Chimera 法を適用した数値流体解析による直線翼垂直軸型風車の空力特性
八戸高専 正会員 ○丸岡 晃 八戸高専学生
(研究当時)
工藤 哲矢 中央大学 正会員 平野 廣和 前田建設工業(株)
正会員 志村 正幸1. はじめに
最近の研究によって,市街地において直線翼垂直軸型風 車による風力発電が有効であることがわかってきた1).し かしながら,直線翼垂直軸型風車の空力特性については,い まだ未知の部分が多い.そこで著者らは,数値流体解析に よって検討を行ってきた2).ここでは,風車の回転の扱い に,解析領域全体を風車の回転に合わせ剛体的に回転させ る方法を用いた.本研究では,風車の回転の扱いに,より 汎用性の高い,Chimera法
(重合格子法とも呼ばれる)
3)を 適用し,2枚翼の直線翼垂直軸型風車に対して湾曲翼形状 と対称翼形状の空力特性の検討を行った.2. 解析モデル
本研究では,図–1に示すような解析モデルの最も基本的 な形状である
2
枚翼の直線翼垂直軸型風車を扱う.θ θ T
D L
L T D T
L
1
D
1 1
1
2 2
2
U
2R
V=Rω N
C M
図
–1
解析モデル翼断面形状は
NACA0018
を回転軌道円周に沿って湾曲させ たものと対称翼形状のものを用いる.風車において重要となる無次元パラメータは,回転円周 に対する翼の占める割合を示すソリディティλと周速
V
と 流入風速U
の比である周速比β
であり,次式のようになる.λ = nB
R (n :
翼枚数), β = V U = Rω
U (1)
風力出力はトルク
T
によって得られるため,最も重要で あり,トルクT
は,以下のように無次元化される.C
T=
ni=1
C
T i=
ni=1
T
i12
ρU
2R
2Z (2)
また,風車効率
C
P は風車出力P
G を風力エネルギーP
Wで次式のように除したものである.
C
P= P
GP
W= 1 2 βC
TP
G= ω
ni=1
T
i, P
W=
12ρ2RZU
3(3)
ここで,風車出力
P
GはトルクT
が完全に電力に変換され たものと仮定している.Key Words: 垂直軸型風車,数値流体解析,CFD, Chimera法
〒039–1192 青森県八戸市田面木字上野平16–1, TEL:0178–27–
7304, FAX:0178–27–7316
各翼上の座標系での空気力を周方向に作用する効力
C,
垂直力
N,ピッチングモーメント M
とすると,トルク係 数C
T iは,トルク係数C
T iは,周方向に作用する負の抗力−C
C(以下,推進力と呼ぶ)
と,負のピッチングモーメント−C
M の和で表される.C
T i= −C
C− C
M(T
i= −RC − M) (4)
3. 解析手法と解析条件
流れ場の解析手法に有限要素法による
IBTD/FS
法4),乱 流モデルにBaldwin–Lomax Smagorinsky(BLS)
モデル5)を 適用する.風車のような回転する物体は,物体の回転を移 動境界問題として扱わなければならない.本研究では,移 動境界問題の解析手法にChimera
法3)を適用する.翼から 離れたところの流れを固定領域,翼周辺の流れを移動領域 として扱い,Chimera法は固定領域と移動領域が重なり合 う状態にあるような重合領域(図–2
に解析領域と境界条件 を示す) をもつ領域分割法の一つであり,各重合領域間で の情報の受け渡しを行いながら個々の領域で解析を行う.本研究における解析条件を以下に示す.表–1は解析パラ メータ,表–2は解析ケースである.ソリディティ
λ
が,そ れぞれ,0.5, 1.0, 1.5の湾曲翼形状をCaseA, B, C,対称翼
形状をCaseD,E,F
とし,ケースごとに回転周期T
Pを変 化させ解析を行った.10.0
20.0
30.0
20.0
u=1, v=0
tx=0, v=0
t=0, p=0
tx=0, v=0 ω
=1.0 u=0
1.5 1.7
R
重合領域 移動領域
固定領域
図
–2
解析領域と境界条件 表–1
解析パラメータレイノルズ数Re= URν 4.0×105 1回転に要するステップ数 5120
回転周期TP 1.5〜6.0
周速比β 4.19〜1.05
表
–2
解析ケース翼弦長B 0.25 0.50 0.75 ソリディティλ 0.50 1.00 1.50
CaseA CaseB caseC
湾曲翼形状
CaseD CaseE CaseF
対称翼形状
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
‑239‑
I‑120
4. 解析結果
(1)
風車効率の周速比に対する変化風車効率
C
Pの周速比β
に対する変化を図–3に示す.風 車効率C
P は,最大となる最適周速比β
optをもち,最大風 車効率C
Pmaxをピークとする山なりの曲線が描かれる.ソ リディティλが小さくなると最適周速比β
optは大きくなる.湾曲翼形状の場合,最大風車効率
C
PmaxをみるとCaseB
が 最大で,対称翼形状の場合,ソリディティλが大きいほど,最大風車効率
C
Pmaxが大きい.同じソリディティλでの最適周速比
β
optを比較すると,湾曲翼形状と対称翼形状の値がほぼ一致している.次に,
同じソリディティλでの最大風車効率
C
Pmax を比較する と,CaseAとCaseD
ではCaseA
が若干大きく,CaseBとCaseE
ではCaseE
が大きく,CaseCとCaseF
ではCaseF
が約2.5
割大きい.ソリディティλ
が大きくなるにつれて湾 曲翼形状と対称翼形状の最大風車効率C
Pmaxの差が大きく なっている.β
C
0 1 2 3 4 5
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
CaseA CaseB CaseC
P
湾曲翼形状(CaseA,B,C)
β
C
0 1 2 3 4 5
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
CaseD CaseE CaseF
P
対称翼形状(CaseD,E,F) 図
–3
風車効率C
P の周速比β
に対する変化(2)
トルク係数の位相に対する変化CaseC,CaseF
におけるトルク係数(C
T i= −C
C− C
M)
の位相θ
に対する変化を図–4に示す.位相θ
が0
◦〜180◦ の上流側の回転軌道で大きいトルクが得られ,トルク係数C
T i が最大となるのは,位相θ
が100
◦付近(図中の a,c)
である.位相θ
が180
◦〜360◦の下流側の回転軌道(図中の b,d)
ではトルクはほとんど得られない.上流側の回転軌道のトルク係数
C
T i(図中の a
とc)
を比 較すると,CaseF
のほうが1.5
倍ほど大きく,下流側の回転 軌道のトルク係数C
T i(図中の b
とd)
を比較するとCaseC
のほうが若干大きい.次に,推進力
−C
C と負のピッチングモーメント−C
Mについて比較する.上流側の回転軌道では,最大の推進力
−C
CはCaseF
が約2
倍ほど大きく,ピッチングモーメン トの値はさほど変わらない.また,下流側の回転軌道では,最大の推進力
−C
CはCaseC
が2
倍ほど大きく,ピッチン グモーメントの値は上流側と同様にさほど変わらない.こ のことから推進力−C
Cが,CaseCとCaseF
のトルク係数C
T iの差に起因していると考えられる.Phase [deg]
C,-C,-C
0 45 90 135 180 225 270 315 360
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
C -C -C CaseC (Tp=4.0, =1.57)
C M T1
CMT1
β
a
b
CaseC (TP= 4.0, β= 1.57)
Phase [deg]
C,-C,-C
0 45 90 135 180 225 270 315 360
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
C -C -C CaseF (Tp=4.0, =1.57)
C M T1
CMT1
β c
d
CaseF (TP= 4.0, β= 1.57) 図
–4
トルク係数(C
T i= −C
C− C
M)
の位相θ
に対する変化(3)
翼周辺の圧力分布位相
θ
が112.5
◦のときの圧力分布を図–5に示す.この とき,トルク係数C
T iがほぼ最大となる.CaseCとCaseF
では最適周速比β
opt では剥離バブルが流下せず,CaseCで は周速比β
が最適周速比β
opt より小さい場合(β = 1.05),
剥離バブルが流下していて,CaseFでは剥離バブルが流下 していない.このことから
CaseF
は剥離バブルが流下する のが遅れることがわかる.最適周速比β
opt よりも小さい周 速比β
でも高い風車効率が得られるのはこのためである.CaseC (TP= 4.0, βopt= 1.57) CaseC (TP= 6.0, β= 1.05)
CaseF (TP= 4.0, βopt= 1.57) CaseF (TP= 6.0, β= 1.05)
-10.0 -8.0 -6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0
図
–5
翼周辺の圧力分布(θ = 112.5
◦)
5. おわりに
本研究では,直線翼垂直軸型風車の
Chimera
法を適用し た数値流体解析を行い,空力特性の考察を行った.その結 果,ソリディティの異なる湾曲翼形状および対称翼形状の 風車効率の周速比変化やトルク係数の位相変化等の空力特 性をとらえることができた.今後,実験結果との比較,本 結果を踏まえた最適翼形状の探求が必要とされる.参考文献
1) 丸山,志村,義江,佐竹: 建物に融合する都市型風力発電装置の開発,前田技 術研究所報, Vol.42, 2001
2) 丸岡,平野,志村: 数値流体解析による直線翼軸型風車の空力特性,第57回 土木学会年次学術講演会講演概要集, I-531, pp.1051–1052, 2002 3) Steger, J.L. : The Chimera method of flow simulation, Workshop
on applied CFD, Univ. of Tennessee space Institute, 1991など 4) 丸岡,太田,平野,川原:同時補間を用いた陰的有限要素法による非圧縮粘性
流れの解析,構造工学論文集, Vol.43A,pp.383-394, 1997
5) Camelli F.E. and L¨ohner R. : Combining the Baldwin Lomax and Smagorinsky Turbulence Models to Calculate Flows with Separa- tion Regions, AIAA Paper, pp.2002-0426, 2002.1
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
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