原価主義会計における資産評価 : 原価基準・低価基準・時価基準をめぐって
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(2) (94). 2. 横浜経営研究. 第ⅩⅤ巻. 第2号(1994). にもとまっていることと思います.もう一つは,. てもよいという形で,容認ないし許容している. それに反対する側からの次のような意見です.. だけであるわけです.会計学の教科書などでも,. すなわち,資産を貸借対照表上で時価で評価す. 低価基準は保守主義の考え方に支えられて実務. ることは,未実現利益の計上を認めることであ. 上認められてきた基準であって,原価主義会計. り,実現主義を重要な原則とする原価主義会計. では原価基準が理論的には正しい評価基準であ. に反することになる,長い伝統をもつ原価主義. る,と説明しているものが非常に多いと思いま. 会計をそんなに簡単に放棄してよいのか,とい. す.ですから,われわれが原価主義会計という. う意見です.. とき,それはすべての資産を取得原価で評価す. 単に,時価情報を開示すべきかどうかという. る会計の体系なのだと解釈するのは,無理もな. 問題のとり上げ方ではなく,それが原価主義会. いことだと思います.. 計か時価主義会計かという会計の体系にかかわ る形での議論になると,われわれ会計学を学び. ですけれども,原価主義会計というのは,本 当にそのような会計の体系なのでしょうか.原. 研究している者としては,理論上の問題として. 価主義会計という概念は,別に法律で規定され. その議論にコミットせざるをえなくなるわけで. ているものではありません.われわれが何々主. す.. 義会計というときは,ある一つの論理的に一貫. ここにとり上げた二つの意見,つまり,原価. した,意味のある会計の体系を考え,その中の. 主義会計は古臭い会計で時価主義会計に移るべ. どこかの際立った特徴をとらえて,原価主義会. きだという意見も,資産の時価評価は原価主義. 計とか時価主義会計というようなネーミングを. 会計に反するのだという意見も,原価主義会計. してきたのだと思います.したがって,原価主. についての共通する一つの解釈を前提にしてい. 義会計という限り,原価評価がその特徴である. ることがわかります.それは,原価主義会計は,. ことは,当然であろうと思います.しかし,そ. すべての資産を貸借村照表上,取得原価で評価. れが,すべての資産を取得原価で評価するから. する会計の体系である,という解釈です.その. なのか,という点になると,大いに疑問が感じ. ような解釈を前提にして,原価主義会計を捨て. られます.原価評価は,対象とする資産の種類. ろとか守れとかの議論が行われているというこ. によってその意味が違ってきますので,すべて. とです.. の資産を取得原価で評価した場合に,それが果. 原価主義会計についてのこのような解釈,私. は,このような解釈は誤りだと思うのですが, 多くの人がこのような解釈をするのは,無理か らぬことであろうと思います.例えば,わが国 で原価主義会計というとき,その内容としてす ぐに頭に浮かべるのは,制度上の会計の基準に. たして論理的に一貫した,意味のある会計の体. 系になり得るかという問題があるからです. 本論に入る前に,もう少しまえおきを述べて おきたいと思います.. 企業会計原則も商法も,現在では,いま確認 したように,すべての資産について取得原価基. なっている企業会計原則や商法の計算規定です. 準を原則としていますが,企業会計原則は,そ. が,そこでは,皆さんが御存知のように,すべ. れが昭和24年に作られた時は,流動資産として. ての資産を原則として取得原価で評価せよとい. の有価証券,一時所有の市場性ある有価証券に. っているからです.もちろん,企業会計原則も 商法の計算規定も,棚卸資産と有価証券につい. ついては,時価で評価することになっていたの. ては,低価基準を認めています.しかし,そこ. です.原価基準でも低価基準でもなく,時価基 準だったのです.それが,昭和37年改正の商法. での原則的な評価基準はあくまでも取得原価,. の評価規定にあわせて,昭和38年の改正で現行. 原価基準であって,低価基準は,それを採用し. のような基準になったのです.したがって,ち.
(3) 原価主義会計における資産評価(森田哲弓削. (95). 3. しすべての基準を取得原価で評価するのが原価. が国で原価主義会計の原則的な評価基準と考え. 主義会計であるとすると,昭和38年に改正され. られている原価基準がどのような考え方に支え. る前の企業会計原則は,完全な原価主義会計で. られた基準なのかを検討して,原価主義会計が. はなかったということになります.. 論理的に一貫した,意味のある会計の体系であ. もう一つ,低価基準についてですが,わが国. るとすれば,原価基準と原価主義会計との関係. では,これもいま確認したように,原価基準が. はどのように解したらよいのか,ということを. 原則であって,棚卸資産と有価証券について低 価基準を適用することが,いわば例外的に認め. 考えてみたいと思うわけです.. られているに過ぎないわけですが,諸外国の会. 価基準は,理論的に原価主義会計とは相容れな. 計基準を見渡してみると,そのような国はわが. い異質の評価基準なのか.あるいは,原価主義. 国しかないんです.すべての国を調べたわけで. 会計が少なくともある種の資産を取得原価で評. はありませんが,アメリカでもイギリスでもド. 価する点にその特徴をもつ会計の体系であると. もう・少し具体的に申しますと,低価基準や時. イツでも,棚卸資産や有価証券の評価について. しても,低価基準や時価基準は,原価主義会計. 原価基準は認めていないのです.低価基準なの. の体系の中で,単に容認されるのではなく,請. です.低価基準を適用してもよいというのでは. 外国の基準にみられるように,資産によっては. なく,適用しなければならないことになってあ. 当然適用されるべき基準なのか.もし後者であ. るのです.現在のイギリスの基準では,有価証. るならば,それらの基準はどのような論拠で適. 券については低価基準どころではなく時価基準. 用され,そしてそれらが,他の資産の原価評価. になっています.. をも含めて,全体として一つのまとまった,請. 諸外国の会計基準は,棚卸資産と有価証券に. 理的に一貫した会計の体系を構成することにな. ついては,古くからこのような評価基準を採用. るのか.こういう点について,これから話を進. していたわけです.時価が原価より下がってい. めていこうと思います.. る場合は,必ず時価で評価しかナればならない, 2.原価主義会計の特徴. 時価より原価が低い時だけ原価で評価するとい. うことです.そこで,もし,すべての資産を取 得原価で評価するのが原価主義会計であるとす. まえおきが長くなりましたが,これから本論 に入ります.. ると,このような低価基準を強制する会計の体 系は,原価主義会計とはいえないことになりま. 原価主義会計とはどういう会計の体系か.こ れは,今日の話の全体を通じて答えるべき問題. す.そうすると,少なくとも近年までは,原価. ですが,一般に原価主義会計といわれている会. 主義会計が国際的にも制度としての会計の主流. 計には,つぎの三つの形式的な特徴が見出せる. であったと考えられてきたにもかかわらず,実. と思います.すなわち,. は,諸外国には原価主義会計という会計制度は 存在していなかった,それは昭和37-38年以降. 第一は,取得原価による資産の評価. のわが国だけにしか存在しなかったということ. 第三は,貨幣価値変動の無視. になってしまうのです. このように考えてくると,われわれは,わが. 第二は,支出額を基準にする費用の測定 の三点です.. この原価主義会計に対立するものとして,し. 国だけにしか存在しない会計の体系を原価主義. ばしば時価主義会計という言葉が使われていま. 会計と呼んでいたのだろうか,という疑問に到. すけれども,どういう意味で時価主義会計とい. 達することになります.そこで,ここでは,い. う言葉を使っているのか,どうもはっきりしな. ま一度原点に立ち戻ってといいましょうか,わ. い.前にも触れましたように,例えば有価証券.
(4) 4. (96). 横浜経営研究. 第ⅩⅤ巻. 第2号(1994). のような,資産の一部を時価で評価するという 点だけをとらえて,それを時価主義会計という. 話を続けていくことになります.. 人もいるようですが,これはおかしいと思いま. 係がありませんので,ここでごく簡単に触れて. す.何々主義会計という限り,それは全体とし. おきます.二番目の支出額による費用の測定と. て論理的に一貫した会計の体系を指すべきです. いうのは, 100円で買った商品を150円で売った. が,最近の問題との関連で時価主義会計という. ときには,その商品に対する支出額である100. 言葉を使っている人達は,どういう体系を考え. 円を費用に計上する,ということです.そうす. ているのか,それをはっきり示していないよう. ると,計算された利益をすべて分配しても,は. に思います.. じめに投資した100円というお金,貨幣量が残. 第二,第三の点は,今日の話とは直接には関. これまでの会計学説や制度をふり返ってみる. る.これを期間損益計算的にみると,資本を貨. と,私は,時価主義会計といえる会計の体系に. 幣としてとらえ,貨幣としての資本を維持して. は,次のようなものがあると考えております.. 残ったものを利益とみる,つまり,貨幣資本概. 貸借対照表上のすべての資産を時価で評価する. 念,貨幣資本維持計算ということであって,こ. もの,資産の評価基準は特に問題にしないで,. れも原価主義会計といわれている会計の特徴で. すべての費用を時価で評価するもの,それから,. あると思います.三番目の貨幣価値変動の無視. 資産の時価評価と費用の時価評価を結びつけた. ということは,二番目甲特徴に含まれていると. もの,の三つです.今日は,これらの時価主義. も解釈できますが,それは,貨幣資本概念をと. 会計そのものについては立ち入りませんが,例. ることによる当然の測定単位である貨幣単位に. えば,オーストラリアのチェンバースという人. ついて,その価値に変動があっても,それを会. が,貸借村照表上のすべての資産を売却時価で. 計計算上考慮しない,無視するということです.. 評価することを主張した学説を発表したことは,. インフレになって貨幣価値が下落しても,. 有名です.これは,まさに一つの時価主義会計. 円は100円とみるということです.この点を明. の形態です.先ほど,原価主義会計の形式的な 特徴として挙げた点は,私が時価主義会計とし. 確に表現しようとすれば,二番目の特徴として. て考えているこれらのものとの対比で,原価主. 維持計算ということになります.. 義会計のメルクマールとして考えている点です. 第一の取得原価による資産の評価,これは,. 100. 挙げた点は,名目貨幣資本概念,名目貨幣資本 第二,第三の点についてはこれくらいに留め ておきます.そこで,以下,今日の主題に戻り. 具体的には固定資産は取得原価で評価する,と. まして,原価主義会計の特徴である資産の原価. いう点です.これは,原価主義会計といわれて. 評価について,それがどのような意味をもち,. いる会計に共通したものだと思います.棚卸資. あるいはどのような考え方に基づいているのか,. 産の原価評価,これも原価主義会計の一つの特. という点を検討していくことにしたいと思いま. 徴といってよいかと思いますが,実は,棚卸資. す.. 産の原価評価は,固定資産の原価評価とは違っ. た考え方に支えられているのです.それは,販 売するまでは利益を計上しないということであ って,利益を計上しなければ,評価額を引下げ. 3.取得原価による資産評価の意味 (1)固定資産の原価評価 はじめに,固定資産の原価評価について考え. るかどうかの問題はありますが,それを別にす. てみます.固定資産といってもいろいろありま. れば取得原価で評価することになります.今日. すが,話を簡単にするために,ここでは,工場. の話の主題は,原価主義会計における資産評価. の建物やその敷地である土地,あるいは機械設. ですので,このあと,これらの点を中心にして,. 備のような,物的資産を念頭におくことにしま.
(5) 原価主義会計における資産評価(森田哲摘). (97). 5. す.このような固定資産を取得原価で評価する. や転換のために,あるセグメントを構成してい. ということ,もちろん,償却性資産は一定の方. る工場の建物や機械,その敷地までも売却する. 法で計算した減価償却費を引いた額ですが,秤. ことだってありうるわけです.ですから,それ. 価にあたって時価を一切考慮に入れないという. は,仮定です.しかし,正常な経営過程を前提. ことは,そのような固定資産は,正常な経営過. にすれば,この仮定は現実と一致する.そのた. 程を前提にすれば売却しないんだという考え方. めに,この仮定に基づく原価評価が会計上の基. がその背後にあるわけです.売却しないのであ. 準として受け入れられてきたのです.. るから,市場価格は問題にならないのです. 固定資産について売却を予定しなければ,固. 定資産に投下された貨幣資本は,そこに投下さ れた状態がそのまま続いていると考えることに. (2)棚卸資産の原価評価 それでは,棚卸資産を取得原価で評価すると いうのは,どういう考え方に支えられているの. なります.私は,これを,貨幣資本が固定資産. でしょうか.棚卸資産にもいろいろありますの. に拘束されているという表現を使っているので. で,厳密にはその形態ごとに分けて検討しなけ. すが,貨幣資本が拘束されている状態が続いて. ればならないのですが,ここでは,基本的な点. いる限り,そこに投下されている貨幣資本の大. だけを問題にしますので,大ざっばに棚卸資産. きさは,大きくもならなければ小さくもならな. ということで話を進めたいと思います.. い,と考える.これが,原価主義会計で固定資. 棚卸資産は,もともと売ることを目的にして. 産を取得原価で評価することの意味,あるいは. いる資産です.ですから,その原価評価を固定. 考え方の根拠であると思うのです.. 資産と同じ論拠で,つまり,商品に投下されて. このような説明は!土地の場合には最もよく. いる資本は商品に拘束されている,それを売る. あてはまると思います.償却性資産の場合は,. ことによって流動化することはできないんだ,. 毎期,減価償却という手続きによって費用化さ. という説明は成り立たないはずです.棚卸資産. れていきますが,これは,拘束されていた資本. が売ることを目的にしている資産であるとする. が部分的に消滅していくことを意味しています.. と,それがいくらで売れるかという,時価で評. その部分は,十分な収益を前提にすれば,拘束. 価することがむしろ自然なのではないか,そう. されていた資本が回収されて拘束を解かれた資. であれば,棚卸資産については売価で評価する. 本になるわけですが,しかし,未償却残高につ. ことが原則になるべきではないか,ということ. いては,依然として資本の拘束状態が続いてい. が考えられます.それなのに,すべての棚卸資. ると考えるわけです.. 産を売価で評価すべきだといっている会計基準. 固定資産を取得原価で評価するということは,. は,世界中どこにもないんです.はじめにいい. このように,そこに投下されている資本は固定 資産に拘束されているんだ,売却によって流動. ましたように,日本を除けば低価基準です.そ. 化することはできないんだ,という考え方に支. はなく原価での評価が求められるのか.その理. こで,低価基準の場合をも含めて,なぜ売価で. えられていると解釈すべきだと思います.その. 由は,当然のことですが,固定資産の場合とは. 場合,原価評価の基礎になっている考え方,固. 違うところにあるわけです.. 定資産は売却されないんだ,固定資産に投下さ. 棚卸資産の原価評価の根拠については,あら. れた資本はその固定資産に拘束され続けるんだ,. ためていうまでもないかと思いますが,それは,. という考え方は,一つの仮定にすぎないことは. 販売されるまでは,収益,したがってまた利益. いうまでもありません.固定資産も売却される. の認識の要件を充たしていないからだ,という. ことがないわけではないからです.事業の縮小. ことです.売れるという保証がないのに,売価.
(6) 6. (98). 横浜経営研究. で評価して利益を計上するのはおかしい.だか. 第ⅩⅤ巻. 第2号(1994) わが国ではあまりとり上げられていませんが,. ら売れるまでは利益を認識しないようにする.. アメリカでは,農産物,これはコーンのようで. そのために,原価で評価する.これがいわゆる. すが,それは収穫が済んでいれば売価で評価し. 実現主義という考え方です.ですから,棚卸資. てよいとされているようです.これには,原価. 産の場合には,むしろ売価で評価するというこ. が正確につかめないという理由もあるようです. との方が原則なのであるけれども,この原則を. が,政府が一定の価格で買い取るということが,. そのまま適用してしまうと,収益なり利益なり. 売価による評価の根拠とされています.また,. の認識要件を充たさないものが計上されてしま. 貴金属類も,売価で評価していいんだとされて. うので,その要件を充たすまでは原価で評価し. います.それは,容易に販売できる市場があり,. ておこう,これが,棚卸資産の原価評価の意味. その市場価格も明らかになっているからです.. であろうと思います. 棚卸資産の原価評価がこのような理由による. つまり,販売が行われていなくても利益認識の. 要件を備えているから,そういうことになるの. ものであるとすれば,原価評価は,すべての棚. です.. 卸資産に適用されるべきものではないことにな. これらはかなり特殊な例ですけれど,もう少. る筈です.販売という事実が収益認識の要件で. しポピュラーなといいますか,皆さんも御存知. あるという場合,それは,売れるか売れないか わからない,売れる保証がないといった方がよ. の例は,建設業や造船業などの長期請負工事に 適用される工事進行基準です.工事進行基準の. いかもしれませんが,そのような棚卸資産を前. 簿記処理といいますか,会計処理といいますか,. 提としている.いいかえれば,市場生産をやっ. それはいろいろな形がありますけれども,この. ている場合の棚卸資産を前提としていることは. 基準は,結局,期末に未完成の状態にある棚卸. 明らかです.ですから,販売を待たずに収益の. 資産を売価で評価していることになります.長. 認識基準が充たされるような棚卸資産について. 期請負工事は注文生産ですから,売れないとい. は,取得原価による評価である必要はないわけ. う心配はない.したがって,生産活動さえ行え. です.つまり,確実に売れるのであれば,棚卸. ば収益認識の要件は充たされると考えるから,. 資産として保有している段階で,それを売価で. 生産の進行状況に応じた売価での評価が行われ. 評価して利益を計上しても一向に差し支えない. るのです.この考え方は,長期請負工事に限ら. 筈です.. ず,注文生産-般に適用してよい筈です.つま. 原価主義会計は,すべての資産を取得原価で. り,注文生産の場合であれば,期末までに完成. 評価する会計だ,という解釈の下で棚卸資産の. していて引き渡し前の製品があれば,それは売. 原価評価を説明すれば,それが確実に売れるも. 価で評価すべきですし,仕掛品も,その生産の. のであるかどうかは問題にならず,すべての棚. 進行状況に応じた売価での評価が行われて然る. 卸資産を当然に取得原価で評価することになり. べきものです.ただ,実務的には,すべての注. ますが,原価主義会計でも,棚卸資産はむしろ. 文生産の棚卸資産にこのような評価基準を適用. 売価で評価するのが原則であって,市場生産の. するのは面倒ですし,生産期間が短かければ,. 棚卸資産は収益認識の要件を充たしていないか. 引き渡し時点まで原価で評価しても,計上され. ら原価で評価しているんだと解釈すれば,収益. る利益の期間的な歪みはあまり出てこないので,. 認識の要件を充たしている棚卸資産は,原価主. 実践上では,そこまでやらなくてもよいという. 義会計でも売価で評価すべきことになるんです.. だけのことです.. そして,事実,棚卸資産の時価評価,売価によ. このように,原価主義会計では,原価基準,. る評価は,これまでも行われてきています.. 取得原価による資産の評価ということが大きな.
(7) 原価主義会計における資産評価(森田曹禰). (99). 7. 特徴ではあるのですが,その論拠は,固定資産. は明らかです.先程来申してきた私の考え方か. の場合と,棚卸資産の場合とでは全く違うとい. らすると,このような商法の改正が正しかった. うことを,十分認識しかナればならないと思う. のかどうか,私は大いに疑問を感じているので. のです.. す.. (3)商法の評価規定の変遷 ここで,わが国の商法の資産評価規定がどの. 4,棚卸資産の低価基準-2つの低価基準一 これまで述べてきましたような棚卸資産評価. ような変遷過程をたどってきたかということを,. についての私の解釈からすると,低価基準とい. ごく簡単に触れておきたいと思います.. う評価基準はどういう理屈づけになるのか,と. 商法は,当初はすべての資産について時価基 準であったわけですが,明治44年法で,すべて. いう問題に触れなければならないと思います.. の資産について時価以下基準に変わりました.. 一般に,低価基準の時価には,正味実現可能価 額と再調達原価の二つがあるといわれています. 原価基準が導入されたのは昭和13年法からであ. が,正味実現可能価額を時価とする低価基準と,. りまして,ここでは時価以下基準を原則と・Lな. 再調達原価を時価とする低価基準とは,その基. がらも,固定資産について,商人一般には原価. 礎にある考え方が非常に違っております.. 差引減価が容認され,株式会社は取得原価以下. 棚卸資産は,本来は売価で評価すべきもので. での評価が強制されました.このように,この. ある,しかし,売価で評価すると利益が計上さ. 頃から原価評価という考え方が商法にも入って. れるような場合に,その利益が原価主義会計の. くるのですが,それは固定資産に限られるので. 利益の認識要件を充たしていないときには原価. あって,棚卸資産については,常に時価を考慮. で評価する,これが低価基準である.低価基準. してきた,時価が最高限度額とされてきたので. をこのように解釈すると,時価が下がった場合. す.それが,昭和37年法でがらっと変わり,棚. に,低価基準で時価まで評価の引下げをするの. 卸資産についても原価基準を原則とするように. は,原則的な評価基準をそのまま適用すること. 改正されたのです.. になるわけです.原則は時価だからです.これ. 日本の商法の母法は,皆さん御存知のように. に対して,低価基準で原価評価が行われるのは,. ドイツの商法ですが,ドイツの商法がおおよそ. 利益の認識基準に制約された,むしろ例外と考. このような経過を辿ってきて,日本の商法はそ. えられることになります.そして,低価基準の. れに追随してきたといってよいのだろうと思い. このような解釈の下では,その時価は,当然,. ます.それが,昭和37年法で離れてしまったの. 売価,つまり正味実現可能価額ということにな. です.ドイツの商法は,現在も棚卸資産につい ては低価基準を強制している.つまり,時価か. ります.. 私は,これが原価主義会計における低価基準. ら全く離れた原価基準,時価を考慮しない原価. だと思っています.原則的な評価基準は売価で. 基準は認めていないのです.. あるという考え方を前提にした低価基準です.. わが国の商法は,昭和37年の改正で,棚卸資. これに対して,再調達原価,同じものをいま. 産,有価証券も同じですが,これらについて原. 買うとすればいくらかという時価を基準とする. 価基準を原則としたのです.低価基準も認め,. 低価基準は,当然ですが,棚卸資産の原則的な. また,時価の著しい下落の場合の評価減を強制. 評価基準は売価であるという考え方とは全く結. する規定も含んでいますが,原則は原価基準で. びつきません.それは,原則的な評価基準は取. す.このような評価基準の改正は,原価基準を. 得原価であるという考え方と結びついた低価基. 原則としていた企業会計原則の影響であること. 準である,と解すべきでしょう.取得原価は調.
(8) 8. (100). 横浜経営研究. 第ⅩⅤ巻. 第2号(1994). 達市場で生じた価額であり,これを原則としつ. を認める.これが商法と企業会計原則の評価基. つ時価を考慮しようとすれば,調達市場の時価 以外は問題にならないからです.. 準です.流動資産としての有価証券に原価基準. わが国では,低価基準は強制ではありません が,それを適用する場合の時価は再調達原価だ. とするのが通説のようです.商法にも企業会計. を認めているのは,わが国だけです.アメリカ とドイツは低価基準ですが,英国は時価基準で す. これは,あらためて述べるまでもないことで. 原則にも,低価基準の時価が何であるかは示さ. すが,原価で評価しているわが国の企業の場合,. れていませんが,税法では再調達原価なので,. 株価の上昇によるかなりの含み益が生じていた. 実務でもそれが適用されているようです.わが. のですが,このところの株価の下落によってそ. 国の会計基準が取得原価基準を原則としている. の含み益が次第に減ってきている.現在では,. ことからみれば,その限りでは,その枠内での. 保有している有価証券の時価情報を開示するこ. 低価基準の時価としては整合性のあるものとい. とにはなっていますが,損益計算書には,時価. うことになります.. の変動は一切現れてこないわけです.そこで,. 固定資産と棚卸資産の評価基準の問題は,こ. このような有価証券は時価で評価すべきである. という意見が出てきていますが,原価主義会計. のくらいにしておこうと思います.原価主義会 計における固定資産や棚卸資産の評価などとい. では原価が原則だという意見がまだ強いようで. う問題は,決して新しい問題ではありません.. す.. 古くから取り扱われてきた問題ですが,そこで の特徴的な評価基準である原価評価の意味につ. 私は,原価主義会計においても,流動資産と しての有価証券の評価基準は時価基準であると. いて,これまで必ずしも明確には説明されてこ. 考えています.これは,棚卸資産についてのこ. なかった,あるいは,意識されていなかった点. れまでの説明から,皆さん御理解いただけるだ. が少なくないと思うんです.しかし,それをは. ろうと思います.流動資産としての有価証券と. っきりさせておかないと,新しい問題に出会っ. いうのは,いつでも売却して差し支えないもの. たとき,それを原価主義会計の枠内で処理する. ですから,それに投資されている資本は決して. とすればどうなるか,あるいは,時価評価が求. 拘束されていない.また,それは,市場生産さ. められるような場合に,それを採用することは. れた棚卸資産と違って,原則として,容易に売. 直ちに原価主義会計という体系からはみ出すと. 却できる市場があり,相場も明らかになってい. 考えるのか,原価主義会計という体系に含まれ. るので,低価基準を考える必要もないからです.. うると考えるのか,などという点の判断ができ ないことになってしまうのです. 5.有価証券の評価. これに対して,固定資産としての有価証券,. 投資有価証券はどうか.例えば,子会社の株式 を考えてみると,それは,正常な状況が続いて いる限り,決して売却しない.売却を予定して. 原価主義会計についてのこれまでの話を踏ま. いない.私の言葉でいうと,そこに投資した資. えて,最後に,比較的新しい問題である有価証. 本は拘束されているのであって,固定資産とし. 券の評価,原価主義会計では有価証券の評価は. ての土地に投資している場合と拘束性という点. どう考えたらよいのか,という問題をとり上げ. では同じである.ですから,固定資産としての. ようと思います.. 有価証券の評価は,原価主義会計では,必然的. まず,流動資産としての有価証券ですが、初. に原価基準ということになると思うんです,わ. めに触れたように,わが国では,棚卸資産と同. が国の基準では,子会社株式は原価評価ですが,. 様に,原則は取得原価であり,低価基準の適用. 固定資産としての有価証券でも子会社の株式以.
(9) (101). 原価主義会計における資産評価(森田哲弓爾). 外のものには低価基準の適用を認める形になっ. 6.. 9. むすび. ています.これは,子会社の株式を別にすると,. 固定資産としての有価証券と流動資産としての. われわれは,一つの会計の体系の中での基準. 有価証券を区別する客観的基準を決めることが. というものを考えるときには,単に基準の形式. 難しいという,特に商法サイドからの実務的理. 的な面だけに注目するのではなく,その基準が,. 由から出たものです.. その会計の体系の中でどのような役割を果たし. 外国の基準に少し触れておきますと,殆どが. ているのか,どのような意味をもっているのか,. 原価評価を原則としています.アメリカでは固. ということを十分に理解しておくことが必要だ. 定資産としての有価証券にも低価基準を適用す. と思います.原価主義会計において資産が原価. ることになっていますが,評価減した額は当期. で評価されるのは,決して,単に,販売という. の純損益には反映させないで,つまり損益計算. プロセスを経ていないものはすべて原価で評価. 書には計上しないで,株主持分のマイナスとす. するんだというような,形式だけに基づいてい. るとのことです.具体的な処理はよくわからな. るのではなく,固定資産の原価評価にしても棚. いんですが,損益計算上の取扱に関する限り,. 卸資産の原価評価にしても,それぞれの資産の. 原価評価と同じと考えてよいようです.. 性質とかかわり合った,それなりの根拠に基づ. ここで,流動資産としての有価証券の時価評. いた原価評価であるのだということを,理解し. 価について,少し補足しておきたいと思います.. ておくことが必要なのです.ですから,原価主. 流動資産としての有価証券を時価で評価するこ. 義会計では資産の原価評価が大きなウエイトを. と,特に評価益を計上することについては,含. 占めていることは事実ですけれども,そうであ. み益をすべて吐き出してしまうことになるので,. るからといって,原価主義会計では時価評価と. 実務界では反対意見が多いようですが,それは. いうものが全く問題になりえないと考えること. 別として,理論的にも次の点で問題があるとい. は,誤りです.同じように,特定の資産に時価. う意見があります。それは,時価評価説は,有. 評価を適用すると,それをすぐに時価主義会計. 価証券を期末に売ろうと思えば期末の時価で売. と呼ぶのも,少なくとも会計学を勉強している. れる筈だということを前提にしているけれども,. 皆さんは,避けてほしいと思います.それは時. 有価証券をもっている会社がそのすべてを期末. 価基準の適用ではあっても,そのことだけで時. に一度に売り出せば,値下がりしてしまって,. 価主義会計と呼べる体系になるとは考えられな. 期末の時価では売れない筈だ,だから,期末時. いからです.. 価で評価して差額を評価益として計上するのは おかしい,という反対論です.. 時価評価説の中には,そのような点を考慮し. 時間が来ましたので,この辺で終りにいたし ます.今日お話した原価主義会計に関する私の 考え方は,通説とはかなり違っていると思いま. て,期末時価より少し低い価額で評価するのが. すので,その点は注意して下さい.今日の私の. よいという意見もあります.しかし,みんなが. 話が,会計学を勉強していらっしゃる皆さんに. 一緒に同じ行動をとるなどということはあり得. 多少なりとも参考になれば,あるいは,少なく. ないんですから,私は,会計上の評価を問題に. とも皆さんの考え方に混乱を引き起こさないで. するときに,みんなが同じ行動をとったらどう. 済めば,幸いです.御静聴,ありがとうござい. なるか,というようなことを前提として考える. ました.. 必要はない,と思っています.有価証券の時価 評価についても同じです.. 〔もりた. てつや. 日本大学経済学部教授・一橋大学名誉教授〕.
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基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも
層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑
以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒
基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として各時間帯別