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室内照度が高齢者の食欲に与える影響の検討
Effects of brightness of lighting in room on appetite in elder people
光貞美香,大草知子 Mika Mitsusada, Tomoko Ohkusa
宇部フロンティア大学人間健康学部看護学科 Depaertment of Nursing,Faculty of Health Sciences
Ube Frontier University
〒755-0805
山口県宇部市文京台2 丁目 1-1
2 抄録 室内照度が高齢者の食欲に与える影響の検討 【目的】本研究の目的は,高齢者の視覚,特に光覚(室内照度)に焦点を当て,室内照 度が食欲に与える影響を検討することである. 【方法】認知機能障害のない,在宅高齢者24 名を対象とした.対象者には,3 種類の 異なる照度下で同一の食事画像を見せ,アンケート調査およびバイタルサイン,自律神 経系指標を比較検討した. 【結果】異なる室内照度間における血圧,脈拍および自律神経系指標に有意差はなかっ た.しかし,画像観察前後の拡張期血圧は,観察後の値が有意に低下した.主観的評価 では,200 ルクスと比較して,400 および 600 ルクスで料理画像に対する主観的評価値 が高いことが示された. 【結論】室内照度の変化は,高齢者の食欲に関する客観的評価指標には有意な影響を及 ぼさなかったが,主観的評価では,室内照度が高いほど有意に高い評価値が得られた. これらは,高齢者の食欲増進およびより良い食事環境設定につながる可能性がある. キーワード;照度,食欲,高齢者
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Abstract
Effects of brightness of lighting in room on appetite in elder people
[Object]The purpose of this study is to investigate the effects of brightness of lighting in room on appetite in elder people.
[Methods]We studied 24 elder people in home without cognitive impairment. We investigated subjective appetite changes and physiological alterations using meal pictures under different brightness of lighting (BOL) in room. For subjective study, we used questionnaire and for objective one, we monitored the changes in blood pressure (BP), pulse rate (PR), and autonomic nervous activity (ANA).
[Results] There were no statistical significant differences in BP, PR, and ANA between each BOL. However, diastolic BP after the observation of the meal picture was significantly decreased compared with base line value. Concerning about subjective characteristics due to questionnaire, the values of good appetite were significantly higher under 400 and 600 lux than those of under 200 lux.
[Conclusion] Our results showed that in elder people higher BOL affects appetite without alterations in physiological parameters, resulting in an increase of appetite and a better environmental setting of room.
4 Ⅰ.はじめに 高齢化社会を迎え,高齢者の低栄養予防と改善は,わが国における大きな健康課題の 一つとなっている.低栄養の原因は多岐にわたるが,高齢者の食欲に及ぼす身体的要因 としては,感覚器機能,咀嚼・嚥下機能,および消化機能の低下,満腹・摂食中枢の神 経伝達物質の加齢的変化などがあげられる1).感覚機能低下に対する対策としては,食 事の外観やにおい,味付けの工夫などの研究が進められ,その重要性について報告され ている2-5).なかでも,加齢に伴う視覚変化は,食欲に大きく影響すると報告されてい る6-10).視覚は色覚・形態覚・光覚で構成され,色覚・形態覚と食欲に関する研究で は,食欲が色彩6,7),形態8,9),光の色10)の影響を強く受けることが報告されている. 一方,食欲と光覚(照度)の関連についての研究はなく,両者の関連性は不明であ る.高齢者に多く合併する視覚障害のひとつである白内障の主症状は羞明である.羞明 は,水晶体混濁により光が乱反射を起こすことに起因し,この症状のため,高齢者は日 常生活においても低照度を好むようになる.その結果,食事中の室内照度も低くなり, 食欲低下を引き起こす可能性がある. 本研究の目的は,高齢者の視覚,特に光覚(室内照度)に焦点をあて,室内照度が食 欲に与える影響を検討することである.食欲と光覚の関係を明らかにすることは,高齢 者の食欲増進,より良い食事環境設定につながる可能性がある. Ⅱ.研究方法 1.対象 A 県で生活している認知機能障害のない高齢者 24 名(男性 14 名,女性 10 名)であ る. 2.方法 1)研究デザイン 対象者には3 種類の異なる室内照度下で,同一の食事画像を見せ,アンケート調査お よびバイタルサイン,自律神経系指標を比較検討した. 実験は,2011 年 3 月の 4 日間,A 大学実験室と B 地区公民館(以下,実験室)にて 施行した.4 日間の実験室の環境は,室温 19.4~23.5(21.6±1.3)℃,湿度 42~65 (52.2±15.5)%であった.実験プロトコールを図 1 に示す.アイマスク装着後に室内 照度を設定,バイタルサイン(血圧,脈拍数)を測定(A1),アイマスク除去,その後 5 分間,料理画像を見せ,同時に自律神経系指標の測定を行った.実験開始 12 分後に
5 バイタルサイン(血圧,脈拍数)を再度測定(A2)し,アンケート調査を行った.同 様のプロトコールを,同一被験者にて3 種類の室内照度下で施行した.3 種類の室内照 度の順番はランダムに設定した.実験実施時間により,被験者を食後2 時間以内(A 群),食間(B 群),食前 1 時間以内(C 群)の 3 群に分類した. 室内照度設定のためには.デジタル照度計(LX-100,佐藤商事,東京)を用いた. 日本工業規格(JIS)の照度基準によると住宅・病院ともに食卓は 200~500 ルクス程度 が望ましいとされており11),本研究では,3 種類の照度:200 ルクス,400 ルクス,600 ルクスを用いた. 実験に使用する食事画像は,世論調査による日本人の好きな料理12)と先行研究に基 づく食欲増進をきたす色覚を使用した献立13)の料理画像を使用した(図2). 図2.食事画像 図1.実験プロトコール 0 2 6 8 10 14 16(分) ①アイマスク装着 ②室内照度設定 ③アイマスク除去 ④アンケート記入 A1 A2 脈拍・血圧測定 ④ ① ② A1 画像を見る 心拍変動測定 4 ③ A2 12
6 2)バイタルサインおよび自律神経系指標の測定 血圧および脈拍数測定は,血圧計(インテリセンス電子血圧計HEM-762,オムロン 社,京都)を用い,心拍変動測定は携帯型心電計(チェック・マイハート;CMH,株 式会社トライテック社,東京)を用いた.異なる室内照度下で料理画像観察時の自律神 経活性を評価する指標として,交感神経活動指標Low Frequency(以下,LF)と副交感 神経活動指標Hi Frequency(以下,HF)から HF,LF,LF/HF の変動を解析した。 3)料理画像に対する主観的評価指標
食事画像への主観的評価はSemantic Differential Scale Method(SD 法)にて行った.
選定した形容詞対は,食欲や食事に関する文献14)に基づき計 14 項目で構成し,得点が 高いほど料理画像へのイメージが良いことを示す. 4)解析方法 分析は統計ソフトSPSS statistics 21.0 を用いた.解析方法は対象者の特性に関しては t 検定,客観的,主観的指標の評価には一元配置分散分析,その後の多量比較に関して は,等分散が仮定されるものにはTurkey,仮定されないものには Games-Howell 解析を 用いた.数値は平均±標準偏差で表示し,p<0.05 を統計学的有意所見とした. 5)倫理的配慮 本研究は,宇部フロンティア大学の倫理審査委員会にて承認を得た(承認番号 1206).研究者より対象者に,研究の概要,目的,方法および研究協力の撤回の自由を 口頭と書面で説明した.同時に,利益・不利益および危険への配慮,データの取り扱 い,管理方法などについて説明を行い,同意の得られた者を対象者とした. Ⅲ.結果 1.対象者の特性 表1に対象者の特性を示す.全対象者の平均年齢は74±6 歳であった.C 群では,男 性と比較して女性の年齢が有意に低かった(p<0.01).対象者全員が 3 食規則的に摂取 し,食欲は良好であった.高血圧および糖尿病の合併症は17~33%にみられ,眼科通院 歴は11 名(46%),通院中は 3 名(13%)で,疾患は全員が白内障であった.食事中の 照度が気になる者は9 名(38%)であった.
7 2.バイタルサインの変化 表2 に異なる室内照度下での,各群における食事画像の観察前後の血圧,脈拍数の変 化を示す.異なる室内照度間における血圧および脈拍数の有意差はなかった.画像観察 前後の拡張期血圧の変化に関しては,200 ルクスでは A 群および B 群に,400 ルクスで はC 群に,600 ルクスでは A 群で観察後の値が有意に低下した. 3.心拍変動解析による自律神経系指標の変化 表3 に異なる室内照度下での食事画像観察前後の交感神経活性の変化を示す.各群に おいて,異なる室内照度下での自律神経指標に有意差はなかった. 表3.自律神経指標の比較 表2.バイタルサインの変化 表1.対象者の特性 時間帯による群別人数 男性 女性 男性 女性 男性 女性 5 5 5 2 4 3 年齢(歳) 75±5 71±5 77±3 75±2 78±1 70±1** あり 5 5 5 2 4 3 なし 0 0 0 0 0 0 高血圧 あり 2 0 2 1 3 0 なし 3 5 3 1 1 3 糖尿病 あり 2 0 2 0 0 0 なし 3 5 3 1 4 3 その他 あり 5 1 2 0 1 0 なし 0 4 3 2 3 3 **p < 0.01 vs.男性 A群(食後2時間群) B群(食間群) C群(食前1時間群) 性別(n) 食欲(n) 合併症の有無(n) 前( ) 後( ) 前( ) 後( ) 前( ) 後( ) 収縮期血圧(mmHg) 130±19 123±18 127±22 130±17 140±20 135±15 拡張期血圧(mmHg) 79± 8 75± 8* 78±11 75± 7 80± 7 77± 3** 脈拍(回/分) 80± 6 79± 8 81± 8 79± 7 83±12 81± 9 収縮期血圧(mmHg) 149±22 135±17 149± 8 142± 6 147±18 148±15 拡張期血圧(mmHg) 83±12 77± 7* 87± 8 86± 3 85± 7 86± 3 脈拍(回/分) 78± 6 71± 9 80± 7 81± 3 77± 7 80± 4 収縮期血圧(mmHg) 13± 5 131± 5 131± 5 128± 4 142±14 134± 5 拡張期血圧(mmHg) 79± 8 79±11 81± 7 78± 9* 86± 8 81±12 脈拍(回/分) 76±13 75±11 73±13 74±12 77±13 76±11 *p < 0.05 , **p < 0.01 vs. 前 C群 (食前1時間群) 200ルクス 400ルクス 600ルクス A群 (食後2時間群) B群 (食間群) A1 A2 A1 A2 A1 A2 A1 A1 A2 A1 A2
8 4.料理画像の主観的評価指標 表4 に異なる室内照度下での,各群における食事画像の主観的評価比較を示す. 各項目値を200 ルクスと比較検討した結果,A 群では,600 ルクスで 14 項目中 6 項 目が有意に高値を示した.B 群では,400 ルクスで 14 項目中 3 項目が有意に高値を示 し,600 ルクスで 14 項目中 5 項目が有意に高値であった.C 群では,いずれの室内照 度下での項目値に有意差はなかった.表5 に主観的評価 14 項目平均値の各群にける室 内照度比較を示す.全ての群において,200 ルクスと比較して 400 及び 600 ルクスでは 有意に高い評価値を示した.A 群では,400 ルクスと比較して 600 ルクスでも有意に高 い評価値を示した. 以上の結果より,室内照度が高いほど,料理画像に対する主観的評価値が高いことが 示された. 表3.自律神経指標の比較 200ルクス 400ルクス 600ルクス HF(nu) 53±15 47±11 41±15 LF(nu) 47±15 54±11 59±16 LF/HF 1± 1 1± 0 2± 3 HF(nu) 48±31 58±20 55±27 LF(nu) 52±31 42±20 45±27 LF/HF 2± 2 1± 1 1± 1 HF(nu) 31±20 36±21 32±24 LF(nu) 69±20 68±21 68±24 LF/HF 4± 2 3± 2 4± 2
HF; high frequency, LF; low frequency,nu;normalized unit A群 (食後2時間群) B群 (食間群) C群 (食前1時間群)
9 Ⅳ.考察 本研究は,高齢者の視覚,特に光覚(室内照度)に焦点をあて,室内照度が食欲に与 える影響を検討した本邦では初めての研究である.研究の結果,1)室内照度の変化 表5.主観的評価の比較 形容詞対 1点 - 5点 惣菜 - ご馳走 2.5±1.2 2.9±1.3 4.1±0.7* 素朴 - しゃれている 2.6±1.2 2.7±1.2 3.7±0.8 地味 - 派手 2.6±1.3 2.8±1.1 3.7±0.8 親しみにくい - 親しみやすい 2.7±1.3 3.4±0.8 4.4±0.5** まずそう - おいしそう 2.6±1.5 3.3±0.9 4.1±0.8* 食欲わかない - 食欲わく 2.7±1.5 3.1±0.9 4.0±0.8 老人向き - 若者向き 1.9±1.0 2.2±0.9 2.4±1.2 男性向き - 女性向き 3.0±0.9 3.0±1.0 2.9±1.4 安価 - 高価 2.1±0.8 2.7±0.8 3.2±0.4** 粗野 - 繊細 2.5±1.2 3.1±0.7 3.6±0.7 冷たい - 温かい 2.2±1.2 3.0±1.0 3.6±1.2* 悪い - 良い 2.5±1.2 3.2±1.0 4.1±0.8** 嫌い - 好き 2.6±1.5 3.2±0.9 3.7±0.6 感じ悪い - 感じ良い 2.6±1.5 3.3±0.9 4.0±0.8 惣菜 - ご馳走 2.2±1.2 2.8±1.4 3.5±1.5 素朴 - しゃれている 2.1±1.2 2.8±0.9 3.2±0.9 地味 - 派手 2.1±1.2 2.9±1.0 3.2±1.0 親しみにくい - 親しみやすい 2.4±0.9 3.5±1.1* 3.6±1.2* まずそう - おいしそう 2.4±1.3 3.3±0.9 4.0±1.2 食欲わかない - 食欲わく 2.4±1.2 3.3±1.1 3.8±1.1* 老人向き - 若者向き 2.4±1.2 2.4±0.9 2.5±0.9 男性向き - 女性向き 2.7±0.9 2.9±0.7 3.0±0.9 安価 - 高価 1.9±0.9 2.7±1.0 2.8±0.8 粗野 - 繊細 2.7±0.9 3.1±1.0 3.1±0.9 冷たい - 温かい 2.0±0.9 3.3±1.1** 3.6±1.0** 悪い - 良い 2.7±1.0 3.4±1.0 3.8±1.2* 嫌い - 好き 2.8±1.1 3.4±1.0 3.4±1.1 感じ悪い - 感じ良い 2.2±0.9 3.3±1.0* 3.5±1.0* 惣菜 - ご馳走 2.6±0.7 2.7±1.0 3.1±1.2 素朴 - しゃれている 2.7±0.8 2.8±1.1 2.8±1.1 地味 - 派手 2.2±0.7 2.8±1.1 2.8±1.2 親しみにくい - 親しみやすい 3.0±0.9 3.7±1.3 3.6±1.2 まずそう - おいしそう 3.2±0.9 3.5±1.1 3.8±1.3 食欲わかない - 食欲わく 3.1±1.0 3.6±1.2 3.8±1.3 老人向き - 若者向き 2.5±0.8 2.5±1.0 3.0±1.3 男性向き - 女性向き 2.8±0.8 2.9±0.8 3.2±1.0 安価 - 高価 2.5±0.7 2.7±1.0 2.9±1.2 粗野 - 繊細 2.6±0.8 2.8±0.7 3.2±1.1 冷たい - 温かい 2.6±0.9 3.1±1.2 3.4±1.4 悪い - 良い 2.9±0.8 3.3±1.2 3.7±1.2 嫌い - 好き 2.2±1.0 3.6±1.2 3.8±1.2 感じ悪い - 感じ良い 3.1±1.1 3.4±1.3 3.8±1.3 C群 (食前1時間群) *p<0.05,**p<0.01,vs.200ルクス 200ルクス 400ルクス 600ルクス A群 (食後2時間群) B群 (食間群)
10 は,客観的評価指標(バイタルサインおよび自律神経系指標)には有意な影響を及ぼさ なかったが,2)主観的指標の検討にて,室内照度が高いほど,有意に高い評価値が得 られたことが判明した.本研究の結果は,食欲と光覚の関係を明らかにし,高齢者の食 欲増進,およびより良い食事環境設定につながる可能性があると思われる. 以下に,室内照度の違いが食欲に及ぼす影響について,客観的指標および主観的評価 の結果に基づき考察する. 1.光覚が及ぼす客観的評価への影響 バイタルサイン(血圧,脈拍数)の変化を検討した結果では,3 群とも,室内照度の 差による有意差はなかった.一方で,5 分間の安静を保った食事画像観察前後では,一 部の群において血圧(特に拡張期血圧)が有意に低下した.これは,室内照度の変化に よる影響ではなく,5 分間安静による効果と推測した. 自律神経活性は食欲中枢に直接作用を及ぼし,副交感神経活性の上昇は,食欲を増進 することが知られている15).本研究では,自律神経系の変動を可視化する目的で心拍 変動解析を用いた.この解析方法を用いた先行研究では,日常生活での自律神経系の変 化が心拍数のゆらぎに反映されること16)や喫煙や飲酒による自律神経系の変化と心拍 数変化の関係17)が報告されている.本研究では,室内照度の変化が有意に自律神経系 の変化:副交感神経活性の上昇を引き起こすことの証明はできなかった.この原因とし ては,対象者の生理的背景(高血圧や糖尿病などの合併症,内服薬等)のばらつきが一 因となった可能性がある.さらに,今回の研究では,自律神経活性変化の評価を,各個 人の相対的比較として行っておらず,絶対値比較を行ったため,正確な検討になってい ない可能性がある. 2.光覚が及ぼす主観的評価への影響 本研究では,室内照度が高いほど,料理画像に対する主観的評価値が高値であること が示された.C 群(食前 1 時間群)では,評価 14 項目別での有意差はなかったが,こ れは空腹時での実験であったため,室内照度が低下していても空腹状態が食欲に影響を 及ぼした可能性がある.一方,照度200 ルクスでは,A 群(食後 2 時間群)および B 群(食間群)において,高齢による視覚機能低下の影響による暗順応時間増加や視力低 下が,画像情報伝達時間に延長をきたした可能性がある.阿部らは,視覚遮断が食欲低 下を引き起こすと報告している18).視覚低下は不快な感覚であり,その結果,食物に 対する記憶刺激,さらには食欲出現まで時間的遅延が生じる可能がある. 一方,照度600 ルクスは,病院外来で一般的に用いられる照度である.食事画像情報
11 を迅速に認知することにより,食事画像イメージに対して高評価が得られたと考えられ る.また,十分な照度により,料理の輪郭が鮮明になり,料理に対する記憶との結びつ けが容易になったことから,食欲増進に良い影響を与えたと考える.料理の認識は形態 覚刺激9)であり,記憶刺激とつながり,食欲増進のためには欠かせない重要なもので あると思われる. Ⅴ.研究の限界と課題 本研究の限界は以下である.1)対象者数が少ないこと,2)対象者背景(合併症や 内服薬等)にばらつきがあること,3)自律神経系指標の評価が,絶対値比較となって おり,各個人での実験前後の相対比較となっていない.今後は,対象者数を増やし,背 景の統一を踏まえた,さらなる研究が必要と思われる. Ⅵ.結論 本研究結果より,室内照度の変化は,客観的評価指標(バイタルサインおよび自律神 経系指標)には有意な影響を及ぼさなかったが,主観的指標の検討にて,室内照度が高 いほど有意に高い評価値が得られたことが判明した.これらの結果は,高齢者の食欲増 進,およびより良い食事環境設定につながる可能性があると考えられる. 謝辞 本研究にご協力頂いた対象者の皆さま,および協力スタッフに感謝する. COI なし 文献 1)高橋龍太郎:高齢者と低栄養.月間総合ケア,Vol.15 (7),12-13(2005). 2)三橋富子,戸田貞子,畑江敬子:高齢者の味覚感受性と食品嗜好.日本調理科学会 誌,Vol,41 No(4),241-247(2008). 3)杉浦敏文,沖田善光,鈴木紳弐:吉田法による麦茶のにおいの効果の基礎的検討. Aroma Research,Vol.9 No(3),269-272(2008).
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