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『経 営 戦略 と企 業 評価 に関する研 究 』

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Academic year: 2022

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(1)『 経 営 戦略 と企 業 評価 に関する研 究 』. 藤田. 誠. 提出. 博士学位申請論文審査要旨. 『 経 営戦 略 と企業 評 価 に関する研 究』. 工.本 論 文の 主 旨 と構 成 1.本. 諭文の主 旨. 本 論 文 は 、 企 業 評 価 の 新 しい 概 念 体 系 お よ び 測 定 モ デ ル の 開 発 に つ い て 研 究 し た もの で あ る。 こ の 研 究 に お い て は、 会 計 学 、 財 務 論(フ. ァ イ ナ ン ス、 以 下 、 「財 務 論 」 と い う)等. の 対 象 で あ る貨 幣 額 で 表 現 され る 財 務 数 値 お よ び そ れ に 基 づ く財 務 指 標 を用 い る企 業 評 価 論 の フ レ ー ム ワ ー ク に は 必 ず し も捉 わ れ ず に 、経 営 戦 略 論 に お け る資 源 べ 一 ス 論(Resource BasedView)(以. 下 、 「RBV」 とい う)を 縦 糸 に 、 経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 を 横 糸 に 、 伝 統. 的 財 務 報 告 を 改 普 す る エ ン ハ ン ス ト ・ビ ジ ネ ス リ ポ ー テ ィ ン グ(EnhancedBusiness Reporting、 以 下 、 「EBR」 とい う)の 視 点 か ら 「非 財 務 数値 を加 味 した 企 業 評 価 」 の あ り方 を追 求 す る こ とを 重 要 な研 究 課 題 と して い る。 本 論 文 の 提 出 者(以. 下、「 提 出 者 」 と い う)の 具 体 的 な 問 題 意 識 は、 イ ン タ ン ジ ブ ル ズ 、. IC等 の 研 究 な ど で 会 計 学 お よ び 財 務 論 は も と よ り、 知 的 財 産 論 、 イ ノベ ー シ ョ ン論 等 学 際 的 な 分 野 に も拡 が り を み せ て い る 「企 業 が 保 有 す る経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 が 、 持 続 的 競 争 優 位 性 を も た らす 重 要 な 源 泉 で あ る」 との 命 題 を立 証 し よ う とす る点 に あ る, 提 出 者 は.か. か る 問 題 意 識 か ら従 来 の 先 行 研 究 で は 必 ず し も明 確 に され て こ な か っ た 経. 営 資 源 と組 織 能 力 を 概 念 レベ ル お よ び 測 定 レベ ル で 区 別 す る立 場 か ら両 者 を識 別 し、 も っ て 精 緻 な 概 念 規 定 お よび 概 念 の 体 系 化 に 注 力 す る と と も に 、 企 業 経 営 の 実 態 に関 して 定 量 お よび 定 性 か ら成 る2つ の 因 子 を 用 い て 問 題 解 明 に あ た り、 経 営 学 の な か で も組 織 論 的 な 概 念 を 援 用 した 測 定 モ デ ル の 開 発 な らび に体 系 化 を 目指 して い る 。 ま た、 本 研 究 の た め の 前 提 と して 企 業 評 価 の 視 点 を明 らか に した う え で、RBV概 究 し、EBRの. 中 心 と な る 「見 え ざ る経 営 資 源(イ. 念 を論. ン タ ン ジ ブル ズ)」 の な か か らブ ラ ン ドお. よ び 特 許 権 に 焦 点 を絞 り、 そ れ らの 価 値 評 価 モ デ ル に検 討 を 加 え た う えで 、 独 自 に 収 集 し た 知 的 財 産 戦 略 の マ ネ ジ メ ン トに 関 す る デ ー タに つ い て 共 分 散 構 造 分 析 に よ る定 量 的 ・実 証 分 析 を 行 う こ と に よ って 、 体 系 的 な 組 織 能 力 の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク お よ び測 定 モ デ ル を 展 開 し、 も っ て 今 後 の 企 業 評 価 の あ り方 につ い て 提 言 を試 み て い る。 以 上 、 本 論 文 は 、 経 営 学 に お け る経 営 戦 略 論 の 内 容 を ベ ー ス に しつ つ 、 最 新 の 組 織 論 的. 一157̲.

(2) 『 経営 戦 略 と企 業 評価 に関する研 究』. 経 営 学 、 会 計 学 、 財 務 論 、 知 的 財 産 等 の 研 究 動 向 を も学 際 的 に 摂 取 した 意 欲 的 な 理 論 構 築 を試 み て い る。. 2,本. 論文の構成. 本 論 文 の 構 成 は、 以 下 の とお りで あ る,. 序. 論. 一 経 営 戦 略 、企 業 評 価 とReSOurceBasedView一. 第1節. 論 文 の 目的 と基 本 的 間 題 意 識. 第2節. 論文の構成. 第1章. 企業評価の視点. 第1節. 問題の所在. 第2節. 財務論的企業評 価論の 基本的図式. 第3節. 組織 論 的 企 業 評 価 の 基 本 的 視 座. 第4節. 企 業 評 価 に お け る財 務 的 側 面 と 社 会 性. 第5節. 小. 第2章. 括. 企 業 評 価 とResourceBasedView ‑ResourceBasedVicw小. 第1節. 史一. 問題 の 所 在. 第2節Selznickの. 独 白能 力 概 念 とRBV. 第3節Penroseの. 企 業 成 長 論 に み るRBV. 第4節Nelson&Winterの. 進 化 論 とRBV. 第5節WernerfeltのRBV 第6節. 伊丹 の 「見 え ざ る 資 産 」 論 とRBV. 第7節BazneyのRBV 第8節. その 他 の 論 者 にみ るRAV. 第9節RBVと 第10節. 第3章. 企業 論 小. 括. 経 営 資源 、 組織 能 力 と競 争 優 位 性. 第1節. 問題の所在. 第2節. 資産 と経 営 資 源. 第3節. 経 営 資 源 と組 織 能 カ. ー158一.

(3) 『 経 営戦 略 と企業 評 価 に関する研 究」. 第4節. 経 営 資 源 、 組 織 能 力 と組 織 デ ザ イ ン. 第5節. 組 織 能 力 、 知 識 と ス キ.ル. 第6節. 経 営 資源 と組 織 能 力 の 下 位 次 元. 第7節RBVと. 組織 観. 第8節. 経 営 資 源 、 組 織 能 力 と競 争 優 位 性. 第9節. 小. 第4章. 括. イ ン タ ン ジ ブル ズ とIC. 第1節. 問題の所在. 第2節. イ ン タ ンジ プ ル ズ研 究 の 背 景 と基 本 概 念. 第3節. インタンジブルズの特 徴. 第4節. イ ン タ ン ジブ ル ズ の 測 定. 第5節[Cの. 背 景 と基 本 概 念. 第6節ICの. 構 成 と分 類. 第7節. イ ン タ ンジ ブ ル 、ICとxsv. 第8節. イ ン タ ン ジ ブル ズ の 価 値 評 価 ア プ ロ ー チ. 第9節. 小. 第5章. 括. ブ ラ ン ドの 価 値 評 価 とマ ネ ジ メ ン ト. 第1節. 問題の所在. 第2節. ブ ラ ン ド ・エ ク イテ ィの概 念. 第3節. 各種 の ブ ラ ン ド価 値 評 価 モ デ ル. 第4節. 経 済 産 業 省 企 業 法 制 研 究 会 モ デ ル の概 要. 第5節. ブ ラ ン ド ・マ ネ ジメ ン トと ブ ラ ン ド価 値 の 関 連. 第6節. プ ラ ン ド ・マ ネ ジ メ ン トとブ ラ ン ド価 値 に関 す る追 試. 第7節. 小. 第6章. 括. 知 的 財 産 の価 埴 評 価 一 特 許 権 を中 心 に 一. 第1節. 問題の 所在. 第2節. 『 大綱」 『 推 進 計 画 』 と経 営 戦 略. 第3節. イ ノベ ー シ ョン と知 財 戦 略. 第4節. 知 的 財 産 の 価 値 評 価 の 目的 と必 要 性. 第5節. 経 営 戦 略 と特 許 権 価 値 評 価. 一159一.

(4) 『経営 戦 略 と企業 評価 に関する研究 』. 第6節. 特許権 価値 評価 モデルの概要. 第7節. 小. 第7章. 括. 知 的財産戦 略 と組織マ ネ ジメン ト ー 特 許 権 を中 心 に 一. 第1節. 問題の 所在. 第2節. イ ノベ ー シ ョ ン、 研 究 開 発 と特 許 出 願 の 同 期 化. 第3節. 知 財 戦 略 と組 織 マ ネ ジ メ ン ト. 第4節. 調査方法. 第5節. 分析 結果. 第6節. 考. 察. 第7節. 小. 括. 付. 表. 第8章. 結. 補. 組 織 能 力 の概 念 枠 組 み と測 定 モ デ ル. 第1節. 問題 の所在. 第2節. 組 織 能 力 の 測 定 モ デ ル:技. 第3節. 組 織 能 力 の 測 定 モ デ ル とBalancedScorecard(BSC). 第4節. 組 織 能 力 の測 定 モ デ ル. 第5節. 小. 術 力 を中 心 に. 括. 論 第1節. 体 系 化 と定 量 化 の 方 向性. 第2節. マ ク ロ と ミク ロの 連 結. 第3節. 結. 論. 語. 一 い わ ゆ る 「方 法 論 」 に 関 して 一. 第1節. 問題の所 在. 第2節Burrell&Morganの. 図式 の検討. 第3節. 「社 会 的 に構 成 され る 現 実 」 と 「間 主 観 性 」 に つ い て. 第4節. 理 論 と規 則 性 ・安 定 性. 一160一.

(5) 『 経 営 戦略 と企 業評 価に関 する研 究』. II,本. 論 文の 概要. 本 論 文 の 概 要 を述 べ れ ば 、 次 の と お りで あ る。 序 論 に お い て は.本. 論 文 の 主 題 で あ る経 営 戦 略 な らび に企 業 評 価 を研 究 す る こ との 意 義 、. 目 的 、 お よ び そ の 研 究 方 法 に つ い て 論 述 した う え で 、 経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 に 関 連 す る マ ネ ジ メ ン ト ・モ デ ル を提 示 す る こ とが 本 論 文 の 目的 で あ る 旨 を述 べ て い る。 ま た 、 本 論 文 の 縦 糸 で あ るRBVは. 、 「企 業 の 事 業 構 造 ま た は 各 事 業 に お け る 競 争(事. ー ンが 、 企 業 の 持 続 的 競 争 優 位 性 に 影 響 を与 え る」 とい うtジ. 業)戦. 略 のパ タ. シ ョニ ング 学 派 の 発 想 を 否. 定 す る もの で は な く、そ れ を補 完 す る理 論 で あ る との 立 場 を と って い る。 さ らに 、本 論 文 は 、 理 論 的 な概 念 定 義 お よび 概 念 枠 組 構 築 を 志 向 す る が、 同 時 に 実 務 面 へ の 応 用 も強 く意 識 し て い る と論 述 して い る。 第1章. 「企 業 評 価 の 視 点 」 に お い て は 、 本 論 文 に お け る企 業 評 価 の 基 本 的 視 点 に つ い て. 論 述 して い る。 従 来 、 財 務 論 に お い て 、 企 業 評 価 は 新 古 典 派 経 済 学 に 依 拠 して か な りの 程 度 ま で 共 通 の 埋 解 が 得 られ て い る 分 野 で あ る と い わ れ て い る,そ の 具 体 的 内 容 を単 純 化 し て 述 べ れ ば 、 い み じ く も若 杉 敬 明 教 授 が 「資 本 の 観 点 か らす れ ば 、 企 業 は 、 卵 な らぬ 利 益 を 生 む 鶏 で あ る。 鶏 の 価 格 が 卵 を生 む 能 力 で 決 ま る よ う に 、 企 業 の 価 格 一 資 本 と して の 企 業 の 価 格 を企 業 価 値 と い う一 も、 企 業 が 資 本 の た め に 将 来 どれ だ け の利 益 を生 み 出 す か に よ っ て 決 ま る」 と の 論 述 に 集 約 され る 。 か か る財 務 論 に お け る企 業 評 価 モ デ ル の 基 本 的 思 考 様 式 は 「株 主 の 富 極 大 志 向 型 最 適 財 務 決 定 論 」 と い わ れ て い る,こ. のモデ ルの技 術 的基. 本 構 造 は 、 企 業 が創 出 す る将 来 キ ャ ッシ ュ ・フ ロ ー の 現 在 価 値 で 計 算 した 経 済 価 値 を も っ て 企 業 価 値 とみ な す とい う も の で あ る 。 本 論 文 に お い て も、 第5章 る財 務 論 的 企 業 評 価 ア プ ロ ー チ の 延 長 線 上 に あ る最 新 のDCFア. お よ び 第6章. で、か か. プ ロー チ で あ る 期 待 キ ャ ッ. シ ュ ・フ ロ ー ・ア プ ロ ー チ を援 用 して 、 経 営 資 源 の 価 値 評 価 を提 示 して い る 。 も と よ り、 提 出 者 は か か る財 務 論 的 企 業 評 価 ア プ ロ ー チ の 検 討 に 先 立 ち、 経 営 学 的 視 点 は も と よ り、 多 元 的 な 利 害 関 係 者 論 の 視 点 も考 慮 に 入 れ る と と も に 、 企 業 の 祉 会 性 に つ い て も検 討 を 加 え て い る。 そ の 結 果 、 企 業 を め ぐ る 多様 な利 害 関 係 者 の利 害 ま た は企 業 評 価 の 基 準 は 、 企 業 の 財 務 的 側 面 に 関 連 して お り、 財 務 論 的 モ デ ル に 依 拠 し た企 業 評 価 は 、 多 元 的 な 利 害 関 係 者 論 と も両 立 し う る と の 事 実 認 識 を研 究 の 出 発 点 と して 考 察 を加 え て い る。 まずMintzbergの. 所 論 を 手 が か り と して 、 複 数 の企 業 観 を検 討 しつ つ 、 多元 的 目 的観 ま た. は 多元 的利 害 関 係 者 論 に基 づ く企 業 評 価 の 妥 当性 を主 張 して い る。 従 来 の 財 務 論 的 企 業 評 価 が 依 拠 す る企 業 観 は経 済 学 的 企 業 観 で あ り、 そ こ で は 「 企 業= オ ー ナ ー 経 営 者 」 と み な され 、 企 業 と は 継 続 的 な利 益 追 求 を 目的 と す る 資 本 の 総 体 と措 定 され て き た と い え る。 した が っ て 、 企 業 評 価 の 基 準 は"Oneactor,onegoalmode]"と. 一isi一. して.

(6) 『経営 戦 略 と企 業 評価 に関す る研 究』. 知 ら れ て い る よ うに 、 利 益 、 収 益 性 な ど 経 済 性 を重 視 す る 財 務 指 標 に な る の は 論 理 的 な 帰 結 で あ る と され て き た, 他 方 、 組 織 論 的 企 業 観 で は、 企 業 組 織 の 目 的 形 成 に は 、 多様 な 利 害 関 係 者 ま た は ス テ ー ク ホ ール ダ ー(以 下 、 「利 害 関係 者 」 とい う)が 関 連 す る と い う 多元 的 目的 観 ま た は 多 元 的 利 害 関 係 者 論 が 有 力 で あ る。 組 織 論 的 企 業 観 に は 、3つ の バ リエ ー シ ゴ ンが あ るが 、 そ の1つ goalsmodel"と. が"Oneactor,multiple. して 知 られ て い る モ デ ル で あ る。 こ の モ デ ル は、peakcoordinatorと. よ ばれ. る 人 間 が 、 企 業 に 関 連 す る さ ま ざ ま な 目 的 を 調 整 しな が ら、 実 際 の 企 業 目的 群 を形 成 す る とみ な す 考 え方 で あ る。 した が って 、 利 潤 等 を単 一 の 企 業 日的 と して 想 定 す るの で は な く、 多 元 的 な 目的 を想 定 す る こ とに な る。2つ め の 組 織 論 的 企 業 観 は 、"Multipleactors,multiple goalsmodel"で. あ る。 この モ デ ル は 、 企 業 に は 当 初 か ら明 白 な 目的 が設 定 され て い る の で. は な く、 企 業 活 動 に 関 与 す る 多様 な 利 害 関 係 者 間 の 交 渉 を 通 じて.結 形 成 され る とみ な す 考 え方 で あ る。 組 織 論 的 企 業 観 の3つ. 果 と して 企 業 目 的 が. め は 、"Multipleactors,nogoals". モ デ ル と して 知 られ て い る もの で あ り、 組 織 と は 利 害 関 係 者 が 自 分 の 利 害 を実 現 す る 一 種 の 市 場 また は政 治 的 駆 け引 き の場(ロ. ビ イ ン グ活 動 の 場)と. み な す 考 え方 で あ る。. 企 業 を 取 り巻 く利 害 関 係 者 は、 株 主 は も と よ り、 債 権 者 、 従 業 員 、 消 費 者 、 関 連 業 者 、 地 域 社 会 、 国 家 ・地 方 自 治 体 、 各 種 団 体 等 が 想 定 され る と こ ろか ら、 各 利 害 関 係 者 の 立 場 に よ っ て、 企 業 を 評 価 す る 目線 ま た は 基 準 も異 な っ て く る、 か か る利 害 関 係 者 の 求 め る具 体 的 な ニ ー ズ を あ げ れ ば 、 株 主 は 配 当、 株 価 の 上 昇 、 残 余 財 産 の 分 配 に 、 債 権 者 は 利 子 の 徴 収 、 債 権 の 売 買 お よ び 元 本 の 回 収 に、 従 業 員 は 賃 金 ・報 酬 支 払 い な ど の 労 働 条 件 に 、 消 費 者 は 価 格 に 見 合 っ た 製 品 ・サ ー ビ スの 提 供 に、 関 連 業 者 は 納 入代 金 の 徴 収 、 製 品 と イ ン セ ン テ ィブ の 提 供 に、 国 ・地 方 自治 体 は税 金 の 徴 収 に 、 ま た 地 域 社 会 は 企 業 の 雇 用 機 会 な ど に 、 実 に 多 種 多 様 で あ る。 した が っ て 、 各 種 利 害 関 係 者 の 存 在 を 前 提 と した場 合 、 企 業 は そ れ ぞ れ の ニ ー ズ に適 合 す る情 報 を提 供 し、 ニ ー ズ と情 報 の 達 成 度 を 反 映 す る 基 準 で 企 業 を評 価 で き る の が 理 想 で あ る。 しか し、 現 行 の 企 業 会 計 は 、 投 資 者 お よ び 債 権 者 の ニ ー ズ と意 思 決 定 に 焦 点 を合 わ せ 、 そ こ か らア ウ トプ ッ ト され る 外 部 情 報 も投 資 者 お よ び 債 権 者 向 け で あ る 。 そ れ は 、 投 資 者 お よび 債 権 者 は 他 の 利 害 関 係 者 よ り も外 部情 報 に 依 存 す る 度 合 い が 高 い こ と 、 そ の 意 思 決 定 プ ロ セ ス が比 較 的 良 く知 ら れ て い る こ と、 そ の 意 思 決 定 が 経 済 社 会 お よび 資 源 配 分 に及 ぽ す 影 響 が 大 き い な ど の 理 由 に 加 えて 、 投 資 者 お よ び 債 権 者 の ニ ー ズ を 満 足 させ る た め に提 供 され る外 部 情 報 は 、 基 本 的 に 企 業 の 財 務 的 側 面 に 関 心 を 持 っ て い る他 の 利 害 関 係 者 に と っ て も有 用 で あ る と い う 理 由 に 他 な らい 。 し た が っ て 、 利 害 関 係 者 が企 業 を 評 価 す る 目線 ま た は 基 準 は 、 投 資 者 お よ び 債 権 者 の ニ ー ズ を 反 映 す る 企 業 の 財 務 的 側 面 を基 本 と して き た。 しか し、isso年 代 の 生 産 者 主 権 か ら消 費 者 主 権 へ と社 会 情 勢 が大 き く変 化 した な どの 影. 一162一.

(7) r経営 戦略 と企 業 評価 に関す る研究 』. 響 で 、 今 日企 業 評 価 に関 連 して 、 企 業 の 社 会 性 、 企 業 の 社 会 的 責 任 ま た は企 業 倫 理 と い う 基 準 を 考 慮 す る こ とは 、1つ の 社 会 常 識 で あ り、 社 会 規 範 に な っ て い る と い え る。 企 業 の 社 会 性 と は 、 企 業 倫 理 、 企 業 の 社 会 的 責 任 お よ び 企 業 の 社 会 即 応 性 を 包 摂 す る概 念 で あ る 。 企 業 倫 理 とは 企 業 の 意 思 決 定 者 に よ る 、 個 人 的 ・組 織 的 行 為 の 道 徳 的 意 義 に 関 す る価 値 観 に 基 づ く 内 省 お よび 選 択 を 意 味 し、 企 業 の 社 会 的 責 任 は 企 業 の 利 害 関 係 者 に対 して 、 好 ま しい 成 果 を も た らす こ と に 関 わ っ て い る 。 さ ら に、 企 業 の 社 会 即 応 性 は企 業 内 外 の 利 害 関 係 者 の 多様 な ニ ー ズ ・期 待 を予 測 し、 そ れ に即 応 す る こ と と され る。 以 上 の よ うに、 企 業 の 社 会 性 に は 多様 な側 面 が 含 まれ る が 、 こ こ で重 要 な の は 、 企 業 活 動 の 評 価 に際 して、 財 務 的 ま た は経 済 的 な 基 準 と は異 な る価 値 観 ・尺 度 の 導 入 が 要 請 され て い る点 で あ る とい え る. 企 業 の 社 会 性 は 、 企 業 の 収 益 性 等 の 財 務 的 側 面 と両 立 しな い と す る考 え方 は 広 くみ られ る と こ ろ で あ る。 しか し、 従 来 か ら、 違 法 行 為 が レ ピ コ.テー シ ョ ン ・リ スク とな り企 業 破 綻 に 至 っ た ケ ー ス は 少 な くな く、 違 法 行 為 は 企 業 業 績 に も マ イナ ス の 効 、 果 を も た らす と い う実 証 分 析 も あ る。 こ の よ うな 事 実 を勘 案 す る と、 社 会 性 の 一 側 面 で あ る遵 法 性 は 単 に規 範 的 な 要 請 で は な く経 済 的 な 要 請 で も あ り、 企 業 評 価 に 際 して も、 経 済 件 と社 会 性 は 何 ら 矛 盾 す る も の で は な く、 同 時 に 考 慮 す べ き要 因 で あ る 。 ま た 企 業 の 社 会 性 と経 済 性 の 指 標 で あ る 財 務 成 果 の 関 連 を取 上 げ た 定 量 的 実 証 研 究 の 結 果 は 、 単 純 に結 諭 づ け られ る も の で は な い が 、 両 者 の 間 に 正 の 相 関 を 報 告 す る研 究 が 最 も 多 い と され る 。 提 出者 は 、Orlitzky,Schmid[&Rynesの 30年 間 に 行 わ れ た52の. 研 究 を援 用 しな が ら、 この 分 野 で. 定 量 的 研 究 を サ ー ベ イ し、3 ,878の サ ンプ ル に つ い て 算 出 され た. 388の 相 関係 数 を分 析 す る と、 こ れ らの 数 値 か ら算 出 され た企 業 の 社 会 性 と財 務 成 果 の 問 の 相 関 係 数 は0.36で あ る と 指 摘 して い る。 この よ う に、 企 業 の 社 会 性 と 財 務 成 果 と が 正 の 相 関 関 係 に あ る と い う こ と は 、 あ る 程 度 実 証 結 果 に よ っ て 支 持 され て い る こ と を 意 味 す る。 した が っ て 、 提 出 者 は 企 業 評 価 をす る 場 合 に は 企 業 の 辻 会性 を 明 示 的 に包 含 した モ デ ル が 望 ま し い とす る も の の 、 か り に財 務 成 果 に 限 定 した モ デ ル で あ っ た と して も、 そ れ は 社 会 性 を 無 視 して い る わ け で は な く、 暗 黙 裡 ま た は 間 接 的 に 、 社 会 性 も評 価 して い る こ と に な る と主 張 して い る, 要 す る に、 提 出 者 は組 織 論 的 企 業 観 を 支 持 し、 こ れ に 依 拠 す れ ば 、 利 潤(極 は株 主 の 富(極. 大 化)を. 大 化)ま. た. 唯..一 の 企 業 目 的 とみ な し、 そ れ を 具現 化 し た 単 一 の 価 値 経 済 基 準. の み で 企 業 評 価 す る こ とは 妥 当 で は な く、 多様 な 評 価 基 準 を 加 味 して 適 切 な 企 業 評 価 を す べ きで あ る と主 張 す る と と も に 、 提 出 者 の 企 業 価 値 観 の 根 底 に は 企 業 の 持 続 可 能 性 を確 保 す る た め に は 、 経 済 価 値 が プ ラ ス の み な らず 、 環 境 価 値 お よび 社 会 価 値 も プ ラ スで な け れ ば な らな い と す るい わ ゆ る トリプル ・ボ トム ・ラ イ ン と軌 を一 に す る考 え方 に あ る 。 第2章. 「企 業 評 価 とResourceBasedView‑ResourceBasedVicw小. 史 一 」 で は 、RBV. に 関 す る先 行 研 究 の 学 説 史 的 棚 卸 を行 い 、 そ れ らの 理 論 的 発 展 系 譜 お よ び 現 実 的 意 義 に つ. 一163一.

(8) 『 経 営戦 略 と企業 評 価に 関する研究 』. い て の 考 察 を行 っ て い る。 こ こで は 、 企 業 が 有 す る経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 に企 業 の 競 争 優 位 性 の 源 泉 を見 出 す と い うRBVの. 発 想 は、 実 は さほ ど斬 新 な もの で は な く、 教 科 書 的 な 戦 略 形 成 の 意 思 決 定 プ ロ. セ ス ・モ デ ル の な か に 組 み 込 まれ て きた もの で あ る との 立 場 を と って い る。SWOT(Strength, WeaknessOpportunitiesandthreats)分 お いて 、SWの. 析 等 と呼 ば れ る戦 略 決 定 の 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク に. 部 分 は 企 業 が有 す る強 み と弱 み の.分析 と い わ れ 、 これ は、意 味 内 容 と して は、. 経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 の 評 価 とい う こ と に な るの で 、RBVは. 経営 戦略 論のパ ラダ イムで. あ る と 同時 に 、 企 業 評 価 の パ ラ ダ イ ム とみ な す こ と もで き る と して い る。 RBVが. 経 営 戦 略 論 の 分 野 に お い て 有 力 なパ ラ ダ イム と な っ た の は1990年. が 、 多 くの 論 者 と 同 様 に 、 提 出 者 は経 営 学 の 関 連 研 究 領 域 に お い てRBV的 SeL:nickの1957年. の 著 作Leadership1nadminastration.(邦. 発 想の 端緒 を. 訳 書 名 『組 織 と リー ダ ー シ ッ プ』). に求 め て い る。Selznickは 、 この 著 作 に お い て"distinctivecompetence"と 織 の 持 つ 独 自性 を 表 現 して お り、 そ こでSelznickが. 代 以降 で ある. い う用 語 で 、 組. 強 調 した の は 、 生 産 力.研 究 開 発 力 等. の 機 能 的 な 組 織 能 力 で は な く.組 織 が 有 機 体 と 同 じよ う に 、 周 囲 の 環 境 変 化 に 適 合 し う る 環 境 適 応 力 ま た は 自 己 変 革 力 とい っ た 意 味 で の 組 織 能 力 で あ る と し な が ら も 、 そ の 組 織 能 力 の概 念 は 直 感 的 、 例 示 的 か つ 記 述 的 な もの で あ り、 分 析 的 な 概 念 と は い え な い が 、 組 織 能 力 概 念 の 一 面 を 的確 に指 摘 して い る と評 価 して い る 。 提 出 者 はSelznickに. 次 い でRBV的. theoryofthegrowthofthehrmを. な 着 想 を 明 確 に 述 べ た 書 物 と し てPenroseのTke. あ げ 、 そ の書 名 か ら も明 らか な よ う に 、 この 書 物 の 目的 は. 企 業 の 成 長 メ カニ ズ ム を 解 明 す る こ とで あ っ た が 、 そ の 理 論 展 開 の な か に 、RBV的. な着 想. を見 出 す こ とが で き る と述 べ て い る。 ま た、 そ こ で は 従 来 の 経 済 学 的 な 企 業 モ デ ル で は 不 適 切 で あ る との 考 え か ら、 企 業 を管 理 組 織 と して捉 え る と と も に 、 「経 営 資 源 の 集 合 体 と し て の 企 業 」 と の 企 業 観 に基 づ き、 企 業 の 経 営 資 源 を 物 的 資 源 お よ び 人 的 資 源 と して 捉 え、 か つ 生 産 過 程 に お い て 蓄 積 され る 知 識 ・ノ ウ ・ハ ウ の 重 要 性 も指 摘 し、 物 的 資 源 と 人 的 資 源 の 両 者 の 相 互 作 用 の 重 要 性 も指 摘 し組 織 能 力 を重 視 して い る と い う意 味 で 彼 女 の 所 説 は 経 営 学 的 で あ りか つRBV的 提 出 者 は 、Penroseの. で あ る と提 出 者 は 高 く評 価 して い る。. 企 業 成 長 論 に近 い 発 想 で 、 進 化 論 的視 点 か ら企 業 の 変 化 を捉 え て い. るの が 、 と り もな お さず1982年. のNelson&ti4interの. 著 作 で あ る と して い る。 彼 らの 企 業. モ デ ル の 基 本 概 念 は 、 企 業 内 の 活 動 は い ず れ も、 程 度 の 差 こ そ あ れ 、 標 準 化 ・公 式 化 され た業 務 を意 味 す るル ー テ ィー ン(routine)で. あ り、 か か る ル ー テ ィ ー ンが 、 外 部 環 境 の 変. 化 に 対 応 して ど の よ う に 変 化 して い くか とい う視 点 か ら、 企 業 の 進 化 論 的 変 化 を 捉 えて い る と評 価 して い る。 そ の場 合 の 企 業 内 の ル ー7イ い る。 第1の で あ り、第2の. ー ンは 、3つ の レベ ル に 分 類 され る と して. レベ ル は 工 場 の ラ イ ン生 産 に代 表 され る定 型 業 務 的 性 格 の 強 い ル ー テ ィ ー ン レベ ル は 資 本 ス トッ ク(capitalstock;)の 増 大 ま た は 減 少 に 関 す る意 思 決 定 で 、. 一164一.

(9) 『経営 戦 略 と企業 評 価に関す る研究 』. よ り長 い 期 間 で 捉 え ら れ る も の で あ り、 第3の. レベ ル は よ り長 期 間 に み られ る 企 業 内 諸 活. 動 の変 化 で あ り、 事 業 の 多 角化 等 に顕 著 にみ られ る企 業 の 変 化 で あ る。 彼 ら は また 、 企 業 の 組 織 能 力 を 定 式 化 す る ため に 、 目的 達 成 の た め に ス ム ー ズ な 行 動 を 行 う能 力 とい う意 味 で、 ス キ ル(ski且1>概 念 を使 用 して い る と述 べ て い る。 こ の スキ ル 概 念 を 導 入 して い るの は 、 企 業 ・組 織 に と っ て の ル ー テ ィ ー ンは 個 人 に と っ て の ス キ ル に 相 当 す る と い う発 想 で あ る と位 置 づ け て い る。 提 出 者 は、Nelson&Winterの. 進化論 は、経済学. 的 企 業 観 か ら出 発 し、 企 業 内 部 の 構 造 に まで 踏 み 込 ん で 理 論 化 した も の で あ り、 ま た 組 織 能 力 に比 重 を お い た理 論 で あ る と評 価 して い る。 さ らに 、 本 論 文 で は 、Selznick、Penrose、Nelson&R'interが Wernerfeltの1984年 て い る,そ. の 論 文 は、 近 年 に お け るRBVの. 、RBV前. 史 とす る な らば 、. 隆盛 に直接 の先鞭 をつ け たと評価 し. の 理 由 は 、 彼 の 論 文 で 、 製 品 ・サ ー ビ ス を 生 み 出 す た め の 源 泉 ・イ ン プ ッ トで. あ る経 営 資 源 ・組 織 能 力 の 側 面 と、 製 品 ・サ ー ビ ス の提 供 とい う両 側 面 か ら企 業 を捉 え る 必 要 が あ る と した う え で 、 企 業 を経 営 資 源 サ イ ドか ら考 察 す る こ と の 理 論 的 貢 献 と して は 、 多 角 化 企 業 に 関 す る新 しい 見 方.資. 源tジ. シ ョ ン障 壁 等4つ の 視 点 を あ げ た こ と と して い. るが 、 と り わ け 提 出者 は 資 源 ポ ジ シ ョン障 壁 の 視 点 が 、RBVの. 基 本 的 な 問 題 意 識 を明 白 に. 示 して い る こ と を評 価 して い る。 資 源 ポ ジ シ ョ ン障壁 と は 、 「あ る者 が 、 す で に 経 営 資 源 を有 して い る と い う事 実 が.後. 発. 的 に 経 営 資 源 を保 有 した 者 の 費 用 ま た は 収 益 に 不 利 に 作 用 す る状 態 」 と定 義 され 、 特 定 産 業 の 企 業 間 に お け る収 益 性 の 差 異 を 説 明 す る概 念 と され る.ま. た、 資 源 ポ ジ シ ョ ン障 壁 は 、. 模 倣 困 難 な経 営 資 源 を蓄 積 す る こ と で 高 ま る と して い る.提 出 者 は、 今 日 のRBVに. 依拠 す. る 諸 研 究 の 発 展 内容 か らす れ ば 、Wernerfe且tが 示 した 当 時 の 基 本 的 ア イ デ ィ ア は、 議 論 の 余 地 を残 す 概 念 定 義 と論 埋 構 成 と い え るが 、 経 営 戦 略 論 的 な視 点 か ら企 業 の 競 争 優 位 性 の 源 泉 を定 式 化 す る こ とに 理 論 的 力 点 が あ っ た と い.う意 昧 で 、 近 年 に お け るRBVの. 先駆 け を. な した と評 価 され る と して い る。 Wernerfeltの. 論 文 と同 年 に 出 版 され た伊 丹 教 授 の 『新 ・経 営 戦 略 の 論 理 』 で は 、 経 営 戦. 略 論 の オ ー ソ ドッ ク ス な 枠 組 み を踏 襲 しつ つ 、 経 営 戦 略 に お け る経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 の 意 義 が 論 じ ら れ て い る。 伊 丹 教 授 は 「見 え ざ る 資 産 」 と い う用 語 を 使 用 して い る が、 こ の 用 語 は 、 経 営 資 源 お よび 組 織 能 力 を含 め た総 体 的 概 念 と して の 経 営 資 源 を 構 成 す る一 要 素 と して 用 い られ て い る。 伊 丹 教 授 に よ れ ば 、 経 営 戦 略 は 製 品 ・市 場 ポ ー トフ ォ リ オ、 業 務 活 動 分 野 、 経 営 資 源 ポ ー トフ ォ リオ の3要. 素 の 決 定 か ら成 立 す る と して お り. 、 経 営 資 源 ボ ーrフ. ォ リオ と い う用. 語 で 、 経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 に つ い て 論 じて い る。 そ の 場 合 、 経 営 資 源 の 配 分 と 蓄 積 を 区 別 し、 後 者 の 重 要性 を強 調 して い る が 、 そ の 理 由 は 、 か か る 内 部 蓄 積 され る 資 源 こ そ が 、 外 部 市 場 か ら購 入 す る こ とが 困 難 で あ りか つ 企 業 の 競 争 優 位 性 を構 築 す る源 泉 に な る とす. 一165一.

(10) r経営 戦 略と企業 評価 に関 する研究 』. る主 張 に提 出 者 は 同 意 して い る。 ま た、 この 点 に 関 運 して 、 伊 丹 教 授 は経 営 資 源 の 固 定 性 概 念 を 用 い て い る が 、4れ. は 外 部 調 達 の 困 難 さ を意 味 して お り、 顧 客 ロ イヤ リテ ィ、 ブ ラ. ン ド認 知 度 、 生 産 ノ ウ ・ハ ウ等 は 、 固 定 性 が 高 い 経 営 資 源 の 例 と して い る。 本 論 文 で は 、 伊 丹 教 授 の 見 え ざ る 資 産 概 念 は、 経 営 資 源 の 固 定 性 を競 争 優 位 性 の 源 泉 と して 認 識 し て い る点 に 、RBV的. な 問 題 意 識 が 明 白 に 表 れ て い る と評 価 して い る 。. さ らに 、 提 出 者 は そ れ ま で の 先 行 研 究 よ り も直 載 的 に企 業 の 競 争 優 位 性 の 源 泉 と い う 問 題 意 識 に 基 づ い て 、 経 営 資源 の 意 義 を論 じて い る代 表 的 論 文 の1つ. と して 、Barneyの1991. 年 の 論 文 を あ げ て い る。 企 業 の 競 争 優 位 性 を生 み 出 す 経 営 資 源 は、 異 質 か つ 移 動 困 難 な 性 質 を有 す る こ と で あ る が 、 異 質 か つ 移 動 困 難 な経 営 資 源 が 競 争 優 位 性 に 結 び つ く条 件 と し てBarneyが. 提 示 した 「価 値 が あ る」、 「希 少 性 」、 「模 倣 困 難 性 」、 「代 替 の 困 難 さ」 の4条 件. を解 釈 し、 「価 債 が あ るJと は、 戦 略 策 定 に と っ て 価 値 で あ り、 ま た 「模 倣 困 難 性 」 は 、 「 歴 史 的 経 緯 」、 「因 果 関 係 の 曖 昧 さ」、 「社 会 的 な 複 雑 さ」 の3要. 因 の うち 、 い ず れ か ひ とつ ま. た は そ れ らの 組 み 合 わ せ で 生 じ る と し、 本 論 文 で は、Barneyの. 所 説 はRBV先. 行 研 究 を踏. ま え て 包 括 的 か つ 細 部 を詰 め な が ら、 経 営 資 源 の 異 質 性 と移 動 困 難 さが 、 競 争 優 位 性 の 源 泉 とな る 論 理 を示 して い る と評 価 して い る。 第2章. で は 、 そ の 他 に も、Rumelt、Chandler、. 野 中 教 授 らの 理 論 が 、RBVの. して い る と論 じて い る。 それ らの な か で 、Rumeltの1984年 winter等. RBVの. の 論 文 は 、Penrose,Nelson&. と同 様 に.経 済 学 に お け る 企 業 観 の 不 備 を補 足 しな が ら.Barneyが. 位 性 を 生 む 経 営 資 源 の 条 件(異. 質 性,因. 発展 に 関 連. 果 関 係 の 曖 昧 さ 等)に. 示 した 競 争 優. 関 す る 概 念 を示 して お り、. 先 駆 けm研 究 の ひ とつ に加 え る こ とが で き る と評 価 して い る。 と くに、 彼 が提 唱 し. た 「 孤 立 化 メ カ ニ ズ ム」 と い う概 念 は 、 参 入 障 壁 ま た は 移 動 障 壁 を個 別 企 業 レベ ル に 適 用 した 概 念 で あ り、 企 業 の 競 争 優 位 性 を 説 明 す る 直 接 的 な 要 閃 と して い る 。 本 章 で は 、 孤 立 化 メ カ ニ ズ ム を牛 じ させ る要 因 が 、 閃 果 関 係 の 曖 昧 さ お よ び 特 許 権 、 商 標 権 等 の 知 的 財 産 権 で あ り、Rumeltも. 企 業 論 と い う視 点 か ら出 発 して 、RBV的. して い る。 さ ら に、RBVの ofthefirm)に. な 問 題 意 識 に 到 達 した と指 嫡. 理 論 的 発展 を 概 観 す る と 、暗 黙 裡 また は 明 白 に 、企 業 論(theory. 関 す る問 題 意 識 が あ る と い う。. 企 業 論 と は 、 な ぜ 企 業 は 存 在 す るの か と い う企 業 の 存 在 理 由 お よ び 企 業 の 規 模 と 範 囲 を 決 定 す る 要 因 と い う2つ の 論 点 を扱 う理 論 と され るが 、 こ れ らの う ち前 者 は 、 本 論 文 の 趣 旨か ら逸 脱 して い る と い う理 由 で 論 じ られ て い な い 。 後 者 の 企 業 の 規 模 と範 囲 につ い て は、 本 章 で 検 討 したPenroseお. よ びNelson&Winterが. らに そ の 延 長 線 上 に 、 なぜ(同. 、 そ れ ぞ れ の 解 答 を提 示 して お り、 さ. 一 産 業 内 に 存 在 す る)企 業 間 に 、(収 益 性 等 の 面 で)違. 生 じる の か とい う 「 企 業 の 異 質 性 」とい う、RBV的. いか. な問 題 意 識 は位 置 づ け られ る と して い る。. ま た 、 企 業 論 を基 本 的 な 企 業 観 、 企 業 の イ メ ー ジ と して 捉 え る と、 新 古 典 派 経 済 学 に お い て は 、 企 業 は 生 産 関 数 また は市 場 に お け る点 とみ な され て きた の に対 して 、Penroseは. 一166一. 経.

(11) 『経営 戦 略と企 業 評価 に関す る研究 」. 営 資源 の 集 合 体 とい う企 業観 、Nelson&Winterは. ル ー テ ィー ンお よ び ス キ ル の 集 合 体 と い. う企 業 観 を そ れ ぞ れ 示 して い る が 、 提 出 者 は1990年. 代 以 降 のRBVの. 展 開の なか では、 新. た な企 業 観 は 提 示 され て い な い と論 じて い る。 第3章. 「経 営 資 源 、 組 織 能 力 と 競 争 優 位 性 」 で は 、 本 論 文 の 基 礎 概 念 で あ る 経 営 資 源 、. 組 織 能 力 等 に つ い て 概 念 的 な 検 討 が 行 わ れ て い る。 こ こ で は 、 まず 、 経 営 資 源 ま た は 組 織 能 力 と経 営 成 果 と の 関 連 に 関 す る実 証 研 究 が 複 数 存 在 す る こ と を 述 べ て い る。 そ の1つ が 、 Hansen&Wernerfeltの1989年. の 研 究 で あ り、 そ こ で は 産 業 組 織 論 的 な 経 済 モ デ ル お よ び. 組 織 的 モ デ ル を 設 定 し、 両 モ デ ル の 経 営 成 果(総 か ら60社. 資 産 利 益 率)の. 予 測 力 を、FortunelOOO. を サ ンプル と して 選 び テ ス トして い る。 そ の 結 果 、 経 済 モ デ ル の 決 定 係 数 がo .is. で あ る の に対 して 、 組 織 的 モ デ ル の そ れ は0.38と 界 をサ ンプ ル と し た研 究 で も、RBVモ. な っ て い る と い う。 ま た、 米 国 の 銀 行 業. デ ル と市 場 モ デ ル を 直 接 比 較 し、 資 産 利 益 率 、 株 価. 収 益 率 等 を 従 属 変 数 と す る モ デ ル を テ ス トした と こ ろ、RBVモ. デ ル の ほ うが よ り高 い説 明. 力 を有 す る旨 の 実 証 結 果 を示 して い る, 提 出 者 は、Wernerfeltの. 論 文 の 貢 献 を予 備 的 定 量 分 析 の 結 果 を 踏 ま え て 、 経 営 資 源 等 の. 基 礎 概 念 の 定 義 を 行 っ た 点 に 求 め て い る.Wernerfeltは. 、 経 営 資 源 を 「企 業 に 継 続 的 に 属. す る有 形 ま た は 無 形 の 資 産 」 と定 義 して い るが 、提 出 者 は こ こで い う資 産 は、 ヰ ヤ ッシ ュ ・ フ ロ ー を 創 出 す る経 済 的 便 益 と措 定 す る もの の 、 必 ず し も貨 幣 額 で も っ て測 定 で き る もの に 限 定 して い な い とい う意 味 で 、 伝 統 的 会 計 の 資 産 概 念 よ り も広 義 で あ る と し、 将 来 的 に 企 業 会 計 サ イ ドで 資 産 概 念 の 拡 張 が行 わ れ れ ば 、 会 計 上 の 資 産 と経 営 資 源 と は か な りの 程 度 一 致 す る こ と に な る で あ ろ う と述 べ て い る 。 ブ ラ ン ド、 特 許 権 等 の 知 的 財 産 権 の 資 産 性 の 認 識 の 重 要 性 が 最 近 に な り急 速 に 高 ま って い る とい う事 実 は 、Wernerfeltf3よ. び提 出 者. の 認 識 が 正 しい こ と の 証 左 と もい え よ う。 RBVで. は 、 経 営 資 源 、 組織 能 力 そ の 他 の概 念 を包 含 す る 概 念 と して 、 経 営 資 源 と い う 用. 語 が使 用 され る が 、 経 営 資 源 と 組 織 能 力 とは 、 概 念 的 に 区 別 す べ きで あ る と い うの が 本 論 文 で の 主 張 で あ る。 本 論 文 で 述 べ ら れ て い る両 者 の 相 違 点 は 、 経 営 資 源 が す で に獲 待 され た 有 形 も し くは 無 形 の 経 営 資 源 ま た は 資 産 を 意 味 す る の に 対 して 、 組 織 能 力 と は か か る 経 営 資 源 を獲 得 す る 力 、 また は 経 営 資 源 を 活 用 す る 力 を意 味 す る 点 に あ り、 そ の 意 味 で 本 論 文 で は 組 織 能 力 を 「経 営 資 源 を蓄 積 、 統 合 、 活 用 し、 製 品 ・サ ー ビ ス を 生 み 出 す 力 」 と 定 義 して い る。 組 織 能 力 に 関 して は 、 階 層 性 ま た は レベ ル を想 定 す る論 者 が 多 い も の の 、 そ れ 自体 に 斬 新 性 が あ る わ け で は な く、 「機 能 別 ま た は個 別 的 組 織 能 力 」 と 「総 体 的 な 組織 能 力 」 と を概 念 上 区 別 す る 必 要 が あ る。 か か る 階 層 性 の 発 想 に 照 ら す と、 上 述 の 組 織 能 力 の 定 義 は個 別 的 組織 能 力 の 定 義 で あ り、 総 体 的 な組 織 能 力 の 定 義 は 、 「経 営 資 源 お よ び 個 別 的 組 織 能 力 を 蓄 積.統 合 、 活 用 し、 製 品 ・サ ー ビ ス を生 み 出 す カー と な る と して い る。. 一167一.

(12) 『経営 戦 略 と企業 評 価に関す る研 究』. 提 出 者 は か か る概 念 定 義 に基 づ き、 ま た経 営 資 源 お よ び 組 織 能 力 に 関 す る定 量 的 実 証 分 析 を検 討 す る と、 従 来 の 先 行 研 究 に は経 営 資 源 と 組 織 能 力 の 測 定 尺 度 の な か に 組 織 デ ザ イ ン(組 織 構 造 、 組 織 プ ロ セ ス、 組 織 文 化 等 を 含 む)と 重 複 す る部 分 が あ る な ど概 念 上 の 混 同 が 認 め られ る 旨 を指 摘 して い る。 本 論 文 で は 、 経 営 資 源 、 組 織 能 力 と組 織 デ ザ イ ン と い う3つ の 概 念 ス キ ー ム を提 示 して い る。 この 概 念 ス キ ー ム の 基 本 的 発 想 は 、 組 織 能 力 が 経 営 資 源 に働 きか け 、 その 結 果 経 営 資 源 が 競 争 優 位 性 に 結 び つ き、 ま た 組 織 能 力(個 織 能 力)が. 経 営 資 源 に影 響 を 及 ぼ す 条 件(モ. 別 的組. デ レ ー タ)、 環 境 ま た は枠 組 み と して 組 織 デ ザ. イ ン を捉 え る とす る点 に あ る 。 この 概 念 ス キ ー ム に お い て は、 総 体 的 組 織 能 力 と組 織 デ ザ イ ン に は 重 複 す る 部 分 が あ る と 想 定 され る が 、 そ の 部 分 は 組 織 論 で は 一般 に 知 識 と よ ば れ る 部 分 で あ る。 組 織 能 力 概 念 の 一 部 に 知 識 が 含 ま れ る と想 定 す る こ とは 当 然 で あ る が 、 知 識 と い う概 念 も 多様 な 定 義 が 併 存 して い る と こ ろか ら、 知 識 の 定 義 に 「因 果 関 係 に 関 す る信 念(beliefs)」. とい う意 味 を. 持 た せ る せ る論 者 が 少 な くな い 。 本 論 文 で も組 織 能 力 を構 成 す る 知 識 を 「経 営 資 源 の 蓄 積 、 形 成 、 統 合 、 活 用 につ い て の 因 果 関 係 に 関 す る信 念 」 と定 義 して 通 説 を踏 襲 して い る。 た だ し、 本 論 文 で は 、 組 織 能 力 に は 、 一 般 に 暗 黙 知 と よ ば れ る 日本 語 の 語 感 で い う体 得 し た も の ま た は体 得 す る こ と に該 当 す る側 面 が あ る と述 べ て い るの は注 目 され る 点 で あ る 。 組 織 能 力 の 構 成 要 素 と して の 知 識 に は 、 部 門 化 、 公 式 化(文 書 化)な. どの組織 デ ザ イ ン. で は カバ ー し きれ な い 知 識 の 領 域 が 存 在 す る と想 定 す る の が 妥 当 で あ る。 こ う した 知 識 を 暗 黙 知 と よ ぶ か ス キ ル と よ ぶ か は 別 と して 、 組 織 能 力 の 構 成 要 素 と して の 知 識 は 、 文 字 、 数 式 、 記 号 な ど で形 式 知 化 す る こ と が で き な い 部 分 が あ る と想 定 して い る。 本 章 で は 、 以r.の 概 念 整 理 に 基 づ き経 営 資 源 お よ び 個 別 的 組 織 能 力 の 内 容 を例 示 的 に 示 して い る.こ. こ で 、 示 され た り ス トは、 決 して 全 て の 経 営 資 源 お よび 組 織 能 力 を網 羅 して. い る わ け で は な い が 、 財 務 資 源 お よ び 物 的 資 源 の 多 くの 部 分 は 、 有 価 証 券 報 告 書 そ の 他 の 公 表 デ ー タか ら把 握 す る こ とが 可 能 で あ る と して い る。 また 、 研 究 ・開 発 等 、 機 能 的 分 類 1個 別 的 組 織 能 力)ご. と に 組 織 能 力 の 内容 を例 示 して お り、 こ れ ら は 第7章. お よ び 第8章. の. 内 容 を例 示 して い る。 本 章 で は さ らに 、 第2章. で 検 討 し たRBVの. 代 表 的 埋 論 を再 検 討 して 、 経 営 資 源 ・組 織 能. 力 と競 争 優 位 性 の 関 連 に 絞 っ て 整 理 して い る。 この 点 に 関 して 意 識 的 に 論 じ ら れ て い る の は 、Wernerfelt、Barney、. お よ びRumeltの3名. で あ るが 、 彼 らは 、概 ね 同 じ よ うな 要 件 を、. 競 争 優 位 性 を生 み 出 す 経 営 資 源 ま た は 組 織 能 力 の 要 件 と して 指 摘 して い る 。 そ れ らは 、 「代 替 的 資 源 の 入 手 困 難 性 」、 「資 源 ポ ジ シ ョ ン障 壁(孤 法 的 保 護(知. 立 化 メ カニ ズ ム)=因. 的 財 産 権 な ど))、 「資 源 の 模 倣 困 難 性:歴. 果 関 係 の 曖 味 さ、. 史 的 経 緯 、 因 果 関 係 の 曖 昧 さ、 社 会. 的 な複 雑 さ」、 「戦 略 的 価 値 」、 「希 少 性 」 で あ る 。 い ず れ も 、 これ らの 要 件 を 並 行 的 に 列 挙 して い る が 、 本 論 文 で は これ らの 要 囚 間 に も 因 果 関 係 を想 定 し、 孤 立 化 メ カニ ズ ム(資 源. 一168一.

(13) 『 経 営戦 略 と企業 評 価に関す る研究 』. ポ ジ シ ョ ン 障 壁)が. 競 争 優 位 性 の 直 接 の 原 因(先. 行 変 数)で. 性 等 の 要 因 は 、 孤 立 化 メ カ ニ ズ ム を も た ら す 原 因(先 第4章. 「イ ン タ ン ジ ブ ル ズ とIC」. あ り、 模 倣 困 難 性 お よ び 希 少. 行 変 数)で. あ る と想 定 され て い る 。. で は 、最 近 、会 計 学 お よ び 財 務 論 な ど の 分 野 は も と よ り 、. 知 的 財 産 論 、 イ ノ ベ ー シ ョ ン 論 な ど の 学 際 的 分 野 に お い て も 大 き く 注 目 さ れ て い る 「イ ン タ ン ジ ブ ル ズ(lntangib置es,IntangibleAssets)」 てRBV的. および. 「IC(lntellectualCapital)」. につ い. 観 点 か ら論 究 し て い る 。 イ ン タ ン ジ ブ ル ズ と い う 用 語 は 、 も と も と 会 計 学 で 用 い. ら れ て い た が 、 今 日 の 意 味 で の イ ン タ ン ジ ブ ル ズ は 米 国 ・民 主 党 の 政 策 提 言 機 関 で あ る ブ ル ッ キ ン グ ス 研 究 所(BrookingsInstitution)の 同 研 究 所 が ニ ュ ー ヨ ー ク 大 学 のLev教. タ ス ク ・フ ォ ー ス に よ る 研 究 報 告 書 お よ び. 授 に 委 託 した 研 究 の 報 告 書 に お い て 用 い られ て か ら. 飛 躍 的 に 普 及 し た 概 念 で あ る 。 こ れ ら の 報 告 書 は 、2001年 Unseenwealth(訳 名. 書 名. にBlair&Wallmanに. 『ブ ラ ン ド価 値 評 価 入 門 」)お よ びLevに. 『ブ ラ ン ドの 経 営 と 会 計 』)と. よ る. よ るIntangibles.(邦. して 刊 行 され て お り 、 木 論 文 で は 、 こ れ ら2つ. 訳書. の著書 に基. づ い て イ ン タ ン ジ ブ ル ズ につ い て 検 討 して い る。 提 出 者 は 、 イ ン タ ン ジ ブ ル ズ 研 究 の 背 景 に は 、 パ リ ュ ー ド ラ イ バ ー(企. 業 価 値 決 定 因 子). が タ ン ジ ブ ル ズ か ら イ ン タ ン ジ プ ル ズ へ 移 行 し、 ビ ジ ネ ス モ デ ル も 大 き く 変 革 し て い る 実 証 結 果 が 示 され て い る に も か か わ らず 、 伝 統 的 な財 務 報 告 で は十 分 な コ ン セ ンサ ス が 得 ら れ て い な か っ た と こ ろ か ら 、 利 害 関 係 者 に イ ン フ ォ ム ドジ ャ ジ メ ン トを 行 わ せ る た め に も 、 ま た 情 報 の 非 対 称 性 を解 消 す る た め に も イ ン タ ン ジ ブ ル ズ に 着 目す べ きで あ る との 問 題 意 識 か ら 、 本 章 を 展 開 して い る 。 Blair&Wallmanは. 、 イ ン タ ン ジ ブル ズ を. 「製 品 の 生 産 あ る い は サ ー ビ ス の 提 供 に 貢 献 す. る か 使 用 さ れ る 無 形 の 要 因 ま た は そ の 利 用 を コ ン トロ ー ル す る 個 人 ま た は 企 業 に 将 来 の 生 産 的 な 便 益 を も た らす と 期 待 さ れ る 無 形 の 要 因 」 と 定 義 し 、Levは1物 商 品 と し て の 形 態 を 有 し な い 将 来 の 便 益 に 対 す る 講 求 権(claim)」 本 論 文 で は 、 イ ン タ ン ジ ブ ル ズ 研 究 とRBVの 非 競 合 性 と 収 穫 逓 増 性 の 点 で 、LCVはxsvの る 。 タ ン ジ ブ ル ズ(有. 形 資 産)お. 理 的 形 態 ま た は金 融 と定 義 して い る。. 問 題 意 識 は き わ め て 近 い と述 べ て い る が 、 諸 研 究 とは 視 点 を異 に して い る と指 摘 して い. よび金融 資産 は、特定 の 用途 に用 い られ ると ともに、他. の 用 途 に 当 該 資産 を用 い る こ とは で き な い と い う意 昧 で 競 合 的 資 産 で あ る の に 対 して 、 ブ ラ ン ド、 特 許 権 の よ う な イ ン タ ン ジ ブ ル ズ は 同 時 に 複 数 の 用 途 に 利 用 可 能 と い う意 味 で 非 競 合 性 の 性 質 を 有 す る 。 収 穫 逓 増 と は 、 医 薬 品 、 コ ン ピ ュ ー タ の オ ペ レ ー テ ィ ン グ ・シ ス テ ム 等 に 顕 著 に み ら れ る 特 徴 と さ れ る 。 ネ ッ トワ ー ク 効 果 に は 、 ネ ッ トワ ー ク 外 部 性 、 ポ ジ テ ィ ブ な フ ィ ー ドバ ッ ク 、 業 界 標 準 の3要. 素 が あ り、 そ の う ち ネ ッ トワ ー ク外 部 性 は 、. ネ ッ ト ワ ー ク 加 入 よ る 便 益 は 、 ネ ッ トワ ー ク 加 入 者 が 増 加 す る ほ ど 増 大 す る と い う も の で あ り、 ポ ジ テ ィ ブ な フ ィ ー ドバ ッ ク と は 、 最 初 に 普 及 し た 技 術 が 急 速 に 市 場 に 広 が る 事 態 を 意 味 し、 業 界 標 準 と は 、 「デ ・フ ァ ク ト ・ス タ ンv一. 一169一. ド(事. 実 と し て の 基 準)」(defactc.

(14) 『 経 営 戦略 と企業 評 価 に関 す る研究 』. Sf3tld3Cd)等 と も よ ば れ る状 況 を指 す 。 反 面 、 イ ン タ ン ジ プ ル ズ の メ リ ッ トに対 して 、 イ ン タ ン ジ プ ル ズ に は 、 部 分 的 排 除 、 固 有 の リス ク 、 売 買 不 可 能 性 と い う固 有 の リ ス クが あ る と 指 摘 して い る。 部 分 的 排 除 と は 、 ス ピル オ ーバ ー(spillover))と. も呼 ば れ 、 投 資 の 便 益 の 一 部 が流 れ 出 る状 況 を意 味 す る 。 固. 有 の リス ク と は 、 イ ン タ ン ジ ブ ル ズ へ の 投 資 は 、 イ ノベ ー シ ョ ン ・プ ロ セ ス の 初 期 段 階 へ の 投 資 の 割 合 が 高 い ば か りで 収 益 に 結 び つ く確 率 が 低 い と い う意 昧 で あ る。 売 買 不 可 能 性 と は 、 イ ン タ ン ジ プ ル ズ に 関 す る取 引 市場 が 成 立 して い な い ま た は 部 分 的 に成 立 して い て も未 成 熟 で あ る た め 、 売 買 が 不 可 能 で あ る こ と を意 味 す る。 提 出 者 は 、 イ ン タ ン ジ ブル ズ 研 究 の 背 景 に は 、 イ ン フ ォ ム ドジ ャ ジ メ ン ト等 投 資 意 思 決 定 の た め の 情 報 提 供 と い う問 題 意 識 に 加 え て 、 情 報 と して 提 供 す る に は 「見 え ざ る も の 」 か ら 「見 え る も の 化 」 い い か えれ ば 「暗 黙 知 」 か ら 「形 式 知 」 へ の 変 換 が 必 要 で あ る と主 張 し、そ の た め に は イ ン タ ン ジ ブル ズ の 測 定 が 必 要 で あ る と論 述 して い る。 この 点 につ い て 、 Blair&Wallmanは. 、 イ ン タ ン ジ ブル ズ を3段 階 に 区 分 して 測 定 方 法 を考 慮 す べ きで あ る と. 提 案 して い る。 第1段. 階 「所 有 、 売 却 可 能 な 資 産 」 で は 、 知 的 財 産 権 等 、 法 的 に は 所 有 権. が 確 定 し登 録 、 登 記 等 の 法 的 手 続 き も な され て い る資 産 に 関 す る物 理 的 な 数 量 は 測 定 可 能 と し て い る 。 ま た 、 顧 客 デ ー タ ・ベ ー ス等 の イ ン タ ン ジ ブ ル ズ は 、 開 発 に 要 した 費 用 が 投 資 家 に 対 して 有 用 な情 報 で あ る と い う。 第2段. 階 「支 配 可 能 で あ る が 分 離 し売 却 す る こ と. が で き な い 資 産 」 と は 、 営 業 秘 密 、企 業 イ メ ー ジ 等 で あ り.こ れ らは 特 定 企 業 の 財 産 で あ る が 、 分 離 して 他 企 業 に売 却 す る こ とが 困 難 な イ ン タ ン ジ プ ル ズで あ り、 この 種 の イ ン タ ン ジ ブ ル ズの 測 定 に 関 して は 、 彼 ら は具 体 的 な 測 定 方 法 を提 示 して い な い と述 べ られ て い る 。 イ ン タ ンジ ブ ル ズ測 定 の 第3段 階 「 企 業 に よ っ て 完 全 に は支 配 で き な い イ ン タ ン ジ ブ ル ズ 」 と は 、 人 的 資 本 、 リ レ ー シaン. シ ッ プ 資 本 等 を さ し、 そ れ ら の 測 定 に 関 して も 明 白 な 測 定. 尺 度 は提 案 され て い な い が 、 現 行 の 財 務 報 告 を 超 え る、 例 え ば ビ ジ ネ ス リーt一 ま た はEBRに. テ ィ ング. お け る情 報 開 示 が 投 資 意 思 決 定 債 報 提 供 と い う視 点 か ら は望 まれ る と い う。. こ の よ うに 、 第1段. 階 の イ ン タ ン ジ ブ ル ズ が 費 用 ま た は 投 資 額 に よ って 近 似 し う る と い う. 以 外 に は 、Blair&Wallmanは. イ ン タ ン ジ ブ ル ズ 測 定 に 関 して 具 体 的 な 尺 度 を提 示 して い な. い が 、 提 出 者 は 、 彼 ら が示 し た イ ン タ ン ジ ブ ル ズ の3段. 階 は 、 イ ン タ ン ジ ブル ズ 、 経 営 資. 源 ま た は 組 織 能 力 の 測 定 尺 度 を考 案 す る た め の 概 念 フ レ ー ム ワ ー クに な る と評 価 して い る。 イ ン タ ン ジ ブ ル ズ と同 様 に、 投 資 意 思 決 定 情 報 提 供 の 観 点 か ら、 企 業 が 有 す る 知 的 な 経 営 資 源 に 関 す る情 報 を測 定 ・認 識 しよ う とい う概 念 がICで 険 ・金 融 サ ー ビス 会 社Skandtiaが1993年. あ る。ICは 、 ス ウ ェ ー デ ンの 保. のAnnualReportに. お も、て 公表 し たの が実 務 に お. け る 先駆 け で あ り、 そ の 後 、 欧 州 諸 国 の 実 務 家 、 研 究 者 に よ っ て 検 討 が 加 え られ る な か で 、 さ ま ざ ま な モ デ ル が 生 まれ て きた 。 そ れ ゆ え に 、 多 様 なICモ. デ ル が あ る が 、 そ れ らの モ デ. ル で は構 成 内 容 を 「人 的 資 本 」 と 「構 遺 的 資 本 」 に 分 類 す る点 で は 共 通 して い る。. 一170一.

(15) 「 経営 戦略 と企 業 評価 に関す る研究 』. 人 的 資 本 とは 従 業 員 個 々 人 が 身 に つ け た 知 識 、 ノ ウ ・ハ ウ等 を さ す の に た い して、 構 造 的 資 本 と は、 従 業 員 の 退 杜 後 に も残 る も の を さす 。 人 的 資 本 は 、 さ らに 能 力 、 態 度 、 知 的 俊 敏 さ に分 類 さ れ る。 能 力 と は、 従 業 員 の 持 つ 知 識 、 技 能 、 ス キ ル 、 ノ ウ ・ハ ウ を意 味 し、 態 度 と は 、 従 業 員 が 自 分 達 の 知 識 、 ノ ウ ・ハ ウ 等 を 発 揮 して 、 企 業 の 発 展 の た め に 努 力 し よ う と い う意 思 を さす 。 知 的 俊 敏 さ と は 、 知 識 、 ノ ウ ・ハ ウ 等 を あ る コ ンテ ク ス トか ら 別 の コ ン テ ク ス トに 応 用 で き る能 力 と定 義 され て い る 。 本 論 文 で は 、 組 織 行 動 論 の 知 見 か ら す れ ば 、 能 力 と態 度 を 区 別 す る こ とは 妥 当 で あ るが 、 知 的 俊 敏 さ と態 度 は 同 義 で あ る と論 じて い る。 他 方 、 構 造 的 資 本 と は、 従 業 員 個 々 人 が 有 す る 能 力 、 ノ ウ ・ハ ウ等 と は 区 別 さ れ 企 業 が 所 有 で き る もの で あ り、 そ の 構 成 要 素 は 多種 多 様 で 物 理 的 に把 握 しに く い,そ の た め 、 こ の 分 類 に 関 して は、 モ デ ル 問 で差 異 が あ る と され るが 、 組 織 論 的 な 観 点 か らは 、 構 造 的 資 本は 「 組 織 資 本 」 と よ ぶ べ き で あ る と述 べ られ て い る。 本 論 文 で は 、 複 数 のICモ. デ ル を比. 較 検 討 しな が ら、 組 織 資 本 を構 成 す る 要 素 を 、 関 係 資 本 、 構 造 資 本 、 プ ロ セ ス 資 本 、 組 織 文 化 お よ び 革 新 資 本 に 分 類 して い る、 こ の場 合 、 関 係 資 本 と は 、 多 様 な利 害 関 係 者 と の 良 好 な 関 係 を意 昧 し、 構 造 資 本 と は,組 織 内 の マ ニ ュ ア ル 等 を、 プ ロセ ス 資 本 と は 、 業 務 プ ロ セ ス の 効 率 性 等 を、組 織 文 化 とは 、従 業 員 の 間 で 共 有 され た価 値 観 、理 念 、行 動 様 式 等 を、 さ らに 革 新 資 本 は 、 研 究 開 発 投 資 、 従 業 員 の 能 力 開 発 へ の 投 資 等 を そ れ ぞ れ 意 味 す る。 本 論 文 で は 、ICは 、 経 営 資 源 を網 羅 的 に 把 握 す る に は 有 用 な 概 念 で あ る が 、 経 営 資 源 と組 織 能 力 との 違 い を明 示 で き な い とい う限 界 が あ る と評 価 して い る。 RBVの. 分 野で は、経営 資源 のなか に組織能 力 を含め る考 え方 と、本論文 の ように、経 営. 資源 と組 織 能 力 を区 別 す る考 え方 が あ る。 こ の 点 に 関 連 してICを. 評 価 す る と、ICの 概 念 フ. レー ム ワ ー ク は 二 つ の 考 え 方 の 中 間 に 位 置 す る と 論 じ られ て い る。 ま た、ICの 構 成 要 素 で ある組織 資本 は、経 営学 または組織 論の 用語 でい えば、組 織構 造、組織 文化等 を包摂 す る 組 織 デ ザ イ ンの 概 念 を意 味 す る。ICモ デ ル で は 、 組 織 デ ザ イ ンを 企 業 の 競 争 優 位 性 を 左 右 す る広 義 の 生 産 手 段 と位 置 づ け組 織 資 本 と い う用 語 で モ デ ル に 明 示 され て お り、 こ の 点 は 、 経 営 学 の 観 点 か ら も評 価 で きる と述 べ られ て い る 。 さ ら に 第4章. で は 、 第5章. お よ び 第s章. に お け る経 営 資 源 の 価 値 評 価 に 先 立 ち 、 イ ン タ. ン ジ ブル ズ 、IC等 、 無 形 の 経 営 資 源 の 価 値 評 価 ア プ ロ ー チ に つ い て検 討 して い る 。 イ ン タ ン ジ ブル ズ ま た は 無 形 の 経 営 資 源 の 価 値 評 価 に は 、 残 差 ア プ ロ ー チ と独 立 評 価 ア プ ロ ー チ が あ り、 後 者 に は コ ス ト ・ア プ ロ ーチ 、 マ ー ケ ッ ト ・ア プ ロ ー チ.イ. ン カ ム(利 益)・ ア プ. ロ ー チ と い う3つ の 価 値 評 価 方 法 が あ る。 本 論 文 で は 、 こ れ らの ア プ ロ ー チ の 長 所 と短 所 を検 討 した う え で 、 イ ン タ ン ジ ブル ズ 等 の 経 営 資 源 が 生 み 出 す 将 来 キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー の 割 引 現 在 価 値 を も っ て そ の 評 価 額 とす る と い う イ ン カ ム ・ア プ ロ ー チ の 妥 当 性 を 指 摘 し て い る。 イ ン カ ム ・ア プ ロ ー チ は 、 財 務 論 に 基 づ く 企 業 評 価 との 理 論 的 整 合 性 が 高 く、 ま た. 一171一.

(16) 『 経 営戦 略 と企 業 評価 に関 する研究1. 最 近 の 会 計 理 論 に 基 づ く企 業 評 価 と の 整 合 性 も 高 い と い う点 が 、 この ア プ ロ ー チ を 採 用 す る理 由 で あ る と論 じ られ て い る。 第5章. 「ブ ラ ン ドの 価 値 評 価 とマ ネ ジ メ ン ト」 で は 、 経 営 資 源 の 重 要 な構 成 要 素 で あ り、. ま た イ ン タ ン ジ ブ ル ズ お よ びICの. 一 要 素 と して も認 識 され て い る ブ ラ ン ドに つ い て 、 い ま. や 経 営 資 源 の な か で も重 要 な パ フ ユ ー ドラ イパ ー と して 位 置 づ け て 考 察 す る と と もに 、 価 値 評 価 モ デ ル の な か か ら代 表 的 な も の を比 較 検 討 して い る。 本 論 文 で は ま ず 、 「ブ ラ ン ド ・ エ ク イ テ ィ」(brandequity)概. 念 を紹 介 して い る 。 ブ ラ ン ド・エ ク イテ ィ概 念 の 基 礎 に は 、「プ. ラ ン ドは 、 超 過 的 な収 益 あ る い は 利 益 を生 み 出 す 源 泉 で あ り、 資 産(経. 営 資 源)と. して の. 性 格 を 有 す る」 と い う発 想 が あ る 。Kellerも ブ ラ ン ド ・エ ク イ テ ィを 「プ ラ ン ドを有 す る 製 品 あ る い は サ ー ビ ス が 、 そ れ を有 し な い 製 品 ま た は サ ー ビ ス と比 べ た場 合 に も た らす 超 過 的 な 収 益 」 と定 義 して い る 。Aakerは. 、 ブ ラ ン ド ・エ ク イ テ ィ を、 ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤ リテ. ィを 高 め る 、 高 価 格 を維 持 で き る 、競 合 他 社 に対 す る障 壁 と な る等 、6つ の 側 面 で企 業 に超 過 的 収 益 を もた らす 経 営 資 源 で あ る と して い るが 、 本 論 文 で は、 これ らの う ち競 合 他 社 に 対 す る 障 壁 と な る とい う側 面 が 第3章. で 言 及 した 孤 立 化 メ カ ニ ズ ム と 同様 の 意 味 内 容 で あ. る と 論 じて い る 。 ブ ラ ン ド ・エ ク イテ ィ概 念 を検 討 し た 後 、 本 論 文 で は 、 ブ ラ ン ド価 値 評 価 モ デ ル の な か か ら、 代 表 的 な もの を比 較 検 討 して い る,ブ. ラ ン ド価 値 評 価 モ デ ル に は 、 コ ーtレ. ー ト・. ブ ラ ン ドを評 価 しよ う とす る もの と プ ロ ダ ク ト ・ブ ラ ン ドを 評 価 し よ う と す る もの が あ る 点 を 明 らか に した う えで 、 第 一 の モ デ ル で あ るlnterbrandモ. デ ル につ い て 紹 介 ・検 討 し て. い る 、 こ の モ デ ル は 、 セ グ メ ン テ ー シ ョン 、 セ グ メ ン トご との 収 益(税 ら資 本 コ ス トを 差 し引 い た 額)予. 測.プ. 引 き後 営 業 利 益 か. ラ ン ドに よ り生 み 出 され た 利 益 の 割 合 で あ る 「ブ. ラ ン ド役 割 指 数 」 算 出 、 と い う3段 階 を経 て ブ ラ ン ド利 益 を 算 出 し、 ブ ラ ン ド利 益 の リ ス ク分 析 で あ る 「プ ラ ン ド力 分 析 」 で 算 出 した 割 引 率 を 使 用 して プ ラ ン ド利 益 の 現 在 価 値 を 算mす. る こ と に よ リセ グ メ ン トの ブ ラ ン ド価 値 とす る考 え方 で あ る。 この モ デ ル は 、E述. の プ ロセ ス で 算 出 され た セ グ メ ン ト別 の ブ ラ ン ド価 値 のAn計 額 を も っ て 、 企 業 全 体 の ブ ラ ン ド価 値 と して い る.提 出 者 は 、 こ の モ デ ル を.財 務 的 な 視 点 と マ ー ケ テ ィ ン グ 的 な 視 点 を 取 り入 れ て お り、 直 感 的 に理 解 しや す い価 値 評 価 モ デ ル で あ る と 評 価 す る 反 面 、 ブ ラ ン ド役 割 指 数 お よ び ブ ラ ン ド力 分 析 の 算 出 プ ロ セ ス や 根 拠 が ブ ラ ッ ク ボ ッ ク ス に な っ て い る と批 判 して い る。 次 に 、日本 経 済 新 聞 社 と伊 藤 教 授 が 共 同 開 発 した 「CBパ リュエ ー タ ー」 を 検 討 して お り、 こ の モ デル は 、 プ レ ミア ム 、 認 知 お よび ロ イ ヤ リテ ィの測 定 、 顧 客 ス コ ア ・従 業 員 ス]ア 株 主 ス コ ア の 算 出 、CBス. コ ア の 算 出 、CB活. 用 力 の 算 定 、CB活. ・. 用 機 会 を 加 味 して 、CBス. コ ア の ブ ラ ン ド価 値 へ の 転 換 と い う5段 階 を経 て プ ラ ン ド価 値 を 算 出 して い る。 こ こで 、 CBと. はCorporateBrandを. 意 味 す る。 こ の モ デ ル で は、 第1段. 一172一. 階 で 財 務 数 値 とマ ー ケ テ ィ.

(17) r経営 戦 略 と企 業評 価に関 する研 究』. ン グ 調 査 の 数 値 が 併 用 され て お り、 第2段 階 で は、 こ れ らの 数 値 を 乗 じ る こ とで 、 顧 客 ス コ ア 、 従 業 員 ス コ ア お よ び 株 主 ス コ ア を 算 出 して い る が 、 こ こ で そ れ らの 数 値 を 乗 じ る こ と の 理 論 的 な根 拠 が 希 薄 で あ る ば か り で は な く、 第3段 階 以 降 のCBス CB活. コ ア、CB活. 用 機 会 等 の 算 出 方 法 も不 明 で あ る と首 肯 して い な い。 また 、 提 出 者 は、CBパ. 用 力、 リュエ. ー タ ー ・モ デ ル は、 各 種 の イ メ ー ジ 調 査 を 活 用 し財 務 指 標 と の 関 連 性 も検 討 して い る点 で 優 れ て い る が 、 モ デル の 核 と な る部 分(CBス. コ ァ等)が. 明示 され て い な い と い う点 で モ デ. ル の 再 現 性 を 欠 い て お り、 理 論 モ デ ル と して は 難 が あ る と批 判 して い る 。 さ ら に、Ailawadi、Lehmann&Neslinの. モ デ ル で は 、 自社 の マ ー ケ テ ィ ン グ ・ミ ッ ク ス. と価 格 、 自#iの イ メ ー ジ、 製 品 ラ イ ン とR&D能 社 の マ ー ケ テ ィ ン グ ・ミ ック ス と価 格 の4カ. 力 、 製 品 分 野 の リス ク と市 場 規 模 、 競 合 他 テ ゴ リー に分 類 され る要 因 で ブ ラ ン ド ・エ ク. イ テ ィが規 定 され 、 そ の 結 果 と して 、 超 過 収 益 が 実 現 され る と想 定 して い る。 こ の モ デ ル で は 、超 過 収 益 は、「ブ ラ ン ドを有 す る製 品(ブ ン ・ブ ラ ン ド製 品)と. の 収 益(価. 格x数. 量)の. ラ ン ド製 品)と. ブ ラ ン ドを有 しな い 製 品(ノ. 差 額 」 と して 定 義 され 、 これ が ブ ラ ン ド価. 値 で あ る と して お り、 米 国 食 料 品 ス ー パ ー の デ ー タ を利 用 して こ の 数 値 を 算 出 して い る 。 こ の モ デ ル は ブ ラ ン ドが 超 過 収 益 を も た ら す と い うプ リ ミテ ィ ブ な 発 想 を 直 蔵 的 に 表 現 し た モ デル で あ り客 観 性 も高 い が 、 公 表 財 務 デ ー タ に 加 え て 、 企 業 の 内 部 情 報 お よ び 特 定 の 製 品 お よび 製 品 群 に 関 す る消 費 者 調 査 デ ー タ を利 用 で き る場 合 に の み 適 用 可 能 な モ デ ル で あ る点 に 限 界 が あ る と論 じて い る。 ま た 、Srinivasan,Park&Chugの. モ デ ル で は 、 消 費 者 の ブ ラ ン ド選 択 に 関 す る 意 思 決 定. 要 因 を考 慮 した モ デ ル を提 示 して い る,こ の モ デ ル の 基 本 的 発 想 は 、 ブ ラ ン ドが 消 費 者 に よ っ て 購 入 され る確 率 が 、 ど の よ う に 決 定 され るか を モ デ ル 化 ・測 定 し.そ の 確 率 が 高 い ブ ラ ン ドほ ど、 プ ラ ン ド価 値 が 高 い とみ な して い る,そ の 基 本 構 造 は 、 「あ る消 費 者 が あ る ブ ラ ン ドに 対 して も た らす ブ ラ ン ド価 値(1年. 間 の 購 入 量)」 は、 「あ る消 費 者 が 、1年 間 に. 購 入 す る製 品 カ テ ゴ リ ーの 量 」 と 「あ る消 費 者 が 、 製 品 カ テ ゴ リ ーの な か で あ る ブ ラ ン ド を 選 択 す る確 率 の 増 分 」 と 「あ る ブ ラ ン ドの マ ー ジ ン(製 品単 価 一単 位 当 り変 動 費)1の. 積. と し て 算 出 さ れ る点 に あ る。 これ は 、 あ る特 定 の 消 費 者 に 関 して の 推 定 式 な の で 、 こ れ を N人 の 消 費 者 につ い て 合 計 す れ ば 、 あ る 製 品 の ブ ラ ン ド価 値 が 算 出 で き る と い う単 純 な モ デ ル で あ る と評 価 して い る。Srinivasanら の モ デ ル は 、消 費 者 の 意 思 決 定 過 程 を 確 率 論 的 に 精 緻 化 した モ デ ル で あ り、 論 理 的 整 合 性 は 極 め て 高 い と認 め る もの の 、 特 定 ブ ラ ン ドに 関 す る 詳 細 な 消 費 者 調 査 を実 施 した う え で な け れ ば ブ ラ ン ド価 値 を 算 出 で き な い な ど の 現 実 的 な 制 約 が あ り、 ま た ブ ラ ン ドが も た らす 将 来 収 益 の リス ク が モ デ ル の な か に 組 み 込 まれ て い な い な どの 理 論 的 短 所 も あ る と 論 じ られ て い る。 こ こ ま で4つ の ブ ラ ン ド価 値 評 価 モ デ ル を比 較 検 討 して きた が 、MSI(MarketingScience InsdtuteJが1999年. に 開 催 した ブ ラ ン ド ・エ ク イ テ ィに 関 す る研 究 会 で は 、 ブ ラ ン ド価 値. 一173一.

(18) 『 経 営戦 略 と企 業評 価に関す る研究」. 評 価 モ デ ル の 評 価 基 準 と して 、 理 論 に も とつ い て い る 、 包 括 性 、 診 断 力(ブ. ラ ン ド価 値 の. 低 下 、 上 昇 を診 断 で き る)、 ブ ラ ン ドの 将 来 収 益 と拡 張 性 を 把 握 で き る、 客 観 性 ・再 現 性 、 デ ー タの 入 手 可 能 性 ・継 続 性 、 数 値 に よ る 算 出 、 直 感 的 な 訴 求 力 、 信 頼 性 ・安 定 性 、 妥 当 性 と い う10の 要 因 あ げ られ た と い う。 か か る基 準 に照 らせ ぱ 、Interbrandモ. デルは、金額. 数 値 で 表 され て お り直 感 に 訴 え 、 数 値 の 上 下 が は っ き りす る と い う診 断 力 の 面 で は 優 れ て い る が 、 デ ー タの 入 手 可 能 性 と客 観 性 ・再 現 性 と い う点 で 課 題 が あ り、 ま たAilawadiら モ デ ル お よ びSrinivasanら. の. の モ デ ル は 、 これ らの 基 準 を ほ ぼ 満 た して い る とい え る が 、2つ. の モ デ ル と も、 デ ー タの 継 続 性 に 問 題 が あ る と論 じて い る。 さ らに 本 章 で は 、 提 出 者 も委 員 と して 参 画 し、 経 済 産 業 省 産 業 政 策 局 長 の 諮 問機 関 と し て 設 置 され た 企 業 法 制 研 究 会(以 ド価 値 評 価 モ デ ル(以. 下 、 「研 究 会 」 とい う)が2002年6月. に 発 表 した ブ ラ ン. 下 、 「経 済 産 業 省 モ デル 」 とい う)を 取 り上 げ て い る。 経 済 産 業 省 モ. デル の 基 本 的 な構 造 は 、 ブ ラ ン ド価 値(BV:Brand制ue)は ー ジ ・ ドラ イバ ー(PrestigeDriverPI))、 バ ー(LoyaltyDriver;LI))、. 、価 格優位性 を表す プ レステ. リピ ー ター の 多 さを 表 す ロ イヤ ル テ ィ ・ドラ イ. ブ ラ ン ドの 拡 張 力 ま た は 展 開 力 を表 す エ ク スパ ン シ ョ ン ・ ド. ラ イバ ー(ExpansionDriver;ED)の. 積 か ら成 る額 を リス ク ・フ リー ・レ ー トで 割 引 い た. 額 と して 算 出 さ れ る と い う もの で あ る。 これ は 、 第4章. で も検 討 した イ ン カ ム ・ア プ ロ ー. チ の な か の 期 待 キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー ・ア プ ロー チ を援 用 した もの で あ る。 第1の 変 数PDは. 、 価 格 優 位 性 ま た は超 過 収 益 を もた らす とい う ブ ラ ン ドの 基 本 的 な概 念. を 測 定 す る た め の 変 数 で あ り 、 「当社 売 上 高/当. 社 売 上 原 価 」 か ら 「基 準 企 業 売 上 高/基 準. 企 業 売 上 原 価 」 を 差 し引 い た 数 字 に 「当 社 広 告 費/当. 社 営 業 費 用 」 を乗 じ た 数 値 の5年. 間. の 平 均 を と り.こ の 数 値 に算 出 年 度 の 当 社 売 上 原 価 を 乗 じる こ とで 算Wiす る 。「当社 広 告 費/ 当 社 営 業 費 用 」 は 「プ ラ ン ド起 因 率 一 と呼 ば れ 、 ブ ラ ン ドに よ り も た ら され るキ ャ ッシ ュ ・ フ ロ ー の 比 率 を意 味 す る。 ま た、 基 準 企 業 とは 「売r.高/売. 上 原 価 」 の 値 が 、 業 種 内 で最. も低 い 企 業 で あ る。 第2の 変 数LDは 上 原 価5期. 、 安 定 的 な顧 客 ま た は 顧 客 の ロ イヤ リテ ィ を 示 す 変 数 で あ り、 「自 社 売. 平 均 」 か ら 「自社 売 上 原 価 標 準 偏 差 」 を 差 し引 い た 数 値 を 「自 杜 売 上 原 価5期. 平 均 」 で 除 して 算 出 す る 。 こ の 算 出 式 を展 開 す る と、 「1一 自 社 売 上 原 価 標 準 偏 差/自 上 原 価5期. 平 均 」 と な る。1標 準 偏 差/平. 指 標 な の で 、 この 数 値 を1か 第3の. 変 数E1)は. 社売. 均 」 は変 動 率 と呼 ば れ 現 象 の 変 動 の 大 き さを 示 す. ら引 くこ とで 安 定 性 をrす 指 標 に す る とい う考 え 方 で あ る。. 、 他 の モ デ ル で は 包 摂 され て い な い ブ ラ ン ドの 側 面 で あ り、 製 品 カ テ. ゴ リ ー ま た は 事 業 分 野 の 拡 張 と海 外 展 開 の 程 度 を 意 味 して い る 。 ブ ラ ン ド拡 張 は 、 い わ ゆ る欧 州 の 高 級 ブ ラ ン ドの 多 く が 、 オ リ ジ ナ ル の 製 品 か ら派 生 して さ ま ざ ま な 製 品 に ブ ラ ン ドを付 して マ ー ケ テ ィ ング ・ 販 売 活 動 を行 っ て い る こ と は、 日常 的 に 経 験 す る と こ ろ で あ る。 ま た、 今 日の グ ロ ーバ ル 化 した 経 済 社 会 に お い て は 、 海 外 で ど れ だ け 通 用 す る か と い う こ. ̲174̲.

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