56
なお心搏出の障害を裏から見れば,静脈帰来(venous return)の障害と言えるが,静脈帰来に最も重要なの
は,1)循環血液量と末梢動静脈系,ことに静脈系の容 量によって決まる末梢静脈圧(厳密には循環平均充満圧
といわれるもの)と心房圧との圧勾配(これを静脈帰来 圧という)および2)その間の静脈抵抗である.
急性冠状動脈狭窄ないし分枝の閉塞では,末梢静脈圧 が心房圧(中心静脈圧)とともに上昇し,静脈帰来圧が 不変の場合にも,また心房圧の上昇が著しくて静脈帰来 圧が減少する場合にも,等しく静脈帰来は障害され,と くに末梢静脈系の収縮による容量の減少の著しい前者の 場合には,静脈抵抗の増加が推論される.左冠状動脈の 狭窄・閉塞では肺動静脈系に,右冠状動脈のときには体 動静脈系にこういった反応が特徴的に現われるが,後者 は前者に比べると軽度である。これは体循環系容量が肺 のそれに比し著しく大きいこと,左冠状動脈がより支配 的なことの理由による.
なお心房のcomplianceの減少があるが,本報告では 割愛する.
5.急性心筋硬塞における血漿コルチゾール値の変動 について
(心慮内科)関原 久彦・細田 瑳一
東京女子医大C.C.U.に入院した急性心筋硬塞40例,
狭心症10例,中間型冠状動脈症候群5例につき,血漿コ ルチゾール値を測定した.急性心筋硬塞では39例に上 昇,経時的変化では発作直後より3〜10日間の上昇を認 めた.コルチゾール値とS−GOT,血圧,尿量との相関 は認めず,死亡例は生存例よりも高値を示す.上昇機序 解明のため2mg dexamethasone静注法によるsupPr−
ess圭on testを7例につき実施した.全例著明な低下を認 め,ACTHが上昇機序の主役を演じていること力湖ら かとなった.S−GOT軽度上昇を認めた狭心症1例,中 間型4例でも軽度上昇を認めた.C.C.U.に入院した他
の疾患,解離性大動脈瘤,自然気胸,脳出血,肺硬塞の 急性期にも上昇を示した.
6.心筋組織血流の神経支配 (東大 第二内科)内田 康美
Heat Clearance法に従い, cross−thermocoupleを 用い,nembutal麻酔イヌの左室前壁内組織血流量を経 時的に測定し,交感神経ならびに迷走神経電気刺激の効 果を調べた.
左星状神経節の電気刺激(0.5msec,短形波,10cps)
により心外膜側1/、では冠状動脈血流:量と同様,組織血流 量は2峰性の増加を示す例が大部分であったが,心内
膜側1/3,特に乳頭筋起始部近辺では逆に減少を示す例 が多かった.この減少は刺激頻度を40cpsにすると,増 加に反転する例と,減少度が増大する例とをみとめた.
norepinephrineの投与でもほぼ同様の傾向をみとめ
た.
右頚部迷走神経幹刺激(0.5msec,短形波,10cps)
により心外膿漏ソ3では冠状動脈血流量におけると同様,
著明な減少を示す例が多く,心内膜側ソ、では逆に増加を 示す例を多くみとめた.
しかし,左星状神経節刺激により減少する部位が必ず しも迷走神経刺激により増加する部位と一致しなかっ た.acetylcholineの投与でも同様であった.
左室壁には,transmural pressure gradientが存在 するが,このmean gradientは交感神経の刺激により 増大し,迷走神経刺激により減少した.
左心室壁の内外側における組織血流量は,交感神経な らびに迷走神経の興奮の際に,互いに逆方向に変動する 傾向を認めたが,この機序には,心拍数(したがって filling period)の変動も考慮に入れる心要はあるが,
trans皿ural pressure gradientの変動が一因子として 関与している可能性がある,
一 658 一