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実践的指導力の基礎を培う「教職インターンシップ実践」の在り方 : 学校と大学の協働による実践を通して: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

実践的指導力の基礎を培う「教職インターンシップ実践

」の在り方 : 学校と大学の協働による実践を通して

Author(s)

上地, 幸市; 嘉数, 健悟

Citation

沖縄大学人文学部紀要(22): 69-76

Issue Date

2019-03

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/23887

Rights

沖縄大学人文学部

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〈実践報告〉

実践的指導力の基礎を培う「教職インターンシップ実践」の在り方

― 学校と大学の協働による実践を通して ―

 

上地 幸市

嘉数 健悟

要 約  本報告は,学校と大学の協働による「教職インターンシップ実践」において学生 がどのようなことを学び,どのようなことを課題としているのかを明らかにし,学 生の実践的指導力の基礎を培うための基礎資料を得ることを目的とした。その結果, 以下の 4 点が明らかになった. 1)学生たちは「教職インターンシップ実践」における学校現場での継続的な教育活 動において「各教科等の授業への指導補助及び教材・教具・掲示物等の制作」や「問 題を抱える生徒や別室登校生徒等,個別の生徒への支援」についての成果や課題 を認識する傾向にある。 2)大学での事前指導の学びと学校現場における「体験的な学び」のつながりには, 大学における教科指導の在り方や生徒指導の 3 機能を生かした生徒との関わり方 等があげられる。 3)一部の学校にとどまっている教育活動について理解と協力を得る必要がある。 4)「つなぐ・つながる力」の基礎を培う体験的な学びの機会が少ないため,地域資 源や地域文化と生徒をつなぐ横断的なカリキュラムの事例提供など,大学におけ る教職課程のカリキュラムの検討が求められる。 キーワード:実践的指導力,教職インターンシップ,協働,理論と実践の往還 1.問題の所在と研究の目的  1.1 問題の所在  本学では,2009 年に那覇市教育委員会,2011 年に糸満市教育委員会,南城市教育委員会, 豊見城市教育委員会,そして 2012 年に浦添市教育委員会,南風原町教育委員会,八重瀬町教育 委員会の 5 市 2 町と協定を交わし,「教育ボランティア実践Ⅰ・Ⅱ」を科目として設置し開講し てきた.2014 年度には,3 市 1 町教育委員会(那覇市,浦添市,豊見城市,南風原町)との協 定を見直し,2015 年度から「教育ボランティア実践Ⅰ」を「教職インターンシップ入門」とし,「教 育ボランティア実践Ⅱ」を「教職インターンシップ実践」と名称を変更し,これまでの「ボランティ ア」から学生の教師としての力量形成を目指した「インターンシップ」として内容の充実が図 られるようにした。

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沖縄大学人文学部紀要 第 22 号 2019  そこで,本実践は学校と大学の協働による「教職インターンシップ実践」において学生がどの ようなことを学び,どのような課題を認識しているのかを明らかにすることを目的とする。具体 的には、以下の 2 点である. ①「教職インターンシップ実践」が学校と大学の協働により実践されているかを明らかにする。 ②大学での学びが学校現場における「体験的な学び」に生きて働いているかを明らかにする。  以上を踏まえ,「教職インターンシップ実践」における学生の学びの実態から,今後の教職イ ンターンシップの方向性を探求し,学生の実践的指導力の基礎を培うための基礎資料を得る。 2.研究方法 2.1.「教職インターンシップ実践」の概要 2.1.1. 科目の目標について  「教職インターンシップ実践」は,教師を目指す中等の学生が学校の教育活動に一年を通して 関わり,教師の仕事の意義や難しさ及び指導技術や集団に対する指導方法、生徒への関わり方等, 体験を通して学ぶことをねらいとしている。具体的には以下の通りである。 ・授業力の向上に係る指導技術を学ぶ ・生徒指導,学級経営の在り方を学ぶ ・特別な教科・道徳や総合的な学習の時間の指導方法を学ぶ ・体験を通して学校行事や対外行事の在り方を学ぶ ・教職への適性を確かめ、大学での学びに反映させる  上記の修得を目指し,本授業では大学での学びと学校現場での体験的な学びの往還として,事 前指導 4 コマ,中間指導 4 コマ,事後指導 3 コマの計 11 コマの指導と学校現場での 19 回以上 の体験実習を義務づけている。特に,「教職インターンシップ実践」は,3,4 年次に受講するた め,2 年次に受講した「教職インターンシップ入門」での「連携による学習支援活動」の体験的 な学びを基礎にして,さらにキャリアアップや学びの体験を深め,実践的指導力の基礎を培うこ とを目指して,学校と大学の「融合による教育活動」に参画している。 2.1.2.「教職インターンシップ実践」の学校での実践内容  大学は,学生の受け入れを希望する学校の支援希望内容に可能な限り対応するとともに,学生 の専門性や資質・能力,力量及び希望校等を考慮し配置する。また,学校は,学生の力量形成に 資する指導技術や人間関係形成能力等を高め,実践的指導力の基礎を培うことを目指した体験的 な学びの機会を提供する。  そこで,3,4 年次に履修する「教職インターンシップ実践」は,学校の教育活動を支援する とともに,学校の教育活動に支障のない範囲で,学生のキャリアアップや学びの体験を深めるこ とを目指している。具体的には,以下の 7 項目を内容とする。  ①各教科等の授業への指導補助及び教材・教具・掲示物等の制作  ②学級担任等との協働による道徳・特別活動等の授業実践・補助  ③問題を抱える生徒や別室登校生徒等,個別の生徒への支援  ④総合的な学習の時間におけるキャリア講話の補助  ⑤生徒会担当教師等との協働による生徒の活動支援  ⑥校長,教頭,研究主任,生徒指導主事等の講話・講座

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 ⑦職員朝会,学年会,教科研修会等の参観 2.1.3. 大学で行う事前指導の概要 (1)「教科指導力」の基礎について  ・授業づくりの前提としての学習のルールづくりをペア・グループワークを通して学ぶ  ・授業の組み立て方「めあてを立てるーめあて達成に向けて活動するー活動を振り返るー新た な課題を見つける」一連の学習過程について学ぶ (2)「学級経営力」の基礎について  ・より良い学級づくりの前提としての生活のルールづくりをペア・グループワークを通して学 ぶ  ・生徒や教師との関係性を高めるためのリフレクション等のスキルを学ぶ (3)「生徒指導力」の基礎について  ・学級づくり、授業づくりの前提としての生徒指導の 3 機能(自己存在感を与える,共感的 な人間関係づくり,自己決定の場を与える)について学ぶ  ・「いじめ」,「不登校」等,多様な学校課題の実状を把握してその対応策について学ぶ (4)「つなぐ・つながる力」の基礎について  ・生徒と教材(授業)をつなぐための教材研究の大切さについて学ぶ  ・授業づくり,学級づくりの充実を目指して,地域資源や地域人材とつながる方法について 学ぶ 2.1.4. 大学で行う中間・事後指導の概要  ・「見たこと,感じたこと,学んだこと,実践したこと,学び直したいこと,課題としたいこと」 について中間報告書・最終報告書を作成し,提出する。  ・前期及び実践終了後に「楽しかったこと,嬉しかったこと,辛かったこと,失敗したことに ついて,振り返りシートに記入しグループで発表会を行う。  ・前期及び実践終了後の活動状況を 8 つの評価項目に沿って自己評価し提出する。  ・後期に向けて,学びたいこと,課題にしたいことについて「調査研究計画書」を作成し,実 践後に調査研究結果をまとめ提出する。  ・ 実践の活動状況や調査研究結果をまとめ,プレゼンテーション資料を作成し発表会を行う。 2.2. 調査内容とその分析方法 2.2.1. 体験した教育活動  学校での「教職インターンシップ実践」においてどのような教育活動を体験しているのかを明 らかにするために,中間指導と事後指導時の振り返りに「見たこと,感じたこと,学んだこと, 実践したこと,学び直したいこと・課題としたいこと」について記述させた。記述された内容は ①各教科等の授業への指導補助及び教材・教具・掲示物等の制作,②学級担任等との協働による 道徳・特別活動等の授業実践・補助,③問題を抱える生徒や別室登校生徒等,個別の生徒への支援, ④総合的な学習の時間におけるキャリア講話の補助,⑤生徒会担当教師等との協働による生徒の 活動支援,⑥校長,教頭,研究主任,生徒指導主事等の講話・講座,⑦職員朝会,学年会,教科 研修会等の参観,の 7 つの視点について演繹的に分類を行った。また,「見たこと,感じたこと, 学んだこと,実践したこと」に記述された内容は「成果」として,「学び直したいこと・課題と したいこと」に記述された内容は「課題」として分類を行った。なお,分類は,「教職インター

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沖縄大学人文学部紀要 第 22 号 2019 ンシップ」を担当する教員 2 名で行った。 2.2.2. 大学での事前指導の内容と学校現場での体験的な学びのつながり  大学での学びが学校現場における「体験的な学び」に生きて働いているのかを明らかにするた めに,中間と事後指導においてふり返りシートに「楽しかったこと,嬉しかったこと,辛かった こと,失敗したこと」について記述させた。記述された内容は,事前指導において指導を行った, ①「教科指導力」の基礎について,②「学級経営力」の基礎について,③「生徒指導力」の基礎 について,④「つなぐ・つながる力」の基礎について,の 4 つの視点について演繹的に分類した。 また,「楽しかった,嬉しかったこと」に記述された内容は「成果」として,「辛かったこと,失 敗したこと」に記述された内容は「課題」として分類を行った。分類は,「教職インターンシップ」 を担当する教員 2 名で行った。 3.結果と考察 3.1.「教職インターンシップ実践」における学校現場での教育活動  表 1 は,「教職インターンシップ実践」の中間指導,事後指導において学校現場で体験した教 育活動の内容を分類した結果を示したものである。  まず,①各教科等の指導補助及び教材・教具・掲示物の制作の「成果」については,中間の記 述数が 9 個と多く,事後に 4 個と少なくなっている.その主な理由として,前半の活動は,主 に授業参観を通して教師としての姿勢や指導技術等を学び,指導補助活動を通して,教科指導力 の重要性を体験する機会が多かったことがあげられる。また,後半は教科指導の仕方にも慣れ, よりきめ細やかな指導方法を学ぶ機会が増えたが,問題を抱える生徒への対応等に関心が移って いったことが考えられる.一方で,「課題」については,中間の記述数が 4 個,事後が 7 個と増 えている.その主な理由として,前半は授業参観や指導補助活動を通して,授業の姿をイメージ する体験にとどまっており,課題意識が低いことがあげられる.しかし,後半は課題発見力や学 習指導全体を見通す力が育ってきており,きめ細やかな指導技術や生徒主体の授業づくり等,課 題への認識が深まったことが推察される。  次に,②学級担任等との協働による道徳・特別活動の授業実践・補助の「成果」については, 中間の記述数が 3 個,事後が 2 個となっている.記述数が少ない主な理由は,中間,事後とも 学級担任との関係性を構築する機会が少なく,道徳や学級活動の授業参観及び T・T による授業 参加が少なったことが考えられる。また,一部に道徳の指導案作りに関わり,指導教諭との T・ T による授業実践を行った事例も見られた。一方,「課題」について,中間の記述数が 0 個で, 事後が 1 個と少ない。記述数が少ない主な理由としては,道徳や特別活動の授業参観や T・T による授業参加があまりできず,課題を発見するに至らなかったことが考えられる。  次に,③問題を抱える生徒や別室登校生徒等,個別の生徒への支援の「成果」についての中間 の記述数が 3 個,事後が 7 個と多くなっている.主な理由として,前半は学校の実状や学生と 生徒との関係など,個別に生徒に関わる経験が少なく,後半になるにつれて,生徒の状況や学生 の力量等を学校側が把握することで,多様な個性を持つ生徒への対応を任されるケースが増えた ことがあげられる.一方で,「課題」については,中間の記述数が 2 個事後が 3 個となっている. その主な理由として,前半は,多様な個性をもった生徒との人間関係づくりに課題意識があり, 後半により深く生徒と関わることができるようになったことから,個々の生徒に対応した指導技

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術や共感関係を作ることへの課題が多くなっていると考えられる。 表 1 「教職インターンシップ実践」での体験内容とその記述例 実践内容 記述例と記述数 成 果 課 題 中間 事後 中間 事後 ①教科等の授業への指導補 助及び教材・教具・掲示物 等制作 9 4 9 4 (中間) ・英語,理科,数学,社会,体育の授業参観で電子 黒板の活用の仕方やホワイトボードの使い方、アイ フォンでの動画撮影など,ICT 教育の実際を見るこ とができた. (事後) ・種目の特性を考慮した授業計画、安全面への配慮、 技指導のための電子黒板による資料提供等を学ぶこ とができた. (中間) ・発問の工夫やめあてを引き出す工夫,生徒の興味 を引きつける授業展開の仕方,そのための教材研究 や教具づくりについて学びたい. (事後) ・生徒が満足感を得られる授業の進め方や留意点な どを分かりやすく簡潔に伝える指導技術を身につけ たい. ②学級担任等との協働によ る道徳・特別活動の授業実 践補助 3 2 0 1 (中間) ・声のトーンや表情,教師の立ち振る舞いで生徒の やる気が引き出され,授業の雰囲気が大きく変わる ことを学んだ. (事後) ・一人一人に役割をもたせたり,活躍できる場をつ くったり,仲間と協力したり,コミュニケーション を深めることが生徒の成長につながるということが 分かった (事後) ・生徒指導の機能を育むための授業づくりや学級経 営について学びたい. ③問題を抱える生徒や別室 登校生徒等,個別の生徒へ の支援 3 7 2 3 (中間) ・どの生徒にも平等に,明るく,元気に,パワフル に話しかける教師の姿勢を学んだ.・生徒の様子や 指導方法について,教師間の情報共有がしっかり行 われていた. (事後) ・生徒の話を否定せず考えを認め自己存在感や自己 肯定感を高める指導の工夫を学んだ.・家庭の事情 や問題を抱える生徒への支援の在り方や教師の役割 を知ることができた. (中間) ・生徒のやる気を引き出す指導の工夫や生徒の意見・ 考えを引き出す発問の工夫を学び,後期に実践して みたい.・生徒と関わる上での良い距離感や信頼さ れる関係づくりについて学びたい. (事後) ・多様な生徒に対応した関わり方,コミュニケーショ ンの取り方を学びたい. ④生徒会担当教諭等との協 働による生徒の活動支援 3 1 0 0 (中間) ・教師が率先垂範して規則(早登校や挨拶など)を 守っているため,生徒も守ることができていると感 じた. (事後) ・生徒が自分のことを表現する場、生徒の考えを知 り関わる機会を創ることを目的に「成長木」の取り 組みを行った. (中間) 英語,理科,数学,社会,体育の授業参観で電子黒 板の活用の仕方やホワイトボードの使い方、アイ フォンでの動画撮影など,ICT 教育の実際を見るこ とができた. (事後) ・種目の特性を考慮した授業計画、安全面への配慮、 技指導のための電子黒板による資料提供等を学ぶこ とができた. ⑤総合的な学習の時間にお けるキャリア講話の補助 3 7 2 3 ⑥校長,教頭,研究主任,生 徒指導主事等の講話・講座 0 0 0 0 ⑦職員朝会,学年会,教科 研修会等への参観 0 1 0 0 (事後) ・研修会に参加して,生徒徒の発言・意見からめあ てを引き出し,まとめられる授業や知的好奇心をく すぐるような授業づくりがしたいと思った.

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沖縄大学人文学部紀要 第 22 号 2019  次に,④生徒会担当教師等との協働による生徒の活動支援の「成果」については,中間の記述 数が 3 個,事後が 1 個と少ない。主な理由として,前半・後半とも教科指導や問題を抱える生徒等, 個別生徒への対応を中心とした教育支援活動に重点が置かれたためと考えられる.そのため,「課 題」について認識できるような機会がなく,記述がなかったと思われる。  最後に,⑤総合的な学習の時間におけるキャリア講話の補助,⑥校長,教頭,研究主任,生徒 指導主事等の講話・講座,⑦職員朝会,学年会,教科研修会等の参観については,0 ~ 1 個と少 ない。そのため,「教職インターンシップ実践」の在り方についての共通認識や学校現場の状況 を踏まえた在り方を今後検討する必要があると考えられる。  このように,「教職インターンシップ実践」において学校現場で継続的な教育活動への関わり を通して,学生たちは,①各教科等の授業への指導補助及び教材・教具・掲示物等の制作や③問 題を抱える生徒や別室登校生徒等,個別の生徒への支援についての「成果」や「課題」を認識し ていると考えられる。また,「課題」については,中間よりも事後において記述数が増えており, 指導技術や人間関係形成能力,課題発見・解決能力等についての課題意識の高まりがその背景に あると推察される。  一方で,学校によっては,「学級担任等との協働による道徳,特別活動の授業実践・補助」や「生 徒会担当教師等との協働による生徒の活動支援」に係る体験的な学びの機会が得られた学生もい るため,取り組みの事例を他校にも紹介するなどして,学校の理解と協力を得ることも必要であ ると考えられる。 3.2. 大学での事前指導と学校現場での体験的な学びのつながり  表 2 は,大学での事前指導の内容について学校現場での教育活動を通して,どのような体験 的な学びをしているのかについて分類した結果を示したものである。  まず,①「教科指導力」の基礎についての「成果」は,中間が 5 個,事後が 8 個と増えている。 主な理由として前半は,特別な支援を要する生徒等,個別指導が主な関わりであったが,後半は, T・T による授業など,授業への関わりが増えてきたことが考えられる。一方で,「課題」につ いては,中間が 4 個,事後が 2 個となっている。学生たちは,「難しい問題の解き方が分からない」 や「勉強に意欲がない生徒への関わり方がわからない」と記述しており,指導技術や関係性の構 築に「課題」が残っていると思われる。 表2 事前指導と学校現場での学びのつながり 実践内容 記述数 成 果 課 題 中間 事後 中間 事後 ①「教科指導力」の基礎について 5 8 4 2 ②「学級担任力」の基礎について 5 4 4 3 ③「生徒指導力」の基礎について 3 4 2 5 ④「つなぐ力・つなげる力」の基礎について 3 2 1 0  次に,②「学級経営力」の基礎についての「成果」は,中間が 5 個,事後が 4 個とあまり変 化はない。学生たちは,「不登校の生徒が登校できるようになった」や「『授業中居眠りしないで 頑張ったよ』という生徒の報告があった」などの記述をしており,年間を通して朝の会や給食指

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導,清掃指導等で生徒と関わることにより,子どもたちとの関係性や対話力が深まっていると考 えられる。一方で,「課題」については,中間が 4 個,事後が 3 個となっている。学生たちは,「友 達感覚で話しかけた」や「授業態度の悪い生徒への接し方が分からない」と記述しており,生活 規律や学習規律の定着を図る指導力に「課題」が残っていると考えられる。  次に,③「生徒指導力」の基礎についての「成果」は,中間が 3 個,事後が 4 個とあまり変 化は見られない。学生たちは,「落ち着きのない生徒に関わることにより,授業に取り組んでく れた」や「勉強しながら,生徒が自分のことを話してくれた」,「関わりが苦手な生徒に話しかけ たら,少しずつ話せるようになった」などと記述しており,問題を抱える生徒や基礎学力の弱い 生徒への対応の仕方を学び、生徒指導力の基礎を培うことができていると思われる。一方で,「課 題」については,中間が 2 個,事後が 5 個と少し増えている.学生たちは,「授業中のおしゃべ りや遊ぶ生徒への注意の仕方が分からない」や「集中力が切れて何もしない生徒への対応が分か らない」と記述しており,生徒指導の 3 機能を生かした指導力に「課題」が残っていると考え られる。  最後に,④「つなぐ・つながる力」の基礎についての「成果」は,中間が 3 個,事後が 2 個 と少ない。主な理由としては,部活動や学校行事への参加が単なる「参加」にとどまっており, 地域や保護者などが学校とどのように関わり,どのようにつながっているのかを体験することが できていないため,「成果」が見られなかったと考えられる。  以上のことから,大学での事前指導の学びと学校現場における「体験的な学び」のつながりには, 大学における教科指導の在り方や生徒指導の 3 機能を生かした生徒との関わり方,学級づくり のポイント等があると考えられる。一方で,地域資源と生徒をつなぐことや現場教師や地域人材 とのつながり,地域文化とつながる方法等については,課題が認識されにくいことが示唆された。 4.成果と今後の方向性  本実践は学校と大学の協働による「教職インターンシップ実践」において学生がどのようなこ とを学び,どのような課題を認識しているのかを明らかにすることを目的とした。その結果,以 下の 2 点が明らかになった. 1)「教職インターンシップ実践」における学校現場での継続的な教育活動は,「各教科等の授業 への指導補助及び教材・教具・掲示物等の制作」や「問題を抱える生徒や別室登校生徒等, 個別の生徒への支援」についての「成果」や「課題」を認識する傾向にある。 2)大学での事前指導の学びと学校現場における「体験的な学び」のつながりには,大学におけ る教科指導の在り方や生徒指導の 3 機能を生かした生徒との関わり方,学級づくりのポイン ト等があげられる。   また,改善に向けた今後の方向性として,以下の 2 点を挙げることができる。 1)学校によっては,「学級担任等との協働による道徳,特別活動の授業実践・補助」や「生徒 会担当教師等との協働による生徒の活動支援」に係る体験的な学びの機会が得られた学生も いるため,一部の学校にとどまっている多様な教育活動について学校の理解と協力を得る必 要がある。 2)「つなぐ・つながる力」の基礎を培う体験的な学びの機会は総じて少ないため,地域資源や 地域文化と生徒をつなぐ横断的なカリキュラムの事例提供や地域人材との協働による学習活 動の進め方など,大学における教職課程のカリキュラムの検討が求められる。

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沖縄大学人文学部紀要 第 22 号 2019 <付記>  本実践は,科学研究補助金挑戦的萌芽(16k13590)の補助による成果の一部である。 <引用・参考文献> 中央教育審議会(2006)今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1212707.htm( 参 照 日:2018 年 10 月 31 日) 中央教育審議会(2015)これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い,高め合う教 員育成コミュニティの構築に向けて~ h t t p : / / w w w . m e x t . g o . j p / c o m p o n e n t / b _ m e n u / s h i n g i / t o u s h i n / _ _ i c s F i l e s / a f i e l d f i le/2016/01/13/1365896_01.pdf(参照日:2018 年 10 月 31 日) 沖縄大学(2018)平成 29 年度 文部科学省委託事業「教育実習との役割を明確にした「学校インターンシッ プ」の在り方-教育委員会・学校・大学の連携を通して-

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