乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要 性 質 の
實 驗 的 研 究*(其
の一)
正會員
工學博士
吉
田
彌
七**
梗 概 本 論文 は コ ン ク リー ト及 び 鐵 筋 コ ンク リー トの收 縮 龜 裂 に 關 す る著者 の研 究 の一部 を爲 す も の に して,乾 燥 に よ る コ ン クリ ー トの牧 縮,並 に之 に よ る龜 裂 に密 接 な る關係 あ り と思 は る ゝ主 要 性質 即 ち ク リープ,伸,引 張 強 度,彈 性 係 數等 に就 ての實 驗 的研究 を記 せ る もの で あ る。 乾燥 せ る空 氣 中 に在 りて は,コ ンク リ ー ト及 び鐵 筋 コ ンク リー ト構 造物 に 屡 々龜 裂 の 生ず る事 は 普 く人 の 識 る所 であ る。此 の 龜裂 の 由つ て來 る所 以 は未 だ充 分 に解 明 され て ゐ な いが,併 しセ メ ン ト糊 中に 含 まる ゝ非 結 合水 の逸 散 に基 因す る乾燥 收 縮 が その 主 な る原 因 の一 つ で あ る こ とは 否 み 難 い。 乾燥 せ る 空 氣 中 に 於 け る コ ン ク リー ト又 は 鐵 筋 コ ン ク リー ト部 材 か らの 水 分 の 逸 散 は そ の部 材 内に 於 て 均 齊 に 行 はれ ない。 從 つ て茲 に コ ンク リー ト内 に 固有 元 應 力 を生 ず る。 更 に 不 静 定構 造 物 に於 け る 兩 端 固定 の 部 材 又 は鋪 装 等 に 於 て は,コ ンク リー トの牧 縮 が 全體 と して 自由 な らぎ るた め茲 に 構 造物 全 體 と しての 元 應 力が 誘 起 され る。 是 等 二 つ の元 應 力 は夫 々 獨 立 に,或 は共 同 して コ ンク リ炉 トに 龜裂 を生 ぜ しめ る主 役 を演 ず る もの と考 へ 得 よ う。元 來,コ ンク リー トに 龜裂 の生 ず るの は,温 度 の變 化,自 生 收縮(autogenous shrinkage)其 の 他 の 素 因 に も よる こ とは 勿論 であ るが,特 に乾燥 によ る水 分 逸 散 に よる收 縮 が龜 裂 と深 い 關係 に 在 る こ とは否 み 難 い事 實 で あ る。 本 碑 究 の 基 礎 を爲 す 實驗 は著 者 が1935年6月 よ り1936年12月 まで の1ケ 年 半 に亙 りて 行 つ た 竜 の であ る。本 實驗 に 使 用 せ しセ メ ン トは 第 一 の實 驗 に 供 せ る 竜の と 同様 普 通 ボル トラ ン ドセ メ ン トに し て,骨 材 は最 大 寸 法3/4in(約20mm),粗 粒 率4.88な る砂 及 び砂 利 の細 粗粒 混 合 骨材 で あ る。又 コ ンク リー とは セ メ ン トと細粗 粒 混 合 骨材 との重 量配 合比1:6,水 セ メ ン ト重 量比0.566,ス ラ ンプ3in(約7.5 cm),標 準 養 生 せ る6×12in(約15×30cm)圓 〓 供 試試 體 の材齢28日 に於 け る壓 縮 強 度37501b/in(約 260kg/cm2)な る もの を使 用 した 。而 して 收 縮 及 び壓 縮 用供 試體 は 直徑6in (15cm),高 さ12in(30cm) の標 準 圓 〓,ま た 引張 用供 試 體 は直徑6in(15cm),高 さ33in(84cm)の 圓〓 に して,其 等 の供 試體 は 型 よ り取外 した る後70°F(21℃)に て次 の4通 りに分 ち て夫 々保 存 した。 材 齢7日 迄 濕 度100%の 室 中,其 以後 濕度95%の 室 中 〃7日 〃 〃 〃 〃50%〃 〃28日 〃 〃 〃 〃95%〃 〃28日 〃 〃 〃 〃50%〃 本 研究 に於 て行 へ る實 驗 の種 類 は次 の 如 くで あ る。 (1)乾 燥 に よる收縮 (2)壓 縮 強 度 及 び 引張 強 度 (3)壓 縮 及 び 引張 に對 す る彈 性係 數 (4)定 持續 荷 重 の 下 の壓 縮 ク リー プ及 び 引張 ク リープ (5)等 變 遞 増 荷 重 の 下の 延 伸 能力 結 論 に於 て は本 研究 に よつ て 明 瞭 に され た る事 項 の主 な る もの を記せ る外,是 等 の事 項 と乾 燥 に よ る收 縮 應 力 及 び之 に基 づ く龜 裂 との 關係 に就 て 論 述 した。 *本 論 文 の初 稿(英 文)は1937年1月 之 を書 上 げ,其 の後 堆 稿 久 し きに亙 り漸 く1941半6月 英 文に て脱 稿 し,今 同 初 め て邦 文 に て公 表 す る もの で あ る こ と を特 記 して置 く。 **熊 本 高 等工 業學 校 教 授60 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 關す る主 要性 質の 實驗 的 研 究(其 の 一) 2
目
次
第1章 緒 論-概 説,研 究 の 目的,實 驗 の 豫定 第2章 實 驗 の方 法-材 料,コ ンク リ ー ト配 合 の設 計,供 試體 の選 定,供 試體 の製 作,養 生 及 び 貯藏,試 驗 の準 備,載 荷,變 形 測 定 の方法,實 驗 資料 の整 理 第3章 實 驗 の 結果 及 び其 の考 察-概 説,乾 燥 に よる收 縮,壓 縮 張 度,引 張 強 度,壓 縮 強 度 と引 張 強 度 との 關係,壓 縮彈 性 係 數,引 張 彈 性 係 數,壓 縮 弾 性 係數 と引 張 彈 性係 數 の關 係,定 持續 荷 重の 下 の壓 縮 ク リー プ及 び 引張 ク リー プ.等 變 遞 増荷 重 の下 の 延 伸能 力及 び 延 伸比 第4章 結 論-實 驗 結 果 の概 括,結 言第1章
緒
論
1.概 説 コ ンク リー トの乾 燥 收 縮 に 關 す る影 多 の文 献 を通 覧 す る に,龜 裂 の原 因 は未 だ 充 分 に 明 白 に され て ゐ ない が,併 し龜 裂 が 主 と して 非 結 合 水 の 逸 散 に よ る收 縮 に よ る こ とは 實 際 上 確 認 され て ゐ る。 從 つ て,他 の條 件 が 變 ら な け れ ば,コ ンク リ ー トの龜 裂 は概 ね コ ンク リー ト中 に於 げ る逸 散 性 水 分 濃 度(moisture concentration)の 分 布 が 一 様 な らざ る こ との た め に 生 ず る 固 有 元 應 力,又 は部 材 の長 さ の變 化 が 全 體 とし て控 制 され る た め1と生 ず る構 造 物 全 體 として の元 應 力,或 は 前 髪 者 の共 同 作 用 に基 因す る も の と本 質 的 に思 考 され る。 事 實 上,收 縮 應 力 に基 づ く龜 裂 の發 生 は,勿 論 コ ンク リ ー トの置 か る ゝそ の 周 圍 の空 氣 の温 度 及 び 濕 度 並 に コ ンク リ ー トが 乾 燥 す る以 前 の組 織 に 關 す る こ とは言 ふ 迄 もな い が,猶 ほ次 に揚 げ る事 項 に支 配 され る 。 (1) 供 試 體 又 は部 材 の寸 法-コ ンク リー ト の乾 燥,換 言 す れ ば ゴ ンク リー トの水 分 逸 散 は乾 燥 時 間 及 び部 材 の凾 數 で あ る か ら,供 試 體 又 は 部 材 に於 け る收 縮 應 力 及 び之 に 基 づ く龜 裂 の發 生 は そ の 寸 法 に,特 に兩 端 固 定 の 部 材 の と きは,頗 る影 響 され る も の で あ る 。 (2)長 さ の變 化 に對 す る控 制 の 程 度-ゴ ンクリ ー ト部 材 が そ の軸 の方 向 に 自由 に 收縮 し得 る場 合 に は 龜 裂 の 原 因 は逸 散 性 水 分 濃 度 の 不 齎 等 分 布 に よる 固有 元 應 力 が そ の 主 な る も ので あ ら う。 併 し,部 材 が そ の 兩端 に 於 て 固 定 され 或 は他 の 原 因 で 收 縮 が 全 體 と して控 制 され る と きは,そ の 結果 構 造 物 全 體 と して の元 應 力 が 誘 起 され る。 此 の元 應 力 は 大 き な龜 裂 の發 生 を誘 致 す る。 (3) 引張 強 度-引 張 強 度 は ゴ ンク リー トに 龜 裂 の生 ず る の に抵 抗 す る重 要 な る 事 項 で あ る。 從 つ て,引 張 張 度 が 大 きい程 龜 裂 の發 生 が 妨 げ られ る のは 論 を俟 た ぬ。 (4) 引 張 荷 重 の 下 の ク リー プ,延 伸 能 力,及 び延 伸 比-茲 に 言 ふ 延 伸 能 力*(extensibility)と は コ ンク リー トが 引張 られ た 場 合 の伸 び得 る能 力,即 ち破 壊 の 際 の極 限 伸 を 意味 す る。 延 伸 比(extensibility ratio)と は 等 變 i涯増 荷 重(uniformly and gradu&liy increasing load)を 加 へ た場 合 の伸 と普 通 の材 料試 驗 に於 け る と同 程 度 の 急 速 な る速 度 で載 荷 せ し時 の 伸 と の比 を言 ふ 。 壓 縮 の場 合 に準 じ,ゴ ンク リー トに纏 續 して續 張 引 力 を 加 へ て置 け ば 歪 は漸 次 増 加 す る。 斯 か る 性 質 即 ち 引張 性 クリ ー プ(プ ラ ス チック ブ ロ ー)の た め,非 常 に緩 い速 度 で 引張 力 を加 へ る と急 速 に載 荷 す る場 合 に比 し,コ ンク リ ー トは破 壊 に達 す る ま で に 多量 に 伸 び 得 る も の で あ る。 實 際,大 氣 中 に於 て は ゴ ンクリ ー トの 乾 燥 は緩 慢 に 進 展 す る の が普 通 で あ る。 從 つ て コ ンク リ ー トの龜 裂 は時 間的 に考 察 す る必 要 が あ る。 叙 上 の如 くで あ るか ら,ュン * 極 限 伸率 ,伸 張能力,或 は伸能力 と言つ た方が よいか も知れ ぬ。3 乾 燥 に ょる コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主要 性 質 の 實驗 的 研 究(其 の一) 61
ク リー トの引張 クリー プ,延 伸能力或 は延伸比 の諸 性質は夫々乾燥せ る空氣 中に於 ける コンクリ ー トの 龜裂の究
明 に當 り之 と密 接 な る 關係 が あ る事 項 で あ る。 以 上 述 べ た る事 項 の外,コ ンク リー トの龜 裂 に 關 係尠 か らざ る性 質 が 彩 多 あ る。 就 中,壓 縮 強 度,引 張 彈 性 係 數 及 び壓 縮 彈 性 係 數,壓 縮 ク リ ープ は考 究 に値 す る大 切 な る事 項 で あ る。 コ ンク リー トの壓 縮 強 度 は其 の他 の機 械 的 性 質 の基 準 と看 做 され る もの で あ る。 引張 及 び 壓縮 に對 す る彈 性 係 數 は コ ン ク リー ト部 材 に生 ず る收 縮 應 力 と 密 接 な る關 係 が あ り,從 つ て ク リープ に 關 係 す る 。 他 の 條 件 が 一 定 な らば,收 縮 應 力 は ゴ ンク リー トの有 敷 弾 性係 數 に正 比例 す る。 表-1. 實 驗 の 梗 概(1936∼1936年 度) 壓縮 ク リープ は壓縮 に對 す る有 敷 彈 性 係 數 に 密 接 な る關係 が あ る外,自 由 水及 び コロ イ ド水 の 滲 逸(seepage) と深 い 關 係 が あ り,延 い て は部 材 内部 の乾 燥 の進 度 に顯 著 な る影 響 を 及 ぼす 。 2. 研 究 の 目的 本 研 究 の 自的 は,乾 燥 に よ る コ ン ク リー トの容 積 變 化 並 に 乾 燥 收縮 に基 づ く龜 裂 と密 接 な る關 係 を 有 す る ク リ ー プ,伸,引 張 強 度,彈 性 係 數 等 の諸 性 質 を明 白 にす る た め,コ ンク リー トを標 準 養 生 後 温 度21℃,濕 度50%及 び95%の 空 氣 中 に 置 け る場 合 の實 驗 的 研 究 を行 ふ て,略 々95%程 度 以 下 の濕 度 の室 氣 中 に於 て は 強 度 及 び 伸 の 何 れ の點 よ り見 る も,コ ンク リー ト内 に 於 け る逸散 性 水 分 の濃 度 の 分布 が 一 様 な らざ るか 或 は 部 材 が 全 體 とし て 自由 に收 縮 し得 ざ る ときは 當 然 龜 裂 の生 ず る所 以 を 解 明 す る こ とに重 點 を置 き,猶 ほ併 せ て 本 實 驗 の結 果 に 則62 乾 燥 に よ る ゴ ン ク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要 性質 の實 驗 的研 究(其 の一) 4 せ る龜 裂防 止 に 關 す る見 解 を披 瀝 す るに あ る。 1. 實驗 の豫 定 1925年 以 來,米 國 カ リ フォル ニヤ 大學 工學 部 工 業 材 料 研 究 所 に於 に は 專 門 的 に コ ンク リー トの 容 積 變 化 並 に ク リー プ に關 す る廣 汎 な る實 驗 的 研 究 が繼 續 實 施 さ れ,我 々 に貴 重 な 文 献1)を提 供 し來 つ た。 然 も猶 ほ,本 問 題 に就 て 更 に此 の上 研 究 を 必 要 とす る重 要 な る事 項 は限 りな く残 され て ゐ る。 而 して 此 處 に 報 告 す る 本 研 究 は其 の 一 つ を 取 扱 つ た も の で あ る 。 本 研 究 の基 礎 を な す 實 驗 の 梗 概 は表-1に 示 す 通 りで あ る。 第2章 實 驗 の 方 法 1. 材 料 本 實 驗 に供 せ し骨 材 は河 砂 及 び 河 砂 利 で あ つ て,砂 及 び砂 利 の 混 合 の 割 合 は,齎 等 に して プラ スチ ック な コ ン ク リー トを作 る た め,豫 備 試 驗 に よつ て 重量 比 で48:52と 決 定 した 。 此 の細 粗 粒 混 合 骨 材 の粗 粒 率 は4.88に し て,骨 材 は凡 て 洗 滌 後 使 用 前 迄 に 充 分 大 氣 中で 乾 燥 し,然 る後 標 準 節 で篩 分 け,其 等 を所 定 の篩 分 曲線 に從 つ て再 度 調 合 し て用 ゐ た 。 セ メ ン トは 第 一 編 に於 け る實 驗 に 使 用 せ し も の と同 様 に して,普 通 ポ ル 勢ラ ン ドセ メ ン 率'であつ た。 其 の諸 性 質 は既 に第 一 編 表-1に 示 せ る通 りで あ る 。 2. コ ン クリ ー ト配合の設 計 本 研 究 の實 驗 に供 せ し コ ンク リー トは ス ラ ンプ を3in(約7.5cm)と し,粘 性 に富 み且 つ 施 工 確 實 旦 つ 容 易 な るが 如 き混 合 物 を得 る や う,豫 備 實 驗 に よ りて 骨 材 の粒 度,配 合 比 及 び 水 セ メ ン ト重 量 比 を 定 め た。 而 して 骨 材 は 第1節 に 於 て 述 べ た もの を使 用 し,配 合 は セ メ ン トと細 粗 粒 混 合 骨 材 の重 量 配 合 比 即 ち貫 實 重 量配 合 比 が1:6 に して,又 其 の水 セ メ ン ト重 量 比 が0.566な る も の を 操 つ た 。 此 の コ ンク リー トを 標 準 養生 し,材 齢28日 に於 て試 驗 せ し に そ の壓 縮 強 度 は3750lb/in2(約260kg/cm2)で あ つ た 。 各 種 の引 張 試 驗 に用 ゐ し供 試 體 の兩 端 部 に 在 りて は,眞 實 重 量 配 合 比1:4,水 セ メ ン ト重 量 比0.48な る コ ンク リー トを 用 ゐ,試 驗 の際 供 試 體 が そ の端 部 で破 壊 す る こ と等 の不 都 合 が な いや うに配 慮 した。 3. 供 試體 の選 定 コ ンク リー トの 荷 重 に よ る 歪 を 計 算 す る に 當 り,そ れ に必 要 な る收 縮 量 を測 定 す る所 謂 基 準 供 試 體*(control specimen),及 び壓 縮 に 關 す る凡 て の試 驗 に 用 ゐ た る供 試 體 は6×12in(約15×30cm)な る標 準 圓〓 で あつ て, 又 引張 に 關 す る瓦 て の供 試 體 は6×33in(約15×84cm)圓 〓 で あ つ た 。 強 度及 び彈 性 係 數 の試 驗 用 以 外 の供 試 體 に は,凡 て そ の 中央 に10in(約25cm)標 點 線 を 圓 周 面 上 軸 に並 行 に120° の 間隔 を 置 い て3箇 所 設 け た。
1) Davis, Reymond: E., and G.E. Troxell, "Volume Changa in Portland Cement Mortars and
Concretes," Advance Prant of Proc. A.C.I., 1929.
Davis, Raymond E. and Harmer E. Davis, "Flow of Concrete under the Action of Snstained
Load," Ploc. A.C.I., Vol. 27, 1931, pp. 837∼901.
Davis, Raymond E.,H.E, Davis, and J.S. Hamilton, "Plastic Flow of Concrete under
Sus-tained Stress," Proc. A.S.T.M., Vol. 34, Port Ⅱ, 1934, pp. 354∼386.
上 記 の 外 未 發 表 の 貴 重 な る 論 文 が 影 多 あ る 。
歌 引 合 供 試 體 或 は 無 載 荷 供 試 體 と 言 ふ 方 が よ い か 竜 知 れ ぬ
5 乾燥 に よる コ ンク リー トの龜 裂 に 關す る主 要 性 質 の實 驗 的 研究(其 の一) 63
標點線 は,豫め コンク リー ト中に埋込 みたる眞鍮製 の標點栓受 に,頭 部 に變形測定器の標點針 の尖端 を受 ける錐孔
を穿て る特殊不鋸鋼 製
の標點栓(第 一編附圖-1參 照)を ネヂ込 みて之 に當て た。標點栓 は變形測定器 の標點針 を
屡 々挿入 して も磨損 しないや う肌焼 を 爲 したるものを使用 した。引張試驗 に用 ゐし供試體 の兩端部 には 引張 力を
加へ るに便す るため,一 端 にネヂを切 り,他 端 に補張針 を針金 にて巻立てた る椀状 の籠 を熔 接せ る1in丸 鋼 を,
その軸が供試體 の軸 と一致す るや うに供試 體 コンクリ ー ト中に埋込 んだ。
圖-1(a)は 引張 ク リープ試 驗装置,圖-1(b)は
壓縮 クリー プ試驗装置に して,何 れ も供試體を取付けた る状態
を示 してある。
強度及 び弾性 係數 の試驗用供試體には凡て標點栓は之を挿 入 しなかつた。
4. 供試體 の製作
供試 體 の製 作に凡て カ リフォル ニヤ 大學工學 部工業材料研究所 の標準方法 に櫨 つた。供試體 の數 は 各條件 に對
し1組3箇
とした。而 して表戎 に示せ るク リー プ試驗 に於ては標準養生及 び貯藏 の同一條件 に對 し乾燥に よる
圖-1(a). 引 張 ク リ 隔 プ 試 驗 装 置 收 縮,定 持 續 荷 重 に よ る壓 縮 ク リー プ,定 持 續 荷 重 に よる 引張 ク リー プ の各 試 驗 に對 して 夫 々1箇,及 び 延 伸能 力 試 驗 用2箇,合 計5箇 の供 試 體 を 一 時 に 成 形 した 。 強 度 及 び 彈性 係 數 の試 驗 に 於 ては,連 續 に 標 準 養 生 せ る 場 合 を除 き,壓 縮 及 び 引張 試 驗 何 れ も,同 一 材 齢 の試 驗 用 供 試 體 各1箇 を 同 時 に 成形 した。 供 試 體 の成 形 には,豫 め パ ラ ブ ィ ンに 浸 せ る,錫 板 底 を 有す る 繊 維 板 製 の圓 筒 型 を 使 用 し,又 コ ンク リー トの 混 合 に は通 稱 半 切 練 りのLandcaster式 鉢 型 ミキサ を 操 用 した 。 コ ンク リー トを造 る には,ミ キ サ に セ メ ン トと豫 め細 粗 粒 を混 合 し た る骨 材 を入 れ,之 を 先 づ1分 間室 練 りを な した る後,水 を加 へ て 更 に3分 間混 合 す る もの とす 。 コ ンク リー トは練 上 げ後 直 ちに 型 に 填 充 す る 。填 充 は6 in(約15cm)の 暦 に 分 ちて 行 ひ,毎 層 は不 撓 式 棒 型 振 動 機 を以 て 締 固 めた 。 引 張 試 驗 用 供 試 體 の成形 に 當 つ て は64 乾 燥 に よる コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す う主 要性 質 の實 驗 的研 究(其 の一) 6 先 づ 下 部 に既 述 の 籠 付1in丸 鋼 を挿 入 し,そ の 位 置 が 狂 は な い 様 特 殊 な装 置 を 以 て 保 持 しつ ゝ10in(22cm)だ け1:4の 富 配 合 の コ ンク リー トを 蟹 充 した る後,中 央 部 の基 準 コ ンク リー トを 前 記 の如 くして 詰 め ,更 に上部 圖-1(b). 壓 縮 ク リ ー プ 試 驗 装 置 は 下 部 同様 に して富 配 合 の コ ンク リー トを填 充 した。 6×12in(約15×30cm)供 試 體 は,型 に コ ンク リー トの填 充 を 終 りた る後 直 ち に 上 面 を平 滑 に 仕 上 げ,其 の 後 型 の取 外 し迄24時 間 灘 れ る 麻 布 に て 覆 ひ 養 生 を な した 。 5. 養 生 及 び 貯 蔵 コ ンク リー トの填 充 後24時 間 を 經 て 型 を 切 裂 き 供 試 體 よ り 〓除した 。 供 試 體 は型 の取 外 し 直 後,收 縮 及 び 壓 縮 試 驗 用供 試 體 は 其 の兩 端 面 に道 路 用 ラ ッカ*を 塗 布 し,其 の 他 め供 試 體 は 脱 型 せ る儘 温 度70°F(21℃)に て表-1 に示 す や うに 次 の4通 りに分 ち て保 存 した。 養 生 貯 藏 材 齢7日 迄 濕 度100%の 室 中,其 以 後 濕 度95%の 室 中 〃7日 〃 〃 〃 〃50%〃 〃28日 〃 〃 〃 〃95%〃 〃28日 〃 〃 〃 〃50%〃 6. 試驗 の準 備 荷 重 を持 續 的 に加 へ 置 く装 置 は 圖-1(a)及 び(b)に 示 せ る通 りで あ つ て,之 が 設 計 に當 りて は 充 分 な る強 度 を 有 す る と同 時 に 荷 重 を均 等 に供 試體 に 加 へ,更 に 荷 重 力 度 の 調 節 が 自由 に 出 來 る や うに 配 慮 して あ る。 即 ち引 張 ク リー プ或 は 延 伸 能 力 試 驗 用 供 試 體 に使 用す る 框 は 圖 示 の 通 り厚 さ1in(約25mm)な る上 下 の鋼 板 を高 さ翼3in 重 さ5.71b/ftの 工 形 鋼3本 を以 て作 り,接 手 は凡 て 熔 接 した もの で あ る。 又 壓縮 用供 試 體 に使 用 す る檀 は 厚 さ 1inな る 上 下 り鋼 板 を 單 に直 徑7/8in,長 さ27inな る丸 鋼 製 の 長 い ボル トの引 張 棒3本 を 以 て 締 付 け た もの * 鋪 装 の表 面 に車 線 の境 界 線其 の他 を 書 く場 合 に使用 す る1種 の塗 料 で防 濕 には 可成 り有效 な る もの で あ る。
7 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に關 す る主 要 性 質の 實驗 的研 究(其 の一) 65
である。引張用供試體 に埋 込 める籠付1in丸
鋼 の締 付ナットは 之 に接す る鋼板 の蓋板 と球面接鯛をな し,又 壓縮
用試驗 に使用す る装置 に於ては供試體 に接 して鍋板を置 き更にその上に球面 を有す る支持 ブ ロックを挿 入 し,是等
に よつ て 供 試 體 に 均 等 に荷 重 が傅 は るや う配 慮 した 。荷 重 は凡 て豫 め 壓 縮 力 と歪 との關 係 を 材 力 試 驗 に よ りて 確 め た る鐵 道 車 輛 用 蔓 巻 バ ネ を締 付 け て加 へ た。 壓 縮 ク リー プ試驗 用 供 試 體 の上 面 仕 上 げ を セ メ ン ト糊 又 は 硫 黄 混 合 物 を 以 て 行 ふ ときは,此 處 に 生 ず る ク リー プ度 が コ ンク リー トに 生 ず る ク リー プ度 と 異 な るた め 試 驗 の結果 に 誤 差 を 伴 ふ 惧 あ るに鑑 み,本 研 究 に於 て は供 試 體 は載 荷 直 前 そ の上 頂 を研 磨 盤 に て平 滑 に仕 上 げ た。 斯 く して 上 面 仕 上 げ を終 りた る後 直 ち にそ の 兩端 面 上 に , 特 別 の ア ス ファル ト乳 劑 を 塗 布 し,以 て 供 試 體 よ りの水 分 の 逸散 が な る べ く供 試 體 の 軸 と直 角 の方 向 に の み行 は る ゝ様 に した 。 所 定 期 間 の標 準 養 生 を終 りた る後 乾 燥 に よる收 縮,定 持 續 荷重 に よる壓 縮 及 び 引 張 ク リー プ,並 に,延伸 能 力 の 各 試 驗 用 供 試 體 を 他 の 貯藏 室 に移 す に先 立 ち,其 等 の標 點 栓受 け に 標 點 栓 を,時 日の徑 過 に伴 れ 弛 ま ない や う, 確 か とネ ヂ込 む だ 。 本 研 究 に 於 け る供 試體 は,濕 度100%の 標 準 養 生 室 よ り取 出 し 之 を 他 の 貯藏 室 に移 し 所 定 の試 驗 を開 始 す る に先 立 ち,壓 縮 ク リー プ試 驗 用供 試 體 以 外 の供 試 體 は 凡 て そ の 兩 端 面 上 に コール タ ール を 塗 布 し,以 て供 試 體 よ りの水 分 の逸 散 が な る べ く供 試 體 の軸 と直 角 の方 向 に のみ 行 は る ゝや うに した 。 7. 載 荷 壓 縮 及 び 引張 に 對 す る ク リー プ並 に 延 伸 能 力 の 試 驗 用 供 試 體 は 凡 て3箇 を以 て1組 とせ る を以 て,載 荷 の 方 法 ば之 を 一 定 して 變 形 の觀 測 の際 生 ず る誤 差 を 出 來 得 る 限 り小 さ くす る や う配 慮 した。 又 供 試 體 を標 準 養 生 室 よ り他 の貯 藏 室 に移 す に 當 つ て は,各 供 試 體 の收 縮 量 に違 ひが ない や う10分 以 内 の 時 間 で 行 つ た。 載 荷 に當 つ て は(1)基 準 供 試 體 の標 點 距 離 を讀 み,(2)未 だ 載 荷 せ ざ る 供 試 體 の標 點 距離 を讀 み,(3)直 ち に 供試 體 に 載 荷 し,(4) 再 び 基 準 供 試 體 の 標 點 距 離 を讀 む 。 斯 くす る こ とに よ り載 荷 中 の乾 燥 收 縮 量 を 知 る こ とが 出來 る 。 引 張 ク リー プ及 び延 伸 能 力 の 試 驗 用供 試 體 の載 荷 は 特 別 な る枢 に 取 付 け た ジ ヤッキ を 使 用 して 行 つ た。 又壓 縮 ク リー プ試 驗 用 供 試體 の載 荷 は 載 荷 框 の 引 張 棒 の ナッ トを單 に締 付 けれ ぼ よい 。 引張 強 度 及 び 引 張 彈性 係數 用供 試 體 の試 驗 に當 つ て は,其 の上 下 兩 端 に 摩 擦 〓 具(friction grip)を 取 付 けて 試 驗 機 にか け た。 引 張 試 驗 中 の伸 は標 點 距 離 が2in(約20cm)な る伸 計 を 用 ゐて 測 定 し た。 壓 縮 強度 及 び 壓 縮 彈 性 係 數 の 試 驗 に 當 つ て は,試 驗 直 前 供 試 體 の兩 端 面 の防 水 塗 布 工 を 除 き,そ の 上端 面 は之 を硫 黄 混 合 物 を以 て キ ヤ ッピ ング を な した。 8. 變 形 測定 の方 法 壓 縮 及 び引 張 ク リー プ並 に延 伸 能 力 の 試 驗 用 供 試 體 或は 乾 燥 に よ る 收 縮 試 驗 用 の基 準 供 試 體 に設 け た標 點 間 の 距 離 の測 定 は1萬 分 の1in讀 み の アメ ス式 ダ イ ヤ ル ・ゲ ー ジを取 付 け た る カ リフォル ニヤ大 學 型10in(約25cm) ファル クラ ム・プ レ ー ト變 形 測 定器 に依 つ た 。此 の測 定器 を用 ゐれ ば 見 込 みで10萬 分 の1inま で讀 取 る こ とが 出 來 る。長 さの 基 準 としで は ア ンバ鋼(Invar steel)の 標 準 棒 を用 ゐた 。 ダイ ヤ ル ・ゲ ー ジの狂 其 の 他 に よる讀 み の 誤 差 を避 くるた め,測 定 の度 毎 に ゲ ー ジ の讀 み を 標 準 棒 に よ りて 照査 した 。長 さ を 測 居 す るに當 つ て は,第 一 に 標 準 棒 の標 點 距 離 を讀 み,次 に 供 試 體 の標 點 距 離 を讀 む 。 9. 實 驗資 料 の 整 理 變 形 測 定 器 の讀 み か ら歪 を計 算 す るに は 先 づ 供 試 體 の讀 み と 標 準 棒 の讀 み との差 を 求 め る。 供 試 體 の或 材 齢 に66 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの 龜 裂 に 關す る主 要 性 質 の 實驗 的 研究(其 の一) 8
於 ける基準時 よ りの全 歪を求 む るには,其 の材齢 に於 ける上記兩讀 みの差 か ら基準時 に 於 ける兩讀み の差を引い
た 値 で あ る。 基 準 時 と して は便 宜 上 供 試 體 の載 荷 直 前 又 は 直 後 の何 れ か に襟 つ た 。 斯 く して 種 々 の材 齢 に於 け る基 準 時 か らの全 歪 が 得 らるれ ば,直 角 座 標 の縦 座 標 に 全 歪 を取 り,又 横 座標 に基 準 時 よ りの 日數 を取 り,各 實 驗 値 を グ ラ フ に描 い て 連 ね る と全 歪 と荷 重の持 續 日數 との關 係 を 明瞭 に表 す こ とが 出 來 る。 全 歪 の實 驗 値 と して は 凡 て 供 試 體3箇 の平 均 値 を採 る 。 基 準 供 試 體 には 荷 重 をか け ない か ら,そ の全 歪 は 乾 燥 收縮 で あ る。載 荷 せ る 供試 體 の全 歪 と基 準 供試 體 の 收縮 歪 とか ら,ク リー プ を計 算 す る方 法 は後 章 で論 述 す る。 第3章 實 驗 の 結 果 及 び 其 の 考 察 1. 概 設 本 章 に於 て は本 研 究 の實 驗 結 果 及 び 之 に對 す る著 者 の考 察 を 詳 細 に 記述 した。 本 研 究 に 於 け る 實 驗 は1種 の 普 通 ボル トラ ン ドセ メ ン トを以 つ て 造 れ る水 セ メ ン ト重 量比0.566な る コ ンク リー トに 關 す る もの で 養 生 及 び貯 藏 の 條 件 は 湿 度70°F(21℃)に て第2章 第5節 に 記 せ る如 く4通 りで あ つ た 。 本 研 究 に於 て 行 へ る實 驗 は 次 の5項 目 に就 て ゞあ る 。 (1) 乾 燥 に よ る收 縮 (2) 壓 縮 強 度 及 び 引張 強 度 (3) 壓 縮 及 び 引 張 に 對 す る 彈 性 係 數(ヤ ング係 數) (4) 定持 續 荷重 の 下 の 壓 縮 ク リー プ 及 び 引 張 ク リー プ (5) 等 變 遞 増 荷 重 の 下 の延 伸能 力 2. 乾 燥 に よ る收 縮 (a) 實 験 の結 果 本 研 究 の實 驗 に於 て は 乾 燥 に よ る收縮 を 自生 收 縮 又 は温 度 の變 化 に よる收 縮 と 區 別 して取 扱 ふ こ とは 出來 な か つ た。 本 質 的 に 見 て,今 日實 施 され て ゐ普 通 の コ ン ク リー トに 於 け る 自生 收縮 は水 分 の逸 散 に よ る 收 縮 に比 べ て 著 し く小 さ く2),又 温 度 の 變 化 に よ る容 積 變 化 は,直 徑6in(約15cm)の 左 迄 大 き くな い 供 試 體 を廣 い 定温 試 驗 室 に保 存 して 試 驗 す る場 合 に は,實 際 上無 視 し 得 る程 度 の も ので あ るか ら,本 實 驗 に 於 け る コ ン ク リー トの 收 縮 現 象 は主 と して 乾 燥 に よ る水 分 の逸 散 に 因 る もの と考 へ て も大 した支 障 は あ る まい 。 本 研 究 に 於 て 乾 燥 に よる牧 縮 或 は 單 に乾 燥 收縮(drying shrinkage)と 言 ふ 用 語 は,本 質 的 に 言 へ ば100% 未 満 の濕 度 の室 氣 中 に於 て コ ンク リー トが 硬 化 す る場 合,凡 有 る原 因 に 基 づ く所 謂 硬 化 收縮 を 意 味 す るが,併 し 既 述 の如 く この收 縮 は コ ンク リー ト中 に含 まる ゝ水 分 の逸 散 に よ る 非 結 合 水 量 の變 化 に 基 づ く收 縮 と考 へ て實 際 上 差 支 へ な い 。 本 實 驗 は乾 燥 收縮 の現 象 を 明 瞭 にす る た め,旦 つ ば また ク リー プ及 び 延 伸能 力 を求 め る に 必 要 な る資 料 を得 る た め,無 荷 重 の基 準 供 試 體 に就 て長 時 間 に亙 つ て行 つ た 長 さの 變 化 に關 す る も ので あ る。 本 實 驗 に 供 せ る試 驗 體 は6×12in(約15×30cm)の 標 準 圓 〓 供 試 體 で あつ た。 供 試 體 よ りの 水 分 の逸 散 が 單 に そ の軸 と直 角 の方 向 にの み 行 は れ るや うに,供 試 體 の 兩端 面 に は ゴ ール タ ール ピッチ を2囘 塗 布 して 此 處 か らの2) Davis, Harmer E., "Autogenous Volume Changes of Concrete," Proc. A.S.T.M., Vol. 40. 1940,
9 乾 燥 に よる コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要性 質の實 驗 的 研究(其 の一) 67 水 分 の逸 散 が 行 はれ な い や うに手 配 した*。 收 縮 量 の測 定 は乾 燥 期 間 に對 して 行 つ た 。 圖-2,3は 供 試 體 を夫 々温 度21℃ に て 材 齢7日 及 び28日 迄 飽 和 灘 度 の空 氣 中に 標 準 養 生 した る後,之 を灘 度95%及 び50%の 試 驗 室 に移 して 貯 藏 せ し場 合 め供 試 體 の收 縮 率 と乾 燥 日數 との 關係 を示 せ る もの で あ る。 圖-4に 於 て は材 齢7日 及 び28日 迄標 準 養生 した る後濕 度50%の 室 に貯 藏 せ し場 合 の 收 縮 率 と 乾 燥 日數 との 關 係 を 何 れ も對 數 縮 尺 で 示 して 置 い た。 又 收 縮 率 と 標 準 養 生 期 間 及 び 貯藏 室 の室 氣 濕 度 との關 係,並 に同 一 期 間 標 準 養 生 せ し後 濕 度50%及 び95%の 貯 藏 室 に保 存 せ し場 合 の同 一 材 齢 に 於 け る收 縮 量 の 比 を 示 した のが 表-2 で あ る。 圖-2及 で圖-3か ら瞭 るや うに,最 初 の標 準養 生 後 室 氣 に曝 せ し コ ン ク リー ト圓 〓 の收縮 歪 は 空 氣 が 乾 燥 せ る 表-2. 6×12in(約15×30cm)標 準 圓〓 供試 體 の 平 均收 縮 率 と養生 及 び 貯藏 條 件 と の關 係 (温度21℃) (2) 6×12inコ收 縮 ン ク リー ト圓 〓 供試 體 を標準 養 生後 灘度50%及 び95%の 空 氣 中 に貯 藏 せ し場 合 の 率 の比 程 大 に して,又 其 の増 加量 は 何 れ の場 合 を 問 は ず 材齢 が 大 き くな る に 伴 れ減 少す る。 本 實 驗 の 結 果 か ら ゴ ンク リ ー トの乾 燥 に よる水 分 の清 失 量 が大 きい程 乾 燥 收 縮 歪 も亦 大 きい こ とが 言 へ る。 圖-4に 依 れ ば,本 實 驗 め範 圍 内 に於 て は,同 一 濕度 の空 氣 中 で は最 初 の標 準 養 生 期 間 が 長 い 程 同 一期 間 の乾 燥 に對 す る收 縮 歪 が 幾 分 か 大 きい 。 之 は,興 味 あ る現 象 に して 第 一 編 の小 型 丸 棒 及 び 角 棒 の實 驗 結 果 か ら考 へ る と * 著 者 が1/2×6in(約1.3×15cm)な る セ メ ン ト糊 丸 捧 供 試 體 に 就 て 各 種 の 防 水 塗 布 工 の效 力 を 確 め ん が た め,温 度21℃,濕 度50%の 空 氣 中 に 於 て 供 試 體 の 全 面 に 塗 布 液 を塗 り そ の 收 縮 量 を材 齢1年 迄 試 驗 せ しに,コ ー ル ター ル ピッチ を2同 塗 る と に よ りセ メ ン ト糊 か らの 水 分 の 逸 散 は 殆 ん ど 防 止 し得 る こ と を 確 め 得 た 。
68 乾 燥 に よ る コ ン ク リ ー トの 龜 裂 に 蘭 す る 主 要 性 質 の 實 驗 的 研 究(其 の 一) 10 一 見 矛 盾 のや う に も思 ほ れ るが ,併 し本實驗 の 直徑6in(約15cm)の 供 試 體 に於 て は そ の コ ンク リー ト中 に於 け る逸 散 性 コ ロイ ド水 の量 は 、最 初 の標 準 養 生 期 間 が 長 くな る程 減 少す る も,そ の反 面 コ ロイ ド水 に よ りて 占 め られ るギ 細 間 隙 は セ メ ン トの 加 水 分解 及 び 水 和 作 用 の 進 展1と件 れ漸 次 小 さ くな り,從 つ て 同 一量 の水 分 の 逸 散 に よ る收 縮 歪 は 最 初 の標 準 養 生 期 間が 特 別 に長 期 に亙 らざ る 限 り養 生 期 間が 長 い程 大 き くな る と 考 へ れ ば,上 期 の 現 象 は必 ず し も 奇 異 な も ので は ない 。 猶 ほ又,本 實 驗 に於 け る 標 點 栓 の設 定 そ の宜 敷 を得 ざ る た め,換 言 す れ ば 標 點 栓 の位 置 及 び 其 の埋 込 み 其 の他 に就 て カ リ フォル ニヤ 大 學 乃 至 は 米 國 で普 通 に 標 準 とされ て ゐ る試 驗 方 法 に 根 本 的 に安 當 を缺 く點 が あ るた め,斯 か る現 象 を 呈 す る と も想 像 され る。 何れ に して も この現 象 は 今 後 根 本 的 に 研 究 を 要 す る興 味 あ る問 題 で あ る。 尤 も,圖-4又 は表-2に 就 て よ く吟 味 す る と同 一 乾 燥 状 態 の空 氣 中 に貯 藏 せ し場 合 收縮率 に及 ぼす 最 初 の標 準 養 圖-2. 定温度 定 濕 度 の空 無 中に 於 け る コ ン ク リー トの 收縮 歪 生 期 間 の長 短 の影 響 は,そ れ が7∼28日 の範 圍 内 で は,實 際 上數 量 的 に は大 した もの で は ない こ とが 分 明 る。 又 表-2か ら,7∼28日 間 の標 準 養 生 後 湿 度 及50%及 び95%の 空氣 中 に 貯 藏 せ し場 合 の 同一 材 齢 に於 け る夫 々 の 收縮 率 の 比 は 大 略5に して,之 は貯 藏 中 の 空 氣 の 飽 差 の比 の約1/2 、に相 當 す る。是 等 二 つ の結 果 は實 用 的 に 見 て注 意 を喚 ぶ に 値 す る事 項 で あ る。 (b) 乾 燥 收 縮 歪 を求 む る實 驗 式 前 記實 驗 の 結 果 か ら,水 分 逸 散 の現 象 並 に それ に よ る乾 燥 牧 縮 の理 論 的考 察 に資 し,球 は 收 縮 歪 を 數理 的 に最
11 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要性 質 の 實驗的 研究(其 の一) 69 圖-3. 定 温 度,定 濕度 の 空氣 中 に 於け る コン ク リー トの 收縮 歪
圖-4. 標 準 養 生 後温 度21℃,濕 度50%の 空 氣 中 農 置 かれ た る 標準 コ ン ク リ闘 ト圓 〓供試 體 の收 縮 歪
70 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 蘭 す る 主要 性 質 の實 驗 的研 究(其 の一) 12 扱 ふ 便 宜 上,漁 度50%の 空 氣 中 に保 存 ぜ し6×12in(約15×30cm)コ ンクリー ト圓 〓 供 試 體 の收 縮 に 關 す る實 驗 の 結果 を 公 式 化 して見 よ う。 圖-4か ら 到 るや うに,乾 燥 の早 期 に於 て は低 濕 度(50%)の 室氣 中 に 貯 藏 せ る6×12in(約15×30cn)ユ ン ク リー ト標 準 圓 〓 の收 縮 歪 の對 數 は 略 々乾 燥 日數 の對 數 に 比 例 して 増 加 す る。 此 の 事 實 か ら,乾 燥 に よる收 縮 歪 は乾 燥 期 問 の羃 函 數 に て 示 し得 る こ とが 言 へ る。 7日 及 び 磐 日間 の標 準 養 生 後 直 ちに 温度21℃,濕 度50%の 比較 的 乾燥 せ る空氣 中 に貯 藏 せ る6×12inコ ン ク リー ト圓 〓に 關する前 記 實 驗 の結 果 を公 式 化 す れ ば,次 に示 す 諸 羃 公 式 に よ る計 算 値 が 實 測 値 とよ く一 致 す る こ とを知 り得 た 。 即 ち, 材 齢28日 迄 濕 度100%の 室 に標 準養 生 せ し場 合 に は,
(1)
な る式 が乾 燥 の 早 期 に於 て は最 も實 驗 値 に近 い値 を 與 へ,又 乾 燥6ケ 月 間 に就 て 言 へ ば, (2) な る 式 が總 體 酌 に 實 驗 値 に近 い 値 を示 す こ とが到 る 。 上 式 に 於 て ε:收 縮 率(10-6),t:乾 燥 期 間(日) 材 齢7日 迄濕度100%の 室 に標 準 養 生 せ し場 合 に は,(3)
な る 式 が與 へ る値 は,乾 燥 期 間 が6ケ 月 迄 は,略 々實 驗 の結 果 と一致 す る。 圖-4に は 上 記3公 式 の計 算 値 を も 圖示 して あ る。 圖 か ら判 る様 に乾 燥 の早 期 即 ち 乾 燥 日數約50日 迄 は(1)及 び(3)式 に よる計 算 値 は 夫 々實 驗 の 結 果 と實 際 上一 致 す る。 是 等 の式 は家 の(c)に 於 て 述 べ る 理 論 公 式 か ら誘 導 せ し近 似 式(f)と 同 形 で あ る 。猶 ほ,極 め て近 似 的 に 收縮 量 と乾 燥 期 間 との 關 係 を 現 す に は, (4) 茲 に α:實 驗 定 數 な る式 を用 ゐ得 よ う。 此 の 式 は(e)に 於 て 違 べ る(g)式 と同 形 で あ る。 (c)非 給 合 氷 の逸 散 に因 る セ メ ン ト糊,モ ル タ ル及 び コ ンク リー トの乾 燥 收 縮 に 關す る數 理 物 理 學 的 私 見 (i) 硬 化 せ る セ メ ン ト糊5モ ル タル 及 び コ ンク リー ト中 の非 結 合 水 の逸 散 と之 に基 づ く乾 燥 收 縮 セ メ ン ト糊 乃 至 はコ ンク リート の 乾 燥 に よ る水 分 逸散 の現 象 並 に其 の逸散 に 基 づ く乾 燥 收縮 の理 論 に 關 して は, 從 來 多 くの研 究 者 に よ わて 物 理 學 的 に或 は 化 學 的 に檢 討 され,種 々 の學 説 が 提 唱 せ られ て 來 た が,而 も猶 ほ 未 だ 定 読 と認 む べ き,aの に 到 達 し居 らざ る も の 玉如 く,又 其 等 の諸 説 は 必 ず し も理 論 的 に 一 致 して ゐな い 。 之 は 本 問 題 の 性 質 上 實 にや む を 得 ない こ とで あ る 。 歸 納 的 に 見 て,セ メ ン ト糊 乃至 コ ンク リー トの收 縮 は,硬 化 現 象 の進 行 に伴 ふ 自生 收 縮 並 に水 和 熱 の影 響 も あ ら う が,普 通 の大 さ の部 材 に於 て は主 とし て其 等 の 中 に 包 含 され る非 結 合水 即 ち 自 由水 及 び ゴ ロイ ド水 の消 失 に よ る こ とは 否 み難 い 事 實 で あ る。 理 論 的 に 考察 す れ ば,硬 化 せ る セ メ ン レ糊 乃 至 コ ンクリー ト中 の水 分 の 消 失 は, 擴 散 及 び 蒸 發 乃 至 は放 散(負 吸着,negative adsorption)の 理 論 を應 用 して 解 決 が 出 來 るや うに も思 はれ る。併 し な が ら,凝固 せ る セ メ ン ト糊 の構 造 は甚 だ 複 雑 で あ り,そ れ が 膠 質,ゲ ル(凝 膠,Gel),結 晶及 び 自由 水 か ら成次 の 頁 註:3)Freissinet. E.:"Principle of a Theory of Shrinkage," Annales des Ponts et Claussees,
13 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主要 性 質 の 實驗 的 研 究(其 の一) 71 り,從 つ て そ の材 質 は 均 等 性 を 缺 き,爲 め に上 記 理 論 の 適 用 は 一 見 非 常 に 難 しい が,或 程 度 の假 定 が 實 際 上許 容 され る な らぼ,敍 上 の企 は必 ず し も不 可 能 で は な か ら う。 例 へ ば,佛 國 のE. Fressinet氏3)は 凝 固 せ る セ メ ン ト糊 を僞 固體(Pseudo-solid)と 考 へ,之 を固 體,液 體 及 び ガ ス體 か ら成 る も の と考 へ た,而 し て セ メ ン トの凝 固 の初 期 に於 て は,密 度 の 小 な る微 分 子(corpuscles)が 生 じ,之が 互 に 接觸 し,硬 化 の進 展 に伴 ひ益 々微 分 子 が 發 生 し て相 互 に集 結 し,遂 に夫 等 が 互 に繼 が り合 つ て茲 に蜂 窩 状 の 組 織 を 形 成 す る こ とを 主 張 した 。 猶 ほ,同 氏 は セ メ ン ト糊 中 の非 結 合 水 を毛 管 水 と考 へ,Load Kelvinの 熱 力 學 理 論 を適 用 して 水 分 の逸 散 理 論 を樹 て,又 それ に 基 づ く收 縮 の 理 論 は 彈性 理 論 を 應 用 して 之 を誘 導 して ゐ るが,こ の理 論 の實 驗 的検 討 は 何 等 加 へ られ て ゐ ない 。 又米 國 ポ ル トラ ン ドセ メ ン ト聯 合 會 のT.C. Power氏4)は,上 記Freissinet氏 の 理 論 を 承 認 し注 意 深 く之 を 應 用 して,セ メ ン ト糊 中 の相 對 蒸 氣 壓 と水 分 の逸 散 量 及 び 非 結 合 水 の 濃 度 との 關 係 を 論 じて ゐ る。 元 來,セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ン ク リー ト中 の非 結 合水 の濃 度 分布 は 甚 だ 複 雑 で,物 理 化 學 特 にKapillarchemie の發 達 見 るべ き も のあ る今 日 に於 て も,こ の濃 度 分 布 に 關 して は 未 だ 定 説 に達 して ゐ ない 。 而 して 既往 の文 献 を 検 す るに,木 材 中 の 水 分逸 散現 象 の數理 論 的 取 扱 に就 て は,Lord Kelvinの 熱 力學 理 論 が 應 用 され て ゐ る の を散 見 す る 。 又 多 くの膠 質 化 學 專 攻學 者 の手 に よつ て,珪 酸 ゲル の容 積變 化 の 問題 の解 決 に當 う て もLord Kelvinの 理 論 が 引 用 され て ゐ る。 猶 ほ,粗 鬆 な る固 體 に よる 凝 結 性 蒸 氣 の吸 着,白 土 の吸 着 或 は 軟 ガ ラ ス 中 の 毛 管 水 の蒸 氣 壓等 に 關 す る既 往 の實 驗 的 或 は 理 論 的 研 究 に就 て 檢 討 す る に,セ メ ン ト糊 又 は 之 に類 似 の材 料 に 於 け る水 分 の 逸 散 に 關 す る現 象 はLord Kelvinの 熱力學 理 論 を應 用 して 説 明 し得 る場 合 が 多 い や うで あ るが,又 そ の 反面 説 明 に 困 難 な る こ とも勘 くな い 。 既述 の 如 く,セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リ ー トの組 織 は甚 だ 複雑 で あ わ,且 つ 水 分 の逸 散 な る溝 失 現 象が 明瞭 を鉄 くの 故 を 以 て,其 等 の水 分 逸 散 の現 象 を簡 單 な る 理 論 で 片 付 け る こ とは相 當 の 難 點 が 存 す る。 併 し なが ら,應 用 科 學 の部 門 に 屬 す る工 學 の領 域 に於 て は,セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リー トよ りの乾 燥 に よ る水 分 の清 失 を 假 りに逸 散 な る單 一 現 象 と看 做 し,こ の現 象 を單 一 理 論 で説 明 し 得 るや う近 似 的 の取 扱 を 爲 す こ とが 許 容 され るな らば, 斯 く して 得 た る理 論 は 實 際 應 用 上 甚 だ 便 利 で あ る。 尤 も斯 く取 扱 ふ こ との 當 否 は 精 確 且 つ 安 當適 切 な る 實 驗 的研 究 に よ りて 樵 討 さ るへ きで あ る。 著 者 は敍 上 の實 用 的 見 地 に 立 ち,實 驗 の結 果 に 則 した る セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ン ク リ ート の水 分 逸 散 理 論 の樹 立 を試 み,更 に 乾 燥 に よ る水 分 の 逸散 に 基 づ く收 縮 理論 を も假 に 提 唱 して本 問 題 の 概 念 的 解 決 に 資 した い と思 ふ 。 (ii) 非 結 合 水 の逸 散 理 論 既述 の 如 く,硬 化 せ る セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リー トの乾 燥 に よる水 分 の消 失 を 逸 散 な る單 一 現 象 と着 做 し得 る とせ ば,之 は 家 の三 つ の理 論 か ら説 明す る こ とが 出來 よ う。 即 ち, (1) ガ ス 體 の空 中 に 於 け る擴 散 に基 づ く理 論,即 ち濃 分 の室 中 に 於 け る擴 散 に關 す る理 論 (2) 毛 管 説 に基 づ く逸 散 理 論, (3) 逸 散 性 水 分 の物 體 内 に於 け る擴 散 の理 論,師 ち熱 傅 導 説 に類似 の理 論, の三 つ の理 論 に よ りて 乾 燥 に よる水 分 逸 散 の現 象 を 數 理 的 に處 理 し 得 られ る筈 で あ る。 所 が 之 が 實 際 上 の取 扱 ひ は なか なか 簡 單 に は行 か ぬ。 即 ち,硬 化 せ る セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リ ー トの組 織 が 甚 だ 複 雑 して 居 り,更 に部 材 又 は供 試 體 の表 面 條 件 並 に其 等 の 置 か れ る場 所 の空 氣 の状 態 が 明瞭 を缺 く點 が 多 い か ら,(1)の ガ ス體 の空 氣 中
4) Powers, T.C.: "Preliminary Repqrt on a Study of the Capillarity
of Hardened Portland
Cement-Series 245," Appendix 9, Semi-Annual Report of Research Lab., P.C.A.(Oct. 1935).
72 乾燥 に よ る コ ン ク リー トの龜 裂 に關 す る主 要 性 質 の實 驗 的 研究(其 の一) 14 に於 け る擴 散 理 論 を 應 用 して 逸 散 現 象 を説 明 す るに は,種 々 の假 定 を 必 要 とし9又 理 論 の 實 用復 値 を判 斷 す べ き 準 據 とな る實 驗 的 の研 究 が 困 難 な る嫌 が あ る。 次 に(2)の 毛 管 説 に基 づ く逸 散 理 論 の樹 立 は3硬 化 せ る セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ン ク リー ト中 に 於 け る非 結 合 水 の 占 め る間 隙 を 毛 管 と看 做 し,そ の 分布 を實 驗 的 根據 か ら想 定 す る こ とが 出來 れ ば,Lord Kelvinの 熱 力學 理 論 を 應 用 す る こ とに よ り近 似 的 に は成 功 す る で あ ら う。 著 者 は セ メ ン ト糊 の場 合 に 就 て研 究 を 進 め,此 の理 論 に よ り て セ メ ン ト糊 か らの水 分 の 逸散 現 象 を 説 明 す る こ とは,歸 納 的 に 見 て 決 して 不 可能 で は ない こ とを 確 む る こ とを 得 たが,併 し之 に は實 驗 的 照 査 に 當 り種 々 の困 難 が 存 す る。 從 つ て コ ンク リ ー トに 此 の説 を適 用 す る こ とは 實 用 上 不 便 が 砂 くない 。 最 後 に9(3)の 逸 散 性 非 結 合 水 分 の物 體 内 に於 け る擴 散 の理 論 を應 用 して硬 化 せ るセ メ ン ト糊 乃 至 は コ ン ク リー トの水 分 逸 散 現 象 を説 明す る こ とは,結 果 が ら言 つ て 實 驗 的 照 査 が 割 合 に簡 單 で あ り,又 實 用 上 の 數 理 的 取扱 が 容 易 で あ る。 既 にF. Tuttle 氏5)は木 材 の乾 燥 現 象 を此 の理 論 を 用 ゐ て 説明 して ゐ る。 更 に,著 者 の研 究 と相 前 後 して,本 理 論 を 適 用 して,H.E. Schwiete及 びH.zur Strassen兩 氏6)は軟 練 モル タル の 水 分 逸 散 に よ る收 縮 現 象 を,又R.W.Carlson教 授7)は コ ンク リー トの乾 燥 收 縮 の現 象 を 説 明 して ゐ る。 尤 も是 等 の論 文 の何 れ に 於 て も,定 量 的 に 實 驗 的 研 究 強 討 が 加 へ られ て居 らな い 。 上 述 の3読 の 中,コ ンク リー トの乾 燥 に よる水 分 逸散 の 極 く初 期 に於 て は(2)の 毛 管 説 が よ く適 合 し,又 水 分 逸 散 の極 く初 期 を 除 き其 以 後 に於 て は(3)の 擴 散 理 論 の適 用 が妥當で あ わ又 便 利 で あ る こ とが 言 べ る もの と思 ふ 。著 者 の實 驗 的研 究 に依 れ ぼ,水 セ メ ン ト重 量 比0.30∼0.60な るセ メ ン ト糊 を 以 て 作 れ る直 徑5∼15cmな る標 準 圓 〓 を材 齢7∼28日 迄 標 準 養 生 し,そ の後 直 ち に そ の 上 下 端 面 に ア ス プ アル ト塗 布 工 を施 し 之 を 温 度 約21℃,濕 度 約50%の 室 氣 中 に保 存 せ し に,水 分 の逸 散 が 初 ま つ てか ら概 ね3,4日 乃 至10欝 内 外 に してFS周 面 上 に 龜 製 が 生 じ,そ の後 龜 裂 は漸 次 大 き くな り,次 で 或 る期 間 を纏 過 す れ ば 却 つ て縮 ま る こ とが 確 認 され た 。 而 して 數 週 間 の乾 燥 後 供 試 體 を そ の 軸 に 直 角 に割 つ て そ の破 面 を觀 察 母 しに,逸 散 を 非 結 合水 分 の濃 度 が 圓周 附 近 で 著 し く 低 く内部 に進 む程 多 い こ とが,破 面 の色 が 帶 緑灰 白色 か ら漸 次 帯 緑灰 黒 色 に 變 化 して 居 る こ とに よつ て 如實 に 示 され て ゐ た 。 然 る に約14年 間 水 中養 生 せ し水 セ メ ン ト重 量 比0.30な る セ メ ン ト糊 の15×30cm圓 〓 供 試 體 を 温 度 約21℃,濕 度 約50%の 試 驗 室 内 で約3ケ 月 間 自然 乾 燥 せ しめ,又 其 の後 も同 室 内 に 繼 續 保 存 せ しに 既 に 1年 以 上 を 徑 過 せ る今 日未 だ一 本 の 毛 状 龜 裂 を も認 めな い 。 叙 上 の如 き 事 實 も あ り,猶 ほ 更 コ ンク ザ トは セ メ ン ト糊 と細 粗 粒 混 合 の 骨 材 か ら成 る複 雑 な組 織 を なす もの で あ る か ら,供 試 體 た る と部 材 た る とを問 は ず,何 な る條 件 の 下 に て も當 嵌 るや うな一 般 的 な 水分 逸 散 理 論 の樹 立 は不 可 能 に近 い こ とは 明白 で あ る。 併 しな が ら材 齢 1∼4週 迄標 準 養 生 し,其 の 後 定 温 定 灘 の空 氣 中 に貯 藝 せ る場 合 の普 通 コ ンク リー トの聴 定 供 試 體 或 は 部 材 の 乾 燥 現 象 は,そ の 極 めて 初 期 を 除 きユ ンク リ ー ト中 の セ メ ン トの 化 學變 化 が 事 實 上 完 了 す る迄 の 問 に 於 て は,2,3 の 合 理 的 假 定 を爲 す こ とに よ わ,水 分 の物 體 内 に於 け る擴 散 理 論 を應 用 して 數理 論 的 に取 扱 ひ 得 る で あ ら う こ と は,理論 上 は 或 は 妥 當 性 を缺 く談 も あ ら うが,實 際 上 は,著 者 の研 究 か ら強 討 して,必 ず し も不 可 能 で は な か ら う。
5) Tuttle, Fordyce:"A Mathermatical Theory of the Drying of Wood," Jour. of Franklin
Insti-tute, 200, pp. 609-61姿.
6) Schuiete, H.E. und H. zur Strassen: "Ueber Schwindung und die Wasselabgabe von
Zemen-ten," Zement, 27, 1938, S. 769 und 788.
7) Carlson, Roy W., "Drying Shrinkage of Large Concrete Members," Proc. A.C.I., Vol.33, 1937,
35 乾燥 に 上る コ ン ク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要性 質 の實 驗 的 硫 究(其 の一) 73 (iii) 粗 鬆 な る 固體 内 に於 け る逸 散 性 水 分 の擴 散 理 論* セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンクリー ト片 の各 部 に於 け る水 分 師 ち非 結 合 水 分 の濃 度 が 異 な る と きは,水 分 は 濕 れ る部 分 か ら乾 け る部 分 に 向 つ て移 動 す る。今,セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リー トが 齎 等 な る組 織 か ら成 り,セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ン ク リー ト中 の微 細 直六 面 體 の1面 に對 し直 角 に移 動 す る速 さが 移 動 の方 向に 於 け る水 分 勾 配 に 正 比 例 す る もの と考 へ得 る と きは,セ メシ ト糊 乃 至 は コ ンク リー トの水 分 の逸 散 を,物 體 内 に於 け る熱 傅 導 の場 合 に 準 じて 物 體 内 に於 け る擴散 現 象 と看 做 す こ とが 出 來 る。然 らば,擴 散 す る物 質 の濃 度 即 ち 逸 散 性 水 分 を 以 て 熱 傅 導 の と きの 温 度 に置 換 へ る ときは,水 分 逸 散 の一 般 微 分 方 程 式 は 次 の 如 くな る 。 直 角座 標に 對して は,
(a)
圓柱 座標 に對 しては,
(b)
茲 に θ:逸 散 性 水 分 濃 度(molsture concentration), t:時 間,a:水 分 傳 播 率 †(thermo-hygrometric or hygral diffusivity, moisture
diffusion constant). θ,t及 びaの 實 用 單 位 は,夫h,物 體 の單 位 容 積 中 の 逸 散 性 水 分 の容 積 比(容 積 含 水 率),日 及 びft2/日,(又 はcm2/日)で 示 す が 便 利 で あ る 。 猶 ほ,粗 鬆 な る物 體 内 に於 け る逸 散 性水 分 が水 蒸 氣 とな りて 物 體 内 の室 隙 を 擴 散 す る も の とし,室 隙 内 の 水蒸 氣 の濃 度 を ρ を 以 て 示 す ときは(a)又 は(b)式 と同型 の式 を 得 る 。而 して ρ と θ の一 次 代 數 式 で 表 は し 得 る も の と考 へ る と きは置 似 的 に(a)又 は(b)式 が 得 られ る。 普 通 我 々 が 遭 遇 す る コ ンク リー ト及 び 鐵 筋 コ ンク リー ト部 材 又 ほ 構 造 物 或 は セ メ ン ト糊 乃至 は コ ン ク リー トの 供 試 體 に於 て は,多 くは 複 對 稱 軸 を 有 す る斷 面 を 持 ち,又 材 質 が 齎 等 で あ り且 つ 水 分 の逸 散 が 部 材 或 は 供 試 體 の 軸 と直 角 の 方 向 に のみ 行 はれ る も の と近 似 的に 考 へ 得 る に よ り,(d)及 び(b)式 の特 解 は容 易 に解 決 せ られ る 。今, 圓〓 供 試 體 に 於 て そ の兩 端 面 に防 水 塗 布 工 を施 し 水 分 逸 散 の方 向 を供 試 體 の軸 と直 角 の方 向 の み に 制 限 せ る場 合 に は,(b)式 は
(c)
とな る。 此 の式 に於 て,供 試 體 又 は 部 材 の圓 周 面 上 の逸 散 性 水 分 の 濃 度 を0と 考 へ得 る と きは,(c)式 の 解 は家 式 で示 され る。 * 本 理 論 は1935∼1936年 に於 け る1/2×6in丸 棒(セ メ ン ト糊 及 び1モル タ ル),11/ 2×11/2×12in角 捧(セ メ ン ト糊,モ ル タル 及 び コ ン クリ ート)及 び6×12inコ ン ク ジー ト圓〓 の3種 類 の供 試體 を標 準 養生 後 温 度21℃, 濕 変50%の 試驗 室(室 の容積 略 々200m3)に 保 存 して行 へ る實驗 の結 果 か ら露 納 的に 誘導 せ し竜の に して,其 の 大 要 は既 に 日本 ボル トラ ン ドセメ ン ト業 技術 會 報告 第25號 第14册,昭 和14年(1939)11月,に 未 定稿 の ま ゝ發 表 し,其 の後 吏 に検 討 を加へ 昭和16年(1941)英 丈 に て書 き上 げ た る 竜,猶 ほ,今 後 の研 究 に待 つ べ き夥 多 の事 項 が 残 され て ゐ る。 從 つ て,著 者 は本 理 論 を今 直 ち に實用 に供 す る こ とを強 い て主 張 す る もの で はな い。 これ本 研 究 に於 て本 項 を 私見 と して取 換へ る所 以 で あ る。 † 濕 分 擴 散 率 と言 つ て も よか ら う。74 燥 乾 に よ るコ ンク リー トの 龜裂 に 關す る主 要性 質 の實驗 的研 究(其 の一) 16 (d) 及 び
又 は
(e)*
茲 にR:與 へ ら れ た る 圓 柱 の 半 徑(cm) θc:全 逸 散 性 水 分 の 濃 魔 Q:柱 の 單 位 長 さ に 對 す る 乾 燥 開 始 後t日 迄 に 逸 散 ぜ る水 分 の 量(cm3) (W0):柱 の 單 位 長 さ に 含 ま る ゝ 全 逸 散 性 水 分 の 量(cm3) Q/(W0):乾 燥 開 始 後t日 に 於 け る乾 燥 率(水 分 逸 散 比), J0,及 びJ1:0次 及 び 第1次 第1種Bessel函 數. k:1∼ ∞ の 正 の 整 數 或 はJ0(μk)=0の 正 根 の0の 番 數, 圖-5. Q/(W0)と αt/X2と の 關 係 *數 値 計 算 に當 つ て は,下 式 を用ゐた方が 便利 である。 上式 よ り下式 を誘導す るに當つては, な る こ と を詮 明 す る こ と を要 す る。之 は容 易 で7任 意 の函 數 ∫(x)を0<x<1の 變 域 に於 てCI0(μkx)の 級 數 に 展 開 し, J0(μkx)の 係 數Cを 直 交條 件 よ リLommelの 積 分定 理 を應 用 して求 あ,次 で特 に6f(x)=1と 置 いて 計 算 を 進 む れ ば よい 。17 乾燥 に よ る コ ンク リー トの 龜裂 に關 す る主 要 性 質 の實 驗 的研 究(其 の一) 75
μk:J0(μK)=0のk番 目 の 正 根,
a:水 分 傳 播率(濕 分 養 散 率),(cm2/日)
(e)式 はBessel函 數 を 含 んで ゐ るか ら計 算 に 手 數 が か ゝる。 依 つ てQ/(W0)の 値 をat/R2の 種 々 な る 値 に對 して 計 算 し,之 を 圖表 に示 し て置 け ば 計 算 上 便 宜 が 多 い 。 圖-5は 是 等 の 關 係 を 對 數 縮 尺 を 以 て 示 した も ので あ る 。 此 の 操 作 に 當 り,at/E2が0.001∼1.00の 變 域 に於 て0家 第1種Bessel函 數 の根 を20番 まで とつ て 計 算 し て もな ほQ/(W0)の 値 は約0.02だ け 眞値 よ り小 さい。 依 つ て 圖-5を 畫 くに際 して は そ の點 を考 慮 して 充 分 精 確 な る計 算 を行 つ た。 猶 ほ,圖-5か ら到 るや うに(e)式 は次 の 簡 單 な る羃 公 式 で 示 して も實 用 上 は大 した支 障 ほ ない 。
茲 に
(f)
更 に計 算 の簡 易 化 を 目的 とす る場 合 に は,近 似 的 で け あ るが,家 式 に よつ て よい。茲 に
(g)
(g)式 は 正 四 角 柱 の 場 合 に も略 々成 立 す る。 よつ て,コ ンク リー ト圓 柱 又 は 正 四 角 柱 の長 さが 長 いか 或 は それ か らの水 分 の逸 散 が そ の軸 と直 角 の方 向 に の み行 は れ る場 合 に は,柱 の乾 燥 度 即 ち 水 分 逸 散 比 は 乾 燥 時 間 の李 方 根 に比 例 す る こ とが 近 似 的 に言 へ る。 圖-5に は 圓 柱 との比 較 の た め正 四 角 柱 に對 す る乾 燥 度 とat/R2の 關 係 を も示 して 置 い た。 (iv)セ メ ン ト糊,モ ル タル 及 び コ ンク リー ト内 の 非結 合水 の逸 散 に よる乾 燥 收 縮 既 述 の如 く,セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ン ク リー トを以 て造 れ る供 試 體 或 は部 材 を乾 燥 せ る空 氣 中 に曝 す ときは,時 間 の輕 過 に伴 れ 水 分 が 逸 散 し,物 體 内 に於 け る逸 散 性 水 分 の濃 度 分布 が 一様 で な くな る。 從 つて 茲 に收 縮 歪 を 伴 ひ 延 て は 固有 元 應 力 を生 じ,途 に は逸 散 李 衡 即 ち逸 散 性 水 分 が 全 く消失 し盡 して 定 常 状 態 に達 す る。 今 圓 柱 に 就 て 考 ふ る に,全 體 と して 軸 方 向 の伸 縮 が 自由 で あ り,然 も水 分 の逸 散 に 對 す る兩 端 面 の影 響 が なけ れ ば,柱 の 中央 附 近 で は 柱 軸 に直 角 な り し斷 面 は牧 縮 も な ほ軸 に 直 角 な る 李 面 の爲 す も の と考 へ 得べ く,更 に物 體 が 彈 性 體 とし て 取 扱 ひ 得 る もの と假 定 す れ ば,彈 性 理 論 を應 用 して 理 論 的 に 收 縮 率 と乾 燥 率 との關 係 を 求 む る こ とが 出 來 る。 即 ち(h)
及 び
(i)
茲 にw:或 點 のz軸 方 向 の變 位, εz:z軸 方 向 の收縮 應力 度 σzに よる歪 度, δ=θ-θc:逸 散 性水 分 濃 度 の變 化(常 に 負數), σt及 び σr:夫 々 圓形 斷 面 に於 け る接 線 及 び 半徑 方 向の 牧縮 應 力 度, Ec':物 體 の有敷 彈 性 係 數,m: Passon數,76 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要性 質 の 實驗 的 研 究(其 の一) 18 β=βc/θc:收 縮 係 數,βc:極 限收縮 率,θc:全 逸 散 性 水分 の濃 度 次 に静 力 學 の理 論 か ら, な る關 係 が 成 立 つ 。 今,上 式 に 於 て ∂w/∂zを ε を以 て 置 換 へ る と次 式 を得 る。
(j)
上 式 に 於 て(一)は 收縮 を 意味 す る。 長 い 正 四 角 柱 の場 合 に於 て も(j)式 と同 様 の關 係 が 成 立 す る。 敍 上 の數 理 論 的 考 察 か ら判 斷 す る と きは,普 通 の複 對 稱 斷 面 を 有 す る コ ンク リー ト柱 の 水 分逸 散 に よ る乾 燥 收 縮 は,そ の彈 性 係 數 及 びPoisson數 を夫 々定 數 と考 へ得 る場 合 に於 て は,そ の乾 燥 度 に正 比 例 す る こ と ゝな る 。 (v) セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リー ト圓 〓 に 生 ず る乾 燥 收 縮 に よ る固 有 元 應 力 水 分 逸 散 が 開 ま つ て か ら停 止 す る迄 の不 定 常 乾 燥 状 態 の下 では,圓 〓 内 に 於 け る逸散 性 水 分 の 不齎 等 分布 に基 因 して 茲 に 收 縮 應力 が 生 ず る。 斯 か る應 力 を 乾 燥 に よ る 固有 元 應 力 と稱 す る。 今 セ メ ン ト糊 乃 至 は コ ンク リー ト に 於 け る水 分 の逸 散 が 〓 軸 と直 角 な る方 向 に の み 行 は れ る場 合,〓 軸 に直 角 な る斷 面 が 收 縮 後 もや は り〓 軸 に 直 角 な る平 面 を爲 す もの と考 へ る こ とが 出來,又 圓〓 の 彈性 係 數 及 びPoisson比 が 夫 々或 定 數 で あ る と假 定 し得 る な らば,乾 燥 に基 因 して 圓〓 内 に生 ず る半 徑 方 向,圓 周 の接 線 方 向a及 び軸 方 向 の各 應 力 度 は 次 の(k)式 か ら求 め られ る。(k)*
茲 に σr:半 徑 方 向收 縮 應 力 度,σt:接 線 方 向收縮 應 力度, σz:軸 方 向收縮 應 力度. 上 式 か ら判 るや うに,軸 方 向 及 び接 線 方 向 の2應 力 は 圓〓 の圓周 面 附近 で は 引 張性 でめ り,又 その 内部 で は 壓 縮 性 で あ る。 又 半 徑 方 向 の應 力 は 常 に壓 縮 性 で あ る。 從 つ て 牧 縮 龜 裂 は圓 周 面 近 くに 限 られ,又 半 徑 方 向 及 び 軸 方 向 の壓 縮 應 力 の 作 用 と圓 周 面 附 近 の乾 燥 の た め,圓 〓 内部 の非 結 合 水 は 半 徑 の方 向 に外 方 に 向つ て 滲 逸 す る こ とを強 い られ る こ とゝな る。 猶 ほ,是 等 の應 力 は乾 燥 が 平 衡 状 態 に達 す れ ば消 滅 す る もの で あ る。 (d) 乾 燥 收 縮 に 擴 散 理 論 を應 用 す る の可 否 前 掲 の 圖-2,圖-3,及 び圖-4か ら到 るや うに,本 研 究 に使 用 せ し水 セ メ ン ト重 量 比0.566,眞 實 重 量 配 合 比1:6 な るユ ンク リート を 以 て 作 れ る6×12in(約15×30cm)圓 〓 供 試 體 を21℃ にて 最 初 の7目 及 び28日 間 標 準 養 生 し,其 以 後 灘度60%の 空 氣 中 に貯 藏 せ し 場 合 の極 限 收 縮 率 は 之 を夫 々100萬 分 の800及 び1000と 看 * 乾 燥 に よる元 應 力 は,圓 〓 の中央部 では此等 の式か ら求あ得 るが,兩 端 面に近づ くに伴れて 其の絶對値が遞 減 して行 くこ とは言 ふ 迄 もな い。19 乾 燥 に よ るコ ンク リー トの 龜裂 に關 す る主 要 性 質 の 實驗 的研 究(其 の一) 77
做 し得 る。
今前項 に於 て論述 したる水分逸散 に よる收縮 に關す る數理論 を實 驗に よ りて檢 討す るため,水 分傳播率 を7日
及 び28日 間標 準 養 生 しそ の後 灘 度50%の 空 氣 中 に貯 藏 せ し と きの1:6コ ンク リー ト供 試 體 に 對 し夫 々0.12 及 び0.10cm2/日 と看 做 して 求 め た 收縮 歪 と,本 研 究 に於 け る實 驗 値 とを比 較 對 照 す れ ば表-3の 如 くで あ る。 表-3. コン ク リー ト標 準 圓 〓供 試 體 を標 準 養 生後 濕 度50%の 空 氣 中 に 貯藏 せ る場 合 の平 均 收縮 歪 供 試體-6×12in(約15×30cm)圓 〓,標 點距 離=10in(約25cm),重 量 配 合比=1:6, 水 セ メ ン ト重 量比=0.566,セ メ ン ト-普 通 ボル トラ ン ド,骨 材-地 方産 の砂 及 び砂 利,細 粗 混 合 骨材 の粗 粒率=4.88,温 度-70°F(21℃)の 定 温 表-3に よれ ば,直 徑6in(約15cm)程 度 の供 試 體 の 牧 縮 歪度 は,供 試 體 コ ンク リー トの 極 限 收縮 歪 度 並 に コ ン ク リー トの 水 分 傅播 率 の値 が 知 られ て ゐ る と きは,前 項(e)に 於 て論 述 せ し數 理 論 を適 用 して 計 算 に よつ て 近 似 的 に 求 む る こ とが 出來 る こ と ゝな る。即 ち定 性 的 に考 へ る ときは,コ ンク リー トに 於 け る水 分 逸散 の現 象 は擴 散 理 論 を應 用 し,又 乾 燥 收 縮 は更 に 彈性 論 を 應 用 して,本 研 究 の範 圍 内 に於 て は 近 似 的 に,少 く とも概 念 的 に は 解 決 し得 べ き もの と思 はれ る。 (e) 鐵 筋 コ ン ク リー トエ に普 通 使 用 され る コ ン ク リー トの水 分 傅 播 率 の値 11/2×11/2×12in(約3.8×3.8×30cm)角 棒 供 試 體 に 就 て行 へ る著 者 の 實 驗 的研 究8)に よれ ば,水 セ メ ン ト重 量 比0.56,眞 實 重 量 配合 比1:5.6な る コ ンク リー トを21℃ に て7∼28日 間標 準 養 生 した る後 濕 度50%の 空 氣 中 に 貯 藏 せ る場 合 の水 分 傅播 率aの 値 は,大 凡 そ,乾 燥 の早 期 に於 て は0.10cm2/日 な る値 を 示 し其 の 後 漸 次 小 さ くな り,遂 に は 乾 燥期 間 が100日 を超 へ るに 至 れ ば0.01cm2/日以 下 の 値 とな る こ とが 瞭 つ た。 之 に 對 して 本 編 に於 て行 へ る6×12in(約15×34cm)圓 〓 の實 驗 に 依 れ ば,水 セ メ ン ト重 量 比0.566,配 合1:6な る コ ン ク リー トの 水分 傅 播 率 の値 は,角 棒 の場 合 と 同様 な る養 生 及 び 貯 藏 の條 件 の下 に於 て,乾 燥期 間 の 極初 期 即 ち 數 日を除 きそれ 以 後 約 半 ケ年 に就 て言 へ ば略 一 定 に して,約0.10cm2/日 を示 し た。 此 の値 はR.W. Carlson教 授9)が私 案 と して 提 唱 せ る0.0001ft2/日 な る値 と偶 然 に も殆 ん ど一 致 して ゐ る。 8) 拙 著:"水 分 の 逸 散 に 因 る コ ン ク リ ー トの 收 縮 理 論 に 關 す る 私 見 並 に 其 の 應 用 の 數 例,"日 本 ボ ル トラ ン ドセ メ ン ト業 技 術 會 報 告 第25號 第14冊,昭 和14年(1939)11月,pp. 147∼172參 照9) Carlson, Roy W.,: "Drying Shrinkage of Large Concrete Members," Proc . A.C.I., Vol. 33, 1937, pp. 327∼336.
78 乾 燥 に よ る コ ンク リー トの龜 裂 に 關 す る主 要 性 質 の實 驗 的研 究(其 の一) 20 以 上述 べ た る所 か ら推 論 す る に,普 通 の鐵 筋 コ ンク リー ト工 に 用 ゐ られ る コ ソク リ ートに 關 して は,平 均 温 度 が20℃ 内 外 に て濕 度 が70∼50%程 度 の 條 件 の地 方 に於 て は,そ の永 分 傅 播 率 の値 として0.10cm2/日 を採 れ ば 妥 當 且 つ 安 全 の樣 に思 はれ る 。併 し カ リフォル ニ ヤ 大學 で 行 へ る大 型 の試 供 體 に就 て の實 驗 の結 果(未 發表)に 依 れ ば 本 問 題 に 關 し猶 ほ考 究 を要 す べ き多 くの疑 問 の點 が 殘 され て ゐ る 。從 つ て,水 分傅 播 率 に 關す る適 確 な る數 値(少 く とも實 用 的 に償値 あ る値)を 得 る に は,今 後 實 驗 室 及 び現 場 に於 け る定 量 的 の大 規 模 の實 驗 に 侯 つ よ りほ か 途 は なか ら う。 (f) 乾 燥 に よる コ ン ク リー ト圓〓 内 の逸 散性 水 分 濃 度 分 布 並 に收 縮 應 力 の數 理 論 的近 似 解 法 圖-6は水分傅播率が0.10cm2/日 な る コン ク リー トを以 て 造 れ る半 徑3in(7.62cm)の 圓 〓 に 於 け る逸 散 性 水 分 濃 度 の分 布 状 態,並 に 非 結 合 水 の消 失 に よ る軸 方 向,半 徑 方 向及 び 接 線 方 向 の各 種 應 力 の値 を 著 老 の提 唱 せ る 理 論 を 用 ゐ て計 算 せ る數 例 を 示 せ る も ので あ る。 即 ち圖-6(a)は 乾 燥 期 聞95日 迄 に至 る間 の 水分 濃 度 分 布 状態 の變 遲 を 示 せ る もの で あ る。 圖 か ら想 像 され る如 く,此 の場 合 乾 燥 が柱 の 中心 部 に及 ぶ に は1ケ 月以 上 を要 す る。 圖-6(b)は 乾 燥 期 間95日 迄 に至 る軸 方 向收 縮 應 力 の 分布 状態 が如 何 に 變 化 して行 くか を 示 せ る もの に し て,之 圖-6(a). 逸 散性 水 分 濃 度 の 分布 圖-6(b). 非結 合 水 の消 失 に よる軸 方 向收 縮 應 力
か ら分 るや うに,〓 軸 附近 の内部 に生 ず る軸方向收 縮壓縮應力 の値 は或時期(乾 燥約2ケ
月)迄 は乾燥時間 の經
過に俘 ひ漸次増加す るが,其 以後に於 ては上記 と反對 に却つて減少 し 遂 には消滅す る。之 に對 し,〓 の圓周面上
及 びそれ に極 めて接近 せ る部分に 於け る軸方向收縮引張應力 は乾燥 の頭初 に 於て最大 で,そ れ以後 その値は漸減
す る。又 圖-6(c)は 乾燥42日
目に於 ける逸散性水 分濃 度の分布,並 に乾燥收縮 に 基 づ く軸方 向,接 線方 向及 び
牟徑方 向の3應 力 の分布状態 を示せ るもので ある。 圖か ら判 るや うに接線方 向收縮應力は圓周面附近では引張應
力 で,又 〓 軸附近では壓縮應力で ある。猶 ほ半徑方 向收縮應 力は凡 て壓縮性 で,圓 周面 上では0に
して,柱 軸 に
近 づ くに俘れ力度が漸亥大 き くなる。
本計算 に當つ ては,逸 散性水分濃 度は(d)式,乾
燥度(水 分逸散比)は(e)式,乾
燥 に よる收縮應 力は(k)式
を用 ひて夫 々計算 に よつて求 めた。猶 ほ計 算に必要 なる定數a(水
分傅播率),βc(極 限收縮率),Ec'(有 效彈性
係數)の 値 は本研究 の實 驗 の結果 を考慮 して決定 した。
圖か ら明瞭 なる如 く,〓 軸附近 のコ ンク リー トは軸方 向,半 徑方 向及 び接線方 向の3方 向 の壓縮應 力を受け,
從 つて コンク リー トに含 まれ るセメ ン ト糊 の 海綿状毛状 間隙中の非結合水 は圓周面 に 向うて搾 り出 され る傾向が
21 乾 燥 に よる コ ンク リー トの龜裂 に 關す る主要 性 質 の實 驗 的研 究(其 の一) 79 圖-6(c). 非 結 合 水 の 逸 散 に よ る 收 縮 應 力 著 しい 。 之 が 同一 コ ン ク リー トを用 ゐ て も大 型 供 試 體 の水 分 傅 播 率 が 小 型 供 試 體 に 比 し大 きな値 を 示 す理 由 の一 〓 つ で あ り,又 一 旦 生 じた る龜 裂 が 自 ら癒着 す る原 因 の一 つ と思 はれ る 。 上 記 の計 算 に よれ ば,圓 〓 の 圓 周 表 面 近 くの部 分 に は 乾 燥 の頭 初 か ら コ ンク リー ト引張 強 度 以 上 の 引 張 元 應 力 が 作 用 し,從 つ て そ の表 面 に は 龜 甲 状 の毛 状 龜 裂 を 生 ず べ き こ とに な る。 此 の現 象 は 既述 の セ メ ン ト糊 圓 〓 及 び15×30cmコ ンク リー ト圓 〓 に 關 す る著 者 の實 驗10)に於 て は認 め得 たるが,本 研 究 の場 合 に於 ては 明 確 には 認 め 得 な か つ た 。 本研 究 の實 驗 頭 初 に於 て は 殆 ん ど 圓 〓 表 面 上 に龜 裂 を 認 め得 な か つ た こ とは 多 分,圓 〓 面 上 附 近 10) 拙 著:"コ ン ク リ ー ト標 準 圓 〓 供 試 體 の 抗 壓 強 度 及 び 蒸 發 減 と 養 生 室 よ り取 出 後 の 經 過 時 間 と の 關 係" 土 木 學 會 誌 第20卷 第5號,昭 和9年(1934)5月,pp. 385∼390.