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津波来襲時のコンテナ群漂流・水没シミュレーション

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Academic year: 2022

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1. はじめに

陸上遡上津波によって海域に落下したコンテナが航路 上に沈没すると,船舶の安全な航行を阻害する危険性があ る.したがって,あらかじめ湾内を来襲する津波の規模と 漂流物となり得るエプロン上のコンテナ群の挙動を予測 し,有効な対策を講じておくことは非常に重要である.

津波来襲時のコンテナの漂流挙動については,これま でに水理実験や数値解析などで数多く検討されてきた

(例えば,水谷ら,2005;熊谷ら,2006;安野ら,2007;

後藤ら,2009など).しかし,既往の研究においては,単 体の漂流物を扱った例が多く,多数の漂流物を同時に追 跡した例はあまり多くない.これは現象の素過程に注目 した研究が多いためであるが,言うまでもなく実際には 多数の漂流物が相互に干渉しながら運動するので,複数 の漂流物の同時追跡も不可欠である.特に,漂流コンテ ナが沈没し着底するまでの過程を追跡することを考えた 場合には,広範囲に渡って拡散することが予想されるの で,数値シミュレーションの導入が必須である.

そこで,本研究では,陸上に配置されたコンテナ群が 遡上津波によって漂流の後に水没し,海底に停止するま での全過程をシミュレーションする.これにより,コン テナの回収や航路安全の確保等の迅速な復旧の計画策定 のためのコンテナ群の到達位置の推定が可能となる.

2. 数値解析の概要

(1)津波計算

津波の計算は,一般的に用いられる非線形長波理論式

によって行う.連続式およびx, y方向の運動方程式はそ れぞれ,

………(1)

…………(2)

………(3)

………(4)

と書ける.ここで,η:水面の鉛直変位量,D:全水深

(= h+η(h:水深)),M, N:x, y方向の単位幅当たりの流 量,g:重力加速度,fc:海底摩擦損失係数,n:マニン グの粗度係数である.

(2)コンテナの挙動追跡 a)運動方程式

本研究では,コンテナを複数の要素の集合体として記 述し,各要素において計算された外力の和を用いてコン テナの運動を計算する.コンテナの並進と回転の運動方 程式は,それぞれ

………(5)

………(6)

………(7)

と表される.ここに,Mcont:コンテナの質量,acont:コ ンテナ重心の加速度ベクトル,Ncont:コンテナを構成す

津波来襲時のコンテナ群漂流・水没シミュレーション

Numerical Simulation on Drifting and Submerging Containers driven by Tsunami

後藤仁志

・五十里洋行

・柴田卓詞

・小倉和己

・殿最浩司

・志方建仁

Hitoshi GOTOH, Hiroyuki IKARI, Takuji SHIBATA, Kazumi OGURA

Koji TONOMO and Takemi SHIKATA

A huge tsunami attack with run-up may cause scattering of containers, which can be a danger for navigating ships.

Although some of hydraulic experiments and numerical simulations to track drifting containers in a tsunami attack have been executed previously, not plural floating bodies but a single one was treated in previous studies. In this study, a numerical simulation to predict drifting behavior and submerged area of containers driven by tsunami is carried out.

Containers are driven by the fluid force based on the Morison's formula in which the drag coefficients are assumed with taking their rectangle shape into account. Local velocity field is calculated by the nonlinear long wave theory.

1 正会員 博(工) 京都大学教授 工学研究科社会基盤工学専攻 2 正会員 博(工) 京都大学助教 工学研究科社会基盤工学専攻 3 正会員 工修 関西電力(株)土木建築室計画グループ 4 正会員 博(工) (株)ニュージェック 港湾・海岸グループ 5 非会員 工修 (株)ニュージェック 港湾・海岸グループ

(2)

項の詳細を記す.

b)流体力項

各要素に作用する流体力は,モリソン式によって計算 される.流体力ベクトルは,

………(8)

と記述される.ここで,ρ:流体の密度,CD:抗力係数, ui:要素iの速度ベクトル,As:要素の水没部分の投影面 積,CM:慣性力係数(=1.0),Vs:要素の水没部分の体積 である.なお,抗力係数については,安野ら(2007)の 実験式 ………(9)

………(10)

にしたがい,コンテナの長軸と流向との間の角度に依存 して変化させた(ここで,CDξ:コンテナの長軸方向の 抗力係数,CDζ:コンテナの短軸方向の抗力係数,θ:コ ンテナの長軸方向と流向との間の角度). c)接触力項 コンテナの各要素においては,他のコンテナ構成要素 あるいは陸域セル境界と接触した際にそれぞれ接触力が 作用するものとし,接触力は個別要素法と同様のバネ-ダ ッシュポットモデルを用いて推定する(例えば,後藤, 2004). ………(11)

ここで,fcole:他のコンテナ構成要素との接触力ベクトル, fcolw:陸域セル境界との接触力ベクトルである.fcoleは, ………(12)

………(13)

………(14)

………(15)

………(16)

uj=0とそれぞれ置き換えて計算する.式中の各パラメータ については,計算が安定して収束するようにチューニン グし,kne=kse=2.49×104(kg/s2),knw=4.98×104(kg/s2), ksw=0.0,ce=cw=7.48×104(kg/s),µs=0.5,µk=0.3と決定し た(添え字wは要素と陸域セル境界との接触を示す). d)その他の項 要素が浮上しておらず,かつ陸域セルに存在する際に 作用する底面摩擦力については,静止摩擦力と動摩擦力 に分けて取り扱う.静止摩擦力については,以下のよう に記述する. …(18) ここで,fcolhは,接触力ベクトルの水平方向成分である. 一方,動摩擦力は, ………(19)

と記述できる. 浮力については, ………(20)

と書ける. e)コンテナ質量の増加 コンテナ内部への浸水が生じると,コンテナの見かけ の質量が増加する.本研究では,熊谷ら(2008)と同様 にコンテナの漂流経過時間tfloatに依存して,コンテナ構 成要素の質量を増加させた.コンテナ構成要素の初期質 量からの増分は, ………(21)

と書ける(ここで,V:コンテナ構成要素の体積,σ: コンテナ構成要素の初期密度,tlim:漂流限界時間).

3. コンテナ群の漂流・水没シミュレーション

(1)計算領域・計算条件

本計算で用いた津波の波源モデルは,中央防災会議に

(3)

よって想定された東海・東南海・南海地震モデルであ る.図-1に,本波源モデルにおける初期地盤変動量を示 す.計算領域は,6段階にネスティングを行い,図-2上 図に示す格子幅12.5mで区切られる太平洋沿岸のモデル 地域をコンテナ漂流計算に用いる.図-3は,図-2下図に 示したモデルふ頭中央における津波浸水深および遡上流 速である.計算開始から1.4時間の間に3度,そして,計 算開始3.6時間後に,比較的大きな津波がふ頭に来襲す る.最高浸水深は約2.5 mで,最高遡上流速は約3.5m/sで あった.

コンテナは,40ft型の空コンテナを想定し,σ =51.49

(kg/m3),一辺の長さ2.44 mの立方体形要素を5個直列に

並べて構成する.コンテナの初期位置はモデルふ頭の北 側沿岸であり,図のように規則的に5×20個配置される.

図-1 初期地盤変動量分布

図-4 コンテナ群の漂流(漂流限界時間20分)

図-3 ふ頭中央における津波浸水深および遡上流速 図-2 コンテナ初期配置

(4)

モデルふ頭の西岸および南岸には,それぞれ護岸が設置 されているものとし,地盤高を約1mほど高く設定した.

本研究では,3ケース(20分,1時間,2時間)の漂流 限界時間を想定したシミュレーションを実施した.なお,

津波によって漂流したコンテナは,水没して海底に接し た時点で計算を打ち切る.

コンテナ群は,ふ頭西沖へと流され,海底に沈没する

(t=52min).t=78minでは,3度目に来襲したふ頭北岸か らの遡上津波によって,ふ頭に留まっていたコンテナ群 がふ頭南側の海域へ落下する.ここで落下したコンテナ は,ふ頭西沖あるいは南沖へ漂流し,水没する(t=100 min).本ケースでは,コンテナ群の大半がふ頭西沖50〜 500mの範囲内で沈没する結果となった.

b)漂流限界時間1時間のケース

図-5に,漂流限界時間1時間のケースのコンテナ位置 分布を示す.本ケースでも,ふ頭北岸より漂流し始めた コンテナ群は,ふ頭西沖で南北に分かれるが(t=54min), 水没までの時間が長いので,さらに北西沖および南沖へ と漂流する(t=60min).また,一部のコンテナは,ふ頭 南東のコの字型の湾内へと侵入し,再上陸するものもあ る.図には示していないが,先程のケースと同じように

t=78minでふ頭に残存していたコンテナ群が南岸から海

域 へ 落 下 し , ふ 頭 西 沖 あ る い は 南 沖 へ 漂 流 を 始 め る

(t=116min).t=250minには,ほぼすべてのコンテナが海 底に水没するが,先述のケースと異なり,コの字型湾と 人工島に挟まれたふ頭南沖の海域に多く沈没した.ふ頭 南西角と人工島北東角の間から人工島南東にかけての海 域は,周期的に流れの方向が変わるので,漂流コンテナ はこの海域に引き込まれ易い.

c)漂流限界時間2時間のケース

図-6に,漂流限界時間2時間のケースのコンテナ位置 分布を示す.本ケースでは,最初の来襲津波によって漂 流を始めたコンテナ群の一部は,ふ頭北西の防波堤沿い に西へ移動し(t=58min),人工島から北西方向に伸びる 別の防波堤との間を通ってさらに北上する(t=78min).

また,漂流限界時間1時間のケースと同じく,コの字型 湾内で再上陸するコンテナも見られる.t=152minでは,

ふ頭北沖でいくつかのコンテナが水没しているが,これ らは,ふ頭西沖の防波堤間を通って,一度図の表示領域 よりもさらに北まで漂流した後,汀線沿いに南下したも のである.t=500minでは,かなり広範囲に渡ってコンテ ナが散在している.主たる水没領域は,ふ頭西沖,さら にその北西沖,コの字型湾内,人工島南沖であった.

図-5 コンテナ群の漂流(漂流限界時間1時間)

(5)

図-7に,各ケースにおけるコンテナ最終水没位置を示 す.当然ながら,漂流限界時間が長いケースほど遠方に 到達する結果となった.初期位置からの水没位置までの それぞれのケースにおける最大距離は,約0.8km,約

1.7km,約2.6 kmであった.今回実施した3ケースでは,

コンテナ群はほぼ汀線に沿って漂流したので,最大でも せいぜい汀線から2km程度沖までしか到達しなかった

が,漂流限界時間がさらに長ければ外洋まで漂流するこ ともあり得る.

4. おわりに

本研究では,津波来襲時のコンテナ群の漂流挙動を海 底に水没するまで追跡できる数値モデルを開発した.シ ミュレーションは,空コンテナが浸水して水没するまで の漂流限界時間を変えて行い,コンテナの水没位置範囲 の違いを確認した.

本モデルでは,広範囲の解析を目的としたため,現象 の詳細については簡略化して扱っている.したがって,

本モデルからは,コンテナと構造物との衝突力を直接に は評価できない.しかし,本モデルによってコンテナの 移動速度を推定した後,著者ら(2009)が昨年実施した 三次元計算を行えば移動するコンテナと構造物との衝突 力の評価も計算が可能である.

参 考 文 献

熊谷兼太郎・小田勝也・藤井直樹(2006):津波によるコンテ ナの漂流挙動シミュレーションモデルの適用性,海岸工 学論文集,第53巻,pp. 241-245.

熊谷兼太郎・小田勝也・藤井直樹(2008):コンテナの沈没挙 動測定の現地実験と港湾における漂流数値シミュレーシ ョン,海岸工学論文集,第55巻,pp. 271-275.

後藤仁志(2004):数値流砂水理学,森北出版株式会社,223p.

後藤仁志・五十里洋行・殿最浩司・柴田卓詞・原田知弥・溝 江敦基(2009):粒子法によるエプロン上のコンテナ漂流 挙動追跡のシミュレーション,土木学会論文集B2(海岸 工学),Vol.B2-65,No.1,pp.261-265.

水谷法美・高木祐介・白石和睦・宮島正悟・富田孝史(2005): エプロン上のコンテナに作用する津波力と漂流衝突力に関 する研究,海岸工学論文集,第52巻,pp.741-745.

安野浩一朗・西畑 剛・森屋陽一(2007):浮体特性を考慮し た漂流シミュレーションの適用性に関する研究,海洋開 発論文集,第23巻,pp.87-92.

図-6 コンテナ群の漂流(漂流限界時間2時間)

図-7 最終水没位置

参照

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