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国際交流活動が児童および地域コミュニティに及ぼす影響に関する研究:―宍粟市立野原小学校における交流活動を事例として―

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Academic year: 2021

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(1)国際交流活動が児童および地域コミュニティに及ぼす影響に関する研究      宍粟市立野原小学校における交流活動を事例として一 教科・領域教育学専攻 言語系コース. M09135A    山 本 敬 子  環境問題をはじめとする地球規模的諸. を明らかにする。. 課題が顕在する今日,国や文化の隔てを超.  まず,先行研究から国際交流の意義につ. えて世界の人々が相互理解を深め,協力し. いての理論的考察を行った。国際理解教育. て解決に向けて歩んでいくことが必要に. の変遷と現在の国際理解教育において必. なっている。また,交通及ぴ通信手段の発. 要な理念が示され,国際交流の意義が定義. 達や,多国籍企業の増加も顕著になるなど,. された。それらは,大きくまとめると,国. わが国でも国際化の波が押し寄せて,異質. 際交流は国際理解教育の具体的実践のひ. な文化が共存する時代へと向かっている。. とつであり,人間同士として相互理解を深. このようにグローバル化する時代には,異. め,共に生きることの重要性を認識する機. 文化をもった人々と共に生きるカを培う. 会を提供する実践である,ということにな. ことが求められている。つまり,地球市民. る。次に事例研究からは,国際交流活動を. としての意識を身につけた人間を育てる. 通じた児童たちの変容として,「諸外国へ. 必要があり,そのために国際理解教育の必. の興味の高まり」やr外国語への関心・意. 要性が高まっているのである。. 欲の高まり」などが挙げられており,同時.  そこで,本研究では,筆者の勤務校であ. に,交流活動に関与した保護者ら関係者の. る宍粟市立野原小学校区で30年もの間続. 意識変容も報告されている。また,このよ. いているオーストラリアとの国際交流を. うな理念を基盤とし,地域の活性化を目指. 事例としてとりあげ,質問紙及び聞き取り. す国際交流が成功した実例もあるが,先行. 調査を行って,国際理解教育の一環として. する事例からは,国際交流活動の抱える問. 取り組まれる国際交流の児童及び地域コ. 題点として,「コミュニケーションの問題」,. 羊ユニティヘの影響について調査した。具. 「予算の問題」,「継続の問題」という点も. 体的には以下のような事柄を目指す。. 示された。.  (1)本研究で調査対象である国際交流活.  そこで,本事例となった国際交流活動の. 動は,国際理解教育のねらいである相互理. うち,学校内での教育に目を向けた.「交流. 解や共生の理念に基づいた上で,児童や地. による児童の変容」を調査Iとし,地域に. 域コミュニティの人々の国際理解や異文. 目を向けた調査を調査1Iとして「国際交流. 化間コミュニケーションの意識・態度にど. に対する地域の人々の意識」および「地域. のような影響を与えているかを明らかに. で国際交流が継続されてきた要因」につい. すること,(2)長期間交流が継続してきた要. てそれぞれ質問紙及ぴ聞き取り調査を行. 因,あるいは,今後の国際交流活動の課題. った。. としてとしてどのようなものがあるのか.  調査Iの質問紙調査の結果,野原小学校,. 一266■.

(2) アイアンサイド小学校両児童にとって,交. ての語り」が存在することが分かった。そ. 流の体験は児童のコミュニケーンヨンヘ. の語りの考察から,交流の継続の要因は,. の認識に対して肯定的な宰響を及ぼして. 「交流への思いが受け継がれてきたこと」,. いること,さらに交流後の外国語に対する. 吹流の歴史から深まった互いの親近感」. 有用性の認識も増加の傾向にあることが. といった人々が新たに抱いた認識によっ. 分かった。また,聞き取り調査からは,交. て「地域・家庭の結束と活性化」が起こり,. 流を通した児童の変容や成長がみられた。. これが国際交流活動を継続するカとなり,. その内容は,まず,児童自身に《異文化受. やがては,コミュニティの成長へとつなが. 容に対する気付き》があったことで,児童. っていったと考えられる。さらに,コミュ. は相手を理解するためには,r相手を知ろ. ニティの変容をもたらす源泉を説明する. うと努力すること」,「相手を思う気持ち」,. 思想として,ネル・ノディングスのケアリ. ト緒に過ごす時間をもつこと」,「心を開. ングの思想が非常に示唆的であると考え. くこと」が重要であると認識していた。ま. た。ノディングスはケアリングという概念. た,《積極的な外国語使用への意識》につ. に人間関係の本質をみており,ケアし,ケ. いても,コミュニケーションできたという. アされることは根本的な人間の二一ズで. 体験から外国語学習に対する興味と意欲. あり,人々の幸福につながるとしたうえで,. が育っていた。さらに《交流による自己の. 現在社会においてケアの必要性は重大で. 成長》も感じており,交流することによっ. あり,社会組織はケアの関係によって構成. てr自信が生まれてきたこと」やr人に対. されるべきであると考えている。そこで,. して積極的に話しかけられるようになっ. 国際交流活動を支える人々の間や,訪日団. た」などの気付きがあった。. をホストとして受け入れる側と,受け入れ.  調査皿の地域コミュニティの住民への. られる側の人々の間にケアリングの関係. 質問紙調査からは,人々は交流活動が「地. が成り立っているのではないかと考え,. 域の活性化」,「地域の結束」という効果を. 人々の語りをケアの観点から分析した結. もたらし,交流の大きな価値を生み出して. 果,人々の関係の中にケアリングの思想が. いると感じていることが分かった。地域全. 共有されていることが認められた。交流活. 体の考えの傾向としては,「交流を続けた. 動が人間としての幸福感を得られる活動. いが,少子高齢化という地域社会の状況が. のひとつとして存在することで,地域が. 交流継続の不安として存在する」というこ. 「コミュニティ」として発展し,それに伴. とも確認できた。聞き取り調査で得られた. って,国際交流活動も継続してきたことが. 地域の人々の語りの特徴づけを行った結. 確かめられたと言える。. 果からは,一般的な国際交流の意義とは別.  本研究で明らかになった国際交流がも. に,30年間の交流の歴史の中での地域へ. たらす影響から,国際交流の重要性が示さ. の影響として現れてきたコミュニティに. れ,今後の国際交流の展望が見えてくると. とっての意味づけであり,地域の人々の暮. 考える。. らしに深くかかわったrコミュニティとし.   主任指導教員  吉 田 達 弘. 一267一.

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