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1.背景と目的

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2018年28

短期胆汁酸摂取マウスの腸内における胆汁酸組成および細菌叢の動態解析

共生基盤学専攻 食品安全・機能性開発学講座 胃腸内圏微生物学 松浦 史佳

1.背景と目的

近年,高脂肪食の過剰摂取により腸内細菌叢の構成バランスが崩壊することが,肥満や炎症性腸 疾患をはじめとする様々な疾患の発症に繋がると考えられており,この菌叢変化の具体的な機構の 解明が求められている。当研究室では,脂質の吸収を補助する胆汁酸が抗菌活性を有する点に着目 した。これまでに,ヒトの主要な胆汁酸であるコール酸 (CA) をラットに摂取させると,腸内で総 胆汁酸量や抗菌活性の高いデオキシコール酸 (DCA) の増大に伴い,主要な構成門の比(Firmicutes 門/Bacteroidetes 門)の上昇が観察されている。このことから,胆汁酸が腸内細菌叢構成の制御因子 として働くことが示された。しかしながら,ラットはヒトやマウスと異なり胆嚢を持たないため,

胆汁酸分泌の挙動に違いが見られる可能性がある。そこで本研究では,胆汁酸(CA および

DCA)

摂取マウスにおける腸内での胆汁酸組成および菌叢構成の変化を検証することを目的とした。

2.方法

8

週齢の

C57BL/6J

雄性マウスを

2

週間予備飼育した後,純水を与えた対照群または

0.06% CA,

0.1% CA,0.2% CA,0.3% CA,0.1% DCA

添加純水を与えた群の計

6

群に

6

匹ずつ分け,2 週間飼 育した。食餌は,予備飼育・本飼育ともに通常食(脂質

10 kcal%)を与えた。解剖時の盲腸内容物

および

2

週目の解剖直前に回収した糞便を

LC-MS

による胆汁酸分析および

16S rRNA

遺伝子の

V3-V4

領域に基づく次世代シーケンサーによる菌叢解析に供した。菌叢構成の情報は配列情報に基

づいて

OTU (Operational Taxonomic Unit)

に分類して解析を行った。これらの結果を元に,各胆汁酸 濃度と各

OTU

の存在比との相関解析を行った。

3.結果と考察

0.2%

および

0.3% CA

群において,盲腸内容物および糞便中の総胆汁酸濃度の増加が観察され,

DCA

をはじめとする抗菌活性の高い分子種が増加した。これに伴い,

Firmicutes

門の有意な増加と

Actinobacteria

門の有意な減少で特徴づけられる細菌叢構成のバランスの崩壊が生じた。 中でも

0.3%

CA

群で生じた盲腸内総胆汁酸濃度の増加と細菌叢の構成バランスの変化は,高脂肪食摂取マウス で観察された変化と類似していた。マウス盲腸内に存在する胆汁酸分子種の中で,抗菌活性が高い

3

分子種(DCA,12-oxo-LCA および

3-oxo-12α-cholanic acid)の総和と,各OTU

の存在比の関係を 解析したところ,

142OTU

が有意な相関を示した。正の相関を示した

50OTU

には

DCA

生成菌や炎 症性腸疾患に関与する細菌が含まれ,負の相関を示した

92OTU

には

Bifidobacterium

属や

Bacteroidetes

門に属する細菌が存在した。これらの結果から,マウスにおいても,高脂肪食摂取を

はじめとする腸内胆汁酸濃度の増加時に,胆汁酸が腸内細菌叢の構成バランスの制御因子として働 くことが強く示唆された。

4.まとめ

胆汁酸摂取マウスの腸内において,抗菌活性の高い胆汁酸分子種の増加とともに細菌叢構成の変

化が観察された。この際,炎症性腸管疾患や肥満に関与する細菌の変動が顕著に表れた。本研究に

より,胆汁酸が腸内細菌叢の構成バランスを崩壊させることが強く示唆された。この結果より,胆

汁酸が各種疾病の発症を誘発もしくは促進させる増悪因子であることが予想された。

参照

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