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電子化作業とデータ整理と保守運用が容易な教育資料電子化システムの開発 ・・・5

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Academic year: 2021

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(1)

電子化作業とデータ整理と保守運用が容易な

教育資料電子化システムの開発

木本 智幸

1

・衛藤 賢一

2

・高橋 徹

1 1電気電子工学科,2技術部 大分高専が開発した電子化システムの詳細,運用した状況,および問題点について報告する.近年, JABEE認証や認証評価がきっかけとなり,答案等の多くの教育資料を保存する必要性が高まっている. しかし,保管場所の問題もあり,電子化する方法が多方面で模索されている.我々の目標は,教員が手 軽に電子化でき,電子化データが容易に整理され,かつ,その保守運用が簡単なシステムを構築するこ とである.試行を繰り返した結果,ほぼ目標通りのシステムが開発できたのでその内容と運用状況につ いて報告する.

キーワード : エビデンス,データ構造,教育資料の保存,教育フィードバック

1.はじめに

大分高専ではJABEE認定を受審するに当たり,2004年度 から採点した定期試験の答案,課題,小テスト等を複写し 保管してきた.こうした動きは,JABEE認定審査や認証評 価を受けるにあたり多くの大学・高専で必要となってきて いる.また,教育の観点からもこうした教育資料を残して おくことは重要と考えられる.しかし,保管するスペース を大量に必要とし,永久に保管し続けることは不可能であ るため,せっかく蓄積した教育資料を数年で廃棄しなけれ ばならないのが現実である.また,廃棄する資料は膨大な 量で,それを蓄積資料の中から選び出すのに大きな労度が かかることや,資料自体が答案や成績であるためシュレッ ダー処理しなければならないとなど,様々な問題がある. そこで,ここ数年では,教育資料を電子化して保管場所 や廃棄コストを抑えようとする試みが数多くなされてい る[1,2].しかし,複合機で紙へ複写する方法よりも手軽で 容易な電子化システムでなければ,教員に労力がかかって しまい,協力が得られない.システム導入に当たり,複合 機メーカーが販売している既製品で対応できないか検討 したが,大分高専が構築しようとする手軽で容易な電子化 システムへの適用は困難であった.そこで,大分高専では 教員に労力をかけずに電子化するシステムを開発するこ ととした.本報告では,大分高専で開発した電子化システ ムの詳細仕様と運用状況について報告する.また,運用に おいて問題となっている点についても報告する.

2.従来の教育資料の保管の方法と状況

教員は,定期試験の全て,課題,小テスト,実験レポー ト等を教育資料室と呼ばれる部屋に保管することになっ ている.実験レポートは複写せずに,そのまま,教育資料 室に保管し,定期試験,課題,小テストは学生に返却する 必要があるため,採点後に複写したものを教育資料室に保 管することになっている.教員は,自分の所属する学科の 複合機もしくは教育資料室に設置の複合機で複写し,科目 情報を書いた表紙を添付して教育資料室に持参する.持参 されたものは,専属の事務員によって,科目毎にファイリ ングされ,年度毎に分けた教育資料室の棚に保管される. 棚は,移動書架を用いており,空間的に効率的な保管を行 っているが,それでも,5年間分の保管に,およそ70㎡ を使用しており,1年間あたりの重量は1トンにも達する.

3.電子化システム

(1) システムを実用化するための必要条件

図-1に電子化システムの構成図と表-1に構成機器を示す. 大分高専では,3学科の事務室と教育資料室に校内LAN に接続された複合機がある.複合機であることから,スキ ャンをしてそれをLANを通してファイルサーバーに送る ことも可能である.この際,スキャンしたデータファイル を検索可能にするためには,フォルダーを階層構造に整理 しその中にデータを保管しなければならない.この整理を スキャンした教員が苦労せずに行えるシステムにするこ とが,本システムが実用可能なものになるためにとても重 要である.これを実現するための方法を報告する.

(2)

図-1 電子化システムの構成図

表-1 電子化システムを構成する機器

機器名 機種名 必要ソフト デ ー タ 保 管

サーバー

一般的なAT互換機 Windows Server 2008 SMBサーバー 複合機1 リコーimagio MPC3500 大塚商会 カンタン文 書登録 複合機2 リコーimagio MPC4000 サイオステクノロジー Speedoc 複合機3 リコーimagio MPC4500 大塚商会 カンタン文 書登録 複合機4 リコーimagio MPC6000 サイオステクノロジー Speedoc (2) データ保管サーバーの設定 まず,データ保管サーバーに,図-2に示す教育課程に基 づいたフォルダー構造を生成する.この構成は,教育資料 室に保管している複写資料の分類と基本的に同じである. 上位から年度,学科,学年,科目名,学期区分となってい る.学科は学科毎に一般科目と専門科目に分けており,併 せて専攻科のフォルダーも作っている.科目名に該当無し があるが,科目名フォルダーを作り損ねた場合に暫定的に 保管してもらうフォルダーである.後日,担当事務員がこ のフォルダーにファイルがないか確認することになって いるが,1年半の試行ではこのフォルダーにデータが保管 されたことはなかった.学期区分は,4回の定期試験以外 に,再試験,追認試験,その他がある.その他は,課題や 小テストを保管するフォルダーである.複合機はSMBなど を用いて,データ保管サーバーへスキャンファイルを送る ことになる.データ保管サーバーでは,複合機がデータ転 送に用いるサーバーソフトを起動しておく必要がある. (3) 複合機でのスキャンの実行 複合機には,データ保管サーバーのルートディレクトリ (またはトップにしたいディレクトリ)とデータ保管サーバ ーへのログインID,およびパスワードを設定しておく.教 員は,複合機からネットワークスキャンを選択すれば自動 的にデータ保管サーバーにログインされ,図-3が複合機の タッチパネルに表示される.正確には,この画面の前段階 で,年度の選択画面がある.図-3では,2012年度が選 択された後の画面であり,学科フォルダーから下位のフォ ルダーが表示されている.どのメーカーの複合機も最近の ものであれば標準またはオプション対応で,Windows等の マシンとLAN接続し,サーバーマシンのフォルダーを図-3 のように複合機のタッチパネルに表示する機能を備えて いる. 図-2 データ保管サーバーのフォルダー構造 図-3 複合機のタッチパネルの画面表示 図-3は,教員が複合機のタッチパネルを見て,まずA科 (般)のボタンを選び,右横に表示される学年から1年のボ タンを選び,その右横に表示される該当クラスの科目名か ら数学Ⅰのボタンを選び,その右横に表示される学期区分 から前期中間のボタンを選んだ例である.タッチパネル内 に表示しきれないフォルダーはスクロールボタンで画面 内に移動して選択することができる.このようにボタンを 押すたびに,複合機はデータ保管サーバーと通信を行い, 選択フォルダーの下位フォルダーをタッチパネルに表示 する.この後,スキャンボタンを押せば複合機のソーター に乗せられた答案のスキャンが始まり,選択フォルダーに PDFとして保管される.このように,教員がスキャンする 科目の情報を選択してスキャンすれば,データ保管サーバ ーの該当フォルダーに保存され,データ整理も自動的に行 われていることになる. スキャン済みの採点した答案を学生に返却した際,採点 ミスがあればその答案のみを回収し,再度,該当フォルダ ーにスキャンすることになっている.PDF化されたファイ A 科(般) B 科(般) C 科(般) D 科(般) A 科(専) 1年 2年 3年 4年 5年 国語総合 日本史 数学I 物理I 前期中間 前期期末 後期中間 後期期末 再試 化学 2012 年度 ・ ・ ・ 年度 学科 学年 科目名 学期区分 ルート 2013 年度 2012 年度 A 科(専) 国語総合 1年 5年 前期中間 前期期末 後期中間 後期期末 再試 追認 その他 日本史 数学Ⅰ 物理Ⅰ A 科(般) B 科(般) B 科(専) ・ ・ ・ ・ ・ ・

(3)

ルは,スキャン日時が秒単位まで含めてファイル名となる ため,データ保管サーバーのフォルダー内では,スキャン した履歴の順番でPDFファイルが並ぶ.そのため,どのよ うな履歴で,答案に関するやりとりがあったかが分かり, 複数の答案があっても,どれが修正後であるかを知ること ができる.なお,スキャンする際には,電子化する答案に は表紙を付けることになっている. (4) フォルダー生成ソフト データ保管サーバーのフォルダー数は,単年度当たり, 4千を超える.そのため,手作業でフォルダーを作ること は事実上不可能である.そこで,図-4に示す,教育課程表 のエクセルファイルを読み込み,データ保管サーバー用の フォルダーを自動生成するソフトを開発した.教育課程表 は,科目名,開講学年など,データ保管サーバー用のフォ ルダーを作る情報が全て揃っている.また,教育課程表は、 シラバス冊子や学生便覧に掲載されたり,シラバスを大分 高専ホームページでオンラインで読めるようにするため のリンク元にも利用するため,大分高専では教務部委員が 毎年度作るものであり,電子化システムのために作るもの ではない.図-4は,一般科目の教育課程表だが,これ以外 に専門4学科の教育課程表と専攻科の教育課程表2つ,計 7つの表が毎年度作られている. 1年 2年 3年 4年 5年 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 0 0 1 2 2 1 0 0 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 2 2 2 2 3 4 4 3 2 2 2 2 2 3 4 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 0 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 0 0 2 0 2 2 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 2 2 2 2 2 28 28 28 26 26 26 16 16 16 8 8 8 2 1 0 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 0 一般選択 0 1 2 0 1 2 0 0 0 2 2 2 6 6 6 28 28 28 26 26 26 16 16 16 10 10 10 8 7 6 英 語 Ⅲ A 英 語 Ⅰ B 2 英 語 Ⅱ A 2 英 語 Ⅱ B 2 英 語 Ⅲ B 歴 史 学 概 説 選 択 科 目 2 2 2 2 2 2 必 修 科 目 2 2 選 択 必 修 1科目修得 (同時開講) 化 学 Ⅱ 数 学 演 習 書 道 (同時開講) 美 術 1 一般修得可能 単位 合計 87 英 語 L L M S 科 1 音 楽 物 理 学 経 済 学 概 説 法 学 概 説 数 学 特 論 Ⅰ 1科目修得 (同時開講) 79 修 得 可 能 単 位 小 計 一般 理系 選択 (同 時開 講) 哲 学 概 説 2 生 物 学 概 説 英 語 Ⅳ 2 2 1 E C 科 英 会 話 M S 科 1 1 E C 科 保 健 ・ 体 育 9 英 語 Ⅰ A 2 物 理 Ⅱ 3 化 学 Ⅰ 5 2 微 分 方 程 式 2 物 理 Ⅰ 3 微 分 積 分 Ⅱ 4 線 形 代 数 4 基 礎 数 学 Ⅱ 4 微 分 積 分 Ⅰ 4 地 理 2 基 礎 数 学 Ⅰ 4 世 界 史 2 政 治 ・ 経 済 倫 理 2 学年別単位・時間配当 地 域 日 本 文 学 1 備   考 日 本 語 表 現 法 1 国 語 総 合 4 現 代 文 2 1 1 2 授 業 科 目 単位数 現 代 社 会 1 1 日 本 史 2 修 得 可 能 単 位 小 計 8 英 語 Ⅴ 外国語選択 (同時開講) 独 語 中 国 語 数 学 特 論 Ⅱ 1 一般選択 (同時開講) 心 理 学 図-4 教育課程表(エクセルファイル) 図-5は,教育課程表を読み込んで,図-2のフォルダー構 造を生成するフォルダー生成ソフトのGUIである.教育課 程表毎に7つあるボタンがある.どのボタンを押してもフ ァイルオープンダイアログが開くので,押したボタンに対 応する教育課程表を読み込むだけである.このフォルダー 生成の作業は、専属事務員が4月当初に行う.教育課程表 をフォルダー生成ソフトに読み込ませてフォルダーを作 成させるのに必要な時間は,数十秒である.

図-5

フォルダー生成ソフト フォルダー生成ソフトの開発には,C++Builder XE2を用 い , エ ク セ ル フ ァ イ ル に OLE(Object Linking and Embedding)接続し,内容を読み出してはファイルを生成す ようにプログラムをした.開発には細かい点の注意も必要 であった.例えば,図-3に示した複合機画面では各ボタン の文字数が6文字までしか表示されないため,同一クラス に同じ科目名で添字(ⅠやⅡなど)が7文字目以降について いる場合,画面上では科目が区別できなくなるなどである. また,複合機がShift-JISには対応していない場合もあり, ⅠやⅡを表示できない場合もある.そのため,科目名を4 文字に短縮し,5文字目にアルファベットのI(アイ)を用い て,I, II,IIIを付加するようにソフトへの作り込みも行っ た.C++Builder XE2のアカデミック版で学内システムを作 ることはライセンス違反となるため,通常版を購入する必 要もあった. (5) 複合機のスキャン時間とファイルサイズによるスキャ ン設定の決定 後日,スキャンしたファイルを見ることを想定すると, できるだけ高解像度でスキャンすることが望ましい.一方 で,高解像度の設定にするほど,電子ファイルのサイズが 大きくなり,スキャンにも時間がかかるようになってしま う.解像度についてはある程度小さい文字も鮮明に見えて, スキャン時間も長さをあまり感じないようにするため,何 度も実験を行って300dpiに設定することとした.また,採 点した答案を電子化するのでカラーでスキャンすること

(4)

とした. 保存データバイト数は,B4×2枚×40人分をスキャン した場合で,およそ50~70MBであった.また,複合 機でスキャンし,PDF化し,データ保管サーバーに転送す るまでの時間は2分~4分で,複合機の性能に大きく影響 した.複写よりもスキャンは高速になるが,その後のPDF 化とサーバーへの転送時間がかかるため,電子化に要する 時間は複写する場合より尐し長くなった. 2011年度では,4割の教員が電子化を行っており, 1年間のファイルサイズは,およそ13GBであった.4 割の教員の殆どが,専門学科の教員であるため,一般科の 教員が電子化を始めた場合,5倍程度に増えることが見込 まれる. (6) システムの保守 データ保管サーバーのフォルダー構造を更新すれば,学 内にある全ての複合機の画面も自動的に変更されること になる.よって,保守はデータ保管サーバーのみに注げば よく,複合機の数が増えてもシステム保守の労度は変わら ない. 保存されているPDFファイルが万が一失われた場合を 想定して,毎晩,自動的にバックアップを取っている.フ ァイルサイズは,前述したように13GBであるため,バ ックアップに必要なハードディクス容量も小さくて済み, バックアップに要する時間も短い. 複合機は単にSMBプロトコルでデータ保管サーバーの フォルダーを参照しに行くだけである.そのため,複合機 を他の機種や他のメーカーに交換しても,電子化に不都合 はなく,機種依存することもない.表1では複合機はリコ ーに集中しているが,他のメーカーの複合機を購入しても 問題ない. (7) システムのセキュリティー 教員が電子化するためには,複合機からデータ管理サー バーにログインする必要があるが,全教員にデータ管理サ ーバーのIDとパスワードを周知すると,他のパソコンから もデータ保管サーバーにアクセスでき,電子化した答案を 自由に閲覧できてしまう.そこで,データ管理サーバーへ ログインするIDとパスワードは,複合機自体に管理者権限 で埋め込み,教員はそのIDとパスワードを見ることができ ないようにした.各自のスキャンしたデータは,教育資料 室に置いている閲覧専用に準備されたパソコンで閲覧す ることができるようにしている. 複合機にデータ保管サーバーのIDやパスワードを組み 込んだことは,セキュリティーの観点だけでなく,教員が 電子化の度にデータ保管サーバーにログインするという 手間が無くなり,簡単で分かりやすい操作性の実現にもつ ながっている. (8) 電子化状況確認ソフト 大分高専では,教育資料室に専属の事務員を1名配置し ており,定期試験後などに,電子化されているか確認を行 っている.単年度で4千を超えるフォルダーがあり,1回 の定期試験だけでも1千のフォルダーを検索する必要が あるため,手作業で全てのフォルダー内のファイルを確認 することは不可能である.そこで,全フォルダーとその中 に入っているPDFファイル,およびファイルサイズを列挙 する提出状況確認ソフトを作成した.提出状況確認ソフト はデータ保管サーバーのルートに置かれおり,実行すると 図-6の画面が表示される.検索年度と検索試験区分を入力 すると,該当年度のフォルダーを全検索して,スキャンさ れたPDFファイルのファイル名やファイルサイズを図-7の CSVファイルとして出力する.事務員は,表計算ソフトを 用いて,このCSVファイルの内容を確認し,ファイルがあ るはずのフォルダーにファイルがまったく入っていなけ れば,フォルダー名が示す科目名で,その担当教員に提出 をお願いする.これまでのところ,保存年度を間違ってス キャンした例が数件あった. 図-6 電子化状況確認ソフト Serial 一般or専門 学年 科目 学期 PDFファイル 1 A工学科(般) 1年 保健・体育 前期中間 → 20120617201021.pdf 2 A工学科(般) 1年 保健・体育 前期中間 → 201206187201021.pdf 3 A工学科(般) 1年 保健・体育 前期中間 → 201206202212111.pdf 4 A工学科(般) 1年 化学I 前期中間 → 20120618201021.pdf 5 A工学科(般) 1年 国語総合 前期中間 → 20120617091021.pdf 6 A工学科(般) 1年 基礎数学I 前期中間 → 20120617201021.pdf 7 A工学科(般) 1年 基礎数学II 前期中間 → 201206187201021.pdf 8 A工学科(般) 1年 政治・経済 前期中間 → 201206202212111.pdf 9 A工学科(般) 1年 日本史 前期中間 → 20120618201021.pdf 10 A工学科(般) 1年 書道 前期中間 → 20120617091021.pdf 図-7 電子化状況確認ソフトが出力したCSVファイルの 内容の例 (9) システム導入コストと運用コスト 表-1に挙げたシステム構成機器の中で,サーバーや複 合機の有無によって,導入コストは大きく変わる.複合機 自体が既存であれば,サーバーマシン,サーバー用OS, データバックアップ用ハードディスク,および複合機を電 子化に対応させるソフト(カンタン文書登録やSpeedoc,1 本につき約7万円)が,電子化システムを構築するために 最低限必要となる.大分高専では,既存の4台の複合機を 電子化に対応させており,サーバーも含めてこれらの費用

(5)

に120万円ほどかかっている.複合機が速いスキャン速 度を持つことは,電子化にストレスを感じないためにとて も重要である.スキャン速度を向上させるための複合機オ プションは数多く存在する.大分高専では,高速化オプシ ョンに上記金額とは別に35万円ほどかけている.ただし, 最近の複合機は非常に高速になっているため,こうしたオ プションは不要である場合も多い.逆に,古い複合機では, スキャン速度が遅いだけでなく,電子化に対応させるソフ トがインストールできないものもあり,入れ替えを必要と する場合もある.しかし,電子化によって紙に複写してい たコストが減るため,将来は初期コストが回収できると考 えられる. 運用コストは,サーバーマシンの電気代と複合機の保守 点検費が主である.このうち,複合機の保守点検費は電子 化に関係なく発生する費用であるため,事実上,電気代が 電子化のための運用コストと考えてよい.

4.電子化システムの運用開始で分かった問題点

(1) 電子化システムそのもの以外の問題点 2011年4月から,電子化システムの運用を開始した. 2012年度で運用2年目になるが,答案を複写で残すこ とも許容されている.2012年度当初では,4割の教員 が電子化を行っている.そのため,複写によるものと,電 子化したものが混在している状況で,数年毎の大量廃棄も しばらく継続される見込みである.専属事務員も答案類の 提出状況の確認に苦労している.また,紙に複写するコス トが以前より減ってはいるが,現在もかかり続けており, 電子化の初期コストを回収するのに時間がかかってしま う.保管スペースも縮小しにくい状況である. 可能であれば,全教員が電子化に移行することが望まし いが,移行できない理由はいくつかある.①複合機で複写 をすることが苦手で,複写を事務員に依頼している教員が いること,②一般科にLAN接続できる複合機がないこと, ③電子化がとても面倒なものでメリットがないと感じて いる教員がいることなどが主な理由である. ①に関しては,すでに本システムは簡単な操作で電子化 を実行できるように作られており,これ以上,電子化シス テム側で工夫することは難しい.しかし,複合機への抵抗 感がある教員にとっては,電子化システムは恐ろしく難し いものだと感じて,手を出せずにいると思われる.開発者 としては,操作法の説明会を開いて,そうした抵抗感をな くして頂くための手順を踏む必要があったと考えている. 今後,そうした説明会を開くことで,電子化に協力して頂 けると思われる.②については,いずれ複合機の老朽化で 買い替えの時期がくるので自然に解消される.③に関して は,電子化システム自体を工夫するのではなく,複写から 電子化に移行することが,教員個人としてもメリットにな るような電子化のルール作りが必要であろう.現在は,電 子化している教員も,別途,合格ラインにある一部の答案 を紙に複写して教育資料室に持ち込むことになっている. これを,所属学科事務室で電子化するだけでよいとするな どの電子化ルールの工夫が必要である. (2) 電子化システムそのものの問題点 現行の電子化システムでは,自分が電子化した答案デー タも個人研究室の自分のパソコンで閲覧することができ ず,教育資料室に出向いて専用の閲覧パソコンを利用しな ければならない.現行システムは電子化の際に,複合機に 仕込んでいるIDとパスワードでデータ管理サーバーに自 動ログインしてデータをアップするように電子化システ ムが作られている.セキュリティーと操作性を向上させる ためには必要な仕様である.しかし,結果的にデータ保管 サーバー上の電子化データがどれも同じオーナー属性に なってしまい,誰が電子化したものか区別できない.その ため電子化した本人以外のデータへのアクセスを制限す ることができず,自由閲覧を許すことができないのである. 電子化したデータを個人研究室から自由閲覧したいと いう声は多い.過去と現在の学生の解答の内容を比較して 授業の組み立てに利用したり,学生がミスをしやすいとこ ろを後日改めて確認したりと,教育的な資料となるためで ある.また,答案返却で採点ミスの申し出があった場合, それが,返却後に学生によって故意に書き直されたもので ないかを確認するために利用する教員もいる. 教員のパソコンから電子化データへのアクセスを許可 するためには,スキャン時に複合機上で教員が自らのオー ナー属性を入力する仕様が必要となる.しかし,それは電 子化の操作性を下げてしまうというという,背反する問題 を生じさせる.現在,電子化の操作性を一切下げずにオー ナー属性をデータに持たせ,閲覧の際に,電子化した本人 だけに閲覧を許可する電子化システムの開発を進めてい る.

5.おわりに

電子化システムについては,教員が手軽に電子化でき, 電子化データが容易に整理され,かつ,その保守運用が簡 単なものを構築できたと考えている.しかし,電子化は 様々な要因で進まないのが現状である.近年,高専機構本 部から全高専へ答案類を含め教育資料を10年間保管す るよう通達があった.5年間分でも保管スペースの問題が 生じており,10年間分の保管を実現するためには新たな 保管方法を行う必要がある.その一つの方法に電子化がな りうると考えられる.電子化を進めるためにも,多くの教 員が個人として電子化を行いたいと思える電子化ルール を含めたシステムの構築が急がれる.

(6)

参考文献 1) 藏屋英介,長谷川紀幸:JABEE 認定の対応に向けた成 績資料電子化システムの構築,第1回(平成16年度)工学 研究院技術部技術報告会,(2004) 2) 寺元貴幸,下西二郎,宮下卓也,日下孝二,岡田正, 最上勲:津山高専における定期試験の答案管理システ ムの概要,津山高専教育研究支援センター報 vol4. pp. 13-16. (2009) (2012.9.28受付)

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