ウドンコカビ科の nrDNA および MCM7 配列に基づく分子系統解析
○白水貴1)・高松進1)・橋本陽2)・Jamjan Meeboon3)・大熊盛也2)(1)三重大院生物
資源;2)理研 BRC-JCM;3)農研機構野花研)
Phylogenetic overview of Erysiphaceae based on nrDNA and MCM7 sequences by T. Shirouzu1), S. Takamatsu1), A. Hashimoto2), J. Meeboon3), M. Ohkuma2) (1) Mie Univ.; 2) RIKEN; 3) NIVTS) ウドンコカビ科(Erysiphaceae,Helotiales)は,約 10,000 種の被子植物にうどんこ病を引き起こ す絶対寄生菌からなる分類群である.近年,ウドンコカビ科の分類や進化に関する研究は,分子系統 推定によって得られる系統仮説に基づいて進められている.しかし,ウドンコカビ科の系統推定に用 いられた塩基配列データは約 50 分類群の nrDNA にとどまっており,科内,特に連や属などの高次 の系統関係については十分な検討がなされていない.そこで本研究では,ウドンコカビ科内のより信 頼性の高い系統仮説を得ることを目的とし,約 270 分類群のうどんこ病菌から得た nrDNA(LSU, 5.8S,SSU)および MCM7 の塩基配列に基づく系統推定を行った.その結果,先行研究で報告され ている系統樹とほぼ同じ樹形が得られたが,その一方,① Golovinomyceteae と Phyllactinieae の分 岐順序が異なる,② Phyllactinieae が単系統群にならない,などの新たな系統関係も示された. Phyllactinieae と Erysipheae は Golovinomyceteae との分岐後に多様化していることが推定され,非 連鎖分生子+内部寄生または非連鎖分生子+外部寄生の系統が,連鎖分生子+外部寄生の系統から派 生する仮説が示された.Phyllactinieae は Phyllactinia + Leveillula のクレードと,Pleochaeta およ び Queirozia からなるクレードに分かれた.この結果は,Phyllactinieae の分類や,ウドンコカビ科 における内部寄生の進化について新たな解釈が必要であることを示している.本研究では,過去最大 規模のデータセットに基づく系統推定によりウドンコカビ科内の系統仮説を更新することができた が,依然,高次の系統関係は不明瞭であった.ウドンコカビ科のより頑健な系統仮説を得るためには, タンパク質コード領域を含むさらなる配列データを加えた系統推定が必要である.