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白山・山村住居の現代的状況 : 住空間の史的展開過程に関する研究 (その8)

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Kobe Shoin Women’s University Repository

Title

白山・山村住居の現代的状況

―住空間の史的展開過程に関する研究(その8)―

The Haku-Mountains' Dwellings of Today

Author(s)

島村 昇(Noboru Shimamura)

Citation

生活科学論叢(Review of Living Science),

No.25:17-74

Issue Date

1994

Resource Type

Bulletin Paper / 紀要論文

Resource Version

URL

Right

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白山 ・山 村 住 居 の 現 代 的 状 況

住 空 間 の 史 的 展 開 過 程 に 関 す る研 究(そ の 日)

島 村

1.現 代 ・山村 住 居 の概 嬰 1.1建 設 時 期 L2外 観 形 姿 1.3平 面 形 状 1.4規 模 分 布 1.5住 空 間 規 模 1.ε 住 空 間 の 階 層性 2.モ ヤ 圭体 空 間 の 構 成 2.1モ ヤ 主体 空 聞 と付加 空 問 2、2モ ヤ へ の 進 入 形 式 2.3モ ヤ の 平 面 形 状 2.4モ ヤ の 空 間 規模 2.5モ ヤ の 列 構 成 2.6モ ヤ の 段 構 成 ヨ,現 代 の 住 空 間 構 成 3.1住 空 間 の 全 体 構 成 3.2サ シ カ ケの 現 代 的 状 況 3.3フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 解 体 状 況 3.4モ ヤ 主 要 部 の 室 配 櫨 献 況 3.5背 面 ツ ケ タ シ の 付 設 状 況 3.6側 面 ツ ケ タ シ の 付 加 状 況 4.住 空 間 の 現 代 的 変 容 4.1ヒ ロマ の分 割状 況 42ブ ツマ の 温 存状 況 4,3ザ シ キ の停 滞 状 況 司.』ネ ラ の 増 設 状 況 4.5室 数 ・室 規 模 の 増 減 4.6S系 ・L系 空 間 の 配 分 5.住 空 間 の 伝 統 性 と新 規 性 5,1S系 空 間 の 内部 分 散 化 5.2空 間 隔 離 の 不 整 形1化 5.苫 空 間 隔 離 手 法 の 変 化 5.4伝 統 的 空 間 の 変 容 5.5伝 統 的 装 置類 の 変 容

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1.現 代 ・山 村 住 居 の 概 要 前 章 に お い て は 、 当 山村 住 居 の 近 代 的 動 向 をみ たが 、本 章 で は そ れ に つ づ い て 戦 後 の 現 代 的 状 況 をみ る。対 象 地 区 は 前 章 と同 じ く桑 島 地 区 で あ る。 当該 地 区 の 近 代 住 居 は70例 で あ った が 、戦 後 の 現 代 に建 設 され た現 代 住 居 は52例 で あ る。 1.1建 設 時期 本 論 で は 時 代 区 分 を古 代 ・中世 ・近 世 ・近 代 ・現 代 の5区 分 に大 別 して い るが 、 戦 後 に属 す る 現 代 は そ れ まで に な い 急 速 な変 化 を閲 した 時期 で あ る。 その 変 化 の 大 きな 要 因 は 、ダ ム 建 設 に よ る 当該 地 区 の 水 没 とい う事 態 で あ った 。 昭 和41年(1966)早 々 、県 は 手 取 川 多 目的 ダ ム 構 想 を発 表 した。約10年 後 の 昭 和49年(1974)9月 、 白 山 麓5村 は ダ ム 建 設 着 工 同 意 書 に 調 印 し た。 本 章 で 扱 う現 代 ・山 村 住 居 は 終 戦 の 昭 和20年 (1945)か ら上 記 ダ ム 建 設 が具 体 化 す る 昭 和40年 代 まで の 約30年 間 に建 設 され た物 件 で あ る。 こ れ らの物 件 は 、 戦後 の 新 た な 生 活 様 式 の 浸 透 を うけ つ つ も、 旧来 の 伝 統 的 住 様 式 を継 承 し、伝 来 の 土 地 に建 設 す る と い う意 味 に お いて 新 旧 混合 の様 相 を呈 す る 。 他 方 、水 没 地 区 に対 す る補 償 の一 環 と して 代 替 家 屋 の建 設 が お こ な われ た 。代 替 家 屋 は新 規 造 成 地 に新 築 さ れ る もの で あ るが 、 この 場 合 は上 記 の 現 代 ・山村 住 居 よ りい っ そ う現 代 的 な 様 相 を 呈 す るで あ ろ う。主 と して都 市 部 に お い て 進 行 しつ つ あ る現 代 的 な住 居 の 計 画理 念 が 旧 来 の 伝 統 的 な 計 画 理 念 に さ ら に導 入 され て い く。 この 代 替 住 宅 の 内容 に つ い て は 次 章 で み る。 1.2外 観 形 姿 近 代 か ら現 代 にか け て 当 山 村 の 住 居 は 、板 葺 きか ら瓦 葺 きに 移 行 した 。 これ は外 観 の 変 化 に す くな か らず 影 響 し た。屋 根 を支 え る小 屋 組 は 、板 葺 きの 場 合 と同 じ よ うに 束 立 て で あ る。た だ し、 屋 根 勾 配 は板 葺 き よ りや や 大 き くな り4寸 程 度 で あ る 。もっ と も この 推 移 過 程 に一 時 セ メ ン ト瓦 が使 用 さ れ た 時期 が あ る。 それ は戦 後 間 も な い物 資 欠 乏 の 一 時 期 で あ り、豪 雪 に よ る雪 害 を防 ぐ た め 鉄 線 入 りの セ メ ン ト瓦 で あ った 。 階 数 につ い て は、 表8-1に 示 す よ うに52例 中2例 が3階 建 で 、他 は す べ て2階 建 で あ る。 こ れ は 近 代 とほ とん ど同 じで あ る。 した が っ て 、階 数 につ い て は 現 代 も近 代 を踏 襲 して い る と い え る。 また 、入 口 も 旧来 の 進 入 形 式 を継承 して 妻 入 りが 多い ため 、妻 側 が正 面 とな り、街 路 に向 か う フ ァ サ ー ドは背 の 高 い切 妻 と な る。 もっ と も、1階 部分 正 面 に は サ シカ ケ 、両 側 面 や 背 面 に は ツ ケ タ シが 付 加 され る。 これ も近 代 と同 じで あ る。 こ れ らの サ シ カ ケ や ツ ケ タ シ もほ とん ど瓦 葺 き と され る。 こ れ は2階 建 の モヤ の ま わ りに1階 分 の 下 屋 をつ け た した もの で あ り、 これ も近 代 の 手 法 と同 じで あ る が 、近 代 よ りさ

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ら に 徹 底 し て い る 。 表8-1 現代 ・山村 住 居 の 間 口 ・奥 行 と住 空 間 総 量 (上段:実 数 、 下段:率%) 時 期 ラ ン ク 戸 数

口 モ ヤ 階 数 (戸) モ ヤ 間 口 長

モ ヤ 奥 行 長 さ (間) 細 長 比 1階 床 面積 ㈱ 2階 床面積 ㈱ 延 床 面

床 面 積 ● 計 モ ヤ 床 面 積 付 加 空 間 床 面 積 床 面 積 9 計 モ ヤ 床 面 積 付 加 空 間 床 面 積 2 階 建 13 階 建 平 均 最 1 小

大 平 均 最 小 最 大 現 代 ・ 山 村 住 居 I II III IV V VI 5 (9、6) 1 (1.9 12 (23.1) 26 (50.0) 7 (13.5) 1 (1.9) 5 1 12 25 6 1 一 一 一 1 1 一 2.0 2.5 1 3.0 3.5 4.0 4.5 3.8 4.5 4.6 5.0 5.3 5.8 3.0 4.5 3.0 4.0 4.0 5.8 5.0 4.5 7.0 6.5 6.5 5.8 1.90 1.80 1.51 1.43 1.32 1.28 11 .50 1.80 1.00 1.14 1.00 128 2.50 1.80 2.15 1.86 1.63 L28 15.1 24.5 20.2 26.4 33.9 29.4 17.6 11.3 13.8 17.5 21.1 25.9 7.5 13.3 6.4 8.9 12.7 3.5 8.2 16.5 15.4 18.4 24.1 25.9 7.6 11.3 13.8 17.5 21.1 25.9 0.6 5.3 1.6 0.9 3.0 0.0 23.3 41.0 35.6 44.8 58.0 55.3 計 平均 52 (1D 、0) 50 (962) 2 13.8} 3.3 4.8 3.0 7.0 1.46 1.00 2.50 24.9 16.2 8.7 17.6 16.2 1.4 42.5 近 代 ・山 村 住 居 70 (100,0) 66 (943) 4 {5.7) 3.2 5.5 3.5 8.0 1.72 1.11 2.60 24.8 (100』) 17.9 (72.2 6.8 (27.4) 19.6 (1  ① 17.9 (91,3) 1.6 (8.2)44.4 1.3平 面 形 状 前 項 の外 観 形 姿 か ら も わ か る よ うに、 当 山村 住 居 は現 代 に お い て も モヤ 主体 空 間 とサ シ カ ケ ・ ツ ケ タ シ の付 加 空 間 か ら成 っ て い る。 この 基 本 的 な住 空 間構 成 手 法 は 近 代 と変 らな い。 住 空 間 の主 体 とな るモ ヤ は平 均 間 口長 さは3.3問 で 、近 代 の3.2間 とほ とん ど異 動 が な い 。 これ は 旧来 の 階 層 的 間 口長 さが 温 存 され て い る こ と を示 して い る 。また 、平 均 奥 行 長 さは4 .8間で、近 代 の5.5問 に 比 べ て1間 近 く減 少 して い る。モ ヤ の 方 形 化 が 進 ん で い る。ち な み に、モ ヤ の 細長 比 を比 較 す る と、平 均 細 長 比 は 近 代 で は1.72で あ っ た もの が現 代 で は1.46に な り、 この 事 実 を証 明 して い る。 52例 の 平 面 構 成 を図81に 示 す が 、全 体 と して近 代 の 改造 住 居 よ り凹 凸 が す くな く整 形 で あ る。 近 代 住 居 は そ の 後 の 増 改 築 に よ っ て か な り凹 凸 の は げ しい 不 整 形 な平 面 形 状 に な っ て い た が、戦 後 の現 代 住 居 で は そ れ らの 追 加 的 な 空 間 をか な り計 画 的 に と りいれ て い る結 果 、恣 意 的 な 不 整 形 を脱 れ た もの と考 え られ る 。

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現 代 ・山村 住 居 の 平 面 構 成

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No.14 No.10

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Nα22 Nα18

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Nq51 No52 (凡例)▲ 出 入 口、6数 字 は 居 室 の 畳 数 を 示 す 。図 ジ ロ(イ ロ リ)、図 吹 抜 け、置錘 爵 ドマ 、ロ オ エ(床 張 り部 分)お よ び ロ ー カ ・式 台 を示 す 。Aア マ 、B仏 壇 入 、C押 入 ・物 置 ・戸 棚 、D脱 衣 ・洗 面 ・手 洗 場 、Eエ ン(内 縁)、Fフ ロ 、Gゲ ン カ ン 、K台 所 、O洗 場(洗 タ ク場)、S階 段 ・ 梯 子 段 、 丁床 の 間 、U床 脇 ・飾 り棚 、W便 所 注)1.図 は1階 床 面 積 の 規 模(小 か ら大)の 順 に配 列 し て い る 。 2.各 図 は 左 よ り1階 、2階 、3階 の 順 に 配 列 し て い る 。 資 料)筆 者 研 究 室 調 査(於 、 白 峰 村 桑 島 地 区 、 昭 和48年 ・1973)

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1.4規 模 分 布 前 項 で 述 べ た よ う に 、 モ ヤ の 間 口 長 さ は 階 層 性 を 反 映 し て い る 。 し た が っ て 、 現 代 ・山 村 住 居 に お い て も近 代 に お い て 行 っ た と 同 じ よ う に 、 間 口 長 さ を ラ ン キ ン グ の 基 準 に す え る 。 表8-1 に 示 す よ う に 、ラ ン キ ン グ は1∼VIの6ラ ン ク に な り 、近 代 に み ら れ たV皿 ラ ン ク(間 口 長 さ5.0間) は な い 。 6ラ ン ク の 戸 数 分 布 は 、 表 に 示 す と お りで あ る が 、 近 代 と の 比 較 に お い て 異 な る 点 は 、1ラ ン ク が 増 加(1.4%→9.6%)、II・IIIラ ン ク が 減 少(17.1%→1.9%、48.6%→23.1%)、IV・Vラ ン ク が 増 加(18.6%→50.0%、4.3%→13.5%)、VIラ ン ク が 減 少(5.7%→L9%〉 と な り 、II・IIIラ ン ク の 間 口 長 さ2.5∼3,0間 の も の が 減 少 し、 】V・Vラ ン ク の 間 口 長 さ3.5∼4.0間 の も の が 増 加 し て い る の が 特 徴 的 で あ る 。 こ う し た 間 口長 さ の 拡 大 志 向 は 、 内 部 の 列 構 成 とつ よ く結 び つ い て お り 、 間 口 長 さ が 室 の 幅 を 決 定 す る 大 き な 要 素 と な っ て い る か ら で あ る 。IV・Vラ ン ク の 間 口 長 さ3.5∼4,0間 で は 、2.0間 幅 の 室 と1.5間 な い し2.0間 幅 の2列 の 室 を と る こ と が で き る 。II・IIIラ ン ク で は こ の よ う な2列 構 成 は 不 可 能 で あ る 。 こ の よ う な 理 由 か ら 、IV・Vラ ン ク が 当 山 村 住 居 の 標 準 的 な 間 口 長 さ と な り、 全 体 の63,5%を 占 め る に 至 っ て い る。 以 上 の こ と を 簡 単 に い え ば 、同 じ床 面 積 で あ れ ば 奥 行 長 さ よ り も 間 口 長 さ を 拡 大 し よ う と い う こ とで あ る 。 そ の こ と は 、 前 項 の 細 長 比 の 減 少(1.72→1.46>に よ っ て も 明 ら か で あ っ た 。 ま た 、 平 均 延 床 面 積 を 比 較 す る と近 代44.4坪 、 現 代42,5坪 で 、現 代 の 方 が2坪 ほ ど 減 少 し て い る が 大 き な 差 と は い え な い 。 す な わ ち 、 床 面 積 は ほ と ん ど 同 等 で あ る が 、 間 口 長 さ の 拡 大 と奥 行 長 さ の 短 縮 が 現 代 的 傾 向 と い え よ う。 1.5住 空 間 規 模 1階 床 面 積 は 、 モ ヤ1階 部 分 とサ シ カ ケ ・ツ ケ タ シ(付 加 空 間)の1階 部 分 の 両 者 か ら成 る。 前 者 の 平 均 モ ヤ床 面積 は近 代17.9坪 、現 代16.2坪 で 、現 代 の 方 が や や 減 少 気 味 で あ る が大 差 は な い 。 同 様 に して 、平 均 付 加 空 間 床 面 積 は 近 代6.8坪 、現 代8.7坪 で現 代 の 方 が微 増 で あ るが 、 これ も大 差 は な い。 両 者 を合 せ た 平 均1階 床 面 積 は 近 代24.8坪 、 現 代24,9坪 で ほ とん ど等 し い。 住 生 活 の 中 心 を なす1階 部 分 の 平 均 床 面 積 は 、上 記 の よ うに 近 代 と現 代 とほ ぼ 同 等 とみ な し う る。 しか し、 ラ ン ク別 にみ る と、1階 床 面 積 に 占め るモ ヤ 床 面 積 の 割 合 は 、1ラ ン ク50.3%、II ラ ン ク46.1%、mラ ン ク68.3%、IVラ ン ク66.3%、Vラ ン ク62.2%、Wラ ン ク88.1%と な り、住 居 が 大 型 化 す る ほ ど高 率 化 す る。逆 に い えば 、住 居 が 大 型 化 す るほ ど付 加 空 間 の 割 合 は減 少 し て お り、 これ の 補 助 的 性 格 が 明 らか で あ る。 次 に 、2階 床 面 積 は や は り1階 と同様 モ ヤ と付 加 空 間 か ら成 る が 、サ シ カ ケや ツ ケ タ シは1階 建 の もの が 多 く、 これ らの 付 加 空 間 が2階 床 面 積 の 増 加 に つ な が る こ とは少 な い。2階 床 面 積 に

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占め る平 均 付 加 空 間 床 面 積 は 、近 代1.6坪 、現 代1.4坪 で い ず れ も1割 に 充 た な い 。 と同 時 に 、2 階 の 平 均 付 加 空 間 面 積 も近 代 と現 代 に ほ とん ど差 が な い 。 以 上 、現 代 ・山村 住 居 の 住 空 間 規模 を近 代 の そ れ と比 較 した が 、 両 者 に 大 きな差 は み とめ られ な い。両 者 は ほ ぼ 同等 とみ な し うる。した が っ て 、1階 と2階 を合 せ た平 均 延 床 面 積 は 、近 代44.4 坪 、 現 代42.5坪 とな り、 ほ ぼ 等 しい値 を と っ て い る。 1.6住 空 間 の 階 層性 当 初 に述 べ た よ うに、現 代 の 山村 住 居 も近 代 につづ け て 間 口長 さ の 階 層 性 が み られ た。 し た が っ て 、 間 口長 さ とそ の他 の 諸 量 の 相 関 性 を求 め 、現 代 の 階 層性 をみ た い 。表8-2に そ の 結 果 を 示 す 。 表 に よ り、 相 関 性 の あ る もの 、す な わ ち階 層 的 な 諸 量 は 、1.モ ヤ 奥 行 長 さ 、2.モ ヤ 細 長 比 、3. モ ヤ 床 面 積 、6.1階 床 面積 、7.2階 床 面 積 、9.モ ヤ 主 要 部 床 面 積 、12.ネ マ 総 床 面 積 、13.ネ マ 室 数 、16.背 面 ツ ケ タ シ床 面 積 の9種 類 で あ る。 これ ら の 諸 量 は 間 口 長 さ と きわ め て 強 い 相 関 性 (0.8171∼0.9961)を もち階 層 的 で あ る 。 次 に 、非 階 層 的 な 諸 量 につ い て み るが 、近 代 に お い て す で に 非 階 層 的 で あ っ た 空 間 量 も あ っ た の で 、 これ をは ず し、近 代 に は階 層 的 で あ っ た が現 代 にお い て は 非 階 層 的 とな った 諸 量 をみ る。 こ れ は 、 い わ ば住 空 間 の 一 般 化 ・民 主 化 を捉 え る こ と に ほ か な ら な い。 まず最 初 に、4.付 加 空 間 床 面 積(1F)で あ る 。サ シカ ケ ・ツ ケ タ シ な どモ ヤ の まわ りに つ く付 加 空 間 は 、近 代 に お い て は モ ヤ の 階 層 性 に 同調 して い た が 、現 代 で は 必要 な空 間 は通 階 層 的 に設 け られ る。 あ る い は 、 モ ヤ 内部 に 組 込 ま れ モ ヤ 床 面 積 の 階 層 性 と して 現 象 す る。 次 に 、8,フ ロ ン ト ・スペ ー ス床 面 積 の 非 階 層 性 は 、 こ の ス ペ ー ス の解 体 に起 因 し て い る。 モヤ の 前 面1.0間 分 に ウ チ ゲ ン カ ン ・階 段 ・便 所 等 のS系 空 間 を集 約 的 に配 置 す る フ ロ ン ト・ス ペ ー ス は、近 代 に お い て は数 多 くみ られ た し、 ま た そ の 大 きさ も住 居 規 模 と相 関 して い た。現 代 で は 、 これ らのS系 空 間 は 他 の 場 所 に 移 動 し、 フ ロ ン ト・ス ペ ー ス その もの が 明 確 に 設 定 さ れ な いの で あ る。 次 に 、10.D、L、R床 面積 の 非 階 層 性 で あ る。 この 部 分 は 、近 代 に お い て は炉 の あ る ヒ ロマ と して住 空 間 の 中心 的 役 割 を果 た す 場 で あ り、 そ の大 き さ は住 居 規 模 と相 関 的 で あ り、す ぐれ て 階 層 的 で あ った 。 しか し、現 代 で は この ヒ ロマ はD、L、Rに 分 割 され 機 能 分 化 をす る傾 向 に あ り、 それ らの総 和 と して のD、L、R床 面 積 は通 階 層 的 に必 要 空 間 量 を と る傾 向 に あ る。す な わ ちD、 L、Rに つ い て は通 階 層 的 な 一 般 化 が 現 象 して い る とい え る。 次 に 、14.1室 当 りネ マ 床 面 積 の 非 階 層 性 で あ る。ネ マ 床 面 積 は 、近 代 に お い て は 階 層 的 で あ っ たが 、戦 後 の現 代 で は平 準 化 し6∼8畳 が通 階 層 的 に 設 け られ る。寝 室 の 住 生 活 に 占め る ウエ イ トが 認 識 され た証 拠 とい え よ う。 ち な み に、 ネ マ の 室 数 に つ い て は近 代 と同様 階 層 的 で あ る。

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表6-2山 村 住 居 の 住 空 間 諸 量 の 相 関性(モ ヤ 間 口長 さ ・a(間)に 対 す る) 区分 」 Nα 住 空 間 の 部 分 名 称 単位 相 関 性 相 関係数 相 関 式 近代 の 相 関性 1. モ ヤ 奥 行 長 さ (間) 0 0.9848 b=0.731a十2.46 ○ 全 2. モ ヤ 細 長 比 (一) ○ 一 〇,9668 α 一 一 〇.264a十2.40 ○ 住 3. モ ヤ 床 面 積(1F・2F) (坪 〉 ○ 0.9961 M1(M2)=7,12a-6.94 ○ 兜 工 4. 付 加 空 間 床 面 積(1F) (坪) X 一 〇.2738 (F1=-1.10a+12.30) ○ 間 関 5, 付 加 空 間床 面 積(2F) (坪) × 一 〇.2894 (F2=-0.61a十3.87) × 係 6, 1階 (坪) 0.8499 A、=6.051a+5.25 7, 2階 床 面 積 (坪) 0 0.9547 A2=6.531a-3.14 ○ 8. フ ロ ン ト ・スペ ー ス 床面 積 (畳) × 0.3439 (f=1.429a-1,14) ○ モ 9. モ ヤ 主 要 部 床 面 積 (畳) ○ 0.9811 m=13.743a-13.51 ○ ヤ 主 10. D.L.R床 面 積 (畳) × 一 〇.1751 (H=-0.446a+12.58) ○ 体 兜 11. ブ ツ マ 床 面 積 (畳) X 0.4557 (B=0.434a+6.32) × 工 間 関 12. ネ マ 総 床 面 積 (畳) ○ 0.8171 N=7.566a1.36 ○ 係 13, (室) 0.8685 R=0.937a十 〇.32 ○ 14, 1室 当 り ネ マ 床 面 積 (畳) × 0.3712 n=0.326a十5.76 ○ サ ツ 15. 前 面 サ シ カ ケ 床 面 積 (畳) × 0.2076 (S=0.869a+3.14) ○ シケ カ タ 16. 背 面 ツ ケ タ シ 床 面 積 (畳) ○ 0.9765 T=1.62a-1.76 ○ ケ シ 付 加 17. 側 面 ツ ケ タ シ 床 面 積 (畳) × 一 〇.4484 (Y=-2。857a+19.99) ○ 宛 二 間 18, 左 側 面 ツ ケ タ シ床 面 積 (畳) △ 一 〇 .5615 (Y己=-2.823a十14.54) △ 関 係 19. 右 側 面 ツ ケ タ シ床 面 積 (畳) X 一 〇.0171 (Y,一 一 〇.029a+5,44) ○ 注)1,相 関 性 あ り:○ 、 あ ま り な し:△ 、 な し:X。 2.ネ マ 関 係 は1階 、2階 を あ わ せ た ネ マ に つ い て の 数 値 、数 式 で あ る 。 な お 、1階2階 そ れ ぞ れ に っ い て は 、N1=5.171a-9.89(r=0.9234)、R1=0.777a-1.43(r=0.9323)、n1= 1.337a十 〇.75(r=0.4782)、N2=2,394a十8.54(r-0.3811)R2=0.143a十1.79(r= 0.2095)、n2=0.731a十4.79(r=0.6313) 3.NQ16背 面 ツ ケ タ シ 床 面 積 は 、VIラ ン ク(1例)を 除 く相 関 性 で あ る 。

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最 後 に 、15,前 面 サ ンカ ケ床 面 積 、17.側 面 ツ ケ タシ床 面 穣 な どの 付 加 空 間 床 面積 の 非 階 罵性 で あ る が 、 これ につ い ては 本 項 の は ヒめ に4.伺 加 空 間 床 面 積{1Flの と こ ろで ふ れ て い る の で再 論 しな い 。た が 、同 じ付 加 空 間 で も背 面 ツ ケ タ シ床 面 積 は他 の 付 加 空 間 に 比 べ て 格 段 に 高 い 階 層 性 を示 して い る こ とは 見 逃 せ な い。背 面 ツ ケ タ シ部 分 陰 、仏 櫨 や 床 の 間 等 家 格 と関 連 す る スペ ー ス で あ 吐}、階 層 性 を現 代 に もと ど め て い る。 以 上,によ って 、 現 代 ・山村 住 居 の 伝 統 性 と新 規 性 が 、近 代 との 毘 較 に お い て 概 略 的 に明 らか と な っ た で あ ろ う。

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2.モ ヤ 主 体 空 間 の 構 成 近 代 ・山村 住 居 に お いて み た よ うに 、 柱建 て2階 屋 の モ ヤ の ま わ りに は 前 面 の サ シ カ ケや 背 面 の ツ ケ タ シ、 さ ら に左 右 の 側 面 ツ ケ タ シが 付 加 され て 一 個 の住 空 間 が 確 立 して い た。 この よ う な 空 間構 成 手 法 は、現 代 に お い て も受 けつ が れ て い る。 した が っ て 、現 代 にお い て も住 空 間 の 主 体 とな る モ ヤ が どの よ う な もの で あ るか が まず 問 題 化 さ れ る。 2.1モ ヤ 主体 空 間 と付 加 空 間 現 代 にお け るモ ヤ 主 体 空 間 とそ の まわ りの付 加 空 間 が ど の よ う な もの で あ っ た か をみ る た め 、 Nα8を 例 とす る(図82)。 図6-2現 代 ・山 村 住 居 の モ ヤ 主 体 空 間 図 に よ って あ き らか な よ うに 、この 例 は2階 建 で 前 章 の近 代 と 同様2階 部 分 に モ ヤ の形 状 が よ く現 れ て い る。 す な わ ち、 間 口長 さ3.0間 、 奥 行 長 さ4.0間 の整 形 の 長 方 形 で あ る。 モヤ の1階 部

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分 は 、 居 室3室(3畳 、8畳 、6畳)とK.台 所 、S.階 段 ・ロー カ で こ の 住 居 の 主 要 部 分 を 占め て い るの も近 代 と同様 で あ る 。 一 方 、 モヤ 周辺 の 付 加 空 間 に つ い て み る と、 ま ず 前 面 の サ シ カ ケ が あ る。 こ の サ シ カ ケ は 平 屋 で モ ヤ 間 口 い っ ぱ い に つ き、 奥 行1.0間 で 近 代 に も しば しば み られ た形 式 で あ る。 内容 もゲ ン カ ン 、0.洗 場 、W,便 所 のS系 空 間 で 近 代 と類 似 で あ る。次 に背 面 ツ ケ タ シはB .仏壇 入 とC.押 入 か らな り、こ れ も近 代 の ブ ツ ダ ン ダ シ を踏襲 して い る 。側 面 ツ ケ タ シ は ブ ツ マ(8畳)横 にC .収納 (棚)が2間 分 付 設 さ れ て い る。 以 上 の よ うに 、 この 例 で は3.0間 ×4.0間 の2階 建 の モ ヤ 主 体 空 間 の まわ りに 、平 屋 の前 面 サ シ カ ケ、 同 じ く平 屋 の 背 面 ツ ケ タ シ、側 面 ツ ケ タ シ が付 加 され て 全 住 空 間 が 完 成 され て い る。 この よ う な主 体 空 間 と付 加 空 間 に よ る住 空 間 構 成 手 法 は、近 代 にお い て確 立 して い た もの で あ るが 、 そ の 手 法 は戦 後 の 現 代 に も継 承 さ れ て い る。 しか し、 例 示 した52例 を全 体 的 に み る と、近 代 の 改 造 の70例 ほ ど に平 面 に 凹 凸 が な い 。前章 に 示 した 近 代 の建 設 に か か わ る70例 は 、そ の後 の 増 改築 を重 ね た結 果 、付 加 空 間 部 分 に お い て か な り凹 凸 が 生 じて い るが 、現 代 の建 設 に か か わ る52例 は 、か な り整 理 され た か た ち で 計 画 的 に付 加 空 間 が 付 設 さ れ て い る た め 恣 意 的 な不 整 形 が 生 じな い。 こ の こ とは 、前 章 で述 べ た 近 代 に お け る モ ヤ 主体 空 間 の確 立 以 降 の 当 山村 住 居 の発 展 過 程 をか な り鮮 明 に現 して い る もの とお もえ る。す な わ ち、 モ ヤ 主体 空 間 の確 立 の 次 にサ シ カ ケ 、ツケ タ シ な どの 付 加 空 間 に よ る住 空 間 の 機 能 補 足 な い し機 能 充 足 が お こ な わ れ る 。こ の 場 合 、機能補 足 とは 旧 来 に な い空 間 を付 加 す る こ とで あ り、 た と えば エ ン の付 設 が そ れ に 当 る。 また 、機能充 足 とは 旧 来 の 空 間機 能 を さ らに 高 め る た め の 付 加 で あ り、 た と えば ネ マ の 拡 大 が そ れ に 当 る。 戦 後 の 現 代 で は 、 以 上 の サ シ カ ケ、 ツ ケ タ シ付 加 空 間 に よ る住 生 活 の 利 便 性 ・快 適 性 が 一 般 に 認 容 され た結 果 、 こ れ が 建 設 時 に計 画 的 に 付 加 空 間 に 組 み込 ま れ て い るの で あ る。 い わ ば 事 後 的 ・追 加 的 な建 設 行 為 が 一 定 の 生 活体 験 に裏 打 ち され て容 認 され た結 果 、 計 画 的 行 為 に転 化 した と い え るの で あ る。 2.2モ ヤ へ の進 入 形 式 前 章 の近 代 にお い て モ ヤ へ の進 入 形 式(妻 入 りか 平 入 りか)に つ い て 述 べ た の で 、本 章 の 現 代 に お い て もそ れ を と りあ げ る。両 者 の 進 入 形 式 に つ い て は、 図8-3に 比 較 を示 した。 も と も と妻 入 り地 帯 で あ る当 山村 も近 代 以 降 に な る と平 入 りへ の 移 行 が 多 少 現 象 して い た 。 近 代 にお け る進 入 形 式 に は3種 あ り、 旧 来 の 妻 入 り、擬 似 平 入 り、平 入 りで あ っ た 。一・方 、現 代 に お け る進 入 形 式 を み る と、 や は り この3種 に分 類 さ れ る。 した が っ て 、進 入 形 式 と して は近 代 以 降 の 流 れ の 中 に あ る が 、 そ れ ぞれ の シ ェ アー が 多 少 異 な って い る。 そ の 関 係 を戸 数 比 率 で み る と、 ま ず 妻 入 りは近 代57.1%、 現 代48.1%で 現 代 が 約1割 減 少 して

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い る。次 に擬 似 平 入 りは近 代27.1%、 現 代25.0%で ほ とん ど変 ら な い 。最 後 に 平 入 りは 近 代15.7 %、 現 代26.9%で 現 代 が 約1割 増 加 して い る。 す な わ ち、 旧来 の妻 入 りが 約1割 減 少 し、 そ の 分 本 来 的 な平 入 りが 増 加 した とい う こ とで あ る。 この よ う に、妻 入 り地 帯 で あ る 当 山村 も徐 々 に平 入 りへ 移 行 しつ つ あ る こ とが わ か る。平 入 り へ の 移 行 理 由 につ い て は 、前章 で 述 べ て い るの で再 論 を さ け る が 、モ ヤ 側 面 へ の ア プ ロー チ の 必 要 性 が 高 ま りつ つ あ る こ とは上 の数 値 が 示 して い る。 しか し、そ れ に して も現 代 の 妻 入 りが 約 半 数 に及 び 、擬 似 平 入 り もモ ヤ に対 して は 妻 入 りに な るの で こ れ も妻 入 り とみ な す と、結 局 妻 入 り は 全 体 の7.5割 に達 す る。 当 山 村 に お い て は 、 や は り妻 入 り形 式 が 優 勢 で あ る とい わ ね ば な らな い 。 前 章 で もふ れ た と こ ろで あ るが 、全 国 的 に み る と大 半 の 民家 が 平 入 りに移 行 して い る現 代 に お い て 、 当 山村 の妻 入 りは確 か に稀 有 な存 在 とい え る で あ ろ う。 図8-3モ ヤ へ の 進 入 方 向(妻 入 り ・平 入 り)形 式 進 入方 向 形 式 囲 示 近 代 現 代 妻 入 り形式 40戸(57.1%) 25戸(48.1%) 擬 似平 入 り形式 19戸(27.1%) 13戸(25.0%) 平 入 り形 式 11戸(15.7%) 14戸(26.9%) 2.3モ ヤ の 平 面 形 状 さ て 、次 に モ ヤ 主 体 空 間 の 形 状 に 移 る。再 三 述 べ て い る よ うに 、モ ヤ 主 体 空 間 は 間 口 ×奥 行 の 整 形 長 方 形 で あ る の で 形 状 把握 が 容 易 で あ る。 ま ず 間 口長 さの分 布 状 況 につ い て み る が 、比 較 上 近 代 の そ れ も併 記 す る。 (間 口長 さ)(戸 数)(戸 数 比)[近 代の戸数比] 2.0間5戸(9.6%)[1.4%] 2.5間1戸(1,9%)[17.1%]

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3.0間 3.5間 4.0間 4.5間 5.0間 12戸 26戸 7戸 1戸 (23.1%)[49.5賭] (50.0%)[1{3.{i%] (13.5%)[4.3%] (1.9%)[5,?%] (一)[4.言%ユ 38戸 〔75.1%)

}㈱

・畏さ3澗

{近 代 平 均 間 口 長 さ3,2間) 注)漁47の 間 口3.25問 は3.O間 と し て 集 計 し て い る 。 上 に み る よ う に 、 間 口長 さ は2.0間 か ら4.5間 に ま た が っ て い る が 、 大 半(73 .1%)は3.0間 か ら 3.5間 に 集 中 し て い る。平 均 間 口 長 さ は3.3問 で 近 代 の3 .2間 と ほ と ん ど 同 等 で あ る 。現 代 の 山 村 住 居 は 、 い う ま で も な く柱 梁 構 造 で あ る か ら 、 ク ズ ヤ の よ う に 間 口 が 制 約 さ れ る こ と は な く、 そ の 意 味 で は も っ と 間 口 長 さ が 拡 大 さ れ て も よ い は ず で あ る が そ う は な っ て い な い 。 そ の 理 由 の 一 つ は 、 間 口 長 さ は 住 居 規 模 と相 関 し て お り 、こ の程 度 の 間 口長 さ に な る住 居 規 模 が 現 代 的 要 求 と考 え ら れ る が 、 新 築 時 の 経 済 的 負 担 能 力 等 も 作 用 し て い よ う。 しか し も っ と も注 目 す べ き 点 は 、近 代 に お い て は 間 口 長 さ3.0間 の 住 居 が48.6%で 約 半 数 を 占 め て い た が、現 代 に な る と間 口 長 さ3.5間 の 住 居 が50.0%で い ず れ も 最 高 率 を 占 め て い る こ と で あ る 。 す な わ ち 、 最 多 間 口 長 さ は 近 代3.0間 か ら現 代3.5間 へ 移 行 し て い る の で あ る 。 こ れ は 前 章 で 述 べ た 列 段 構 成 の 観 点 か ら み る と、と くに列 構 成 と関 連 す る とこ ろ で あ り、B列(ブ ツ マ の あ る 方 の 列)は2.0間 で あ る か ら、 近 代 の 場 合 はN列(ネ マ の あ る 方 の 列)は1 .0間 と な り、1.0間 幅 の 室 し か とれ な い が 、 現 代 の 場 合 はN列 が1.5間 幅 と な り正 規 の 室 空 間 が え ら れ る 。現 代 に お け る3.5間 間 口 は 、 結 局2.0間 と1.5間 幅 の2列 構 成 を求 め た 結 果 で あ る 。 しか し 、 こ の こ と は や は り近 代 に お け る 最 多 間 口 長 さ3 .0間 の 不 便1生 と い う生 活 体 験 が 基 本 に あ る で あ ろ う。 ま た さ ら に 、3.5間 よ り1ラ ン ク 上 の4.0間 を み る と、近 代 で は4.3%で あ っ た も の が 、現 代 で は13.5%に 増 加 し て い る 。 間 口 長 さ4。0間 の 場 合 は 、2列 と も2.0問 幅 とな りN列 も2.0 間 で ゆ と り の あ る 室 空 間 が え ら れ る 。こ の よ う に 、住 空 間 の 室 構 成 と 関 連 して 間 口 長 さ3 .5問 、4.0 間 へ の 志 向 性 が 高 ま っ て い る こ と が 容 易 に う か が え る が 、 他 方 で は4 .5間 以 上 の い わ ば 大 間 口 の も の は 低 率 化 し 、 ま た2.0問 の 小 間 口 が 高 率 化 し て い る こ と か ら 全 体 と し て 平 均 間 口 長 さ は 近 代 と ほ と ん ど 等 し い 値 と な っ て い る 。 次 に 奥 行 長 さ に つ い て み る と 以 下 の よ う に な る 。 参 考 の た め 近 代 の そ れ も併 記 す る 。 (奥 行 長 さ) 3.0間 3.5間 4.0間 4.5間 5.0間 5.5間 (戸 数) 2戸 2戸 15戸 5戸 15戸 3戸 (戸 数 比) (3.8%) (3.8%) (28.8%) (9.6%) (28.8%) (5.8%) [近代 の戸数 比] [一] [2.9%]

[2.9%]

[8.6%]

[30.0%]

[18.6%]

35戸(67.3%)

}

(平均 奥 行 長 さ4.8間) [近代 平 均 奥 行 長 さ5.6間]

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6.0間 6.5間 7.0間 7.5間 8.0間 4戸(7.7%)[18.6%] 5戸(9.6%)[11.4%] 1戸(1.9%)[2.9%] (一)[2.9%] (一)[1.4%] 注)Nα43の 奥 行5.75間 は5.5問 に 、 Nα24の6.25問 は6.0間 と し て 集 計 し て い る 。 上 に み る よ う に 、奥 行 長 さ は3.0間 か ら7.0間 に 分 布 し て い る 。近 代 に お い て は3.5間 か ら8.0間 に 分 布 して い た か ら 、分 布 域 は 現 代 の 方 が や や 狭 ま っ て い る 。 と く に 奥 行 の 長 い7。5間 な い し8.0 間 は 現 代 に は な くな っ て い る が 、そ れ で も7.0問 奥 行 の も の は あ り 、伝 統 的 な タ テ ヤ 造 は ま だ 生 き て い る と い え る 。しか し 、も っ と も高 率 な の は4.0∼5.0間 の あ た り で 、こ の ラ ン ク が35戸(67.3%) で 全 体 の 約7割 を 占 め て い る 。 奥 行 長 さ を 近 代 と比 較 し て 大 き く変 動 し て い る ラ ン ク は 、4.0間 と5.5間 以 上 の ラ ン ク で あ る 。 4.0間 ラ ン ク は 、近 代2,9%、 現 代28。8%で か な り大 き な 増 加 が み ら れ る 。5.5間 以 上 の ラ ン ク は 、 現 代 の 方 が 減 少 し て い る 。 以 上 の 変 動 か ら み る と 、現 代 に お い て は 旧 来 の タ テ ヤ 造 の 伝 統 を 一 部 で は 受 け つ い で い る が 、 次 第 に4.0∼5,5間 の あ た り に 集 中 化 しつ つ あ る こ と が わ か る 。 こ の こ と は 、 平 均 奥 行 長 さ に よ く現 れ て お り 、近 代 で は5.6間 で あ っ た も の が 、 現 代 で は4.8間 に 減 少 し て い る 。 以 上 、 間 口 と奥 行 長 さ の 分 布 状 況 を 個 別 的 に み て き た が 、 そ れ ら を 統 一 的 に 把 握 し た の が 図 8-4で あ る。 前 章 の 近 代 に お け る と 同 様 の 手 法 に よ っ て 、 細 長 比 の 観 点 か ら み る とモ ヤ 平 面 形 状 の 推 移 が よ く わ か る 。 先 に 述 べ た よ う に 、 平 均 間 口 長 さ は 近 代 と現 代 で ほ と ん ど 等 し く、奥 行 長 さ は 短 縮 の 傾 向 に あ る か ら、 細 長 比 は と うぜ ん 小 さ く な る 。 実 際 の 平 均 細 長 比 は 、 近 代1.75、 現 代1.46と な り現 代 の 方 が 正 方 形 平 面 に 近 づ い て い る こ とが わ か る 。 間 口長 さ3.0間 程 度 の 細 長 い(奥 行 の 深 い)タ テ ヤ 造 も次 第 に 方 形 の 平 面 形 状 に 移 行 し て き た 。 2.4モ ヤ の 空 間規 模 前 項 で は モヤ の 間 口 ・奥 行 長 さお よ び 細 長 比 につ い て み た の で 、 本 項 で は 間 口 ・奥 行 に よ っ て 囲 ま れ る モヤ の 規模(床 面 積)に つ いて み る。 前 章 の近 代 の と こ ろで お こな っ た の と 同 じ手 続 き で作 成 した の が 図8-5で あ る 。 また 、 具 体 的 な数 値 に つ い て は 表8-3に 示 して い る。 図 に よ っ て あ き らか な よ うに 、全 体 的 な 傾 向 は 間 口長 さ が 大 き くな る につ れ て モ ヤ 床 面 積 も大 き くな る が 、細 長 比 は小 さ くな る と い うこ とで あ る。 こ の傾 向 は近 代 にお い て も認 め られ た と こ ろ で あ る。 た だ現 代 は近 代 に 比 べ る と全 体 的 に細 長 比 が 小 さ くな って い る と こ ろ が 異 な る が 。 し た が っ て 、 間 口長 さ ・奥 行 長 さ(細 長 比)、 モヤ 規模 を統 一 的 に把 え る と、 大 き な住 空 間 を え る た め に は 、 間 口 を拡 大 し そ の 割 に奥 行 を延 伸 しな い とい う こ とで あ る。 そ の結 果 と して 、 近 代 に お いて も現 代 に お い て もラ ン クが 上 が る(間 口長 さが 大 き くな る)に

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現 代 モ ヤ 主 体 空 間 の 間 ロ(梁 間)・ 奥 行(桁 行) 図8-4 5.0 4.0 3.0 2.0 間 口(契 間)長 さ(間)

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した が って 細 長 比 は小 さ くな っ て い る。 こ う した 平 面 形 状 の 傾 向 は 、近 代 か ら現 代 にか け て の 階 層 性 を よ く示 して い る もの と考 え られ る。 す な わ ち、 小 間 口で 奥 行 の 深 い(細 長 比 の 大 き い)住 居 は モ ヤ 床 面 積 も小 さ く、階 層 的 に は下 層 に属 す る もの で あ り、逆 に大 間 口 で そ の 割 に奥 行 の 深 くな い(細 長 比 の小 さ い)住 居 は モ ヤ 床 面 積 も大 き く、 階 層 的 に は 上 層 に属 す る。 こ う し た階 層 的 視 点 を基 盤 に して い ま一 度 細 長 比 を み る と、各 ラ ン ク と も平 均 細 長 比 は 近 代 よ り現 代 の 方 が や や 減 少 して い る(VIラ ン クの み逆)。 そ の と うぜ ん の 結 果 と して 全 体 の平 均 細 長 比 は 、先 に もす こ し くふ れ た よ うに近 代1.75で あ っ た もの が現 代 で は1,46に 縮 少 され て い る 。こ の 事 実 は 、い うな れ ば どの階 層 にお い て も 旧来 の よ う に奥 行 を深 く とる こ と を し な くな っ た とい う こ とで あ る。 そ の と うぜ ん の 帰 結 と して 、モ ヤ 床 面 積 は 各 ラ ン ク と も 多少 の 減 少 を きた す 。全 体 の 平 均 モ ヤ 床 面 積 で み る と、近 代17.9坪 で あ った もの が 現 代16.2坪 とな り、1.7坪 の 減 で あ る。畳 数 に して3.4 畳 、 比 率 に して9.1%(約1割)の 減 で あ る。 これ は大 きな減 少 とは い え な い。 した が っ て 、 モ ヤ 床 面 積 につ い て は 、 近 代 も現 代 も大 差 な く近 似 的 と い え るが 、 問 題 は 平 面 形 状 で あ る。 表8-3近 代 ・現 代 の モ ヤ 主 体 空 間 の 規 模 、 細 長 比 の 比 較 ラ 間 戸 数 最 大 モヤ 床 面 積 最小 モヤ 床 面 積 平均 モヤ 床 面 積 最 大 最 小 平 均 ン 口 (比 ・%) (坪) (坪) (坪) 細長 比 細長 比 細長 比 A 問 近 現 近 現 近 現 近 現 近 現 近 現 近 現 ク 口 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 1 2.0 1 (1。4) 5 (9.6) 8.0 10.0 8.0 6.0 8.0 7.6 2.00 2.50 2.00 1.50 2.00 1.90 II 2.5 12 (17.1) 1 (1.9) 16.3 11.3 8.8 11.3 12.2 11.3 2.60 1.80 1.40 1.80 1.95 L80 III 3.0 34 (48.6) 12 (23ユ) 21.0 22.8 13.5 9.0 16.7 13.8 2.50 2.15 1.50 1.00 1.84 1.51 IV 3.5 (18.6)13 (50.0)26 26.3 22.8 16.6 14.0 20.2 17.5 2.14 1.86 1.36 1.14 1.65 1.43 V 4.0 3 (4.3) (13.5)7 26.0 26.0 20.0 16.0 23.3 2L1 1.65 1.63 1.25 1.00 1.46 1.32 VI 4.5 4 (5.7) 1 (1.9) 27.0 25.9 22.5 25.9 24.8 25.9 1.33 1.28 1.11 1.28 1.22 1.28 3 一 VII 5.0 (4.3) (一) 40.0 一 30.034.21.601.20L37 一 計 ・平 均 (100.0)70 (100.0)52 23.5 19.8 17.1 13.7 17.9 16.2 1.95 2.50 1.40 1.00 1.75 1.46 一 一 一 2.5モ ヤ の 列 構 成 前 項 まで に モ ヤ の 大 き さや 形 状 につ い て み た が 、本 項 と次 項 で モ ヤ 内部 の 空 間構 成 手 法 、つ ま

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近 代 ・現 代 の モ ヤ 主 体 空 間 の規 模 と細 長 比 図8-5 3.00 2.50 2.00 細 長 比 1.50 1.00 5・010・015・020・025.030 .035.040 ,0 モヤ の床面積(坪) 注)現 代 の間口2.5間ラン クは、Nα26.1例のみ であるので、全体的傾 向をみるため これ をとば して作図 している。 り列 段 構 成 の 現 状 に つ い て み る 。 そ の た め 、 あ ら か じ め 現 代 ・山 村 住 居 の モ ヤ 内 部 の 空 間 構 成 を 図8-6に 示 す 。 図 に よ っ て わ か る よ う に 、 現 代 に お い て も大 半 の 住 居 は 列 段 構 成 を 基 本 と し て

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現 代 ・山村 住 居 の モヤ 平 面構 成

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室 構 成 を お こ な っ て い る こ と が 明 瞭 で あ る が 、 ま ず 本 項 で は 列 構 成 の 検 討 か ら 入 る 。 列 構 成 は 間 口 長 さ と つ よ い 相 関 関 係 に あ る の で 、間 口 長 さ の 順 に み て い く。 ま ず 、 間 口 長 さ2 .0 間 の 場 合 は 、近 代 で も そ う で あ っ た よ う に1列 型 に な ら ざ る を え な い 。次 に 間 口 長 さ2.5間 の 場 合 も 同 様 に1列 型 で あ る が 、 列 の 幅 は2.0間 で 残 り0.5間 はC.押 入 、T.床 の 間 が と ら れ る 。 次 に 間 口長 さ3.0間 の 場 合 で あ る 。 近 代 に お け る 間 口3.0間 は 、2.0間 と1.0間 の2列 に な り、 ブ ツ マ の あ るB列 を2.0間 幅 と し 、 ネ マ の あ るN列 を1.0問 幅 と し て い た が 、 こ の近 代 的 列 構 成 の 手 法 は 、 現 代 に も つ よ い 影 響 力 を も っ て お り、 こ の ラ ン ク に 属 す る12例 中9例(75.0%)が こ の 手 法 を 踏 襲 し て い る 。 つ ま り、 約8割 が 旧 来 の2.0間 幅 と1.0間 幅 の2列 構 成 だ と い う こ と で あ る 。 残 りの3例(25.0%)(Nα5、6、47)は 、 上 記 の 伝 統 的 手 法 に よ らず 多 少 変 形 し た か た ち を と っ て い る 。Nα5、Nα6で は 最 奥 が2列 に 分 割 さ れ ず 明 確 な 列 構 成 に な っ て い な い 。 ま た 、Nα47で は 最 奥 は2.0間 と1.0間 の2列 に な っ て い る が 、 そ の 前 部 で は タ テ の 間 仕 切 が 通 ら ず 喰 違 っ て い る 。 こ れ ら の 変 形 は 、 い う ま で も な く現 代 的 な 徴 候 で あ る が 、 旧 来 の 列 段 構 成 を 破 っ た 自 由 な 空 間 構 成 を 目 指 し た も の と し て 注 目 さ れ る 。本 論 で は こ の よ う な タ イ プ を 非 列 構 成 型 と名 づ け て お く。 しか し 、 も っ と も 注 目 す べ き 点 は 、 上 の 伝 統 的 な2列 構 成 も 旧 来 の ヒ ロ マ に 当 る と こ ろ ま で タ テ の 間 仕 切 が 通 り、 従 来 の ヒ ロ マ 部 分 も2列 に 分 割 さ れ て い る こ と で あ る。 し た が っ て 、 この 場 合 は ヒ ロ マ 部 分 も2室 に な り タ テ の 間 仕 切 が 奥 行 方 向 全 体 に 通 る こ と に な る 。こ の よ う な タ イ プ は 、 先 に 全2列 型 と名 づ け て お い た が 、 こ れ は 近 代 の ヒ ロ マ2列 型(ヒ ロ マ の 背 後 が2列 に 分 割 さ れ る 型)や ヒ ロ マ 全2列 型(1列 の 前 部 に タ テ に ヒ ロ マ を と る 型)と 明 確 に 区 別 し て お か ね ば な ら な い 。 近 代 の ヒ ロ マ2列 型 、 ヒ ロ マ 全2列 型 、 現 代 の 全2列 型 の3者 を 図 示 し て お く と 図8 -7の よ う に な る 。 図8-7近 代 と現 代 の2列 型

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次 に 間 口 長 さ3.5間 の 場 合 に 移 る 。3,5間 の 場 合 も2列 構 成 を と})B列 が2.0間 幅 、N列 が1.5間 幅 で あ る 。 そ し て 、 こ の ラ ン ク も伝 統 的 な2列 型 を 基 盤 と し た 全2列 型 が 圧 倒 的 に 多 い 。 こ の ラ ン ク に 所 属 す る26例 中22例(84,6%)が 全2列 型 で 、 残 り4例(15.4%)が 非 列 構 成 型 で あ る 。 こ の よ う な 現 代 的 傾 向 は 、 先 の 間 口 長 さ3.0間 の 場 合 と全 く同 様 で あ る 。 次 に 間 口長 さ4.0間 の 場 合 は 、7例 す べ て が 全2列 型 で あ る 。 こ の 場 合 はB列 、N列 と も に2.0 間 幅 と な り、ゆ と り あ る 室 空 間 が え ら れ る 。最 後 に 間 口 長 さ4.5間 の 場 合 で あ る が 、 こ の ラ ン ク は 1例(Nα43)で0.5間 分 は エ ン に 使 わ れ て い る の で 実 質 的 に は 先 の4.0問 間 口 と 同 じ こ と に な り、 全2列 型 で あ る 。 以 上 、 間 口 長 さ の 順 に 列 構 成 に つ い て み て き た が 、 全 体 を 通 じ て い え る こ と は 、 近 代 に お い て 定 型 化 し た 列 構 成 は 現 代 ま で 影 響 力 を 失 っ て い ず 、B列 を2.0間 幅 と す る2列 構 成 が 健 在 で あ る 。 し か し 、こ の タ テ 間 仕 切 は 旧 来 の ヒ ロ マ 部 分 に ま で 延 伸 さ れ ヒ ロ マ を も2分 割 す る も の が 多 く な っ て い る 。(全2列 型)。 ま た 、 一 部 分 で タ テ 間 仕 切 が 通 ら ず 喰 違 い の 生 ず る 新 し い タ イ プ が 若 干 例 み ら れ る 。 以 上 の 結 果 を 戸 数(比 率)で 示 す と 、 全52列 中 、 ヒ ロ マ2列 型1戸(1.9%)、 全2列 型42戸(80.8 %)、 非 列 構 成 型9戸(17.3%)と な る 。 な お 、 現 代 的 な 全2列 型 や 非 列 構 成 型 に つ い て は 後 に 詳 論 す る 。 2.6モ ヤ の 段 構 成 前 項 で は モ ヤ の 列 構 成 に つ い て 述 べ た の で 、 次 に モ ヤ の 段 構 成 に つ い て み る 。 段 構 成 に つ い て み る ま え に 、 近 代 の と こ ろ で も 行 っ た と 同 じ よ う に 、 モ ヤ 前 面 の フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 設 置 状 況 お よ び 背 後 のB.仏 壇 入 、C.押 入 等 の 付 帯 状 況 に つ い て み る 。 こ れ ら の 有 無 は モ ヤ の 有 効 奥 行 長 さ と 関 係 し 、 段 の 奥 行 長 さ お よ び 段 数 に 影 響 す る か ら で あ る 。 ま ず 、 フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス に つ い て は 、52例 中19例(36.5%)が こ れ を も ち 、33例(63.5%) が こ れ を も た な い 。 近 代 に お け る フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 設 置 率 は 、70例 中55例(78.6%)で あ っ た か ら、 現 代 に お け る こ の ス ペ ー ス は か な り減 少 し て い る と い わ ね ば な ら な い 。 そ の 理 由 等 に つ い て は 次 節 で 述 べ る と し て 、 こ こ で は フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス を 有 す る 戸 数 の 減 少 だ け を指 摘 し て お く。 フ ロ ン ト・ス ペ ー ス の 奥 行 長 さ は 、 ほ と ん ど す べ て1.0間 で あ る か ら、 近 代 に 比 べ て 現 代 に お い て は こ の1,0間 分 を有 効 奥 行 長 さ に 活 用 す る 住 居 の 割 合 が 多 く な っ た とい う こ と で あ る 。 次 に モ ヤ 背 後 の 付 帯 状 況 に つ い て み る と 、52例 中4例(7.7%)がB.仏 壇 入 、C.押 入 、T.床 の 間 等 を も っ て い る 。 こ れ は ひ じ ょ う に 僅 少 な 率 で あ る か ら 、 現 代 に お い て は 仏 壇 入 ・押 入 等 は モ ヤ 背 後 に 組 込 む も の が ほ と ん ど な い と い っ て よ い 。後 に ふ れ る よ う に こ れ ら の 付 帯 設 備 は 背 面 ツ ケ タ シ 部 分 に 外 化 し て い る の で あ る 。 こ の 傾 向 は 近 代 と変 る と こ ろ が な い 。 仏 壇 入 ・押 入 等 の 奥 行 は0.5間 が 一 般 で あ る か ら、 こ の0.5間 分 も モ ヤ の 有 効 奥 行 長 さ に 活 用 さ れ る こ と に な る 。 先

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の フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の1.0間 と合 わ せ る と1.5間 分 が 室 構 成 に 参 与 す る こ と に な る 。 す な わ ち 、 段 構 成 の 観 点 か ら み る と 、 段 の 奥 行 長 さ あ る い は 段 数 に 有 利 な 方 向 を た ど っ て い る と い え る 。 さ て 、前 置 き は こ れ く ら い に して 段 構 成 の 話 に 移 る が 、段 は 列 と 関 係 す る の で 間 口 長 さ の 順 に み て い く。 ま ず 、間 口 長 さ2.0∼2.5間 は1列 型 で あ る か ら簡 単 に 段 数 が わ か り、奥 行 長 さ3 .0間 の 場 合(Nα1)は1段 、 す な わ ち 単 室 住 居 で あ る 。 奥 行 長 さ3.5問 の 場 合(Nα3、4)は2段 、 奥 行 長 さ4.0∼5.0間 で は3段 と な る 。 段 の 奥 行 長 さ は1.5∼2.0間 が 多 い 。 しか し 、 い ず れ に し て も こ の ラ ン ク の 段 構 成 は 明 確 で あ り、1列 何 段 型 と い う把 握 が 可 能 で あ る 。 次 に 間 口 長 さ3,5間 の 場 合 は 、2.0間 幅 のB例 と 残 り1.0間 幅 のN列 の2列 に な る の で そ れ ぞ れ の 列 に よ っ て 段 が 喰 違 う場 合 もで て く る が 、 い ま 両 列 の 段 が 一 致 す る も の(ヨ コ 間 仕 切 が 通 る も の)を 挙 げ る と 、 こ の ラ ン ク で は12例 中8例(66,7%)が こ れ に 該 当 し 整 形 で あ る 。 も と も と列 段 構 成 は タ テ 間 仕 切 ・ヨ コ 間 仕 切 が 直 線 的 に 通 り 日 の 字 や 田 の 字 の よ う な 室 構 成 に な る の が 本 来 で あ る か ら 、 こ の 観 点 か ら み る と 旧 状 を 温 存 す る も の が7割 弱 と い う こ と に な る 。 し か し 、 残 り の3割 強 は 両 列 の 段 が 喰 違 っ て お り 、 こ の 喰 違 い 型 の 中 に は 現 代 の 新 し い 傾 向 も み と め ら れ る が 、 こ れ に つ い て は 論 を 後 に ゆ ず る。 な お 、 段 数 は モ ヤ の 奥 行 長 さ3.0∼5.0で2段 、 そ れ 以 上 で は3段 と な る 。 段 の 奥 行 長 さ は2.0聞 が 多 い 。 次 に 間 口 長 さ3.5間 の 場 合 に 移 る 。こ の 場 合 もB列 とN列 の2列 構 成 と な り、そ れ ぞ れ2.0間 幅 、 1.5間 幅 の 列 に な る が 、 前 ラ ン ク と 同 じ よ う に 両 列 の 段 が 一 致 す る も の を 挙 げ る と 、26例 中22例 (84.6%)が こ れ に 該 当 す る 。 こ の ラ ン ク で は 前 ラ ン ク よ り 旧 状 を 温 存 す る も の が 多 く8割 強 に 達 して い る 。 ま た 、 段 数 に つ い て は モ ヤ の 奥 行 長 さ4。0∼5.5間 が2段 、 そ れ 以 上 が3段 と な る 。 な お 、 段 の 奥 行 長 さ は2.0間 が 多 い が こ の ラ ン ク に な る と2.5間 の も の も み られ る よ う に な る 。 次 に 間 口長 さ4.0間 の 場 合 は 、2.0間 幅 の2列 構 成 と な る が 、 や は り両 列 の 段 が 一 致 す る も の を 挙 げ る と、7例 中5例(71.4%)が こ れ に 該 当 し 、 整 形 間 取 の も の が 多 い 。Nα28は 間 口 、 奥 行 と も に4.0間 で あ る か ら モ ヤ の 平 面 形 状 は 正 方 形 に な り、間 仕 切 が タ テ 、ヨ コ を 折 半 す る の で 完 全 な 田 の 字 型 と な っ て い る 。 段 数 に つ い て は 、 前 ラ ン ク と 同 様 奥 行 長 さ4,0∼5.5間 で2段 、 そ れ 以 上 で は3段 で あ る 。 段 の 奥 行 長 さ は2.0間 が 多 く 、 稀 に2.5間 み ら れ る 。 最 後 に 間 口長 さ 、4.5間 の 場 合 で あ る が 、 や は り2列 構 成 を と っ て い る と こ ろ は 上 と 同 じ で あ る 。 た だ こ の ラ ン ク は 、 サ ン プ ル が1例 し か な い の で 以 上 の よ う な 統 計 が だ せ な い 。 こ の 例 は 喰 違 い 型 で あ り 、 旧 来 の 整 形 間 取 か ら の 脱 皮 が う か が え る 。 以 上 、 間 ロ ラ ン ク に よ っ て 段 構 成 の 現 代 的 状 況 を み て き た が 、 全 体 と し て 整 形 の 段 構 成 を と る も の は 、52例 中41例(78.8%)で 約8割 に 達 し て い る 。 こ の 値 は1列 型 を も含 め て い る の で 、2 列 型 だ け に つ い て 整 形 の も の を み る と46例 中35例(76.1%)と な り、 や は り高 い 率 を 示 す 。 し た が っ て 、 現 代 ・山 村 住 居 で は 、 整 形 の 段 構 成 を と る も の が 約8割 あ り 、 前 項 の 列 構 成 の 結 果 を も 考 え 合 わ せ る と 、近 代 で 明 確 な 形 を と っ た 列 段 構 成 は 戦 後 の 現 代 に もつ よ く受 け つ が れ て い る と

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い え る。 い な む しろ 、 ヒ ロマ の2分 割 に よ っ て整 形 の 列 段 構 成 は 、現 代 に お い て い っ そ う明 確 な もの に な っ た と い え るで あ ろ う。な お、約2割 の 喰 違 い型 の含 む 新 し い萌 芽 等 につ い て は後 に 詳 述 す る。 3.現 代 の 住 空 間 構 成 前 節 で は 住 空 間 の 主 体 とな るモ ヤ につ い て み た の で 、本 節 で は モ ヤ 周 辺 に付 加 され る サ シ カ ケ や ツ ケ タ シ を も含 め て全 住 空 間 の 現 代 的状 況 を み て お きた い。近 代 にお い て は 、モ ヤ を主体 と し て前 面 にサ シ カ ケ 、背 面 に ツ ケ タ シ、側 面 に もや は りエ ン をツ ケ タ シ と して付 加 す る もの が 多 か っ た が 、その 現 代 的 改 造 結 果 は、そ れ ら付 加 空 間が さ らに 拡 大 され発 展 され て い た 。そ の 事 後 的 ・ 追 加 的 な増 築 の結 果 、平 面 は 凹 凸 の 多 い不 整 形 な もの が 多 か っ た。 そ れ に 比 べ る と、現 代 の 平 面 形 状 は ま だ し も整 形 に近 い。 以下 、現 代 の状 況 をみ る に あた っ て は 、前 章 の 近 代 住 居 お よ び現 代 的 改 造 をへ た近 代 住 居 との 比 較 を も し なが ら論 を進 め た い 。 3.1住 空 間 の全 体 構 成 まず 最 初 に住 空 間 の 全 体 把 握 をお こ な っ て お きた い 。つ ま り、住 空 間 の 基 本 的 骨 格 とい っ た と こ ろ で あ るが 、 次 に 近 代 と対 照 した 図 を示 す(図8-8)。 近 代 と現 代 の 全 住 空 間 構 成 (現代) 図6-o (近代)

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近 代 と 現 代 の 全 住 空 間 構 成 は 、モ ヤ と そ の ま わ り の 付 加 空 間 か ら成 っ て い る と い う 点 で は ま っ た く 同 一 で あ る 。 し か し、 現 代 に お い て は1.サ シ カ ケ は ヨ コ 方 向 に 拡 張 さ れ 、 ま た 、5.側 面 ツ ケ タ シ は タ テ 方 向 に 拡 張 さ れ る 。 こ の 傾 向 は 、 近 代 住 居 の 現 代 的 改 造 に も み ら れ た も の で あ る 。 次 に モ ヤ の 内 部 に つ い て み る と 、 ま ず フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 有 無 が あ る 。 フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 設 置 率 は 、 先 に も ふ れ た よ う に 戸 数 比 率 し て 近 代78、6%、 現 代36.5%と な り、 か な り低 率 化 し て い る が 皆 無 と い う わ け で は な い 。次 に モ ヤ 主 要 部 で あ る が 、 こ れ に つ い て は 先 の 列 段 構 成 の と こ ろ で 述 べ た と お り で あ る 。 ヒ ロ マ が2分 割 さ れ 全2列 多 段 型 の 構 成 を と る も の が 多 い 。 ま た 、 モ ヤ 背 面 に 仏 壇 入 ・押 入 等 を 付 帯 す る 場 合 、 こ れ を モ ヤ 内 部 に 組 込 む か 、4.背 面 ツ ケ タ シ に 突 出 す か の2様 が あ る が 、 現 代 に お い て も 圧 倒 的 に 後 者 が 多 い 。 最 後 に5.側 面 ツ ケ タ シ で あ る が 、 こ れ の 設 置 率 も 高 い 。 以 上 の よ う に 、1.サ シ カ ケ 、2.フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス 、3.モ ヤ 主 要 部 、4.背 面 ツ ケ タ シ 、5.側 面 ツ ケ タ シ(左 右)の5つ の 部 分 に よ る構 成 は 、 基 本 的 に は 近 代 と 変 る と こ ろ が な い が 問 題 は そ れ ぞ れ の 内 容 で あ る 。 以 下 、 そ れ ぞ れ の 内 容 を こ の 順 で み て い く。 3.2サ シ カ ケ の 現 代 的 状 況 モヤ 前 面 の サ シ カケ は、近 代 に お い て は ほ とん どす べ て の 住 居 に付 設 され て い た が 、現代 にお い て は 設 置 状 況 が 多 少 異 な っ て き て い る。以 下 、そ の あ た りの 状 況 を表8-4に よ って み て い く。 まず 、 モヤ 間 口 い っ ぱ い にサ シ カ ケ を付 設 す る全 面 付 加 は 、戸数 比 率 に し て近 代91.4%で あ っ た もの が 現 代 で は53.8%に 減 少 して い る 。逆 に部 分 付 加 は5.7%か ら25.0%に 増 加 し、サ シ カ ケ の な い もの も2.9%か ら21.2%に 増 加 して い る。全体 と して 前 面 サ シ カ ケ は衰 退 の 傾 向 に あ る。そ の 理 由 は 、近 代 に 比べ て 現 代 で は 平 入 りが 多少 増 加 し、サ シ カ ケ の機 能 が側 面 ツ ケ タ シ の方 へ 移 動 し た こ と、 また 、サ シ カケ 内部 の 機 能 が他 の 部 分 に移 譲 され た こ と、 さ ら にサ シ カ ケ の機 能 が モ ヤ 内部 に組 込 まれ た こ と な ど で あ る。 次 に サ シカ ケ の 奥 行 長 さ につ い て は 、1.0間 未 満 の もの が 近 代15.7%、 現 代19.2%で 微 増 、1.0 間 の もの は近 代67.1%、 現 代42.3%で か な りの減 少 、1.0問 以 上 の もの は近 代14.3%、 現 代17.3% で微 増 で あ る。こ れ らの 数 値 を先 の付 加 状 況 と考 え合 わせ る と、間 口 い っ ぱ い に1.0間 奥 行 の サ シ カ ケ をつ け て い た近 代 の 状 況 が か な り崩 れ て き て い る こ とが わ か る。前 面 サ シ カ ケ の 要 請 は い ま だ持 続 して い る と は い う もの の 、 サ シ カ ケ の 寸 法 ・形 状 はか な り自 由 な もの に な っ て きて い る と い わ ね ば な らな い。 次 に サ シ カ ケ の 階 数 に つ い て み る と、平 屋 の もの が 近 代48.6%、 現 代69.2%で か な り増 加 し、 2階 建 の もの は近 代48.6%、 現 代9.6%で 激減 し て い る。近 代 にお い て は 、主 と して 養 蚕 の た め の スペ ー ス と して2階 の ア マ を拡 充 す る た め 、サ シカ ケ の2階 化 も進 行 した が 、戦 後 の 現 代 で は そ の 要 もな く平 屋 の サ シ カ ケ が 圧 倒 的 に 多 くな っ た。

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現 代 ・山村 住 居 の サ シ カ ケ の 付 加 状 況 と内 容 表8-4 ラ モ ヤ ン 間口 長 ク さ 商   全 戸 数 芦 V サ シ カ ケ の 付 加 状 況 (戸) サ シ カ ケ の 奥 行 長 さ (戸) 階 数 (戸) サ シ カ ケ の 内 容(空 間機能) 面 蓼 計 蔓 口 G.ゲ ンカン W.便 所 C.収 納 s・ 晟一護 K.台 所 口.居 室 F.浴 室 0.洗 場 D.洗 面 所 1 全 面 付 加 部 分 付 加 . な し 1.0 間 未 満 1.0 間 1.0 間 以 上 平 屋 2 階 建 戸 警 ε 面 猿 醤 戸 数 芦 v 面 猿 彗 戸 警 巳 面 賛 彗 戸 数 β ロ ー 面 璽 塁 戸 警 ε 面 焚 醤 戸 警 ε 面 奨 竺 戸 警 ε 面 奨 堂 戸 警 ε 面 猿 塁 戸 数 β 口 面 奨 雪 12.O H2.5 nl3.O IV3.5 V4.O VI4、5 5 1 12 26 7 1 3 1 5 15 4 一 1 -4 6 1 1 1 -3 5 2 一 一 1 1 7 -1 3 -6 12 1 占 1 -2 2 4 一 4 1 6 21 3 1 一 一 3 -2 一 5.2 3.0 5.8 6.7 13.1 2.0 3 -8 17 2 1 2.7 -2.8 2.7 6.4 LO 4 -6 17 4 1 0.9 -1.3 1.1 1.6 1.0 1 -2 9 3 一 0.8 -3.5 1.9 2.2 一 3 -3 14 3 一 12 -1.3 L5 1.3 一 1 1 2 5 4 一 2.2 2.0 3.0 2.7 5.4 一 一 一   一 一 一 一 一 一 一 一 一 1 1 1 9 4 一 1.5 1.0 2.0 1.5 1.9 一 一 F 2 且 1 一 一 一 2.0 1.7 2.5 一 1 -5 2 一 0.8 一 一 1.0 2.3 邑 現 計 代 〔%) 52 (100.O> 28 (53.8) 13 (25.G) 11 (21.2) 10 (19.2) 22 (42.3) 9 (173) 36 (69.2) 5 1(9.6) 6.9 31 (59.6)2.9 32 (61.5)1.2 15 (28、8) 2.1 23 〔44.21 1.4 13 (25.0) 3.5 一 (一)   16 (30-8)1.6 6 (11,5)1.9 8 (15.4)1.3 近 計 代1%) 70 (100.0) 64 (9L4) 4 (5.7) 2 (2.9) 11 (15.7) 47 (67.1) 10 (14.3) 34 (48.6) 34 (48.6)6.2 51 (72.9) 3.2 40 (57.1)1.3 21 (30、① 1.9 42 (60,0)2.0 10 (143) 2.2 14 (20.O)2.6 6 (8.6) L1 3 (4.3) 2.7 5 (7.1) 一 1.6 注)サ シ カ ケ の 内容 の 面 積 は 、 そ れ を有 す る もの の 平 均 値 を 示 して い る。 1 ら ① 1

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さ て 次 に サ シ カ ケ の 内 容 に 移 る が 、ま ず 、サ シ カ ケ そ の も の の 床 面 積 を 比 較 す る と 、近 代6,2畳 、 現 代6.9畳 で ほ と ん ど 異 動 が な い 。問 題 は そ の 空 間 機 能 で あ る 。表 に 示 し た9種 類 の 用 途 の う ち 目 立 っ て 増 加 し て い る も の は 、K.台 所 、F.浴 室 、0.洗 場(洗 タ ク 場)、D.洗 面 所 で あ る 。 こ れ ら は 一 括 し て 水 ま わ りス ペ ー ス 、 あ る い は サ ニ タ リー と い え る も の で あ る 。 も と も と サ シ カ ケ 部 分 は こ れ ら の 機 能 を集 約 的 に 配 置 す る ス ペ ー ス で あ っ た か ら 、そ の 意 味 で は 伝 統 を 受 け つ い で い る と い え る が 、 も ち ろ ん 設 備 等 は 現 代 化 さ れ て お り、 む し ろ そ の こ と が 近 代 よ り も い っ そ う こ の ス ペ ー ス の 機 能 を 明 確 化 ・顕 在 化 さ せ た と い え る 。 以 上 と は 逆 に 目立 っ て 減 少 し て い る も の は 、G.ゲ ン カ ン 、 口.居 室 で あ る 。 ゲ ン カ ン は 平 入 り の 増 加 に よ る 側 面 へ の 移 動 、 モ ヤ 内 へ の 移 動 に よ り減 少 し て い る 。 ま た 、居 室 の 減 少 は 、居 室 が 本 来 的 に モ ヤ 内 に 位 置 づ け ら れ よ う と し て い る こ と を 示 して い る 。 3.3フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 解 体 状 況 近 代 に お い て は 、 モ ヤ 前 面 に 奥 行1,0間 分 の フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス を と る も の が 多 く 、70例 中55例 (78.6%)に 及 ん で い た 。 フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス は 、 ゲ ン カ ン ・ロ ー カ ・階 段 ・台 所 ・便 所 ・収 納 な ど 主 と し てS系 空 間 を 集 約 的 に 配 置 す る ス ペ ー ス で 、前 面 の サ シ カ ケ と 類 似 の 機 能 を も つ 部 分 で あ る 。 近 代 に お け る こ の よ う な フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス は 現 代 で は ど の よ う に な っ て い る の で あ ろ う か 。 ま ず 最 初 に フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 有 無 に つ い て み る と 、 こ れ を 有 す る も の は 近 代 で は78.6%で あ っ た も の が 現 代 で は36.5%に 激 減 し て い る 。 こ れ は か な り の 減 少 と い わ ね ば な ら な い 。近 代 の と こ ろ で 、 フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス を有 す る も の をF型 、 こ れ を も た な い も の を0型 と名 づ け て お い た が 、 こ の 呼 称 に よ れ ば 現 代 に お い て はF型 か ら0型 へ の 移 行 が 現 象 し て い る と い え る(表8-5)。 次 に フ ロ ン ト・ス ペ ー ス の 面 積 を み る と 、 近 代6.6畳 、 現 代6.9畳 で ほ と ん ど 等 し い 。 す な わ ち 、 現 代 に お い て も 近 代 の 伝 統 を ひ い て フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス を 有 す る も の は 奥 行1.0間 分 を こ の ス ペ ー ス に 当 て て い る と い う こ と で あ る。 し か し 、 こ の 伝 統 型(F型)は 先 に ふ れ た よ う に36.5%の 住 居 に 該 当 す る も の で あ る か ら 、残 り63.5%の0型 で は こ の ス ペ ー ス は ど の よ う に 変 化 し て い る の で あ ろ う か 。 そ こ で0型 に つ い て す こ し 目 を 配 っ て お き た い 。 近 代 に お け る フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス は そ の 次 に ヒ ロ マ が く る の で 、 両 者 の 境 界 は 直 線 的 で 明 確 で あ っ た が 、 現 代 で は 両 者 の 間 に は か な り 凹 凸 が あ り 区 分 が 明 確 で な い 。 そ こ で0型 に つ い て も モ ヤ 前 面 の 奥 行1.0間 分 が ど の よ う な 用 途 に 使 用 さ れ て い る か を 求 め た 。 そ の 結 果 を 図8-9に 示 す 。 図 に お い て は 、 近 代 以 降 の 変 化 を と ら え る た め に 、 近 代 のF型 、 現 代 のF型 、 現 代 の0型 を 従 列 し て い る が 、 こ れ に よ っ て フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 変 容 過 程 が か な り は っ き り と わ か る 。 現 代F

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現 代 ・山村 住 居 の フ ロ ン トス ペ ー ス の 設 置 状 況 と内容 表8-5 一 ラ モ 全 7ロ ン ト ・ フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 内 容(空 間 機 能) ヤ 間 ン ス ペ ー ス の 面 G、 ゲンカ ン W.便 所 C.収 納 s嘱 一農 K.台 所 口.居 室 F.浴 室 0.洗 場 D.洗 面 所 E.エ ン 口 設 孟 状 況 長 ク さ 数 (戸) 承 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 戸 面 A 計 数 積 数 積 数 積 数 積 数 積 数 積 数 積 数 猿 数 奨 数 猿 胆 巳 β 蔓口 芦口 蔓  芦口 蔓口 芦星 星蔓 芦星 一 蔓 星 V芦 昼V 芦口 昼v 芦星 撃 芦星 彗 芦星 彗 一 一 一 一 一 一 一 一 F 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 12.0 5 → 4.0 1 1.0 一   一 一 3 1.7 一 一 5 2.8 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一   一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一   一 一 一 II2.5 1 一 1 5.0 一 一 一 一 一 一 1 1.0 1 3.0 一 一 1 1.0 一 昌 一 一 一 一 m2.0 12 3 9 6.06.1 3 1 2.3 1.0 2 2 LO 1.3 32 0.9 1.3 3 8 12 1.5 1 6 2.0 1.3 つ Jg 羽 o、 : : : : : : IV3.5 26 14 12 7.07.0 12 2 2.5 2.5 5 2 1.1 1.0 2 3 0.80.7 13 12 3.1 1.9 56 2.4 1.7 1 10 3.0 3.8 2 2 2.0 0.4 : : 2 4 0.8 0.6 三

"

V4.0 7 2 ≡i 1 8.0 8.0 12 2.0 3.0 ユ

1 ラ

14 6.0 ユ.4 1 3 6.02.7 モ ♂7 : : 1 礼o : : : : 一 一 一 一 一 一 一 一 昌 一 一 一 一 一 一 一     一 一 一 VI4.5 1 一 1 9.0 1 2.0 一 一 一 一 1 一 一 一 1 4.0 1 2.0 一 一   一 1 1.0 現 代 F型 52 19 33 6.9 16 (30.8) 2.4 7 (13.5) 1.1 5 (9.6) 1.0 17 (32.7) 2.9 7 (13.5) 2.9 1 (1.9) 3.0 2 (3.8) 2.0 1 (1.9) 2.0 2 (3.8) O.8 一 (一) 門 ・ 計 ⑫∂0型 (100.0) (36-5) (63,5) 6.4 7 (13.5) 2.1 5 (9.6) 1.1 7 (13.5) 1.0 28 (53.8) L7 16 (30,8) 1.8 26 (50.0) 7.7 6 (11.5) 0.9 一 (一) 一 4 (7.7) 0.6 2 (3.8) 0.8 近 計 代 囎 70 (100.0) 55 (78,6) 15 (21.4)6.6 15 (21.4) 3』 5 (7.1) 12 20 (28.6) 1.5 50 (71,4) 3.6 13 (18.6) 2.2 23 (32.9) 2.7 2 (2.9) 一一 1.2 2 (2.9) 2.3 2 (2.9) 1-0 一 (一) 一 注)1.フ ロ ン ト ・スペ ー ス の 内 容 の 欄 の 上 段 はF型 、 下 段 は0型 の モ ヤ 前 面1間 分 の 数 値 を示 す 。 2.フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 内 容 の 欄 の 面 積 は 、 そ れ を有 す る もの の 平 均 値 を示 す 。 ー 幽 Q。 1

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フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の 機 能 別 面 積 比 率(%)の 推 移 図8-9 1 G. W, C, S. K.1 口. F, 0. D, E. ゲ 便 ロ 階

1 面 ン 所 納 1力段 所 室 室 場 所 ン 近代F型 12.5 1.6 7.7 49.3 8.0 18.4 0.7 1.2 0.5 一 現代F型 29.5 5.7 3.8 37.9 15.2 2.3 3.0 1.5 1.1 一 現代0型 7.1 2.6 3.3 22.0 13.6 47.0 2.5 ■_ 1.2 0.7 近代F型 現代F型 現代0型 型 で は 、G.ゲ ン カ ン の 増 加 が 目立 っ て お り、 そ の分S.ロ ー カ ・階 段 が 切 りつ め られ て い る。 ゲ ン カ ンの 増 加 の 主 な理 由 は、 サ シ カ ケ 部 分 の ゲ ン カ ンが モ ヤ 前 面 に移 動 す るか らで あ る。 ロ ー カ ・階段 は他 の 部 分 へ 移 動 す る。 現 代0型 に お け る最 大 の 特 色 は 、 居 室 の圧 倒 的 な 増 加 で あ る。 フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス を有 しな い 現 代 の0型 は 、本 来 フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス の あ るべ き スペ ー ス の 約 半 分(47.0%)を 居 室 に し、 残 り半 分 を 旧来 のS系 空 間 と して い る の で あ る。 こ れ は従 来 の モ ヤ 前 面 へ のS系 空 間 集 約 、逆 に い え ば 後 部 へ のL系 空 間 集 約 とい う住 空 間構 成 手 法 の 解 体 を意 味 して い る。ネ ブ キ ゴ ヤ の 前 面 サ シ カ ケ に始 ま っ て 、柱 建 て の クズ ヤ や イ タヤ の モヤ 前 面 に組 込 ま れ た フ ロ ン ト ・ス ペ ー ス も現 代 に至 っ て 解 体 す る こ と を余 儀 な くされ た。 3.4モ ヤ 主 要 部 の室 配 置 状 況 モ ヤ 主 体 空 間 の う ち フ ロ ン ト・ス ペ ー ス を有 す る もの は そ の 残 余 の 部 分 、 そ れ を有 しな い もの は モ ヤ 全 体 が モヤ 主 要 部 で あ るが 、この 部 分 は 全 住 空 間 に お い て もっ と も大 き く中 心 的 な位 置 を

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占め る とこ ろ で あ る。 こ こ は室 の 列 段 構 成 に よ っ て各 室 が配 置 され る部 分 で あ り、近 代 に お い て は ヒ ロマ ・ブ ツマ ・ネ マ に よ っ て構 成 され て い た 。現 代 に入 る と こ の 部 分 に も一 定 の 変 化 が 生 じ る。 まず 、 そ の 状 況 を表8-6に 示 す。 まず 最 初 に 、かつ て の ヒ ロマ 部 分 が ど の よ う に変 化 した か で あ る。先 の列 段 構 成 の と こ ろ で 述 べ た よ うに 、 ヒ ロマ は ほ とん どす べ て2分 割 され て い る。近 代 に お い て 平 均14,5畳 の 大 き さ を も って い た ヒロ マ は 、2室 に 分 割 して も それ ぞ れ の 室 は充 分 に1室 と して の機 能 を果 し う る大 き さ を もつ こ とが で きる。 た とえ ば 、6畳 と8畳 の2室 に分 割 す るな どで あ る。 そ して 、 実 際 こ の よ う な分 割 が 多 くみ うけ られ るの で あ る。 こ う した ヒ ロマ の分 割 は 、機 能 的 に み る と どの よ うな機 能 分 化 に 対 応 して い る の で あ ろ うか 。 そ こ で ヒ ロマ 本 来 の機 能 をふ り返 って み る と、本 論 第2章 の 図2-3に 示 して お い た よ う に、 お よ そ5つ の機 能 を も って い た。 す なわ ち、K2(火 ま わ り台 所)、D(食 事)、L(休 息 ・団 らん)、 R(接 客)、E(作 業)の5機 能 で あ る。 こ れ ら の機 能 の うち 、K2は 戸 外 のK、(水 まわ り台 所) と1体 化 し(上 水 道 ・ガ ス レ ン ジ の 流 し 台 セ ッ トの 普 及 に よ る)、K(台 所)と な り、 旧 来 のE機 能 は生 活 の 現 代 化 に よ り消 失 の 傾 向 に あ る。 した が って 、現 代 に お け る ヒロ マ 機 能 は 、K、D、 t、Rの4機 能 とな る。 問題 は これ ら4機 能 の 組 合 せ で あ る。 4機 能 に1室 つ つ を あ て が えぱ 、全 部 で4室 が 必 要 とな るが 、実 際 に は そ うは な らずKと1室 、 な い し2室 の 構 成 と な る。1ラ ン クの よ うな 小 住 居 で は 昔 な が らの 単 室 で 、 この 場 合 はKDLR す べ て が1室 の ヒ ロマ で処 理 され る が 、K・DLRに な る とKと1室 構 成 とな る。あ る い はKD・ LRの 場 合 も1室 構 成 とな る。K・D・LRやK・DL・R、KD・L・Rの 場 合 は2室 構 成 と な る。 これ らの詳 しい分 析 は 後 に ゆ ず る と して 、 表 で はK・ 台所 と1室 構 成 な い し2室 構 成 を表 示 した 。 以 下 、 表 につ い て み る。 K・ 台所 は52例 中27例(51.9%)が モヤ 内 に 入 っ て い る。 近 代 に お い て は 、K、(水 まわ り台所) は 、戸 外 か 前 面 サ シカ ケ部 分 に設 置 さ れ た か ら、Kの モ ヤ 内へ の 導 入 は 現 代 的 特 色 とい え よ う。 Kの 残 り25例(48.1%)は モ ヤ に は 入 っ て い な い が 、 サ シ カ ケ や 側 面 ツ ケ タ シ に 設 置 さ れ表 の1 室 な い し2室 と緊 密 に連 絡 さ れ て い る。 次 に1室 構 成 は52例 中27例(51.9%)、2室 構 成 は52例 中25例(48.1%)で 、 両 者 は そ れ ぞ れ ほ ぼ 同 率 で あ る。1室 構 成 は ラ ン ク の低 い と こ ろ に 多 く、2室 構 成 は ラ ン ク の高 い とこ ろ に 多 い の は と うぜ ん と し て 、1室 構 成 の1室 は 平 均8.3畳 とな り、8畳 程 度 の 室 がDLRやLRに 供 さ れ て い る こ とに な る。 ま た、2室 構 成 の2室 は 合 せ て 平 均13.1畳 で あ るか ら、6畳2室 あ るい は6畳 と8畳 の2室 がD、DL、LR、L、R等 に供 され て い る こ とに な る。 いず れ に し て も、 こ れ ら の 室 機 能 分 化 の 状 況 は 住 空 間 の 発 展 過 程 を考 え る うえ で 重 要 な ポ イ ン トに な る と こ ろ な の で 、こ こで は話 をモ ヤ 主 要 部 の 範 囲 に と どめ 詳 論 は全 住 空 間 を扱 う とこ ろ で お こ な う こ とに す る。 次 に ブ ツ マ に移 る。近 代 に お け るブ ツ マ の 保 有 率 は95.7%の 高 率 に 達 して い た が 、現 代 に お け

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