セ モ ノ か ら 識 別 す る た め に イ グ ル ー の マ ー ク の 商 標(Igloo tag)を 登 録 し た り[GOVERNMENT OF NUNAVUT, Department of Economic Development&Transportation]、 米 国 ア ラ ス カ 州 で は 「シ ル バ ー ・ハ ン ド ・プ ロ グ ラ ム 」 とい う 商 標 登 録 制 度 に よ っ て 、 ア ラ ス カ の 先 住 民 の 人 々 の 手 作 りの 美 術 工 芸 品 を 他 の 機 械 製 や 非 ア ラ ス カ 先 住 民 製 の も の と識 別 す る一 つ の 基 準 を 設 け た り して い ま す[ALASKA STATE COUNCIL ON THE ARTS]。 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドの マ オ リ が 制 作 す る 美 術 工 芸 品 に つ い て も 、 政 府 機 関 で あ る ク リ エ イ テ ィ ブ ・ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド(Creative New Zealand,旧 称 ク イ ー ン ・エ リ ザ ベ ス ニ 世 ア ー ト ・カ ウ ン シ ル)の 下 部 機i関 で あ る マ オ リ ・ア ー ト委 員 会(Maori Arts Board)が 主 導 し た 「トイ ・イ ホ(toi iho)」 と い う商 標 登 録 制 度 が2010年 初 頭 ま で 存 在 し ま し た[toi iho]7)。
3.現 行知 的財産権保 護の適格 内容 との乖離
こ こで列 挙 したEoFの 不正使 用 に対 す るい くつ かの対応 の事 例 は、創作物 と
して のEoFの 制 作 者 個 人 も し くは コ ミ ュニ テ ィ(成 員)が 集 団 的 に有 す る排 他
的使用権 を、国 内法制や州法制 に依拠 す る司法解決や商標 登録 に よって、国家や
州政府 レベルで(結 果 として)保 護す る動 向 を示 してい ます。 こうして 「 先住 民
の知 的財産 」 に関 す る諸事例 は、先住民 を包含す る国家 にお いて個 々のケー スが
集積 して一つの大 きな枠組 み となってい るのですが、 国際的 な保護 の文脈 におい
て は 、 今 日 で も 有 効 な 確 固 た る 一 つ の 法 的 解 決 の 糸 口 は 見 つ か っ て い ま せ ん 。 そ の 主 た る 要 因 は 、 先 住 民 を め ぐ る 国 際 政 治 ・経 済 的 な 問 題 ば か りか 、 「先 住 民 の 知 的 財 産 権 」 と い う概 念 自体 が 現 行 知 的 財 産 法 制 の 適 格 要 件 に そ ぐ わ な い とす る 法 解 釈 上 の 見 解 に あ り ま す 。
国 際 政 治 ・経 済 的 な 文 脈 に お け る 「 先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 は 、 多 くが 「先 住 しゅう れん
民の知的財産」 に よって生ず る商業 的利益 をめ ぐる国家間 の駆 け引 きに収敏 しが ちなのです。先進 国企 業が主 に途 上国の(先 住 民居住 地 の)生 物資 源へ関心 を高 め る中、途上 国側 が国家 として生物 多様性や伝統 的知識へ のア クセス規制 を強化 し、 それ に よって国家が享受 す る利益配分や技術 移転 を有利 に進 めたい と目論 む 駆 け引 きにおいて、 この問題 が しば しば言及 され て きま した。 また、音楽CDや
映画DVDの 海 賊版製造 と市場 への横流 しを 「 知 的海賊行為 」 と して先進 国か ら 糾弾 されて きた途 上 国 は、GATTウ ル グアイ ・ラウ ン ドやWIPO等 の国家 間交 渉 時に、バ イオ ・パ イ ラシー を行 う先進諸 国 に対 して、TRIPS協 定 とCBDの 整 合性 を問 うことで巻 き返 しを図って きま した。途 上国政府 に とって 「 先住 民 の知 的財産 問題 」は、 先進諸 国 との国家間協議 にお ける重要 な交渉 カー ドの一つ となっ てい る現状が あ るのです。 この ように、国家 間協議 の場 において途上国側が政治 的駆 け引 きの道 具 として この問題 を利 用 すれ ばす るほ ど、先進 国側 は この交 渉 カー ドが 出 され るきっか け とな った先進 国側 が提起 した工業所 有権侵害 な どの別 の問題 の交渉 を有利 に進 め よう とす るため、すで に整備 して きた国 内法 での解決 の可能性 を引 き合 いに出 し、途上 国側 が主張す る国際 的 な取 り決 めの決議 が必ず しも必要 で はな い といって、議論 が平行線 の まま終始 して しま う傾 向にあ ります。
さらに、知的財産法 を専 門 とす る法学 者や法政策学者 な どは、 国際的な問題解決 に向 けて協 議 の機会 は増 えて い るものの事態 が進展 しない要 因の一 つ として、 そ もそも 「 先住民 の知 的財産権」 とい う考 え方 自体 が現行知 的財産 法制 におけ る法 的保 護の適格要件 か ら乖離 してい るこ とを指摘 してい ます。
エイペツク
例 えば、1995年 か ら1997年 まで アジ ア太 平洋 経済協 力(通 称APEC)の 知 的財産専 門家会合議 長 を務 め、2010年 現在 は特 許庁審判部長 であ る高倉成男 は、
この適格要件 の.,仡u.に つ いて主 として以下 の3項 目か ら検討 してい ます。第一・ に、
伝統 的知識の集団 的所有 に関す る点 であ り、 それ は先住 民個 人が所有 す る情 報で
はな く集団的 に共有 され る情報で あ るた め、個人 的権 利の独 占的保護 を前提 とす
る現 行 知 的 財 産 法 制 に は適 合 しな い 点 。 第 二 に 、伝 統 的 知 識 の歴 史 的 継 続 性 に関
す る点で あ り、一般 に伝統 的知識 の特 質 とされ る永 遠性 は、一定 の期間 内で保護
され る特許法や 著作権 法 にはな じまない点。第 三 に、伝統 的知識 の包括 的な指示
内容 に関 す る点で あ り、 それ は技術的要素 と文化 的要素(宗 教 的知識 な ど)に 分
離す るこ とが難 し く、技術 的要 素 を保護 す る特 許制度 と文化 的要素 を保護 す る著
先住 民 の知 的財 産 と『 先 住 民 の知 的財 産 問題』 伊 藤敦 規
8)
こ こで 扱 わ な か っ た 知 的 財 産 法 を構 成 す る そ の 他 の法律(商 標 法 、意 匠 法 、 不 正 競 争 防 止 法)が 定 め
る適 合 要 件 との 乖 離 に つ い て は、 高 倉 や 青 柳 を 参 照[高 倉2000:660‑
661;青 柳2004:151‑
15770
9)
例 え ば、 国 家 法 や 地 域 法 と して す で に制 定 され た もの と して 、 フ ィ リ ピ ン の大 統領 令247号(1995 年)と 先住 民権 法(1997 年)、 コ ス タ リ カ の 生 物 多 様 性 法(1998年)、
イ ン ドの 生 物 多 様 性 法 (2000年)、 ア ン デ ス 共 同 体 の 決 議486号 知 的 財産 に つ い て の 共 通 制 度 (2000年)、 ア フ リ カ 統 一・ 機 構 の コ ミュ ニ テ ィ の 権 利 及 び 生 物 資 源 ア ク セ ス管 理 に 関 す る モ デ ル 法 (2000年)な どが あ り ま す[青 柳2004:172]。
作 権 制 度 と い う個 別 の 法 制 度 に 分 類 さ れ る近 代 知 的 財 産 法 制 の 体 系 が 、 伝 統 的 知 識 の 包 括 的 な 保 護 に 適 合 し な い 点 、 と い っ た 内 容 で す[高 倉2000:659‑661]8)。
そ し て 高 倉 を は じ め 多 くの 知 的 財 産 法 を 専 門 と す る 法 学 者 や 法 政 策 学 者 な ど は 、 こ れ ら の 諸 点 に お い て 、 「先 住 民 の 知 的 財 産 」 を 現 行 知 的 財 産 法 で 保 護 す る こ と は 困 難 で あ る と結 論 づ け て い ま す[高 倉2000;大 澤2002b;山 名2002;青 柳 2004、2006;常 本2005な ど]。
4.法 的 保 護 に 依 拠 しな い オ ル タ ナ テ ィ ブ な 「 先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 の 解 決 策 先 に 挙 げ た ア ボ リ ジ ニ の 個 人 も し くは 団 体 で の 訴 訟 な ど は 、 オ ー ス トラ リ ア と い う一 つ の 国 家 の 裁 判 所 の 法 解 釈 で あ っ て 、 複 数 の 国 家 か ら な る 国 際 的 な 枠 組 み で は 、 制 度 と して 成 立 して い ま せ ん 。 こ の 様 な 状 況 に 対 して 、WIPOや 国 連 な ど の 国 際 機 関 が 、 現 行 知 的 財 産 法 の 改 正 に 向 け た 取 り組 み を 行 っ て い ま す 。 さ ら に そ れ だ け で は な く、 「 伝 統 的 資 源 の 権 利 」 や 「共 同 体 の 知 的 財 産 権 」 と い っ た 新
ス イ ジ ェネリス
た な 権 利 の 枠 組 み の 確 立 を 目 指 し た 特 別 立 法(suヘgenerヘs)を 、 国 際 法(条 約) や 国 家 法 や 地 域 法 と して 制 定 す る こ とで 、 現 在 「 先 住 民 の 知 的 財 産 」 と い う用 語 で 表 現 さ れ る も の の 保 護 を さ ま ざ ま な か た ち で 図 っ て い こ う と し て い る の が 今 日 的 な 状 況 と な っ て い ま す9)。
加 え て 、 必 ず し も法 的 保 護 に 依 拠 しな い 「 先 住 民 の 知 的 財 産 問 題 」 の 解 決 策 も す で に い くつ か 検 討 さ れ て い ま す 。 そ れ ら は 先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)と の 事 前 の 契 約 締 結 と、 社 会 的 制 裁 に よ る も の で す 。 経 済 法 の 独 占 禁 止 法 を 専 門 と し先 住 民 の 知 的 財 産 に つ い て の 権 利 的 側 面 に 詳 しい 青 柳 由 香 は 、前 者 の 事 前 の 契 約 と し て 、 遺 伝 子 資 源 や 宗 教 的 秘 匿 事 項 な ど の 先 住 民 の 伝 統 的 知 識 を 対 象 とす る 研 究 者 な ど は 、 所 属 す る学 会 の 倫 理 規 定 な ど に依 拠 し て 、 研 究 対 象 と す る先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)に 対 し て 十 分 な イ ン フ ォ ー ム ド ・コ ン セ ン トを 行 い 、 そ して 先 住 民 の 担 当 者 と調 査 の 実 施 に 関 す る 「 契 約 」 を 結 び 、 被 調 査 者 た る先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ) が よ そ 者 の 調 査 を 監 視 ・管 理 す る こ と(community controlled research)を 挙 げ て い ま す 。 学 術 論 文 な ど で 先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)の 知 的 な 資 源 が 二 次 的 に 利 用 さ れ る場 合 に は 、 先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)は 「契 約 」 に し た が っ て 研 究 者 な ど に 遵 守 す べ き項 目 や 方 法 や 条 件 を 直 接 提 示 す る こ とが 可 能 とな り ま す 。 ま た 、 そ れ に よ っ て 先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)は 知 的 な 資 源 の 二 次 的 使 用 か ら生 じ る利 益 配 分 を 「契 約 」 に 則 っ て 享 受 で き る可 能 性 が 残 さ れ ま す[青 柳2004:146‑147]。
仮 に 研 究 者 な どが 先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)の 知 的 な 資 源 の 不 正 使 用 を 行 っ た 場 合 、 先 住 民(コ ミ ュ ニ テ ィ)は 契 約 不 履 行 を 争 点 とす る 訴 訟 を 起 こ し て 、 差 し 止 め や 損 害 賠 償 請 求 を す る こ とが で き る の で す 。も う 一 つ の 社 会 的 制 裁 に つ い て 青 柳 は 、 そ の 確 実 性 が 不 明 確 な こ とや 強 制 力 の 欠 如 な ど を 考 慮 した 上 で 、 マ ス コ ミ に よ る
「