キーワード 上流護床工 洪水被害 多摩川宿河原堰 水路実験 交互砂州 水流蛇行
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水路実験による堰上流護床工の損壊現象についての検討
岩手大学 正会員 ○三輪 弌
(株)アルファ技研 高井 和彦
1.はじめに
取水堰において,堰下流の河床局所洗堀に対処するため,護床工が設置されることが多い1)が,堰の上流 側洗堀を防ぐため,上流側に設置されている堰もある.多摩川の宿河原堰では,平成
19
年9
月の9
号台風に よる出水2)で,Fig.1 にみられる通り,多量の上流護床工が流亡した.上流護床工で,これだけの大きな災害が 起きた事例はあまり知られていないので,水路実験によ って現象を再現し,発生要因とメカニズムを解析した.
2.実験水路の諸元と実験方法
実験は,Fig.2 にあるような蛇行水路を用い,流量
0.4L/s,0.6L/s,0.8L/s
の3通りで通水した.堰は,水路全長の上流から
2/3
付近の半波長区間で4個所に順次移 動させて配置した.護床工模型はTable 1
に記した5種 類とし,それぞれを堰の上流側に堰に並行において通水 し,護床工模型の流亡状況を調べた.3.実験経過
堰通水前,堰の上流側砂床は堰の天端高に合わせ,堰 下流は6mm下がりで平坦に敷き均して通水を開始する.
通水後,蛇行水路の凸岸側下流部に堆砂が発達し,凹岸 側下流河岸に沿って洗掘が始まり,交互砂洲形状が形成 される.堰のない状態で発達した当該蛇行半波長区間の 砂床形状は,
Fig.3
のようになり,横断測線13, 14
付近 の最も深い淵になり,広がりながら浅くなっていく.堰③においては,砂州形状が発達すると,護床工上流 砂床が掘れて上流端が浮き上がり,淵部から上方に向か う流れによって,めくれ上がるように
護床工が流亡する.流亡個所は,Fig.2 にみられるように,淵部で洪水主流が 通過する右岸側に限られ,左岸の寄洲 側では護床工は埋もれてしまう.
4.実験結果
護床工の種類と堰位置によって,
Table 2
のように護床工の流亡状況は異なる.堰の上流に沿って
2
列に敷き 並べた小タイルの結果をみると,堰①Fig.1 多摩川宿河原堰上流護床工の被災
(H.19年9月台風9号による.同年10月三輪撮影)
Fig.2 上流護床工の被災再現実験
(水路幅:20cm,全長:8m,蛇行半波長:86cm,蛇行角:24°,水路 谷勾配:1/70,流量:0.6L/s,砂:0.8mm平均粒径,1.49水中比重)
Fig.3 実験に用いた蛇行水路における砂床形状と堰の設置位置
(Fig.2 と同じ水路.ただし流量は0.8L/s)
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
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では
3
流量とも流亡しないのに対し,堰③ では,全流量で流亡し,0.8L/sの場合には9
個が流亡した.堰②,堰④は,その半分 以下であり,堰と砂州形状との位置関係が 結果に大きく影響している.他の護床工模型の実験結果も考慮する
と,
(1)直上流が淵になる堰③で流亡しやす
い.(2)流量が大きくなると流亡しやすい.
(3)護床工が大きく,重くなると流亡しにく
い.(4) ナットのように,重さと厚みのあ る護床工が最も流亡しにくい.といえる.5.結果の考察
堰③0.8L/sで右岸側壁寄りを中心に
9
個 の小タイルが流亡した状況がFig.4 であ
る.流亡は,Fig.5 のようにタイルの上流 側砂床が掘れ,下方からの流体力Fが働く ことによって浮き上がるか,上方へ回転す るかによって下流へ流れ去る.Fの大きさ は流速の2
乗に比例するので,流速が大き くなる右岸側で流亡する.上向きと下向き の力とモーメントの大小関係を概算して みると,小タイルでは多数流亡するのに,4
コ連結タイルやブリキ板で流亡数が少なくなり,ナット では流亡しないことが説明できる.6.宿河原堰における被災との対応関係
宿河原堰は,Fig.1 のように上流側で左岸側に寄洲/
右岸側に深掘れという河床形状であり,堰③にあたる位 置関係である.小タイルを配置した実験での流亡状況が,
現地での被災の様子とよく対応しているといえよう.
7.まとめと今後の課題
水路幅
20cm
という小型水路の実験であったが,堰上流 護床工の流亡メカニズムをうまく再現できた.今後は,実験蛇行水路における流速分布測定を試みて,さらに定 量的な検討を進めるとともに,使用した護床工模型と現 場ブロックとの力学的な相似関係についても考察を深め ていきたい.
[謝辞]京浜河川事務所の担当者の方々から貴重な資料と情報を提供 いただいた.H.21 年度三輪研究室専攻生には水路実験にあたってご
尽力いただいた.研究費用の一部は,科研費基盤研究(C)と奨学寄付金(日本工営)によった.以上,記して心よりお礼申し上げる.
[参考文献]1)高井・三輪(2010)堰下流河床洗堀の発生メカニズムと深掘れ軽減対策,水土の知(農業農村工学会誌)78-1,pp. 49-52 2)国 土交通省関東地 方整備局京浜河川 事務所(2007~2009):多摩川 「過去の水害 記録」 ,京浜河川事務 所ホームペー ジ,
http://www.ktr.mlit.go.jp/keihin/disaster/record/index.htm
Table 1 上流護床工模型の諸元一覧 護床工
諸元 小タイル 4コ連結
タイル ブリキ板 画鋲 ナット
縦横 (mm) 10×10 20×20 10.4×10.4 直径 10 10×10
厚み (mm) 4.3 4.3 0.1 1.0 2.5
比重 2.31 2.31 8.11 8.05 7.84
備考 2 列配置 1 列配置 1 列配置 2 列配置
中央に直径 6mm の円穴
2 列配置
Table 2 上流護床工のタイプ別流亡状況一覧
護床工タイプ
堰位置 流量 小タイル 4コ連結
タイル ブリキ板 金属
画鋲 ナット
①
0.4 L/s 0 ― ― ― ―
0.6 0 ― ― ― ―
0.8 0 ― ― ― ―
②
0.4 0 ― ― ― ―
0.6 2 (1) ― ― ―
0.8 4 1(1) ― ― ―
③
0.4 2 0 ― ― ―
0.6 6 1 ― ― ―
0.8 9 2 ― 7 0
④
0.4 0 0 0 0 ―
0.6 1 0 1 0 ―
0.8 4 2 3 4 ―
①から順次 22cm 間隔
で下流へ移して設置 注)ー:実施せず,(1):位置が少しずれたもの
Fig.5 上流護床工に働く力とモーメントの概略
G:護床工模型重力,F:下面流体力,D:上流面流体力 Md:O軸回り下向きモーメント,Mu:O軸回り上向きモーメン
ト
Fig.4 上流護床工の流亡状況
(小タイルを配置した堰③,0.8L/sの実験)
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
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