注)1.各 室 の 戸 数 は そ れ ら の 室 を有 す る住 居 の 戸 数 を示 す 。 2.各 室 の 面 積 は そ れ ぞ れ の1室 当 りの 畳 数 を示 す 。
1 包 1
るブ ツマ の保 有率 は65.4%で 約30%の 減 少 で あ る。こ の減 少 傾 向 は 、現 代 の 若 い世 代 の 信 仰 離 脱 とい うこ と も考 え られ るが 、 仏壇 を本 家 に お く分 家 の 場 合 もあ り、 また 、 旧来 の大 き な仏 壇 で は な く簡 易 な 仏壇 を祀 る場 合 もあ り(こ の場 合 は ブ ツ マ と して 計 上 して い な い〉、上 記 の 減 少 傾 向 か ら一一概 に 当 山村 の浄 土 信 仰 の減 退 を結 論 づ け る こ とは で きな い が 、む し ろ現 代 に お い て もな お60
%強 の住 居 に伝 統 的 な ブ ツマ が 存在 す る こ とは 見 逃 せ な い 。な お 、ブ ツ マ の 平 均 面積 は 、近 代7.4 畳 、現 代7,8畳 で変 る と こ ろが な い 。 また 表 中 、B.仏 壇 入 は1戸 しか 計 上 さ れ て い な いが 、 大 半 は 背面 ツ ケ タ シ に外 化 して い るの で あ る。
次 にネ マ に移 る。 まず ネ マ の 平 均 室数 をみ る と、近 代1.6室 、現 代1.3室 で や や 減 少 して い る。
次 に ネ マ の 平 均 面積 を み る と、近 代5.6畳 、現 代6.2畳 でや や 増 加 して い る。 つ ま り、現 代 の 方 が ネ マ の 規 模 拡 大 を計 り、 その た め 室 数 の 減 少 を きた した とい う こ とで あ る 。近 代 に お い て は、2
〜4畳 の 小 さ な ネ マ が み られ た が 、現代 においては近世 的なナ ン ド的ネ マは消失 してい るの で あ る。
次 にC.押 入 で あ る。近 世 の 民 家 に は押 入 とい っ た収 納 ス ペ ー ス は ほ とん ど皆 無 で あ った が 、近 代 に入 る と当 山村 に お いて も押 入 が 普 及 しは じめ 、 戸数 比 率 に し て27.1%の 住 居 に1.3畳 の 押 入 が み とめ られ た。 この 傾 向 は 、現 代 に入 る と さ ら につ よめ られ 、 戸 数 比 率 に して34.6%、 平 均 面 積1.5畳 に増 加 して い る。
次 にT,床 の 間 につ い て み る と、戸 数 比率 に して5.7%か ら13.5%に 微 増 して い るが 、 も と も と 床 の 間 の 設 置 率 は低 く、 再 三 述 べ て い る よ うに近 世 の 武 家 住 居(書 院造)の 流 れ を くむ 座 敷 は ほ とん ど移 入 さ れ て い な い 。接 客 と い う観 点 か らみ る と、先 の ヒロ マ分 割 に よ るRの 方 が は る か に 大 き な意 味 を も ち、 こ こに 床 の 間 は 設 け られ な い 。 山村 文 化 の 一 端 を み るお もい が す る。
次 にE.エ ン につ い て み る と、近 代 も現 代 も低 率 で あ る。こ れ は も ち ろん モヤ 内 に設 け られ た エ ン につ い て の 話 で あ り、側 面 ツ ケ タ シ な ど の エ ン につ い て は 次 項 以 下 に述 べ る。強 い て い えば 戸 数 比 率 に して微 増 で あ り、 エ ンの モヤ へ の 空 間 内化 の 徴 候 が うか が え よ うか 。
最 後 に そ の 他 の と こ ろ で あ る が、現 代 に お け る大 きな特 色 と してS.ロ ー カ ・階 段 の設 置率 が 激 増 して い る こ とで あ る。近 代 に お け る こ の種 の スペ ー ス は 、前 面 の サ シ カ ケ や モヤ 内部 で も フ ロ ン ト・ス ペ ー ス で処 理 さ れ 、 モ ヤ 主 要 部 に まで 入 っ て くる こ とは な か っ た 。 それ が現 代 に お い て は 、戸 数 比 率 に して61.5%も あ る。 こ れ は簡 単 に い え ば 、 モ ヤ 主 要 部 の動 線 処 理 の 問題 で あ り、
ロ ー カ ・階段 に よ る室 空 間 の分 離 傾 向 を示 して い る。 旧来 の 室 空 間 は 、 板 戸 ・フ ス マ 等 に よ る間 仕 切 で 田字 型 に 室 が 連 続 し て い た が 、 こ う した 連 続 的 室 空 間 を ロー カ ・階 段 で 分 断 ・隔 離 し よ う
とす る新 しい傾 向 で あ る。 ま た、玄 関 ホ ー ル の 拡 充 な ど も この 種 の ス ペ ー ス増 加 傾 向 を助 長 して い る。
ま た、 そ の他 の 欄 の そ の他 はG,ゲ ンカ ン、W.便 所 、F.浴 室 、0.洗 場 、D.洗 面 所 で あ るが 、 現 代 に お け る これ らの 増 加 傾 向 に も注 目 して お き た い 。近 代 にお い て は 、 これ らの ス ペ ー ス も先
の ロー カ ・階 段 と同 じよ うに 、 前 面 の サ シ カケ や フ ロ ン ト・ス ペ ー ス で 処 理 され た も の で あ るが 、 こ れ が モ ヤ 主 要 部 に も入 って きて い る。 こ う し た現 象 は 、結 局 現 代 の平 面 計 画 が 近 代 の 定 型 化 し た 平 面 計 画 か ら脱 皮 し、 自由 度 を え よ う とす る萌 芽 で あ る こ と を指 摘 して お きた い。
3.5背 面 ツ ケ タ シ の 付 設 状 況
近 代 に お い て は 、 モ ヤ の 背 面 に ツ ケ タ シ を付 設 す る も の が 多 く、 そ の 付 設 率 は78.6%に 及 ん で い た 。 い わ ゆ る ブ ツ ダ ン ダ シ で あ る 。 こ の 背 面 ツ ケ タ シ は 、現 代 ど の よ うな状 況 に あ るの で あ ろ
う か 。 近 代 と対 照 し た 諸 数 値 を 表8‑7に 示 す 。
ま ず 背 面 ツ ケ タ シ の 付 設 率 で あ る が 、 そ れ は 近 代78.6%、 現 代76.9%で ほ と ん ど 変 ら な い 。 背 面 ツ ケ タ シ(ブ ツ ダ ン ダ シ)の 伝 統 は 現 代 に お い て も ま だ 根 づ よ く継 承 さ れ て い る 。 次 に 付 設 状 況 に つ い て み る と 、 全 面 付 加(モ ヤ 背 面 全 面 に 付 加)は 、 近 代34.3%、 現 代42.3%、 部 分 付 加 は 近 代44.3%、 現 代34.6%と な り、 現 代 の 方 が や や 全 面 付 加 が 多 い が 大 差 は な い 。 す な わ ち 、 付 設 状 況 に お い て も現 代 は 近 代 と変 ら な い 。
次 に 背 面 が ツ ケ タ シ の 奥 行 寸 法 に つ い て み る と 、0.5間 以 下(大 半 は0.5間)は 近 代42.9%、 現 代53.8%で 現 代 の 方 が 半 間 奥 行 の も の が や や 多 く な っ て い る 。0.5〜1.0間 の も の は 近 代 も現 代 も ほ と ん ど 等 し い 。 も っ と も 大 き な 差 の あ る の は1.0間 以 上 の も の で 、 近 代14.3%、 現 代1.9%と な り、現 代 で は こ の 種 の ツ ケ タ シ は1例 しか な い 。奥 行1.0間 以 上 の 背 面 ツ ケ タ シ は 、 た ん な る ブ ツ ダ ン ダ シ で は な く ブ ツ マ を も 突 出 す タ イ プ で あ り、 近 代 で は こ の タ イ プ が10例 み ら れ た が 、 現 代 で は ブ ツ マ を モ ヤ 内 部 で 処 理 す る た め 突 出 す も の は1例 に す ぎ な く な っ て い る 。 な お 、 奥 行 0.5〜1.0間 は 、4.5尺 で0.5間 に 比 べ て 大 き な 仏 壇 ス ペ ー ス を え る た め の も の で あ る 。
次 に 背 面 ツ ケ タ シ の 階 数 に つ い て み る と 、現 代 は す べ て 平 屋 で あ り2階 建 が な い 。 近 代 に お い て は2階 建 が13例(18.6%)み ら れ た 。 こ の 変 化 は 結 局2階 部 分 の ス ペ ー ス 増 の 問 題 と 関 連 す る 。 近 代 に お い て は 、背 面 ツ ケ タ シ を付 設 す る 場 合 こ れ を2階 建 と し ア マ の 収 納 ス ペ ー ス の 増 強 を 計
っ て い た が 、 現 代 に お い て は そ の 必 要 性 が な く平 屋 が 全 数 を 占 め る こ と に な っ た 。
さ て 次 に 背 面 ツ ケ タ シ の 内 容 に 移 ち が 、そ の 前 に ツ ケ タ シ そ の も の の 平 均 面 積 を み て お く と、
近 代3.7畳 、現 代3.6畳 で ほ と ん ど 同 等 で あ る 。 こ の 同 等 性 は ブ ツ ダ ン タ シ の 本 来 的 意 味 を よ く示 し て い る 。 す な わ ち 、 背 面 ツ ケ タ シ の 用 途 と してB.仏 壇 入 に 利 用 して い る も の は 、 近 代65.7%、
現 代57.7%で 現 代 の 方 が や や 減 少 気 味 で あ る が 、約6割 が 旧 来 の ブ ツ ダ ン ダ シ の 伝 統 を 守 っ て い る こ と が わ か る 。 ま た 、 仏 壇 入 の 面 積 は 、 近 代2.0畳 、 現 代1.9畳 で こ れ も 伝 統 の 遵 守 と い え る 。 次 にC.押 入 の 用 途 に 使 用 し て い る も の は 、近 代44.3%、 現 代61.5%で 現 代 の 方 が や や 高 率 に な っ て い る 。 こ れ は 近 代 以 降 急 速 に 進 行 す る 押 入 ・物 置 な ど の 収 納 ス ペ ー ス の 新 設 ・増 強 と軌 を 一 に す る も の で あ り 、背 面 ツ ケ タ シ も こ の 合 理 化 傾 向 に 一 役 か っ て い る わ け で あ る 。次 に □.ブ ツ マ の 低 率 な こ と に つ い て は 先 に ふ れ た が 、T。 床 の 間 、E.エ ン 、 そ の 他 は も と も と低 率 で あ り な お
現 代 ・山村 住 居 の 背 面 ツ ケ タ シ の 付 設 状 況 と内 容 表8‑7
ラ モ ヤ ン 間口 長 ク さ
商
全 戸 数 芦星
背 面 ツ ケ タ シ の
付 設 状 況
(戸)
背 面 ツ ケ タ シ の
奥 行 長 さ
(戸)
階 数
(戸)一 一
背 面 ツ ケ タ シ の 内 容(空 間機能)
面
障
計 璽
V
I
B.仏 壇 入 C.押 入 口.プ ツマ T.床 の 間 E.エ ン そ の 他
全 面 付 設
部 分 付 設
一 な
し O.5
問 以 下
0.5 1 1.0 間
1.0 間 以 上
平
屋 2 階 建
戸 数 β口
面 猿 竺
戸 数 芦口
面 養 鴛
戸 数 β星
面 猿 竺
戸 数 芦
v
面 藝 堂
面 藝 坐
戸 数 芦口
面 猿 廷
12.O II2.5 Hl3.O IV3,5 V4.O V14.5
5 1 12 26 7 1
一
一
5 13 4
‑
1
2 1 4 10 1
一
3
‑
3 3 2 1
1 1 6 18 2
一
1
‑
3 4 3 一
一
一
一
1
‑
一
2 1 9 23 5
一 一
一
一
冊
一
一 1.8 2.0 3.0 3.7 5.〇
一
1 1 7 17 4
一 1.0 1.5 22 1.8 2.1 一
1 1 6 21 3 一
2.0 0.5 1.5 2.1 1.7 一
一
一
1 1 一
一 一 一
4.0 2.0 一
一
一
一
3 1
一 一 一 一
〇.8 L5
一 一
一
一
1 4 一
一 昌 1
3.5 2.0
1
‑
1 一
一
一
0.5
‑
3.0
‑
一
一
現 計平均 代(%)
5Z (100、0)
I I22
(42.3) 18 (34.6)
12 (23.1)
28 (53.8)
11 (21。2)
1 (1.9)
40 (76.9)
一 (一)
3.6 30 (57.7) L9
32
(61.5) 1.9 2 (3.8) 3.0
4 (7.7) 1.0
5 (9.6) 2.3
2 (3.8) 1.8 近 計平均
代(%) 70 (100.0)
1 24 (34.3)
31 (44.3)
15 (2L4)
30 (42.9)
15 (21.4)
10 (14.3)
41 (58.6)
13 (18.6) 3.7
46 (65.7) 2.0
31 (44.3)
1.5 9
(12.9) 4.0 8 (11.4) 0.5
9 (12.9) 2.6
4 (5.7) 1.3
1 罐 i
かつ 近 代 と現 代 の 差 は ほ とん ど な い 。た だ 背 面 ツ ケ タ シ部 分 に 、床 の 間 や エ ンが 少 数 例 み られ る とい うこ とは 、モ ヤ 背 後 の 室 が ザ シ キ 的 に 考 え られ る場 合 が 近 代 、現 代 に共 通 し て若 干 は あ る と い うこ とで あ る。 この こ とは 、逆 に い え ば奥 ま った とこ ろ に ザ シ キ を 配 置 す る とい う書 院 造 的 計 画 理 念 が 、 この 山村 に は ほ とん ど皆 無 で あ る とい うこ とを意 味 して い る。
3.6側 面 ツ ケ タ シの 付 加 状 況
側 面 ツ ケ タ シ は近 代 に 発 達 した付 加 空 間 で あ り、 主 と して エ ン を 付 設 す る た め の もの で あ っ た。 しか しそ の 後 、側 面 の ツ ケ タ シは モヤ の 空 間 機 能 を補 足 し な い拡 充 す る た め に さ ら に発 展 す るの で あ るが 、 そ れ の現 代 的 状 況 は ど うな っ て い る で あ ろ うか 。 そ の あ た りの 状 況 を、 あ らか じ め 表8‑8お よ び表8‑9に 表 示 して お く。
まず 、 側 面 ツ ケ タ シの 付 加 状 況 に つ い て み るが 、 モ ヤ 両 側 に こ れ を付 加 す る もの は 、近 代87.1
%、 現 代67.3%で 約20%の 減 で あ る。ま た 、左右 いず れ か 片 側 に こ れ を付 設 す る もの は、近 代11.4
%、 現 代25.0%で や や 増 加 して い る。次 に 左右 い ず れ に もこれ を付 設 しな い もの は 、近 代1.4%、
現 代7.7%で 微 増 で あ る。これ らの 諸 数 値 か らみ て 、全 体 と して側 面 ツケ タ シ は若 干 減 少 気 味 で あ るが 、 それ で も92.3%の 戸 数 が どの よ う なか た ち で あ れ 側 面 ツ ケ タ シ を付 設 して い る事 実 は、や は り伝 統 的 な モ ヤ ・ツ ケ タ シの 空 間 構 成 を墨 守 し て い る と い わ ね ば な らな い 。
次 に側 面 ツ ケ タ シ の付 加 率(側 面 の何%に ツ ケ タ シが 付 設 され て い るか)を み る と、 左 側 面 に つ い て は近 代79.7%、 現 代81.3%、 右 側 面 につ い て は 近 代79.2%、 現 代76.7%で い ず れ も大 差 が
表8‑8現 代 ・山村 住 居 の 側 面 ツ ケ タ シ の付 加 状 況 ラ モヤ
ン 間 ク さ
畏 箇
全 戸 数
芦
口側 面 ツ ケ タ シ の
付 加 状 況
(戸)
側 面 ツ ケ タ シ の 付 加 率(%)
階 数(戸)
左 側 面 右 側 面
に両 あ側 り面
の左 側 み面
の右 側 み 面
に両 な側 し面
左 側 面
右 側 面
平 屋
2 階 建
平 屋
2 階 建 12.O
II2.5 1113.O IV3.5
V4.O VI4.5
5 1 12 26 7 1
4 1 8 16 6
一
1
:
4
二
:
2 5
‑
1
:
2 1 1
一 75.4 77.8 71.5 86.4 82.7 一
84.0 100.0 62.2 79.3 85.8 56.5
4
‑
8 16 6
一
1 1
‑
4
二
4 1 7 17 4 1
:
3 4 2
一
現 平均計 代(%)
52 (100.0)
35 (67.3)
5 (9.6)
8 (15.4)
4
(7.7) 81.3 76.7 34 (65.4)
6 (11.5)
34 (65.4)
9 (17.3) 近 平均計
代(%)
70 (100.0)
61 (87.1)
5 (7.1)
3 (4.3)
1 (1.4)
一
79.7 79.2
一 42 (60.0)
24 (34.3)
37 (52.9)
27 (38.6)