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動的解析による高松塚古墳の損傷要因の検討

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Academic year: 2022

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動的解析による高松塚古墳の損傷要因の検討

京 都 大 学 正会員 三村 衛 地域地盤環境研究所 正会員 ○長屋淳一 正会員 劉 遹剣 東 京 文 化 財 研 究 所 石崎武志

1.はじめに

壁画保存のため石室を解体するにあたり高松塚古墳の大規模な発掘調査が行われ,墳丘内部に亀裂や地割れが縦 横に走っており,墳丘内の石室にも亀裂があることが確認された。専門家の調査によれば,これらの亀裂や地割れ は過去に発生した巨大地震によるものとされている1)。昨年は,動的FEM解析を行い,繰返し荷重(正弦波)によ る墳丘部に発生する応力・ひずみ状況より,亀裂発生のメカニズムを考察した2)。本論文では,当該地における想定 地震動を用いた動的FEM解析を実施し,墳丘に発生する応力を分析し, さらに,石室も細分化してモデル化し,石 室に発生する応力についても検討を行なった。

2.解析条件

図-1に動的FEM解析の有限要素メッシュ図を示 す。高松塚古墳は自然堆積地盤(シルト混じり細 砂)の上に石室(2m×2.3m×3.8m)があり,石室の 周りは土盛りした版築で覆われた構造である。今 回の解析モデルでは石室と地盤の間および上壁,

下壁と側壁の間にジョイント要素を設けて,地震 時における剥離が生じた場合にも対応できるモデ ルとした。また,地震時における石室の応力分布

状況を表すために石室の壁を厚さ方向に細分化した。表-1に解析パ ラメータ2)を示す。動的解析は地盤は石室周りの版築と石室下部の 自然堆積地盤の2層をRamberg-Osgoodモデル(ROモデル)による非線 形モデル,石室は弾性材料とした。図-2に入力地震動とパワースペ クトルを示す。当該地付近には墳丘に影響を与えるような地震を引 き起こす断層はなく,過去の地震で墳丘に影響を及ぼし得る地震は 南海・東南海地震であると考えられるため,動的解析における入力地 震動は鶴来ら3)による南海・東南海地震の大阪府域における強震動

予測の内,当該地の地盤条件に類似した大阪南東部のCYH観測点を対象とした地震動を用いた。パワースペクトル は周波数3~5(1/sec)に集中し,周期0.2~0.3 (sec)の成分が大きく,墳丘の固有周期に近い地震動である。

3.解析結果

図-3 に最大変位発生時のせん断応力τXZを示す。せん断応力 は,平面的には墳丘の法尻付近,版築内部では石室周辺に10~

15kPa 程度のせん断応力が発生するが,版築の一面せん断試験

より得られたせん断強度τf=100~150kPaに対して小さな値であ り,地震時のせん断による亀裂の可能性は低いと思われる。ま た,図-4にX方向応力σXXのコンター図を示す。σXXは法尻付 近および石室の上部隅角部に20~25kPa程度の引張応力が発生 しており,版築のような土質材料では引張強度が0に近く,引 張応力により亀裂が生じる可能性がある。

4.石室の応力

図-5に示すように石室の天井石には南北に亀裂が生じて2つ に割れていることがわかっている1)。図-6,7に動的FEM解析で

表-1 解析パラメータ

地盤1 地盤2 地盤3

土壌化版築 版築 自然堆積地盤 石室 単位体積重量

γ (kN/m3) 14 16 18 18.76 ポアソン比 ν 0.488 0.478 0.45 0.373 せん断弾性係数 31500 120000

G0(kN/m2) (Vs=150m/s) (Vs=260m/s) 1.056×106 最大減衰率 hmax 0.3 0.3

γ0.5 0.0025 0.0025

図-1 墳丘部と石室の有限要素メッシュ図

板厚を 3 分割

地盤3 (自然堆積地盤)

加振方向:X 方向

21.6m 20.8m

側方境界:

水平ローラー (土壌化した版築)地盤1

石室

地盤2 (版築)

石室と地盤の間の ジョイント要素

上壁,下壁と側壁の 間にジョイント要素

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 5 10 15 20

周波数,(1/s) ースペク(cm2 /s3 )

-150 -100 -50 0 50 100 150

0 10 20 30 40 50 60

時間,t,(s)

加速度Acc(Gal)

図-2 入力地震動の波形とパワースペクトル

キーワード 古墳,動的解析,地震,亀裂,版築,

連絡先 〒550-0012 大阪府大阪市立売堀 4 丁目 3 番 2 号 (株)地域地盤環境研究所 TEL:06-6539-2971 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

‑761‑

Ⅲ‑381

(2)

図-7 石室の応力σxx

+:引張

-:圧縮

左側へ変位最大時 (時刻 27.3 秒)

右側へ変位最大時 (時刻 27.30 秒)

図-6 石室の応力τxz

左側へ変位最大時 (時刻 27.3 秒)

右側へ変位最大時 (時刻 27.30 秒)

図-5 石室に発生した亀裂 得られた最大変位発生時における石室のせん断応力

τXZ,X方向応力σXXを示す。地震時に発生する変位 は下面よりも上面での変位が大きくひし形状に変位 するため,せん断応力は石室内側の隅角部および石 室の南北の側壁に大きく作用し,σXXは左側に振れ た場合には壁の外面では上面の左側および下面の右 側に作用し,内面では上壁の右側および下壁の左側

に引張応力が発生する。この時の発生応力はせん断力が180kPa,引張応力が221kPa程度であり,石室の強度(一軸圧

縮強さ6.39MPa,圧裂引張強さ1.06MPa)に対して非常に小さい値である。また,図-5の左図に示すように実際の石

室は壁が分割された構造であり,

解析でモデル化したよりも変位 の自由度が大きく,発生応力は さらに小さいと考えられること から,石室の亀裂は地震により 発生したとは考え難い。但し,

何らかの要因で発生した亀裂が 地震により増幅した可能性はあ る。

5.まとめ

①地震動による墳丘に作用する せん断力および引張応力は墳

丘ののり尻付近および石室の上部隅角部に作用し,地震時に発生する引張応力により亀裂が生じたと考えられる。

②地震動により発生する石室の応力では,地震動が亀裂を生じさせた直接の要因ではないと思われるが,亀裂を増 幅された可能性はある。

参考文献

1)()文化財研究所 奈良文化財研究所:高松塚古墳の調査-国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討のための平成16年度発掘調 査報告-,2006. 2)三村 衛,長屋淳一,石崎武志:高松塚古墳墳丘部の動的解析,第64回土木学会年次学術講演会Ⅲ,pp515-516,

2009. 3)鶴来雅人,趙伯明,Petukhin Anatoly,香川敬生:南海・東南海地震の大阪府域における強震動予測,構造工学論文集Vil.51A,

501-512(2005)

図-3 せん断応力 τxzのコンター図 (最大変位発生時)

上から見たコンター図

τxz(kPa)

加振方向:X 方向

せん断応力が 発生する部分

石室中央部の XZ 断面におけるコンター図

図-4 X方向応力 σxxのコンター図 (最大変位発生時)

σxx(kPa)

加振方向:X 方向

上から見たコンター図

引張応力が卓 越する部分

石室中央部の XZ 断面におけるコンター図

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

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参照

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