月の
crater サイズ分布と衝突微惑星の質量分布
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2011 年度卒業研究―
08S1-009 金子 裕樹 明星大学理工学部物理学科天文学研究室 (提出日; 2012/2/14 )要旨
クレーターサイズ分布は衝突体に関する情報を内包していて、クレーターサ イズ分布を調べることにより、相対的に惑星の進化について探っていくことが できる。我々にとって、身近な天体である月のクレーターサイズ分布からもそ のような情報が得られるわけであるから、非常に興味深く思った。 本研究は、月のクレーターサイズ分布を調べ、サイズ分布から読み取れる情 報に注目し、「クレーターや衝突物体の数と大きさにはどのような関係があるの か」や「月に衝突した物体の特性はどのようなものか」について考えていくこ とを目的とする。 研究は、「直焦点撮影法」で月の撮像データを集め、画像解析ソフトの計測ツ ールを用いることによって、どの大きさのクレーターがいくつあるか数え、ク レーターのサイズ分布を求めていった。 その結果、クレーターや衝突物体の数と大きさは相関関係にあることがわか った。また、海と高地のクレーターサイズ分布の比較によって海より高地のほ うが古い地形であることが確認できた。 衝突物体の特性については、衝突物体の大きさはその物体の衝突で作られた クレーターの大きさの約1/25 であることがわかった。このことから、衝突起源 の微惑星群は比較的小さな物体で満ちていると考えられえる。 研究課題として、5 ㎞以下のクレーターを観測できなかったことがあげられる。 この影響で、10 ㎞以下のクレーターの数と大きさに相関関係があるかわからな かった。これは、望遠鏡の口径と大気の状態を考慮して撮像を行うことで改善 することができ、今回の研究では見えてこなかった10 ㎞以下の範囲のクレータ ーの数と大きさの関係について結果が得られると期待できる。
目次
1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2. 撮像方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1 機材 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.2 撮像方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3. 画像解析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3.1 画像処理ソフト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3.2 月の撮像データより月の中心を求める ・・・・・・・・・・ 6 3.3 月の直径の角距離を求める ・・・・・・・・・・・・・・・ 8 3.4 1 分角が何㎞に相当するか、分→㎞の変換係数を計算する ・・ 9 3.5 クレーターの実際の大きさ(直径)を求める ・・・・・・・ 9 4. データ解析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 12 4.1 クレーターの数と大きさの関係 ・・・・・・・・・・・・・ 12 4.2 半径R のクレーターから放出された物体の全体積 VTを求める 14 4.3 クレーターの大きさと入射エネルギーの関係 ・・・・・・・ 17 4.4 エネルギーW から、衝突物体の質量と大きさを求める ・・ 27 5. 研究の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 5.1 データについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 5.2 高地のクレーターサイズ分布 ・・・・・・・・・・・・・ 32 5.3 海のクレーターサイズ分布 ・・・・・・・・・・・・・・ 38 5.4 海と高地のクレーターサイズ分布の比較 ・・・・・・・・ 55 5.5 衝突物体の特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 6. 議論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 6.1 データ解析から得られた両対数グラフから読み取れること 59 6.2 衝突物体の特性について ・・・・・・・・・・・・・・・ 61 6.3 課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 7. まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 8. 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 9. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 10. 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66‐3‐
1. はじめに
太陽系の歴史は衝突の歴史といっても良いほど、原始太陽系星雲誕生→微惑 星形成→惑星形成→現在の太陽系へと至るすべての場面で衝突現象は常に進化 の鍵であった。過去の衝突現象は今となっては再現できないが、現在惑星表面 に残るクレーターや小天体群のサイズ分布から探っていくことができる。 月面クレーターの形成年代はアポロ・サンプルの放射性元素を調べた結果の おかげで良く知られている。そのサンプルで得られた形成年代とクレーターの サイズ分布を比較し、詳しく調べることで、それらを作った衝突体の正体に関 する手掛かりを得ることができると言われている。 また、アポロ・サンプルの放射性年代を調べた結果から得られた形成年代と クレーターのサイズ分布を比較することで、後期重爆撃期とよばれる惑星形成 期を数億年過ぎてから、太陽系の内側で再び極めて激しい隕石落下があったこ とがわかっており、この時期が生命誕生の時期と重なることから、生命誕生の 起源はここにあるのではないかともいわれている。 このように、クレーターサイズ分布は衝突体の力学的・物理的起源に関する 情報を内包し、様々な情報を我々に与えてくれる。また、クレーターは月だけ でなく、金星や水星、地球、火星、木星・土星の衛星などいろいろな天体でも 観測されるが、クレーターサイズ分布は月に限らず、様々な天体においても応 用できるのが魅力の1 つである。 クレーター密度を調べることで、相対的にその地形の形成年代を求める「ク レーター年代学」というものがあるが、これも月に限らずほかの天体でも応用 されている。 様々なことがわかるクレーターサイズ分布であるが、クレーターサイズ分布 は月の研究から発達したものであり、月という身近な天体からこのような情報 が得られるということに私は非常に興味を掻き立てられた。そこで、上に述べ たすべての基礎段階であるクレーターサイズ分布について改めて自らデータを 集めるところから調べたいと思った。 本研究では、月のクレーターサイズ分布を調べ、サイズ分布から読み取れる 情報に注目し、クレーターや衝突物体の数と大きさにはどのような関係がある のか、月に衝突した物体の特性はどのようなものかついて考えていくことを目 的とする。‐4‐
2. 撮像方法
2.1 機材
望遠鏡 望遠鏡は、口径の大きさに比例して分解能が良くなっていく。故に、口 径の大きい望遠鏡の方が、クレーターの観測に適している。しかし、シー イング(大気のゆらぎなど)の影響も口径の大きいものほど受けやすい。 このことを踏まえた上で、観測には10 ㎝屈折式望遠鏡*1をメインに使 用した。明星大学の天文台に設置されている40 ㎝反射式望遠鏡*2はより 詳しい解析を可能にするため、サブとして使用している。 *1 10 ㎝屈折式望遠鏡:Vixen ED103S *2 40 ㎝反射式望遠鏡:西村 カメラ 月はとても明るい天体であり、露出時間は短くて十分であるため熱ノイ ズの影響はあまり心配する必要はない。そのため、撮像には冷却CCD で はなくデジタル一眼レフカメラ*3を使用した。 *3 デジタル一眼レフ:NIKON D3100 Fig. 1. 撮像に使用した望遠鏡。(左)40 ㎝反射式望遠鏡 (右)10 ㎝屈折式望遠鏡‐5‐
2.2 撮像方法
撮像
撮像はカメラアダプター*4を使用し、望遠鏡に直接カメラを取り付け る「直焦点撮影法」で行っている。 *4 カメラアダプター:NK6 -EY-44- 露出時間
月のクレーターは欠け際が見やすく、欠け際から遠くなるほどクレー ターは観察しにくい。そのため、月面の全面にわたってクレーターを観察 するためには、様々な月齢の月を撮像する必要がある。 月の明るさは欠けた部分の広さによって変わるので、月齢ごとに露出時 間を調整する。 望(満月)に近いほど … 露出時間 短 朔(新月)に近いほど … 露出時間 長 また、露出時間によって地形の見え方も異なってくるので、調整が必要 である。 地形の起伏を見やすく … 露出時間 長 海*5と高地*6のコントラストの違いを見やすく … 露出時間 短 *5 海:月の黒い部分で、主に玄武岩でできている。 *6 高地:月の白い部分で、主に斜長石でできている。‐6‐
3. 画像解析方法
3.1 画像処理ソフト
撮像データを解析時に使い易いよう処理したり、解析を進めたりする には、画像解析ソフトが必要不可欠である。 画像解析ソフトは、アストロアーツ社の天体画像処理ソフウェア「ス テライメージ」を使用した。3.2 月の撮像データより月の中心を求める
画像解析の目的は、クレーターの実際の大きさを求めることにある。 しかし、ステライメージの計測ツールでは距離は角距離で表示される ので、単純にクレーターに物差しをあてただけでは実際の距離を知るこ とはできない。そこで、1 角距離(ここでは分)が実際の何㎞に相当する かを求める必要がある。 1 分角が何㎞に相当するかを求めるためには、ある場所の角距離とその 角距離の実際の大きさを知らなくてはならない。ここでは、月の直径は 既知のものであるとし、それを用いて 1 分角→㎞の変換係数を求めてい く。 角距離を求める際、月の中心点を通るように月の直径を計測すること で、より正確な月の直径の角距離を求めることができるので、まず月の 中心点を求めることから始める。 中心点を求める撮像データは満月のデータを使用する。満月といって も実際には撮像データは真円ではない。ここでは、解析を進め易いよう 満月は真円であると仮定し、月の中心点を求めることにする。 真円と仮定 Fig. 2. 月齢 14.4 の月 (2011.9.12)‐7‐ 満月の撮像データを使用した理由 月の中心を求める方法はいくつかある。例えば、月に接線を引き、そ こに法線を引く。これを2 回以上繰り返すと、1 つの法線同士の交点が生 じるはずである。それが月の中心となる。 上の方法ならば満月の撮像データでなくても月の中心は求められるが、 ステライメージでは月に正確な接線・法線を描くことは困難であるため、 満月のデータを使用し、以下に述べる方法を取ることにした。 ① ステライメージの四角ツール を使用し、円に内接する四角形を描 く。 注1) 月食など、特別な現象を除いて月は基本的に真円ではない(常 にどこかが欠けている)ので、なるべく欠けている部分は避け て四角を描く。 ② ステライメージの直線ツール を使用し、①で描いた四角形に対角 線を引く。 →その対角線の交点が円(月)の中心O となる。 ∵)円に内接する直角三角形は中心O を通る。 より
‐8‐ ③ ①、②の作業を数回繰り返す。 何度か作業を繰り返すことによって、信頼性を高める。
3.3 月の直径の角距離を求める
ステライメージの計測ツール を使用し、月の直径の角距離を求める。 3.2 節で求めた月(円)の中心 O を通るように月の直径を計測することに よって、より正確な角距離を求めることができる。 計測は5 回行い、その平均を求める。 注2) 月食など、特別な現象を除いて月は基本的に真円ではない(常 にどこかが欠けている)ので、なるべく欠けている部分を避け て計測する。 注3) 月から観測点(地球)までの距離は毎日変わってくるので、月 の見かけの大きさも毎日変わる。そのため、1 分角における実 際の距離も毎日変わってくるので注意する必要がある。 Fig. 3. ステライメージに て中心O を求めた月‐9‐
3.4 1 分角が何㎞に相当するか、分→㎞の変換係数を計算する
月の実際の直径は、三角測量を用い地球から月までの距離を求め、月 の視直径を測定することで求められるが、今回は月の実際の直径は既知 のもので、3476.184 ㎞であるとする(天文年鑑より)。 1 分角が何㎞に相当するかは、以下の式で求めることができる。 1 分角が何 km に相当するか =月の実際の直径(km) 月直径の角距離(分) ⋯ (3.1) 3 回分の満月の撮像データ(8 月 15 日、9 月 12 日、10 月 12 日)の 「1 分角が何㎞に相当するか」を計算し、その平均をクレーターの実際 の直径を求めることに用いる。3.5 クレーターの実際の大きさ(直径)を求める
衝突物体の入射角がかわるとクレーターの形がかわると考えられやす いが、音速を超えた衝突実験(Gault、1978)によると、入射角がきわめ て低角(入射角𝜃が 0 に大変近いところ)を除いては、衝撃点から均等に 広がる衝撃波で丸く穴を穿つため、クレーターの外形は入射角によらず ほとんど円形になるということがわかっている。 しかし、月の撮像データを見ると、月面像中心から離れたところにあ るクレーターは楕円形に見える。これは、月が球であるため、月面像中 心から離れたところにあるクレーターを、観測者は斜めから見るという 形になるからである。 楕円の短軸は、円を斜めから見ることで 縮んで見えるためである。 楕円の長軸はおよそ直径そのものである と考えられる。 Fig. 4. 月面像中心から離れた ところにあるクレーターは楕円 に見える‐10‐ 使用する撮像データの向きを揃える クレーターは欠け際で見えやすくなるため、様々な月齢の撮像データを 見比べながら計測を進めていく。 しかし、それぞれの撮像データは他のものと月の向き(構図)が違って いるため、そのままでは互いの撮像データの同じ位置を見比べることは非 常に大変な作業である。 データの比較をしやすくするため、ステライメージの合成ツール(モザ イク合成)を使用し、それぞれのデータの向きを揃える。 手順は以下の通りである。 ① 2 枚の画像を繋ぎ合わせるために使用する、基準点を設定する 1. 向きを揃えたい画像を 2 枚ステライメージで開く。 2. 基準点指定ツール を使用し、2 枚の画像に基準点を 2 点ずつ 指定する。 ② 2 枚の画像をモザイク合成する 1. 合成メニューの「モザイク合成」をクリックする。 2. ダイアログが表示されたら、「ウィンドウ」を向きの整えたい画 像のものに切り替え、「OK」をクリックする。
‐11‐ 以下の手順で実際のクレーターの大きさを求める ① ステライメージの計測ツール を使用し、撮像データのクレーター の長軸の角距離(分)を求める(5 回計測し、その平均を求める)。 ② ①で求めた角距離(分)に「1 分角が何㎞に相当するか」の変換係数 を用い、分→㎞の単位変換をし、実際のクレーターの大きさ(㎞)を 計算する。 ③ 計測したクレーターと未測定のクレーターと区別しやすいよう、測定 したクレーターにはステライメージの文字ツール を用い番号を付 ける。 注4) シーイングの影響によって像がゆらぐことで、小さなクレータ ーが見えなくなることがある。 注5) 天候が曇りの場合、クレーターが見えにくくなる。特に、小さ なクレーターは見えなくなることがある。 ここで上げた、注 4)、注 5)はデータ解析結果の誤差の原因となりう るので注意が必要である。
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4. データ解析方法
4.1 クレーターの数と大きさの関係
クレーターの数と大きさの関係を表すグラフを「クレーターサイズ分 布(N-D グラフ)」という。サイズ分布には「累積度数分布」、「サイズ頻 度分布」、「R プロット」といった種類があり、それぞれデータの取り方 が異なる。 Table 1. 各サイズ分布の手法 サイズ分布の種類 手法 累積度数分布 あるサイズより大きいクレーターを全部足し合 わせて統計を取る。 サイズ頻度分布 あるサイズ範囲のクレーター数を数えてヒスト グラムを作る。 R プロット 一般にサイズ頻度分布において、クレーターや 小天体の個数がサイズの 3 乗におよそ反比例す ることがわかっているので、クレーターサイズ 頻度分布の統計を直径の 3 乗で規格化し、直径 の 3 乗に反比例する分布からの詳細なずれを測 定する。 今回は「累積度数分布」を用い、クレーターの数と大きさの関係を追 っていくことにした。 横軸にクレーターの大きさD ㎞、縦軸にその大きさ以上のクレーター の累積個数N 個を取り、画像解析結果を両対数グラフにプロットする。 クレーターの累積個数は、大きさ1 ㎞以上、10 ㎞以上、20 ㎞以上、30 ㎞以上…と取り、グラフにプロットする。 衝突物体の累積個数は、大きさ0.1 ㎞以上、0.5 ㎞以上、1.0 ㎞以上、 1.5 ㎞以上…と取り、グラフにプロットする。‐13‐ なぜ両対数グラフを用いるのか? 実験のデータ等をグラフに取っていくと、それに何らかの規則があれ ば、多少誤差が含まれていてもFig.5(左)のように、その様子がぼんや り見えてくる。しかし、その関係が曲線である場合、Fig.5(右)のよう にそれがどんな式にあてはまるのかを見出すことは容易ではない。 例えばそれが𝑦 = 𝐴𝑥 のように𝑥 に比例する関係なのか、𝑦 = 𝐵𝑥 のよ うに𝑥 に比例する関係なのかを目で見極めることは非常に難しい。さら にそのデータの誤差が含まれていることを考えると、それを行うのは現 実的ではない。 しかし、これを対数グラフに書くと、その見かけの位置は、 𝑋 = log 𝑥 , 𝑌 = log 𝑦 なので、例えば𝑦 = 𝐴𝑥 という関係の場合、両対数グラフでの見かけの位 置は
𝑌 = log 𝑦 = log 𝐴𝑥 = log 𝐴 + log 𝑥 = log 𝐴 + 2 log 𝑥 = 2𝑋 + log 𝐴 となり、すなわち𝑦 = 𝐴𝑥 の両対数グラフでの見かけのグラフは「傾きが 2 の直線」となる。 同様に、𝑦 = 𝐵𝑥 のグラフも、両対数グラフでは見かけは「傾きが 3 の 直線」になり、結局これらは両対数グラフの直線になり、そしてその違 いはその直線の傾きで知ることができるようになる。このように、両対 数グラフを用いることにより、様々なデータの関係を見ることができる わけである。 ゆえに、両対数グラフを用いることによってクレーターの数と大きさ はどのように関係しているのかを見てゆくことができるのである。 Fig. 5. (左)実験データのグラフの例 (右)曲線的な関係の例
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4.2 半径
R
のクレーターから放出された物質の全体積
V
Tを求める
クレーターから放り出される岩片や土砂はクレーターのまわりに堆積 し、クレーターの縁の高まりを作ると同時に、その下にあった既存のク レーターを埋めたり、崩したりして地形を変形させる。したがって、ク レーターから放出される物質の量や、放出時の速度、放出物の体積の様 子を明らかにすることは惑星地形学上の重要問題のひとつである。 ヒューストンの月・惑星科学研究所のマクゲッチンらの、核爆発や火 薬爆発によって作られたクレーターや月のクレーターからの放出物の分 布についての規則性の研究からFig.6 が得られている。 (図4.3) 放出物の堆積はクレーターの縁で最も厚くなる。そのクレーターの縁 における堆積物の厚さT は、クレーターの半径 R が大きいものほど厚く なり、Fig.6 にみるように、T と R の関係はほぼ次式であらわされる。 𝑇(m) = 0.14𝑅 . (m) ⋯ (4.1) 上の式は半径 1 ㎞以上のクレーターについて成り立つ近似式であり、半 径1 ㎞以下のクレーターに対しては 𝑇(m) = 0.04𝑅(m) ⋯ (4.2) のほうがよい。 Fig. 6. クレーターの縁における体積物の厚さとクレータ ーの直径の関係(McGetchin ら、1973 による)‐15‐ 一方、ひとつのクレーターのまわりの放出堆積物について注目すれば、この堆 積物の厚さはクレーターから遠ざかれば遠ざかるほど薄くなる。この変化の様 子をFig.7 がしめしている。 (図4.4) クレーターの中心からの距離r(≧R)の所にある堆積物の厚さの関係 は次の式であらわされる。 𝑡 = 𝑇 𝑟 𝑅 ⋯ (4.3) ここで R はクレーターの半径、T はクレーターの縁における堆積物の厚 さ、B は定数である。核爆発によるクレーターからの放出物の分布は B の値が3.5 であることをしめしているが、これは大気の抵抗によって放出 物が遠方まで飛散するのが妨げられる効果を含んでいる可能性がある。 したがって大気の薄い月や火星、水星のような惑星では、B の値が 3 に なるだろうというのがマクゲッチンらの推定である。そこで、(4.1)式と Fig. 7. クレーター周辺の体積物の厚さ とクレーター縁からの距離との関係。図中 のB は(4.3)式の B の値。 (McGetchin ら、1973 による)
‐16‐ (4.3)式を組み合わせて、放出堆積物の厚さをクレーターの中心からの 距離と、クレーターの直径との関数として書くと、 𝑡 = 0.14𝑅 . 𝑟 𝑅 ⋯ (4.4) が得られる。これを利用すると、半径 R のクレーターから放出された物 質の全体積VTは次式で得られる。 𝑉 = 4𝜋 𝑡 ∙ 𝑟𝑑𝑟 = 2𝜋𝑇𝑅 ⋯ (4.5) また、クレーターの中心から r の距離より遠方にある堆積物の総体積は 同様の計算より 𝑉(𝑟) = 𝑉 𝑅 𝑟 ⋯ (4.6) となる。
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4.3 クレーターの大きさと入射エネルギーの関係
アメリカのネバダ州やアリゾナ州の砂漠で行われたいろいろの火薬の 爆発による穴は、Fig.8 にしめすように隕石の衝突によるクレーターと大 変よく似ている。そこで火薬の爆発によるクレーター形成のメカニズム と、隕石の衝突によるクレーターの形成メカニズムは全く同じとはいえ ないけれども、ある大きさのクレーターを作るのに必要なエネルギーは、 それと同じ大きさの穴を作った火薬のエネルギーから大体知られると考 えてよいであろう。 しかし、火薬の爆発の程度はもちろん火薬を埋める土地の性質や、火 薬を埋めた深さにも大変依存するので、事態はそれほど簡単でない。隕 石の衝突によるクレーターと関連するのは、爆薬が比較的浅い場所に埋 められた場合のものと考えられるので、このような場合の実験だけに限 ってデータを整理すると、Fig.9 が得られる。 Fig. 8. 核爆発によって作られた直径 390m、深さ 98m のクレ ーター。地下 194m で 100 キロトンの核爆弾によって作られ たもの。(King、1976 による)‐18‐ 地盤が砂岩の場合と砂漠の沖積層の場合とでは、火薬のエネルギーが 同じでも、クレーターの大きさに1.3~1.4 倍の差ができることがわかる。 Fig.10 は、いろいろの実験室内でのデータや野外での実験におけるクレ ーターのエネルギーと半径の関係をプロットしたものである。Fig.10 か らクレーターの大きさと火薬のエネルギーの関係式として、次のものが 得られる。 (図4.7) Fig. 9. クレーターの直径と爆薬のエネルギーの関係。黒 丸は砂岩層での実験、白丸は沖積層での実験をしめす。 Fig. 10. 実験的に求めたクレーター形成のエネルギーとクレーター直 径との関係(Ahrens and O’keefe、1977 による)
‐19‐ 𝑅(cm) = 7.0 × 10 𝑊 (kg TNT) ⋯ 砂岩 𝑅(cm) = 5.4 × 10 𝑊 (kg TNT) ⋯ 沖積層土 火薬の1 ㎏ TNT*7は約106cal=4.18×1013エルグ*8に相当するので、上 の式はまた次のようにもあらわされる。 𝑅(cm) = 𝑐 ∙ 𝑊 エルグ ⋯ 砂岩 (4.7) 𝑅(cm) = 𝑐 ∙ 𝑊 エルグ ⋯ 沖積層 (4.8) ただし、c1=2.02×10-3 , c2=1.15×10-3 ここで、上の式は火薬のエネルギーが 1015エルグよりも大きい場合のも のであることに注意が必要である。 *7 TNT(トリニトロトルエン)とは高性能爆薬の名称である。1g TNT は、理論上は 1160cal の化学エネルギーを有するが、実際の TNT 爆薬1g の爆発で放出されるエネルギーは 980 から 1100cal である。計算 に便利なよう、1g TNT は 1000cal と定義されている。 *8 エルグ(erg)とは、CGS 単位系における仕事・エネルギー・熱量の 単位である。1erg=10-7J 火薬の爆発と隕石の衝突によるクレーターが全く同じであるわけでは ないから、やはり上の式を使うのにはそれなりの注意が必要である。 そこで実験室で実際に、標的にある物体を高速度で衝突させてクレー ターを作り、そこから衝突物体のエネルギーとクレーターの大きさの関 係を調べるという実験が行われた。 米国航空宇宙局(NASA)のエイムス研究センターのゴールト(Gault、 1973)は、玄武岩や花崗岩の標的に鉄、アルミニウム、ポリエチレン、 パイレックスなどをぶつけた場合の実験結果をまとめて次のような式を 得た。
‐20‐ 半径:𝑅(cm) = 0.75 × 10 𝜌 𝜌 𝑊 . エルグ ⋯ (4.9) 深さ:𝑑(cm) = 3.35 × 10 𝜌 𝜌 𝑊 . エルグ ⋯ (4.10) 𝑀 (g) = 8.68 × 10 𝜌 𝜌 𝑊 . エルグ ⋯ (4.11) ここで𝜌 は弾丸物質の密度(g/㎝ 3)、𝜌 は標的物質の密度(g/㎝ 3)、 d はクレーターの深さ、Meはクレーター形成にともなって飛散した物質 全体の質量である。この関係式はFig.11 でみるように弾丸物質のエネル ギーが10~1012エルグの範囲で比較的良く成り立っているようにみえる が、E<107エルグの範囲ではデータの数が少ないので注意を要する。 (図4.8) 弾丸のエネルギーがもっと大きくなると、上式(4.9)、(4.10)、(4.11) から(4.7)式に近いものに移行すると思われる。ゴールト(1976)はい ろいろのデータから次の式を推薦している。 Fig. 11. 弾丸の運動エネルギー(KE)とクレ ーターの生成によって飛散した物質の質量の 関 係 。 弾 丸 が 標 的 に 垂 直 に 入 射 し た 場 合 (Gault、1976 による)
‐21‐ 𝑅(cm) = 0.75 × 10 𝜌 𝜌 𝑊 . エルグ (sin 𝜃) ⋯ 𝐷 ≦ 10m (4.12) 𝑅(cm) = 1.25 × 10 𝜌 𝜌 𝑊 . エルグ (sin 𝜃) ⋯ 10m ≦ 𝐷 ≦ 100m (4.13) 𝑅(cm) = 1.35 × 10 𝜌 𝜌 𝑊 . エルグ (sin 𝜃) ⋯ 100m ≦ 𝐷 (4.14) ここで𝜃は弾丸の地面に対する入射角で、地面に垂直に入射する場合 𝜃 = 90° 、地面にすれすれに入射する場合を𝜃 = 0° とする。クレーター の 大 き さ が 大 き く な る と 、 ク レ ー タ ー の 大 き さ と 入 射 角 の 関 係 が 𝑅 ∝ (sin 𝜃) から 𝑅 ∝ (sin 𝜃) へ移る。いずれにしても、クレーターの大 きさは弾丸のエネルギーばかりでなく、その入射角に依存することは重 要な事実である。Fig.12 のゴールトの実験結果をみると(sin 𝜃) と (sin 𝜃) の違いは大変わずかである。R ∝ (sin 𝜃) になることはクレーター の大きさが、弾丸の入射速度の鉛直成分(標的表面の対して𝑣 = 𝑣 sin 𝜃) の 乗に比例すると考えれば説明がつけられる。
‐22‐ 以上の式には標的物質あるいは弾丸の破壊強度とか、堅さといった物 理パラメーターがあらわれていない。しかし直観的にもわかるように、 同じエネルギーを持った弾丸を使っても標的物質の堅さ、あるいは破壊 強度が大きいと、できるクレーターの大きさは小さいと考えられる。最 初にこのことを実験的にしめしたのは、エイムス研究センターのサマー ズ(Summers)とチャータース(Charters)の 2 人である。彼らはいろ いろの金属同士の衝突から実験的に次式を得た。 𝑅 = 𝑎 ∙ 1 𝛫 𝜌 𝜌 𝑊 ⋯ (4.15) ただし、 𝑎=3.564 ここでKsは標的物質の断熱非圧縮率である。 実際に、アルミニウム合金同士の衝突実験によるクレーターは、断熱 非圧縮率よりも、標的物質の伸張強度(tension strength)によることが 1966 年ロルステン(Rolsten)らによってしめされた。彼らの得た式は 次式である。 Fig. 12. 弾丸の入射角とクレーターの大きさの関係。入射角が垂直(90°)に近 い場合は(𝐬𝐢𝐧 𝐢)𝟏𝟑の曲線に近づく、入射角が30 度以下になると、(𝐬𝐢𝐧 𝐢) 𝟐 𝟑の曲線に近 くなる(Gault、1976 による)
‐23‐ 𝑅 = 4𝜋𝜎𝑚𝑣 = 2𝜋𝜎1 𝑊 ⋯ (4.16) ここで𝜎 は標的物質の伸張強度である。(4.15)式のように𝜌 、𝜌 が入 っていないのは標的物質と弾丸物質が同じものであるためである。この 式はクレーター半径が 0.3~3 ㎝の範囲の Al 合金の実験結果を大変よく 説明する。 (4.7)、(4.8)、(4.11)、(4.12)式はいずれもクレーター半径R が、弾 丸物質の運動エネルギーW の 乗に比例することをしめしている。すな わち、これらの式の係数が次の関係にあれば、それぞれの式は等価であ る。 𝑐 = 𝑎 1 𝛫 𝜌 𝜌 = 1 2𝜋𝜎 砂岩の標的に砂岩の弾丸が衝突する場合に上の関係が成り立つかどう か調べてみると、次のようになる。 𝑐 = 2.02 × 10 𝑎 1 𝛫 𝜌 𝜌 = 1.65 × 10 (𝛫 = 0.1Mbar∗ として) 1 2𝜋𝜎 = 0.68 × 10 (𝜎 = 0.5Kbar として) これらはお互いにほぼ等しく、(4.7)、(4.15)、(4.16)式はいずれも実験 データを満足するといえる。 これらの類似からクレーターの半径とそれを作ったエネルギーの大き さの間の関係式として、近似的に 𝑅(cm) = 10 𝑊 エルグ ⋯ (4.17) という式が得られる。これを書きなおすと、 𝑊 エルグ = 10 𝑅 (cm) ⋯ (4.18) が得られる。 *9 bar(バール)とは、CGS 単位系における圧力の単位の 1 つである。 1bar=105Pa
‐24‐ 重力加速度の影響について 上であげたクレーターの大きさとエネルギーの関係は、地球上で行われ た実験をもとにして得られたもので、この方程式がそのまま他の惑星に応 用できるとは限らない。 他の惑星や衛星での重力加速度は地球とはだいぶ違うため、もしクレー ターの大きさが、衝撃によって放出される物質の飛行距離や重力エネルギ ーによって左右されるとすれば、クレーターの大きさが惑星の重力加速度 によって影響をうけることはありえそうである。 そこで自由落下するジェット機や遠心力装置を使って重力加速度を変 えた実験室内でクレーターをつくる研究が行なわれた。代表的な結果とし て、ゴールトらの石英の砂の中にアルミニウムの弾丸を打ち込んだ時にで きるクレーターを調べて得られた結果がFig.13 である。 (図4.10) これは 𝑅 ∝ 𝑔 . ⋯ (4.19) という式でクレーターの半径と重力加速度𝑔の関係がよくあらわされる ことをしめしている。 もし他のことについては地球の場合と同じであれば、重力加速度の違う 天体におけるクレーターの大きさとエネルギーの関係は Fig. 13. 弾丸の運動エネルギーを一定にした時に生じ るクレーターの直径と重力加速度の関係(Gault and Wedeking、1977 による)
‐25‐ 𝑅 = 𝑐 𝑔𝑔 ♁ 𝑊 ⋯ (4.20) と表せる。𝑔♁は地球の重力加速度、c は定数で 𝑐 ≈ 1 × 10 エルグ ∙ cm である。このことから、もしいろいろの惑星に入射してくる物体(隕石) の大きさや速度が等しいならば、その結果できるクレーターはTable2 の ようになる。 Table 2. 惑星の表面重力とクレーターへの影響 𝑔(cm2/sec) 𝑔 𝑔♁ 水星 372 0.87 金星 887 0.75 地球 981 0.74 月 162 1.00 火星 373 0.87 小惑星(セレス) 29 1.33 木星の衛星(イオ) 161 1.00 エウロパ 133 1.03 ガニメデ 145 1.02 カリスト 97 1.09 注6) この Table では月にできるクレーターの大きさを 1 としてある。
‐26‐ 月での、クレーターの大きさと入射エネルギーの関係 Table2 を参考に重力の影響を考慮し、月でのクレーターの大きさと入 射エネルギーの関係を求める。 同じエネルギー下での月と地球にできるクレーターの大きさの違いは、 Table2 からわかるように、月で大きさ 1 のクレーターをつくるエネルギ ーは、地球では大きさ0.74 のクレーターをつくるエネルギーである。 ここで重要なのは、月と地球で同じ大きさのクレーターをつくるにあた って生じるエネルギーの違いである。(4.20)式を書きかえると 𝑊 = 𝑐 𝑔𝑔 ♁ 𝑅 𝑊 = 𝑐 𝑔 𝑔♁ 𝑅 ⋯ (4.21) が得られる。地球で生じたエネルギーの大きさを𝑊♁、月で生じたエネル ギーの大きさを𝑊☾ とし、Table2 を用いてそれぞれのエネルギーの大き さの関係を求めると 𝑊☾ = 𝑐 162 981 𝑅 𝑊☾ ≅ 0.41 ∙ 𝑐 𝑅 ∴) 𝑊☾= 0.41𝑊♁ したがって、同じ大きさのクレーターでは、月の入射エネルギーは地球の 約0.41 倍である。 このことから、月でのクレーターの大きさと入射エネルギーの関係は 𝑊 エルグ = 0.41 ∙ 10 𝑅 (cm) ⋯ (4.22) という方程式であらわされる。
‐27‐
4.4 エネルギー
W
から、衝突物体の質量と大きさを求める
衝突物体の質量と大きさは、 クレーターを作る際に生じたエネルギー= 衝突物体の運動エネルギー とすることで求めることができる。 衝突物体の質量を𝑚、速度を𝑣とかくと 𝑊 = 1 2𝑚𝑣 ここに(4.22)式を用いると 0.41 ∙ 10 𝑅 = 1 2𝑚𝑣 ⋯ (4.23) という関係が得られる。(4.23)式を書きなおすと 𝑚 = 2 𝑣 ∙ 0.41 ∙ 10 𝑅 ⋯ (4.24) が得られる。ここで、実際には衝突物体の形はまん丸ではないが、大体 の大きさを求めるため球であると仮定して、その半径を r、密度を𝜌とす ると 𝑚 =4 3𝜋𝑟 ∙ 𝜌 ∴) 4 3𝜋𝑟 ∙ 𝜌 = 2 𝑣 ∙ 0.41 ∙ 10 𝑅 𝑟 = 3 2𝜋𝜌𝑣 ∙ 0.41 ∙ 10 𝑅 𝑟 = 3 2𝜋𝜌𝑣 ∙ 0.41 ∙ 10 𝑅 (4.25) という関係が得られる。今回は、一般的な岩石(玄武岩など)が衝突し たと考え、𝜌=3.0g/㎝3、𝑣=10 ㎞/s と仮定する。 注7) 今回は CGS 単位系を用い計算を進めるので、単位に注意が必 要である。 距離…㎝、エネルギー…erg、重さ…g‐28‐
5. 研究の結果
5.1 データについて
解析場所 Fig. 14. 解析場所の全体像 既知の海 島の海‐29‐ サイズ分布の見方 サイズ分布の見方について、高地(エリアA)の解析結果をもとに解説 していく。 グラフの直線は、データの近似直線になっている。 関数は、近似直線の関数であり、クレーターの数と大きさの関係を示 している。関数のx はクレーターの直径D(㎞)、y は x 以上の大きさの クレーターの累積個数N(個)を意味する。 x の係数は「近似直線から求めた 1 ㎞以上の累積個数」を表し、実際に は解析エリア内に、この値程度の 1 ㎞以上のクレーターが存在している と考えられる。 x の次数は「クレーターの数と大きさの相関関係」を表し、この値が大 きいほど、クレーターの数と大きさの相関関係が強いことになる。 この関数からは、クレーターの大きさが大きくなるにつれ、数はおおよ そ2 次関数的に少なくなっていくことがわかる。 R 値とは「決定係数」と呼び、2 つの値の相関(関連性の強さ)を表す。 0 ≤ R ≤ 1の範囲であらわされ、値が大きいほど相関が強い。 近似直線の関数 x:クレーターの直径 y:累積個数 近似直線における1km 以上の累積個数 Fig. 15. サイズ分布の見方 相関関係
‐30‐ サイズ分布を見る上での注意 今回データの解析から得られたグラフの中には、1 ㎞以上の累積個数を キャンセルしているグラフがあるので注意が必要である。 1 ㎞以上の累積個数をキャンセルした理由は、観測できたクレーターの 大きさが最小のもので5 ㎞のものであるため、1 ㎞以上の累積個数が正確 でないと判断したためである。実際に、Fig.16 から 1 ㎞以上の累積個数 が他のものと比べ、極端に相関から外れることが見て取れる。 Fig. 16. 1 ㎞以上の累積個数を入れたグラフとキャンセルした グラフの比較。(上)1 ㎞以上の累積個数をキャンセルしたグラ フ(下)1 ㎞以上の累積個数を入れたグラフ
‐31‐ クレーター密度について クレーター密度とは、解析エリアの単位面積当たりにどれほどのクレー ターが存在しているかを表し、クレーター密度が高い地域ほど単位面積当 たりにより多くのクレーターが存在することになる。 また、月全面について一様の確率でクレーター生成が行われたと考える と、クレーター密度の違いから、おおよその地形形成年代の違いを見るこ とができる。 このようにクレーター密度から地形形成年代を追っていくことを「クレ ーター年代学」といい、クレーター密度が高いほど地形形成年代は古いこ とを表す。 実際に、単位面積当たりのクレーター密度を求めるためには クレーター密度= 領域内の全クレーター数 対象の領域の実面積 とすることで求めることができる。 写真上で月面像中心から離れたところの面積は、実面積よりも小さく見 えている。対象の領域の実面積を求めるには、その領域の中心を月面像中 心から測った角距離を𝜃とすると、 実面積= 対象の領域の写真上の面積 cos 𝜃 とすることで求められる。このcos 𝜃は、楕円形に見えるクレーターから 求めることができる。それは、楕円の短軸は、半径が斜めから見ることで cos 𝜃倍に縮められたものであるため、 cos 𝜃 =楕円の短軸 楕円の長軸 で表せるからである。 今回は、1 ㎞以上の累積個数が正確でないと判断しているため、実際の クレーターカウント数ではなく、近似直線から求めた 1 ㎞以上の累積個 数の値(x の係数)を用い、クレーター密度を求めることにした。
‐32‐
5.2 高地のクレーターサイズ分布
エリアA 解析エリアの面積:1862405.568 km2 解析したクレーターの数:758 個 クレーターの大きさ:(Max)237.595km、(Min)5.036km Table 3. 高地(エリア A)の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 758 個 90~ 26 180~ 2 10~ 656 100~ 18 190~ 2 20~ 360 110~ 13 200~ 2 30~ 207 120~ 7 210~ 2 40~ 128 130~ 4 220~ 2 50~ 85 140~ 4 230~ 1 60~ 57 150~ 3 240~ 0 70~ 44 160~ 2 250~ 0 80~ 35 170~ 2 260~ 0 Fig. 17. エリア A‐33‐ クレーター密度:1.304 × 10 個 km⁄
注8) 本研究でのクレーター密度は、直径 1 ㎞以上のクレーターの単 位面積当たりの密度を表す。
‐34‐ エリアB(海周辺) 解析エリアの面積:882852.994 km2 解析したクレーターの数:156 個 クレーターの大きさ:(Max)160.633 km、(Min)6.862 km Table 4. 高地(エリア B)の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 156 個 60~ 8 120~ 3 10~ 148 70~ 7 130~ 1 20~ 77 80~ 7 140~ 1 30~ 42 90~ 7 150~ 1 40~ 25 100~ 6 160~ 1 50~ 11 110~ 3 170~ 0 Fig. 19. エリア B
‐35‐ クレーター密度:1.068 × 10 個 km⁄
‐36‐ エリアA・エリア B 合計 解析エリアの面積:2745258.562 km2 解析したクレーターの数:914 個 Table 5. エリア A・エリア B 合計の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 914 個 90~ 33 180~ 2 10~ 804 100~ 24 190~ 2 20~ 437 110~ 16 200~ 2 30~ 249 120~ 10 210~ 2 40~ 153 130~ 5 220~ 2 50~ 96 140~ 5 230~ 1 60~ 65 150~ 4 240~ 0 70~ 51 160~ 3 250~ 0 80~ 42 170~ 2 260~ 0
‐37‐ クレーター密度:1.200 × 10 個 km⁄
‐38‐
5.3 海のクレーターサイズ分布
危機の海 解析エリアの面積:176000 km2 解析したクレーターの数:3 個 クレーターの大きさ:(Max)21.069 km、(Min)6.694 km Table 6. 危機の海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 3 個 60~ 0 120~ 0 10~ 2 70~ 0 130~ 0 20~ 1 80~ 0 140~ 0 30~ 0 90~ 0 150~ 0 40~ 0 100~ 0 160~ 0 50~ 0 110~ 0 170~ 0 Fig. 22. 危機の海‐39‐ クレーター密度:1.827 × 10 個 km⁄ Fig. 23. 危機の海のクレーターサイズ分布
‐40‐
豊かの海 解析エリアの面積:326000 km2 解析したクレーターの数:67 個 クレーターの大きさ:(Max)135.002 km、(Min)5.036 km Table 7. 豊かの海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 67 個 60~ 3 120~ 2 10~ 57 70~ 3 130~ 1 20~ 21 80~ 2 140~ 0 30~ 15 90~ 2 150~ 0 40~ 8 100~ 2 160~ 0 50~ 5 110~ 2 170~ 0 Fig. 24. 豊かの海‐41‐ クレーター密度:8.386 × 10 個 km⁄ Fig. 25. 豊かの海のクレーターサイズ分布
‐42‐
神酒の海 解析エリアの面積:100000 km2 解析したクレーターの数:3 個 クレーターの大きさ:(Max)77.179 km、(Min)12.405 km Table 8. 神酒の海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 3 個 60~ 1 120~ 0 10~ 3 70~ 1 130~ 0 20~ 1 80~ 0 140~ 0 30~ 1 90~ 0 150~ 0 40~ 1 100~ 0 160~ 0 50~ 1 110~ 0 170~ 0 Fig. 26. 神酒の海‐43‐ クレーター密度:3.423 × 10 個 km⁄ Fig. 27. 神酒の海のクレーターサイズ分布
‐44‐
静かの海 解析エリアの面積:421000 km2 解析したクレーターの数:21 個 クレーターの大きさ:(Max)54.905 km、(Min)8.058 km Table 9. 静かの海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 21 個 60~ 0 120~ 0 10~ 19 70~ 0 130~ 0 20~ 8 80~ 0 140~ 0 30~ 3 90~ 0 150~ 0 40~ 2 100~ 0 160~ 0 50~ 1 110~ 0 170~ 0 Fig. 28. 静かの海‐45‐ クレーター密度:3.342 × 10 個 km⁄ Fig. 29. 静かの海のクレーターサイズ分布
‐46‐
晴れの海 解析エリアの面積:303000 km2 解析したクレーターの数:7 個 クレーターの大きさ:(Max)26.284 km、(Min)7.554 km Table 10. 晴れの海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 7 個 60~ 0 120~ 0 10~ 5 70~ 0 130~ 0 20~ 1 80~ 0 140~ 0 30~ 0 90~ 0 150~ 0 40~ 0 100~ 0 160~ 0 50~ 0 110~ 0 170~ 0 Fig. 30. 晴れの海‐47‐ クレーター密度:3.463 × 10 個 km⁄ Fig. 31. 晴れの海のクレーターサイズ分布
‐48‐ 嵐の大洋・島の海・雨の海・蒸気の海・雲の海・既知の海 解析エリアの面積:3514000 km2 解析したクレーターの数:111 個 クレーターの大きさ:(Max)102.719 km、(Min)5.036 km Table 11. 嵐の大洋・島の海・雨の海・蒸気の海・雲の海・既知の海の累積個数(総 計) 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 111 個 60~ 6 120~ 0 10~ 98 70~ 5 130~ 0 20~ 42 80~ 4 140~ 0 30~ 25 90~ 3 150~ 0 40~ 16 100~ 2 160~ 0 50~ 10 110~ 0 170~ 0 Fig. 32. 嵐の大洋・島の海・雨の海・蒸気の海・雲の海・既知の海
‐49‐ クレーター密度:1.753 × 10 個 km⁄
Fig. 33. 嵐の大洋・島の海・雨の海・蒸気の海・雲の海・既知の海のクレーターサイズ分 布
‐50‐
湿りの海 解析エリアの面積:133000 km2 解析したクレーターの数:3 個 クレーターの大きさ:(Max)111.303 km、(Min)6.525 km Table 12. 湿りの海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 3 個 60~ 1 120~ 0 10~ 1 70~ 1 130~ 0 20~ 1 80~ 1 140~ 0 30~ 1 90~ 1 150~ 0 40~ 1 100~ 1 160~ 0 50~ 1 110~ 1 170~ 0 Fig. 34. 湿りの海‐51‐ クレーター密度:1.692 × 10 個 km⁄ Fig. 35. 湿りの海のクレーターサイズ分布
‐52‐
氷の海 解析エリアの面積:436000 km2 解析したクレーターの数:10 個 クレーターの大きさ:(Max)31.036 km、(Min)10.873 km Table 13. 氷の海の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 10 個 60~ 0 120~ 0 10~ 10 70~ 0 130~ 0 20~ 5 80~ 0 140~ 0 30~ 1 90~ 0 150~ 0 40~ 0 100~ 0 160~ 0 50~ 0 110~ 0 170~ 0 Fig. 36. 氷の海‐53‐ クレーター密度:2.617 × 10 個 km⁄ Fig. 37. 氷の海のクレーターサイズ分布
‐54‐
海全体 解析エリアの面積:5409000 km2 解析したクレーターの数:225 個 Table 14. 海全体の累積個数 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 直径D 累積個数N 1km~ 225 個 60~ 11 120~ 2 10~ 195 70~ 10 130~ 1 20~ 80 80~ 7 140~ 0 30~ 46 90~ 6 150~ 0 40~ 28 100~ 5 160~ 0 50~ 18 110~ 3 170~ 0 クレーター密度:4.563 × 10 個 km⁄ Fig. 38. 海全体のクレーターサイズ分布‐55‐
5.4 海と高地のクレーターサイズ分布の比較
「クレーターの数と大きさの関係」や「クレーター密度」が、地形の 違いによってどのように変わってくるかを、それぞれのクレーターサイ ズ分布を比較することで見ていく。 Fig. 39. 海と高地のクレーターサイズ分布の比較‐56‐
5.5 衝突物体の特性
衝突物体のサイズ分布 衝突物体の大きさは、クレーターの大きさをもとに求めているので、衝 突物体のサイズ分布は、クレーターサイズ分布から反映されている。 よって、1 つの衝突物体のサイズ分布のデータを見れば、そのほかの衝 突物体のサイズ分布もおおよそ予想がつくので、全ての衝突物体のサイズ 分布は見る必要はないと考えられる。 ここでは、高地における衝突物体のサイズ分布のみ紹介することにする。 解析した衝突物体の数(計算したクレーターの数):758 個 衝突物体の大きさ:(Max)9.57 km、(Min)0.203 km Table 15. 高地(エリア A)の衝突物体の累積個数 直径D 累積個数N 直径 D 累積個数N 直径D 累積個数 N 0.1km~ 758 個 3.5~ 31 7.0~ 2 0.5~ 575 4.0~ 19 7.5~ 2 1.0~ 264 4.5~ 12 8.0~ 2 1.5~ 138 5.0~ 5 8.5~ 2 2.0~ 86 5.5~ 4 9.0~ 2 2.5~ 54 6.0~ 3 9.5~ 1 3.0~ 36 6.5~ 2 10.0~ 0 Fig. 40. 衝突物体のサイズ分布(高地 エリア A)‐57‐ クレーターと衝突物体のサイズ分布の比較(高地) クレーターと衝突物体の「数と大きさの関係」の違いについて、それ ぞれのサイズ分布を比較することで見ていく。 Fig. 41. クレーターと衝突物体のサイズ分布の比較(高地 エリア A) クレーター・衝突物体 サイズ分布の比較(高地エリアA)
‐58‐ クレーターと衝突物体の大きさの関係 クレーターの大きさと、それを作った衝突物体の大きさの関係を知る ためには以下の式を使い、解析結果の数値を入れることによって見るこ とができる。 クレーターと衝突物体の大きさの関係= 実際の衝突物体の大きさ 実際のクレーターの大きさ 例として、コペルニクスの解析結果を用いると Table 16. コペルニクスの解析結果 クレーターの角距離 (5 回計測平均) クレーターの 実際の大きさ(直径) 衝突物体の 実際の大きさ(直径) 5.42282 分 91.0320026 ㎞ 3.664899695 ㎞ クレーターと衝突物体の大きさの関係= 3.66489969591.0320026 = 0.040259 ≅ 0.04 =251 となる。 この計算から、衝突物体の大きさは、それによって作られたクレータ ーの大きさの約 であることがわかる。
‐59‐
6. 議論
6.1 データ解析から得られたグラフから読み取れること
クレーターの数と大きさの関係はx に依存 クレーターの数と大きさの関係は両対数グラフにおいて、おおよそ傾き -2 の一直線になることが見て取れる。 これは、クレーターの数と大きさが相関関係にあることを示し、クレー ターの大きさが大きくなるのに比例して、数は 2 次関数的に少なくなっ ていくことを表している。 海と高地のサイズ分布の違い 「クレーターの数の大きさへの依存:変わらない」 Fig.39 を見ると、海と高地の近似直線はおおよそ互いに平行に並んで おり、クレーターの数と大きさの関係は傾き-2 の一直線になることが見 て取れる。これは、地形の違いと関係なくクレーターの数と大きさの相関 関係は変わらないことを示している。 「クレーター密度:差があり」 Fig.39 を見ると、海と高地の近似直線は上下(x の係数)の違いがあり、 クレーター密度が地域によって違うことが予想される。実際に、計測値か ら求めた「高地のクレーター密度」と「海のクレーター密度」を見比べる と、海より高地のほうがクレーター密度が高いことが見て取れる。これは、 高地のほうが単位面積当たりのクレーター数が多いことを示している。 この結果から、海よりも高地のほうが古い地形であると予想される。 さらに細かくクレーター密度を見比べていくと、海も地域ごとに形成年 代が異なると考えられ 古 豊かの海> 晴れの海 > 静かの海 > 氷の海 > 嵐の大洋 etc … > 神酒の海 > 危機の海 > 湿りの海 新 の順に古い地形であると考えられる。 また、高地のエリアB はエリア A と比べ、クレーター密度が低いよう‐60‐ に思われる。 グラフの近似直線の係数の違いは、解析場所の面積の広さの違いも関係 しているが、Fig.42 を見ると解析場所の面積の広さの違いだけが原因で ないと予想できる。 このエリアA とエリア B のクレーター密度の違いの原因については、 エリア B が海周辺であるため、溶岩の噴出などによるクレーター変成作 用の影響が大きく関わっていると考えられる。 Fig. 42. エリア A とエリア B のクレーター密度の違い エリアB エリアA
‐61‐
6.2 衝突物体の特性について
衝突物体のサイズ分布について 衝突物体の大きさはクレーターの大きさと相関関係にあるので、クレー ターサイズ分布と衝突物体のサイズ分布を見比べても、数と大きさの関係 にほぼ変わりはないが、衝突物体のほうが若干ではあるが相関関係(近似 直線の傾き)が強いことがわかった。 クレーターと衝突物体の大きさの関係 画像の解析結果を「クレーターと衝突物体の大きさの関係」の式に代 入することによって、衝突物体の大きさは、それによって作られたクレ ーターの大きさの約 であることがわかった。 このことから、衝突起源の微惑星群は比較的小さい物体で満ちている と考えられる。‐62‐
6.3 課題
クレーターの数と大きさの関係について、本研究で得られたクレータ ーサイズ分布からは、10 ㎞以下の範囲においては相関関係があるかわか らなかった。 この原因には、「観測条件によって」と「クレーター浸食作用によって」 の2 つが考えられる。 観測条件については、今回観測できたクレーターの中で最小のものが5 ㎞のものであったため、必然的に 1 ㎞以上の累積個数についてデータ量 が減ってしまったと考えられる。 このことは、口径のより大きい望遠鏡を使用することや、シーイング の影響を考慮することで解決できると考えられる。 クレーター浸食作用については、4.2 節で触れたように、新たに作られ たクレーターから放出される岩片や土砂は、その下にあった既存のクレ ーターを埋めたり、崩したりして地形を変形させるため、このクレータ ー浸食作用を詳しく解析することで、今回見えなかった10 ㎞以下のクレ ーターの数と大きさの関係について、詳しい情報が得られると共に、月 面の進化についての情報も得られると期待できる。‐63‐
7. まとめ
本研究は、月の撮像データからクレーターサイズ分布を作成し、クレータ ーの数と大きさの間にはどのような関係があるのかを求めた。また、クレー ターを作った衝突物体の特性はいかなるものかについても考察していった。 結果として、以下の3 つが得られた。 クレーターの数と大きさの関係はx に依存している。 海より高地のほうが古い地形である。 衝突起源の微惑星群は比較的小さい物体で満ちている。 研究課題は、5 ㎞以下のクレーターを観測することができなかったことで ある。 本研究の結果からは、10 ㎞以下の範囲においてはクレーターの数と大き さの間に相関関係があるかはわからない。その原因は、観測することのでき たクレーターの中で1 番最小のものが 5 ㎞のものであったため、1 ㎞以上の 累積個数が少ないと予想されるからである。 これは、以下の2 つによって改善することができる。 より口径の大きい望遠鏡を使用する。 シーイングの良い日、またはシーイングの影響の少ない場所を選び撮像 をする。 この条件を考慮し、クレーターサイズ分布を作成することによって、今回 見ることのできなかった10 ㎞以下の範囲における、クレーターの数と大き さの関係についても見ることができると期待できる。 また、クレーター浸食作用について詳しく解析することで、クレーターサ イズ分布について貴重な情報が得られることや、月面の進化について探って 行くことができると考えられる。‐64‐
8. 謝辞
研究を進めるにあたり、データの解析方法や文献の紹介、研究に対するア ドバイスなど、様々なご教授をくださった祖父江義明教授。望遠鏡や画像処 理ソフトの使い方などを指導してくださった日比野由美さん。事務に関して、 最後まで親切に対応してくださった理工事務室の方々。また、研究内容やゼ ミ輪講にて多くの課題や助言をくださった同研究室メンバーの方々。多くの 方々のお力のおかげで研究を進めることができました。この場をお借りして、 深く感謝申し上げます。 この 1 年間の経験を糧に、これからも努力してまいりと考えております。 本当にありがとうございました。‐65‐
9. 参考文献
水谷仁:クレーターの科学 、 東京大学出版会(1980) 渡部潤一: 最新・月の科学 、 日本放送出版協会(2008) 天文年鑑2011 、 誠文堂新光社(2011)
Fumi Yoshida,et al.(2005):The Origin of Planetary Impactors in the Inner Solar System
McGetchin.T.R. et al. (1973):Radial thickness variation in impact crater ejecta : Implications for lunar basin deposits
Gault.D.E. et al.(1972):Laboratory simulation of lunar craters Gault.D.E. et al.(1973):Experimental hypervelocity craters in quartz
and glass sand:Distribution and shock metamorphism of ejected mass. Gault.Donald E. (1973):Displaced mass, depth, diameter, and effects of oblique trajectories for impact craters formed in dense crystalline rocks
Wedekind.John A. et al. ( 1974 ): Some effects of gravitational acceleration on the formation of hypervelocity impact craters
Gault.D.E.:Wedekind.J.A. (1978):Experimental studies of oblique impact
Okeefe.J.D.:Ahrens.T.J. (1977):Impact-induced energy partitioning, malting, and vaporization on terrestrial planets
Greelev.Ronald:Gault.Donald E. (1970):Precision Size-Frequency Distributions of Craters for 12 Selected Areas of the Lunar Surface Shimazu,Yasuo (1966):Survival time of surface irregularities and
viscosity distribution within the Moon
Scott,Ronald F (1967):Viscous flow of craters
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10. 付録
補足データとして、「月撮像の日にち、時間、撮像枚数、月齢」と「代表 的なクレーターの解析結果」を上げる。 データの解析には、これらの様々な月齢の撮像データを見比べながら、細 かいクレーターまで、できるだけ正確に数え上げるよう努めた。 Table 17. 月撮像に関するデータ 年 月 日 時間 撮像枚数 月齢 2011 8 9 18:53:11~19:13:31 36 9.7 2011 8 12 21:54:00~22:01:01 7 12.7 2011 8 15 21:48:30~21:53:26 6 15.7 2011 8 16 21:26:31~21:32:47 10 16.7 2011 8 17 22:44:01~22:48:10 8 17.7 2011 8 18 23:24:44~23:30:09 8 18.7 2011 8 24 01:04:13~02:09:43 13 24.7 2011 8 26 03:41:35~03:49:36 9 26.7 2011 9 7 18:52:38~18:56:16 6 9.4 2011 9 8 18:54:19~19:00:13 5 10.4 2011 9 10 00:37:50~00:42:19 18:34:19~18:36:23 7 4 12.4 2011 9 11 19:10:56~19:15:44 8 13.4 2011 9 12 19:32:46~19:35:42 9 14.4 2011 9 13 20:52:39~20:58:47 29 15.4 2011 9 14 20:24:25~20:27:24 8 16.4 2011 9 15 20:15:24~20:21:52 23:56:48~00:00:55 23 6 17.4 2011 9 17 22:04:35~22:08:42 12 19.4 2011 9 18 22:37:36~22:41:22 10 20.4 2011 9 22 01:14:42~01:20:07 13 23.4 2011 10 3 18:38:38~19:06:00 8 6.0 2011 10 4 17:26:49~17:46:59 20 7.0 2011 10 6 18:29:04~18:41:03 28 9.0 2011 10 7 17:58:28~18:05:28 12 10.0‐67‐ 2011 10 12 21:15:35~21:19:32 7 15.0 2011 11 4 17:57:40~18:04:02 7 8.7 2011 11 13 21:15:31~21:18:37 6 17.7 2011 11 17 00:47:56~00:54:11 6 20.7 2011 11 22 04:52:05~05:00:15 10 26.7 2011 12 5 16:57:57~17:02:01 7 10.2 2011 12 10 21:19:24~01:30:59 62 15.2 2011 12 11 20:04:37~20:10:07 5 16.2 2011 12 14 23:25:20~23:27:25 4 19.2 2011 12 16 23:54:48~23:57:18 6 21.2 2011 12 17 01:12:58~01:14:47 4 22.2 2011 12 30 20:48:35~20:52:00 5 5.7 Table 18. 代表的なクレーターの解析結果 クレーター名 クレーターの角距離 (5 回計測平均) クレーターの 実際の大きさ(直径) コペルニクス 5.42282 分 91.0320026 ㎞ ティコ 5.16044 分 86.6274719 ㎞ マギヌス 9.39107 分 157.646441 ㎞ クラヴィウス 13.4379 分 225.579855 ㎞ エラトステネス 3.54 分 59.4254077 ㎞ ケプラー 1.81421 分 30.4547828 ㎞ マリウス 2.28796 分 38.4076146 ㎞ プラトン 6.05729 分 101.682714 ㎞ アルキメデス 4.83594 分 81.1801429 ㎞ ガッサンディ 6.6304 分 111.303218 ㎞