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在宅強化型介護老人保健施設に関する文献検討 ─在宅復帰率の向上に向けた取り組みと課題─

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Academic year: 2021

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(1)佐伯他:在宅強化型介護老人保健施設に関する文献検討. 43. 資 料. 在宅強化型介護老人保健施設に関する文献検討 ─ 在宅復帰率の向上に向けた取り組みと課題 ─ 佐伯 恭子,鳥田美紀代,杉本 知子,上野 佳代 千葉県立保健医療大学健康科学部看護学科. A Philological Study on At-Home Reinforcement Type Geriatric Health Services Facilities ─ Efforts and Challenges to Improve the Rate of Returning Home ─ Kyoko Saeki, Mikiyo Torita, Tomoko Sugimoto, Kayo Ueno. Department of Nursing, Faculty of Health Care Sciences, Chiba Prefectural University of Health Sciences (2015年10月2日受付,2016年1月6日受理). Abstract. The revised regulation for nursing compensation in FY2012 established the basic fee for at-home reinforcement type geriatric health services facilities, recommending a shift from nursing care in geriatric health services facilities(GHSFs)to home care. However, the number of at-home reinforcement type GHSFs to which an application of the basic fee was approved was still low. We conducted a philological study to elucidate actual efforts and present challenges in facilities where a basic fee for at-home reinforcement type care has been introduced. We retrieved relevant reports published since 2012 through a web search of databases such as the web version of the Japan Medical Abstract Society. Four key words were used:geriatric health services facilities, at-home reinforcement type, return home, and at-home care support. A total of 32 relevant reports were extracted. Efforts underway to improve the rate of returning home in such facilities include 1)confirming the aim of entering the facility before and at the time of admission, 2)giving importance to rehabilitation, and 3)supporting the user’s family to change their mind about the possibility of nursing care at home. Current challenges include a decrease in the bed occupancy rate and an increase in staff burden due to the increase in the number of persons admitted or discharged. To improve the rate of returning home for such facilities, each user should set up, with staff and family members, a concrete objective of returning home. In addition, multidisciplinary collaboration is important to achieve this objective. Key words: at-home reinforcement type, geriatric health services facilities, the rate of returning home, long-term care insurance system, shift to home-based care (千葉保医大紀要,Bull CPUHS, Vol. 7, No. 1, 43-49, 2016). Ⅰ.緒 言. の入所となっているケースも多く,「第二の特養」. 介護老人保健施設(以下,老健)は,1986年, 社会的入院解消のため,医療施設から在宅復帰す. とも言われている. 平成24年度の介護報酬改定では,在宅復帰支援 型の施設という機能強化のため従来型より高い基. るための中間施設として創設された.しかし,在 宅を支えるサービスが充分でないこともあり,実 際には,在宅に戻るための中間施設ではなく介護. 本報酬を得られる在宅強化型の基本報酬が創設さ れ,老健から在宅に戻る流れが推進されている. しかし,平成25年5月時点で在宅強化型の算定を. 老人福祉施設(以下,特養)が空くのを待つため. 取得している施設は217施設であり,老健全体の.

(2) 44. 千葉県立保健医療大学紀要 第7巻 第1号.   ) 5.2%にすぎない1 . 平成28年度の介護報酬改定では,老健の在宅復. Ⅲ.結 果. 帰支援機能をさらに高めるため,在宅強化型と従 来型の施設サービス費の差額はさらに広がること が想定されている.このように,高齢化が急速に. 1.文献の概要(表1) 抽出された文献は,自施設の取り組みを紹介し. 進んでいるわが国においては,政策としても施設 ケアから在宅ケアへという流れが強く推進されて いるが,老健からの在宅復帰は進んでいない現状 がある. そこで,本論文では,在宅復帰を促進するため に,条件の厳しいといわれている在宅強化型の算 定を取得している老健でおこなわれている,在宅 復帰率向上に向けた取り組みの実際と現状におけ る課題を明らかにすることを目的に,文献検討を おこなった.. Ⅱ.研究方法 1.文献の抽出方法 文献の検索は,医学中央雑誌 Web 版,CiNii, JDream Ⅲを用い,2015年7月におこなった.キー ワードは「介護老人保健施設」「在宅強化型」「在 宅復帰」「在宅療養支援」とし,「介護老人保健施 設」に,それ以外の3つのキーワードをそれぞれ 組み合わせて AND 検索した.また,本研究では, 在宅強化型老健における実践や課題に関する知見 を整理し,今後に役立てることが目的であるた め,収集する文献は,介護保険制度において在宅 強化型の算定が創設された2012年以降のものとし た. 各データベースで検索したものから,「タイト ル」 「抄録」を確認し,在宅強化型老健に関係し ない内容のものは除外した.次に,本文を確認 し,在宅復帰率向上に向けた実践や課題に関する 記述があるものを採用した.自施設の取り組みを 紹介した文献については,著者の所属する施設 が, 『在宅強化型老健算定取得施設一覧(2015年 8月時点)』2)に含まれるものを採用した. その結果,30件の文献が抽出された.これに, ハンドサーチで取得した2件を加え,最終的に32 件の文献を対象文献とした. 2.分析方法 抽出された対象文献を精読し,在宅復帰率向上 に向けた取り組みおよび現状における課題が書か れている箇所を抜き出し,それぞれについて内容 の類似性によって分類して整理した.. た文献が最も多く30件,座談会やシンポジウムの 記録が2件であった.自施設の取り組みを紹介し た30件には,利用者個人の事例報告3件が含まれ た. 2.在宅復帰率向上に向けた取り組み(表2) 在宅強化型老健における在宅復帰率向上に向け た取り組みは,15項目が明らかになった.このう ち,6項目は利用者や家族に対する取り組みで, 9項目は組織運営に関する取り組みであった.以 下に詳細を述べる.なお,以下の〈  〉は取り 組みの項目をさす. ⑴ 利用者や家族に対する取り組み 〈入所前訪問の実施〉を挙げた文献は5件3),4), 8),9),28) であった.入所前訪問で,実際の生活環 境や生活動作を確認し,在宅復帰への課題を抽出 していた.多職種による訪問に取り組む施設も あった. 〈入所前や入所時点で入所目的を明確化〉を挙 げ た 文 献 は11件 3),4),5),8),9),11)17),22),23),26),30) で あった.入所前のインテークで,老健の役割を丁 寧に説明した上で,本人と家族の意向を確認し, 入所目的についてできるだけ具体化・明確化して いた.具体化にあたっては,入所前訪問で得た生 活環境の情報が活用されていた.入所期間を設定 する施設もあった.   ),7), 〈退所前訪問の実施〉を挙げた文献は7件4 9),11),17),22),27) であった.退所前訪問は,自宅で暮 らす上での準備や課題の確認,実際の生活環境に おける本人の移乗動作等の確認や家族への介助方 法の指導の場となっていた.退所前訪問は,本人 のモチベーション維持に効果的とするものもあっ た. 〈リハビリテーションの重視〉を挙げた文献は 10件 3),5),7),9),15),18),21),27),28),29) であった.生活の 場でのリハビリテーション(以下,リハビリ)を 重視し,自宅環境下での自立を目指すリハビリを おこなったり,介助する家族が同じ方法で介助で きるよう,介助方法を写真におさめ可視化して施 設内のケアを工夫していた.外出訓練として利用 者宅を訪問してリハビリをおこなっている施設も あった.また,入所早期からパワーリハビリ介入 し,在宅復帰につなげている施設もあった. 〈家族が困ることが予想される利用者の状.

(3) 佐伯他:在宅強化型介護老人保健施設に関する文献検討. 45. 表1 分析対象文献一覧 文献 番号. 著 者(報告年). 3) 竹田 真弓(2015). 文献タイトル. 文献の 種類. 文献の内容. 認知症による BPSD があるご利用者の在宅復帰に向けたアプ ローチ.. 会議録. 個人の事例報告. 解説. 個人の事例報告. 取材記事. 施設の実践報告. 会議録. 施設の実践報告. 解説. 施設の実践報告. 解説. 施設の実践報告. 取材記事. 施設の実践報告. 解説. 施設の実践報告. 【生活行為向上マネジメント活用の効果と実用性】老人保健施 4) 三浦  晃(2015) 設における在宅復帰支援と生活行為向上マネジメント. 5)   ─  (2015) 老健施設の理念を追求し在宅復帰と在宅支援を徹底. 6) 大槻 弘美(2014). 在宅復帰強化型老健と相談員の役割 在宅強化型老健取得に 向けて支援相談員としての役割.. 7) 伊福 香織(2014) 家族の不安に対応する在宅復帰支援. 8) 緒方  薫(2014). 利用者,家族との信頼を構築しながら進める在宅復帰支援  介護老人保健施設からの発信.. 9)   ─  (2014) 生活期リハビリテーションを実践し在宅強化型老健施設へ. 10) 阿部 正博(2014) なぜ在宅強化型を継続できているのか!その1経緯. 11) 阿部 正博(2014) なぜ在宅強化型を継続できているのか!その2実践.. 解説. 施設の実践報告. 12) 阿部 正博(2014) なぜ在宅強化型を継続できているのか!最終回データ.. 解説. 施設の実践報告. 13) 瀬間良礎他(2014). 在宅介護の体験発表 参加者には「励まし合いの場」施設側 にも「学ぶ場」に.. 解説. 施設の実践報告. 14) 竹重俊文他(2014). 座談会 稼働率偏重から在宅復帰推進へ 方針転換の道筋を 徹底討論!.. 解説. 座談会の記録. 15) 汐田 梢他(2014). 学校形式の介護老人保健施設における入所者の意欲向上と身 体的改善.. 調査報告. 施設の実践報告. 16) 矢野浩二他(2014) リハ病院に併設された介護老人保健施設でのリハサービス.. 解説. 施設の実践報告. 在宅強化型への転換と家族支援 在宅復帰への意識改革を共 17)   ─  (2014) 有.. 取材記事. 施設の実践報告. 18) 具志堅光茂他(2014) 在宅生活に向けての家族指導充実の取り組み.. 解説. 施設の実践報告. 【特養・老健での認知症ケアの工夫】在宅強化型老健として 19) 道口  誠(2013) の一歩.. 解説. 施設の実践報告. 20) 種子永 聡(2013) 在宅強化型老健施設への道のり.. 解説. 施設の実践報告. 21) 三好良司他(2013) パワーリハ介入による在宅復帰に向けての取り組み.. 会議録. 個人の事例報告. 第24回全国介護老人保健施設大会石川 in 金沢シンポジウム 22) 沖藤典子他(2013) 在宅復帰「できる!」 「できない?」 .. 解説. シンポジウムの 記録. 在宅強化型老健になる トップの不動の方針「絶対,強化型 23) 清藤 大輔(2013) になる」に全職員はどう挑んだか 埼玉県下で2番目「在宅 強化型老健」となった翔寿苑の果敢な取り組み.. 解説. 施設の実践報告. 会議録. 施設の実践報告. 25) 三川 紀子(2012) 老健施設における看護職の役割.. 解説. 施設の実践報告. 全老健研修委員会.在宅復帰率・回転率を高めるために看護 26) 大河内二郎(2012) 師ができること.. 解説. 施設の実践報告. 27) 谷川敦弘他(2012) 自宅環境下でのリハビリの提供が在宅復帰支援の鍵.. 解説. 施設の実践報告. 解説. 施設の実践報告. 29) 大槻 弘美(2012) 総括シートを用いてケアに根拠を与える.. 解説. 施設の実践報告. 30) 本澤 博他(2012) ショートステイ・通所リハビリで在宅復帰支援を推し進める.. 解説. 施設の実践報告. 24) 當利賢一他(2012) 当施設における住宅改修データベースの作成.. 28) 信岡 紀那(2012). ベッドシェアリングを柱としたトータルケアマネジメントの 実践.. 31)   ─  (2012). 1人の患者を最期まで支えるため在宅復帰支援の強化と併せ て自宅を軸にした地域医療サイクルを構築.. 取材記事. 施設の実践報告. 32)   ─  (2012). 特集 在宅介護を支える新サービス:定期巡回・随時対応/ 複合型/在宅強化型老健施設の実践例.. 取材記事. 施設の実践報告. 33) 山田 和彦(2012). 老健における報酬改定の影響とリバーサイド御薬園の対応  地域の在宅生活・在宅療養支援拠点を目指して.. 解説. 施設の実践報告. 34)   ─  (2012). 支援相談員確保・リハ充実・連携で在宅復帰率50%の要件を クリア.. 取材記事. 施設の実践報告. ※文献の種類が「取材記事」のものは,施設の人が書いたのではなく,施設を取材した人が書いた記事のため,著者は 無い..

(4) 46. 千葉県立保健医療大学紀要 第7巻 第1号. 表2 在宅復帰率向上に向けた取り組み 利用者や家族に対する取り組み. 在宅復帰率向上に向けた取り組み. 文献番号. 組織運営に関する取り組み. 入所前訪問の実施. 3)4)8)9)28). 入所前や入所時点で入所目的を明確化. 3)4)5)8)9)11)17)22)23)26)30). 退所前訪問の実施. 4)7)9)11)17)22)27). リハビリテーションの重視. 3)5)7)9)15)18)21)27)28)29). 家族が困ることが予想される利用者の状態に対する ケアの強化. 7)15)23)25)34). 在宅介護が可能かもしれないと思えるための家族支援. 5)8)9)11)13)17)18)19)27)28)33). 手厚い人員配置 . 5)16)17)19)20)27)30)31)34). 在宅復帰施設であるという職員の意識統一 . 7)22)23)27)34). 施設管理者の強力なリーダーシップ. 5)9)10)22)23)26)31)32). 多職種協働に向けた情報共有のシステム利用 . 4)5)9)17)19)22)23)24)25)26)28)29)32). 病院への転院を予防するための利用者の健康管理. 12)19)25)27)28). 他機関に向けた宣伝的な連携. 6)8)9)11)14)16)23)27)29)30)31)33)34). 関連支援機関との連携. 5)22)28)30). 支援相談員などによるベッドコントロール . 6)12)19)23)28)29)30)32). 施設独自の取り組み. 15)20). 態に対するケアの強化〉を挙げた文献は5   ),15),23),25),34) 件7 であった.在宅復帰を阻む利用者 の状態として,認知症の症状と排泄の二つが大き いという知識を持ち,これらに対するケアを強化 していた.特に排泄動作については,排泄動作の 自立に向けて課題を明確にしてかかわっていた. 全てのトイレでなく,自宅のトイレに焦点化した 排泄の自立に取り組む施設もあった. 〈在宅介護が可能かもしれないと思えるための  5),8),9),11),13),17),. 家族支援〉を挙げた文献は11件 であった.在宅復帰後の生活に不安 を持っている家族に対して,ショートステイ(以 下,SS)での利用や再入所も可能であることを 伝えたり,自宅に戻れたからこそリハビリ目的の SS やレスパイトが必要であることを伝えていた. また,家族会を開催し,家族とスタッフの交流,. 18),19), 27) , 28) , 34). 家族同士の交流を図っている施設もあった.. 在宅復帰施設への転換の際,理念を見直して策定 し直したり,在宅復帰支援の考え方や介護報酬改 定内容についての勉強会を開催することで意識統 一を図っていた. 〈施設管理者の強力なリーダーシップ〉を挙げ た文献は8件 5),9),10),22),23),26),31),32) であった.施 設長や理事長の“老健は在宅支援施設であるべき だ”という方針や“絶対に在宅復帰させるぞ”と いう強力なリーダーシップで在宅復帰率向上に向 けて職員が一丸となって取り組んでいた. 〈多職種協働に向けた情報共有のシステム利用〉 を挙げた文献は13件  4),5),9),17),19),22),23),24),25),26),28),29),32) であった.施設で独自に開発したアセスメント シートや情報共有シート,全老健で開発した“R4 システム”,OT 協会で開発した“生活行為向上 マネジメントシート”を利用していた.電子カル テを導入している施設もあった.多職種参加のカ ンファレンスの開催を挙げる施設が多かった. 〈病院への転院を予防するための利用者の健康 管理〉を挙げた文献は5件1  2),19),25),27),28)であった.. ⑵ 組織運営に関する取り組み   ),16),17), 〈手厚い人員配置〉を挙げた文献は9件5 19),20), 27) , 30) , 31) , 34) であった.ほぼ全職種で全国平均 より多い配置としている施設もあったが,支援相. 口腔ケアの強化により,肺炎による入院を減らし たり,看護職が日常生活場面に介入することで利. 談員とリハビリスタッフを多く配置している施設 が多かった. 〈在宅復帰施設であるという職員の意識統一〉   ),22),23),27),34) であった.主に, を挙げた文献は5件7. 用者の状態変化に早期に気づくことができるよう になり入院を減らしていた.“所定疾患施設療養 費”を活用して施設内で治療をする施設もあっ た..

(5) 佐伯他:在宅強化型介護老人保健施設に関する文献検討. 〈他機関に向けた宣伝的な連携〉を挙げた文献 は13件 6),8),9),11),14),16),23),27),29),30),31),33),34) で あ っ た.病院や居宅介護支援事業所等に向け,老健の 役割や機能を説明して回ったりホームページで理 解を促したりしていた.また,リハビリ目的で の SS 利用を提案するなど,求めている利用者の 情報を提供したり,空きベッド情報を発信する施 設もあった.さらに,自施設の実践が広まるにつ れ,施設の特徴が周知されるとする施設もあっ た. 〈関連支援機関との連携〉を挙げた文献は4 件 5),22),28),30)であった.医療機関や居宅介護支援 事業所に対して,利用者の入所後の経過を報告し たり退所を伝えたり,支援相談員が定期的に各関 連事業所を回って情報交換している施設もあっ た. 〈支援相談員などによるベッドコントロール〉 を挙げた文献は8件 6),12),19),23),28),29),30),32) であっ た.SS の利用を推進したり,繰り返し入所する 利用者を確保することでベッド稼働率を確保して いた.月ごとの入退所者の人数や入所者の要介護 度が集中しないようバランスを図って調整してい た. 〈施設独自の取り組み〉を挙げた文献は2件1  5),20) であった.この2件は同じ施設で,学校形式の運 営により在宅復帰率を向上させていた. 3.老健で在宅復帰率向上に取り組んでいる施設 における課題(表3) 老健で在宅復帰率向上に取り組んでいる施設が 抱えている課題は,4項目が明らかになった.こ のうち1項目は施設スタッフの業務に関するも の,3項目は施設運営に関するものであった.以 下に詳細を述べる.なお,以下の《  》は課題 をさす. ⑴ 施設スタッフの業務に関する課題. 47. 挙げた文献は4件 7),12),30),31)であった.入退所者 数が増えることによって事務作業や面談に費やす 時間が増え,支援相談員の時間外勤務が増加した ことを挙げる施設があった.また,めまぐるしく 変わる新規利用者の状態把握と介護方法の共有が 必要なため,介護スタッフの業務負担を挙げる施 設もあった.一方で,繰り返し入所する利用者が 増えるため,業務負担は軽くなったとする施設も あった. ⑵ 施設運営に関する課題 《ベッド稼働率の低下》を挙げた文献は5件 7), 9),22),23),30) であった.ベッド稼働率の低下は,在 宅復帰者が増えることによる空床の発生から生じ ており,在宅復帰を目指すほど空床が増えて経営 が安定しないとする施設があった. 《入所者の平均要介護度の軽度化》を挙げた文 献は2件3  0),33) であった.在宅復帰支援を始めた 当初は,在宅復帰が可能な要介護度が低い利用者 の受け入れを優先する傾向があったためとする施 設や,認定更新時に要介護度が低く出ているとい う疑念を抱く施設があった. 《老健単体では赤字》を挙げた文献は1件3  1)で あった.手厚い人員配置により老健単体では赤字 になるが,この施設では,母体となる法人内にク リニックや在宅サービス事業所を持っており,在 宅復帰者が増えることで,これらの利用が増え赤 字分を吸収できると述べていた.. Ⅳ.考 察 老健における在宅復帰率向上に向けた取り組み のポイントは,入所時点で入所目的が明確になっ ていること,在宅介護への家族の不安を取り除く ことの2点と考えられた.以下,それぞれについ て考察する. まず,入所目的の明確化については,家族に,. 《入退所が増えることによる業務負担増加》を. 在宅復帰支援施設であることを理解してもらうこ とからはじまり,その上で,在宅復帰するための. 表3 在宅復帰率向上に取り組む施設の課題. 具体的な目標を利用者や家族と共に設定し入所目   ),10),11),13),21)27),31) . 的を明確にしていた5 入所目的を,利用者や家族と共に設定すること は,家に帰りたいと考えている利用者には不本意. 在宅復帰率向上に取り組む 施設の課題       . 文献番号. 入退所が増えることによる業務 負担増加. 7)12)30)31). ベッド稼働率の低下. 7)9)22)23)30). 入所者の平均要介護度の軽度化. 30)33). 老健単体では赤字. 31). な入所であったとしても,それが在宅復帰のため の準備期間という納得につながり,利用者にとっ ての主体的な入所生活を組み立てることを可能に すると考えられる.家族にとっても,“利用者を 施設に預けている”という認識ではなく,例え.

(6) 48. 千葉県立保健医療大学紀要 第7巻 第1号. ば,より自分たちにあった介助方法を一緒に考え るなど,入所中の自分たちの役割を意識すること. 和文要旨. につながり,ケアへの参加意識を持つことが可能 になると考えられる.また,入所前の利用者宅訪 問は,施設スタッフが利用者の退所後の具体的な. 平成24年度の介護報酬改定では在宅強化型の基 本報酬が創設され,介護老人保健施設(以下,老. 生活をイメージできるようになるため,在宅復帰 に向けた課題やニーズをより明確にすることを可 能にする. 次に,在宅介護への家族の不安については,退 所前訪問で自宅環境において介助方法を指導した り利用者の動きを確認することによって対応して いた 9),21),32).自立を目指してリハビリテーショ ンを重視する取り組み 9),21),32) も,家族の介護負 担を軽減させ在宅介護できるかもしれないと思う. 健)から在宅に戻る流れが推進されているが,算 定を取得している施設は少ない.そこで,在宅強 化型の算定を取得した老健でおこなわれている実 際の取り組みと,現状における課題を明らかにす ることを目的に文献検討をおこなった. 文献検索は,医学中央雑誌 Web 版などを用い ておこなった.文献は2012年以降のものとし,検 索のキーワードは「介護老人保健施設」「在宅強 化型」「在宅復帰」「在宅療養支援」とした.その 結果,在宅強化型老健に関する文献は32件が抽出. ことにつながると考えられた. 全国の老健を対象に調査した結果から,自宅と 老健を行き来している利用者は,医療機関と老健. された. 在宅強化型老健における在宅復帰率向上に向け た実際の取り組みは,〈入所前や入所時点で入所. を行き来する利用者等その他の利用者と比べて, 要介護度や自立度がよい状態であったことが明ら かになっており3  5),リハビリテーションによって 自立を目指すことは,在宅復帰の条件を整えるに あたり重要な位置を占めると考えられた. また,自立を目指すためには,さまざまな職種 がかかわる入所中の生活の中でも,多職種間で利 用者の状態を適宜情報共有することや,必要以上 に介助しないなどの統一したケアが必要となる. 以上より,老健における在宅復帰率向上のため には,利用者個々に対する在宅復帰のための具体. 目的を明確化〉,〈リハビリテーションの重視〉, 〈在宅介護が可能かもしれないと思えるための家 族支援〉など,現状における課題は,《ベッド稼 働率の低下》や《入退所が増えることによる業務 負担増加》などであった. 在宅強化型老健で在宅復帰率を向上させるため には,利用者個々に対する在宅復帰のための具体 的な目標を利用者や家族とともに設定し,その目 標に向かって多職種協働でかかわることが重要で あると考えられた.. 的な目標を利用者や家族と共に設定し,その目標 に向かって多職種協働でかかわることが重要であ. キーワード:在宅強化型,介護老人保健施設,在. ると考えられた. 本研究では,在宅復帰率向上に取り組む施設の 課題として,新規入所者が獲得できなければ空床 が生じるためベッド稼働率が低下する場合がある こと,月の入退所が増えることによるスタッフの 業務負担が生じることが明らかになった.これら は,在宅復帰率の向上に伴って生じる課題である が,ベッド稼働率の低下は,老健の経営に困難を もたらし,スタッフの業務負担増加はケアの質に 影響を与える.一方で,ベッド稼働率が増加した という報告1  0),23),24) や,スタッフの業務負担は軽 減したという報告2  2) もあり,施設のおかれた地 域環境や経営主体などによって,課題のありよう は異なると考えられる.そのため,老健における 在宅復帰率向上に取り組むと同時に,これらの課 題克服のため,それぞれの施設に合わせた方略を 検討していく必要がある.. 宅復帰,介護保険制度,在宅移行. Ⅴ.文 献 1)厚生労働省.資料4-2 施設・居住系サービスについ て.第100回社会保障審議会介護給付費分科会資料 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000044891.html). 2014, 21.. 2)公益社団法人全国老人保健施設協会.在宅強化型老 健算定取得施設一覧.. http://www.roken.or.jp/intro/list_tks.php?tks_code = zaitaku_kyoka&pagesize =30(2015年8月閲覧) 3)竹田真弓.認知症による BPSD があるご利用者の在. 宅復帰に向けたアプローチ.日本認知症ケア学会誌. 2015,vol.14,no.1,p.252.. 4)三浦晃. 【生活行為向上マネジメント活用の効果と 実用性】老人保健施設における在宅復帰支援と生活 行為向上マネジメント.地域リハビリテーション. 2015,vol.10,no.3,p.172-178.. 5)老健施設の理念を追求し在宅復帰と在宅支援を徹底. 介護保険情報.2015,vol.16,no.2,p.4-10..

(7) 佐伯他:在宅強化型介護老人保健施設に関する文献検討. 6)大槻弘美.在宅復帰強化型老健と相談員の役割 在 宅強化型老健取得に向けて支援相談員としての役割. 自立支援介護学.2014,vol.8,no.1,p.68.. 7)伊福香織.家族の不安に対応する在宅復帰支援.高 齢者安心安全ケア:実践と記録.2014,vol.11,no.4, p.46-53. 8)緒方薫.利用者,家族との信頼を構築しながら進め る在宅復帰支援 介護老人保健施設からの発信.高 齢者安心安全ケア:実践と記録.2014,vol.11,no.4,. p.39-45.. 9)生活期リハビリテーションを実践し在宅強化型老健 施設へ.介護保険情報.2014,vol.15,no.7,p.13-19.. 10)阿部正博.なぜ在宅強化型を継続できているのか! その1経緯.介護人材 Q&A.2014,vol.11,no.115,. p.40-43.. 49. ジウム 在宅復帰「できる!」 「できない?」.老健. 2013,vol.24,no.7,p.30-39.. 23)清藤大輔.在宅強化型老健になる トップの不動の 方針「絶対,強化型になる」に全職員はどう挑んだ か 埼玉県下で2番目「在宅強化型老健」となっ た翔寿苑の果敢な取り組み.介護人材 Q&A.2013,. vol.10,no.106,p.4-20.. 24)當利賢一,他4名.当施設における住宅改修データ ベースの作成.日本理学療法学術大会2012.2013,. no.0, p.48100520.. 25)三川紀子.老健施設における看護職の役割.師長主 任業務実践.2012,vol.18,no.386,p.72-75.. 26)大河内二郎,全老健研修委員会.在宅復帰率・回転 率を高めるために看護師ができること.老健.2012,. vol.23,no.8,p.36-37.. 11)阿部正博.なぜ在宅強化型を継続できているのか! その2実践.介護人材 Q&A.2014,vol.11,no.116,. 27)谷川敦弘,道口誠.自宅環境下でのリハビリの提 供が在宅復帰支援の鍵.老健.2012,vol.23,no.7,. 12) 阿 部 正 博. な ぜ 在 宅 強 化 型 を 継 続 で き て い る の か! 最 終 回 デ ー タ. 介 護 人 材 Q&A.2014,vol.11,. 28)信岡紀那.ベッドシェアリングを柱としたトータル ケアマネジメントの実践.老健,2012,vol.23,no.7,. 14)竹重俊文,他2名.座談会 稼働率偏重から在宅復 帰推進へ 方針転換の道筋を徹底討論!.Vision と. 30)本澤博,大石佑介,奥野直樹,小泉ゆかり.ショー トステイ・通所リハビリで在宅復帰支援を推し進め る.老健.2012,vol.23,no.7,p.14-18.. p.64-67.. no.118,p.30-36. 13)瀬間良礎,加藤綾子.在宅介護の体験発表 参加者 には「励まし合いの場」施設側にも「学ぶ場」に. 介護人材 Q&A.2014,vol.11,no.114,p.6-16. 戦略.2014,vol.11,no.10,p.13-17.. 15)汐田梢,他3名.学校形式の介護老人保健施設にお ける入所者の意欲向上と身体的改善.日本老年医学 会雑誌.2014,vol.51,no.4,p.369-374. 16)矢野浩二,梅津祐一.リハ病院に併設された介護 老人保健施設でのリハサービス.Journal of Clinical. Rehabilitation. 2014, vol.23, no.2, p.173-177.. 17)在宅強化型への転換と家族支援 在宅復帰への意識 改革を共有.老健.2014,vol.25,no.2,p.10-14.. 18)具志堅光茂,中谷亮太,清水紀子,玉野尚子,中  悦子,谷崎直美,西谷隆司,冨田雅子,阪口友理 恵,小林節子,川上直美,仲田裕行.在宅生活に向 けての家族指導充実の取り組み.愛仁会医学研究誌. 2014,vol.45,p.236-238.. 19)道口誠.【特養・老健での認知症ケアの工夫】在宅強 化型老健としての一歩.認知症ケア最前線.2013,. vol.37,p.24-28.. 20)種子永聡.在宅強化型老健施設への道のり.老健. 2013,vol.24,no.9,p.54-55. 21)三好良司,稲次正敬,河野友志.パワーリハ介入に よる在宅復帰に向けての取り組み.パワーリハビリ テーション.2013,no.12,p.19. 22)沖藤典子,折茂賢一郎,佐藤若奈,高橋美也子.第 24回全国介護老人保健施設大会石川 in 金沢 シンポ. p.45-49.. p.40-44. 29)大槻弘美.総括シートを用いてケアに根拠を与える. 老健.2012,vol.23,no.7,p.24-27.. 31)1人の患者を最期まで支えるため在宅復帰支援の強 化と併せて自宅を軸にした地域医療サイクルを構築.. Phase3:最新医療経営.2012,no.339,p.37-39.. 32)特集 在宅介護を支える新サービス:定期巡回・随 時対応 / 複合型 / 在宅強化型老健施設の実践例.月刊 介護保険.2012,no.198,12-19.. 33)山田和彦.老健における報酬改定の影響とリバー サイド御薬園の対応 地域の在宅生活・在宅療養 支援拠点を目指して.介護人材 Q&A.2012,vol.9,. no.96,p.5-10. 34)漆間伸之氏へのインタビュー.支援相談員確保・ リハ充実・連携で在宅復帰率50%の要件をクリア. TKC 医業経営情報 NOV. 2012, p.6-8.. 35)沢村香苗.平成25年度 介護老人保健施設の在宅復 帰支援に関する調査研究事業(厚生労働省老健局に よる委託事業)より「リピーター」に関する分析の 紹介.Monthly IHEP. 2014, no.235, p.15-21. 著者連絡先: 〒261-0014 千葉市美浜区若葉2-10-1 幕張キャンパス B棟206東. TEL:内線349 E-mail:[email protected] 佐伯 恭子.

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